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特開2024-77216半導体ウエハ加工用液状表面保護材、半導体ウエハ加工用液状表面保護材から形成された保護膜、および、半導体ウエハの加工方法
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  • 特開-半導体ウエハ加工用液状表面保護材、半導体ウエハ加工用液状表面保護材から形成された保護膜、および、半導体ウエハの加工方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024077216
(43)【公開日】2024-06-07
(54)【発明の名称】半導体ウエハ加工用液状表面保護材、半導体ウエハ加工用液状表面保護材から形成された保護膜、および、半導体ウエハの加工方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20240531BHJP
   C09D 133/06 20060101ALI20240531BHJP
   C09D 5/02 20060101ALI20240531BHJP
【FI】
H01L21/304 622J
C09D133/06
C09D5/02
H01L21/304 631
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022189164
(22)【出願日】2022-11-28
(71)【出願人】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003845
【氏名又は名称】弁理士法人籾井特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 健史
(72)【発明者】
【氏名】桐山 尚央
(72)【発明者】
【氏名】三木 恵太
(72)【発明者】
【氏名】橋本 康希
【テーマコード(参考)】
4J038
5F057
【Fターム(参考)】
4J038CG051
4J038NA05
4J038PB09
4J038PC03
5F057AA05
5F057AA21
5F057AA31
5F057BA26
5F057BB03
5F057CA14
5F057DA11
5F057EC03
5F057EC04
5F057EC05
5F057EC09
5F057EC14
5F057EC15
5F057EC19
5F057FA28
5F057FA30
(57)【要約】
【課題】半導体ウエハ表面の埋め込み性に優れ、かつ、剥離後の半導体ウエハ表面への糊残り(表面保護部材の残渣の付着)を抑制し得る半導体ウエハ加工用液状表面保護材を提供すること。
【解決手段】本発明の実施形態の半導体ウエハ加工用液状表面保護材は、アクリル系エマルション樹脂を含む。また、本発明の実施形態の保護膜は上記半導体ウエハ加工用液状表面保護材から形成される。本発明の実施形態の半導体ウエハの加工方法は、半導体ウエハ加工用液状表面保護材を半導体ウエハの回路パターンが形成された面に塗布し、保護膜を形成することと、半導体ウエハの保護膜が形成されていない面を研削することと、保護膜を剥離除去することと、を含む。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクリル系エマルション樹脂を含む、半導体ウエハ加工用液状表面保護材。
【請求項2】
前記アクリル系エマルション樹脂の酸価が10mg/KOH以下である、請求項1に記載の半導体ウエハ加工用液状表面保護材。
【請求項3】
前記アクリル系エマルション樹脂のSP値が9(cal/cm1/2~11(cal/cm1/2である、請求項1に記載の半導体ウエハ加工用液状表面保護材。
【請求項4】
BH粘度が0.1Pa・s~10Pa・sである、請求項1に記載の半導体ウエハ加工用液状表面保護材。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載の半導体ウエハ加工用液状表面保護材を用いて形成された保護膜。
【請求項6】
23℃における引張弾性率が0.1GPa~1.1GPaである、請求項5に記載の保護膜。
【請求項7】
シリコンウエハに対する粘着力が1.0N/25mm以下である、請求項5に記載の保護膜。
【請求項8】
請求項1から4のいずれかに記載の半導体ウエハ加工用液状表面保護材を半導体ウエハの回路パターンが形成された面に塗布し、保護膜を形成することと、
該半導体ウエハの保護膜が形成されていない面を研削することと、
該保護膜を剥離除去することと、を含む、半導体ウエハの加工方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は半導体ウエハ加工用液状表面保護材、半導体ウエハ加工用液状表面保護材から形成された保護膜、および、半導体ウエハの加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウエハは、回路が形成された面を保護材で保護した状態で、バックグラインド工程等の加工工程に供される。半導体ウエハの代表的な保護材としては、粘着テープが知られている(例えば、特許文献1)。近年、半導体ウエハの回路面は複雑化しており、粘着テープでは回路面の凹凸を十分に埋め込むことができない場合がある。埋め込みが不十分である場合、粘着テープの粘着剤層と半導体ウエハ表面との間に水が浸入し、チップ飛び、および、割れが生じるおそれがある。また、埋め込みが不十分である部分に異物が付着する場合がある。
【0003】
粘着テープ以外の半導体ウエハの回路面の保護方法として、液状の組成物を塗布し、保護膜を形成する方法が提案されている(例えば、特許文献2~6)。しかしながら、これらの方法により形成された保護膜は、保護膜除去後に、回路面に残渣が付着し保護膜による回路面の汚染が生じ得る。また、除去工程には、溶剤を用いた除去工程が必要な場合があり、環境への負荷が増加し得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015-185641号公報
【特許文献2】特開平10-120965号公報
【特許文献3】特開2000-315668号公報
【特許文献4】特開2014-212179号公報
【特許文献5】特開2011-23272号公報
【特許文献6】特開2014-19889号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記従来の課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、半導体ウエハ表面の埋め込み性に優れ、かつ、剥離後の半導体ウエハ表面への糊残り(表面保護部材の残渣の付着)を抑制し得る半導体ウエハ加工用液状表面保護材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
1.本発明の実施形態の半導体ウエハ加工用液状表面保護材は、アクリル系エマルション樹脂を含む。
2.上記1に記載の半導体ウエハ加工用液状表面保護材において、上記アクリル系エマルション樹脂の酸価は10mg/KOH以下であってもよい。
3.上記1または2に記載の半導体ウエハ加工用液状表面保護材において、上記アクリル系エマルション樹脂のSP値は9(cal/cm1/2~11(cal/cm1/2であってもよい。
4.上記1から3のいずれかに記載の半導体ウエハ加工用液状表面保護材において、BH粘度は0.1Pa・s~10Pa・sであってもよい。
5.本発明の実施形態の別の局面においては保護膜が提供される。この保護膜は、上記1から4のいずれかに記載の半導体ウエハ加工用液状表面保護材を用いて形成される。
6.上記5に記載の保護膜において、23℃における引張弾性率は0.1GPa~1.1GPaであってもよい。
7.上記5または6に記載の保護膜において、シリコンウエハに対する粘着力は1.0N/25mm以下であってもよい。
8.本発明の実施形態のさらに別の局面においては、半導体ウエハの加工方法が提供される。この半導体ウエハの加工方法は、上記1から4のいずれかに記載の半導体ウエハ加工用液状表面保護材を半導体ウエハの回路パターンが形成された面に塗布し、保護膜を形成することと、該半導体ウエハの保護膜が形成されていない面を研削することと、該保護膜を剥離除去することと、を含む。
【発明の効果】
【0007】
本発明の実施形態によれば、半導体ウエハ表面(より詳細には回路面)の埋め込み性に優れ、かつ、保護膜を剥離後の半導体ウエハ表面への糊残り(表面保護部材の残渣の付着)を抑制し得る半導体ウエハ加工用液状表面保護材が提供される。さらに、本発明の実施形態の半導体ウエハ加工用液状表面保護材を用いて形成された保護膜は、剥離除去が可能であり、溶剤による除去工程を必要としない。したがって、溶剤使用による環境への負荷を低減し得る。さらに、剥離後の半導体ウエハ表面への糊残り(表面保護部材の残渣の付着)も抑制し得る。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施形態の半導体ウエハの加工工程における半導体ウエハおよび保護膜の概略断面図である。
図2】本発明の別の実施形態の半導体ウエハの加工工程における半導体ウエハおよび保護膜の概略断面図である。
図3】本発明のさらに別の実施形態の半導体ウエハの加工工程における半導体ウエハおよび保護膜の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
A.半導体ウエハ加工用液状表面保護材
本発明の実施形態の半導体ウエハ加工用液状表面保護材(以下、液状表面保護材ともいう)は、アクリル系エマルション樹脂を含む。本発明の実施形態の液状表面保護材は、例えば、半導体ウエハの回路面に塗布して用いられる。半導体ウエハの回路面の形状は複雑化しており、半導体ウエハの加工工程で回路面を適切に保護するために、より埋め込み性に優れた表面保護材が求められている。本発明の実施形態の表面保護材は液状であるため、半導体ウエハの回路面が複雑な形状であっても、半導体ウエハの表面(より詳細には回路面)の埋め込み性に優れ得る。また、本発明の実施形態の液状表面保護材により形成される保護膜は、剥離により容易に除去することができる。そのため、溶剤による溶解除去工程を必要とせず、溶剤による環境への負荷を低減し得る。さらに、半導体ウエハ表面への糊残り(表面保護部材の残渣の付着)も抑制し得る。
【0010】
本発明の実施形態の液状表面保護材のBH粘度は、好ましくは0.1Pa・s~10Pa・sであり、より好ましくは0.2Pa・s~5Pa・sであり、さらに好ましくは0.3Pa・s~3Pa・sであり、特に好ましくは0.5Pa・s~2Pa・sである。BH粘度が上記範囲であれば、液状表面保護材を半導体ウエハ表面に良好に塗布することができる。BH粘度は塗布方法に合わせて任意の適切な値に調整され得る。本明細書において、BH粘度は、BH型粘度計により、30℃、2rpmの条件で測定した粘度をいう。測定に使用するローターは、粘度に応じて任意の適切なローターを用いることができ、例えば、No.2ローターを用いることができる。
【0011】
A-1.アクリル系エマルション樹脂
アクリル系エマルション樹脂としては、任意の適切なモノマー成分を乳化重合して得られた樹脂を用いることができる。上記のとおり、本発明の実施形態の液状表面保護材は、アクリル系エマルション樹脂を含む。アクリル系エマルション樹脂を含む液状表面保護材は、塗布後乾燥させることにより半導体ウエハ表面に保護膜を形成する。この保護膜は、半導体ウエハの加工工程では半導体ウエハの表面を適切に保護し、使用後は溶剤を用いて溶解させることなく、剥離除去することができる。さらに、剥離後の半導体ウエハ表面への糊残り(表面保護部材の残渣の付着)も抑制し得る。アクリル系エマルションは、モノマーの種類が豊富であり、共重合させるモノマーの種類を選択することにより適切な物性を有する保護膜を形成可能な液状表面保護材が得られ得る。
【0012】
アクリル系エマルション樹脂の酸価は、好ましくは10mg/KOH以下であり、より好ましくは0mg/KOH~8mg/KOHであり、さらに好ましくは0mg/KOH~5mg/KOHであり、特に好ましくは0mg/KOH~3mg/KOHである。アクリル系エマルション樹脂の酸価が上記範囲であれば、液状表面保護材により形成される保護膜の剥離作業性(例えば、剥離時の保護膜のちぎれおよび欠けの発生の抑制)が向上し、半導体ウエハ表面から容易に剥離することができる。本明細書において、アクリル系エマルション樹脂の酸価は、JIS K0070:1992に規定される電位差滴定法に準じて測定される値をいう。
【0013】
アクリル系エマルション樹脂のSP値は、好ましくは9(cal/cm1/2~11(cal/cm1/2であり、より好ましくは9(cal/cm1/2~10.8(cal/cm1/2であり、さらに好ましくは9(cal/cm1/2~10.5(cal/cm1/2である。SP値が上記範囲であれば、液状表面保護材により形成される保護膜の半導体ウエハ表面に対する粘着力が高くなりすぎることによる剥離不良の発生、および、半導体ウエハ表面への表面保護部材の残渣の付着を抑制し得る。本明細書においてSP値とは、フェドーズ(Fedors)が提案した方法で化合物の基本構造から計算される溶解性パラメータ(Solubility Parameter)の値をいう。
【0014】
アクリル系エマルション樹脂のガラス転移温度(Tg)は任意の適切な値に設定することができる。アクリル系エマルション樹脂のガラス転移温度は、好ましくは-30℃~30℃であり、より好ましくは-25℃~25℃であり、さらに好ましくは-20℃~20℃である。アクリル系エマルション樹脂のTgが上記範囲であれば、液状表面保護材により形成される保護膜の半導体ウエハとの密着性が向上し、より埋め込み性に優れた液状表面保護材を提供することができる。本明細書において、アクリル系エマルション樹脂のガラス転移温度は、各樹脂(重合体)を構成するモノマー単位とその割合から、Foxの式により算出される理論値をいう。Foxの式より求められる理論ガラス転移温度は、示差走査熱量測定(DSC)または動的粘弾性測定等の方法により求められる実測ガラス転移温度と一致し得る。なお、理論値が算出できない場合には、実測ガラス転移温度を用いることができる。
【0015】
Foxの式とは、以下に示すように、アクリル系ポリマーのTgと、アクリル系ポリマーを構成するモノマーのそれぞれを単独重合したホモポリマーのガラス転移温度Tgiとの関係式である。
1/Tg=Σ(Wi/Tgi)
(式中、Tgはアクリル系ポリマーのガラス転移温度(単位:K)、Wiはアクリル系ポリマーにおけるモノマーiの重量分率(重量基準の共重合割合)、Tgiはモノマーiのホモポリマーのガラス転移温度(単位:K)を表す)。
【0016】
Tgの算出に使用するホモポリマーのガラス転移温度としては、任意の適切な資料に記載の値を用いることができる。例えば、以下に挙げるモノマーについては、該モノマーのホモポリマーのガラス転移温度として、以下の値を使用する。
n-ブチルアクリレート -55℃
アクリロニトリル 97℃
メタクリル酸メチル 105℃
アクリル酸 106℃
酢酸ビニル 32℃
【0017】
上記で例示した以外のモノマーのホモポリマーのガラス転移温度については、例えば、「Polymer Handbook」(第3版、John Wiley & Sons, Inc., 1989)に記載の数値を用いることができる。なお、複数種類の値が記載されている場合は、最も高い値を採用する。
【0018】
上記Polymer Handbookにホモポリマーのガラス転移温度が記載されていないモノマーについては、特開2007-51271号公報に記載の測定方法により得られる値(実測ガラス転移温度)を用いることができる。具体的には、温度計、攪拌機、窒素導入管および還流冷却管を備えた反応器に、モノマー100重量部、アゾビスイソブチロニトリル0.2重量部および重合溶媒として酢酸エチル200重量部を投入し、窒素ガスを流通させながら1時間攪拌する。このようにして重合系内の酸素を除去した後、63℃に昇温し10時間反応させる。次いで、室温まで冷却し、固形分濃度33重量%のホモポリマー溶液を得る。次いで、このホモポリマー溶液を剥離ライナー上に流延塗布し、乾燥して厚さ約2mmの試験サンプル(シート状のホモポリマー)を作製する。この試験サンプルを直径7.9mmの円盤状に打ち抜き、パラレルプレートで挟み込み、粘弾性試験機(ARES、レオメトリックス社製)を用いて周波数1Hzのせん断歪みを与えながら、温度領域-70℃~150℃、5℃/分の昇温速度でせん断モードにより粘弾性を測定し、tanδのピークトップ温度をホモポリマーのTgとする。
【0019】
A-1-1.モノマー組成物
上記のとおり、アクリル系エマルション樹脂は、任意の適切なモノマー組成物を乳化重合することにより得られる。モノマー組成物は、(メタ)アクリル系モノマーおよび/または(メタ)アクリル系モノマーと共重合可能な任意の適切なモノマーを含む。モノマー成分は1種のモノマーのみを含んでいてもよく、2種以上のモノマーを組み合わせて用いてもよい。本明細書において、(メタ)アクリルとは、アクリルおよび/またはメタクリルをいう。
【0020】
代表的には、モノマー組成物は好ましくは(メタ)アクリロイル基含有モノマーを含む。(メタ)アクリロイル基含有モノマーは、1種をのみを用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。(メタ)アクリロイル基含有モノマーの含有割合は、全モノマー成分の合計100重量部のうち、好ましくは40重量部以上であり、より好ましくは60重量部以上であり、さらに好ましくは65重量部以上であり、特に好ましくは70重量部以上である。(メタ)アクリロイル基含有モノマーは、全モノマー成分の合計100重量部のうち、例えば、95重量部以下である。(メタ)アクリロイル基含有モノマーの含有割合が上記範囲であれば、液状表面保護材により形成された保護膜を剥離除去することができ、さらに、半導体ウエハ表面への糊残り(表面保護部材の残渣の付着)も抑制し得る。
【0021】
(メタ)アクリロイル基含有モノマーとしては、任意の適切な(メタ)アクリロイル基含有モノマーが用いられる。好ましくは、(メタ)アクリロイル基含有モノマーとしてアルキル(メタ)アクリレートが用いられる。用いるアルキル(メタ)アクリレートの種類および/または含有割合を調整することで、液状表面保護材の貯蔵弾性率、アクリル系エマルション樹脂のSP値、および、形成される保護膜の引張特性等を任意の適切な値に調整し得る。アルキル(メタ)アクリレートは、1種のみを用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0022】
アルキル(メタ)アクリレートとしては、任意の適切なアルキル(メタ)アクリレートを用いることができる。具体的には、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸s-ブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸ヘプタデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル、(メタ)アクリル酸ノナデシル、(メタ)アクリル酸エイコシル等の炭素数1~20のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート(以下、C1~C20アルキル(メタ)アクリレートともいう)が挙げられる。
【0023】
モノマー組成物は、好ましくは炭素数4~20のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート(C4~C20のアルキル(メタ)アクリレート)を含み、より好ましくは炭素数4~14のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートを含み、さらに好ましくは炭素数4~9のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートを含む。これらのアルキル(メタ)アクリレートを用いれば、液状表面保護材を用いて形成された保護膜の剥離を容易に行うことができる。さらに、剥離後の半導体ウエハ表面への糊残り(表面保護部材の残渣の付着)も抑制し得る。具体的には、モノマー組成物は、好ましくはn-ブチルアクリレート(BA)および/または2-エチルヘキシルアクリレート(2EHA)を含み、より好ましくはBAを含む。C4~C20のアルキル(メタ)アクリレートは1種のみを用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0024】
モノマー組成物において、C4~C20のアルキル(メタ)アクリレートは任意の適切な含有割合で用いることができる。C4~C20のアルキル(メタ)アクリレートの含有割合は、全モノマー成分100重量部のうち、好ましくは40重量部以上であり、より好ましくは60重量部以上であり、さらに好ましくは65重量部以上である。C4~C20のアルキル(メタ)アクリレートの含有割合が上記範囲であれば、液状表面保護材を用いて形成された保護膜の剥離を容易に行うことができる。また、半導体ウエハ表面への粘着力を適切な値に調整することができ、剥離時の半導体ウエハ表面の損傷を抑制し得る。
【0025】
モノマー組成物は、好ましくは窒素原子含有モノマーをさらに含む。窒素原子含有モノマーとしては、任意の適切な窒素原子含有モノマーを用いることができる。具体的には、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、2-シアノエチル(メタ)アクリレート等のシアノ基含有モノマー;(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N-ブチル(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N-メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリルアミド等のアミド基含有モノマー;アミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、t-ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のアミノ基含有モノマー;N-ビニル-2-ピロリドン、N-メチルビニルピロリドン、N-ビニルピリジン、N-ビニルピペリドン、N-ビニルピリミジン、N-ビニルピペラジン、N-ビニルピラジン、N-ビニルピロール、N-ビニルイミダゾール、N-ビニルオキサゾール、N-ビニルモルホリン、N-ビニルカプロラクタム、N-(メタ)アクリロイルモルホリン等の窒素原子含有環を有するモノマー;等が挙げられる。窒素原子含有モノマーは、好ましくはシアノ基含有モノマーであり、より好ましくはアクリロニトリルである。これらの窒素原子含有モノマーを含むモノマー組成物を用いて得られるアクリル系エマルション樹脂を用いることで、液状表面保護材を用いて形成された保護膜の剥離を容易に行うことができ、半導体ウエハ表面の損傷を抑制し得る。また、得られるアクリル系エマルション樹脂のTgおよびSP値を任意の値に良好に調整し得る。窒素原子含有モノマーは、1種のみを用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0026】
モノマー組成物において、窒素原子含有モノマーは任意の適切な含有割合で用いることができる。窒素原子含有モノマーは、全モノマー成分100重量部のうち、好ましくは10重量部以上であり、より好ましくは15重量部以上であり、さらに好ましくは20重量部以上であり、特に好ましくは25重量部以上である。窒素原子含有モノマーの含有割合が上記範囲であれば、液状表面保護材を用いて形成された保護膜の剥離を容易に行うことができる。さらに、剥離後の半導体ウエハ表面への糊残り(表面保護部材の残渣の付着)も低減し得る。窒素原子含有モノマーの含有割合は、全モノマー成分100重量部のうち、好ましくは50重量部以下である。
【0027】
モノマー組成物は、好ましくは炭素数1~3のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート(C1~C3のアルキル(メタ)アクリレート)をさらに含む。これらのアルキル(メタ)アクリレートをさらに含むモノマー組成物を用いれば、液状表面保護材を用いて形成された保護膜の剥離を容易に行うことができ、半導体ウエハ表面の損傷を抑制し得る。C1~C3のアルキル(メタ)アクリレートとしては、好ましくはメチルメタクリレート(MMA)、エチルメタクリレートが用いられる。C1~C3のアルキル(メタ)アクリレートは1種のみを用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0028】
モノマー組成物において、C1~C3のアルキル(メタ)アクリレートは任意の適切な含有割合で用いることができる。C1~C3のアルキル(メタ)アクリレートの含有割合は、全モノマー成分100重量部のうち、好ましくは6重量部以上であり、より好ましくは8重量部以上であり、さらに好ましくは10重量部以上であり、特に好ましくは15重量部以上である。C1~C3のアルキル(メタ)アクリレートの含有割合が上記範囲であれば、液状表面保護材を用いて形成された保護膜の剥離を容易に行うことができ、剥離時の半導体ウエハ表面の損傷を抑制し得る。C1~C3のアルキル(メタ)アクリレートの含有割合は、全モノマー成分100重量部のうち、例えば、50重量部以下である。
【0029】
モノマー組成物は、任意の適切な他のモノマー成分をさらに含んでいてもよい。他のモノマー組成物としては、具体的には、アクリル酸(AA)、メタクリル酸(MAA)、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、カルボキシペンチル(メタ)アクリレート、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イソクロトン酸等のカルボキシ基含有モノマー;2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートおよびポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート等の水酸基(OH基)含有モノマー;無水マレイン酸、無水イタコン酸等の酸無水物基含有モノマー;グリシジル(メタ)アクリレート、メチルグリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル等のエポキシ基含有モノマー;ジアセトン(メタ)アクリレート、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、アリルアセトアセテート、ビニルアセトアセテート等のケト基含有モノマー;3-(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン等のアルコキシシリル基含有モノマー;等の官能基含有モノマーが挙げられる。官能基含有モノマーをさらに含む場合、アクリル系エマルション樹脂の凝集力を高めることができる。さらに、形成された保護膜の引張特性、アクリル系エマルション樹脂のSP値を任意の適切な値に調整し得る。
【0030】
モノマー組成物は、凝集力向上等の目的で、上述したモノマー以外の他の共重合成分をさらに含んでいてもよい。他の共重合成分の例としては、酢酸ビニル(VAc)、プロピオン酸ビニル、ラウリン酸ビニル等のビニルエステル系モノマー;スチレン、置換スチレン(α-メチルスチレン等)、ビニルトルエン等の芳香族ビニル化合物;シクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロペンチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等のシクロアルキル(メタ)アクリレート;アリール(メタ)アクリレート(例えばフェニル(メタ)アクリレート)、アリールオキシアルキル(メタ)アクリレート(例えばフェノキシエチル(メタ)アクリレート)、アリールアルキル(メタ)アクリレート(例えばベンジル(メタ)アクリレート)等の芳香族性環含有(メタ)アクリレート;エチレン、プロピレン、イソプレン、ブタジエン、イソブチレン等のオレフィン系モノマー;塩化ビニル、塩化ビニリデン等の塩素原子含有モノマー;メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート等のアルコキシ基含有モノマー;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル等のビニルエーテル系モノマー;1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等の、1分子中に2以上(例えば3以上)の重合性官能基(例えば(メタ)アクリロイル基)を有する多官能性モノマー;等が挙げられる。
【0031】
上記他のモノマー成分および他の共重合成分は任意の適切な含有割合で用いられる。例えば、モノマー組成物において、上記C4~C20のアルキル(メタ)アクリレート、窒素原子含有モノマー、および、C1~C3のアルキル(メタ)アクリレートとの合計が100重量部となるよう用いられる。
【0032】
A-1-2.アクリル系エマルション樹脂の合成
アクリル系エマルション樹脂は、上記モノマー組成物を乳化重合することにより得られる。乳化重合におけるモノマー供給方式は、全モノマー原料を一度に供給する一括仕込み方式であってもよく、連続供給(滴下)方式であってもよく、分割供給(滴下)方式であってもよい。また、モノマー成分の一部または全部をあらかじめ水および乳化剤と混合して乳化し、その乳化液を重合容器に供給してもよい。
【0033】
重合温度は、使用するモノマーおよび溶媒の種類、重合開始剤の種類等に応じて任意の適切な値に設定することができる。重合温度は、例えば、20℃以上であり、好ましくは40℃以上であり、より好ましくは50℃以上である。また、重合温度は、好ましくは95℃以下であり、より好ましくは85℃以下である。
【0034】
重合開始剤としては、任意の適切な開始剤が用いられる。例えば、アゾ系重合開始剤、過酸化物系開始剤、過酸化物と還元剤との組合せによるレドックス系開始剤、置換エタン系開始剤等が挙げられる。具体的には、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス[N-(2-カルボキシエチル)-2-メチルプロピオンアミジン]ハイドレート、 2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)二硫酸塩、2,2’-アゾビス( 2-メチルプロピオンアミジン)ジヒドロクロライド、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)ジヒドロクロライド、2,2’-アゾビス[2-(5-メチル-2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]ジヒドロクロライド、2,2’-アゾビス(N, N’-ジメチレンイソブチルアミジン)ジヒドロクロライド等のアゾ系開始剤;過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩;ベンゾイルパーオキサイド、t-ブチルハイドロパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ジラウロイルパーオキサイド、ジ-n-オクタノイルパーオキサイド、ジ(4-メチルベンゾイル)パーオキサイド、t-ブチルパーオキシベンゾエート、t-ブチルパーオキシイソブチレート、t-ヘキシルパーオキシピバレート、t-ブチルパーオキシピバレート、ジ(2-エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ(4-t-ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ-sec-ブチルパーオキシジカーボネート、t-ブチルパーオキシネオデカノエート、1,1,3, 3-テトラメチルブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)シクロドデカン、1,1-ビス(t-ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、過酸化水素等の過酸化物系開始剤;過酸化物とアスコルビン酸との組み合わせ、(例えば、過酸化水素水とアスコルビン酸との組み合わせ等)、過酸化物と鉄(II)塩との組み合わせ(過酸化水素水と鉄(II)塩との組み合わせ等)、過硫酸塩と亜硫酸水素ナトリウムとの組み合わせ等のレドックス系開始剤が挙げられる。
【0035】
重合開始剤は、任意の適切な含有量で用いられる。例えば、モノマー成分の合計100重量部に対して好ましくは0.001重量部~5重量部であり、より好ましくは0.01重量部~3重量部であり、さらに好ましくは0.01重量部~2重量部である。
【0036】
乳化重合は、通常、乳化剤の存在下で行われる。乳化剤としては任意の適切な乳化剤を用いることができる。乳化剤としては、アニオン性乳化剤、ノニオン性乳化剤等を用いることができる。乳化剤は、1種のみを用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0037】
アニオン性乳化剤としては、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸アンモニウム、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルスルホコハク酸ナトリウム等が挙げられる。ノニオン性乳化剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー等が挙げられる。また、乳化剤として、反応性官能基を有する乳化剤(反応性乳化剤)を用いてもよい。反応性乳化剤の例としては、上記アニオン性乳化剤またはノニオン性乳化剤に、プロペニル基やアリルエーテル基等のラジカル重合性官能基が導入された構造のラジカル重合性乳化剤が挙げられる。
【0038】
乳化剤は任意の適切な量で用いられる。乳化剤は、モノマー成分の合計100重量部に対して、好ましくは0.2重量部以上であり、より好ましくは0.5重量部以上であり、さらに好ましくは1.0重量部以上であり、特に好ましくは1.5重量部以上である。乳化重合時、および、得られたエマルションを含む組成物の泡立ちを抑える観点から、乳化剤の使用量は、通常、モノマー成分の合計100重量部に対して好ましくは10重量部以下であり、より好ましくは5重量部以下であり、さらに好ましくは3重量部以下である。
【0039】
乳化重合は、保護コロイドの存在下で行ってもよい。保護コロイドとしては、例えば、部分けん化ポリビニルアルコール、完全けん化ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール等のポリビニルアルコール系ポリマー;ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース塩等のセルロース誘導体;グアーガム等の天然多糖類;等が挙げられる。保護コロイドは、1種をのみを用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0040】
部分けん化ポリビニルアルコールのけん化度は、例えば、95モル%未満であり、好ましくは92モル%未満であり、より好ましくは90モル%未満である。部分けん化ポリビニルアルコールのけん化度は、エマルションの安定性等の観点から、好ましくは65モル%以上であり、より好ましくは70モル%以上であり、さらに好ましくは80モル%以上であり、特に好ましくは85モル%以上である。なお、上記のとおり、完全けん化ポリビニルアルコールであってもよい。
【0041】
変性ポリビニルアルコールとしては、例えば、カルボキシ基および/またはスルホン酸基等のアニオン性基が導入されたアニオン変性ポリビニルアルコール;第4級アンモニウム塩等のカチオン性基が導入されたカチオン変性ポリビニルアルコール;等が挙げられる。変性ポリビニルアルコールのけん化度は、例えば98モル%未満であり、好ましくは95モル%未満であり、より好ましくは92モル%未満であり、さらに好ましくは90モル%未満である。また、変性ポリビニルアルコールのけん化度は、例えば、55モル%以上であり、エマルションの安定性等の観点からは、好ましくは65モル%以上であり、より好ましくは70モル%以上であり、さらに好ましくは80モル%以上であり、特に好ましくは85モル%以上である。
【0042】
保護コロイドは、任意の適切な量で用いられる。保護コロイドの含有量は、モノマー成分の合計100重量部に対して、好ましくは0.1重量部以上であり、より好ましくは0.5重量部以上であり、さらに好ましくは0.7重量部以上である。また、保護コロイドの含有量は、モノマー成分の合計100重量部に対して、好ましくは10重量部以下であり、より好ましくは5重量部以下であり、さらに好ましくは3重量部以下であり、特に好ましくは2重量部以下である。保護コロイドは、上記乳化剤と組み合わせて用いてもよく、乳化剤を用いることなく保護コロイドのみを用いてもよい。好ましくは、上記乳化剤と保護コロイドとを組み合わせて用いる。例えば、重合容器内に水および保護コロイドを入れ、モノマー組成物の一部または全部をあらかじめ水および乳化剤と混合して乳化した乳化液を上記重合容器に供給する態様で乳化重合を行うことができる。なお、アニオン性の保護コロイド(例えば、アニオン変性ポリビニルアルコール)と乳化剤とを組み合わせて用いる場合、重合安定性等の観点から、乳化剤としてはアニオン性乳化剤およびノニオン性乳化剤からなる群より選択される少なくとも1種の乳化剤を用いることが好ましい。
【0043】
また、重合の際に、任意の適切な連鎖移動剤を用いてもよい。連鎖移動剤としては、例えば、n-ドデシルメルカプタン、t-ドデシルメルカプタン、チオグリコール酸等のメルカプタン類が挙げられる。また、硫黄原子を含まない連鎖移動剤(非硫黄系連鎖移動剤)を用いてもよい。非硫黄系連鎖移動剤の具体例としては、N,N-ジメチルアニリン、N,N-ジエチルアニリン等のアニリン類;α-ピネン、ターピノーレン等のテルペノイド類;α-メチルスチレン、α―メチルスチレンダイマー等のスチレン類;ジベンジリデンアセトン、シンナミルアルコール、シンナミルアルデヒド等のベンジリデニル基を有する化合物;ヒドロキノン、ナフトヒドロキノン等のヒドロキノン類;ベンゾキノン、ナフトキノン等のキノン類;2,3-ジメチル-2-ブテン、1,5-シクロオクタジエン等のオレフィン類;フェノール、ベンジルアルコール、アリルアルコール等のアルコール類;ジフェニルベンゼン、トリフェニルベンゼン等のベンジル水素類;等が挙げられる。連鎖移動剤は、1種のみを用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。連鎖移動剤を使用する場合、その含有量は、モノマー成分の合計100重量部に対して、例えば、0.01重量部~1重量部である。
【0044】
A-2.添加剤
半導体ウエハ加工用液状表面保護剤は、必要に応じて、任意の適切な添加剤をさらに含み得る。添加剤としては、例えば、触媒(例えば、白金触媒)、粘着付与剤、可塑剤、顔料、染料、充填剤、老化防止剤、導電剤、紫外線吸収剤、光安定剤、剥離調整剤、軟化剤、難燃剤、溶剤、レベリング剤、造膜助剤、増粘剤、チキソ剤、消泡剤等が挙げられる。添加剤は目的に応じて任意の適切な量で用いられる。
【0045】
A-3.半導体ウエハ加工用液状表面保護材の製造方法
半導体ウエハ加工用液状表面保護材は、任意の適切な方法で製造することができる。例えば、アクリル系エマルション樹脂と、任意の添加剤とを、任意の適切な溶媒に添加して混合してもよく、アクリル系エマルション樹脂の乳化重合を行った溶液に任意の添加剤を添加して混合してもよい。また、アクリル系エマルション樹脂をそのまま用いてもよい。また、アクリル系エマルション樹脂に、例えば、アンモニア水を添加してpHを6~8程度に調整してもよく、任意の適切な溶媒を添加し樹脂濃度を調整したものを液状表面保護材として用いてもよい。
【0046】
溶媒としては、任意の適切な溶媒を用いることができる。好ましくは、水性溶媒が用いられる。本明細書において、水性溶媒とは、水または水を主成分(50重量%を超えて含まれる成分)とする混合溶媒をいう。この混合溶媒を構成する水以外の溶媒としては、水と均一に混合し得る有機溶媒を用いることができる。具体的には、低級アルコール等が挙げられる。水と均一に混合し得る有機溶媒は1種のみを用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。水性溶媒は、水の含有割合が、例えば、90重量%以上であり、好ましくは95重量%~100重量%である。
【0047】
B.保護膜
本発明の実施形態の保護膜は、上記A項に記載の半導体ウエハ加工用液状表面保護材を用いて形成される。保護膜は、例えば、任意の適切な方法により液状表面保護材を半導体ウエハの表面に塗布し、次いで乾燥させることにより形成される。
【0048】
保護膜の厚みは任意の適切な値に設定される。例えば、保護膜が形成される半導体ウエハ表面の凸部の高さに合わせて厚みを設定することができる。保護膜の厚みは、例えば、50μm~500μmであり、好ましくは100μm~300μmであり、より好ましくは100μm~200μmである。保護膜の厚みが上記範囲であれば、半導体ウエハ加工工程において半導体ウエハ表面(例えば、回路面)を適切に保護し得る。また、半導体ウエハの加工後に、保護膜が破断することなく容易に剥離除去することができる。
【0049】
保護膜の23℃における引張弾性率は、好ましくは0.1GPa~1.1GPaであり、より好ましくは0.12GPa~1.0GPaであり、さらに好ましくは0.13GPa~0.95GPaである。保護膜の23℃における引張弾性率が上記範囲であれば、粘着テープの剥離に用いられるテープ剥離装置を用いて保護膜を剥離することができる。本明細書において、保護膜の23℃の弾性率は、以下の方法で測定した値をいう。厚み100μmの保護膜(フィルム)を、縦100mm、幅25mmのサイズにカットし、精密万能試験機(株式会社島津製作所製、装置名「オートグラフAG-IS」)を用いて、チャック間距離50mm、引張速度300mm/分で引っ張り、フィルムが塑性変形するまでの応力変化を記録し、応力-ひずみ曲線を得る。引張弾性率は、規定された2点のひずみε=1およびε=2の間の曲線の線形回帰によって求める。異なる箇所から切り出した3つの試験片を用いて上記測定を行い、それらの平均値を引張弾性率とする。なお、上記測定はJIS K 7161に準拠して23℃、50%RHで行う。
【0050】
保護膜のシリコンウエハに対する粘着力は、好ましくは1.0N/25mm以下であり、より好ましくは0.8N/25mm以下であり、さらに好ましくは0.3N/25mm以下であり、特に好ましくは0.1N/25mm以下である。シリコンウエハに対する粘着力は、例えば、0.08N/25mm以上である。シリコンウエハに対する粘着力が上記範囲であれば半導体ウエハの加工工程においては、半導体ウエハ表面を適切に保護し、加工工程後においては半導体ウエハ表面を損傷することなく、容易に剥離除去することができる。本明細書において、シリコンウエハに対する粘着力は以下の方法により測定した粘着力をいう。ミラーウエハ(信越化学製)に、Wet塗布厚み200μmで、長さ100mm以上となるよう液状表面保護材を塗布し、80℃で5分乾燥後、厚み約100μmの保護膜を形成する。その後、23℃で30分間静置する。次いで、23℃、50%RH雰囲気下で、引張速度300mm/分の条件で180°剥離試験を行い、粘着力を測定する。
【0051】
保護膜の水浸漬後のシリコンウエハに対する粘着力は、好ましくは0.7N/25mm以下であり、より好ましくは0.3N/25mm以下であり、さらに好ましくは0.2N/25mm以下であり、特に好ましくは0.15N/25mm以下である。水浸漬後のシリコンウエハに対する粘着力は、例えば、0.05N/25mm以上である。水浸漬後のシリコンウエハに対する粘着力が上記範囲であれば半導体ウエハの加工工程に好適に用いることができる。本明細書において、水浸漬後のシリコンウエハに対する粘着力は以下の方法により測定した粘着力をいう。ミラーウエハ(信越化学製)に、Wet塗布厚み200μmで、長さ100mm以上となるよう液状表面保護材を塗布し80℃で5分乾燥後、厚み約100μmの保護膜を形成する。保護膜を形成したシリコンウエハを23℃で水に浸漬させ、30分間放置する。次いで、23℃、50%RH雰囲気下で、引張速度300mm/分の条件で180°剥離試験を行い、粘着力を測定する。
【0052】
C.半導体ウエハの加工方法
本発明の実施形態の半導体ウエハの加工方法は、半導体ウエハ加工用液状表面保護材を半導体ウエハの回路パターンが形成された面に塗布し、保護膜を形成することと、半導体ウエハの保護膜が形成されていない面を研削することと、保護膜を剥離除去することと、を含む。上記のとおり、液状表面保護材は半導体ウエハ表面の埋め込み性に優れる。したがって、半導体ウエハと保護膜との間の隙間が形成されにくく、隙間に水が浸入することによる半導体ウエハの欠け等の発生、および、異物の付着を抑制し得る。また、上記のとおり、液状表面保護材を用いて形成された保護膜は、溶剤で溶解させて除去する必要がなく、粘着テープの剥離に用いられる剥離装置等により剥離除去することができる。そのため、溶剤使用による環境への負荷を低減し得る。また、剥離後に半導体ウエハ表面への糊残り(表面保護部材の残渣の付着)を抑制することができる。
【0053】
図1図3は本発明の実施形態の半導体ウエハの加工工程における半導体ウエハおよび保護膜の概略断面図である。図1図3において、(a)が保護膜形成工程後の保護膜100と半導体ウエハ200を、(b)が裏面研削工程後の保護膜100と半導体ウエハ200を、(c)が剥離除去後の保護膜100と半導体ウエハ200をそれぞれ表す。本発明の実施形態の半導体ウエハの加工方法では、半導体ウエハ200に接するよう保護膜100を形成する。上記のとおり、液状表面保護材を用いて形成される保護膜100は半導体ウエハ表面の埋め込み性に優れる。したがって、例えば、バンプの凸部の高さが高い半導体ウエハおよび密にバンプが形成された半導体ウエハの表面であっても良好に埋め込むことができる。
【0054】
C-1.保護膜の形成
保護膜は、任意の適切な方法により形成することができる。例えば、半導体ウエハの回路パターンが形成された面に上記A項に記載の液状表面保護材を任意の適切な方法により塗布し、乾燥させることにより形成することができる。
【0055】
保護膜100は、図1(a)に示すように、半導体ウエハ200のバンプの凸部を埋めるように液状表面保護材を塗布し、保護膜100を形成してもよく、図2(a)および図3(a)に示すように、半導体ウエハ200に液状表面保護材を塗布し、保護膜100を形成し、次いで保護膜100に粘着剤層320が接するよう粘着シート300をさらに貼り合わせて用いてもよい。
【0056】
塗布方法としては、例えば、スピンコート塗布、スプレー塗布、リボン塗布、カーテン塗布、ローラー塗布、刷毛による塗布、バーコーター塗布、エアナイフ塗布、グラビア塗布、グラビアリバース塗布、リバースロール塗布、リップ塗布、ダイ塗布、ディップ塗布、オフセット印刷、フレキソ印刷、スクリーン印刷などが挙げられる。好ましくはスピンコート塗布、カーテン塗布、スプレー塗布が用いられる。これらの方法を用いることにより、半導体ウエハ表面の凹凸の埋め込み性がより向上し得る。
【0057】
乾燥方法としては、任意の適切な方法が用いられる。例えば、自然乾燥、送風乾燥、減圧乾燥、加熱乾燥等が挙げられる。加熱乾燥が好ましく用いられる。加熱乾燥を行う場合、加熱温度は、例えば、30℃~100℃である。また、乾燥時間は、例えば、1分間~60分間である。
【0058】
粘着シート300をさらに貼り合わせる実施形態(図2および図3の実施形態)において、保護膜100はバンプの凸部以上の厚みを有するよう形成されていてもよく(図2(a))、バンプの凸部の高さ未満の厚みを有するよう形成されていてもよい(図3(a))。図2(a)および図3(a)に示すように、液状表面保護材と粘着シートとを組み合わせて用いる場合、表面保護材の厚みを薄くすることができ、作業時間(例えば、保護膜の乾燥時間)を短縮することができる。また、後述する裏面研削工程において、半導体ウエハのTTV(Total Thickness Variation)を改善することができる。また、図2(a)および図3(a)の実施形態では、上記塗布工程において半導体ウエハ表面の保護膜が形成されていない部分が液状表面保護材で薄く被覆されていてもよい(厚みが薄いため、図示しない)。この実施形態では、粘着シート300の粘着剤層320が半導体ウエハ200に直接接する部分が減少し、粘着剤層320の半導体ウエハ200表面への糊残りを抑制し得る。なお、半導体ウエハ表面を薄く被覆した液状表面保護材は、後述する剥離工程で保護膜100および/または粘着シート300と共に半導体ウエハ表面から剥離され得る。
【0059】
粘着シート300は、代表的には基材310と粘着剤層320とを備える。粘着シートとしては、例えば、任意の適切なバックグラインドテープを用いることができる。具体的には、保護膜100で埋め込まれていない凸部の高さを埋め込み可能なバックグラインドテープを用いることができる。粘着シートとしては、好ましくは保護膜100に対する180°剥離試験による粘着力が2N/25mm以上である。保護膜100に対する粘着力が上記範囲であれば裏面研削工程では半導体ウエハを適切に保持することができ、剥離除去工程では、液状表面保護材の糊残りなく剥離することができる。
【0060】
C-2.裏面研削
半導体ウエハの裏面研削(バックグラインド)は、任意の適切な方法により行うことができる(図1(b)、図2(b)、図3(b))。裏面研削は、半導体ウエハの回路が形成されていない面(半導体ウエハの保護膜が形成されていない面)に対し行う。裏面研削は、一般的に水で冷却しながら行われる。上記のとおり、液状表面保護材を用いて形成された保護膜は埋め込み性に優れる。そのため、裏面研削時に半導体ウエハと保護膜との間に水が浸入することを抑制し、保護膜の浮きの発生および半導体ウエハの割れの発生を抑制し得る。
【0061】
C-3.剥離除去
裏面研削後、保護膜は任意の適切な段階で半導体ウエハから剥離除去される(図1(c)、図2(c)、図3(c))。上記のとおり、液状表面保護材を用いて形成された保護膜は、剥離除去が可能であり、有機溶媒等の溶剤により保護膜を溶解して除去する必要がない。そのため、溶剤使用による環境への負荷を低減し得る。また、上記保護膜は粘着テープの剥離除去に用いられる剥離装置により剥離除去することができる。そのため、バックグラインドテープ等の粘着テープを用いる半導体ウエハの製造ラインにそのまま用いることができる。
【実施例0062】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。また、実施例において、特に明記しない限り、「部」および「%」は重量基準である。
【0063】
[合成例1]アクリル系エマルション樹脂の合成
冷却管、窒素導入管、温度計および攪拌装置を備えた反応容器に、イオン交換水50重量部、および、アニオン変性ポリビニルアルコール(三菱ケミカル社製、商品名「ゴーセネックスL-3266」)1重量部を加え、窒素ガスを導入しながら室温で溶解し、60℃まで昇温した。次いで、この反応容器に重合開始剤(2,2’-アゾビス[N-(2-カルボキシエチル)-2-メチルプロピオンアミジン]ハイドレート;和光純薬工業株式会社、商品名「VA-057」)0.1重量部を添加した。別途、ホモミキサーを用いてn-ブチルアクリレート(BA)65重量部、アクリロニトリル(AN)25重量部、メタクリル酸メチル(MMA)10重量部からなるモノマー組成物、連鎖移動剤(n-ラウリルメルカプタン)0.05重量部、および、乳化剤(ポリオキシエチレンラウリル硫酸ナトリウム;花王社製、商品名「ラテムルE118B」)2重量部をイオン交換水40重量部に添加して窒素置換しながら混合し、モノマー乳化液を得た。得られたモノマー乳化液を3時間かけて反応容器に投入し、乳化重合反応を行った。得られた反応混合物をさらに3時間、温度を保持して熟成させた。次いで、室温まで冷却させた後、10%アンモニウム水を添加してpH7.5に調整し、アクリル系エマルション樹脂を得た。
【0064】
[合成例2~5]アクリル系エマルション樹脂の合成
モノマー組成を表1のとおりに変更した以外は合成例1と同様にして、アクリル系エマルション樹脂を得た。
【0065】
[実施例1~5]
合成例1~5で得られたアクリル系エマルション樹脂をそのまま液状表面保護材として用いて、以下の評価を行った。
【0066】
(比較例)
水溶性樹脂(日本酢ビ・ポバール社製、商品名「JC-25」)を樹脂濃度が20重量%となるよう水に溶解し、液状表面保護材を得た。
【0067】
<評価>
実施例および比較例で得られた液状表面保護材を用いて以下の評価を行った。結果を表1に示す。
1.引張弾性率
液状表面保護材をはく離処理した支持体の剥離処理面に塗布し、厚み100μmのフィルムを作製した。得られたフィルムを、縦100mm、幅25mmのサイズにカットし、試験片とした。試験片を精密万能試験機(株式会社島津製作所製、装置名「オートグラフAG-IS」)を用いて、チャック間距離50mm、引張速度300mm/分で引っ張り、試験片が塑性変形するまでの応力変化を記録し、応力-ひずみ曲線を得た。引張弾性率は、規定された2点のひずみε=1およびε=2の間の曲線の線形回帰によって求めた。異なる箇所から切り出した3つの試験片を用いて上記測定を行い、それらの平均値を試験片の引張弾性率とした。なお、上記測定はJIS K 7161に準拠して23℃、50%RHで行った。
【0068】
2.粘着力
ダミーウエハ(信越化学社製)の表面に幅25mm、厚み200μmとなるよう液状表面保護材を塗布し、乾燥させ、保護膜を形成した。その後、23℃で30分間静置した。次いで、23℃、50%RH雰囲気下で、引張速度300mm/分の条件で180°剥離試験を行い、粘着力を測定した。
同様に、ダミーウエハ(信越化学社製)の表面に幅25mm、厚み200μmとなるよう液状表面保護材を塗布し、乾燥させ、保護膜を形成した。保護膜が形成されたダミーウエハを23℃で水に浸漬させ、30分間放置した。次いで、23℃、50%RH雰囲気下で、引張速度300mm/分の条件で180°剥離試験を行い、粘着力を測定した。
【0069】
3.埋め込み性
シリコンミラーウエハ(8inch、バンプ高さ75μm、直径90μm、ピッチ200μm)の表面に液状表面保護材を塗布し、厚み200μmの保護膜を形成した。保護膜を形成したウエハの側面からレーザー顕微鏡(倍率:100倍)で観察し、保護膜およびウエハの密着状態を観察した。また、保護膜が形成されたダミーウエハを、保護膜が形成された面から撮像し、画像解析ソフト(Image J(フリーソフト))を用いて画像の二値化(8ビットグレースケール、輝度:0~255、閾値:114)を行った。バンプを任意に5つ選択し、1つのバンプの表示に使用されるドット数を計測した。5つのバンプの平均ドット数が600以下であるものを〇(良好)、平均ドット数が600を超えるものを×(不良)として評価した。なお、保護膜が形成されていないバンプのみの画像は220ドットである。保護膜が形成されている場合は、ドット数は220よりも大きくなる。平均ドット数が600以下であれば、ウエハ表面の凹凸埋め込み性が優れることを示す。
【0070】
4.糊残り(表面保護材の残渣)およびハンダ引き抜き
上記粘着力の評価に用いたシリコンウエハを、保護膜の剥離後レーザー顕微鏡で観察した。バンプに糊残り(保護膜の残渣)が全くなければ〇(良好)、バンプに糊残りが(保護膜の残渣)ある場合には×(不良)とした。また、半導体ウエハ表面にハンダ残渣が認められないものを〇(良好)、ハンダ残渣が視認されるものを×(不良)とした。
【0071】
5.剥離性
シリコンウエハに表面保護材を乾燥後の厚みが100μmとなるよう塗布し、保護膜を形成した。形成した保護膜を手で、シリコンウエハから剥離した。保護膜が切れることなく剥離可能なものを〇(良好)、途中で破断されたものを×(不良)とした。
【0072】
【表1】
【0073】
本発明の実施例の半導体ウエハ加工用液状表面保護材は、埋め込み性に優れるものであった。また、液状表面保護材を塗布して形成された保護膜は剥離除去可能であり、保護膜の残渣の付着も抑制されていた。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明の実施形態の半導体ウエハ加工用液状表面保護材は、半導体ウエハの加工工程に好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0075】
100 保護膜
200 半導体ウエハ
300 粘着シート
310 基材
320 粘着剤層
図1
図2
図3