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特開2024-77229接着層、構造体、力覚センサ、及び、ロボット
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  • 特開-接着層、構造体、力覚センサ、及び、ロボット 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024077229
(43)【公開日】2024-06-07
(54)【発明の名称】接着層、構造体、力覚センサ、及び、ロボット
(51)【国際特許分類】
   C09J 201/00 20060101AFI20240531BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20240531BHJP
   C09J 7/35 20180101ALI20240531BHJP
   G01L 5/16 20200101ALI20240531BHJP
   B25J 19/02 20060101ALI20240531BHJP
   C09J 163/00 20060101ALI20240531BHJP
【FI】
C09J201/00
C09J11/06
C09J7/35
G01L5/16
B25J19/02
C09J163/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022189187
(22)【出願日】2022-11-28
(71)【出願人】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】吉田 真典
(72)【発明者】
【氏名】佃 真之介
(72)【発明者】
【氏名】小林 尚裕
【テーマコード(参考)】
2F051
3C707
4J004
4J040
【Fターム(参考)】
2F051AA10
2F051AB06
2F051BA03
3C707AS34
3C707AS35
3C707KS33
3C707KS35
3C707KV04
3C707KW03
3C707KW05
4J004AA13
4J004AA17
4J004AB05
4J004AC01
4J004FA08
4J040EC001
4J040JA09
4J040JB02
4J040KA16
4J040NA22
(57)【要約】
【課題】厚み均一性、密着性及び耐久性 に優れた接着層、並びに、当該接着層を備えた、構造体、力覚センサ、及び、ロボットの提供する
【解決手段】マイクロカプセル型潜在性硬化剤を含む接着剤 を硬化させた接着層、並びに、当該接着層を備えた構造物、力覚センサ、及び、ロボット。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロカプセル型潜在性硬化剤を含む接着剤を硬化させた接着層。
【請求項2】
前記接着剤がフィルム状接着剤である、請求項1に記載の接着層。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の接着層を備えた構造体。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載の接着層と、
1以上の軸方向に作用する力及びトルクの大きさの少なくとも一方を検知するセンサチップと、
を備えた力覚センサ。
【請求項5】
前記センサチップが、1以上の軸方向の変位を検出する素子又は静電容量の変化を検出する素子である、請求項4に記載の力覚センサ。
【請求項6】
マイクロカプセル型潜在性硬化剤を含む接着剤を硬化させた接着層と、
力覚センサと、
を備えたロボット。
【請求項7】
前記力覚センサが、
マイクロカプセル型潜在性硬化剤を含む接着剤を硬化させた接着層と、
1以上の軸方向に作用する力及びトルクの大きさの少なくとも一方を検知するセンサチップと、
を備えた請求項6記載のロボット。
【請求項8】
前記センサチップが、1以上の軸方向の変位を検出する素子又は静電容量の変化を検出する素子である請求項7に記載のロボット。
【請求項9】
前記接着剤がフィルム状接着剤である、請求項6~8のいずれか一項に記載のロボット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着層、並びに、当該接着層を備えた、構造体、力覚センサ、及び、ロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、複数の向きに作用する力やトルクの大きさを検知できる力覚センサが知られている。このような力覚センサは、電気抵抗式、圧電式、光学式、又は、静電容量方式等、各方式に応じて1以上の軸方向に作用する力及びトルクの大きさの少なくとも一方を検知するセンサチップを搭載しており、1以上の軸方向の変位や静電容量の変化を検出することにより、複数の向きに作用する力やトルクの大きさを検知することができる。力覚センサに関する技術としては種々のものが提案されている(例えば、下記特許文献1~2参照)。
【0003】
また、力覚センサは、センサチップと金属製の起歪体等とを組み合わせる際に、接着剤を介してこれら部材を貼り付けることができる。例えば、センサチップと起歪体との接着に関する技術としては接着剤のヤング率を規定した技術が開発されている(例えば、下記特許文献3参照)。
【0004】
近年、力覚センサの発展は目覚ましく、3軸や6軸等複合的な力の状態を即時に検知できる力覚センサ等が開発されている。力覚センサの用途の一つとしては、ロボットへの適用が挙げられる。例えば、力覚センサを用いたロボットは、力加減等を調整しながら高度且つ精細な動作を行う用途に用いることが可能である(例えば、下記特許文献4~5参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2021-4846号公報
【特許文献2】特開2021-135103号公報
【特許文献3】特開2021-071305号公報
【特許文献4】特開2019-171503号公報
【特許文献5】国際公開2019/078315号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
力覚センサの適用は、産業用ロボット、サービス用ロボットの他、医療用ロボット、協働ロボット、生活支援ロボット等、各種ロボット技術に対し広く進められており、これに伴い、精度、応答性、剛性、搭載性、耐久性、耐環境性、等各性能の向上が要求されている。力覚センサやこれを用いたロボットの構造に求められる性能に対する要求は日々高まっており、特に、精度、信頼性、耐久性などに対する要求が多い。
【0007】
力覚センサやこれを用いたロボットの精密性、信頼性及び耐久性は、力覚センサ内の各部材がいかに精度高く配置されているか、また、これら各部材の配置が経時によって変化しないか等が重要な要素となる。このため、起歪体等の部材とセンサチップとの張り付けや力覚センサとロボットを構成する部材との固定等に接着剤が用いられる場合、当該接着剤の性能も力覚センサの性能に対し大きな影響を有する。くわえて、量産される力覚センサにとって歩留まりよく且つ効率的に製造できることは精密性や信頼性の向上に対し重要な要素である。このため、製造段階において接着剤に対し安定して優れた性能を発揮できることが強く求められる。
【0008】
本発明によれば、厚み均一性、密着性及び耐久性に優れた接着層、並びに、当該接着層を備えた、構造体、力覚センサ、及び、ロボットの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は以下の実施形態を含む。
<1>
マイクロカプセル型潜在性硬化剤を含む接着剤を硬化させた接着層。
<2>
前記接着剤がフィルム状接着剤である、前記<1>に記載の接着層。
<3>
前記<1>又は前記<2>に記載の接着層を備えた構造体。
<4>
前記<1>又は前記<2>に記載の接着層と、
1以上の軸方向に作用する力及びトルクの大きさの少なくとも一方を検知するセンサチップと、
を備えた力覚センサ。
<5>
前記センサチップが、1以上の軸方向の変位を検出する素子又は静電容量の変化を検出する素子である、前記<4>に記載の力覚センサ。
<6>
マイクロカプセル型潜在性硬化剤を含む接着剤を硬化させた接着層と、
力覚センサと、
を備えたロボット。
<7>
前記力覚センサが、
マイクロカプセル型潜在性硬化剤を含む接着剤を硬化させた接着層と、
1以上の軸方向に作用する力及びトルクの大きさの少なくとも一方を検知するセンサチップと、
を備えた前記<6>記載のロボット。
<8>
前記センサチップが、1以上の軸方向の変位を検出する素子又は静電容量の変化を検出する素子である前記<6>又は<7>に記載のロボット。
<9>
前記接着剤がフィルム状接着剤である、前記<6>~<8>のいずれか一つに記載のロボット。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、厚み均一性、密着性及び耐久性に優れる接着層、並びに、当該接着層を備えた、構造体、力覚センサ、及び、ロボットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】静電容量型力覚センサの基本構造と接着層との関係を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
【0013】
《接着層》
本実施形態の接着層は、マイクロカプセル型潜在性硬化剤を含む接着剤を硬化させた層である。本実施形態における接着剤は、硬化剤がマイクロカプセル化されていることで、接着剤を加熱硬化する際に低粘度化している時間を一定以上維持できるため、塗布時の接着剤厚みバラつきを改善し均一化する時間を確保できる。また、コアである硬化剤成分に高反応性物質を用いることでカプセルが破壊された後の硬化開始の際に速硬化性を発現することができる。そして、低粘度化している時間と速硬化を発現するタイミングはマイクロカプセルのシェルの強度調整によりコントロールできる。このため、本実施形態の接着層は、マイクロカプセル型硬化剤を用いた熱硬化型接着剤により、粘度プロファイルと硬化速度とを高精度にコントロールできることから、硬化後の厚み均一性を向上させることができる。
【0014】
また、本実施形態の接着層は、塗膜形成後の熱硬化時に低粘度化した本実施形態における接着剤が部材との界面全体へ濡れ広がる時間が確保され、接着剤と部材との界面に空隙が少ないことから部材との密着性が高く、且つ、破壊時に凝集破壊モードとなり耐久性に優れる。
さらに、本実施形態における接着剤は硬化剤成分がマイクロカプセル化されている為、硬化剤と硬化対象(例えば、エポキシ樹脂)とが物理的に隔離されており、優れた保存安定性を発現する。このため、本実施形態における接着剤はマイクロカプセル型潜在性硬化剤を用いることで歩留まりが高く効率的に製造することができる。
【0015】
本実施形態の接着層は単一の接着剤で構成されていてもよいが、配合の異なる本実施形態における接着剤を積層したり、又は、本実施形態における接着剤以外の接着剤を積層することによって多層構造とすることもできる。例えば、本実施形態の接着層は、両面に接着される被着体が異なる材料(例えば、異種金属等)の場合など、各被着体との接着力の違いを加味して複数の本実施形態における接着剤を積層してこれらを硬化させるなど多層構造の接着層とすることもできる。
【0016】
本実施形態の接着層は、基材上に本実施形態における接着剤を付与し塗膜を形成し、その後塗膜に熱を付与して硬化させることで得ることができる。接着剤の付与手段は特に限定されるものではなく、塗布や浸漬など公知の塗膜形成手段を目的に応じて適宜選定することができる。接着剤で形成された塗膜の硬化温度及び硬化時間は、塗膜の厚さや塗膜が形成される基材(例えば、力覚センサのセンサチップ、ロボットに用いられる部材など)によって適宜選定されるため特に限定はないが、例えば、通常60~200℃、好ましくは80℃~180℃の温度範囲で、15分間~2時間、好ましくは30分間~1.5時間の反応時間でおこなうことができる。
【0017】
(接着剤)
本実施形態における接着剤は、マイクロカプセル型潜在性硬化剤を含む。本実施形態における接着剤は、マイクロカプセル型潜在性硬化剤に加え、エポキシ樹脂を含むことが好ましい。マイクロカプセル型潜在性硬化剤としては、例えば、旭化成株式会社製の「ノバキュア(登録商標)」(参考HP:https://asahi-kasei-nvc.com/)として入手することができる。
本実施形態における接着剤に含まれる硬化剤がマイクロカプセル化されていることで、これを含む接着剤に優れた貯蔵安定性と低温硬化性を付与し、一液化を実現することができる。
また、本実施形態における接着剤はマイクロカプセル型潜在性硬化剤を含むことで、加熱時に低粘度状態を一定時間維持することが可能であり、マイクロカプセルの強度調整により低粘度化している時間をコントロール可能であると共に、コア成分として高反応性物質を用いることで硬化開始後に速硬化性を発現することができる。
さらに、上述のように本実施形態における接着剤は、保存安定性に優れ、且つ、得られた硬化膜の耐久性に優れる。
マイクロカプセル型潜在性硬化剤を含む接着剤の詳細については後述する。
【0018】
(フィルム状接着剤)
本実施形態の接着層は、フィルム状の接着剤を用いて形成することができる。換言すると、本実施形態における接着剤は、液状又はペースト状のものであってもよいし、あらかじめフィルム状に成膜された形状であってもよい。フィルム状接着剤を用いると、本実施形態における接着剤の利点を発揮しつつ、さらに、あらかじめ適切なサイズを設定することで非着部位からのはみ出しなどを容易に抑制することができる。また、適用部材や適用箇所に起因し、接着剤を塗工することが困難であったり、所望の膜厚とすることが困難な場合であっても、フィルム状接着剤を用いることで容易に所望の膜厚及びサイズの塗膜を形成することができ、且つ、これを硬化させることで所望の部材や適用箇所に容易に本実施形態の接着層を形成することができる。
【0019】
フィルム状接着剤のサイズ、膜厚などは、目的に応じて適宜設定することができる。また、フィルム状接着剤は、本実施形態における接着剤を基材上に塗布して所望の膜厚及びサイズの塗膜を形成することで作製することができる。フィルム状接着剤は、本実施形態における液状又はペースト状の接着剤と同じ成分の接着剤を用い、所望の接着力が得られる程度に硬化を進めてフィルム状としてもよいし、他の成分(フィルム形成用のバインダー(例えば、フェノキシ樹脂)、硬化剤(例えば、液状フェノール硬化剤)、溶媒(例えば、メチルエチルケトン等))を用いてフィルム状としてもよい。本実施形態における液状又はペースト状の接着剤成分に対して、溶媒、及びその他の成分を加えてワニスを作製し、基材上に塗布した後、加熱乾燥により溶媒を除去しフィルムとする場合の加熱乾燥温度は、例えば、60℃~150℃、好ましくは80℃~130℃の温度範囲で、加熱乾燥時間は3分間~1時間、好ましくは5分間~30分間である。
【0020】
《構造体》
本実施形態の構造体は、本実施形態の接着層を備える。本実施形態の構造体は、接着層に加え、接着層の非着対象となる部材を備えることできる。前記部材は特に限定はなく種々用途に応じて適宜選定でき、例えば、力覚センサ用途に用いる場合の部材の例として、力覚センサ自体、1以上の軸方向に作用する力及びトルクの大きさの少なくとも一方を検知するセンサチップ、起歪体等が挙げられる。接着層及び力覚センサ関連の部材については後述する。
【0021】
本実施形態の構造体は少なくとも一層の接着層を備えていればよく、接着層と第1の部材との二層を備えた構造体、接着層が第1の部材と第2の部材とに挟持された三層構造の構造体に加え、複数の接着層及び複数の部材で構成された多層構造の構造体のいずれもが本実施形態の構造体の範疇に含まれる。例えば、力覚センサ用途の場合、力覚センサ自体、センサチップ及び起歪体から選ばれる一つの部材と接着層とので構成される2層構造体、センサチップ及び起歪体が接着層を介して接着された3層構造体等が挙げられる。
【0022】
本実施形態の構造体の使用用途としては、力覚センサ用途の他、例えば、半導体パッケージ、自動車が挙げられ、これらの場合、接着層と共に構造体を構成する部材としては、例えば、半導体チップ、基板、自動車車体、ドア等が挙げられる。
【0023】
《力覚センサ》
本実施形態の力覚センサは、本実施形態における接着剤を硬化させた接着層と、1以上の軸方向に作用する力及びトルクの大きさの少なくとも一方を検知するセンサチップと、を備える。本実施形態の力覚センサは、本実施形態の接着層を備えることで、構成部材の位置精度に優れると共に耐久性が高く、且つ、高効率で容易に作製することができる。
【0024】
(センサチップ)
本実施形態におけるセンサチップは、1以上の軸方向に作用する力及びトルクの大きさの少なくとも一方を検知する。本実施形態におけるセンサチップとしては、例えば、1以上の軸方向の変位を検出する素子や静電容量の変化を検出する素子が挙げられる。1以上の軸方向の変位を検出する素子としては、例えば、電気抵抗式力覚センサにおける起歪体の電気抵抗の変位を検知するセンサチップ、圧電式力覚センサにおける圧電素子に力が加わった際に発生する電圧を検知する電圧センサチップ、又は、光学式力覚センサにおいて力が加わった際に変化する模様の変化を検知する光学センサチップ、等が挙げられる。また、静電容量の変化を検出する素子としては、起歪体に加えられた力に応じた導体間の距離の変化によって生じる静電容量の変化を検知する静電容量素子等が挙げられる。
【0025】
本実施形態の力覚センサは、接着層とセンサチップとが直接接着されていてもよいし、他の部材を介して接着されていてもよい。具体的には、センサチップが本実施形態の接着層を介して他の部材に固定された態様や、センサチップを備えた部材が本実施形態の接着層を介して他の部材に固定された態様等が挙げられる。なお、本実施形態の力覚センサは、センサチップ以外の部材の固定に本実施形態の接着層が用いられていてもよい。
【0026】
《ロボット》
本実施形態のロボットは、マイクロカプセル型潜在性硬化剤を含む接着剤を硬化させた接着層((本実施形態の接着層)と、力覚センサと、を備える。本実施形態のロボットは、i)当該ロボットに備えられる力覚センサのロボットへの固定に本実施形態の接着層が用いられていてもよいし、ii)当該ロボットに備えられる力覚センサが、マイクロカプセル型潜在性硬化剤を含む接着剤を硬化させた接着層(本実施形態の接着層)と1以上の軸方向に作用する力及びトルクの大きさの少なくとも一方を検知するセンサチップとを備えたものであってもよいし、i)及びii)の双方を備えていてもよい。また、本実施形態のロボットに用いられる接着層としては上述のフィルム状接着剤を硬化させた接着層を用いることもできる。
【0027】
本実施形態のロボットは、力覚センサを搭載可能なロボットであればその用途、種類、構造等は特に限定されるものではない。本実施形態のロボットとしては、例えば、産業用ロボット、サービス用ロボットの他、医療用ロボット、協働ロボット、生活支援ロボット等が挙げられる。
【0028】
本実施形態のロボットは、力覚センサの固定に本実施形態の接着層を使用、又は、本実施形態の接着層を用いて作製された力覚センサを備えるため、構成部材の位置精度に優れると共に耐久性が高く、且つ、高効率で容易に作製することができる。
【0029】
《本実施形態の接着剤の適用例》
静電容量型力覚センサを例に、本実施形態におけるセンサチップと接着層との関係について説明する。図1は、静電容量型力覚センサの基本構造と接着層との関係を示す模式図である。図1において、静電容量型力覚センサ10は、起歪体20と、支持体50と、から構成されており、センサチップとして、一対の電極30A及び30Bを有している。
起歪体20は、3軸方向に可動する軸部22と、軸部22からの受けた荷重によって変形するダイアフラム24と、軸部22の先端に接合された平行板26と、ダイアフラム24の変形を支える台座28と、によって構成される。また、平行板26の支持体50側には静電容量を形成する電極30Aが設けられている。
【0030】
静電容量型力覚センサ10において、各部材間は本実施形態の接着層を用いて接着・固定することができ、例えば、図1においては、軸部22と平行板26との接合に本実施形態の接着層40Aが用いられている。
【0031】
支持体50は、その縁端で起歪体20の台座28に固定されている。静電容量型力覚センサ10においては、支持体50と台座28とは本実施形態の接着層40Bで接着されている。また、支持体50の起歪体20側の表面には静電容量を形成する電極30Bが設けられている。
【0032】
静電容量型力覚センサ10は、起歪体20に力が加わるとダイアフラム24に微小な変形が発生し,平行板26表面に設けられた電極30Aと支持体50表面に設けられた電極30Bとの距離が変化することで静電容量が変化し,図示を省略する回路基板上の検出回路にて静電容量の変化を検出することができる。
【0033】
静電容量型力覚センサ10は特に限定はないが3軸力覚センサであり、各箇所の静電容量変化を演算することで3軸の力及びモーメント成分を検出することができる。検出された静電容量値は,パルス幅変調信号として図示を省略する検出回路等に出力される。ただし、本実施形態の力覚センサは当該態様に限定されるものではなく、6軸など多軸の力及びモーメントを検出可能なように構成することができる。
【0034】
上述のように、静電容量型力覚センサ10においては、センサチップの一部となる電極30Aを備えた平行板26と軸部22との間、並びに、センサチップの一部となる電極30Bを備えた支持体50と台座28との間が、本実施形態の接着層を介して固定されている。本実施形態の接着層は厚み均一性に優れるため、高い精度で平行を保つように静電容量型力覚センサ10内に各電極を固定することができる。また、本実施形態の接着層は破壊時に凝集破壊モードとなるため、本実施形態の接着層をセンサチップの固定に用いた静電容量型力覚センサ10は衝撃などに強く耐久性に優れる。さらに、本実施形態における接着剤は本実施形態における接着剤を用いて形成されることで歩留まりが高く効率的に作製することができる。
【0035】
さらに、静電容量型力覚センサ10をロボットに設置する際に、ロボットと静電容量型力覚センサ10との固定に本実施形態における接着剤を用いることで、静電容量型力覚センサ10を所定の部位に位置精度高く設置することができる。
【0036】
光学式力覚センサの例としては、例えば、特開2019-74421号公報に記載の力覚センサ及びロボットが例として挙げられる。当該公報及び各図に記載の力覚センサは、変位検出器10A~10D(センサチップ)が各々対応するスケール(検出対象体)4A~4Dと対向するように配置されることで、スケール4A~4Dの相対変位量を検出し、ベース部1と変位部2との間に作用する外力を検出する装置である。センサチップに相当する変位検出器10A~10Dは各々光源と受光ICとを備えたセンサユニットである。本実施形態の接着層は、例えば、変位検出器10A~10Dと回路基板6との固定(例えば、同文献の図2(b)参照)、スケール4A~4Dとスケール保持部7との固定(例えば、同文献の図2(b)参照)、又は、力覚センサ100Bのロボットアーム200と把持部201とへの固定(例えば、同文献の図9参照)等に用いることができる。
【0037】
圧電式力覚センサの例としては、例えば、特開2021-4846号公報に記載の力覚センサモジュール及びロボットハンド等が例として挙げられる。当該公報及び図面に記載の力覚センサモジュールは、受力板40を介して起歪体20の入力部24a~24dに入力された外部からの力をセンサチップ110で検知する最大6軸の検知が可能な装置である。本実施形態の接着層は、例えば、受力板40と起歪体20の入力部24a~24dとの固定(例えば、同文献の図12参照)、センサチップ110と柱28との固定(例えば、同文献の図11参照)、力覚センサモジュール1のロボットハンドやグリッパへの固定(例えば、同文献の図13及び14参照)等に用いることができる。
【0038】
また、力覚センサのロボットへの適用の他の例としては、例えば、特開2019-171503号公報及び各図に記載のロボット加工システムへの適用が例として挙げられる。本実施形態の接着層は、例えば、同文献の図2に記載の第1ロボット(加工装置)のアーム41の先端の手首47とATC43との間への力覚センサ48の固定(例えば、同文献の図2参照)に用いることができる。
【0039】
《接着剤》
以下、本実施形態における接着剤について説明する。上述の通り、本実施形態の接着剤はマイクロカプセル型潜在性硬化剤を含み、さらに、エポキシ樹脂を含むことが好ましい。
【0040】
〈マイクロカプセル型潜在性硬化剤〉
本実施形態におけるマイクロカプセル型潜在性硬化剤は、アミン系硬化剤(A)を含むコアと、コアを被覆するカプセル膜と、を含む。
【0041】
(アミン系硬化剤(A))
マイクロカプセル型潜在性硬化剤は、アミン系硬化剤(A)(以下、「成分(A)」と称することがある。)を含むコアをカプセル膜が被覆している。本実施形態で用いられるアミン系硬化剤(A)としては、エポキシ樹脂用アミン系硬化剤が好ましい。エポキシ樹脂用アミン系硬化剤としては、例えば、変性ポリアミン系、脂肪族ポリアミン系、複素環式ポリアミン系、脂環式ポリアミン系、芳香族アミン系、ポリアミドアミン系、アミンアダクト系、ケチミン系、ウレタンアミン系の硬化剤が挙げられる。また、前述のアミン系硬化剤に更に低分子アミン化合物を含むことがより好ましい。
低分子アミン化合物としては、一級、二級及び/又は三級アミノ基を有する低分子化合物が挙げられる。
【0042】
低分子アミン化合物としては、一級、二級及び/又は三級アミノ基を有する低分子化合物が挙げられる。
一級アミノ基を有する低分子化合物としては、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ヘキサメチレンジアミン、イソホロンジアミン、ビス(4-アミノ-3-メチルシクロヘキシル)メタン、ジアミノジシクロヘキシルメタン、メタキシレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン、メタフェニレンジアミン等の一級アミン類;ジシアンジアミド、メチルグアニジン、エチルグアニジン、プロピルグアニジン、ブチルグアニジン、ジメチルグアニジン、トリメチルグアニジン、フェニルグアニジン、ジフェニルグアニジン、トルイルグアニジン等のグアニジン類;コハク酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、フタル酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、テレフタル酸ジヒドラジド、p-オキシ安息香酸ヒドラジド、サリチル酸ヒドラジド、フェニルアミノプロピオン酸ヒドラジド、マレイン酸ジヒドラジド等の酸ヒドラジド類が例示される。
二級アミノ基を有する低分子化合物としては、ピペリジン、ピロリジン、ジフェニルアミン、2-メチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール等が例示される。
三級アミノ基を有する低分子化合物としては、1-シアノエチル-2-ウンデシル-イミダゾール-トリメリテート、イミダゾリルコハク酸、2-メチルイミダゾールコハク酸、2-エチルイミダゾールコハク酸、1-シアノエチル-2-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール等のイミダゾール類や、ベンジルジメチルアミン、トリエタノールアミン、2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、N,N’-ジメチルピペラジン、トリエチレンジアミン、1、8-ジアザビシクロ(5,4,0)-ウンデセン-7、1、5-ジアザビシクロ(4,3,0)-ノネン-5、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)、ピリジン、ピコリン等が例示される。
【0043】
(カプセル膜)
マイクロカプセル型硬化剤は、コアの表面を、合成樹脂及び/又は無機酸化物を含むカプセル膜によって被覆されている構造を有するものであることが好ましい。これらの中でも、保管時の安定性と加熱時の破壊し易さを両立する観点から、カプセル膜は、合成樹脂を含むことが好ましい。
合成樹脂としては、以下に限定されないが、例えば、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ナイロン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ウレタン系樹脂等が挙げられる。
【0044】
-マスターバッチ型硬化剤-
マイクロカプセル型潜在性硬化剤を次に説明するマスターバッチ型硬化剤にすることで、エポキシ樹脂組成物を得る時に、エポキシ樹脂との混合が容易になり好ましい。
マスターバッチ型硬化剤は、マイクロカプセル型潜在性硬化剤100質量部に対してエポキシ樹脂(B)を10~5,000質量部、好ましくは20~2,000質量部、より好ましくは30~1,000質量部を含む。エポキシ樹脂(B)が10質量部以上で取り扱いが容易なマスターバッチ型硬化剤が得られ、5,000質量部以下で実質的に硬化剤又は硬化促進剤としての性能を発揮する。
【0045】
(エポキシ樹脂(B))
本実施形態においては、エポキシ樹脂(B)(以下、「成分(B)」と称することがある。)及び後述するエポキシ樹脂(C)(以下、「成分(C)」と称することがある。)とは、1分子内に2つ以上のエポキシ基を有する化合物、及び高分子化合物である。
エポキシ樹脂(B)としては、以下に限定されないが、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、ビスフェノールM型エポキシ樹脂、ビスフェノールP型エポキシ樹脂、テトラブロモビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、テトラメチルビフェニル型エポキシ樹脂、テトラブロモビフェニル型エポキシ樹脂、ジフェニルエーテル型エポキシ樹脂、ベンゾフェノン型エポキシ樹脂、フェニルベンゾエート型エポキシ樹脂、ジフェニルスルフィド型エポキシ樹脂、ジフェニルスルホキシド型エポキシ樹脂、ジフェニルスルホン型エポキシ樹脂、ジフェニルジスルフィド型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、ヒドロキノン型エポキシ樹脂、メチルヒドロキノン型エポキシ樹脂、ジブチルヒドロキノン型エポキシ樹脂、レゾルシン型エポキシ樹脂、メチルレゾルシン型エポキシ樹脂、カテコール型エポキシ樹脂等の2官能型エポキシ樹脂類;N,N-ジグリシジルアミノベンゼン型エポキシ樹脂、トリアジン型エポキシ樹脂等の3官能型エポキシ樹脂類;テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン型エポキシ樹脂、ジアミノベンゼン型エポキシ樹脂等の4官能型エポキシ樹脂類;フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、ブロモ化フェノールノボラック型エポキシ樹脂等の多官能型エポキシ樹脂類;及び脂環式エポキシ樹脂類が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。さらに、これらをイソシアネート等で変性したエポキシ樹脂等も併用することができる。
【0046】
マスターバッチ型硬化剤に含まれるエポキシ樹脂(B)は、取り扱い性と耐熱性の観点から、ビスフェノール型エポキシ樹脂を含むことが好ましく、保存安定性と良好な反応性を付与する観点からビスフェノールF型エポキシ樹脂を含むことがより好ましく、十分な機械特性を付与する観点から、さらにビスフェノールA型エポキシ樹脂を含むことがさらに好ましい。
【0047】
マスターバッチ型硬化剤は、マイクロカプセル型潜在性硬化剤とエポキシ樹脂(B)とを含むが、その機能を低下させない範囲で、その他の成分を含有することができる。その他の成分の含有量は、好ましくは30質量%未満である。
【0048】
〈エポキシ樹脂(C)〉
エポキシ樹脂(C)に、マイクロカプセル型潜在性硬化剤及び/又はマスターバッチ型硬化剤(以下本硬化剤と称す)を混合して本実施形態における接着剤(エポキシ樹脂組成物)が得られる。
【0049】
エポキシ樹脂組成物に用いられるエポキシ樹脂(C)は、前述のエポキシ樹脂(B)として挙げた化合物が例示できる。
【0050】
また、本実施形態に用いられるエポキシ樹脂(C)は、エポキシ樹脂の高分子量体で、自己成膜性を有する一般にフェノキシ樹脂と呼ばれる樹脂をも包含される。
本硬化剤とエポキシ樹脂(C)の混合比は、硬化性、硬化物の特性の面から決定されるものであるが、好ましくはエポキシ樹脂(C)100質量部に対して、本硬化剤中に含まれるマイクロカプセル型潜在性硬化剤量が0.1~100質量部となる量で用いればよい。より好ましくは、0.2~80質量部、更に好ましくは、0.5~60質量部である。0.1質量部以上で実用的に満足し得る硬化性能を得ることができ、100質量部以下で、マイクロカプセル型潜在性硬化剤が偏在することなく、バランスの良い硬化性能を有する硬化剤を与える。
【0051】
(他の硬化剤(D))
本実施形態における接着剤は、本硬化剤以外に他の硬化剤(D)(以下、「成分(D)」と称することがある。)を併用することができる。
硬化剤(D)としては、アミン系硬化剤、アミド系硬化剤、フェノール系硬化剤、酸無水物系硬化剤、活性エステル系硬化剤、触媒型硬化剤、等が挙げられる。
【0052】
アミン系硬化剤としては、以下に限定されないが、例えば、脂肪族アミン、芳香族アミン等が挙げられる。
脂肪族アミンとしては、以下に限定されないが、例えば、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン、テトラエチレンペンタミン、m-キシレンジアミン、トリメチルへキサメチレンジアミン、2-メチルペンタメチレンジアミン、イソフォロンジアミン、1,3-ビスアミノメチルシクロヘキサン、ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン、ノルボルネンジアミン、1,2-ジアミノシクロヘキサン等が挙げられる。
芳香族アミンとしては、以下に限定されないが、例えば、ジアミノジフェニルメタン、m-フェニレンジアミン、ジアミノジフェニルスルホン、ジエチルトルエンジアミン、トリメチレンビス(4-アミノベンゾエート)、ポリテトラメチレンオキシド-ジ-p-アミノベンゾエート、KAYAHARD A-A(日本化薬製)、エタキュア100(三井化学ファイン製)等が挙げられる。
【0053】
アミド系硬化剤としては、以下に限定されないが、例えば、(C-3)ジシアンジアミド及びその誘導体であるグアニジン系化合物、又はアミン系化合物に酸無水物を付加させた化合物、並びにヒドラジド系化合物が挙げられる。
ヒドラジド系化合物としては、以下に限定されないが、例えば、コハク酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、フタル酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジドテレフタル酸ジヒドラジド、p-オキシ安息香酸ヒドラジド、サリチル酸ヒドラジド、フェニルアミノプロピオン酸ヒドラジド、マレイン酸ジヒドラジド等が挙げられる。
グアニジン系化合物としては、以下に限定されないが、例えば、ジシアンジアミド、メチルグアニジン、エチルグアニジン、プロピルグアニジン、ブチルグアニジン、ジメチルグアニジン、トリメチルグアニジン、フェニルグアニジン、ジフェニルグアニジン、トルイルグアニジン等が挙げられる。
【0054】
フェノール系硬化剤としては、以下に限定されないが、例えば、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、フェノールアラルキル樹脂、クレゾールアラルキル樹脂、ナフトールアラルキル樹脂、ビフェニル変性フェノール樹脂、ビフェニル変性フェノールアラルキル樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂、アミノトリアジン変性フェノール樹脂、ナフトールノボラック樹脂、ナフトール-フェノール共縮合ノボラック樹脂、ナフトール-クレゾール共縮合ノボラック樹脂、アリルアクリルフェノール樹脂等が挙げられる。
【0055】
酸無水物系硬化剤としては、以下に限定されないが、例えば、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸等が挙げられる。
【0056】
活性エステル系硬化剤を構成する活性エステル化合物としては、特開2004-277460号公報に開示されている活性エステル化合物を用いてもよく、また市販のものを用いることもできる。市販されている活性エステル化合物としては、以下に限定されないが、例えば、ジシクロペンタジエニルジフェノール構造を含むもの、フェノールノボラックのアセチル化物、フェノールノボラックのベンゾイル化物が好ましく、特にジシクロペンタジエニルジフェノール構造を含むものがより好ましい。ジシクロペンタジエニルジフェノール構造を含むものとしては、以下に限定されないが、例えば、EXB9451、EXB9460、EXB9460S、HPC-8000-65T(DIC(株)製)、フェノールノボラックのアセチル化物としてDC808(ジャパンエポキシレジン(株)製)、フェノールノボラックのベンゾイル化物としてYLH1026(ジャパンエポキシレジン(株)製)等が挙げられる。
【0057】
触媒型硬化剤としては、以下に限定されないが、例えば、カチオン系熱硬化触媒、BF3-アミン錯体等が挙げられる。
【0058】
本実施形態の接着剤において、マイクロカプセル型潜在性硬化剤と併用した際に、良好な保存安定性を維持しつつ、十分な硬化物強度を付与する観点から、ジシアンジアミド、フェノール系硬化剤、酸無水物系硬化剤、活性エステル系硬化剤が好ましい。
【0059】
硬化剤(D)を使用する場合、エポキシ樹脂(C)100質量部に対して、硬化剤(D)を1~200質量部、本硬化剤をマイクロカプセル型潜在性硬化剤の全量が0.1~100質量部となる量で用いるのが好ましい。
この範囲で用いることで硬化性と貯蔵安定性に優れた組成物を与え、耐熱性、耐水性に優れた硬化物を得ることができる。
【0060】
(添加剤)
本硬化剤を用いて接着剤を製造する場合には、上述した成分(A)~(D)以外に、添加剤として、エポキシ樹脂及びフェノキシ樹脂以外のポリマー、エポキシ系反応性希釈剤、有機フィラー、無機フィラー、顔料、染料、流れ調整剤、増粘剤、離型剤、湿潤剤、難燃剤、界面活性剤、光重合開始剤等を、さらに含むことができる。
【0061】
エポキシ樹脂及びフェノキシ樹脂以外のポリマーとしては、以下に限定されないが、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリアクリル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリマレイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、並びに、カルボキシル基、ヒドロシキシル基、ビニル基及びアミノ基等の官能基や芳香環を有するエラストマー類等が挙げられる。
【0062】
エポキシ系反応性希釈剤とは、硬化構造に組み込まれることが可能なエポキシ基を有する化合物であり、接着剤中に含有することで、接着剤を低粘度化する効果のある化合物である。本明細書では、上述のエポキシ樹脂(B)、(C)に例示した化合物を除外し、かつ25℃における粘度が1mPa・s以上3Pa・s未満である化合物をエポキシ系反応性希釈剤とする。
エポキシ系反応性希釈剤としては、以下に限定されないが、n-ブチルグリシジルエーテル、t-ブチルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、2-エチルヘキシルグリシジルエーテル、スチレンオキシド、フェニルグリシジルエーテル、クレジルグリシジルエーテル、p-sec-ブチルフェニルグリシジルエーテル、t-ブチルフェニルグリシジルエーテル、1,4-シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル、1,3-シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル、(3,4-エポキシシクロヘキシル)メチル-3,4-エポキシシクロヘキシルカルボキシレート、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、ジシクロペンタジエンジメタノールジグリシジルエーテル、ビニルシクロヘキセンジオキシド、三菱ケミカル社製商品名:YX-8000、阪本薬品工業社製商品名:SR-8EGS、ヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエーテル、レゾルシノールジグリシジルエーテル、tert-ブチルハイドロキノンジグリシジルエーテル、ポリオキシアルキレンビスフェノールAのジグリシジルエーテル、N,N-ジグリシジルアニリン、N,N-ジグリシジル-o-トルイジン、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、N,N-ビス(2,3-エポキシプロピル)-4-(2,3-エポキシプロポキシ)アニリン等が挙げられる。
【0063】
有機フィラーとしては、以下に限定されないが、例えば、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、ブタジエンゴム、ポリエステル、ポリウレタン、ポリビニルブチラール、ポリアリレート、ポリメチルメタクリレート、アクリルゴム、ポリスチレン、NBR、SBR、シリコーン変性樹脂、及びこれらを成分として含む共重合体の有機微粒子が挙げられる。
【0064】
無機フィラーとしては、以下に限定されないが、例えば、タルク、焼成クレー、未焼成クレー、マイカ、ガラス等のケイ酸塩;酸化チタン、酸化アルミニウム(アルミナ)、溶融シリカ(溶融球状シリカ、溶融破砕シリカ)、合成シリカ、結晶シリカ等の酸化シリカ等の酸化物;炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ハイドロタルサイト等の炭酸塩;水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等の水酸化物;硫酸バリウム、硫酸カルシウム等の硫酸塩;亜硫酸カルシウム等亜硫酸塩;ホウ酸亜鉛、メタホウ酸バリウム、ホウ酸アルミニウム、ホウ酸カルシウム、ホウ酸ナトリウム等のホウ酸塩;窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素等の窒化物が挙げられる。
【0065】
顔料としては、以下に限定されないが、例えば、カオリン、酸化アルミニウム三水和物、水酸化アルミニウム、チョーク粉、石こう、炭酸カルシウム、三酸化アンチモン、ペントン、シリカ、エアロゾル、リトポン、バライト、二酸化チタン等が挙げられる。
【0066】
染料としては、以下に限定されないが、例えば、茜、藍等の植物由来の染料や、黄土、赤土等の鉱物由来の染料といった天然染料、アリザリン、インディゴ等の合成染料の他、蛍光染料等が挙げられる。
【0067】
流れ調整剤としては、以下に限定されないが、例えば、シランカップリング剤等の有機シラン化合物;チタンテトライソプロポキシドやチタンジイソプロポキシビス(アセチルアセトネート)のような有機チタン化合物;ジルコニウムテトラノルマルブトキシドやジルコニウムテトラアセチルアセトネート等の有機ジルコニウム化合物等が挙げられる。
【0068】
増粘剤としては、以下に限定されないが、例えば、ゼラチンのような動物性増粘剤;多糖類やセルロースのような植物性増粘剤;ポリアクリル系増粘剤、変性ポリアクリル系増粘剤、ポリエーテル系増粘剤、ウレタン変性ポリエーテル系増粘剤、カルボキシメチルセルロース等の化学合成系増粘剤等が挙げられる。
【0069】
離型剤としては、以下に限定されないが、例えば、フッ素系離型剤、シリコーン系離型剤、(メタ)アクリル酸グリシジルと炭素数16~22の直鎖アルキル(メタ)アクリル酸エステルとの共重合体からなるアクリル系離型剤等が挙げられる。
【0070】
湿潤剤としては、以下に限定されないが、例えば、アクリルポリリン酸エステルのような、酸性基を有する不飽和ポリエステルコポリマー系湿潤剤等が挙げられる。
【0071】
難燃剤としては、以下に限定されないが、例えば、水酸化アルミニウムや水酸化マグネシウム等の金属水酸化物、塩素化合物や臭素化合物等のハロゲン系難燃剤、縮合リン酸エステル等のリン系難燃剤、三酸化アンチモンや五酸化アンチモン等のアンチモン系難燃剤、シリカ充填剤等の無機酸化物等が挙げられる。
【0072】
界面活性剤としては、以下に限定されないが、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸塩やアルキルポリオキシエチレン硫酸塩等のアニオン性界面活性剤、アルキルジメチルアンモニウム塩等のカチオン性界面活性剤、アルキルジメチルアミンオキシドやアルキルカルボキシベタイン等の両性界面活性剤、炭素数25以上の直鎖状アルコールや脂肪酸エステル等の非イオン性界面活性剤等が挙げられる。
【0073】
アクリレートモノマーとしては、以下に限定されないが、例えば、ポリアルキレンオキシドの両末端に(メタ)アクリロイル基を有する化合物、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパン型多官能(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトール型多官能(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトール型多官能(メタ)アクリレート、ビスフェノールA構造を有するジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタジエン構造を有するジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0074】
光重合開始剤としては、以下に限定されないが、例えば、ビス-(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド(BASF製イルガキュア819)、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド(BASF製イルガキュアTPO)等のアシルフォスフィンオキサイド類、1-[4-(フェニルチオ)フェニル]-1,2-オクタンジオン 2-(O-ベンゾイルオキシム)(BASF製イルガキュアOXE01)、1-[6-(2-メチルベンゾイル)-9-エチル-9H-カルバゾ-ル-3-イル]エタノン-O-アセチルオキシム(BASF製イルガキュアOXE02)等のオキシム類、及び芳香環を有する増感剤等が挙げられる。
【0075】
以上、本発明について実施形態を用いて説明したが、本発明は上述の説明に限定されるものではない。
【実施例0076】
以下、実施例を用いて本発明をより詳細に説明するが、本発明の技術的範囲はこれに限定されるものではない。
【0077】
[実施例1,比較例1]
<接着剤の調製>
表1に従い、マイクロカプセル型潜在性硬化剤、及びその他成分を計量後、ノンバブリングニーダーで、2分間の撹拌及び3分間の脱泡を行って混合し、実施例1及び比較例1の接着剤を得た。
【0078】
[実施例2]
<フィルム形状の接着剤の作製>
表2に従い、マイクロカプセル型潜在性硬化剤、及びその他成分を計量後、ノンバブリングニーダーで、2分間の撹拌及び3分間の脱泡を行って混合し、接着剤調合液を得た。
得られた調合液を、支持体であるポリエチレンテレフタレートフィルム(厚み50μm)上に、乾燥後に膜厚40μmとなるように塗工した。塗工後、100℃に予熱しておいたオーブンにて5分間加熱乾燥し、その後、支持体と反対の面を易剥離処理されたポリエチレンテレフタレートフィルムで保護し、フィルム形状とした実施例2の接着剤を得た。
【0079】
<硬化後厚み均一性>
(1)鋼板+鋼板接着時の厚み均一性評価
接着面が50mm×25mmとなるようL字曲げ加工(90度)をおこなった冷間圧延鋼板(日本テストパネル株式会社製)の接着面に実施例1及び比較例1の接着剤を塗布した。その後、別途準備した、一枚のL字曲げ加工(90度)をおこなった冷間圧延鋼板にて塗布層を挟み、硬化前試験片を作製した。なお、はみ出した接着剤はふき取った。続いて、硬化前試験片を150℃に予熱したオーブンで30分間熱硬化し、硬化後試験片を得た。
【0080】
得られた硬化後試験片の50mm×25mm接着面に対して長手方向に等間隔で3か所の厚みを厚み計で測定し最大厚みと最小厚みの差分を算出し、以下の基準で評価した。
〈基準〉
◎:最大厚みと最小厚みとの差が5μm以下であった。
〇:最大厚みと最小厚みとの差が5μmを超えて15μm以下であった。
△:最大厚みと最小厚みとの差が15μmを超えて25μm以下であった。
×:最大厚みと最小厚みとの差が25μmを超えていた。
【0081】
(2)鋼板+アルミニウム板接着時の厚み均一性評価
接着面が50mm×25mmとなるようL字曲げ加工(90度)をおこなった冷間圧延鋼板(日本テストパネル株式会社製)の接着面に実施例1及び比較例1の接着剤を塗布した。その後、アルミニウム板(A6061P-T6 スタンダードテストピース社製)を接着面が50mm×25mmとなる様にL字曲げ加工(90度)をおこなった板で挟んだこと以外は、前述の(1)鋼板+鋼板(同種材料)接着時の厚み均一性評価、と同様の方法で試験片作製と評価をおこなった。
【0082】
(3)フィルム接着剤を用いた際の厚み均一性評価
接着面が50mm×25mmとなるようL字曲げ加工(90度)をおこなった冷間圧延鋼板(日本テストパネル株式会社製)の接着面に50mm×25mmに切り出した後保護フィルムを剥がした実施例2のフィルムを配置し固定した。続いて、150℃に予熱したオーブンで3分間加熱し、接着剤層を転写した後、支持体を剥離し、L字曲げ加工(90度)をおこなった冷間圧延鋼板(日本テストパネル株式会社製)、又は、アルミニウム板(A6061P-T6 スタンダードテストピース社製)を接着面が50mm×25mmとなる様にL字曲げ加工(90度)をおこなった板で挟み硬化前試験片を作製した。なお、フィルム接着剤を用いた際は接着剤はみ出しが無くふき取りの必要がなかった。
続いて、硬化前試験片を150℃に予熱したオーブンで30分間熱硬化を実施し硬化後試験片を得た。
【0083】
得られた硬化後試験片の50mm×25mm接着面に対して長手方向に等間隔で3か所の厚みを厚み計で測定し最大厚みと最小厚みの差分を算出し、以下の基準で評価した。
〈基準〉
◎:最大厚みと最小厚みとの差が5μm以下であった。
〇:最大厚みと最小厚みとの差が5μmを超えて15μm以下であった。
△:最大厚みと最小厚みとの差が15μmを超えて25μm以下であった。
×:最大厚みと最小厚みとの差が25μmを超えていた。
【0084】
<接着剤保存安定性>
実施例1、及び比較例1の接着剤を調製した直後の初期粘度と、同接着剤を40℃、7日間放置後の粘度とを、E型粘度計を用いて室温(25℃)にて測定し、下記数式にて保存後粘度倍率を算出した。
保存安定性粘度倍率=40℃、7日放置後経過時粘度/初期粘度 ・・・・式(2)
保存安定性粘度倍率は変化のない“1.0”が最も好ましく、“1.0を超え2.0以下”が好ましく、固化により“測定不可”が最も悪いものとして評価した。
【0085】
<破壊モード評価>
前述の硬化後厚み均一性の評価で作製したT字状になっている各硬化後試験片を、23℃、50%RHの恒温恒湿室において、AUTOGRAPH AGS-X 5kN(島津製作所株式会社製)を用いて、100mm/minにて剥離試験を行い、破壊面を目視で観察し、以下の基準に従い評価をおこなった。なお、破壊面の状態は、“凝集破壊”が“界面破壊”と比べて好ましい。
〈基準〉
凝集破壊: 破壊後に両方の接着面に硬化した接着剤が残っていた。
界面破壊: 破壊後に片方の接着面にのみ硬化した接着剤が残り、もう片方の面には硬化した接着剤がなかった。
【0086】
<硬化後部材端面での接着剤はみ出し性>
前述の硬化後厚み均一性評価と同様の方法で得た硬化後試験片の部材端面を観察し、
熱硬化中にはみ出した接着剤の有無を以下の基準で評価した。
〈基準〉
〇:接着剤のはみ出し無し
△:接着剤のはみ出しあるが部材から垂れてはいなかった。
×:接着剤がはみ出し、且つ垂れた痕跡があった。
【0087】
〔成分表記〕
・jER828(三菱ケミカル株式会社製)
ビスフェノールA型エポキシ樹脂 エポキシ当量 184g/eq.
・ノバキュアTM HXA9192HP(旭化成株式会社製)
マイクロカプセル型硬化剤がエポキシ樹脂中に分散されたマスターバッチ型のマイクロカプセル
型硬化剤
・2-エチル-4-メチルイミダゾール(東京化成工業株式会社製)
・MEH-8000H(明和化成株式会社製)
液状フェノール樹脂
・PKHB(Gabriel Phenoxies社製)
フェノキシ樹脂、ポリスチレン換算分子量が728以上の領域についての数平均分子量:14600
【0088】
【表1】
【0089】
【表2】
【0090】
【表3】
【0091】
実施例1と比較例1とを比較すると、実施例1の接着剤は硬化後の厚み均一性に優れ、破壊モードも凝集破壊であった。このような結果は、実施例1がマイクロカプセル型潜在性硬化剤を含むことで、接着剤を塗布した後の加熱硬化段階において低粘度状態を一定の時間維持することにより、厚みムラが改善されると共に、基材表面の凹凸への追従性に優れることに起因する。また、接着剤の保存安定性においても、マイクロカプセル型潜在性硬化剤を含む実施例1の接着剤は比較例1と比べて優れたものであった。
【0092】
実施例2はフィルム状接着剤を形成したものであるが、表2より実施例2のフィルム状接着層も硬化後の厚み均一性に優れ、破壊モードも凝集破壊であることが分かる。このことから、追従性発現が困難なフィルム形状の接着剤であっても、マイクロカプセル型潜在性硬化剤を用いることで熱硬化段階において十分な低粘度状態を維持できたため、優れた基材表面の凹凸追従性を発現し、破壊状態も好ましい凝集破壊とすることができた。
【0093】
さらに、実施例1の液状接着剤と実施例2のフィルム形状の接着剤の硬化後基材端面でのはみ出し性を比較すると、フィルム形状の接着剤の方が優れることが分かる。
図1