(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024077192
(43)【公開日】2024-06-07
(54)【発明の名称】検出回路、放電回路、制御装置およびモータシステム
(51)【国際特許分類】
H02M 7/48 20070101AFI20240531BHJP
【FI】
H02M7/48 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022189111
(22)【出願日】2022-11-28
(71)【出願人】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109380
【弁理士】
【氏名又は名称】小西 恵
(74)【代理人】
【識別番号】100109036
【弁理士】
【氏名又は名称】永岡 重幸
(72)【発明者】
【氏名】藤本 岳
【テーマコード(参考)】
5H770
【Fターム(参考)】
5H770CA02
5H770DA03
5H770FA13
5H770HA03W
(57)【要約】
【課題】外部の電源に依存せずに残留電荷を検出する。
【解決手段】 検出回路の一態様は、負荷に電力を供給する直流電源と、電源電圧を平滑化する平滑化コンデンサとの間に設けられたダイオードと、上記ダイオードのアノード側と上記直流電源との間に組み込まれ、当該アノード側の電圧で作動して当該アノード側の電圧を検出する第1検出部と、上記ダイオードのカソード側と上記負荷との間に組み込まれ、当該カソード側の電圧で作動して当該カソード側の電圧を検出する第2検出部と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
負荷に電力を供給する直流電源と、電源電圧を平滑化する平滑化コンデンサとの間に設けられたダイオードと、
前記ダイオードのアノード側の電圧で作動して当該アノード側の電圧を検出する第1検出部と、
前記ダイオードのカソード側の電圧で作動して当該カソード側の電圧を検出する第2検出部と、
を備える検出回路。
【請求項2】
前記第1検出部は、前記アノード側の電圧の分圧を第1検出電圧として出力し、
前記第2検出部は、前記カソード側の電圧の分圧を第2検出電圧として出力し、
前記直流電源から電力が供給されている場合には前記第1検出電圧は前記第2検出電圧よりも高電圧である請求項1記載の検出回路。
【請求項3】
前記第1検出電圧が前記第2検出電圧よりも低電圧となった場合に当該第1検出電圧と当該第2検出電圧との差分電圧で動作する差分動作部を更に備える請求項2記載の検出回路。
【請求項4】
前記差分動作部は、前記平滑化コンデンサを放電させる請求項3記載の検出回路。
【請求項5】
前記差分動作部は、前記差分電圧で動作するスイッチ部と、当該スイッチ部によってオンオフされる実働部とを備える請求項3記載の検出回路。
【請求項6】
前記スイッチ部はフォトカプラである請求項5記載の検出回路。
【請求項7】
負荷に電力を供給する直流電源と、電源電圧を平滑化する平滑化コンデンサとの間に設けられたダイオードと、
前記ダイオードのアノード側と前記直流電源との間に組み込まれ、当該アノード側の電圧で作動して当該アノード側の電圧を検出する第1検出部と、
前記ダイオードのカソード側と前記負荷との間に組み込まれ、当該カソード側の電圧で作動して当該カソード側の電圧を検出する第2検出部と、
前記アノード側の検出電圧と前記カソード側の検出電圧との差分電圧で動作して前記平滑化コンデンサを放電させる放電部と、
を備える放電回路。
【請求項8】
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の検出回路と、
前記直流電源と、
前記平滑化コンデンサと、
前記負荷である制御対象を制御する制御部と、
を備える制御装置。
【請求項9】
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の検出回路と、
前記直流電源と、
前記平滑化コンデンサと、
前記負荷であるインバータと、
前記インバータによって駆動されるモータと、
を備えるモータシステム。
【請求項10】
請求項9に記載のモータシステムと、
前記モータシステムによって駆動される駆動機構と、
を備える機械。
【請求項11】
請求項9に記載のモータシステムと、
前記モータシステムによって駆動されて駆動力を出力する出力機構と、
を備えるアクチュエータ。
【請求項12】
請求項9に記載のモータシステムと、
前記モータシステムによって駆動される駆動機構と、
走行機構と、
を備える車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検出回路、放電回路、制御装置、モータシステム、アクチュエータ、車両および機械に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電源から負荷への電力供給が停止したとき、平滑化コンデンサの残留電荷を放電処理する装置が知られている。
例えば特許文献1には、遮断回路が正常に通電(電荷移動)を遮断しない場合に放電抵抗の異常発熱を防止する放電制御装置が提案されている。
【0003】
また、例えば特許文献2には、車両内のコンデンサを放電する放電システムについて、車両の衝突時にコンデンサの残留電荷を適切に放電することが可能な放電システムが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-031516号公報
【特許文献2】特許第6361466号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1および特許文献2の技術では、平滑化コンデンサにおける電荷の残留を検出する検出回路や、残留電荷を放電する放電回路が、外部の電源や信号によって駆動されるため、システム全体が停止した場合などには残留電荷の検出や放電ができない。
そこで、本発明は、外部の電源に依存せずに残留電荷の検出を行うことを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明に係る検出回路の一態様は、負荷に電力を供給する直流電源と、電源電圧を平滑化する平滑化コンデンサとの間に設けられたダイオードと、上記ダイオードのアノード側と上記直流電源との間に組み込まれ、当該アノード側の電圧で作動して当該アノード側の電圧を検出する第1検出部と、上記ダイオードのカソード側と上記負荷との間に組み込まれ、当該カソード側の電圧で作動して当該カソード側の電圧を検出する第2検出部と、を備える。
【0007】
このような検出回路によれば、第1検出部および第2検出部が検出対象の電圧で動作するため外部の電源に依存せずに残留電荷を検出することができる。
上記検出回路において、上記第1検出部は、上記アノード側の電圧の分圧を第1検出電圧として出力し、上記第2検出部は、上記カソード側の電圧の分圧を第2検出電圧として出力し、上記直流電源から電力が供給されている場合には上記第1検出電圧は上記第2検出電圧よりも高電圧であることが好ましい。直流電源からの電力供給が途絶えると第1検出電圧は低下するので、電力供給時に第1検出電圧が第2検出電圧よりも高電圧であると、第1検出電圧と第2検出電圧との比較で電力供給の有無が容易に確認される。
【0008】
上記検出回路において、上記第1検出電圧が上記第2検出電圧よりも低電圧となった場合に当該第1検出電圧と当該第2検出電圧との差分電圧で動作する差分動作部を更に備えることが望ましい。差分動作部が備えられることで、電力供給が途絶えた場合に望まれる動作を、外部に頼らず差分電圧で実行することができる。
【0009】
上記差分動作部の動作としては、例えばアラート通知や平滑化コンデンサの放電などが想定され、上記差分動作部は、上記平滑化コンデンサを放電させることが好ましい。電力供給が途絶えた場合に、平滑化コンデンサの残留電荷による影響が抑制される。
上記検出回路において、上記差分動作部は、上記差分電圧で動作するスイッチ部と、当該スイッチ部によってオンオフされる実働部とを有することが望ましい。スイッチ部を介することでノイズなどによる誤動作が抑制される。上記スイッチ部がフォトカプラであると誤動作の抑制に優れている。
【0010】
また、本発明に係る放電回路の一態様は、負荷に電力を供給する直流電源と、電源電圧を平滑化する平滑化コンデンサとの間に設けられたダイオードと、上記ダイオードのアノード側と上記直流電源との間に組み込まれ、当該アノード側の電圧で作動して当該アノード側の電圧を検出する第1検出部と、上記ダイオードのカソード側と上記負荷との間に組み込まれ、当該カソード側の電圧で作動して当該カソード側の電圧を検出する第2検出部と、上記アノード側の検出電圧と上記カソード側の検出電圧との差分電圧で動作して上記平滑化コンデンサを放電させる放電部と、を備える。
【0011】
このような放電回路によれば、外部の電源や信号に依存せずに平滑化コンデンサを放電させることができる。
本発明に係る制御装置の一態様は、上記直流電源と、上記平滑化コンデンサと、いずれかの上記検出回路と、上記負荷である制御対象を制御する制御部と、を備える。このような制御装置によれば、制御部に負担を掛けずに残留電荷を検出することができる。
【0012】
本発明に係るモータシステムの一態様は、上記直流電源と、上記平滑化コンデンサと、いずれかの上記検出回路と、上記負荷であるインバータと、上記インバータによって駆動されるモータと、を備える。このようなモータシステムによれば、外部の電源に依存せずに残留電荷を検出することができるので、残留電荷による影響の抑制が可能となる。
【0013】
本発明に係る機械の一態様は、上記モータシステムと、上記モータシステムによって駆動される駆動機構と、を備える。
本発明に係るアクチュエータの一態様は、上記モータシステムと、上記モータシステムによって駆動されて駆動力を出力する出力機構と、を備える。
【0014】
本発明に係る車両の一態様は、上記モータシステムと、上記モータシステムによって駆動される駆動機構と、走行機構と、を備える。
これらの機械、アクチュエータおよび車両によれば、故障時などでも外部の電源に依存せずに残留電荷を検出することができるので、残留電荷による影響の抑制が可能となる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、外部の電源に依存せずに残留電荷を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施形態に相当する機械を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。但し、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするため、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。また、先に説明した図に記載の要素については、後の図の説明において適宜に参照する場合がある。
【0018】
図1は、本発明の一実施形態に相当する機械を示す概略構成図である。
機械1は、制御装置10と、インバータ20と、モータ30と、駆動機構40とを備えている。制御装置10は、電源回路11と、制御回路12とを備えている。電源回路11と、インバータ20と、モータ30とを併せたものはモータシステムの一例である。
【0019】
制御装置10は、インバータ20の駆動制御により、モータ30の駆動を制御して、延いては駆動機構40の動作を制御する。即ち、制御装置10の制御対象は、インバータ20、モータ30および駆動機構40である。電源回路11はインバータ20を介してモータ30に電力を供給する。制御回路12は、インバータ20の駆動を制御する。
インバータ20は、電源回路11から直流電圧が印加されてモータ30に例えば3相の交流電圧を印加する。インバータ20によって出力される交流電圧の周波数や振幅は制御回路12によって制御される。なお、制御回路12は電源回路11から電力供給を受けてもよい。
【0020】
モータ30は、インバータ20からの交流電圧で回転駆動し、駆動機構40を駆動させる。
駆動機構40は、モータ30によって駆動される機構であり、例えば工作機械における工作機構や搬送機械における搬送機構である。また、駆動機構40は、車両を走行させる走行機構であってもよいし、駆動力を外部に出力する出力機構であってもよい。駆動機構40が出力機構である場合は、機械1はアクチュエータの一例である。駆動機構40が走行機構である場合は、機械1は車両の一例である。なお、駆動機構40とは別に走行機構を備える場合も機械1は車両の一例である。
【0021】
図2は、電源回路11の構成例を示す図である。
電源回路11は、交流電源51と、ダイオードブリッジ52と、平滑化コンデンサ53と、放電回路54とを備えている。但し、交流電源51は電源回路11の外部に備えられてもよい。
【0022】
交流電源51は、交流電圧を供給する電源であり、ダイオードブリッジ52は、交流電源51から供給される交流電圧を全波整流して電源電圧Vinを生成する。交流電源51とダイオード52とを併せたものが、直流電源の一例として機能する。なお、電源回路11は、直流電源としてバッテリーなどを備えてもよい。
【0023】
平滑化コンデンサ53は、電源電圧Vinにおける電圧変動を平滑化して、インバータ20に印加される出力電圧Vpを生成する。出力電圧Vpは、平滑化コンデンサ53に印加された電圧に等しい。電圧変動の十分な平滑化、および出力電圧Vpの高出力化のために、平滑化コンデンサ53としては大容量のコンデンサが用いられる。
【0024】
放電回路54は、電源電圧Vinの供給が停止した場合に平滑化コンデンサ53の残留電荷を放電させる。例えば機械1の故障や停止などに伴って電源電圧Vinの供給が停止した場合、平滑化コンデンサ53に残留電荷が残っていると、平滑化コンデンサ53の劣化など、不都合を招く虞がある。このため電源回路11には放電回路54が備えられている。
【0025】
放電回路54は、ダイオード61と、第1検出部62と、第2検出部63と、フォトカプラ64と、スイッチング素子65と、消費抵抗66とを備えている。
第1検出部62は、ダイオード61のアノード側の電源電圧Vinを検出する回路である。第1検出部62は、第1抵抗71と第2抵抗72で電源電圧Vinを分圧して第1検出電圧Vmを出力する。第1検出部62は、第1検出電圧Vmをコンデンサ73で安定化させる。第1検出部62は、検出対象である電源電圧Vinによって動作し、外部の電源に依存しない。
【0026】
第2検出部63は、ダイオード61のカソード側の出力電圧Vpを検出する回路である。第2検出部63は、第1抵抗74と第2抵抗75で出力電圧Vpを分圧して第2検出電圧Vnを出力する。第2検出部63も、検出対象である出力電圧Vpによって動作し、外部の電源に依存しない。
【0027】
第1検出部62における第1抵抗71と第2抵抗72の抵抗値、および、第2検出部63における第1抵抗74と第2抵抗75の抵抗値は、電源電圧Vinが正常に供給されている場合に第1検出電圧Vmが第2検出電圧Vnよりも高電圧となる抵抗値に設計されている。
【0028】
ダイオード61は、交流電源51とダイオードブリッジ52とを併せた直流電源と、平滑化コンデンサ53との間に設けられ、平滑化コンデンサ53側からダイオードブリッジ52側への電荷移動を妨げる。従って、電源電圧Vinの供給が停止した場合には、平滑化コンデンサ53に蓄えられている電荷が第1検出部62側に流れないので、第1検出電圧Vmが低下して第2検出電圧Vnよりも低電圧となる。
【0029】
電源電圧Vinの正常供給時に第1検出電圧Vmが第2検出電圧Vnよりも高電圧であることにより、電源電圧Vinの供給停止時には第1検出電圧Vmが第2検出電圧Vnと逆転するので供給停止の検出が容易である。
ダイオード61と、第1検出部62と、第2検出部63とを併せたものが、検出回路の一例である。
【0030】
フォトカプラ64は、第1検出電圧Vmが第2検出電圧Vnよりも低電圧となった場合にオンとなるスイッチであり、フォトカプラ64は、第1検出電圧Vmと第2検出電圧Vnとの差分電圧によって駆動される。即ち、フォトカプラ64の発光ダイオード76は、第1検出電圧Vmが第2検出電圧Vnよりも低電圧となった場合に第1検出電圧Vmと第2検出電圧Vnとの差分電圧によって発光する。
【0031】
そして、フォトトランジスタ77が発光ダイオード76の光でオンとなり、フォトカプラ64の出力から電流が流れてスイッチング素子65のゲートがオンとなる。この結果、平滑化コンデンサ53の残留電荷が消費抵抗66を流れて消費されることになる。なお、フォトカプラ64に替えてコンパレータ回路が用いられてもよいが、フォトカプラ64の方がノイズによる誤動作抑制の点でコンパレータよりも優れている。
【0032】
フォトカプラ64、スイッチング素子65および消費抵抗66を併せたものは、第1検出電圧Vmが第2検出電圧Vnよりも低電圧の場合における第1検出電圧Vmと第2検出電圧Vnとの差分電圧によって動作する差分動作部の一例である。即ち、フォトカプラ64、スイッチング素子65および消費抵抗66による放電動作は、第1検出電圧Vmと第2検出電圧Vnとの差分電圧によって駆動される。差分動作部が備えられることで、電源電圧Vinの供給が停止した場合に望まれる動作(例えば放電やアラート)が差分電圧で実行される。
【0033】
なお、差分動作部としては、例えばアラートを発する回路が組み込まれてもよいが、本実施形態のように平滑化コンデンサ53の残留電荷を放電させる差分動作部が備えられると、残留電荷による影響が抑制されて好ましい。
差分動作部としては、例えば、フォトカプラ64の出力が直接に消費抵抗66へと流れる構成などもあり得るが、スイッチ部に相当するフォトカプラ64と、実働部に相当するスイッチング素子65および消費抵抗66との2段構成により、ノイズによる誤動作などが抑制されて好ましい。
【0034】
平滑化コンデンサ53に印加されている電圧Vpが所定の電圧まで下がると、フォトカプラ64の出力がオフとなり、平滑化コンデンサ53の残留電荷は、消費抵抗66よりも抵抗値の高い高抵抗67で徐々に消費される。
【0035】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0036】
1…機械、10…制御装置、11…電源回路、12…制御回路、20…インバータ、
30…モータ、40…駆動機構、51…交流電源、52…ダイオードブリッジ、
53…平滑化コンデンサ、54…放電回路、61…ダイオード、62…第1検出部、
63…第2検出部、64…フォトカプラ、65…スイッチング素子、66…消費抵抗、
67…高抵抗、71…第1検出部の第1抵抗、72…第1検出部の第2抵抗、
73…コンデンサ、74…第2検出部の第1抵抗、75…第2検出部の第2抵抗、
76…発光ダイオード、77…フォトトランジスタ