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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024077178
(43)【公開日】2024-06-07
(54)【発明の名称】溝付きレール用研磨装置
(51)【国際特許分類】
   E01B 31/17 20060101AFI20240531BHJP
   B24B 27/00 20060101ALI20240531BHJP
   B24B 55/06 20060101ALI20240531BHJP
   B61K 9/08 20060101ALN20240531BHJP
【FI】
E01B31/17
B24B27/00 E
B24B55/06
B61K9/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022189077
(22)【出願日】2022-11-28
(71)【出願人】
【識別番号】390041379
【氏名又は名称】株式会社山崎歯車製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100121496
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 重雄
(72)【発明者】
【氏名】山崎 清水
【テーマコード(参考)】
2D057
3C047
3C158
【Fターム(参考)】
2D057BA32
3C047FF09
3C047HH13
3C158AA04
3C158AA11
3C158AA13
3C158CA01
3C158CB01
(57)【要約】
【課題】路面電車用の溝付きレールの頭部表面に波状摩耗等の凹凸がある場合でもレール頭部表面の波状摩耗や錆等を確実に研磨する。
【解決手段】溝付きレールRに沿って走行する前輪11b2および後輪11c2を溝付きレールRの長手方向に所定間隔を空けて設けた車両本体11と、車両本体11に設けられ、溝付きレールRに錆を取る研磨機構部1212と、車両本体11における前輪11b2と後輪11c2との間に設けられ、溝付きレールRに発生する波状摩耗の周期よりも短い間隔で連続して設けられ、溝付きレールR上を走行する2列で、かつ、その半径ずつ回転軸をズラして設けた複数の小径ローラ13a,13bを備えた車体高さ一定保持部13とを有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
溝付きレールの上を走行する前輪および後輪を前記溝付きレールの長手方向に所定間隔を空けて設けた車両本体と、
前記車両本体に設けられ、前記溝付きレールを研磨する研磨機構部と、
前記車両本体における前輪と後輪との間に前記溝付きレールに発生する波状摩耗の周期よりも短い間隔で連続して設けられ、前記溝付きレール上を走行する複数の小径ローラを備え、前記溝付きレール上を走行した際に前記車両本体の高さを一定に保持する車体高さ一定保持部と、
を有することを特徴とする溝付きレール用研磨装置。
【請求項2】
請求項1記載の溝付きレール用研磨装置において、
前記車体高さ一定保持部における複数の小径ローラは、前記溝付きレールの長手方向に対し直交する方向に複数列設けられていると共に、各列の複数の小径ローラの回転軸は、前記溝付きレールの長手方向にズラして設けられていることを特徴とする溝付きレール用研磨装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2記載の溝付きレール用研磨装置において、
前記研磨機構部は、
上下方向に延びる回転軸を中心に回転して前記溝付きレールを研磨する研磨体を少なくとも2基有し、その少なくとも2基の前記研磨体それぞれの回転軸は前記車両本体の走行方向に離間すると共に、その走行方向に直交する左右方向において2基の前記研磨体それぞれの研磨範囲が重複するようにズラして配置されていることを特徴とする溝付きレール用研磨装置。
【請求項4】
請求項3記載の溝付きレール用研磨装置において、
2基の前記研磨体は、歯車を介して一方の前記研磨体の回転によって他方の前記研磨体が回転するように連携されており、
前記研磨機構部には、さらに、2基の前記研磨体の内、いずれか一方の前記研磨体の台座の側面に廻り止め体を当接させることにより当該一方の研磨体の廻りを止めると共に、他方の前記研磨体の廻りも止める研磨体廻り止め部を有することを特徴とする溝付きレール用研磨装置。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一の請求項に記載の溝付きレール用研磨装置において、
前記研磨機構部における前記研磨体の周囲は、集塵カバーで覆われており、その集塵カバーの下端部には難燃性ゴムないしは不燃性ゴム等の耐火性を有する弾性部材が設けられていることを特徴とする溝付きレール用研磨装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、路面電車等が走行する溝付きレールの表面を研磨したり錆等を取る溝付きレール用研磨装置に関する。
【背景技術】
【0002】
路面電車等が走行するレールは、路面電車の車輪のフランジ部が通るが通る路(輪縁路)を確保するため溝付きレールが採用されている。このような路面電車用の溝付きレールでも経年変化等によりレール頭部に波状摩耗等の凹凸や錆等が発生するため、定期的にその波状摩耗や錆等を取り除く研磨作業が行われている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-142112号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1のレールの研磨装置では、路面電車用の溝付きレールの頭部表面に波状摩耗等の凹凸があった場合、その溝付きレール上を走行するレール研磨装置自体も上下動してしまい波状摩耗や錆等を上手く削ることができないという問題があった。
【0005】
そこで、本発明はこのような種々の問題点に着目してなされたもので、路面電車用の溝付きレールの頭部表面に波状摩耗等の凹凸がある場合でも波状摩耗や錆等を確実に研磨することができる溝付きレール用研磨装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本発明に係る溝付きレール用研磨装置は、溝付きレールの上を走行する前輪および後輪を前記溝付きレールの長手方向に所定間隔を空けて設けた車両本体と、前記車両本体に設けられ、前記溝付きレールを研磨する研磨機構部と、前記車両本体における前輪と後輪との間に前記溝付きレールに発生する波状摩耗の周期よりも短い間隔で連続して設けられ、前記溝付きレール上を走行する複数の小径ローラを備え、前記溝付きレール上を走行した際に前記車両本体の高さを一定に保持する車体高さ一定保持部と、を有することも特徴とする。
また、本発明に係る溝付きレール用研磨装置では、前記車体高さ一定保持部における複数の小径ローラは、前記溝付きレールの長手方向に対し直交する方向に複数列設けられていると共に、各列の複数の小径ローラの回転軸は、前記溝付きレールの長手方向にズラして設けられていることも特徴とする。
また、本発明に係る溝付きレール用研磨装置では、前記研磨機構部は、上下方向に延びる回転軸を中心に回転して前記溝付きレールを研磨する研磨体を少なくとも2基有し、その少なくとも2基の前記研磨体それぞれの回転軸は前記車両本体の走行方向に離間すると共に、その走行方向に直交する左右方向において2基の前記研磨体それぞれの研磨範囲が重複するようにズラして配置されていることも特徴とする。
また、本発明に係る溝付きレール用研磨装置では、2基の前記研磨体は、歯車を介して一方の前記研磨体の回転によって他方の前記研磨体が回転するように連携されており、前記研磨機構部には、さらに、2基の前記研磨体の内、いずれか一方の前記研磨体の台座の側面に廻り止め体を当接させることにより当該一方の研磨体の廻りを止めると共に、他方の前記研磨体の廻りも止める研磨体廻り止め部を有することも特徴とする。
また、本発明に係る溝付きレール用研磨装置では、前記研磨機構部における前記研磨体の周囲は、集塵カバーで覆われており、その集塵カバーの下端部には難燃性ゴムないしは不燃性ゴム等の耐火性を有する弾性部材が設けられていることも特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る溝付きレール用研磨装置は、車両本体における前輪と後輪との間に、溝付きレールに発生する波状摩耗の周期よりも短い間隔で連続して設け、溝付きレール上を走行する複数の小径ローラを備え、溝付きレール上を走行した際に車両本体の高さを一定に保持する車体高さ一定保持部を設けている。
そのため、路面電車用の溝付きレールの頭部表面に波状摩耗等の凹凸がある場合でも、車体高さ一定保持部によって車両本体の高さが一定に保持した状態で走行することができるので、路面電車用の溝付きレール頭部の波状摩耗や錆等を確実に研磨することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明に係る実施形態の溝付きレール用研磨装置(集塵カバーを装着した状態)をレール上に設置した状態を示す斜視図である。
図2】本発明に係る実施形態の溝付きレール用研磨装置(集塵カバーを取り外した状態)をレール上に設置した状態を示す正面図である。
図3】本発明に係る実施形態の溝付きレール用研磨装置(集塵カバーを取り外した状態)を下方から見た斜視図である。
図4】本発明に係る実施形態の溝付きレール用研磨装置(集塵カバーを装着した状態)を図3とは別角度の下方から見た斜視図である。
図5】本発明に係る実施形態の溝付きレール用研磨装置(集塵カバーを取り外した状態)をレール上に設置した状態を示す平面図である。
図6】本発明に係る実施形態の溝付きレール用研磨装置(集塵カバーを取り外した状態)をレール上に設置した状態を示す底面図である。
図7】本発明に係る実施形態の溝付きレール用研磨装置(集塵カバーを取り外した状態)をレール上に設置した状態を示す右側面図である。
図8図7におけるA部分の要部拡大図である。
図9図7におけるA部分であって集塵カバーを装着した状態の要部拡大図である。
図10】本発明に係る実施形態の溝付きレール用研磨装置を構成する集塵カバーの斜視図である。
図11】(a)~(c)それぞれ本発明に係る実施形態の溝付きレール用研磨装置を構成する集塵カバーの平面図、正面図、右側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
次に、本発明に係る溝付きレール用研磨装置の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、下記に説明する実施形態は、あくまで、本発明の一例であり、本発明は下記に説明する実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で適宜改変可能である。
【0010】
<実施形態の溝付きレール用研磨装置1の構成>
本発明に係る実施形態の溝付きレール用研磨装置1は、図1図10に示すように車両本体11と、研磨機構部12と、車体高さ一定保持部13と、集塵カバー14等を備えて構成される。
【0011】
(車両本体11)
車両本体11は、長方形状の車両フレーム11aの前部と後部にそれぞれ前輪支持部11b1と後輪支持部11c1とを介して設けたゴムや樹脂製の前輪11b2と後輪11c2によって溝付きレールRに沿って走行するもので、前輪11b2および後輪11c2が図3図4等に示すようにモーター(図示せず。)によって回転する歯車11d1,11d2(図3参照。)を介しチェーン11d3(図4参照。)により後輪11c2を回転させ、その後輪11c2の回転を両端部に歯車が設けられた第1鉛直回転伝達軸11d4や水平回転伝達軸11d5、第2鉛直回転伝達軸11d6等を介して前輪11b2に伝達し、前輪11b2および後輪11c2が等速で回転して溝付きレールRを走行できるように構成されている。
【0012】
ここで、この溝付きレール用研磨装置1は、溝部Ra(図9等参照。)を有する溝付きレールR上を走行するため、前輪11b2および後輪11c2にはそれぞれ前輪フランジ部11b3および後輪フランジ部11c3が設けられており、前輪フランジ部11b3および後輪フランジ部11c3が溝付きレールRの溝部Raに嵌りながら前輪11b2および後輪11c2で走行するように構成されている。
【0013】
また、車両本体11の上側にはバッテリ11eと、集塵機11f等を搭載されており、車両本体11の後端部、つまり後輪11c2側には、後述する研磨機構部12が連結部11g(図4参照。)介して取り付けられている。
【0014】
(研磨機構部12)
研磨機構部12は、車両本体11の車両フレーム11aの後端に連結部11g(図4参照。)介し固定されて、溝付きレールRに錆を取る等、研磨を行う機構部で、溝付きレールRの上面(頭頂面)を研磨する複数(ここでは二つ)の回転砥石12a,12bと、回転砥石12a,12bを回転させる回転駆動源としての研磨用モーター12cと、研磨用モーター12cのトルクを2つの回転砥石に伝達するギヤ等の伝達機構(図示せず。)を内蔵するケーシング12dと、研磨用モーター12cの回転を制御するコントロールボックス12eと、ハンドル部12f等を備えている。
【0015】
2つの回転砥石12a,12bは、円盤形状で各回転砥石12a,12b下端面全体に円形の研磨面が形成され、それらの中心軸12a1,12b1周りに回転して溝付きレールRの上面(頭頂面)を研磨する。尚、回転砥石12a,12bは、それぞれ砥石台座12a2,12b2に対しそれらの中心軸12a1,12b1下方からネジ(図示せず。)等で固定される。また、回転砥石12a,12bとしては、例えば、人造砥石が使用される。
【0016】
2つの回転砥石12a,12bは,図3図5に示すように、それぞれの研磨面が同一の水平面上に位置する状態で、前後に並んで配置されている。また、2つの回転砥石12a,12bは、左右方向についてその研磨範囲が重複する状態を維持しつつ互いに左右方向にズラして配置されている。また、前輪11b2及び後輪11c2により導かれるレールRにおける左右方向の中心軸Cに対する前側の回転砥石12aの右方へのズレ量と後側の回転砥石12aの左方へのズレ量とは等しくなっている。さらに、回転砥石12a,12bの左右方向におけるズレ量は、一つの回転砥石12a,12bの研磨範囲の半径未満とする。これにより、2つの回転砥石12a,12bによって少なくとも一つの回転砥石12aによる左右方向の研磨範囲よりも広い範囲で研磨を行うことができ、且つ、2つの回転砥石12a,12bのそれぞれの研磨範囲に隙間を生じないようにすることができる。
【0017】
研磨用モーター12cは、ケーシング12dの上面に固定装備され、コントロールボックス12eを介した作業員からの動作指示によってバッテリ11eから駆動電流を得て駆動し、2つの回転砥石12a,12bを回転させる。
【0018】
ケーシング12d内の伝達機構は、研磨用モーター12cのトルク出力を2つの回転砥石12a,12bに均等に分力して伝達する歯車機構(図示せず。)を有しており、2つの回転砥石12a,12bは、その回転中心軸が鉛直上下方向を向いた状態でケーシング12dの下部に垂下支持されていると共に、ケーシング12d内の伝達機構のギヤ(歯車)を介して噛合っており上下方向に沿った軸回りに回転力が互いに逆回転となるように伝達される。つまり、2つの回転砥石12a,12bは噛合っているため、いずれか一方の回転を止めると、他方の回転が止まる。
【0019】
また、ケーシング12dの下面には、回転砥石12a,12b取付け時に、作業員が廻り止めピン12d2を押し出し、廻り止めピン12d2先端部を、回転砥石12bを固定する砥石台座12b2側面に当接させて回転砥石12a,12bの廻りを止めて下方から回転砥石12a,12bをネジ(図示せず。)止めするための回転砥石廻り止め部12d1を設けている。尚、廻り止めピン12d2の外側には、圧縮スプリング(図示せず。)等が設けられており、作業員が廻り止めピン12d2を押していない場合および指を離した場合には戻り、廻り止めピン12d2先端部が砥石台座12b2側面に当接しないように調整されている。
【0020】
コントロールボックス12eは、研磨用モーター12cの上に取付けられ、後輪11c2を回転させるモーター(図示せず。)をオン/オフして車両本体11を走行させる走行オン/オフスイッチ12e1や、研磨用モーター12cをオン/オフして2つの回転砥石12a,12bを回転させる研磨オン/オフスイッチ12e2等の作業員が操作する各種スイッチが設けられている。
【0021】
ハンドル部12fは、ケーシング12dの上部に研磨用モーター12cを挟むように起立して設けられ、上部が90度曲げられた一対の縦ハンドル部12f1,12f1と、一対の縦ハンドル部12f1,12f1の上端部に溶接等して設けられ、水平方向に延び、作業員が掴む把持用水平ハンドル部12f2とで構成されている。
【0022】
(車体高さ一定保持部13)
車体高さ一定保持部13は、車両本体11の下側(裏側)、特に前輪11b2と後輪11c2との間に設けられ、溝付きレールRに発生する波状摩耗の周期よりも短い間隔で連続して2列で設けた複数の小径ローラ13a,13bを備え、溝付きレールRの上面(頭頂面)に波状摩耗があっても車両本体11が上下動しないように車両本体11の高さを一定に保つためのものである。尚、小径ローラ13a,13bは、図4図6等に示すように前輪11b2と後輪11c2との間のみでなく、車両本体11の下側(裏側)のける後輪11c2と研磨機構部12との間にも1つずつ設けている。
【0023】
2列で設けた複数の小径ローラ13a,13bは、1列目を構成する複数の小径ローラ13aと、2列目を構成する複数の小径ローラ13bとは同じ半径rのローラで構成されているが、1列目を構成する複数の小径ローラ13aと2列目を構成する複数の小径ローラ13bとでそれらの回転軸を半径rずつ車両本体11の長手方向にずらすことにより、半径r/2の小径ローラを1列で並べた場合と同等となるように構成している。そのため、半径rのローラを1列で並べた場合よりも、2倍だけローラ間の凹凸の頂点間の間隔が狭くなるので、溝付きレールR頭頂面に波状摩耗等の凹凸があってもその分だけ車両本体11の高さをより確実に一定に保った状態で溝付きレールRを走行させることが可能となり、溝付きレールR頭頂面の波状摩耗や錆等をより確実に研磨することができる。
【0024】
また、複数の小径ローラ13a,13bは、ゴムまたは樹脂製の前輪11b2と後輪11c2よりも例えば1mm程度高く設けており、溝付きレール用研磨装置1の小径ローラ13a,13bを溝付きレールRの上に載せると、前輪11b2および後輪11c2等が撓み、小径ローラ13a,13bも溝付きレールRに接するように構成している。
【0025】
(集塵カバー14)
集塵カバー14は、図10図11等に示すように、研磨機構部12のケーシング12dの下面に着脱可能に取り付けられ、2つの回転砥石12a,12bが回転して溝付きレールRを研磨した際に発生する削り粉等が飛び散らないように回転砥石12a,12bの前後左右の四方を囲むように金属板や耐熱樹脂板で形成された前方カバー板14a、後方カバー板14bおよび一対の側板カバー14c,14cで箱形状に形成している。
【0026】
そして前方カバー板14aには車両本体11と研磨機構部12とを連結する連結部11gを通すための前方カバー切欠部14a1が設けられている一方、後方カバー板14bには研磨体廻り止め部12d1を設けるための後方カバー切欠部14b1が設けられている。
【0027】
(ゴムシート15)
ゴムシート15は、集塵カバー14を構成する前方カバー板14a、後方カバー板14bおよび一対の側板カバー14c,14cの下部にそれぞれシート取付板15aによって挟むことにより取付けられる難燃性ゴムないしは不燃性ゴム等の不燃性弾性素材によって形成された弾性シートであって、溝付きレールRに接触しても溝付きレールR表面を傷付けず、かつ、回転砥石12a,12bが研磨した際に発生する高温の削り粉で火災が発生しないよう、下端面がノコギリ歯の如くギザギザ形状に形成されている。
【0028】
(溝付きレールR)
溝付きレールRは、路面電車に数多く採用されているレールで、路面電車は道路に設けられており、道路上の泥や石等でレールが埋まって脱線等の危険性が増すため、脱線等しないよう前輪11b2および後輪11c2のフランジ部が嵌る溝部Ra(図9等参照。)を設けている。
【0029】
<本発明に係る実施形態の溝付きレール用研磨装置1の動作>
次に、以上のように構成された実施形態の溝付きレール用研磨装置1の動作について説明する。
【0030】
作業員が実施形態の溝付きレール用研磨装置1を溝付きレールRの上に移動させ、コントロールボックス12eの電源ボタンや各種制御ボタンを押して研磨用モーター12cをオンにして、研磨用モーター12cの回転方向や回転速度等を設定して回転させると、ケーシング12d内の伝達機構(図示せず。)を介して2つの回転砥石12a,12bがその設定に基づいて回転する。
【0031】
そして作業員がハンドル部12fの把持用水平ハンドル部12f2を掴んで押すと、溝付きレール用研磨装置1が溝付きレールR上を走行しながら回転する2つの回転砥石12a,12bが溝付きレールR上を研磨し、錆等が発生している場合にはその錆等を除去していく。
【0032】
その際、実施形態の溝付きレール用研磨装置1には、車両本体11の前輪11b2と後輪11c2との間には、溝付きレールRに発生する波状摩耗の周期よりも短い間隔で連続して設け、溝付きレールR上を走行する複数の小径ローラ13a,13bを備えた車体高さ一定保持部13を設けている。
【0033】
そのため、溝付きレールR上に波状摩耗等の凹凸が発生していても車体高さ一定保持部13の複数の小径ローラ13a,13bによって車両本体11の高さは常に一定の高さを保持できるため、溝付きレールR上の波状摩耗等を確実に研磨することができる。
【0034】
特に、実施形態の溝付きレール用研磨装置1では、車体高さ一定保持部13の複数の小径ローラ13a,13bは、溝付きレールRの長手方向に対し直交する方向に2列設けており、各列の複数の小径ローラ13a,13bの回転軸は、溝付きレールRの長手方向に半径ずつズラして設けている。
【0035】
そのため、1列の小径ローラを複数並べた場合よりも小径ローラの間隔を1/2にすることが可能となり、その分だけ1列で並べた場合よりも平面に近付くので、溝付きレールR頭頂面に波状摩耗があっても車両本体11の高さをより確実に一定に保った状態で溝付きレールRを走行して、溝付きレールR頭頂面の波状摩耗や錆等をより確実に研磨することができる。
【0036】
また、研磨機構部12のケーシング12dの下面には、回転砥石12a,12bの前後左右の四方を囲むように設けられた金属製または樹脂製のカバーである集塵カバー14を設けている。
【0037】
そのため、2つの回転砥石12a,12bが回転して溝付きレールRを研磨した際に錆や削り粉等が飛び散った場合でも、集塵カバー14の外への飛散を防止することができる。
【0038】
また、集塵カバー14の下端部には、難燃性ゴムないしは不燃性ゴム等の耐火性を有する弾性素材によって形成されたノコギリ歯の如くギザギザ形状に形成された弾性部材であるゴムシート15を設けている。
【0039】
そのため、弾性部材であるゴムシート15は、溝付きレールRに接触しても溝付きレールR表面を傷付けず、かつ、回転砥石12a,12bが研磨した際に発生する高温の削り粉で火災が発生しないよう難燃性ゴムないしは不燃性ゴム等の不燃性弾性素材によって形成されており、下端面がノコギリ歯の如くギザギザ形状に形成されている。
【0040】
そのため、集塵カバー14下端部と溝付きレールR頭部表面との間の隙間を極力少なくすることができるので、回転砥石12a,12bの前後左右の四方を集塵カバー14で覆った場合よりも、回転砥石12a,12bが研磨した際に発生する錆や削り粉の飛散をより確実に防止することができる。
【0041】
<本発明に係る実施形態の溝付きレール用研磨装置1のまとめ>
以上説明したように、本発明に係る実施形態の溝付きレール用研磨装置1は、車両本体11における前輪11b2と後輪11c2との間に、溝付きレールRに発生する波状摩耗の周期よりも短い間隔で連続して設け、溝付きレールR上を走行する複数の小径ローラ13a,13bを備え、溝付きレールR上を走行した際に車両本体11の高さを一定に保持する車体高さ一定保持部13を設けている。
【0042】
そのため、路面電車用の溝付きレールRの頭部表面に波状摩耗等の凹凸がある場合でも、複数の小径ローラ13a,13bを有する車体高さ一定保持部13によって車両本体11の高さが一定に保持されるので、路面電車用の溝付きレールR頭部の波状摩耗や錆等を確実に研磨することができ、研磨作業の作業効率や仕上がり等を向上させることができる。また、車体高さ一定保持部13として溝付きレールR頭頂面に鋼板等の平面部を接触させる場合よりも、複数の小径ローラ13a,13bの方が接触抵抗が小さくなり、スムーズに路面電車用の溝付きレールR上を走行することが可能となるので、この点でも研磨作業の作業効率を向上させることができる。
【0043】
また、本発明に係る実施形態の溝付きレール用研磨装置1では、車体高さ一定保持部13における複数の小径ローラ13a,13bは、溝付きレールRの長手方向に対し直交する方向に複数列設けられていると共に、各列の複数の小径ローラ13a,13bの回転軸は、溝付きレールRの長手方向に半径ずつズラして設けている。
【0044】
そのため、1列の小径ローラを複数並べた場合よりも小径ローラの間隔を1/2にすることが可能となるため、その分、より各種の波状摩耗があっても溝付きレールRの上面(頭頂面)の錆等を取り去ることができ、研磨作業の作業効率や仕上がり等を向上させることができる。
【0045】
また、本発明に係る溝付きレール用研磨装置1において、研磨機構部12は、上下方向に延びる回転軸を中心に回転して溝付きレールRを研磨する研磨体として2基の回転砥石12a,12bを有し、その2基の回転砥石12a,12bそれぞれの回転軸は車両本体11の走行方向である前後方向に離間すると共に、その走行方向に直交する左右方向にも離間し、2基の回転砥石12a,12bそれぞれの研磨範囲が重複する範囲で左右方向にズラして配置している。
【0046】
そのため、1つの回転砥石によって溝付きレールRを研磨する場合と比較して研磨残しを減少させることができると共に、回転砥石12a,12bは逆方向に回転するのでその重複範囲では研磨面をより綺麗に研磨することができ、この点でも研磨作業の作業効率や仕上がり等を向上させることができる。
【0047】
また、本発明に係る溝付きレール用研磨装置1では、2基の回転砥石12a,12bは、歯車を介して一方の回転砥石12a,12bの回転によって他方の回転砥石12a,12bが回転するように構成しており、研磨機構部12には、2基の回転砥石12a,12bの内、回転砥石12bの砥石台座12b2側面に廻り止めピン12d2をスライドさせて当接させることにより回転砥石12a,12bの廻りも止める研磨体廻り止め部12d1をさらに設けている。
【0048】
そのため、作業員が廻り止めピン12d2を指で押す等してスライドさせて廻り止めピン12d2先端部を回転砥石12bの砥石台座12b2側面に当接させて回転砥石12a,12bの廻りを止めた後、回転砥石12a,12bの下方からネジ(図示せず。)等を回転して取外し、回転砥石12a,12bを取付けたり、取外すことが可能となるので、この点でも作業効率を向上させることができる。
【0049】
また、本発明に係る実施形態の溝付きレール用研磨装置1では、研磨機構部12のケーシング12dの下面に回転砥石12a,12bの前後左右の四方を囲むように金属製または樹脂製のカバーである集塵カバー14を設けている。
【0050】
そのため、研磨体である2つの回転砥石12a,12bが回転して溝付きレールRを研磨した際に錆や削り粉等が飛び散った場合でも、集塵カバー14の外への飛散を防止することができ、作業現場を綺麗に保つことが可能となり、研磨作業の作業効率や仕上がり等を向上させることができる。
【0051】
また、集塵カバー14の下端部には、難燃性ゴムないしは不燃性ゴム等の耐火性を有する弾性部材であるゴムシート15を設けている。
【0052】
そのため、集塵カバー14下端部と溝付きレールR頭部表面との間の隙間を極力少なくすることができるので、回転砥石12a,12bの前後左右の四方を集塵カバー14で覆った場合よりも、回転砥石12a,12bが研磨した際に発生する錆や削り粉の飛散をより確実に防止することができ、この点でも研磨作業の作業効率や仕上がり等を向上させることができる。
【0053】
特に、ゴムシート15の下端部はノコギリ歯の如くギザギザ形状に形成しているため、ゴムシート15下端部が溝付きレールRに接触しながら走行した場合でも、ゴムシート15下端部が捲れたり、曲がる等して溝付きレールRとの間に大きな隙間が空くことが無くなり、溝付きレールRの溝部Raに土や細かな砂利状の異物等が堆積や付着していた場合でも、それらの飛散を極力防止することが可能となる。
【0054】
尚、上記実施形態の溝付きレール用研磨装置1では、集塵カバー14の下端部等に設けたゴムシート15の下端部は、ノコギリ歯の如くギザギザ形状に形成して説明したが、本発明ではこれに限定されることはなく、ゴムシート15は付加的なもので省略しても良いし、設ける場合でもノコギリ歯以外の例えば、サイン波のような湾曲形状であっても良いし、さらにはゴムシート15水平の下端部に所定間隔で鉛直方向の切込みを入れるだけであっても勿論良い。
【0055】
また、上記実施形態の溝付きレール用研磨装置1では、バッテリ11eに充電した電流によって研磨機構部12の回転砥石12a,12bを回転させるように説明したが、本発明では、これに限らず、バッテリ11eの代わりに発電機(図示せず。)を搭載して、発電機(図示せず。)が発電した電流によって研磨機構部12の回転砥石12a,12bを回転させるようにしても良い。また、実施形態の溝付きレール用研磨装置1では、後輪11c2を歯車11d1,11d2やチェーン11d3等を介しモーター(図示せず。)等により回転させて自走式の溝付きレール用研磨装置1として説明したが、本発明ではこれに限定されず、前輪11b2および後輪11c2をモーター(図示せず。)等により駆動せずに手押し式の研磨装置1で構成しても勿論良い。
【0056】
また、上記実施形態の溝付きレール用研磨装置1では、車体高さ一定保持部13は、複数の小径ローラ13a,13bを左右の列で回転軸の位置をズラしながら2列設けて説明したが、本発明ではこれに限らず、1列に複数の小径ローラを連続して設けても良いし、3列以上左右に並べて左右の列で回転軸の位置をズラしながら設けて勿論良い。尚、3列以上左右に並べて左右の列で回転軸の位置をズラす場合、(小径ローラの直径)/(列の数)ずつ回転軸の位置をズラして配列すると効率が良い。
【符号の説明】
【0057】
1 溝付きレール用研磨装置
11 車両本体
11a 車両フレーム
11b1 前輪支持部
11b2 前輪
11b3 前輪フランジ部
11c1 後輪支持部
11c2 後輪
11c3 後輪フランジ部
11d1,11d2 歯車
11d3 チェーン
11d4 第1鉛直回転伝達軸
11d5 水平回転伝達軸
11d6 第2鉛直回転伝達軸
11e バッテリ
11f 集塵機
11g 連結部
12 研磨機構部
12a,12b 回転砥石
12a1,12b1 中心軸
12a2,12b2 砥石台座
12c 研磨用モーター
12d ケーシング
12d1 回転砥石廻り止め部
12d2 廻り止めピン(廻り止め体)
12e コントロールボックス
12e1 走行オン/オフスイッチ
12e2 研磨オン/オフスイッチ
12f ハンドル部
12f1 縦ハンドル部
12f2 把持用水平ハンドル部
13 車体高さ一定保持部
13a,13b 小径ローラ
14 集塵カバー
14a 前方カバー板
14a1 前方カバー切欠部
14b 後方カバー板
14b1 後方カバー切欠部
14c,14c 側板カバー
15 ゴムシート(弾性部材)
15a シート取付板
R 溝付きレール
図1
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図11