(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024077203
(43)【公開日】2024-06-07
(54)【発明の名称】カメラシステム、プログラム
(51)【国際特許分類】
G08G 1/00 20060101AFI20240531BHJP
【FI】
G08G1/00 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022189135
(22)【出願日】2022-11-28
(71)【出願人】
【識別番号】308036402
【氏名又は名称】株式会社JVCケンウッド
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 沙也加
(72)【発明者】
【氏名】山下 華妃
(72)【発明者】
【氏名】横山 博亮
(72)【発明者】
【氏名】熊倉 弘幸
(72)【発明者】
【氏名】下田 義弥
【テーマコード(参考)】
5H181
【Fターム(参考)】
5H181AA01
5H181AA05
5H181AA20
5H181BB04
5H181BB05
5H181BB20
5H181CC04
5H181CC12
5H181EE11
5H181FF04
5H181FF05
5H181FF10
5H181MC19
5H181MC27
(57)【要約】
【課題】道路の不具合の情報を効率的かつ効果的に収集する。
【解決手段】車両1に設置されるカメラシステム10において、撮像部11は、車両前方の道路を撮像する。検知部142は、道路の不具合箇所を検知する。無線通信部143は、道路に不具合箇所があると判定されると、検知タイミングから所定時間前までの映像データを、ネットワーク5を介して外部のサーバ20に送信する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に設置されるカメラシステムであって、
前記車両前方の道路を撮像するための撮像部と、
道路の不具合箇所を検知するための検知部と、
前記道路に不具合箇所があると判定されると、検知タイミングから所定時間前までの映像データを、ネットワークを介して外部のサーバに送信する通信部と、
を備えるカメラシステム。
【請求項2】
前記車両の振動を検出するための加速度センサをさらに備え、
前記検知部は、前記加速度センサで検知される加速度値の所定期間の、標準偏差値、分散値、または絶対値移動平均の変化率のうち少なくともひとつが所定の閾値を超えたとき、前記道路に不具合箇所があると判定する請求項1に記載のカメラシステム。
【請求項3】
前記検知部は、画像解析により前記路面の種類を特定し、前記路面の種類に基づいて前記加速度値の標準偏差値、分散値、または絶対値移動平均の変化率のうちの少なくともひとつの閾値を変更する請求項2に記載のカメラシステム。
【請求項4】
前記通信部は、
前記道路に不具合箇所があると判定されると、不具合箇所の位置情報を前記サーバに送信し、
前記サーバから映像データの送信要求を受信すると、前記検知タイミングから所定時間前までの映像データを、前記サーバに送信する請求項1から3のいずれか1項に記載のカメラシステム。
【請求項5】
車両に設置されるカメラシステムで実行されるプログラムであって、
前記車両前方の撮像部に道路を撮像させる処理と、
道路の不具合箇所を検知する処理と、
前記道路に不具合箇所があると判定されると、検知タイミングから所定時間前までの映像データを、ネットワークを介して外部のサーバに送信する処理と、
をコンピュータに実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に設置されるカメラシステム、プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電動キックボード、電動自転車等のマイクロモビリティが普及してきている。また、マイクロモビリティのシェアリングサービスも普及してきている。マイクロモビリティは一般車両が入れない細街路(例えば、レンガ道、石畳)も走行可能である。また、自転車レーンも走行可能である。
【0003】
道路の不具合(穴ぼこ、亀裂等)をスマートフォン等で撮影した画像を、ネットワークを介して受け付ける通報システムを整備している自治体が増えてきている。特許文献1は、車両の走行中の加速度を検出し、その加速度が所定領域から外れる度合いで悪路を検出する方法を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
加速度が単に所定領域から外れる度合いで悪路を検出する方法では、レンガ道、石畳等の人工的な凸凹がある路面の不具合を検出する場合の精度が低くなる。また上記通報システムは、住民の善意に依存しており、道路の不具合の情報を常に収集できるとは限らない。
【0006】
本実施形態はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、道路の不具合の情報を効率的かつ効果的に収集する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本実施形態のある態様のカメラシステムは、車両に設置されるカメラシステムであって、前記車両前方の道路を撮像するための撮像部と、道路の不具合箇所を検知するための検知部と、前記道路に不具合箇所があると判定されると、検知タイミングから所定時間前までの映像データを、ネットワークを介して外部のサーバに送信する通信部と、を備える。
【0008】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本実施形態の表現を方法、装置、システム、記録媒体、コンピュータプログラム等の間で変換したものもまた、本実施形態の態様として有効である。
【発明の効果】
【0009】
本実施形態によれば、道路の不具合の情報を効率的かつ効果的に収集することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施形態に係るカメラシステムが設置される車両の一例を示す図である。
【
図2】実施形態に係るカメラシステム、サーバの構成例を示すブロック図である。
【
図3】実施形態に係るカメラシステムを使用した、実施例1に係る道路の不具合通報方法の具体例を示す図である。
【
図4】
図3の道路のA区間、B区間、C区間を走行中の加速度センサで検出される加速度値と、所定期間の加速度値の標準偏差値の模式的な波形を示す図である。
【
図5】実施例1に係る道路の不具合通報方法の流れを示すフローチャートである。
【
図6】実施例2に係る道路の不具合通報方法の具体例を示す図である。
【
図7】
図6の道路のA区間、B区間、C区間を走行中の加速度センサで検出される加速度値と、所定期間の加速度値の標準偏差値の模式的な波形を示す図である。
【
図8】実施例2に係る道路の不具合通報方法の流れを示すフローチャートである。
【
図9】実施例3に係る道路の不具合通報方法の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、実施形態に係るカメラシステム10が設置される車両1の一例を示す図である。
図1に示す例では、車両1は電動キックボードであり、カメラシステム10はハンドルバーの所定の位置に設置される。カメラシステム10は、撮像部が車両1の進行方向前方の道路を画角に収める向きに設置される。
【0012】
本実施形態では車両1は、動力を搭載したマイクロモビリティ(例えば、電動キックボード、電動自転車、電動バイク、超小型BEV等)を想定しているが、カメラシステム10が設置される車両1は動力を搭載した車両に限定されない。動力を搭載しない人力の自転車、キックボードも対象になる。カメラシステム10は小型のドライブレコーダで構成されてもよいし、スマートフォンで構成されてもよい。
【0013】
図2は、実施形態に係るカメラシステム10、サーバ20の構成例を示すブロック図である。カメラシステム10は、撮像部11、加速度センサ12、GPS(Global Positioning System)センサ13、制御部14、記録媒体15及びアンテナ16を備える。
【0014】
撮像部11は車両1の前方を撮像する。撮像部11はレンズ、固体撮像素子を含む。固体撮像素子には例えば、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサまたはCCD(Charge Coupled Device)イメージセンサを使用することができる。固体撮像素子は、レンズを介して入射される光を電気的な映像信号に変換して制御部14に出力する。
【0015】
加速度センサ12は、車両1の少なくもZ軸方向に加わる加速度値を検出して制御部14に出力する。加速度センサ12は例えば3軸型であり、Z軸方向が車両1の上下動方向に相当する。道路の不具合を検出するための加速度値の閾値は、車種または各車種の走行時の制限速度に応じて変えてもよい。基本的に、平均車速または制限速度が低い車種ほど、加速度値の閾値が低く設定される。GPSセンサ13は、GNSS(Global Navigation Satellite System)受信機の一例であり、車両1の現在の位置情報を緯度・経度・標高で検出し、検出した位置情報を制御部14に出力する。GPSセンサ13は具体的には、複数のGPS衛星から、それぞれの発信時刻を含む電波をそれぞれ受信し、受信した複数の電波にそれぞれ含まれる複数の発信時刻に基づいて受信地点の緯度・経度・標高等を算出する。
【0016】
記録媒体15は大容量の不揮発性の記録媒体であり、撮像部11で撮像された車両1の前方映像を記録することができる。記録媒体15には例えば、内蔵のフラッシュメモリまたは外付けの半導体メモリカードが使用される。
【0017】
制御部14は、一時記憶部141、検知部142及び無線通信部143を含む。制御部14は、ハードウェア資源とソフトウェア資源の協働、またはハードウェア資源のみにより実現される。ハードウェア資源として、CPU、ROM、RAM、GPU(Graphics Processing Unit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、その他のLSIを利用できる。ソフトウェア資源としてファームウェア等のプログラムを利用できる。
【0018】
一時記憶部141は、撮像部11で撮像された映像データを一定時間分、記憶するリングバッファである。リングバッファの容量がフルになると、古い順に映像データが消去される。
【0019】
検知部142は、加速度センサ12で検出された加速度値をもとに、道路の不具合箇所を検知する。検知部142は、加速度値の所定期間の、移動標準偏差値、移動分散値、または絶対値移動平均の変化率(傾き)うちの少なくともひとつが所定の閾値を超えたとき、道路に不具合箇所があると判定する。所定期間及び所定の閾値は、設計者による実験やシミュレーションの結果をもとにチューニングされた値に設定される。
【0020】
無線通信部143は、携帯電話網(4G/5G)及び無線LAN(例えば、Wi-Fi(登録商標))を使用した無線通信制御を実行することができる。無線通信部143は、アンテナ16から携帯電話網または無線LANを使用して携帯電話基地局または無線LANアクセスポイントに無線でアクセスする。無線通信部143は、携帯電話基地局または無線LANアクセスポイントが接続されたネットワーク5(例えば、インターネット、専用線)を介して、外部のサーバ20に接続する。
【0021】
検知部142は、道路に不具合箇所があると検知すると、不具合箇所の検知タイミングから所定時間前(例えば、10秒前)までの映像データを、一時記憶部141から記録媒体15に記録させるとともに無線通信部143に出力させる。その際、検知部142は、当該映像データに、道路の不具合箇所が検知された時点の位置情報と時刻情報を付加する。無線通信部143は、一時記憶部141から入力された映像データを、ネットワーク5を介してサーバ20に送信する。
【0022】
サーバ20は、国や自治体等の道路管理者により管理される、道路の不具合箇所の映像データを保管するためのサーバである。サーバ20は、制御部21、道路映像保管部22、通信部23、表示部24及び操作部25を備える。
【0023】
通信部23は、ネットワーク5を介してカメラシステム10と通信するための通信処理を実行する。制御部21は、ハードウェア資源とソフトウェア資源の協働により実現できる。ハードウェア資源として、CPU、ROM、RAM、GPU、ASIC、FPGA、その他のLSIを利用できる。ソフトウェア資源としてオペレーティングシステム、ミドルウェア、アプリケーション等のプログラムを利用できる。
【0024】
道路映像保管部22は、HDD、SSD等の不揮発性の記録媒体内に構築され、カメラシステム10から送信されてくる道路の不具合箇所の映像データを保管する。表示部24は、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、ミニLEDディスプレイ等のディスプレイを備え、制御部21から入力される画像を表示する。操作部25は、キーボード、マウス、タッチパネル等のユーザインタフェースを含み、道路管理部門の担当者の操作を受け付け、受け付けた操作内容を制御部21に出力する。
【0025】
多数の道路の穴ぼこ画像、亀裂画像をディープラーニングで学習した道路の不具合検知用の学習モデルを事前に準備し、学習モデルをサーバ20の不揮発性メモリに保持しておいてもよい。その場合、制御部21は、カメラシステム10から受信した撮像部11で撮像された映像のフレーム画像内の道路の不具合箇所を、道路の不具合検知用の学習モデルと照合することにより、確定させることができる。また、不具合箇所の確定は、道路管理部門の担当者が目視で判断してもよい。なお、画像解析により道路の不具合箇所を確定させる場合、カメラシステム10からサーバ20に映像を送信するトリガは、加速度値の移動標準偏差値、移動分散値、または絶対値移動平均の変化率うちの少なくともひとつが閾値を超えたことではなく、加速度値が加速度値そのものの閾値を超えたこととしてもよい。
【0026】
(実施例1)
図3は、実施形態に係るカメラシステム10を使用した、実施例1に係る道路の不具合通報方法の具体例を示す図である。
図3に示す例では、道路の路面に穴ぼこH1が空いている。車両1のユーザは、穴ぼこH1を回避せずに、穴ぼこH1の上を通過した。本実施形態では、穴ぼことは、走行出来ないような陥没ではなく、窪み(周囲よりも低く落ち込んでいる所、へこんでいる所)であり、陥没のような走行が出来ない穴でなく、走行に多少支障がある穴を指すものとする。
【0027】
図4は、
図3の道路のA区間、B区間、C区間を走行中の加速度センサ12で検出される加速度値と、所定期間の加速度値の標準偏差値の模式的な波形を示す図である。穴ぼこH1を通過するB区間の加速度値の振幅が大きくなる。したがって、A区間、C区間の標準偏差値に対してB区間の標準偏差値が大きくなる。A区間からB区間に遷移する際に標準偏差値が所定の閾値以上の傾きで上昇し、B区間からC区間に遷移する際に標準偏差値が所定の閾値以上の傾きで低下する。なお、標準偏差値の代わりに、分散値または絶対値移動平均を使用してもよい。
【0028】
図5は、実施例1に係る道路の不具合通報方法の流れを示すフローチャートである。車両1の走行中、撮像部11で撮像された道路の映像データが一時記憶部141に取得される(ステップS10)。検知部142は、加速度センサ12で検出されたZ軸方向の加速度値を取得する(ステップS11)。検知部142は、GPSセンサ13で検出された位置情報を取得する(ステップS12)。
【0029】
検知部142は、所定期間の加速度値の標準偏差値の変化率を監視する(ステップS13)。標準偏差値の変化率が閾値未満の場合(ステップS13:No)、ステップS10に遷移する。標準偏差値の変化率が閾値以上の場合(ステップS13:Yes)、検知部142は、標準偏差値の変化率が閾値以上になった時から所定時間前までの映像データを、一時記憶部141から無線通信部143に出力させる。その際、検知部142は、当該映像データに、道路の不具合箇所が検知された時点の位置情報と時刻情報を付加する。無線通信部143は当該映像データを、ネットワーク5を介してサーバ20に送信する(ステップS15)。
【0030】
サーバ20は、カメラシステム10から映像データを受信すると、道路映像保管部22に映像データを保管する(ステップS23)。道路管理部門の担当者は定期的に、映像データを見て、修繕が必要な不具合か否かを確認する。修繕が必要な不具合の場合、担当者は修繕工事を手配する。なお、道路映像保管部22に保管された映像データを画像解析することで、修繕が必要な不具合か修繕が不要な不具合かを判別してもよい。
【0031】
(実施例2)
実施例1では、標準偏差値の変化率が閾値以上の場合、カメラシステム10からサーバ20に映像データが送信されるが、道路の不具合以外の振動により映像データが送信されてしまうこともある。例えば、道路の縁石を乗り超える際の振動でも映像データが送信されてしまうことがある。実施例2では、カメラシステム10からサーバ20への映像データの送信にフィルタをかけて、不要な映像データの送信回数を低減する。
【0032】
図6は、実施例2に係る道路の不具合通報方法の具体例を示す図である。
図6に示す例では、歩道と車道の間に縁石C1が設置されている。
図6に示す例では、歩道の舗装時期が車道の舗装時期より古く、歩道の摩擦係数が車道の摩擦係数より高い状態にある。車両1のユーザは、歩道から縁石C1を乗り超えて車道に車線変更した。
【0033】
図7は、
図6の道路のA区間、B区間、C区間を走行中の加速度センサ12で検出される加速度値と、所定期間の加速度値の標準偏差値の模式的な波形を示す図である。舗装時期が古い歩道を走行するA区間の加速度値の振幅が、舗装時期が新しい車道を走行するC区間の加速度値の振幅より大きくなっている。縁石C1を通過するB区間の加速度値の振幅が最も大きくなっている。A区間からB区間に遷移する際に標準偏差値が所定の閾値以上の傾きで上昇し、B区間からC区間に遷移する際に標準偏差値が所定の閾値以上の傾きで低下している。
【0034】
図8は、実施例2に係る道路の不具合通報方法の流れを示すフローチャートである。以下、
図5に示した実施例1のフローチャートとの相違点を説明する。ステップS13において、標準偏差値の変化率が閾値以上の場合(ステップS13:Yes)、検知部142は、標準偏差値が閾値以上の変化率で上昇する第1時点t1と、それ以降で最初に標準偏差値が閾値以上の変化率で低下する第2時点t2を特定する。検知部142は、第1時点t1より前の所定期間の標準偏差値の平均値と、第2時点t2より後の所定期間の標準偏差値の平均値の差分を算出する(ステップS14)。
【0035】
平均値の差分が所定値以上の場合(ステップS14:No)、ステップS10に遷移する。この場合、標準偏差値が大きくなった区間の振動は車線間を仕切る段差(例えば、縁石C1)を通過する際に発生した振動と推定され、道路の不具合通報の対象から除外する。平均値の差分が所定値未満の場合(ステップS14:Yes)、ステップS15に遷移し、道路の不具合通報の対象とする。
【0036】
(実施例3)
実施例2では、車線変更の際に発生した振動と推定される場合、映像データを送信しないフィルタを説明した。このフィルタは、車線変更前の車線のアスファルトの状態と、車線変更後の車線のアスファルトの状態が近似している場合、有効に機能しない可能性がある。実施例3では、カメラシステム10からサーバ20への映像データの送信回数を低減する別の方法を説明する。
【0037】
図9は、実施例3に係る道路の不具合通報方法の流れを示すフローチャートである。以下、
図5に示した実施例1のフローチャートとの相違点を説明する。ステップS13において、標準偏差値の変化率が閾値以上の場合(ステップS13:Yes)、検知部142は、標準偏差値の変化率が閾値以上になった時点の位置情報と時刻情報を無線通信部143に出力し、無線通信部143は入力された位置情報と時刻情報を、ネットワーク5を介してサーバ20に送信する(ステップS14)。
【0038】
サーバ20はカメラシステム10から位置情報と時刻情報を受信すると、制御部21は、受信した位置情報の近傍の位置情報が付加された映像データが、道路映像保管部22に存在するか否か検索する(ステップS20)。例えば、位置間の距離が所定の距離以内の場合、近傍の要件を満たすとする。所定の距離は、道路管理部門の担当者が設定変更することができる。
【0039】
受信した位置情報の近傍の位置情報が付加された映像データが存在しない場合(ステップS20:No)、制御部21は通信部23を使用して、カメラシステム10に映像データの送信要求を送信する(ステップS22)。受信した位置情報の近傍の位置情報が付加された映像データが存在する場合(ステップS20:Yes)、制御部21は、受信した時刻情報と、受信した位置情報の近傍の位置情報が付加された映像データの時刻情報との差分時間を算出する(ステップS21)。
【0040】
差分時間が所定の時間以上の場合(ステップS21:Yes)、制御部21は道路の不具合が解消されていないと判断して、通信部23を使用して、カメラシステム10に映像データの送信要求を送信する(ステップS22)。所定の時間は、道路管理部門の担当者が設定変更することができる。差分時間が所定の時間未満の場合(ステップS21:No)、カメラシステム10に映像データの送信要求を送信しない。もしくは、カメラシステム10に映像データの送信不要通知を送信する。同じ場所の比較的新しい映像データが既に存在する場合は、新たな映像データを入手する必要性が低いため、映像データの送信を要求しない。
【0041】
カメラシステム10がサーバ20から映像データの送信要求を受信すると、検知部142は、標準偏差値の変化率が閾値以上になった時から所定時間前までの映像データを、一時記憶部141から無線通信部143に出力させる。無線通信部143は当該映像データを、ネットワーク5を介してサーバ20に送信する(ステップS15)。サーバ20は、カメラシステム10から映像データを受信すると、道路映像保管部22に映像データを保管する(ステップS23)。
【0042】
カメラシステム10側において、標準偏差値の変化率が閾値以上になった時点の位置情報と時刻情報をサーバ20に送信してから所定時間が経過しても、サーバ20から映像データの送信要求を受信しない場合、またはサーバ20から送信不要通知を受信した場合、映像データの送信をスキップする。
【0043】
実施例1-3のステップS15における無線通信部143による映像データの送信は、無線通信部143が無料無線LANの電波圏内に存在するときのみ、実行されてもよい。携帯電話網を使用して映像データを送信すると通信料金が発生するため、携帯電話網の電波圏内であっても、無料無線LANの電波圏外である場合、映像データの送信を保留する。無線通信部143が無料無線LANの電波圏内に入った後、無線通信部143は、一時記憶部141から送信すべき映像データを読み出してサーバ20に送信する。
【0044】
実施例1-3に示したカメラシステム10の動作は、制御部14がプログラムを実行することにより実現される。当該プログラムは、カメラシステム10に予めインストールされていてもよいし、アプリケーションプログラムストアからネットワーク5を介してカメラシステム10にダウンロードされてインストールされてもよい。
【0045】
以上説明したように本実施形態によれば、道路の不具合箇所が検知されると自動的に映像データが送信されるため、道路の不具合の情報を効率的かつ効果的に収集することができる。加速度値の標準偏差、分散、移動平均の変化率が閾値以上になることを基準に、道路の不具合箇所を検知することで、路面の種類(例えば、舗装道路、石畳、レンガ道)に関係なく不具合箇所を検知することができる。
【0046】
なお同様の効果は、検知部142が画像解析により路面の種類を特定し、路面の種類に基づいて、加速度値の閾値を可変することでも実現できる。ここで、加速度値の閾値は、加速度値の標準偏差、分散、絶対値移動平均の変化率のうちの少なくともひとつの閾値であってもよい。検知部142は、道路の映像を画像解析して路面の種類を特定する。検知部142は、摩擦係数の高い種類の路面であるほど、加速度値の閾値を高く設定する。例えば、石畳は舗装道路より加速度値の閾値が高く設定される。検知部142は、加速度センサ12で検出される加速度値が当該閾値以上の時、不具合箇所があると判定する。
【0047】
実施例2では、車線変更が推定される場合、映像データをサーバ20へ送信しないことで、無駄な映像データの送信回数を低減できる。実施例3では、同じ場所の不具合の映像データが既にサーバ20に保管されている場合、映像データをサーバ20へ送信しないことで、無駄な映像データの送信回数を低減できる。実施例3では、仮に視覚障害者誘導用ブロックを横切る際の振動をトリガに映像データがサーバ20に送信された場合でも、2回目以降の映像データの送信は回避できる。
【0048】
以上、本発明を実施形態に基づき説明した。この実施形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0049】
変形例では、サーバ20に、道路の縁石や視覚障害者誘導用ブロック等の人工的な段差または凹凸の詳細な位置情報を含む地図データを予め準備する。カメラシステム10に高精度なGNSSが搭載されている場合、サーバ20はカメラシステム10から、不具合箇所があると判定された高精度な位置情報を受信できる。サーバ20は、上記地図データを参照して、受信した位置情報が人工的な段差または凹凸がある場所であるか否か判定する。サーバ20は受信した位置情報が人工的な段差または凹凸がある場所でない場合、カメラシステム10に映像データの送信要求を送信する。これにより、カメラシステム10からサーバ20への無駄な映像データの送信回数を低減できる。
【0050】
別の変形例では、カメラシステム10は道路の不具合箇所が映った映像データを、地図ベンダが管理するサーバに送信してもよい。地図ベンダは、収集した道路の不具合の情報を、地図コンテンツの充実のために活用することができる。
【符号の説明】
【0051】
1 車両、 5 ネットワーク、 10 カメラシステム、 11 撮像部、 12 加速度センサ、 13 GPSセンサ、 14 制御部、 141 一時記憶部、 142 検知部、 143 無線通信部、 15 記録媒体、 16 アンテナ、 20 サーバ、 21 制御部、 22 道路映像保管部、 23 通信部、 24 表示部、 25 操作部。