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特開2024-77202情報処理方法、装置、プログラム、及び検査システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024077202
(43)【公開日】2024-06-07
(54)【発明の名称】情報処理方法、装置、プログラム、及び検査システム
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/88 20060101AFI20240531BHJP
   G06T 7/00 20170101ALI20240531BHJP
【FI】
G01N21/88 H
G06T7/00 350B
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022189131
(22)【出願日】2022-11-28
(71)【出願人】
【識別番号】517255566
【氏名又は名称】株式会社エクサウィザーズ
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山下 聖悟
【テーマコード(参考)】
2G051
5L096
【Fターム(参考)】
2G051AA11
2G051AA90
2G051AB01
2G051AB02
2G051BA11
2G051BA20
2G051BB03
2G051CA03
2G051CA04
2G051CB02
2G051EA17
2G051EB05
5L096BA03
5L096CA02
5L096FA15
5L096HA11
5L096JA11
(57)【要約】
【課題】本発明は、対象物に含まれる異物又は対象物の異常を精度よく判定することを目的とする。
【解決手段】情報処理装置は、2つの偏光板の間に配置された対象物を撮影した撮影画像を取得する取得部と、取得した撮影画像に基づいて、前記対象物に含まれる異物又は前記対象物の異常を検出する異常検出部と、異常が検出された場合、異常が検出された領域の異常部分画像、及び色情報と厚さ情報との予め求められた対応関係を用いて、前記対象物に含まれる異物又は前記対象物の異常を判定する異常判定部と、を含む。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
情報処理装置が、
2つの偏光板の間に配置された対象物を撮影した撮影画像を取得し、
取得した撮影画像に基づいて、前記対象物に含まれる異物又は前記対象物の異常を検出し、
異常が検出された場合、異常が検出された領域の異常部分画像、及び色情報と厚さ情報との予め求められた対応関係を用いて、前記対象物に含まれる異物又は前記対象物の異常を判定する
情報処理方法。
【請求項2】
前記対象物に含まれる異物又は前記対象物の異常を判定する際に、前記異常部分画像の画素毎に、前記画素の色情報を厚さ情報に変換し、前記画素毎の変換結果が表す形状に基づいて、前記対象物に含まれる異物又は前記対象物の異常を判定する請求項1記載の情報処理方法。
【請求項3】
前記情報処理装置が、前記2つの偏光板の間に配置された対象物にバックライトを照射して撮影した撮影画像を取得する、
請求項1記載の情報処理方法。
【請求項4】
前記情報処理装置が、
撮影画像の入力を受け付けて、当該撮影画像に写された対象物に含まれる異物又は前記対象物の異常の有無に関する情報を出力するよう機械学習がなされた学習モデルへ、取得した撮影画像を入力し、
前記学習モデルが出力する情報を取得し、
取得した前記情報に基づいて、前記対象物に含まれる異物又は前記対象物の異常を検出
する、
請求項1記載の情報処理方法。
【請求項5】
前記情報処理装置が、
更に、取得した撮影画像に基づいて、前記撮影画像の部分画像毎に、前記部分画像が表す前記対象物の位置を判定し、
前記学習モデルは、前記対象物の位置毎に機械学習がなされた学習モデルであり、
前記撮影画像の部分画像毎に、前記部分画像が表す前記対象物の位置の判定結果に対応する前記学習モデルに、前記撮影画像の部分画像を入力し、
前記学習モデルが出力する情報を取得する請求項4記載の情報処理方法。
【請求項6】
前記情報処理装置が、
取得した撮影画像において前記対象物が写された画像領域を特定し、
特定した前記画像領域に基づいて、前記対象物に含まれる異物又は前記対象物の異常を検出する、
請求項1記載の情報処理方法。
【請求項7】
前記対象物が、透明部材で形成された包装部材である
請求項1~請求項6の何れか1項に記載の情報処理方法。
【請求項8】
2つの偏光板の間に配置された対象物を撮影した撮影画像を取得する取得部と、
取得した撮影画像に基づいて、前記対象物に含まれる異物又は前記対象物の異常を検出する異常検出部と、
異常が検出された場合、異常が検出された領域の異常部分画像、及び色情報と厚さ情報との予め求められた対応関係を用いて、前記対象物に含まれる異物又は前記対象物の異常を判定する異常判定部と、
を含む情報処理装置。
【請求項9】
2つの偏光板の間に配置された対象物を撮影した撮影画像を取得し、
取得した撮影画像に基づいて、前記対象物に含まれる異物又は前記対象物の異常を検出し、
異常が検出された場合、異常が検出された領域の異常部分画像、及び色情報と厚さ情報との予め求められた対応関係を用いて、前記対象物に含まれる異物又は前記対象物の異常を判定する
ことをコンピュータに実行させるための情報処理プログラム。
【請求項10】
2つの偏光板と、
前記2つの偏光板の間に配置された対象物を撮影するカメラと、
前記カメラにより撮影した撮影画像を取得する取得部、取得した撮影画像に基づいて、前記対象物に含まれる異物又は前記対象物の異常を検出する異常検出部、及び異常が検出された場合、異常が検出された領域の異常部分画像、及び色情報と厚さ情報との予め求められた対応関係を用いて、前記対象物に含まれる異物又は前記対象物の異常を判定する異常判定部を有する情報処理装置と
を備える、検査システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理方法、装置、プログラム、及び検査システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば薬品等が収容された瓶等の容器の中に異物が混入されているか否かを、従来は人間が目視で確認して判断していた。このため、容器の中の異物の有無を精度よく判定することが難しかった。
【0003】
特許文献1においては、それぞれがλ/4波長板として機能し、遅相軸が互いにほぼ直交するストライプ状の第1及び第2位相差領域が交互に複数並べて配列されたパターン化位相差フィルムの欠陥を検出するパターン化位相差フィルムの欠陥検出装置が提案されている。この欠陥検出装置は、前記パターン化位相差フィルムを挟むようにクロスニコル配置される第1及び第2偏光板と、前記第1偏光板を介して前記パターン化位相差フィルムに検査光を照射する光源部と、前記第2偏光板を介して前記パターン化位相差フィルムを撮影して輝度画像を得る撮影装置と、前記輝度画像から欠陥を検出する欠陥検出部とを備え、前記第1及び第2偏光板は、いずれか一方の偏光透過軸が前記第1及び第2位相差領域のいずれか一方の光学軸とほぼ平行となる状態で、正常な前記第1及び第2位相差領域を撮影装置で撮影した際の各輝度が消光状態近傍で同レベルとなるように、前記一方の偏光透過軸の方向が調整されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5422620号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の欠陥検出装置により、フィルムの表面形状を可視化することが考えられる。しかしながら、形状の異常検知に利用するには改善の余地がある。
【0006】
本発明は、斯かる事情に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、対象物に含まれる異物又は対象物の異常を精度よく判定することができる情報処理方法、装置、プログラム、及び検査システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る情報処理方法は、情報処理装置が、2つの偏光板の間に配置された対象物を撮影した撮影画像を取得し、取得した撮影画像に基づいて、前記対象物に含まれる異物又は前記対象物の異常を検出し、異常が検出された場合、異常が検出された領域の異常部分画像、及び色情報と厚さ情報との予め求められた対応関係を用いて、前記対象物に含まれる異物又は前記対象物の異常を判定する。
【発明の効果】
【0008】
以上説明したように、本発明によれば、対象物に含まれる異物又は対象物の異常を精度よく判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施形態に係る検査システムの概要を説明するための模式図である。
図2】本実施形態に係る情報処理装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
図3】検査対象物の撮影画像の一例を示す図である。
図4】フィルムが斜めになっている場合に光がフィルムの中を通った長さを説明するための図である。
図5】偏光色図表の一例を示す図である。
図6】本実施形態に係る情報処理装置の構成を示すブロック図である。
図7】本実施形態に係る情報処理装置による異常検知処理の内容を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、開示の技術の実施形態の一例を、図面を参照しつつ説明する。なお、各図面において同一又は等価な構成要素及び部分には同一の参照符号を付与している。また、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
【0011】
<本実施形態に係る検査システムの構成>
図1は、本実施形態に係る検査システムの概要を説明するための模式図である。本実施形態に係る検査システムは、例えばフィルムなどの包装部材に異常があるか否かの判定等を行うシステムである。本実施形態に係る検査システムは、情報処理装置1、カメラ3、第1の偏光板4、第2の偏光板5及びバックライト6等を備えて構成されている。
【0012】
本実施形態に係る検査システムでは、カメラ3から第1の偏光板4、第2の偏光板5及びバックライト6がこの順番に並べて配置されており、カメラ3は例えば通信ケーブル等を介して情報処理装置1に接続される。フィルムなどの検査対象物は第1の偏光板4及び第2の偏光板5の間に配置され、バックライト6からの光を第2の偏光板5を介して検査対象物の背後から照射した状態で、カメラ3が第1の偏光板4を介して検査対象物の撮影を行う。カメラ3が検査対象物を撮影した撮影画像は情報処理装置1へ与えられ、情報処理装置1は、カメラ3の撮影画像に基づいて、検査対象物に含まれる異物又は検査対象物の異常を検出する処理を行う。
【0013】
カメラ3は、レンズ等の光学素子と、CCD(Charge Coupled Device)又はCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等の撮像素子とを備えている。本実施形態に係るカメラ3は、少なくとも可視光を受光して撮影を行うことができ、赤外線又は紫外線等の非可視光の撮影を行うことができるものであってよい。カメラ3は、撮影した画像をデジタルの画像データとして情報処理装置1へ与える。またカメラ3の撮影に関する例えばシャッター速度の変更、明るさの調整及びピント合わせ等の制御は情報処理装置1により行われる。
【0014】
第1の偏光板4及び第2の偏光板5は、所定の方向に振動する光を透過させ、それ以外の方向に振動する光を遮断する工学部材である。偏光板が光を透過させる方向は偏光軸(透過軸)と呼ばれ、本実施形態において第1の偏光板4と第2の偏光板5とは偏光軸が交差するように、更に好ましくは偏光軸が直交(90°)するように配置される。これにより、第1の偏光板4及び第2の偏光板5はいわゆるクロスドニコルの光学系を構成する。また更に、例えば第1の偏光板4又は第2の偏光板5のいずれかを回転可能な構成とし、第1の偏光板4の偏光軸と第2の偏光板5の偏光軸との角度を可変としてもよい。この場合には、例えば偏光板を回転させるためのモータ及び歯車等の機構が設けられ、モータの回転は情報処理装置1により制御される。
【0015】
第1の偏光板4及び第2の偏光板5の組み合わせは、例えば直線偏光板を2つ用いる組み合わせであってよく、また例えば直線偏光板に1/4位相差板を重ねた円偏光板を2つ用いる組み合わせであってもよい。円偏光板を用いる場合、第1の偏光板4及び第2の偏光板5のいずれか一方を右回転円偏光板とし、他方を左回転円偏光板とする。
【0016】
バックライト6は、例えばLED(Light Emitting Diode)等の発光素子を用いて構成されている。本実施形態においてバックライト6は、少なくとも可視光の発光を行うものであり、更には赤外線又は紫外線等の非可視光の発光を行うものであってもよい。
【0017】
情報処理装置1は、例えばパーソナルコンピュータ又はサーバ装置等の汎用的なコンピュータに、本実施形態に係る情報処理を行うコンピュータプログラムをインストールしたものである。本実施形態に係る情報処理装置1は、カメラ3が検査対象物を撮影した撮影画像を取得して、取得した撮影画像に対して学習済みの学習モデル(いわゆるAI(Artificial Intelligence))を用いた異常検出の処理を行う。
【0018】
図2は、本実施形態の情報処理装置1のハードウェア構成を示すブロック図である。
【0019】
図2に示すように、情報処理装置1は、CPU(Central Processing Unit)11、ROM(Read Only Memory)12、RAM(Random Access Memory)13、ストレージ14、入力部15、表示部16及び通信インタフェース(I/F)17を有する。各構成は、バス19を介して相互に通信可能に接続されている。
【0020】
CPU11は、中央演算処理ユニットであり、各種プログラムを実行したり、各部を制御したりする。すなわち、CPU11は、ROM12又はストレージ14からプログラムを読み出し、RAM13を作業領域としてプログラムを実行する。CPU11は、ROM12又はストレージ14に記憶されているプログラムに従って、上記各構成の制御及び各種の演算処理を行う。本実施形態では、ROM12又はストレージ14には、検査対象物に含まれる異物又は検査対象物の異常を検出する処理を行う情報処理プログラムが格納されている。情報処理プログラムは、1つのプログラムであっても良いし、複数のプログラム又はモジュールで構成されるプログラム群であっても良い。
【0021】
ROM12は、各種プログラム及び各種データを格納する。RAM13は、作業領域として一時的にプログラム又はデータを記憶する。ストレージ14は、HDD(Hard Disk Drive)又はSSD(Solid State Drive)により構成され、オペレーティングシステムを含む各種プログラム、及び各種データを格納する。
【0022】
入力部15は、マウス等のポインティングデバイス、及びキーボードを含み、カメラ3により撮影された撮影画像を含む各種の入力を行うために使用される。例えば、入力部15には、図3に示すような、検査対象物を撮影した撮影画像が入力される。撮影画像は、例えば、RGBの画像である。
【0023】
表示部16は、例えば、液晶ディスプレイであり、各種の情報を表示する。表示部16は、タッチパネル方式を採用して、入力部15として機能しても良い。
【0024】
通信インタフェース17は、他の機器と通信するためのインタフェースであり、例えば、イーサネット(登録商標)、FDDI、Wi-Fi(登録商標)等の規格が用いられる。
【0025】
本実施形態では、検査対象物が、透明部材で形成された包装部材であり、撮影画像は、例えば、図3に示すような、透明部材で形成された包装部材であるフィルムを撮影した画像であり、このとき、フィルムの色は、フィルムの中をどの程度の長さ光が貫通したかを示している。
【0026】
例えば、フィルムの場合、標準的には紫色であるが、シワがある部分には他の色が観測される。フィルムの角度が急になるほど、「紫」→「青」→「緑」→「黄」と色が変化する。このとき、下部のフィルムと上部のフィルムの双方に依存する。これは、シワがある部分ほど、結果的に長い距離を光がフィルム中を通過しているためである。また、フィルムの厚みにも応じて、色が変わる。
【0027】
例えば、図4に示すようにフィルムが斜めになっている場合、フィルムが平面になっている場合よりも光がフィルムの中をより長く通るため色が変わる。色の変化の順番には特定のルールがあり、色からフィルムを通った長さが推定できる。
【0028】
また、色の変化には法則性があるが、近しい色が確認される場合もある。フィルム一枚分を0.1mmと仮定して説明する。例えば、フィルムが1枚の場合(0.1mm)、オレンジ色が観測されるが、シワが激しい箇所(0.5mm程度)の場合も同じくオレンジ色系の色が示される。これは、図5に示す偏光色図表に示されるように、近しい色が周期的に現れるためである。
【0029】
図5では、縦軸が、リタデーションを示し、横軸が、厚みを示し、斜めの線は、検査対象物を通過後の二つの固有偏光の屈折率差Δnを表している。屈折率差Δnを既知として、色情報から厚みを求めることができる。
【0030】
図3(B)の右下の矩形枠で囲まれる部分は、ずれにより、底面からカメラ3までの間に、フィルムが一枚しかない。図3(B)の右上の矩形枠で囲まれる部分は、巻き込みにより、青色と緑色が観測される。こちらは底面側と上部側のフィルムに発生したシワによるものである。シワがさらに大きい場合には、オレンジ色も観測される。
【0031】
また、フィルムで形成された包装部材の中に物体が入っている場合、その物体の隆起により多少のフィルム形状の変形がある。例えば、カップラーメンのかやくの包装部材の場合には、具材による凹凸のためフィルム上に様々な色が観測される。また、フィルムの外周の異常は、穴あきなどの重大な問題を起こす可能性があるため、特に入念な確認が必要であるが、予想されている色とは違うものが観測される場合が多くある。例えば、熱によるシーリングの影響で角度がまばらについている可能性や、梱包それぞれごとに微妙に異なる凹凸がある場合が想定される。
【0032】
これらの状況を踏まえ、表面形状の可視化を異常検知に使用するためには、包装部材のどの箇所にどの範囲の色が観測された際に正常とみなすのかの判断が必要となる。
【0033】
そこで、本実施形態では、まず、異常検知のための学習モデルに正常な状態を学習させる。このとき、物体検知やセグメンテーションの機械学習モデル(例えば、Mask-RCNN)を用いて画像中における検査対象物の範囲を取得する。
【0034】
また、形状や印字された文字等の情報を用いて、検査対象物の上部、下部、左側部、右側部、中央部がどの範囲であるのかを取得する。
【0035】
円偏光を用いたクロスドニコル光学系により可視化した、それぞれの範囲の見た目を、異常の無いサンプルにて観測する。そして取得したそれぞれの画像を正常サンプルとして異常検知のための学習モデルの学習を行う(PaDiM PatchCoreなど)。例えば、数百サンプル程度が必要で、数が多いほど好ましい。
【0036】
次に、異常検知を行う。このとき、物体検知やセグメンテーションの機械学習モデル(例えば、Mask-RCNN)を用いて画像中における検査対象物の範囲を取得する。そして、形状や印字された文字等の情報を用いて、検査対象物の上部、下部、左側部、右側部、中央部がどの範囲であるのかを取得する。そして、円偏光を用いたクロスドニコル光学系により可視化した、それぞれの範囲の画像を、異常検知のための学習モデルに入力し、統計的に異様な見た目でないかを判断する。
【0037】
そして、異常が検出された領域の画素毎に、偏光色図表に基づいて、画素の色情報を厚さ情報に変換し、画素毎の変換結果が表す形状に基づいて、検査対象物に含まれる異物又は検査対象物の異常を判定する。
【0038】
次に、情報処理装置1の機能構成について説明する。図6は、情報処理装置1の機能構成の例を示すブロック図である。
【0039】
情報処理装置1は、機能的には、図6に示すように、学習モデル記憶部20、取得部22、特定部24、位置判定部26、異常検出部28、及び異常判定部30を備えている。
【0040】
学習モデル記憶部20には、撮影画像の入力を受け付けて、当該撮影画像に写された検査対象物に含まれる異物又は検査対象物の異常の有無に関する情報を出力するよう機械学習がなされた学習モデルが記憶されている。
【0041】
具体的には、学習モデルは、検査対象物の位置毎に機械学習がなされた学習モデルである。例えば、検査対象物の上部、下部、左側部、右側部、中央部の各々について、当該部分の部分画像の入力を受け付けて、当該部分画像に写された検査対象物に含まれる異物又は検査対象物の異常の有無に関する情報を出力するよう機械学習がなされた学習モデルが、学習モデル記憶部20に記憶されている。
【0042】
取得部22は、カメラ3により検査対象物を撮影した撮影画像を取得する。
【0043】
特定部24は、取得した撮影画像において検査対象物が写された画像領域を特定する。具体的には、物体検知やセグメンテーションの機械学習モデル(例えば、Mask-RCNN)を用いて、撮影画像中における検査対象物が移された画像領域を特定する。
【0044】
位置判定部26は、特定した画像領域に基づいて、画像領域の部分画像毎に、当該部分画像が表す検査対象物の位置を判定する。具体的には、画像領域の部分画像毎に、当該部分画像が表す検査対象物の位置が、検査対象物の上部、下部、左側部、右側部、中央部の何れであるかを判定する。
【0045】
より具体的には、当該部分画像が表す検査対象物の形状や印字された文字等の情報を用いて、検査対象物の上部、下部、左側部、右側部、中央部の何れであるかを判定する。
【0046】
異常検出部28は、取得した撮影画像に基づいて、検査対象物に含まれる異物又は検査対象物の異常を検出する。
【0047】
具体的には、撮影画像の入力を受け付けて、当該撮影画像に写された検査対象物に含まれる異物又は検査対象物の異常の有無に関する情報を出力するよう機械学習がなされた学習モデルへ、取得した撮影画像を入力し、学習モデルが出力する情報を取得し、取得した情報に基づいて、検査対象物に含まれる異物又は前記検査対象物の異常を検出する。
【0048】
より具体的には、撮影画像の部分画像毎に、当該部分画像が表す検査対象物の位置の判定結果に対応する学習モデルに、当該部分画像を入力し、当該部分画像が表す検査対象物に含まれる異物又は検査対象物の異常を検出する。
【0049】
異常判定部30は、異常が検出された場合、異常が検出された部分画像、及び色情報と厚さ情報との予め求められた対応関係を用いて、部分画像が表す検査対象物に含まれる異物又は検査対象物の異常を判定する。
【0050】
具体的には、異常判定部30は、検査対象物に含まれる異物又は検査対象物の異常を判定する際に、異常が検出された部分画像の画素毎に、偏光色図表に基づいて予め定められた色情報と厚さ情報との対応関係を用いて、画素の色情報を厚さ情報に変換し、画素毎の変換結果が表す形状に基づいて、検査対象物に含まれる異物又は検査対象物の異常を判定する。例えば、隣接画素間での厚さ情報の変化率が、閾値以上である場合には、検査対象物に異物が含まれるか、あるいは、検査対象物が異常であると判定する。
【0051】
<本実施形態に係る情報処理装置の作用>
次に、情報処理装置1の作用について説明する。
【0052】
図7は、情報処理装置1による異常検知処理の流れを示すフローチャートである。CPU11がROM12又はストレージ14から情報処理プログラムを読み出して、RAM13に展開して実行することにより、異常検知処理が行なわれる。また、情報処理装置1に、カメラ3によって撮影された撮影画像が入力される。また、情報処理装置1の学習モデル記憶部20には、検査対象物の位置毎に機械学習がなされた学習モデルが記憶されているものとする。
【0053】
ステップS100で、CPU11は、取得部22として、カメラ3により検査対象物を撮影した撮影画像を取得する。
【0054】
ステップS102で、CPU11は、特定部24として、取得した撮影画像において検査対象物が写された画像領域を特定する。
【0055】
ステップS104では、CPU11は、位置判定部26として、特定した画像領域に基づいて、画像領域の部分画像毎に、当該部分画像が表す検査対象物の位置を判定する。
【0056】
ステップS106では、CPU11は、異常検出部28として、撮影画像の部分画像毎に、当該部分画像が表す検査対象物の位置の判定結果に対応する学習モデルに、当該部分画像を入力する。
【0057】
ステップS108では、CPU11は、異常検出部28として、撮影画像の部分画像毎に、学習モデルが出力する情報を取得する。
【0058】
ステップS110では、CPU11は、異常検出部28として、少なくとも一つの部分画像において、当該部分画像が表す検査対象物に含まれる異物又は検査対象物の異常が検出されたか否かを判定する。少なくとも一つの部分画像において、当該部分画像が表す検査対象物に含まれる異物又は検査対象物の異常が検出された場合には、ステップS112へ移行する。一方、全ての部分画像において、当該部分画像が表す検査対象物に含まれる異物又は検査対象物の異常が検出されなかった場合には、ステップS120へ移行する。
【0059】
ステップS112では、CPU11は、異常判定部30として、検査対象物に含まれる異物又は検査対象物の異常を判定する際に、異常が検出された部分画像の画素毎に、画素の色情報を厚さ情報に変換する。
【0060】
ステップS114では、CPU11は、異常判定部30として、画素毎の変換結果が表す形状に基づいて、検査対象物に含まれる異物又は検査対象物の異常を判定する。
【0061】
ステップS116では、CPU11は、検査対象物に含まれる異物又は検査対象物の異常があるか否かを判定する。検査対象物に含まれる異物又は検査対象物の異常があると判定された場合には、ステップS118へ移行する。一方、検査対象物に含まれる異物又は検査対象物の異常があると判定されなかった場合には、ステップS120へ移行する。
【0062】
ステップS118では、CPU11は、表示部16により、検査対象物に含まれる異物又は検査対象物の異常があることを通知し、異常検知処理を終了する。
【0063】
ステップS120では、CPU11は、表示部16により、検査対象物に含まれる異物又は検査対象物の異常がないことを通知し、異常検知処理を終了する。
【0064】
以上説明したように、本実施形態に係る検査システムは、2つの偏光板の間に配置された検査対象物を撮影した撮影画像を取得し、取得した撮影画像に基づいて、検査対象物に含まれる異物又は検査対象物の異常を検出し、異常が検出された場合、異常が検出された領域の異常部分画像、及び色情報と厚さ情報との予め求められた対応関係を用いて、検査対象物に含まれる異物又は検査対象物の異常を判定する。これにより、対象物に含まれる異物又は対象物の異常を精度よく判定することができる。
【0065】
<変形例>
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲内で様々な変形や応用が可能である。
【0066】
例えば、包装部材である検査対象物の内包物が複数種類ある場合には、物体検知などの技術を用いて、検査対象物中のその内包物の位置や範囲を検知する。また、その内包物の隆起による、内包物の周辺のフィルム形状の変化(色)を個別に学習し、上記の実施形態と同様に、異常検知してもよい。例えば、かやくの中に小エビがある場合、ある程度厚みがあるためその周辺に形状変化が大きく現れていても異常とせずに正常とすることができる。
【0067】
また、インスタントヌードルのかやくなど、フィルムに印刷が施されている場合がある。この場合、バックライトの光が透過せず、その部分にクロスドニコルによる形状可視化を施せない場合がある。この場合、可視光カメラの代わりに赤外線カメラを使用しても良い。赤外線カメラを使用した場合、赤外線がインクを透過する場合が多く、インクの影響を軽減できる。赤外線カメラはモノクロである場合が多いため、実際に実装する際には一定の幅の波長帯の光のみを透過するバンドパスフィルターを複数種類、赤外線カメラの前に設置し、それらを切り替えながら様々な波長帯の光を観測する必要がある。偏光色図表はカラーカメラを対象とした図であるが、赤外線領域においても同様に一定のルールにしたがって光の波長が変化する。
【0068】
カラーカメラは、RGB3種類のバンドパスフィルターをセンサーに装備している。カラーカメラに使用されるCMOS等のセンサー感度は、400nm~1000nm程度であり、この範囲の波長の光を観測できる。上述した赤外線カメラとして、たとえば、InGaASカメラを使用することができる。これは、900nm~1700nm程度の光を観測できるセンサーを用いた赤外線カメラである。例えば、カラーカメラにおけるRGBバンドパスフィルターのように複数種類のバンドパスフィルターを赤外線カメラの前に設置し、フィルタを切り替えながら撮影をすることにより、画像中の各場所の光の波長を計測することができる。波長はカラー画像でいう色であり、従って、赤外線領域用の偏光色図表を作成することができる。
【0069】
また、上記各実施形態でCPUがソフトウェア(プログラム)を読み込んで実行した各種処理を、CPU以外の各種のプロセッサが実行してもよい。この場合のプロセッサとしては、GPU(Graphics Processing Unit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)等の製造後に回路構成を変更可能なPLD(Programmable Logic Device)、及びASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の特定の処理を実行させるために専用に設計された回路構成を有するプロセッサである専用電気回路等が例示される。また、異常検知処理を、これらの各種のプロセッサのうちの1つで実行してもよいし、同種又は異種の2つ以上のプロセッサの組み合わせ(例えば、複数のFPGA、及びCPUとFPGAとの組み合わせ等)で実行してもよい。また、これらの各種のプロセッサのハードウェア的な構造は、より具体的には、半導体素子等の回路素子を組み合わせた電気回路である。
【0070】
また、上記各実施形態では、情報処理プログラムがストレージ14に予め記憶(インストール)されている態様を説明したが、これに限定されない。プログラムは、CD-ROM(Compact Disk Read Only Memory)、DVD-ROM(Digital Versatile Disk Read Only Memory)、及びUSB(Universal Serial Bus)メモリ等の非一時的(non-transitory)記憶媒体に記憶された形態で提供されてもよい。また、プログラムは、ネットワークを介して外部装置からダウンロードされる形態としてもよい。
【0071】
以上の実施形態に関し、更に以下の付記を開示する。
【0072】
(付記項1)
情報処理装置であって、
メモリと、
前記メモリに接続された少なくとも1つのプロセッサと、
を含み、
前記プロセッサは、
2つの偏光板の間に配置された対象物を撮影した撮影画像を取得し、
取得した撮影画像に基づいて、前記対象物に含まれる異物又は前記対象物の異常を検出し、
異常が検出された場合、異常が検出された領域の異常部分画像、及び色情報と厚さ情報との予め求められた対応関係を用いて、前記対象物に含まれる異物又は前記対象物の異常を判定する
ように構成される情報処理装置。
【0073】
(付記項2)
異常検知処理を実行するようにコンピュータによって実行可能なプログラムを記憶した非一時的記憶媒体であって、
前記異常検知処理は、
2つの偏光板の間に配置された対象物を撮影した撮影画像を取得し、
取得した撮影画像に基づいて、前記対象物に含まれる異物又は前記対象物の異常を検出し、
異常が検出された場合、異常が検出された領域の異常部分画像、及び色情報と厚さ情報との予め求められた対応関係を用いて、前記対象物に含まれる異物又は前記対象物の異常を判定する
非一時的記憶媒体。
【符号の説明】
【0074】
1 情報処理装置
3 カメラ
4 第1の偏光板
5 第2の偏光板
6 バックライト
11 CPU
14 ストレージ
15 入力部
16 表示部
20 学習モデル記憶部
22 取得部
24 特定部
26 位置判定部
28 異常検出部
30 異常判定部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7