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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024077221
(43)【公開日】2024-06-07
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ及びタイヤ成型用金型
(51)【国際特許分類】
   B60C 11/12 20060101AFI20240531BHJP
   B60C 11/03 20060101ALI20240531BHJP
   B29D 30/00 20060101ALI20240531BHJP
   B60C 5/00 20060101ALI20240531BHJP
   B29C 33/02 20060101ALI20240531BHJP
【FI】
B60C11/12 A
B60C11/12 C
B60C11/03 300A
B29D30/00
B60C5/00 H
B29C33/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022189172
(22)【出願日】2022-11-28
(71)【出願人】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石原 誠也
【テーマコード(参考)】
3D131
4F202
4F215
4F501
【Fターム(参考)】
3D131BC12
3D131BC13
3D131BC18
3D131BC19
3D131BC51
3D131CB06
3D131EB02U
3D131EB83V
3D131EB83W
3D131EB83X
3D131EB83Z
3D131EB84V
3D131EB84W
3D131EB84X
3D131EB84Z
3D131EC12V
3D131EC12W
3D131EC12X
4F202AA45
4F202AH20
4F202AR13
4F202CA21
4F202CK12
4F202CU02
4F215AH20
4F215VA06
4F215VD03
4F215VP37
4F501TA06
4F501TC03
4F501TL36
4F501TV21
(57)【要約】
【課題】波形サイプを有するブロックを含む空気入りタイヤにおいて、制動時の倒れ込みを抑制することにより、制動性能を向上する。
【解決手段】実施形態の一例であるタイヤは、サイプ50が形成されたブロック30を有するトレッドを含む。サイプは、互いに対面する第1壁面52及び第2壁面53を有する。各壁面52,53は、タイヤ径方向外側から見た場合にタイヤ軸方向に延びる波形形状を有する波形面を含む。第1壁面52の波形面には、サイプ深さ方向中間位置に少なくとも1つの第1突起60が設けられる。第1突起60が、第2壁面53の波形面に設けられた第2凹みに噛み込み可能に対向している。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
サイプが形成された少なくとも1つのブロックを有するトレッドを含む空気入りタイヤであって、
前記サイプは、互いに対面する第1壁面及び第2壁面を有し、
前記第1壁面及び前記第2壁面は、タイヤ径方向外側から見た場合にタイヤ軸方向に延びる波形形状を有する波形面を含み、
前記第1壁面の前記波形面には、サイプ深さ方向中間位置に少なくとも1つの第1突起が設けられ、
前記第1突起が、前記第2壁面の前記波形面に設けられた第2凹みに噛み込み可能に対向している、
空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記第2壁面の前記波形面には、前記サイプ深さ方向中間位置に少なくとも1つの第2突起が設けられ、
前記第2突起は、前記第1壁面の前記波形面に設けられた第1凹みに噛み込み可能に対向している、
請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
車両外側の前記第1突起の突出量は、車両内側の前記第1突起の突出量より大きい、
請求項1または請求項2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
前記少なくとも1つのブロックは、センターブロック、クォーターブロック、及びショルダーブロックを含み、
前記センターブロック、前記クォーターブロック、前記ショルダーブロックの順にタイヤ軸方向外側に設けられ、
前記センターブロックの前記第1突起、前記クォーターブロックの前記第1突起、前記ショルダーブロックの前記第1突起の順に、突出量が大きい、
請求項1または請求項2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項5】
前記第1突起は、前記サイプの底から前記サイプ深さ方向の20~50%の範囲にのみ形成される、
請求項1または請求項2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項6】
前記第1突起は、前記第1壁面の前記波形形状のうち、前記タイヤ径方向外側から見た場合に直線部分である平面部分に形成され、
前記第2凹みは、前記第2壁面の前記波形形状のうち、前記タイヤ径方向外側から見た場合に直線部分である平面部分に形成される、
請求項1または請求項2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項7】
前記第1突起は、半球状、または断面台形状である、
請求項1または請求項2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項8】
前記第1突起は、多角柱状、または多角錐状、または円柱状、または多角錐の先端がカットされた形状である、
請求項1または請求項2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項9】
タイヤのトレッドのブロックにサイプを形成するためのサイプブレードを備えるタイヤ成型用金型であって、
前記サイプブレードは、タイヤ径方向から見て波形形状である第1側面と、前記第1側面と反対側であり、前記タイヤ径方向から見て波形形状である第2側面とを有し、
前記第1側面の波形面には、サイプ深さ方向中間位置に、少なくとも1つの第1突起形成用凹みが形成され、
前記第2側面の波形面には、前記サイプ深さ方向中間位置に、少なくとも1つの第2凹み形成用突起が形成され、
前記第2凹み形成用突起の内側に前記第1突起形成用凹みが入り込んでいる、
タイヤ成型用金型。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サイプが形成されたブロックを有するトレッドを含む空気入りタイヤ、及び、当該空気入りタイヤを成型するタイヤ成型用金型に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、タイヤのスノー性能及びウェット性能の向上のために、トレッドを形成するブロックの接地面にサイプを形成した構成が知られている。しかしながら、単に平面状の壁面同士が対向しているサイプでは、制動時に、ブロックのサイプによって分かれた両側の部分が噛み合わないので、ブロックの倒れ込みが生じる可能性がある。これにより、ブロックの剛性が低下するので、制動性能の向上の面から改良の余地がある。
【0003】
一方、タイヤ径方向外側から見た場合にブロックにタイヤ軸方向に延びる波形形状を有する波形サイプを設けた構成が考えられる。この構成では、タイヤ軸方向のエッジ効果により、氷雪路面での旋回性能及び操縦性の向上を図れる可能性がある。
【0004】
一方、特許文献1には、トレッドのタイヤ軸方向と深さ方向とに形状が変化する三次元サイプが形成されたタイヤが記載されている。この三次元サイプは、タイヤ周方向に向けてジグザグ状に屈折しながらトレッドのタイヤ軸方向に延び、かつタイヤ周方向に向けてジグザグ状に屈折しながらタイヤ径方向に延びている。サイプの両側の側壁面は互いに平行であり、両側の側壁面において互いに対向する位置に突起が形成されている。これにより、ブロックが倒れる方向に変形したときにサイプの両側の側壁面が密着することを防止でき、サイプ内の貯水空間を増大できると共に、エッジ効果の向上によって、氷雪路面での走行性能を向上できるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008-56053号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、単にブロックに波形サイプを設けた構成や、特許文献1に記載された構成では、サイプによりブロックがタイヤ周方向に分断される。このため、制動時にブロックの分断によりブロックの倒れ込みが生じて、接地性が悪化する可能性がある。このため、制動性能の向上の面から改良の余地があるという問題がある。この問題は、特にサイプが多い冬用タイヤにおいて生じやすい。
【0007】
本発明の目的は、波形サイプを有するブロックを含む空気入りタイヤにおいて、制動時の倒れ込みを抑制することにより、制動性能を向上することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る空気入りタイヤは、サイプが形成された少なくとも1つのブロックを有するトレッドを含む空気入りタイヤであって、前記サイプは、互いに対面する第1壁面及び第2壁面を有し、前記第1壁面及び前記第2壁面は、タイヤ径方向外側から見た場合にタイヤ軸方向に延びる波形形状を有する波形面を含み、前記第1壁面の前記波形面には、サイプ深さ方向中間位置に少なくとも1つの第1突起が設けられ、前記第1突起が、前記第2壁面の前記波形面に設けられた第2凹みに噛み込み可能に対向している、空気入りタイヤである。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る空気入りタイヤによれば、制動時に波形サイプの第1壁面の第1突起が第2壁面の第2凹みに噛み込まれ、ブロックのサイプを介して隣り合う第1壁面側部分と第2壁面側部分とが一体化する。これにより、ブロックの倒れ込みを抑制できる。このため、波形サイプを有するブロックを含むタイヤにおいて、制動時の接地性の悪化を抑制できるので、制動性能を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態の一例である空気入りタイヤのトレッドをタイヤ径方向外側から見た図である。
図2図1のA領域の拡大図である。
図3図2のB-B断面の斜視図である。
図4図3のC-C断面図である。
図5A】比較例において、制動時にタイヤの接地部分の挙動を示すイメージ図である。
図5B】(a)は、実施形態において、制動時にタイヤの接地部分の挙動を示すイメージ図であり、(b)は(a)のD領域の拡大図である。
図6】実施形態の別例の空気入りタイヤにおいて、図2に対応する図である。
図7】実施形態の一例であるタイヤ成型用金型を示す模式図である。
図8図7のタイヤ成型用金型を構成するサイプブレードを示す斜視図である。
図9図8のE領域をサイプブレードの厚み方向の反対側から見た斜視図である。
図10図9のF矢視図である。
図11A】実施形態の別例の空気入りタイヤにおいて、車両外側のショルダーブロックのサイプを示している図4に対応する図である。
図11B】実施形態の別例の空気入りタイヤにおいて、車両内側のショルダーブロックのサイプを示している図4に対応する図である。
図12A】実施形態の別例の空気入りタイヤにおいて、ショルダーブロックのサイプを示している図4に対応する図である。
図12B】実施形態の別例の空気入りタイヤにおいて、クォーターブロックのサイプを示している図4に対応する図である。
図12C】実施形態の別例の空気入りタイヤにおいて、センターブロックのサイプを示している図4に対応する図である。
図13】実施形態において、サイプに設ける突起の別例を示す斜視図である。
図14A】実施形態において、サイプに設ける突起の別例を示す斜視図である。
図14B】実施形態において、サイプに設ける突起の別例を示す斜視図である。
図15A】実施形態において、サイプに設ける突起の別例を示す斜視図である。
図15B】実施形態において、サイプに設ける突起の別例を示す斜視図である。
図16】実施形態において、サイプに設ける突起の別例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら、本発明に係る空気入りタイヤの実施形態の一例について詳細に説明する。以下で説明する実施形態はあくまでも一例であって、本発明は以下の実施形態に限定されない。また、以下で説明する複数の実施形態及び変形例の各構成要素を選択的に組み合わせることは本発明に含まれている。
【0012】
図1は、実施形態の一例である空気入りタイヤ1のトレッド10をタイヤ径方向外側から見た図である。図2は、図1のA領域の拡大図である。図1図2に示すように、空気入りタイヤ1は、路面に接地する部分であるトレッド10を備える。以下、「空気入りタイヤ1」は、「タイヤ1」と記載する。トレッド10は、複数のブロックを含むトレッドパターンを有し、タイヤ周方向に沿って環状に形成されている。
【0013】
以下では、タイヤ軸方向X、タイヤ周方向Y及びタイヤ径方向Zに従って、各部材について説明する。また、タイヤ軸方向Xでは、タイヤ軸方向中央についてタイヤ赤道CLを用いて説明する場合もある。また、図1では、車両へのタイヤの取付状態で、車両外側をOUT側と示し、車両内側をIN側と示している。
【0014】
トレッド10は、周方向溝21によって、タイヤ軸方向Xに分けられた複数のブロック30、31、33を有している。周方向溝21は、タイヤ周方向Yに沿って延びる。周方向溝21は、タイヤ周方向Yに対し傾斜した溝、またはジグザグ状に形成される溝としてもよい。
【0015】
複数のブロック30、31,33は、タイヤ軸方向中央のセンターブロック30と、センターブロック30のタイヤ軸方向両側に隣り合うクォーターブロック31と、クォーターブロック31のタイヤ軸方向外側に隣り合うショルダーブロック33とを含む。
【0016】
センターブロック30は、タイヤ赤道CLを含んでいる。タイヤ軸方向X両端のショルダーブロック33は、接地端Tを含んでいる。複数のブロック30、31、33は、複数の横溝40によって、タイヤ周方向Yにも分けられて、複数の小ブロック30a、31a、33aを形成している。横溝40は、タイヤ軸方向Xに沿って、またはタイヤ軸方向Xに対し傾斜した方向に延びる溝である。小ブロック30a、31a、33aは、周方向溝と横溝とで区切られていれば、平面視の形状、すなわちタイヤ径方向外側から見た形状が矩形でも、ひし形でも、平行四辺形でも、それ以外でもよく、形状が限定されることはない。また、各ブロック30、31、33は、横溝によってタイヤ周方向Yに分断されず、タイヤ周方向に沿って環状に連続した形状としてもよい。また、タイヤ赤道CLがタイヤ軸方向中央の周方向溝に設けられ、その周方溝のタイヤ軸方向両側に2つのセンターブロックが分かれて設けられてもよい。例えば、複数のブロックは、図1のように、4本の周方向溝でタイヤ軸方向Xに分けられた構成に限定せず、3本の周方向溝、または5本の周方向溝でタイヤ軸方向Xに分けられた構成としてもよい。
【0017】
タイヤ1は、トレッド10よりタイヤ軸方向外側の端部に設けられ、最もタイヤ軸方向外側に膨らんだサイドウォール(図示せず)と、ホイールのリムに固定されるビード(図示せず)とを備える。
【0018】
「接地端T」とは、未使用のタイヤ1を正規リムに装着して正規内圧となるように空気を充填した状態で、正規内圧における正規荷重の70%の負荷を加えたときに平坦な路面に接地する領域のタイヤ軸方向両端を意味する。
【0019】
ここで、「正規リム」とは、タイヤ規格により定められたリムであって、JATMAであれば「標準リム」、TRA、及びETRTOであれば「Measuring Rim」である。「正規内圧」は、JATMAであれば「最高空気圧」、TRAであれば表「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に記載の最大値、ETRTOであれば「INFLATION PRESSURE」である。「正規荷重」は、JATMAであれば「最大負荷能力」、TRAであれば表「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に記載の最大値、ETRTOであれば「LOAD CAPACITY」である。
【0020】
図1では、タイヤ1の接地端Tよりタイヤ軸方向外側の図示を省略している。タイヤ1は、図示を省略するが、カーカス、ベルト、及びインナーライナーを備える。カーカスは、ゴムで被覆されたコード層であり、荷重、衝撃、空気圧等に耐えるタイヤ1の骨格を形成する。ベルトは、トレッドを構成するゴムとカーカスの間に配置される補強帯である。ベルトは、カーカスを強く締めつけてタイヤ1の剛性を高める。インナーライナーは、カーカスの内周面に設けられたゴム層であって、タイヤ1の空気圧を保持する。ビードは、ビードコアとビードフィラーを有する。
【0021】
[サイプ]
各小ブロック30a、31a、33aの接地面には、略タイヤ軸方向Xに延びる複数の細線状のサイプ50が形成される。各サイプ50は、雪や氷をひっかくエッジ効果を高め、氷雪路面での良好な制動性能及び操縦安定性を実現する効果を有する。また、サイプ50によって、貯水空間を多くできるので、ウェット性能の向上を図れる。
【0022】
複数のサイプ50は、平面視で、波形形状である。複数のサイプ50は、略タイヤ軸方向Xに延びている。複数のサイプ50の波形形状は、タイヤ周方向Yに隣り合うブロック同士で略同じである。図2に示すように、各ブロックでは、タイヤ周方向Yに複数のサイプ50が離れて形成される。各サイプ50は、タイヤ径方向Zのブロック表面側から底面側にまで形成される。サイプ深さ方向は、ブロックの表面側端から底面までの範囲でタイヤ径方向Zと一致する。サイプは、タイヤ軸方向Xに対し傾斜して形成されてもよいが、略タイヤ軸方向Xに延びて形成されることが好ましい。サイプは、小ブロック30a、31a、33aのタイヤ軸方向両端に達するオープンサイプであってもよく、小ブロック30a、31a、33aのタイヤ軸方向端に達しないクローズサイプであってもよい。サイプは、小ブロック30a、31a、33aのタイヤ軸方向の一端に達するが、タイヤ軸方向の他端には達しないタイプとしてもよい。
【0023】
図2から図4を用いてサイプ50を詳しく説明する。図3は、図2のB-B断面の斜視図である。図4は、図3のC-C断面図である。以下、小ブロック30aに設けたサイプ50を中心に説明するが、他の小ブロック31a、33aのサイプ50も長さが大きくなり、波形の数が増えるだけで、基本形状は小ブロック30aのサイプ50と同様である。
【0024】
サイプ50は、互いに対面する第1壁面52と第2壁面53とを有する。図3に示すように、第1壁面52及び第2壁面53は、タイヤ径方向外側から見た場合に、タイヤ軸方向に延びる波形形状を有する波形面である。第1壁面52は、タイヤ径方向外側から見てブロック表面から底面まで略波形に形成される。第2壁面53も、第1壁面52と同様に、タイヤ径方向外側から見てブロック表面から底面まで略波形に形成される。このため、サイプ50の各壁面52,53は、タイヤ径方向Zに垂直な断面視において略波形に形成される。
【0025】
各壁面52,53は、壁面の内側に断面略円弧形に曲がった内曲がり部分54と、壁面の外側に断面略円弧形に曲がった外曲がり部分55とが交互に設けられる。内曲がり部分54と外曲がり部分55との間には、タイヤ径方向外側から見た場合に直線部分である平面部分56,57が形成される。平面部分56,57は、波形面において、タイヤ軸方向に対し交互に逆方向に傾斜する。第1壁面52と第2壁面53とは、互いにサイプ幅方向に隙間をあけて面するように形成される。
【0026】
また、各壁面52,53の波形面の両端には、タイヤ軸方向に延びる端平面部分58が接続される。各端平面部分58は、小ブロック30aのタイヤ軸方向端に達している。
【0027】
第1壁面52の波形面の平面部分56,57のうち、タイヤ軸方向一方側(図3図4の右側)に向かってタイヤ周方向の第1側(図4の下側)に傾斜した平面部分56には、サイプ深さ方向2つの位置に第1突起60が形成される。一方、第1壁面52のタイヤ軸方向一方側に向かってタイヤ周方向の第2側(図4の上側)に傾斜した平面部分57には、サイプ深さ方向2つの位置に第1凹み62が形成される。これにより、第1壁面52の波形面には、タイヤ軸方向に、第1突起60と第1凹み62とが交互に形成される。
【0028】
第2壁面53の波形面の平面部分56,57のうち、タイヤ軸方向一方側(図4の右側)に向かってタイヤ周方向の第1側(図4の下側)に傾斜した平面部分56には、サイプ深さ方向2つの位置に第2凹み64が形成される。一方、第2壁面53のタイヤ軸方向一方側に向かってタイヤ周方向の第2側(図4の上側)に傾斜した平面部分57には、サイプ深さ方向2つの位置に第2突起66が形成される。これにより、第2壁面53の波形面には、タイヤ軸方向に、第2凹み64と第2突起66とが交互に形成される。
【0029】
第1突起60及び第2突起66は、略半球状の突起である。第1凹み62及び第2凹み64は略半球の内側空間を有する凹面である。図2では、各凹み62,64の図示は省略している。
【0030】
そして、各サイプ50において、第1壁面52の第1突起60が、第2壁面53の第2凹み64内に入り込む。第1突起60は、第2凹み64に噛み込み可能に、隙間をあけて対向している。各サイプ50において、第2壁面53の第2突起66が、第1壁面52の第1凹み62内に入り込む。第2突起66は、第1凹み62に噛み込み可能に、隙間をあけて対向している。
【0031】
各突起60,66及び各凹み62,64は、サイプ50の底からサイプ深さ方向の20~50%の範囲にのみ形成されることが好ましい。このため、サイプ50の深さをLとした場合に、各突起60,66及び各凹み62,64は、サイプ50の底から0.2L~0.5Lの範囲に形成されることが好ましい。
【0032】
[効果]
上記のタイヤ1によれば、波形サイプであるサイプ50の第1壁面52の第1突起60が第2壁面53の第2凹み64に噛み込み可能に対向している。これにより、制動時に第1突起60が第2凹み64に噛み込まれ、ブロック30aのサイプ50を介して隣り合う第1壁面52側部分と第2壁面53側部分とが一体化する。このため、ブロック30aの倒れ込みを抑制できる。したがって、波形サイプを有するブロックを含むタイヤ1において、制動時の接地性の悪化を抑制できるので、制動性能を向上できる。
【0033】
また、サイプ50の第2壁面53の第2突起66が、第1壁面52の第1凹み62に噛み込み可能に対向している。これにより、各壁面53,52の波形のピッチが小さい場合でもタイヤ軸方向に第1突起60と第2突起66とを交互に設けやすくなる。このため、タイヤ軸方向に多くの噛み込み部を設けることにより、より効果的に制動時のブロックの倒れ込みを抑制できる。したがって、タイヤ1の制動性能をより効果的に向上できる。例えば、図4において、第1壁面52から第2壁面53に向かう第1突起60のみがタイヤ軸方向に隣り合う平面部分56,57に設けられた場合には、隣り合う2つずつの第1突起60の先端が近づきやすくなり、突出量を大きくしにくくなる。本例の構成によれば、このような点を改良できる。
【0034】
また、各突起60,66及び各凹み62,64が、サイプ50の底からサイプ深さ方向の20~50%の範囲にのみ形成された場合には、サイプ50の底側のある高さ以上の範囲のみに突起60,66及び凹み62,64が形成される。これにより、制動時のブロック30aの倒れ込みの起点をタイヤ表面側に設けやすいので、倒れ込みを小さくできると共に、タイヤ摩耗時にトレッド10表面のボイド比が早期に低下することを防止できる。
【0035】
ボイド比とは、トレッド10の両側の接地端T間のトレッド10表面の接地部分の面積及び非接地部分の面積の総和に対する、当該接地端T間のトレッド10表面内の非接地部分の面積の比である。接地端T間のトレッド10表面の接地部分の面積及び非接地部分の面積の総和をSAとし、接地端T間のトレッド10表面における非接地部分の面積をSBとした場合に、ボイド比VRは、VR=(SB/SA)×100で表される。ボイド比が低下するとタイヤのウェット性能が低下する原因となる。本例では、上記のようにボイド比の早期の低下を抑制できるので、ウェット性能の早期低下も抑制できる。
【0036】
また、第1突起60は、第1壁面52の波形形状のうち、タイヤ径方向外側から見た場合に直線部分である平面部分56に形成される。第2凹み64は、第2壁面53の波形形状のうち、タイヤ径方向外側から見た場合に直線部分である平面部分56に形成される。これにより、波形形状の頂点ではなく、波形形状の直線部分に第1突起60が設けられるので、様々な方向の突起及び凹みの噛み合いに有利になる。
【0037】
特に、本例の構成では、第1壁面52及び第2壁面53のそれぞれにおいて、タイヤ軸方向に対し異なる方向に傾斜した平面部分56,57に第1突起60及び第1凹み62と、第2突起66及び第2凹み64とが設けられる。これにより、より様々な方向の突起及び凹みの噛み合いに有利になるので、制動性能が向上する。
【0038】
また、サイプ50の各突起60,66は半球状であるので、突起を形成する金型からの加硫成型後の抜け性を高くできる。
【0039】
図5A図5Bを用いて、実施形態におけるブロックの倒れ込み抑制効果を詳しく説明する。まず、図5Aを用いて、比較例のタイヤ1aにおける制動時の挙動を説明する。図5Aは、比較例において、制動時にタイヤ1aの接地部分の挙動を示すイメージ図である。なお、図5Aでは、路面100が乾燥路面である場合を示す。
【0040】
比較例では、ブロック102の接地面に複数の波形のサイプ103が形成される。一方、比較例では、実施形態と異なり、サイプ103の対面する第1壁面104及び第2壁面105には、互いに噛み合い可能な突起及び凹みは形成されない。このような比較例では、制動時に路面100から矢印α方向に、車両の進行方向(矢印β方向)とは逆方向の荷重がタイヤ1aの接地面に加わる。これにより、ブロック102の底側が先端側より進行方向の前側となるように、ブロック102が倒れる傾向となる。このとき、ブロック102のサイプ103両側部分はサイプ103で分断され、一体化しない。これにより、ブロック102の倒れ込みが大きくなる可能性がある。この場合には、接地面の形状が崩れて接地面積が小さくなることにより、制動性能が悪化する可能性がある。
【0041】
一方、図5B(a)は、実施形態において、制動時にタイヤ1の接地部分の挙動を示すイメージ図である。図5(b)は図5(a)のD領域の拡大図である。図5Bでは、路面100aが積雪路面である場合を示す。実施形態では、上記のように、サイプ50の第1壁面52に第1突起60が形成され、第2壁面53には第1突起60と噛み合い可能な第2凹み64が形成される。このとき、制動時に、タイヤの接地側でサイプ50に対し車両進行方向(矢印α方向)後側に第1壁面52が形成され、車両進行方向前側に第2壁面53が形成される場合がある。このとき、制動時には、サイプ50において、第1壁面52が第2壁面53に対しサイプ深さ方向に位置ずれしながら、ブロック30の底側が車両の進行方向前側に倒れる傾向となる。一方、実施形態では、第1壁面52の第1突起60が第2壁面53の第2凹み64に噛み合い可能に対向している。このため、第1突起60が第2凹み64の下端に噛み合って、ブロック30の倒れ込みが抑制される。
【0042】
また、図示は省略するが、第2壁面53の第2突起66が第1壁面52の第1凹み62に噛み合い可能に対向している部分では、第2突起66が第1凹み62の上端に噛み合って、ブロック30の倒れ込みが抑制される。これにより、実施形態では、制動性能が向上する。
【0043】
[実施形態の別例]
図6は、実施形態の別例のタイヤ1bにおいて、図2に対応する図である。本例の構成では、小ブロック30aのタイヤ軸方向一端(図6の左端)の壁面に一端が達するサイプ110と、タイヤ軸方向他端(図6の右端)の壁面に一端が達するサイプ112とが、タイヤ周方向に交互に形成されている。各サイプ110,112の壁面と反対側の他端は、ブロック30a内で終端している。各サイプ110,112のタイヤ軸方向長さは、図2に示したサイプ50より短く、波形の数は少ない。
【0044】
具体的には、各サイプ110,112の各壁面52,53の波形面は、2つの内曲がり部分54と2つの外曲がり部分55とを有する。第1壁面52の両側の平面部分56に第1突起60が形成され、中間の平面部分57に第1凹み(図示せず)が形成される。第2壁面53の両側の平面部分56に第2凹み(図示せず)が形成され、中間の平面部分57に第2突起66が形成される。第1壁面52及び第2壁面53のそれぞれのサイプ深さ方向2つの位置に突起60,66及び凹みが形成される。その他のサイプ110,112の構成は、図1図4の構成と同様である。また、サイプ112の形状は、サイプ110をタイヤ周方向Y及びタイヤ軸方向Xについて反転した形状と同一である。
【0045】
[タイヤ成型用金型]
図7は、実施形態の一例であるタイヤ成型用金型70を示す模式図である。以下、タイヤ成型用金型70は、金型70と記載する。金型70は、上述の図6のタイヤ1bを成型する金型である。タイヤ1bは、上述の図6に示したサイプ110,112が形成されたブロック30を含むトレッドと、側面を形成するサイドウォール(図示なし)とを有している。金型70によれば、ブロックが波形のサイプを有し、制動性能を向上できるタイヤ1bを、成型することができる。
【0046】
以下では、金型70によって成型される上述したタイヤ1bのタイヤ軸方向X、タイヤ周方向Yおよびタイヤ径方向Zに従って、各部材について説明する。
【0047】
金型70は、タイヤ1bのトレッドの表面を成型するトレッド金型71と、サイドウォールの表面を成型する一対のサイド金型72とを有している。
【0048】
トレッド金型71は、トレッド成型面73を有する本体74と、トレッド成型面73から突出している突起75と、トレッド成型面73から突出して突起75同士の間に設けられるサイプブレード80とを有している。
【0049】
サイプブレード80は、タイヤ1bのサイプ110,112を成型する。サイプブレード80は、突起75同士の間において、トレッド成型面73からタイヤ径方向Zに突出している。サイプブレード80は、隣り合う突起75の一方側と他方側とから、タイヤ周方向Yに交互に、タイヤ径方向Zに突出している。サイプブレード80は、金属材料から波形板状に形成される。
【0050】
本体74は、金属材料によって構成され、例えばアルミニウム合金から構成されている。アルミニウム合金として、例えばAC4系、AC7系等が好適に用いられる。突起75は、タイヤ1に周方向溝を成型する部分である。突起75は、本体74を構成する金属材料と同じ材料である。
【0051】
[サイプブレード]
図8から図10を用いて、実施形態の一例であるサイプブレード80を詳しく説明する。図8は、サイプブレード80を示す斜視図である。図9は、図8のE領域をサイプブレード80の厚み方向の反対側から見た斜視図である。図10は、図9のF矢視図である。
【0052】
サイプブレード80は、薄板状の金属材料から構成され、例えばステンレス鋼から構成されてもよい。ステンレス鋼として、例えばSUS303、SUS304、SUS630、SUS631等が好適に用いられる。また、3次元造型機を用いる場合、SUS304L、SUS630相当材の17-4PH等が好適に用いられる。
【0053】
サイプブレード80の一般的な加工方法については、プレス成型機を用いて形状を形成する。また、3次元造型機を用いることで、機械加工では難しい複雑な形状を形成してもよい。
【0054】
サイプブレード80は、サイプ110,112の端平面部分58を形成する端平板部分81と、端平板部分81から連続して、サイプの波形面を形成する波形部分82とを有する。端平板部分81は、タイヤ軸方向に延びる略平板状である。
【0055】
波形部分82の第1側面83及び第2側面84は、図10に示すようにタイヤ径方向Zから見て波形形状である波形面である。より詳細には、第1側面83及び第2側面84は、タイヤ径方向Zから見て断面円弧形の4つの曲がり部分である曲面85,86と、タイヤ径方向Zから見て、隣り合う曲面85,86の間の直線部分である平面部分87,88とを含む波形面である。
【0056】
第1側面83の波形面の両側の平面部分87には、サイプ深さ方向中間位置の2つの位置に、略半球の内側空間を有する凹面である第1突起形成用凹み89が形成される。第1側面83の波形面の中間の平面部分88には、サイプ深さ方向中間位置の2つの位置に、半球状である第1凹み形成用突起90が形成される。両側の平面部分87と中間の平面部分88とは、タイヤ軸方向Xに対し逆方向に傾斜する。
【0057】
一方、第2側面84の波形面の両側の平面部分91には、サイプ深さ方向中間位置の2つの位置に、半球状である第2凹み形成用突起92が形成される。第2側面84の波形面の中間の平面部分93には、サイプ深さ方向中間位置の2つの位置に、略半球の内側空間を有する凹面である第2突起形成用凹み94が形成される。
【0058】
そして、第2凹み形成用突起92の内側には、第1突起形成用凹み89が入り込んでいる。第1凹み形成用突起90の内側には、第2突起形成用凹み94が入り込んでいる。このようなサイプブレード80を有する金型70により、ブロックの接地面に図6で示したように、突起及び凹みを有する波形のサイプ110,112を形成できる。図6のタイヤ軸方向一方側のサイプ110とタイヤ軸方向他方側のサイプ112とでは、サイプブレード80の端平板部分81と波形部分82とのタイヤ軸方向における位置関係が逆になるように、金型にサイプブレード80を設ける。
【0059】
なお、上記の金型70では、図6のサイプ110,112を形成するサイプブレード80を用いる場合を説明した。一方、図1図4に示したサイプ50を形成する場合には、サイプブレードとして、タイヤ軸方向における両端に設けられた平板部分と、2つの平板部分との間に設けられ、波形の数を図8図10のサイプブレード80より多くした波形部分とを有するサイプブレードを用いる。
【0060】
[実施形態の別例]
図11Aは、実施形態の別例のタイヤ1cにおいて、車両外側のショルダーブロック33のサイプ50aを示している図4に対応する図である。図11Bは、別例のタイヤ1cにおいて、車両内側のショルダーブロック33のサイプ50bを示している図4に対応する図である。
【0061】
本例の構成では、図11Aに示すように、車両外側のショルダーブロック33の小ブロック33aのサイプ50aでは、第1突起60及び第2突起66の突出量(当該平面部分56,57からの突出量)がそれぞれH1である。また、第1凹み62及び第2凹み64の凹み量がそれぞれH1と略同じである。
【0062】
一方、図11Bに示すように、車両内側のショルダーブロック33の小ブロック33aのサイプ50bでは、第1突起60及び第2突起66の突出量がそれぞれH1より小さいH2である。また、第1凹み62及び第2凹み64の凹み量がそれぞれH2と略同じである。これにより、車両外側の第1突起60の突出量H1は、車両内側の第1突起60の突出量H2より大きい。また、車両外側の第2突起66の突出量H1は、車両内側の第2突起66の突出量H2より大きい。
【0063】
また、図示は省略するが、車両外側のクォーターブロック、センターブロック、車両内側のクォーターブロックの順に、サイプの第1突起及び第2突起の突出量が、H1とH2との間で徐々に小さくなっている。第1凹み及び第2凹みの凹み量も、それに応じて車両外側のクォーターブロック、センターブロック、車両内側のクォーターブロックの順に、H1とH2との間で徐々に小さくなっている。
【0064】
これにより、車両の旋回時において、車両外側のショルダーブロック33等のブロックでは、突起及び凹みの噛み合い量が、車両内側のショルダーブロック33等のブロックより大きい。このため、タイヤ1cの車両外側でのショルダーブロック33等のブロックの倒れを抑制できるので、タイヤ外側にかかる荷重を効率よく支えることができる。したがって、旋回時における湿潤路面、乾燥路面及び積雪路面での操縦安定性を向上させることができる。
【0065】
このようにタイヤ1cのサイプ50aの突起の突出量が車両外側と内側とで異なるので、タイヤ1cは裏表方向を適切に車両に取り付ける必要がある。具体的には、タイヤ1cは、車両の外側及び内側となる側がそれぞれ指定されている。
【0066】
タイヤ側面には、一般的に、セリアルと呼ばれる記号が設けられている。セリアルには、例えばサイズコード、製造時期(製造年週)、製造場所(製造工場コード)などの情報が含まれる。車両の外側に向くタイヤ側面(サイドウォール)のみにセリアルを設ける、または車両外側に向く側面と車両内側に向く側面とで異なるセリアルを設けることで、車両に対するタイヤ1の装着方向が特定される。具体例としては、タイヤ1cの両側面に製造工場コードおよびサイズコードを設け、車両の外側を向く側面のみに製造年週を設けることが挙げられる。
【0067】
また、車両の外側に向くタイヤ側面に文字または記号で、車両への装着状態で外側であること示す表示が設けられてもよい。本例において、その他の構成及び作用は、図1図4の構成と同様である。
【0068】
図12Aは、実施形態の別例のタイヤ1dにおいて、ショルダーブロック33のサイプ50aを示している図4に対応する図である。図12Bは、別例のタイヤ1dにおいて、クォーターブロック31のサイプ50bを示している図4に対応する図である。図12Cは、別例のタイヤ1dにおいて、センターブロック30のサイプ50cを示している図4に対応する図である。
【0069】
図11Aは、実施形態の別例のタイヤ1cにおいて、車両外側のショルダーブロック33のサイプ50aを示している図4に対応する図である。図11Bは、別例のタイヤ1cにおいて、車両内側のショルダーブロック33のサイプ50bを示している図4に対応する図である。
【0070】
本例の構成では、図12Aに示すように、タイヤ軸方向両側のショルダーブロック33の小ブロック33aのサイプ50aでは、第1突起60及び第2突起66の突出量(当該平面部分からの突出量)がそれぞれH1である。第1凹み62及び第2凹み64の凹み量が、それぞれH1と略同じである。
【0071】
一方、図12Bに示すように、タイヤ軸方向両側のクォーターブロック31の小ブロック31aのサイプ50bでは、第1突起60及び第2突起66の突出量がそれぞれH1より小さいH2である。第1凹み62及び第2凹み64の凹み量がそれぞれH2と略同じである。
【0072】
また、図12Cに示すように、タイヤ軸方向中央のセンターブロック30の小ブロック30aのサイプ50cでは、第1突起60及び第2突起66の突出量がそれぞれH2より小さいH3である。第1凹み62及び第2凹み64の凹み量がそれぞれH3と略同じである。
【0073】
これにより、センターブロック30の各突起60,66、クォーターブロック31の各突起60,66、ショルダーブロック33の各突起60,66の順に、突出量が大きい。制動時及び旋回時では、ブロックのタイヤ軸方向中央の直径との直径差が大きいブロックほど、ブロックの倒れ込みが性能悪化に及ぼす影響が大きくなる。本例の場合には、タイヤ1dのタイヤ軸方向外側になるブロックほど、各突起60,66の突出量が大きくなっている。これにより、タイヤ1dのタイヤ軸方向外側になるブロックほど、倒れ込みの抑制効果を高くできる。このため、制動性能及び操縦安定性を向上させることができる。本例において、その他の構成及び作用は、図1図4の構成と同様である。
【0074】
図13は、実施形態において、各ブロックのサイプに設ける突起の別例を示している。図13の別例の突起114は、四角錐の先端を底面115と平行な平面でカットして、先端面116が底面115より小さな四角形となった形状である。これにより、突起114は、断面(先端面116及び底面115に対し直交する断面)が台形状である。これに合わせて、突起114と噛み合う凹みも、突起114とほぼ合致する形状としている。
【0075】
このような形状の突起114を用いる場合には、突起を半球状とする場合と同様に、突起114を形成する金型からの加硫成型後の抜け性を高くできる。なお、突起は、円錐の先端を底面と平行な平面でカットして先端面とした、断面台形状とし、凹みはこれに合致する形状としてもよい。
【0076】
図14A図14Bは、実施形態において、各ブロックのサイプに設ける突起の別例の2例を示している。図14Aでは、突起117が略直方体である場合を、図14Bでは突起118が略六角柱状である場合を示している。すなわち、図14A図14Bでは、突起117,118がいずれも多角柱状である。これに合わせて、突起117,118と噛み合う凹みも、突起117,118とほぼ合致する形状としている。
【0077】
このような形状の突起117,118では、突起を半球状または断面台形状とする場合より、金型からの加硫成型後の抜け性は低くなる。一方、突起117,118は底面117a、118aに対し側面117b、118bが直交しているので、噛み合い後に噛み合いが外れにくくなる。多角柱は、nを3以上の整数としてn角柱であればよく、四角柱及び六角柱以外の形状としてもよい。また、突起は、円柱状とし、凹みはこれにほぼ合致する有底円筒状の穴としてもよい。
【0078】
図15A図15Bは、実施形態において、各ブロックのサイプに設ける突起の別例の2例を示している。図15Aでは、突起119が三角錐である場合を示し、図15Bでは突起120が四角錐である場合を示している。すなわち、図15A図15Bでは、突起119,120がいずれも多角錐状である。これに合わせて、突起119,120と噛み合う凹みも、突起119,120とほぼ合致する形状としている。
【0079】
このような形状の突起119,120では、多角柱の場合より辺の数が少なくなるので、凹みに噛み合いやすくなる。多角錐は、nを3以上の整数としてn角錐であればよく、三角錐及び四角錐以外の形状としてもよい。
【0080】
図16は、実施形態において、各ブロックのサイプに設ける突起の別例を示している。図16では、突起121が、三角錐の先端を底面122と平行な平面でカットして、先端面123が底面122より小さな三角形となった形状である。これにより、突起121は、断面(先端面123及び底面122に対し直交する断面)が台形状である。これに合わせて、突起121と噛み合う凹みも、突起121とほぼ合致する形状としている。
【0081】
このような形状の突起121では、凹みに噛み合いやすくなると共に、突起121を形成する金型からの加硫成型後の抜け性を高くできる。
【0082】
なお、上記の実施形態では、タイヤのトレッドは、サイプが形成された少なくとも1つのブロックを含んでいればよい。また、サイプの第1壁面には、第1突起のみが形成され、第1凹みは省略されてもよい。このとき、サイプの第2壁面には、第2凹みのみが形成され、第2突起は省略される。
【0083】
また、サイプの第1壁面の深さ方向の1つの位置にのみ、または3つ以上の位置に第1突起が形成され、サイプの第2壁面の深さ方向の1つの位置にのみ、または3つ以上の位置に、第1突起と噛み込み可能に対向する第2凹みが形成されてもよい。
【符号の説明】
【0084】
1,1a,1b,1c,1d 空気入りタイヤ(タイヤ)、10 トレッド、21 周方向溝、30 センターブロック、31 クォーターブロック、33 ショルダーブロック、30a,31a,33a 小ブロック、40 横溝、50,50a,50b,50c サイプ、52 第1壁面、53 第2壁面、54 内曲がり部分、55 外曲がり部分、56,57 平面部分、58 端平面部分、60 第1突起、62 第1凹み、64 第2凹み、66 第2突起、61,62 サイプ、70 タイヤ成型用金型(金型)、71 トレッド金型、72 サイド金型、73 トレッド成型面、74 本体、75 突起、80 サイプブレード、81 端平板部分、82 波形部分、85,86 曲面、87 平面部分、89 第1突起形成用凹み、90 第1凹み形成用突起、91 平面部分、92 第2凹み形成用突起、93 平面部分、94 第2突起形成用凹み、100、100a 路面、102 ブロック、103 サイプ、104 第1壁面、105 第2壁面、110,112 サイプ、114 突起、115 底面、116 先端面、117,118,119,120,121 突起、122 底面、123 先端面、T 接地端。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7
図8
図9
図10
図11A
図11B
図12A
図12B
図12C
図13
図14A
図14B
図15A
図15B
図16