IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ プライムアースEVエナジー株式会社の特許一覧 ▶ トヨタ自動車株式会社の特許一覧 ▶ プライムプラネットエナジー&ソリューションズ株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-リベットおよびリベットを用いた電池 図1
  • 特開-リベットおよびリベットを用いた電池 図2
  • 特開-リベットおよびリベットを用いた電池 図3
  • 特開-リベットおよびリベットを用いた電池 図4
  • 特開-リベットおよびリベットを用いた電池 図5
  • 特開-リベットおよびリベットを用いた電池 図6
  • 特開-リベットおよびリベットを用いた電池 図7
  • 特開-リベットおよびリベットを用いた電池 図8
  • 特開-リベットおよびリベットを用いた電池 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024007719
(43)【公開日】2024-01-19
(54)【発明の名称】リベットおよびリベットを用いた電池
(51)【国際特許分類】
   F16B 19/08 20060101AFI20240112BHJP
   H01M 50/567 20210101ALI20240112BHJP
   H01M 50/103 20210101ALI20240112BHJP
   H01M 50/533 20210101ALI20240112BHJP
   H01M 50/176 20210101ALI20240112BHJP
   H01M 50/552 20210101ALI20240112BHJP
【FI】
F16B19/08 A
H01M50/567
H01M50/103
H01M50/533
H01M50/176
H01M50/552
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022108979
(22)【出願日】2022-07-06
(71)【出願人】
【識別番号】399107063
【氏名又は名称】プライムアースEVエナジー株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】520184767
【氏名又は名称】プライムプラネットエナジー&ソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】小倉 正也
(72)【発明者】
【氏名】谷本 晃一
【テーマコード(参考)】
3J036
5H011
5H043
【Fターム(参考)】
3J036AA04
3J036BA02
3J036EA07
5H011AA09
5H011EE02
5H011FF02
5H043AA19
5H043CA04
5H043DA20
5H043HA08D
5H043HA08E
5H043JA19D
5H043JA19E
5H043KA01D
5H043KA01E
5H043LA03D
5H043LA03E
(57)【要約】
【課題】カシメ加工時にバリを発生しにくいリベット、および、そのリベットを用いた電池を提供すること。
【解決手段】本開示技術に係るリベット22は、柱状部23と、柱状部23の一方の端部に設けられ柱状部23より大径である鍔部14とを有し、柱状部24における鍔部14と反対側の端部を含む少なくとも一部の範囲が管状のスリーブ部24とされており、スリーブ部24のうち鍔部14と反対側の端部を含む先端区間26内の結晶粒の粒径が、スリーブ部24のうち先端区間26よりも鍔部14寄りに位置する中間区間27内の結晶粒の粒径より小さいものである。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
柱状部と、前記柱状部の一方の端部に設けられ前記柱状部より大径である鍔部とを有し、前記柱状部における前記鍔部と反対側の端部を含む少なくとも一部の範囲が管状のスリーブ部とされているリベットであって、
前記スリーブ部のうち前記反対側の端部を含む先端区間内の結晶粒の粒径が、前記スリーブ部のうち前記先端区間よりも前記鍔部寄りに位置する中間区間内の結晶粒の粒径より小さいリベット。
【請求項2】
請求項1に記載のリベットであって、
前記スリーブ部は、内壁面が外壁面に沿ったストレート壁面であるストレートスリーブ部であるリベット。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のリベットであって、
前記先端区間内の結晶粒の粒径が前記柱状部のうち前記スリーブ部以外の部分である中実部の結晶粒の粒径より小さく、
前記中間区間内の結晶粒の粒径が前記中実部の結晶粒の粒径より大きいリベット。
【請求項4】
外装体と、前記外装体の内部に収納された発電要素と、前記外装体の内部に配置され一端が前記発電要素に接続された集電端子と、前記外装体を貫通して設けられ前記集電端子の他端を前記外装体の内面に固定するリベットとを有する電池であって、
前記リベットは、
前記外装体を貫通する柱状部と、前記柱状部の一方の端部に設けられ前記柱状部より大径であり前記外装体の外面側と内面側のうちいずれか一方の側に位置する鍔部と、前記外装体の外面側と内面側のうち他方の側に位置し前記柱状部より大径の傘状部と、前記柱状部における前記鍔部と反対側の端部と前記傘状部とを繋いでおり湾曲形状である湾曲部とを有するとともに、
前記傘状部の結晶粒の粒径が、前記湾曲部の結晶粒の粒径より小さいものであり、
前記傘状部と前記鍔部との間に前記外装体および前記集電端子が挟み付けられているリベットを用いた電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示技術は、リベットおよびリベットを用いた電池に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、電池の端子の部分にリベットを用いることが行われている。例えば特許文献1の電池では、リベットを、その円柱状のリベット部が電池のケースを貫通するように配置している。そのリベット部をカシメ加工して径方向に押し広げることでその場所に固定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-28888号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記した従来の技術には、次のような問題点があった。リベット部のカシメ加工時には、加工対象箇所に加工ツールを押し当てる。そのとき加工対象箇所に皺が生じ、そこからバリが発生する可能性がある。バリが電池内に侵入すると微短の原因となる。このため、バリの発生を防ぐ対策が必要となる。対策としては、加工ツールにコーティングを施すこと、加工ツールの交換頻度を上げること、発生したバリを除去する工程を設けること、等が考えられる。しかし、加工ツールの使用効率がよくない、あるいは工程が複雑である、といったデメリットがあった。
【0005】
本開示技術は、前記した従来の技術が有する問題点を解決するためになされたものである。すなわちその課題とするところは、カシメ加工時にバリを発生しにくいリベットを提供することにある。また、そのリベットを用いた電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示技術の一態様におけるリベットは、柱状部と、柱状部の一方の端部に設けられ柱状部より大径である鍔部とを有し、柱状部における鍔部と反対側の端部を含む少なくとも一部の範囲が管状のスリーブ部とされているリベットであって、スリーブ部のうち鍔部と反対側の端部を含む先端区間内の結晶粒の粒径が、スリーブ部のうち先端区間よりも鍔部寄りに位置する中間区間内の結晶粒の粒径より小さいものである。
【0007】
上記態様におけるリベットでは、スリーブ部の先端区間では、硬度が高く塑性変形しても表面に凹凸が生じにくいという特性を有している。その一方で中間区間では、硬度が低く容易に塑性変形するという特性を有している。このため、スリーブ部をカシメ加工する際に、加工の負担が小さく、かつ、先端区間からバリの発生が少ない。
【0008】
上記態様に係るリベットではさらに、スリーブ部は、内壁面が外壁面に沿ったストレート壁面であるストレートスリーブ部であることが望ましい。その方がカシメ加工が容易だからである。
【0009】
上記のいずれかの態様に係るリベットではまた、先端区間内の結晶粒の粒径が柱状部のうちスリーブ部以外の部分である中実部の結晶粒の粒径より小さく、中間区間内の結晶粒の粒径が中実部の結晶粒の粒径より大きいことがより好ましい。このようになっていると、中間区間がさらに塑性変形しやすく、加工の負担がより小さい。
【0010】
本開示技術の別の一態様における電池は、外装体と、外装体の内部に収納された発電要素と、外装体の内部に配置され一端が発電要素に接続された集電端子と、外装体を貫通して設けられ集電端子の他端を外装体の内面に固定するリベットとを有する電池であって、リベットは、外装体を貫通する柱状部と、柱状部の一方の端部に設けられ柱状部より大径であり外装体の外面側と内面側のうちいずれか一方の側に位置する鍔部と、外装体の外面側と内面側のうち他方の側に位置し柱状部より大径の傘状部と、柱状部における鍔部と反対側の端部と傘状部とを繋いでおり湾曲形状である湾曲部とを有するとともに、傘状部の結晶粒の粒径が、湾曲部の結晶粒の粒径より小さいものであり、傘状部と鍔部との間に外装体および集電端子が挟み付けられているリベットを用いたものである。
【0011】
上記態様における電池は、集電端子の他端を外装体の内面に固定するリベットとして、前述の態様のリベットを用いたものである。この電池では、リベットの取り付け加工時に加工負担が小さく、また、リベットからバリがあまり発生していない。このため、電池内にバリが侵入している可能性が低い。
【発明の効果】
【0012】
本開示技術によれば、カシメ加工時にバリを発生しにくいリベット、および、そのリベットを用いた電池が提供されている。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施の形態に係る電池の構成を示す斜視図である。
図2図1の電池を一部切開して内部の様子を示す正面図である。
図3図1の電池における外部端子の箇所の構造を示す断面図である。
図4】実施の形態に係るリベットの形状を示す断面図である。
図5】リベットのカシメ加工を行う直前の段階での状況を示す断面図である。
図6】ポンチとスリーブ部との当たり箇所付近を拡大して示す断面図(その1)である。
図7】ポンチとスリーブ部との当たり箇所付近を拡大して示す断面図(その2)である。
図8】スリーブ部の先端区間の結晶組織を示す断面写真である。
図9】スリーブ部の中間区間の結晶組織を示す断面写真である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本開示技術を具体化した実施の形態について、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。本形態は、図1に示す電池1として本開示技術を具体化したものである。図1の電池1は、外装ケース2に発電要素3を内蔵してなるものである。発電要素3は、正負の電極板を積層したものである。
【0015】
外装ケース2は、箱体4と蓋体5とにより構成されている。発電要素3は箱体4に収納されている。蓋体5には、外部端子6、7と、封口キャップ8とが設けられている。外部端子6、7はそれぞれ、発電要素3の正負両極性の電極板の一方と外装ケース2内で接続されているものである。封口キャップ8は、蓋体5に設けられている注液口を塞いでいるキャップである。電池1の内部には図2に示すように、集電端子9、集電端子11が設けられている。集電端子9は発電要素3の負極板10と接続されており、集電端子11は正極板12と接続されている。集電端子9は外部端子6と負極板10とを導通させる部材であり、集電端子11は外部端子7と正極板12とを導通させる部材である。
【0016】
電池1における本開示技術としての特徴的部位は、外部端子6の取付構造にある。外部端子6は、リベット20により電池1に取り付けられている。図3に、リベット20の箇所の断面構造を示す。図3中のリベット20は、柱状部13と、鍔部14と、傘状部15と、湾曲部16とを有している。図3中にはこの他、集電端子9の一部と、蓋体5の一部とが見えている。この部位にはさらに、外部プレート21、絶縁部材17、絶縁部材18が配置されている。外部プレート21は、外部端子6と一体に繋がっている平板状の部材である。絶縁部材17は、集電端子9を蓋体5から絶縁するための部材である。絶縁部材18は、外部端子6を蓋体5から絶縁するための部材である。
【0017】
蓋体5には、リベット20を取り付けるための孔19が形成されている。集電端子9、絶縁部材17、絶縁部材18、外部プレート21にも、孔19と対応する位置に孔が形成されている。蓋体5、集電端子9、絶縁部材17、絶縁部材18、外部プレート21のいずれも、図3中の左の部分と右の部分とは実際には繋がっている。図3において、蓋体5より上側が電池1における外装ケース2の外側に相当し、蓋体5より下側が外装ケース2の内側に相当する。
【0018】
リベット20における柱状部13は、蓋体5の孔19の中に位置し蓋体5を貫通する部位である。鍔部14は、柱状部13の一方の端部に設けられ、柱状部13より大径であり、蓋体5の外面側に位置する部位である。傘状部15は、蓋体5の内面側に位置し柱状部13より大径である部位である。鍔部14および傘状部15は孔19よりも大径である。湾曲部16は、柱状部13における鍔部14と反対側の端部と傘状部15と繋いでいる部位であり、湾曲形状をなしている部位である。
【0019】
図3に示される箇所では、外部プレート21、蓋体5および集電端子9が、傘状部15と鍔部14との間に挟み付けられている。傘状部15と集電端子9とは密着している。鍔部14と外部プレート21とは密着している。これにより外部端子6は蓋体5における孔19の位置に固定されている。ただし傘状部15と鍔部14との間には、外部プレート21、蓋体5および集電端子9ばかりでなく絶縁部材17、絶縁部材18も挟み込まれている。このため、外部プレート21および集電端子9は蓋体5から絶縁されている。外部端子6と集電端子9とは、傘状部15と集電端子9との密着および鍔部14と外部プレート21との密着により導通している。集電端子9は前述のように負極板10と接続されており、外部端子6と負極板10とは導通している。
【0020】
図3に示したリベット20の、電池1に取り付けられるより前の段階での状態を説明する。取り付け前の時点でのリベットを以下、リベット22と称する。リベット22の断面形状を図4に示す。リベット22は、柱状部23と、鍔部14とを有している。鍔部14は、柱状部23の一方の端部に設けられており、柱状部23より大径である。鍔部14は、取り付け後のリベット20の鍔部14にそのまま相当する。柱状部23のうち、鍔部14と反対側の端部を含む一部の範囲は、管状のスリーブ部24である。柱状部23のうちスリーブ部24以外の部分は、円柱状の中実部25である。中実部25は、取り付け後のリベット20の柱状部13に相当する。スリーブ部24のうち先端付近は、取り付け後のリベット20の傘状部15に相当する。スリーブ部24のうち中程の部位が、取り付け後のリベット20の湾曲部16に相当する。
【0021】
図4のリベット22におけるスリーブ部24は、内壁面31を有している。本形態における内壁面31は、外壁面に沿ったストレート壁面である。つまり、スリーブ部24の肉厚はごく先端付近および根元付近を除いて一定である。一般的なスリーブ部付きのリベットには、スリーブ部の肉厚が根元側ほど厚くなっているV字形のものもあるが、本形態ではストレート形のものを用いている。このためV字形の場合と比較して、後述するカシメ加工が容易である。
【0022】
本形態のリベット22は、上記のような外形上の特徴の他に、構成金属の結晶粒サイズに関する特徴をも有している。以下この点について説明する。図4のリベット22におけるスリーブ部24では、その先端区間26と中間区間27とで、結晶粒径について差が設けられている。先端区間26とは、スリーブ部24のうち鍔部14と反対側の端部を含む区間である。先端区間26は、前述の傘状部15となる部分である。中間区間27とは、スリーブ部24のうち先端区間26よりも鍔部14寄りに位置する区間である。中間区間27には、前述の湾曲部16となる部分が含まれる。本形態のリベット22では、先端区間26内の結晶粒の粒径が、中間区間27内の結晶粒の粒径よりも小さい。
【0023】
このことにより、本形態におけるスリーブ部24では、先端区間26と中間区間27とで材質特性に違いがある。より詳細に言えば、先端区間26では中間区間27よりも、より硬度が高く、また塑性変形する際に表面に凹凸が生じにくい。一方、中間区間27では先端区間26よりも、硬度が低く塑性変形させやすい。このため本形態のリベット22では、電池1への取り付け加工時にバリがあまり発生しないという利点を有する。この説明のため、リベット22の電池1への取り付け加工について説明する。取り付け加工時には、リベット22のスリーブ部24にカシメ加工を施して塑性変形させ、図3に示した形状のリベット20とする。この加工は次の手順で行われる。
【0024】
まず、加工前のリベット22に対して、関係する他の部材をセットする。関係する他の部材とは、外部プレート21、絶縁部材18、蓋体5、絶縁部材17、集電端子9である。これらを、鍔部14側からこの順になるように重ねて、それらの孔に対して柱状部23を差し込む。このようにセットした状況を図5に示す。図5においては実際のカシメ作業時の状況に合わせて、図3図4とは上下を逆にして描いている。図5には、カシメの加工ツールであるポンチ28も描かれている。ポンチ28は、円錐面状の加工面29を有している。加工時には、ポンチ28の先端をスリーブ部24の先端の穴に差し込み、ポンチ28をさらに押し下げる。これにより、加工面29でスリーブ部24を拡径方向に押し広げていく。
【0025】
図6および図7に、加工面29とスリーブ部24のトップとの当たり箇所付近を、片側のみ拡大して示す。図6は加工面29とスリーブ部24のトップとが当たる直前の状況を示しており、図7はその後少しポンチ28を下げた時点での状況を示している。図6および図7においても、図5と同様に、図3図4とは上下を逆にしている。図6図7とを対比すると、図7では図6よりも、ポンチ28の位置が下がっている(矢印P)。図7ではその分、加工面29がスリーブ部24に対して迫っており、スリーブ部24はそれにより外方向に押し出されている(矢印E)。つまり図7の状態では、スリーブ部24の塑性変形がすでに始まっている。
【0026】
図7では、スリーブ部24の上端の内側肩付近の位置に凸状部30が生じている。この位置は、加工面29による加工を受けている位置もしくはそのごく近隣の位置である。凸状部30のような凹凸形状は、もともとのスリーブ部24の内部の結晶粒組織に起因して、スリーブ部24が塑性変形を受けることに伴い表面形状として顕在化してくるものである。したがって凸状部30の凹凸の程度は、スリーブ部24の加工対象箇所の結晶粒サイズに影響される。結晶粒の粒径が大きいと大きな凹凸の凸状部30ができ、粒径が小さいと凸状部30ができたとしてもその凹凸は小さい。
【0027】
スリーブ部24の中でも図6図7に現れている範囲は、前述の先端区間26の範囲内である。したがってそこの範囲内では結晶粒の粒径が小さく、このため凸状部30の凹凸は小さい。図7中では凸状部30が目立って見えるが、これは図7が細部を拡大して示す図だからであり、図7中の凸状部30は小さい部類に入るものである。図7はカシメ加工の途中の段階を示している。図7の状態からさらにカシメ加工が進行して図3に示した加工後の状態となる。スリーブ部24のうち図7中に見えている部分は傘状部15の一部となる。
【0028】
もし、先端区間26の範囲内の結晶粒サイズが大きいと、図7の時点で、図示したものよりさらに大きい凸状部30ができている。この大きな凸状部30は、カシメ加工の進行によりさらに成長して、肉眼でも認識できる皺寄りとなる可能性が高い。そのような場合、皺寄り形状の一部が剥離してバリとなり、電池内に侵入して不具合を起こすことが考えられる。先端区間26の範囲内の結晶粒サイズを小さくしている本形態では、そのようなおそれはほとんどない。
【0029】
また、本形態では、カシメ加工時のポンチ28の押し付け荷重が小さくて済むという利点もある。その理由の1つとして、前述のように中間区間27においては結晶粒サイズが大きく、湾曲部16となる箇所の塑性変形が容易であるということが挙げられる。また、前述のように加工時に発生する加工対象箇所の凹凸が小さいということも挙げられる。加工時の加工面29と加工対象箇所との間の摩擦が小さいからである。このようにポンチ28の押し付け荷重が小さいことも、バリの発生が抑制される要因となる。このため、カシメ加工後に、バリを除去するための工程を設けることが必須ではない。
【0030】
このことはまた、ポンチ28の長寿命化にも繋がる。このため、ポンチ28として、加工面29に超硬被膜をコーティングしたものを用いる必要がない。それでもポンチ28の交換頻度はさほど高いものとはならない。また、ポンチ28を押し付けるプレス装置の駆動負担も小さくて済む。
【0031】
本形態のスリーブ部24の先端区間26および中間区間27における結晶組織の撮影例を図8および図9に示す。これらは、該当箇所の断面の走査型電子顕微鏡による反射電子像である。これらを見ると、図8(先端区間26)の方が図9(中間区間27)よりも組織が細かく、結晶粒の粒径が小さいことが理解できる。材料組織の結晶粒サイズの評価方法については、断面写真に基づくものの他にも、X線回折のピーク幅に基づくもの等、様々なものがありどれを用いてもよい。ただし、両区間内の各領域について同一の評価方法を用いる必要がある。
【0032】
本形態のスリーブ部24における上記のような区間による結晶粒サイズの違いは、リベット22の成形後の熱処理によって実現できる。一般的に、リベット22を成形する際に、スリーブ部24は、中実部25と比較して、かなり強い塑性変形を受けている。このため成形後熱処理前の時点では、スリーブ部24の全体が、中実部25と比較して、かなり細かい結晶粒の組織により形成されている状態にある。
【0033】
この状態に対して熱処理を施すことにより、上記の結晶粒サイズの違いを実現する。具体的には、中間区間27のみが局所的に昇温し、先端区間26はあまり昇温しないような加熱を行う。例えば、中間区間27のみに対して局所的に赤外線を照射すればよい。このようにして、中間区間27のみを、結晶粒サイズの成長が起こる程度の温度にまで昇温させることにより、上記の結晶粒サイズの違いを実現することができる。加熱の方法自体は別の方法でもよい。
【0034】
ここで好ましくは、中間区間27の結晶粒の粒径が、中実部25の結晶粒の粒径よりも大きくなる程度まで熱処理を行うことが好ましい。このようなことは、熱処理時の中間区間27の温度の調整または高温での保持時間の調整によって実現できる。熱処理時の中間区間27の温度を高くするほど、または高温での保持時間を長くするほど、熱処理後における中間区間27の結晶粒の粒径を大きくすることができる。
【0035】
このようにした場合のリベット22では、構成金属の結晶粒サイズに関して、次の2つのことがいえる。第1に、先端区間26内の結晶粒の粒径が中実部25の結晶粒の粒径より小さい、ということである。第2に、中間区間27内の結晶粒の粒径が中実部25の結晶粒の粒径より大きい、ということである。このようにすると、中間区間27の塑性変形がさらに容易である。このため、カシメ加工時のポンチ28の押し付け荷重がさらに小さくて済み、バリの発生もさらに抑制される。
【0036】
カシメ加工時には上記のように、先端区間26、中間区間27ともに塑性変形を受ける。このため、カシメ加工後にはカシメ加工前と比較して、先端区間26、中間区間27とも、結晶粒サイズがやや小さくなっている可能性がある。それでも、先端区間26と中間区間27とでの結晶粒サイズの大小関係が逆転してしまうようなことはない。中間区間27と中実部25とでの結晶粒サイズの大小関係も逆転するまでには至らない。したがって、先端区間26、中間区間27、中実部25での上記の結晶粒サイズの大小関係は、カシメ加工後の図3中のリベット20においても、傘状部15、湾曲部16、柱状部13での結晶粒サイズの大小関係としてそのまま維持されている。
【0037】
以上詳細に説明したように本実施の形態によれば、電池1における外部端子6の取り付け箇所に設置されるリベット22について、スリーブ部24における先端区間26内の結晶粒の粒径が、中間区間27内の結晶粒の粒径より小さいこととしている。これにより、カシメ加工時に中間区間27が変形しやすく、かつ、先端区間26からバリが生じにくいようにしている。このようにして、加工時の負担が少なくバリによる電池1の不具合も生じにくいリベット22が実現されている。また、このリベット22を用いた電池1が実現されている。
【0038】
本実施の形態および実施例は単なる例示にすぎず、本開示技術を何ら限定するものではない。したがって本開示技術は当然に、その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変形が可能である。例えば、前記形態では、電池1における本開示技術の適用対象箇所として外部端子6(負端子)を示したが、外部端子7(正端子)に適用することもできるし、両方の端子に適用することもできる。一般的にはリベットの素材として、負端子用としては銅が、正端子用としてはアルミが用いられることが多い。その場合、アルミよりも硬度の高い銅を用いる負端子側の方が、本開示技術を適用する意義がより高い。電池1の電池種は問わない。
【0039】
前記形態では、スリーブ部24の形状はストレート形であることとしたが、これに限られるものではない。素材がアルミである場合には、V字形のスリーブ部を持つリベットを用い、そこに本開示技術を適用することも考えられる。図6に示したスリーブ部24の先端区間26の先端形状は、一例であり、他の形状であってもよい。図7に現れている凸状部30の形状も一例である。加工時に現れる凸状部30の形状は一個一個異なる。また、特に凸状部30と言えるような形状が現れないこともある。
【0040】
前記形態の図3で湾曲部16となっている位置は、図4でいえば、スリーブ部24のうち中実部25からやや離れた辺りの位置である。しかしこれに限らず、中実部25からもっと近い位置が湾曲部16となるものであってもよい。言い替えると、リベット22におけるスリーブ部24の穴の深さにはある程度の自由度がある。また、鍔部14の形状は任意である。また、リベット22と外部端子6とが一体であってもよい。また、鍔部14が電池1の外装ケース2の内側に位置し、外装ケース2の外側でスリーブ部24のカシメ加工を行う構成のものであってもよい。
【0041】
[予備請求項]
外装体と、前記外装体の内部に収納された発電要素と、前記外装体の内部に配置され一端が前記発電要素に接続された集電端子と、前記外装体を貫通して設けられ前記集電端子の他端を前記外装体の内面に固定するリベットとを有する電池であって、
前記リベットは、
前記外装体を貫通する柱状部と、前記柱状部の一方の端部に設けられ前記柱状部より大径であり前記外装体の外面側もしくは内面側に位置する鍔部とを有し、前記柱状部における前記鍔部と反対側の端部を含む少なくとも一部の範囲が管状のスリーブ部とされているとともに、
前記スリーブ部のうち前記反対側の端部を含む先端区間内の結晶粒の粒径が、前記スリーブ部のうち前記先端区間よりも前記鍔部寄りに位置する中間区間内の結晶粒の粒径より小さいものであり、
前記中間区域が湾曲して湾曲部とされており、
前記先端区間が傘状に伸開されて前記柱状部より大径の傘状部とされており、
前記傘状部と前記鍔部との間に前記外装体および前記集電端子が挟み付けられているリベットを用いた電池。
【符号の説明】
【0042】
1 電池 14 鍔部
2 外装ケース 15 傘状部
3 発電要素 16 湾曲部
4 箱体 20 リベット(加工後)
5 蓋体 22 リベット(加工前)
6 外部端子 23 柱状部
7 外部端子 24 スリーブ部
9 集電端子 26 先端区間
11 集電端子 27 中間区間
13 柱状部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9