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  • 特開-バッテリの制御装置および移動体 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024077188
(43)【公開日】2024-06-07
(54)【発明の名称】バッテリの制御装置および移動体
(51)【国際特許分類】
   B60L 3/00 20190101AFI20240531BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20240531BHJP
   B60L 58/16 20190101ALI20240531BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20240531BHJP
   G01R 31/392 20190101ALI20240531BHJP
   G01R 31/382 20190101ALI20240531BHJP
   G01R 31/385 20190101ALI20240531BHJP
【FI】
B60L3/00 S
H02J7/00 P
H02J7/00 Y
B60L58/16
H01M10/48 P
H01M10/48 301
G01R31/392
G01R31/382
G01R31/385
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022189104
(22)【出願日】2022-11-28
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-01-17
(71)【出願人】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】臼井 俊行
(72)【発明者】
【氏名】工藤 大輝
【テーマコード(参考)】
2G216
5G503
5H030
5H125
【Fターム(参考)】
2G216AB01
2G216BA01
2G216BA21
2G216BA33
5G503CB11
5G503EA05
5G503EA08
5G503FA06
5G503GD03
5G503GD06
5H030AA01
5H030AS08
5H030FF22
5H030FF41
5H125AA01
5H125AC12
5H125BC09
5H125BC18
5H125EE25
5H125EE27
5H125EE47
5H125EE48
(57)【要約】
【課題】頻度データの精度を上げることが可能なバッテリの制御装置および移動体を提供する。
【解決手段】バッテリの制御装置は、電気で移動する移動体の電源がオン状態であるときのバッテリのセル温度および前記バッテリの充電率のそれぞれの頻度データを取得する取得部と、取得された頻度データのうちの、移動体の電源がオフになるときのバッテリの第1のセル温度及びバッテリの第1の充電率、並びに、移動体の電源がオンになるときのバッテリの第2のセル温度及びバッテリの第2の充電率のそれぞれのデータに基づいて、第1のセル温度と第2のセル温度の間、及び、第1の充電率と第2の充電率との間のそれぞれの擬似データを生成する擬似データ生成部と、生成された擬似データに基づいて、頻度データを更新する更新部と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気で移動する移動体の電源がオン状態であるときのバッテリのセル温度および前記バッテリの充電率のそれぞれの頻度データを取得する取得部と、
取得された前記頻度データのうちの、移動体の電源がオフになるときのバッテリの第1のセル温度及びバッテリの第1の充電率、並びに、移動体の電源がオンになるときのバッテリの第2のセル温度及びバッテリの第2の充電率のそれぞれのデータに基づいて、前記第1のセル温度と前記第2のセル温度の間、及び、前記第1の充電率と前記第2の充電率との間のそれぞれの擬似データを生成する擬似データ生成部と、
生成された前記擬似データに基づいて、前記頻度データを更新する更新部と、
を備える、
バッテリの制御装置。
【請求項2】
前記擬似データ生成部は、
前記第1のセル温度と前記第2のセル温度との間のセル温度のデータを補間するセル温度補間部と、
前記第1の充電率と前記第2の充電率との間の充電率のデータを補間する充電率補間部と、
を有する、
請求項1に記載のバッテリの制御装置。
【請求項3】
前記セル温度補間部は、前記セル温度のデータを一定時間ごとに線形補間する、
請求項2に記載のバッテリの制御装置。
【請求項4】
前記セル温度補間部は、前記セル温度のデータを、セル温度を検出するための温度センサの感度に応じて線形補間する、
請求項2に記載のバッテリの制御装置。
【請求項5】
前記充電率補間部は、前記充電率のデータを一定時間ごとに線形補間する、
請求項2から4のいずれか一項に記載のバッテリの制御装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載のバッテリの制御装置を備える移動体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、バッテリの制御装置および移動体に関する。
【背景技術】
【0002】
電動車両(Electric Vehicle:EV)には、車両走行用のモータに電力を供給するためのバッテリが搭載されている。EVのバッテリは、充放電が繰り返されることにより劣化する。また、バッテリの劣化は、バッテリの温度等に基づいて推定することが可能である。
【0003】
例えば、特許文献1には、車両に搭載可能に構成された電池システムであって、二次電池と、二次電池の温度である電池温度を検出するための検出装置と、電池温度と電池温度の検出時刻とを含む温度履歴データを用いて二次電池の劣化状態を推定する推定装置とを備え、推定装置は、車両以外の他車の温度履歴データを有する外部装置との通信を行なうように構成され、車両の温度履歴データに含まれる電池温度に異常値が生じた場合に、他車の温度履歴データのうち当該異常発生期間における温度履歴データを外部装置から取得し、取得した温度履歴データを用いて前記異常値を修正し、異常値の修正は、車両の温度履歴データに生じた電池温度の欠損値の補完を含むことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-120785号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、EVのバッテリの劣化態様には、EVの電源がオンであるときに劣化する充放電劣化と、電源がオフであるときに劣化する保存劣化とがある。バッテリの劣化状態は、バッテリを劣化させる劣化要素に関する頻度データに基づいて判定される。
【0006】
なお、頻度データは、EVの電源がオンであって、充放電劣化が生じているとき取得することができるが、EVの電源がオフであって、保存劣化が生じているとき取得することができない。
【0007】
保存劣化が生じているにも拘わらず、頻度データを取得することができないため、頻度データの精度が低下し、頻度データに基づいてバッテリの劣化状態を正確に判定することができないという問題がある。
【0008】
本開示の目的は、頻度データの精度を上げることが可能なバッテリの制御装置および移動体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するため、本開示におけるバッテリの制御装置は、
電気で移動する移動体の電源がオン状態であるときのバッテリのセル温度および前記バッテリの充電率のそれぞれの頻度データを取得する取得部と、
取得された前記頻度データのうちの、移動体の電源がオフになるときのバッテリの第1のセル温度及びバッテリの第1の充電率、並びに、移動体の電源がオンになるときのバッテリの第2のセル温度及びバッテリの第2の充電率のそれぞれのデータに基づいて、前記第1のセル温度と前記第2のセル温度の間、及び、前記第1の充電率と前記第2の充電率との間のそれぞれの擬似データを生成する擬似データ生成部と、
生成された前記擬似データに基づいて、前記頻度データを更新する更新部と、
を備える。
【0010】
本開示における移動体は、上記バッテリの制御装置を備える。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、頻度データの精度を上げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本開示の実施の形態におけるバッテリの制御装置の機能構成を模式的に示すブロック図である。
図2図2は、バッテリの温度区分に対応する頻度データの一例を示す図である。
図3図3は、バッテリの温度区分に対応する劣化マップの一例を示す図である。
図4図4は、頻度データを更新する場合の処理の一例を示すフローチャートである。
図5A図5Aは、SOCと時間との関係の一例を示す関係図である。
図5B図5Bは、セル温度およびSOCのそれぞれと時間との関係の一例を示す関係図である。
図6図6は、頻度データを更新する場合の処理の他の例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
本開示におけるバッテリの制御装置は、電気で移動する移動体に適用されるが、本実施の形態では、バッテリの制御装置が移動体としての電気車両(EV)に適用される場合について説明する。図1は、本開示の実施の形態におけるバッテリの制御装置の機能構成を模式的に示すブロック図である。本実施の形態では、バッテリ(不図示)および制御装置1は電動車両に搭載されている。制御装置1は、バッテリの電圧、電流、温度および残量などのバッテリの状態を監視するとともに、バッテリを安全かつ有効に使うための制御を行う。なお、制御装置1の一部および全部は、電動車両に搭載されるものに限定されない。
【0014】
制御装置1は、記憶部2と制御部3とを備える。図1において、矢印は主なデータの流れを示しており、図1に示していないデータの流れがあってもよい。図1において、各機能ブロックはハードウェア(装置)単位の構成ではなく、機能単位の構成を示している。そのため、図1に示す機能ブロックは単一の装置内に実装されてもよく、あるいは複数の装置内に分かれて実装されてもよい。機能ブロック間のデータの授受は、データバス、コントローラエリアネットワーク(CANバス)等、任意の手段を介して行われてもよい。
【0015】
記憶部2は、制御装置1を実現するコンピュータのBIOS(Basic Input Output System)等を格納するROM(Read Only Memory)や制御装置1の作業領域となるRAM(Random Access Memory)、OS(Operating System)やアプリケーションプログラム、当該アプリケーションプログラムの実行時に参照される種々の情報を格納するHDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)等の記憶装置である。
【0016】
制御部3は、制御装置1のCPU(Central Processing Unit)やGPU(Graphics Processing Unit)等のプロセッサであり、記憶部2に記憶されたプログラムを実行することによって取得部30、擬似データ生成部31及び更新部34として機能する。
【0017】
なお、図1は、制御装置1が単一の装置で構成されている場合の例を示している。しかしながら、制御装置1は、例えば複数のプロセッサやメモリ等の計算リソースによって実現されてもよい。この場合、制御部3を構成する各部は、複数の異なるプロセッサの中の少なくともいずれかのプロセッサがプログラムを実行することによって実現される。
【0018】
車両制御部5は、車両走行中に常に変化する車両の状態を判断し、最適な状態を維持するために制御装置1を含む各コンポーネントを制御する。
【0019】
制御装置1は、充電器(不図示)からバッテリ(不図示)に電力を充電する制御を実行するとともに、バッテリから車両走行用のモータに電力を供給する制御を実行する。バッテリは、充放電が繰り返されることにより劣化し、バッテリの最大電力量が低下する。バッテリは、バッテリを充電するときの消費電力、バッテリの充電率(State Of Charge:SOC)、および、セル温度(バッテリの温度)などの複数の劣化要素のそれぞれの頻度に応じて劣化する。複数の劣化要素のそれぞれは、センサ(不図示)により検出される。センサの検出結果は、所定の時間間隔で監視部4に送信される。
【0020】
(取得部30)
取得部30は、複数の劣化要素のそれぞれの頻度に関する頻度データを監視部4から取得する。取得部30により取得された頻度データは記憶部2に記憶される。バッテリの低温から高温までの温度範囲は複数の温度領域(温度区分)に区分けされる。頻度データは、バッテリの温度区分(C1,C2,…,Ci,…,Cz)毎に記憶部2に記憶される。なお、低温および高温のそれぞれの温度、並びに、温度区分の数は、実験やシミュレーションにより設定される。
【0021】
図2は、バッテリの温度区分Ciに対応する頻度データの一例を示す図である。頻度データは、縦横それぞれの方向に複数個のマトリクス状に配列されている。横方向には、SOC(%)の区分が小から大に向かってA1,A2,…,Aj,…,Amの順番に並べられている。縦方向には、電力量(kWh)の区分が小から大に向かってB1,B2,…,Bk,…,Bnの順番に並べられている。例えば、頻度データd11は、温度区分Ci、SOCの区分A1、電力量の区分B1のそれぞれに対応する頻度データである。また、頻度データdjkは、温度区分Ci、SOCの区分Aj、電力量の区分Bkのそれぞれに対応する頻度データである。また、頻度データdmnは、温度区分Ci、SOCの区分Am、電力量の区分Bnのそれぞれに対応する頻度データである。
【0022】
劣化要素のそれぞれに対応する頻度データ(d11,…,djk,…,dmn)は、バッテリを充電するときに劣化要素のそれぞれに対応する時間によって示すことができる。なお、頻度データは、バッテリを充電するときに劣化要素のそれぞれに対応する回数で示してもよい。
【0023】
以下の説明で、バッテリの最大電力量の減少量を頻度データ(時間)で除算した数値を「劣化速度」という。
【0024】
図3は、バッテリの温度区分Ciに対応する劣化マップの一例を示す図である。劣化マップは、劣化速度が縦横それぞれの方向に複数個のマトリクス状に配列されたものである。横方向には、上記の頻度データと同様に、SOC(%)の区分が小から大に向かってA1,A2,…,Aj,…,Amの順番に並べられている。縦方向には、上記の頻度データと同様に、電力量(kWh)の区分が小から大に向かってB1,B2,…,Bk,…,Bnの順番に並べられている。例えば、劣化速度V11は、温度区分Ci、SOCの区分A1、電力量の区分B1のそれぞれに対応する劣化速度である。また、劣化速度Vjkは、温度区分Ci、SOCの区分Aj、電力量の区分Bkのそれぞれに対応する劣化速度である。また、劣化速度Vmnは、温度区分Ci、SOCの区分Am、電力量の区分Bnのそれぞれに対応する劣化速度である。劣化マップは、記憶部2に記憶されている。
【0025】
次に、バッテリの劣化度の予測を簡単に説明する。例えば、劣化度はSOH(State Of Health)で表わされる。バッテリの劣化度は、頻度データおよび劣化マップに基づいて予測することが可能である。先ず、所定の温度区分における劣化マップにおける劣化速度に、当該所定の温度区分における頻度データ(時間)を乗算する。乗算値が、所定の温度区分における減少量となる。次に、温度区分ごとのバッテリの最大電力量の減少量を合計する。合計した減少量を初期の最大電力量から減算した値が劣化時の最大電力量となる。次に、劣化時の最大電力量を初期(出荷時)の最大電力量により除算した数値がSOH(劣化度)となる。なお、初期の最大電力量は、記憶部2に記憶されている。
【0026】
ところで、バッテリの電源がオフ状態であるとき、バッテリの保存劣化が進行するにも拘わらず、頻度データを取得することができない。これにより、不十分な頻度データに基づいてバッテリの劣化状態を判定することとなるため、バッテリの劣化状態を正しく判定することが困難となる。バッテリの劣化状態を正しく判定するためには、バッテリの電源がオフ状態であるときの擬似データを生成し、生成した擬似データで頻度データを更新する必要がある。
【0027】
本実施の形態では、制御装置1は、電源オフ時から電源オン時までの間のセル温度および充電率(SOC)のそれぞれの擬似データを生成する擬似データ生成部31と、生成された擬似データに基づいて頻度データを更新する更新部34とを備える。頻度データを更新することで、頻度データの精度を上げることが可能となる。制御部3には、車両制御部5から電源オン信号および電源オフ信号が送信される。
【0028】
次に、頻度データを更新する処理について、図4を参照して説明する。図4は、頻度データの更新処理の一例を示すフローチャートである。本フローは、例えば電動車両の出荷時に開始される。なお、本フローに示す処理は、制御装置1の制御部3の各機能が実行するものであるが、ここではCPUが実行するものとして説明する。
【0029】
先ず、ステップS100において、CPUは、電動車両の電源オフ直前の時刻、セル温度、SOCを取得する。
【0030】
次に、ステップS110において、CPUは、電動車両の電源オン直後の時刻、セル温度、SOCを取得する。
【0031】
次に、ステップS120において、CPUは、取得された車両の電源オフ直前の時刻、セル温度およびSOC、並びに、電動車両の電源オン直後の時刻、セル温度およびSOC基づいて、擬似データを生成する。
【0032】
次に、ステップS130において、CPUは、擬似データに基づいて、頻度データを更新する。その後、本フローは終了する。
【0033】
次に、擬似データの一例について、図5Aおよび図5Bを参照して説明する。図5Aは、SOCと時間との関係の一例を示す関係図である。図5Bは、セル温度およびSOCのそれぞれと時間との関係の一例を示す関係図である。
【0034】
図5Aおよび図5Bの横軸に時間を示し、縦軸にSOCを示す。図5Aおよび図5Bに示すように、電源オフ(充電終了)時t1から電源オン時t2までの間にSOC(%)はr1(本開示の「第1の充電率」に対応する)からr2(本開示の「第2の充電率」に対応する)に低下する。つまり、バッテリに保存劣化が生じている。
【0035】
図5Bの横軸に時間を示し、縦軸にセル温度を示す。図5Bに示すように、電源オフ(充電終了)時t1から電源オン時t2までの間に、セル温度(℃)は、T1(本開示の「第1のセル温度」に対応する)からT2(本開示の「第2のセル温度」に対応する)に低下する。
【0036】
擬似データ生成部31は、セル温度補間部32と充電率補間部33とを備える。セル温度補間部32は、セル温度(℃)のT1とT2との2点間を結ぶ線をセル温度の推定線とし、セル温度の推定線に基づいてセル温度を線形補間する。セル温度補間部32は、セル温度のデータを一定時間(1秒間)ごとに線形補間する。なお、セル温度補間部32は、セル温度のデータを、セル温度の検出に用いられる温度センサの感度に応じて補間してもよい。例えば、温度センサの感度(分解能)が0.1℃であれば、セル温度のデータは、0.1℃毎に補間される。図5Bに、セル温度の推定線LTに基づいて線形補間されたデータの一部を、白抜きの円形状のマークで示す。
【0037】
充電率補間部33は、SOC(%)のr1とr2との2点間を結ぶ線をSOCの推定線とし、SOCの推定線に基づいてSOCのデータを線形補間する。充電率補間部33は、SOCのデータを一定時間(1秒間)ごとに線形補間する。図5Bに、SOCの推定線Lrに基づいて線形補間されたデータの一部を、ハッチングを付した円形状のマークで示す。
【0038】
次に、頻度データの更新処理の他の例について、図6を参照して説明する。図6は、頻度データの更新処理の他の例を示すフローチャートである。本フローは、例えば、電動車両の出荷時に開始される。なお、本フローに示す処理は、制御装置1の制御部3の各機能が実行するものであるが、ここではCPUが実行するものとして説明する。なお、ステップS200およびステップS210のそれぞれは、前述するステップS100およびステップS110のそれぞれと同様であるため、それらの説明を省略し、ステップS220から説明する。
【0039】
ステップS220において、CPUは、セル温度の推定線とし、セル温度の推定線に基づいて、
CPUは、セル温度(℃)のT1とT2との2点間を結ぶ線をセル温度の推定線とし、セル温度の推定線に基づいてセル温度のデータを線形補間する。
【0040】
次に、ステップS230において、CPUは、SOC(%)のr1とr2との2点間を結ぶ線をSOCの推定線とし、SOCの推定線に基づいてSOCのデータを線形補間する。
【0041】
次に、ステップS240において、CPUは、線形補間されたセル温度およびSOCのそれぞれのデータに基づいて、頻度データを更新する。
【0042】
上記実施の形態におけるバッテリの制御装置1は、電動車両の電源がオン状態であるときのバッテリのセル温度および前記バッテリの充電率のそれぞれの頻度データを取得する取得部30と、取得された頻度データのうちの、電動車両の電源がオフになるときのバッテリの第1のセル温度及びバッテリの第1の充電率、並びに、電動車両の電源がオンになるときのバッテリの第2のセル温度及びバッテリの第2の充電率のそれぞれのデータに基づいて、第1のセル温度と第2のセル温度の間、及び、第1の充電率と第2の充電率との間のそれぞれの擬似データを生成する擬似データ生成部31と、生成された擬似データに基づいて、頻度データを更新する更新部34と、を備える。
【0043】
上記構成によれば、擬似データ生成部により生成された擬似データに基づいて、頻度データが更新されるため、頻度データの精度を上げることが可能となる。
【0044】
また、上記実施の形態におけるバッテリの制御装置1では、擬似データ生成部31は、第1のセル温度と第2のセル温度との間のセル温度のデータを補間するセル温度補間部32と、第1の充電率と第2の充電率との間の充電率のデータを補間する充電率補間部33と、を有する。これにより、セル温度および充電率のそれぞれのデータを補間する間隔を調整することで、頻度データの精度をさらに上げることが可能となる。
【0045】
また、上記実施の形態におけるバッテリの制御装置1では、セル温度補間部32は、セル温度のデータを一定時間ごとに線形補間してもよい。これにより、線形補間という簡単な方法で、頻度データの精度を上げることが可能となる。
【0046】
また、上記実施の形態におけるバッテリの制御装置1では、セル温度補間部32は、セル温度のデータを、セル温度を検出するための温度センサの感度に応じて線形補間してもよい。これにより不必要なデータが補間されないため、線形補間において無駄な計算を省くことが可能となる。
【0047】
なお、上記実施の形態では、充電率補間部33は、充電率のデータを一定時間ごとに線形補間してもよい。これにより、線形補間という簡単な方法で、頻度データの精度を上げることが可能となる。
【0048】
また、上記実施の形態では、バッテリの制御装置1を電動車両に適用したものを示したが、本開示に係るバッテリの制御装置は、これに限らず、電気で移動する移動体、例えば、船舶、建機、飛行機等にも適用することが可能である。この場合、移動体制御部は、移動体運行中に常に変化する移動体の状態を判断し、最適な状態を維持するために制御装置1を含む各コンポーネントを制御する。
【0049】
その他、上記実施の形態は、何れも本開示の実施をするにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これらによって本開示の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。
【0050】
すなわち、本開示はその要旨、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本開示は、頻度データの精度を上げることが要求されるバッテリの制御装置が搭載された電気で移動する移動体に好適に利用される。
【符号の説明】
【0052】
1 制御装置
2 記憶部
3 制御部
4 監視部
5 車両制御部
30 取得部
31 擬似データ生成部
32 セル温度補間部
33 充電率補間部
34 更新部
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6
【手続補正書】
【提出日】2023-09-06
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気で移動する移動体の電源がオン状態であるときのバッテリのセル温度の温度区分ごとの頻度データおよび前記バッテリの充電率の充電率区分ごとの頻度データを取得する取得部と、
取得された前記頻度データのうちの、移動体の電源がオフになるときのバッテリの第1のセル温度及びバッテリの第1の充電率、並びに、移動体の電源がオンになるときのバッテリの第2のセル温度及びバッテリの第2の充電率のそれぞれのデータに基づいて、前記第1のセル温度と前記第2のセル温度の間、及び、前記第1の充電率と前記第2の充電率との間のそれぞれの擬似データを生成する擬似データ生成部と、
生成された前記擬似データに基づいて、前記頻度データを更新する更新部と、
を備え、
前記擬似データ生成部は、
前記第1のセル温度と前記第2のセル温度との間のセル温度のデータを時間に対して補間するセル温度補間部と、
前記第1の充電率と前記第2の充電率との間の充電率のデータを時間に対して補間する充電率補間部と、
を有し、
前記セル温度補間部は、前記セル温度のデータを、セル温度を検出するための温度センサの感度により定める温度の幅ごとに線形補間する、
バッテリの制御装置。
【請求項2】
前記セル温度補間部は、前記セル温度のデータを一定時間ごとに線形補間する、
請求項に記載のバッテリの制御装置。
【請求項3】
前記充電率補間部は、前記充電率のデータを一定時間ごとに線形補間する、
請求項に記載のバッテリの制御装置。
【請求項4】
請求項1からのいずれか一項に記載のバッテリの制御装置を備える移動体。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0009
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0009】
上記の目的を達成するため、本開示におけるバッテリの制御装置は、
電気で移動する移動体の電源がオン状態であるときのバッテリのセル温度の温度区分ごとの頻度データおよび前記バッテリの充電率の充電率区分ごとの頻度データを取得する取得部と、
取得された前記頻度データのうちの、移動体の電源がオフになるときのバッテリの第1のセル温度及びバッテリの第1の充電率、並びに、移動体の電源がオンになるときのバッテリの第2のセル温度及びバッテリの第2の充電率のそれぞれのデータに基づいて、前記第1のセル温度と前記第2のセル温度の間、及び、前記第1の充電率と前記第2の充電率との間のそれぞれの擬似データを生成する擬似データ生成部と、
生成された前記擬似データに基づいて、前記頻度データを更新する更新部と、
を備え、
前記擬似データ生成部は、
前記第1のセル温度と前記第2のセル温度との間のセル温度のデータを時間に対して補間するセル温度補間部と、
前記第1の充電率と前記第2の充電率との間の充電率のデータを時間に対して補間する充電率補間部と、
を有し、
前記セル温度補間部は、前記セル温度のデータを、セル温度を検出するための温度センサの感度により定める温度の幅ごとに線形補間する。