(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024077230
(43)【公開日】2024-06-07
(54)【発明の名称】浮子付きケーブル送り装置及び浮子付きケーブルの送り方法
(51)【国際特許分類】
G01N 29/265 20060101AFI20240531BHJP
H02G 1/08 20060101ALI20240531BHJP
【FI】
G01N29/265
H02G1/08
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022189191
(22)【出願日】2022-11-28
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】594126159
【氏名又は名称】神鋼検査サービス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100137143
【弁理士】
【氏名又は名称】玉串 幸久
(72)【発明者】
【氏名】中島 聡文
【テーマコード(参考)】
2G047
5G352
【Fターム(参考)】
2G047AA05
2G047AB01
2G047BA03
2G047BC07
2G047BC11
2G047GJ08
5G352DA08
5G352DA09
(57)【要約】
【課題】浮子付きケーブルを送り出すための負荷が大きくなったとしても、操作者によるハンドルの手動操作により浮子付きケーブルを送り出すことができるケーブル送り装置を提供する。
【解決手段】ケーブル送り装置1は、探傷センサー3を有するケーブル4をポンプユニット7からの送水を用いて被検査管10内に送り込むためのものであり、ケーブル4を通過させる挿通路12を有するケーシング11と、ケーブル4を送り出すように回転可能なプーリ20と、ハンドル25を含み、ハンドル25によってプーリ20を回転駆動するときのプーリ20の回転負荷に対するハンドル25の回転操作負荷の大きさの割合を変更する変更手段とを備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
探傷センサーを有する浮子付きケーブルをポンプからの送水を用いて被検査管内に送り込むケーブル送り装置であって、
引込口と送出口との間で延び且つ前記浮子付きケーブルを通過させる挿通路を有するケーシングと、
前記挿通路内の前記浮子付きケーブルを送り出せるように回転可能なプーリと、
ハンドルを含み、前記ハンドルによって前記プーリを回転駆動するときの前記プーリの回転負荷に対する前記ハンドルの回転操作負荷の大きさの割合を変更する変更手段と、を備えている、ケーブル送り装置。
【請求項2】
前記変更手段は、前記ハンドルのアーム長さを変更することにより、前記プーリの回転負荷に対する前記ハンドルの回転操作負荷の大きさの割合を変更するように構成されている、請求項1に記載のケーブル送り装置。
【請求項3】
前記変更手段は、アーム長さの異なる複数のハンドルのうちの1つのハンドルを選択することにより、前記プーリの回転負荷に対する前記ハンドルの回転操作負荷の大きさの割合を変更するように構成されている、請求項1に記載のケーブル送り装置。
【請求項4】
前記変更手段は、
前記ハンドルの回転を減速して前記プーリに伝える減速機構を含み、
前記減速機構の減速比を変更することにより、前記プーリの回転負荷に対する前記ハンドルの回転操作負荷の大きさの割合を変更するように構成されている、請求項1に記載のケーブル送り装置。
【請求項5】
前記減速機構は、
互いに直列に接続可能な複数の減速ユニットを含み、
前記ハンドルと前記プーリとの間に前記複数の減速ユニットを選択的に配置することによって、前記減速機構の前記減速比を変更するように構成されている、請求項4に記載のケーブル送り装置。
【請求項6】
前記減速機構は、
前記ハンドルにより回転駆動させることが可能な第1取付軸と、
前記ハンドルにより回転駆動させることが可能な第2取付軸と、
前記第1取付軸から前記プーリへの減速比と、前記第2取付軸から前記プーリへの減速比と、が異なる減速比となるように、前記第1取付軸、前記第2取付軸及び前記プーリを連結する減速部と、を含み、
前記第1取付軸及び前記第2取付軸を、前記ハンドルによって選択的に回転駆動させることにより、前記減速機構の前記減速比を変更するように構成されている、請求項4に記載のケーブル送り装置。
【請求項7】
前記プーリの回転数を表示する表示器を備えている、請求項1乃至6の何れか1項に記載のケーブル送り装置。
【請求項8】
ポンプからの送水を用いて探傷センサーを有する浮子付きケーブルをケーブル送り装置により被検査管内に送り込むケーブル送り方法であって、
前記ケーブル送り装置には、前記浮子付きケーブルを送り出すために手動回転可能でありプーリを回転駆動するためのハンドルが設けられており、
前記ハンドルの手動回転により前記プーリを回転させつつ、ポンプからの送水を用いて前記浮子付きケーブルを送り出す第1導出ステップと、
前記プーリを回転駆動するときの前記ハンドルにかかる負荷の大きさに応じて、前記プーリの回転負荷に対する前記ハンドルの回転操作負荷の大きさの割合を変更する負荷割合変更ステップと、
前記ハンドルの回転操作負荷の大きさの割合が変更された前状態で、前記ハンドルの手動回転により前記プーリを回転させつつ、ポンプからの送水を用いて前記浮子付きケーブルを送り出す第2導出ステップと、を含む、ケーブル送り方法。
【請求項9】
前記負荷割合変更ステップでは、前記ハンドルのアーム長さを変更する、請求項8に記載のケーブル送り方法。
【請求項10】
前記負荷割合変更ステップでは、前記ハンドルを、アーム長さの異なるハンドルに変更する、請求項8に記載のケーブル送り方法。
【請求項11】
前記負荷割合変更ステップでは、前記ハンドルの回転を減速して前記プーリに伝える減速機構の減速比を変更する、請求項8乃至10の何れか1項に記載のケーブル送り方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浮子付きケーブル送り装置及び浮子付きケーブルの送り方法に関する。
【背景技術】
【0002】
被検査管内に浮子付きケーブルを挿入して、管の内壁に生じた割れや減肉等の材料キズを探傷する探傷検査装置が知られている。特許文献1には、
図14に示すように、浮子付きケーブル502を被検査管501内に送り込むことにより、被検査管501を探傷する探傷検査装置500が開示されている。
【0003】
探傷検査装置500は、先端に超音波センサー503が取り付けられた浮子付きケーブル502と、浮子付きケーブル502を送り出すケーブル送り装置512と、ケーブル送り装置512と被検査管501とを接続する導入管511にポンプ521からの水を流入させる切替ユニット520と、を備えている。この探傷検査装置500では、大気中に配置されたケーブル巻取機510からシール管513を通じて導入された浮子付きケーブル502が、ケーブル送り装置512により送り出されるとともに、切替ユニット520からの水により被検査管501内に圧送される。
【0004】
特許文献2には、
図15に示すように、図略の被検査管の肉厚を計測するために浮子付きケーブル601を被検査管内に送り込むケーブル送り装置600が開示されている。このケーブル送り装置600は、ケーブル入口管612及びケーブル出口管613が設けられたケーシング611と、ケーシング611内から浮子付きケーブル601を送り出すプーリ615と、プーリ615を回転駆動するハンドル616と、を備えている。
【0005】
このケーブル送り装置600では、ハンドル616を手動回転させることにより、浮子付きケーブル601を被検査管内に送り込むことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実開昭61-178465号公報
【特許文献2】特開平09-79832号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1の探傷検査装置500では、切替ユニット520から先に送り出された浮子付きケーブル502が長い場合に、浮子付きケーブル502を送り出すためのポンプ521の圧力を高くする必要があるため、切替ユニット520内の水圧が高くなる。このとき、水の一部がケーブル送り装置512、シール管513及び水槽522に戻るため、この水に抗してケーブル送り装置512から浮子付きケーブル502を送り出すための負荷が大きくなる。このため、特許文献2のように、操作者がハンドル616を手動で回転操作して浮子付きケーブル601を送り出す構成を採用した場合には、比較的長い浮子付きケーブル601を被検査管に送り込む際に、プーリ615に大きな回転負荷がかかるため、操作者がハンドル616を手動で回転操作できなくなる虞がある。この場合、ハンドル616を回すときの微妙な負荷変動を手の感覚で察知することが難しくなる。
【0008】
そこで本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、浮子付きケーブルが大気中から導入されるケーブル送り装置において、浮子付きケーブルを送り出すための負荷が大きくなったとしても、操作者によるハンドルの手動操作により浮子付きケーブルを送り出すことができるケーブル送り装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示におけるケーブル送り装置は、探傷センサーを有する浮子付きケーブルをポンプからの送水を用いて被検査管内に送り込むケーブル送り装置である。このケーブル送り装置は、引込口と送出口との間で延び且つ前記浮子付きケーブルを通過させる挿通路を有するケーシングと、前記挿通路内の前記浮子付きケーブルを送り出せるように回転可能なプーリと、ハンドルを含み前記ハンドルによって前記プーリを回転駆動するときの前記プーリの回転負荷に対する前記ハンドルの回転操作負荷の大きさの割合を変更する変更手段と、を備える。
【0010】
このように構成されたケーブル送り装置では、ハンドルの回転操作によりプーリが回転し、プーリの外周に巻き掛けられた浮子付きケーブルがケーシング外に送り出されて、ポンプからの送水により押し流されるようにして被検査管内に挿入される。この浮子付きケーブルの送出し操作において、送り出し開始当初は、被検査管内における浮子付きケーブルの送り込み距離が短いため、ポンプからの比較的小さい圧力の送水により、浮子付きケーブルを被検査管内に送り込むことができる。このとき、挿通路内には比較的低い水圧が作用し、浮子付きケーブルを送り出すための負荷(ハンドルを操作するときの負荷)が比較的小さくなる。このため、操作者がハンドルを手動操作により回転させて浮子付きケーブルを送り出すことができる。
【0011】
その後、被検査管内における浮子付きケーブルの送り込み距離が長くなると、浮子付きケーブルを被検査管内に送り込むためには、ポンプの圧力をより大きくして送水する必要がある。この場合、ポンプからの送水圧力により、挿通路内には比較的高い水圧が作用し、ハンドルを回転させるための負荷が比較的大きくなり、操作者が手動操作でハンドルを回転できなくなる。このとき、変更手段により、ハンドルによってプーリを回転駆動するときのプーリの回転負荷に対するハンドルの回転操作負荷の大きさの割合を変更することにより、浮子付きケーブルを送り出すためのハンドルの回転操作負荷を小さくすることができる。このため、操作者がハンドルを手動操作して浮子付きケーブルを送り出すことができるようになる。したがって、被検査管内における浮子付きケーブルの送り込み距離が長くなり浮子付きケーブルを送り出すための負荷が大きくなったとしても、操作者によるハンドルの手動操作により浮子付きケーブルを送り出すことができる。また、ハンドルを回すときの操作負荷が低減されるため、ハンドルを回すときの微妙な負荷変動を手の感覚で察知できるようになる。
【0012】
前記変更手段は、前記ハンドルのアーム長さを変更することにより、前記プーリの回転負荷に対する前記ハンドルの回転操作負荷の大きさの割合を変更するように構成されていてもよい。
【0013】
この態様では、ハンドルのアーム長さを変更することにより、ハンドルを回転させるときの負荷を低減させることができる。例えば、ハンドルの回転操作負荷がより大きくなる場合には、ハンドルのアーム長さをより長くして操作負荷を低減する。これにより、プーリの回転負荷が大きな場合であっても、操作者は、ハンドルの手動操作によって浮子付きケーブルを送り出すことができる。
【0014】
前記変更手段は、アーム長さの異なる複数のハンドルのうちの1つのハンドルを選択することにより、前記プーリの回転負荷に対する前記ハンドルの回転操作負荷の大きさの割合を変更するように構成されていてもよい。
【0015】
この態様では、ハンドルのアームの長さの異なる複数のハンドルから1つのハンドルを選択することにより、ハンドルのアーム長さが変更される。これにより、ハンドルの回転操作負荷を低減できる。
【0016】
前記変更手段は、前記ハンドルの回転を減速して前記プーリに伝える減速機構を含み、前記減速機構の減速比を変更することにより、前記プーリの回転負荷に対する前記ハンドルの回転操作負荷の大きさの割合を変更するように構成されていてもよい。
【0017】
この態様では、減速機構の減速比を変更することにより、プーリの回転負荷に対するハンドルの回転操作負荷の大きさの割合が変更される。このため、被検査管内における浮子付きケーブルの送り込み距離が比較的長くなって挿通路内の水圧が比較的高くなった場合には、減速機構の減速比を変更することにより、ハンドルの回転操作負荷を低減することができる。したがって、プーリの回転負荷が大きな状態であっても、ハンドルの手動操作によって浮子付きケーブルを送り出すことができる。
【0018】
前記減速機構は、互いに直列に接続可能な複数の減速ユニットを含み、前記ハンドルと前記プーリとの間に前記複数の減速ユニットを選択的に配置することによって、前記減速機構の前記減速比を変更するように構成されていてもよい。
【0019】
この態様では、ハンドルとプーリの間に配置する減速ユニットの数を変更することができる。このため、被検査管内における浮子付きケーブルの送り込み距離が比較的長くなって挿通路内の水圧が比較的高くなった場合には、減速ユニットの数を増やすことにより減速機構の減速比を大きくできる。このため、プーリの回転負荷が大きな状態であっても、ハンドルの手動操作により浮子付きケーブルを送り出すことができる。なお、配置する減速ユニットの数が増えるにつれて、浮子付きケーブルの微妙な負荷変動をハンドルを通して察知することが難しくなることが想定される。したがって、ハンドルにかかる操作負荷と負荷変動の察知し易さを比較考量して、用いる減速ユニットの数を調整してもよい。
【0020】
前記減速機構は、前記ハンドルにより回転駆動させることが可能な第1取付軸と、前記ハンドルにより回転駆動させることが可能な第2取付軸と、前記第1取付軸から前記プーリへの減速比と、前記第2取付軸から前記プーリへの減速比と、が異なる減速比となるように、前記第1取付軸、前記第2取付軸及び前記プーリを連結する減速部と、を含み、前記第1取付軸及び前記第2取付軸を、前記ハンドルによって選択的に回転駆動させることにより、前記減速機構の前記減速比を変更するように構成されていてもよい。
【0021】
この態様では、第1取付軸と第2取付軸と減速部とにより、第1取付軸とプーリとの間の減速比と、第2取付軸とプーリとの間の減速比とが、異なる減速比になるように構成されている。例えば、第2取付軸とプーリとの間の減速比の方が第1取付軸とプーリとの間の減速比よりも大きい場合には、被検査管内における浮子付きケーブルの送り込み距離が比較的長くなり挿通路内の水圧が比較的高くなった場合に、ハンドルにより回転駆動させる回転軸を、第1取付軸から第2取付軸に変更することにより減速機構の減速比を大きくする。これにより、プーリの回転負荷が大きな状態でもハンドルの手動操作により浮子付きケーブルを送り出すことができる。
【0022】
前記ケーブル送り装置は、前記プーリの回転数を表示する表示器を備えていてもよい。
【0023】
この態様では、作業者は、表示器に表示された回転数が一定になるように、ハンドルの回転数を調整することができる。これにより、プーリの回転速度が、浮子が径方向の外側に変位するような速度になることや、浮子がプーリから離れるような速度になることを抑制できるため、浮子付きケーブルの破損に至るような事態が生ずることを防止することができる。
【0024】
本開示における浮子付きケーブルの送り方法は、ポンプからの送水を用いて探傷センサーを有する浮子付きケーブルをケーブル送り装置により被検査管内に送り込む浮子付きケーブルの送り方法である。前記ケーブル送り装置には、前記浮子付きケーブルを送り出すために手動回転可能でありプーリを回転駆動するためのハンドルが設けられている。前記浮子付きケーブルの送り方法は、前記ハンドルの手動回転により前記プーリを回転させつつ、ポンプからの送水を用いて前記浮子付きケーブルを送り出す第1導出ステップと、前記プーリを回転駆動するときの前記ハンドルにかかる負荷の大きさに応じて、前記プーリの回転負荷に対する前記ハンドルの回転操作負荷の大きさの割合を変更する負荷割合変更ステップと、前記ハンドルの回転操作負荷の大きさの割合が変更された状態で、前記ハンドルの手動回転により前記プーリを回転させつつ、ポンプからの送水を用いて前記浮子付きケーブルを送り出す第2導出ステップと、を含む。
【0025】
前記負荷割合変更ステップでは、前記ハンドルのアーム長さを変更してもよい。また、前記負荷割合変更ステップでは、前記ハンドルを、アーム長さの異なるハンドルに変更してもよい。また、前記負荷割合変更ステップでは、前記ハンドルの回転を減速して前記プーリに伝える減速機構の減速比を変更してもよい。
【発明の効果】
【0026】
本開示によれば、被検査管内における浮子付きケーブルの送り込み距離が長くなり浮子付きケーブルを送り出すための負荷が大きくなったとしても、操作者によるハンドルの手動操作により浮子付きケーブルを送り出すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】第1実施形態に係る探傷検査装置を示す概略的な構成図である。
【
図2】
図1の探傷検査装置におけるケーブル送り装置を示す概略的な構成図である。
【
図3】
図2のケーブル送り装置における減速機構を説明するための図である。
【
図4】第2実施形態に係るケーブル送り装置における減速機構を説明するための図である。
【
図5】第3実施形態に係るケーブル送り装置における減速機構及びハンドルを説明するための図である。
【
図6】第4実施形態に係るケーブル送り装置におけるハンドルを説明するための図である。
【
図7】ケーブル送り装置の変形例を説明するための図である。
【
図8】第5実施形態に係るケーブル送り装置におけるケーシングを説明するための図である。
【
図9】第5実施形態に係るケーブル送り装置におけるケーシングを説明するための図である。
【
図11】浮子がプーリから離れた状態を説明するための図である。
【
図12】減速機構を有しないケーブル送り装置において、ケーシングに窓部が設けられた構成を示す図である。
【
図13】第6実施形態に係るケーブル送り装置を説明するための図である。
【
図14】特許文献1の探傷検査装置を示す概略的な構成図である。
【
図15】特許文献2のケーブル送り装置を示す概略的な構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
(第1実施形態)
以下、本発明の一実施形態について、添付図面を参照しつつ説明する。本実施形態に係る探傷検査装置100は、
図1に示すように、探傷センサー3を有する浮子付きケーブル4(以下、単に「ケーブル4」とも称する)をケーブル送り装置1により被検査管10内に挿入して、被検査管10の管内に生じる減肉や割れ等の材料キズを内部から検査するための検査装置である。被検査管10は、たとえば、ボイラの伝熱管のような、湾曲部10aを有する管である。探傷検査装置100は、被検査管10の入口10bと出口10cとに接続される。
【0029】
探傷検査装置100は、貯水槽8と、貯水槽8から水を取り出すポンプユニット7と、ポンプユニット7から吐出された水の流れる方向を切り替える切替ユニット6と、接続管53を介して切替ユニット6に接続される一方でケーブル4を送り出し可能に構成されたケーブル送り装置1と、ケーブル4を被検査管10の入口10bに案内する導入管51と、被検査管10の出口10cと切替ユニット6とを接続する導出管52と、を備えている。また、探傷検査装置100は、切替ユニット6から貯水槽8に被検査管10から排出された水を戻す水戻し路54と、ケーブル送り装置1から貯水槽8に水を戻す水戻し路60と、を備えており、水戻し路60には貯水部58及びポンプ59が設けられている。
【0030】
切替ユニット6は、ポンプユニット7からの水を接続管53側に流す正転状態と、ポンプユニット7からの水を導出管52側に流す反転状態との間で、水の流入先を切替可能に構成されている。貯水槽8は、ケーブル4を被検査管10内に押し流す水流を形成するための水を貯留する。ポンプユニット7は、貯水槽8から供給された水を、所定の水圧で切替ユニット6に送り出すように構成されている。
【0031】
ケーブル4は、被検査管10よりも長く、複数の浮子5が所定間隔で固定されている。ケーブル4は、ケーブル4の一端側がケーブル送り装置1内に引き込まれ、他端が超音波探傷器2に接続された状態で、大気中に設けられたケーブル収容部9に収容されている。ケーブル4の前記一端には、探傷センサー3(たとえば、超音波センサー)が取り付けられている。ケーブル4の前記他端には、超音波探傷器2が接続されている。超音波探傷器2は、探傷センサー3に発振信号を出力するとともに探傷センサー3から信号を受信して解析・記録するためのものである。探傷センサー3は、超音波探傷器2からの発振信号に基づいて超音波を発振するとともに、返ってきた受信信号を出力するように構成されている。
【0032】
ケーブル送り装置1は、ケーブル収容部9に収められたケーブル4を引き出して、導入管51に送り出して、送り出したケーブル4をポンプユニット7からの送水を用いて被検査管10内に送り込むものである。ケーブル送り装置1は、
図2に示すように、ケーブル4を挿通させる挿通路12が形成されたケーシング11と、挿通路12内のケーブル4を送り出せるように回転可能なプーリ20と、プーリ20を回転駆動するためのハンドル25と、を備えている。
【0033】
ケーシング11は、外部から挿通路12にケーブル4を引き込むための引込口13aが形成された引込管13と、挿通路12から外部にケーブル4を送り出すための送出口14aが形成された送出管14と、引込管13及び送出管14の間に位置する本体部15と、を有する。
【0034】
本体部15は、プーリ20を保持する保持部16を有しており、この保持部16は、円形状の断面を有する中空状に構成されている。保持部16には、挿通路12のうちの中間部18が形成されており、この中間部18は、プーリ20の外周20aのうち約半分に沿うように形成されている。引込管13は、本体部15の円周状の外周部の一部から一方向に延びている。引込管13には、挿通路12のうちの引込部17が形成されており、この引込部17は、挿通路12の中間部18における一端から一方向に延びており、引込口13aとしてケーシング11の外部に向けて開口している。引込管13は、ケーブル4が引込口13aに引き込まれる際に、引込管13内から外部に水が漏れ出し難いようなシール構造を有している。
【0035】
送出管14は、本体部15の円周状の外周部の一部位であって引込管13の接続部とは反対側の部位から引込管13と平行な方向に延びている。送出管14には、挿通路12のうちの送出部19が形成されており、この送出部19は、挿通路12の中間部18における他端から一方向に延びており、送出口14aとしてケーシング11の外部に向けて開口している。すなわち、挿通路12は、引込部17と中間部18と送出部19とを有している。なお、中間部18は、プーリ20の外周20aのうち約半分に設けられる構成に限られず、これよりも短くてもよい。この場合、引込管13と送出管14とは互いに平行ではなくなる。
【0036】
ケーブル送り装置1には、送出部19と接続管53とを連通する水導入路55aが形成された水導入管55と、引込部17と水戻し路60とを連通する排水路56aが形成された排水管56とが設けられている。排水管56は、挿通路12から漏れ出た水を水戻し路60を通じて貯水槽8に戻すためのものである。
【0037】
プーリ20は、保持部16における円形断面と同軸に延設されたプーリ軸22を回転軸として保持部16内に配置されている。すなわち、本体部15の保持部16が円形状の断面を有するため、プーリ20は、この保持部16内において回転可能となっている。プーリ20の外周20aには、後述するケーブル4の浮子5が嵌まり込み可能な凹部20bが、ケーブル4における複数の浮子5の配置間隔と同じ間隔で形成されている。挿通路12の中間部18に挿通されたケーブル4の浮子5が、外周20aの凹部20bに嵌まり込むことにより、ケーブル4がプーリ20の外周20aの約半分に巻き掛けられて係止された状態となる。この状態では、ハンドル25の回転操作によりプーリ20が回転し、それにより、ケーブル4は挿通路12内を移動する。
【0038】
ハンドル25は、ケーブル4を送出口14aから送り出すために手動で回転操作ができるように形成されている。ハンドル25は、
図3に示すように、後述する減速機構24の第1取付軸34及び第2取付軸35に選択的に取付けられるハンドル回転軸25aと、操作者がハンドル25を回転操作するための把持部25cと、ハンドル回転軸25aと把持部25cとの間に延設されたハンドルアーム25bと、を有する。
【0039】
プーリ軸22には、減速機構24が取り付けられる。具体的に、プーリ軸22の一端には、後述する減速機構24の出力軸33を嵌め込み可能な軸穴が設けられている。この軸穴に出力軸33を嵌め込むことにより、プーリ軸22と出力軸33とが同軸に連結される。
【0040】
ケーブル送り装置1には、ハンドル25の回転力を減速してプーリ20に伝える減速機構24が設けられている。減速機構24は、ハンドル25の回転力を減速してプーリ軸22に伝達するものである。減速機構24は、プーリ軸22に取付可能な出力軸33と、ハンドル25により回転駆動させることが可能な第1取付軸34と、第1取付軸34とは別の軸でありハンドル25により回転駆動させることが可能な第2取付軸35と、これら3つの軸33、34、35を互いに連結する減速部36と、3つの軸33、34、35及び減速部36を収容するハウジング37と、を備える。第1取付軸34の端部と、第2取付軸35の端部とには、ハンドル回転軸25aを着脱可能に形成された軸穴が設けられている。減速部36は、第1取付軸34からプーリ軸22への減速比と、第2取付軸35からプーリ軸22への減速比と、が異なる減速比となるように、第1取付軸34、第2取付軸35及びプーリ軸22を連結する。すなわち、減速機構24は、減速比を変更可能に構成されている。このため、ケーブル送り装置1には、ハンドル25を含む変更手段30であって、減速機構24の減速比を変更することにより、プーリ20の回転負荷に対するハンドル25の回転操作負荷の大きさの割合を変更するように構成された変更手段30が設けられていると言える。
【0041】
減速部36は、第1取付軸34から出力軸33に回転を減速して伝える第1歯車ユニット38を有する。第1歯車ユニット38としては、たとえば、遊星歯車による減速機が採用されるが、これ以外の減速機でもよい。第1歯車ユニット38により、第1取付軸34の回転が減速されて出力軸33に伝達されて、出力軸33が回転する。このため、第1取付軸34にハンドル25を取り付けてハンドル25を回すと、出力軸33を回転させることができる。
【0042】
減速部36は、さらに、第2取付軸35から第1取付軸34に回転を減速して伝える第2歯車ユニット39を有する。第2歯車ユニット39としては、たとえば、平歯車による減速機が採用されるが、これ以外の減速機でもよい。第2歯車ユニット39により、第2取付軸35の回転が減速されて第1取付軸34に伝達され、この減速された回転は、さらに、第1歯車ユニット38により減速されて出力軸33に伝達されて、出力軸33が回転する。したがって、ハンドル25を第1取付軸34に取り付けた場合と、第2取付軸35に取り付けた場合とでは、ハンドル25から出力軸33(プーリ軸22)へ伝達される回転力の減速比が変わる。
【0043】
ケーブル送り装置1は、第1取付軸34と第2取付軸35との間でハンドル25を選択的に取付けることによって、減速機構24の減速比を変更可能である。これにより、変更手段30は、プーリ20の回転負荷に対するハンドル25の回転操作負荷の大きさの割合を変更する。なお、
図3には、第2取付軸35にハンドル25が取り付けられた状態を実線で示している。
【0044】
(運転動作の説明)
ここで、本実施形態の探傷検査装置100の運転動作について説明する。まず、
図3に示すように、減速機構24の出力軸33をプーリ軸22に連結し、ハンドル回転軸25aを減速機構24の第1取付軸34に連結する。そして、切替ユニット6を正転状態に切り替えた上で、ポンプユニット7の送水圧力を比較的小さい圧力に設定して送水を開始する。これにより、貯水槽8からの水が挿通路12の送出部19に流入し、挿通路12は水で満たされて、挿通路12内には比較的小さい水圧が作用する。
【0045】
次に、操作者がハンドル25を手動で回転操作してプーリ20を回転させるとともに、ポンプユニット7からの送水を用いてケーブル4を被検査管10に向けて送り出す(第1導出ステップ)。このとき、導入管51において、送出部19から流れ込んだ水がケーブル4の浮子5を被検査管10側に押し流すように作用して、ケーブル4が被検査管10側に移動する。このような操作者によるハンドル25の手動の回転操作により、ケーブル4が徐々に被検査管10内に挿入されるとともに、ケーブル4先端の探傷センサー3が被検査管10の奥(出口10c側)へと移動して、探傷検査が行われる。
【0046】
挿通路12に流入した水の大部分は、送出部19を通して導入管51に流れ出る。その一方で、挿通路12に流入した水の一部は、中間部18及び引込部17を通して排水管56の排水路56aに漏れ出る。この漏れ出た水は、水戻し路60を通じて貯水槽8に戻される。このとき、シール構造を有する引込管13により、引込口13aから外部への水漏れが抑制される。
【0047】
探傷検査の開始当初は、被検査管10内におけるケーブル4の送り込み距離が短いため、ポンプユニット7の送水圧力が比較的小さい圧力であっても、ケーブル4を被検査管10内に送り込むことができる。このとき、ハンドル25には、ケーブル4を送り出すための比較的小さい負荷(ハンドル25の回転操作負荷)が作用する。このため、減速機構24の減速比が比較的小さくても、操作者がハンドル25を手動で回転操作して、ケーブル4を被検査管10内に送り込むことができる。
【0048】
その後、被検査管10内におけるケーブル4の送り込み距離が長くなると、ケーブル4を被検査管10内に送り込み難くなるため、操作者はポンプユニット7の送水圧力を比較的大きい圧力に変更する。これにより、挿通路12内には比較的大きい水圧が作用するため、ハンドル25には、ケーブル4を送り出すための比較的大きい負荷が作用する。この比較的大きな回転負荷により、操作者がハンドル25を手動で回転操作できなくなると、操作者は、減速機構24の減速比が大きくなるように、第1取付軸34に取り付けられていたハンドル25を、第2取付軸35に付け替える。これにより、ハンドル25により回転駆動する回転軸が、第1取付軸34から第2取付軸35に変更される。すなわち、操作者はハンドル25にかかる負荷の大きさに応じて、減速機構24の減速比を変更する(負荷割合変更ステップ)。これにより、プーリ20の回転負荷に対するハンドル25の回転操作負荷の大きさの割合が変更されるため、操作者がハンドル25を回す負荷が増えることなく、ハンドル25を回すことができる。
【0049】
ハンドル25の取付先が第1取付軸34から第2取付軸35に変更された後、操作者は、減速比が変更された減速機構24によりハンドル25からプーリ20に回転力が伝達される状態で、ハンドル25の手動回転によりプーリ20を回転させつつ、ポンプユニット7からの送水を用いてケーブル4を被検査管10に向けて送り出す(第2導出ステップ)。これにより、ポンプユニット7の送水圧力が比較的大きい圧力に設定されたとしても、操作者は、ハンドル25を手動で回転操作しながら探傷検査を継続できる。
【0050】
その後、ケーブル4が被検査管10内の所定の距離まで送り込まれて、探傷検査が完了すると、操作者は切替ユニット6を反転状態に切り替えて、ケーブル4が被検査管10内から押し出されるように水を流す。そして、操作者がハンドル25を
図2の矢印Aと逆方向に回転させることにより、ケーブル4が被検査管10内から引き抜かれる。
【0051】
このように構成されたケーブル送り装置1では、ハンドル25の回転操作によりプーリ20が回転し、プーリ20の外周20aに巻き掛けられたケーブル4がケーシング11外に送り出されて、ポンプユニット7からの送水により押し流されるようにして被検査管10内に挿入される。このとき、減速比を変更可能に構成された減速機構24により、ハンドル25からプーリ20に回転力が減速されて伝達される。
【0052】
ケーブル4の送り出し開始当初は、被検査管10内におけるケーブル4の送り込み距離が短いため、ポンプユニット7からの比較的小さい圧力の送水により、ケーブル4を被検査管10内に送り込むことができる。このとき、挿通路12内には比較的低い水圧が作用し、ケーブル4を送り出すための負荷(ハンドル25の回転負荷)が比較的小さくなる。このため、操作者がハンドル25を手動操作により回転させてケーブル4を送り出すことができる。この場合において探傷センサー3が被検査管10内等で詰まったとしても、ハンドル25を回すときの微妙な負荷変動を手の感覚で察知できるため、いち早く、ケーブル4の詰まりを察知することができる。
【0053】
その後、被検査管10内におけるケーブル4の送り込み距離が長くなると、ケーブル4を被検査管10内に送り込むためには、ポンプユニット7の圧力をより大きくして送水する必要がある。この場合、ポンプユニット7からの送水圧力により、挿通路12内には比較的高い水圧が作用し、ハンドル25を回転させるための負荷が比較的大きくなり、操作者が手動操作でハンドル25を回転できなくなる。このとき、変更手段30により、ハンドル25によってプーリ20を回転駆動するときのプーリ20の回転負荷に対するハンドル25の回転操作負荷の大きさの割合を変更することにより、ケーブル4を送り出すためのハンドル25の回転操作負荷を小さくすることができる。このため、操作者がハンドル25を手動操作により回転させてケーブル4を送り出すことができるようになる。したがって、被検査管10内におけるケーブル4の送り込み距離が長くなりケーブル4を送り出すための負荷が大きくなったとしても、操作者によるハンドル25の手動操作によりケーブル4を送り出すことができる。しかも、ハンドル25を回すときの操作負荷が低減されるため、探傷センサー3の詰まりが生じたときの微妙な負荷変動を、ハンドル25を回すときの手の感覚で察知できる。これにより、探傷センサー3やケーブル4の損傷を防止することができる。
【0054】
また、変更手段30が減速機構24の減速比を変更することにより、プーリ20の回転負荷に対するハンドル25の回転操作負荷の大きさの割合が変更される。このため、被検査管10内におけるケーブル4の送り込み距離が比較的長くなって挿通路12内の水圧が比較的高くなった場合には、減速比を変更することにより、ハンドル25の回転操作負荷を低減することができる。したがって、プーリ20の回転負荷が大きな状態であっても、ハンドル25の手動操作によってケーブル4を送り出すことができる。
【0055】
また、第1取付軸34と第2取付軸35と減速部36とにより、第1取付軸34とプーリ20間の減速比と、第2取付軸35とプーリ20間の減速比とが、異なる減速比になるように構成されている。第2取付軸35とプーリ20間の減速比の方が第1取付軸34とプーリ20間の減速比よりも大きいため、被検査管10内におけるケーブル4の送り込み距離が比較的長くなり挿通路12内の水圧が比較的高くなった場合には、ハンドル25の取付先を第1取付軸34から第2取付軸35に変更することにより減速機構24の減速比を大きくできるため、ハンドル25を手動操作により回転させてケーブル4を送り出すことができる。
【0056】
なお、本発明のケーブル送り装置1は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更が加えられてもよい。たとえば、減速機構24は、第1取付軸34から出力軸33に回転を減速して伝える第1歯車ユニット38が省略されてもよい。この場合、第1取付軸34が出力軸33に直接連結されて、ハンドル25の回転は第1取付軸34及び出力軸33を通じてプーリ軸22に伝達される。
【0057】
また、第1実施形態の減速機構24は2つの取付軸34、35を有しているが、これに限らず、減速機構24は3つ以上の取付軸を有していてもよい。たとえば、減速機構24は、第1取付軸34と第2取付軸35の他に、第1取付軸34と第2取付軸35を介してプーリ軸22を回転させる第3取付軸と、この第3取付軸から第2取付軸35に回転を減速して伝達する減速部と、を有していてもよい。この場合でも、ハンドル25が取り付けられる取付軸を選択することによって、減速機構24の減速比が変更されることになる。
【0058】
また、減速機構24は、第1歯車ユニット38として遊星歯車減速機を例示しているが、これに限らない。第1歯車ユニット38は、遊星歯車減速機以外の減速機であってもよい。同様に、第2歯車ユニット39として平歯車減速機を例示しているが、これに限らない。第2歯車ユニット39は、平歯車減速機以外の減速機であってもよい。
【0059】
(第2実施形態)
第2実施形態のケーブル送り装置1は、
図4に示すように、減速機構24が互いに直列に接続可能な複数の減速ユニット40を含み、減速ユニット40の数を変更して配置することにより減速機構24の減速比が変更可能である点において実施形態1とは異なっている。この場合でも、減速機構24の減速比の変更によって、変更手段30が、プーリ20の回転負荷に対するハンドル25の回転操作負荷の大きさの割合を変更することができる。この場合、第2取付軸35と第2歯車ユニット39は省略されてもよい。
図4は、複数の減速ユニット40のうち3つの減速ユニット40が選択的に配置された場合の減速機構24を示す。
【0060】
各減速ユニット40は同じ構成である。複数の減速ユニット40はそれぞれ、ハンドル25側から回転を受け付けるハンドル側軸(入力側軸)43と、ハンドル側軸43からの回転をプーリ20側に伝えるプーリ側軸(出力側軸)42と、ハンドル側軸43の回転を減速してプーリ側軸42に伝える減速部44と、を有する。減速ユニット40のプーリ側軸42は、他の減速ユニット40のハンドル側軸43に連結できるように構成されている。これにより複数の減速ユニット40を直列に接続できる。
【0061】
隣接する2つの減速ユニット40において、一方の減速ユニット40のプーリ側軸42を他方の減速ユニット40のハンドル側軸43の端部に設けられた軸穴に嵌め込むことにより、複数の減速ユニット40が直列に連結される。ハンドル側軸43の回転は、減速部44により減速されてプーリ側軸42に伝達され、この減速された回転によりプーリ側軸42が回転する。減速部44は、たとえば、遊星歯車を用いた減速機が採用されるが、これ以外の減速機でもよい。
【0062】
複数の減速ユニット40のうちハンドル25に最も近い位置に配置された減速ユニット40のハンドル側軸43には、ハンドル25が着脱可能に取り付けられる。また、複数の減速ユニット40のうちプーリ20に最も近い位置に配置された減速ユニット40のプーリ側軸42は、プーリ軸22に取り付けられる。このようにして、減速機構24では、ハンドル25が取り付けられたハンドル側軸43の回転が、プーリ軸22及びハンドル25間に選択的に配置された減速ユニット40の数に応じて減速されて、プーリ軸22に伝達される。
【0063】
探傷検査装置100により探傷検査を行う際に、被検査管10内におけるケーブル4の送り込み距離が長くなりハンドル25の回転負荷が大きくなった場合には、減速ユニット40の数を増やして減速機構24の減速比を大きくすることにより、操作者がハンドル25を手動で回転操作できる状態を維持することができる。
【0064】
すなわち、減速機構24は、互いに直列に接続可能な複数の減速ユニット40を含んでいてもよく、この場合、第1取付軸34及び第2取付軸35のうちのハンドル25により回転駆動する取付軸とハンドル25との間に複数の減速ユニット40を選択的に配置することにより、減速機構24の減速比を変更可能である。
【0065】
この態様では、第1取付軸34及び第2取付軸35を、ハンドル25によって選択的に回転駆動させるだけでなく、ハンドル25とプーリ20の間に配置する減速ユニット40の数を選択的に変更することができ、これにより、減速機構24の減速比を変更することができる。このため、被検査管10内におけるケーブル4の送り込み距離が比較的長くなり挿通路12内の水圧が比較的高くなったとしても、減速ユニット40の数を増やすことにより減速機構24の減速比を大きくできるため、ハンドル25を手動操作により回転させてケーブル4を送り出すことができる。なお、配置する減速ユニット40の数が増えるにつれて、浮子付きケーブル4の微妙な負荷変動をハンドル25を通して察知することが難しくなることが想定される。したがって、ハンドル25にかかる負荷と負荷変動の察知し易さを比較考量して、用いる減速ユニット40の数を調整してもよい。
【0066】
(第3実施形態)
第3実施形態のケーブル送り装置1は、減速機構24が、
図5に示すように、第1実施形態の減速機構24のように構成された第1減速機構31と、第2実施形態の減速機構24のように構成された第2減速機構32と、を備える点において、第1実施形態とは異なっている。減速機構24は、第1取付軸34及び第2取付軸35のうちのハンドル25により回転駆動する取付軸とハンドル25との間に、複数の減速ユニット40を選択的に配置することにより、減速機構24の減速比を変更可能に構成されている。これにより、変更手段30が、プーリ20の回転負荷に対するハンドル25の回転操作負荷の大きさの割合を変更することができる。
【0067】
具体的に、第1減速機構31は、プーリ軸22に接続された出力軸33と、第1取付軸34と、第1取付軸34の回転を減速して出力軸33に伝える第1歯車ユニット38と、第2取付軸35と、第2取付軸35の回転を減速して第1取付軸34に伝える第2歯車ユニット39と、これらを収容するハウジング37と、を備える。
【0068】
第2減速機構32は、ハンドル25と第1取付軸34又は第2取付軸35との間に選択的に配置され、互いに直列に接続可能な複数の減速ユニット40を備える。複数の減速ユニット40のうちの第1減速機構31に最も近い位置に配置された減速ユニット40のプーリ側軸42は、第1取付軸34及び第2取付軸35のうちのハンドル25により回転駆動する回転軸に取付けられる。複数の減速ユニット40のうちの第1減速機構31から最も遠い位置に配置された減速ユニット40のハンドル側軸43には、ハンドル25が取付けられる。
【0069】
この態様では、ハンドル25と第1取付軸34又は第2取付軸35との間に配置される減速ユニット40の数を変更することにより減速機構24の減速比を変更するだけでなく、第1取付軸34と第2取付軸35との間でハンドル25の取り付け先を変更することにより、減速機構24の減速比を変更することができる。これにより、変更手段30が、プーリ20の回転負荷に対するハンドル25の回転操作負荷の大きさの割合を変更することができる。
【0070】
図5に示すケーブル送り装置1では、第2減速機構32の取付先を、第1減速機構31の第1取付軸34と第2取付軸35との間で切り替えることによって、減速比を変えることができ、しかも、第2減速機構32における減速ユニット40の数を変えることによっても、減速比を変更することができる。したがって、減速比を変更可能な段数を増やすことができるため、ハンドル25に適度な回転負荷を作用させることが可能となる。このとき、段数が多くなるにつれて、ケーブル4の微妙な負荷変動をハンドル25を通して察知することが難しくなるため、ハンドル25にかかる負荷と負荷変動の察知し易さを比較考量して段数を調整するのが好ましい。
【0071】
(第4実施形態)
第1実施形態では、変更手段30が、減速機構24の減速比を変更することより、ハンドル25によってプーリ20を回転駆動するときのプーリ20の回転負荷に対するハンドル25の回転操作負荷の大きさの割合を変更するように構成されている。これに対し、第4実施形態のケーブル送り装置1では、
図6に示すように、減速機構24が省略されており、ハンドル25は、第1実施形態と異なり、ハンドル回転軸25aと把持部25cとを連結するハンドルアーム25bの長さが変更可能に構成されている。すなわち、変更手段30は、ハンドル25のアーム長さを変更することにより、プーリ20の回転負荷に対するハンドル25の回転操作負荷の大きさの割合を変更するように構成されている。
【0072】
第4実施形態のケーブル送り装置1では、ハンドル25として、ハンドルアーム25bの長さが異なる複数のハンドルを選択的にプーリ軸22に取り付けることによりハンドル25のアーム長さが変更されるように構成されている。プーリ軸22の一端には、ハンドル回転軸25aを嵌め込み可能な軸穴が設けられている。
図6は、ハンドルアーム25bの長さの異なる3つのハンドル26、27、28から選択されたハンドルアーム25bの長さが最も短いハンドル26が、プーリ軸22に取り付けられた状態を示す。
【0073】
ケーブル送り装置1の運転動作では、操作者がハンドル25を手動で回転操作して、ポンプユニット7からの送水を用いてケーブル4を被検査管10に送り出すような第1導出ステップの後、ハンドル25にかかる負荷に応じてハンドルアーム25bの長さが異なるハンドル25が選択される(ハンドルアーム長さ変更ステップ)。ハンドルアーム25bの長さが変更された後、操作者がハンドル25を手動で回転操作して、ポンプユニット7からの送水を用いてケーブル4を被検査管10に送り出すような第2導出ステップが行われる。
【0074】
この態様では、ハンドルアーム25bの長さの異なる複数のハンドル26,27、28から1つのハンドル25を選択して減速機構24に取り付けることによりハンドルアーム25bの長さを変更することができる。
【0075】
また、ハンドルアーム25bの長さを変更することにより、たとえば、ハンドル25を回転させるときに把持部25cに作用する負荷を低減させることができる。ハンドル25に大きな回転負荷が作用するときには、ハンドル26をハンドル27に取り換えることによりハンドルアーム25bを長くして、把持部25cに生じる負荷を低減させられる。これにより、ハンドル25に大きな回転負荷が作用した場合でも、操作者が把持部25cを手動操作することにより、ハンドル25を回転させてケーブル4を送り出すことができる。
【0076】
なお、ケーブル送り装置1は、ハンドルアーム25bの長さが異なる複数のハンドルを選択的にプーリ軸22に取り付けることにより、ハンドルアーム25bの長さが変更可能であるが、これに限らない。たとえば、ハンドル25は、ハンドルアーム25bがテレスコピック構造を有することによりハンドルアーム25bの長さが変化する構成であってもよい。この場合、ハンドル25は、把持部25cに作用する負荷の増加に応じてハンドルアーム25bを長く伸ばすことができる。
【0077】
また、第4実施形態に係るケーブル送り装置1においても、
図7に示すように、第1実施形態に示すような、出力軸33と、第1取付軸34と、第2取付軸35と、第1歯車ユニット38と、第2歯車ユニット39と、を有する減速機構24が設けられていてもよい。すなわち、変更手段30が、ハンドル25のアーム長さを変更可能に構成されるだけでなく、減速機構24の減速比を変更するように構成されることにより、プーリ20の回転負荷に対するハンドル25の回転操作負荷の大きさの割合を変更するように構成されていてもよい。
【0078】
この場合、ハンドルアーム25bの長さが変更可能なハンドル25が、第1取付軸34及び第2取付軸35に選択的に取付けられることによって、減速機構24の減速比が変更されるように構成されてもよい。あるいは、ハンドルアーム25bの長さが変更可能なハンドル25が取り付けられる取付軸が1つのみであってもよく、その場合には、使用する減速ユニット40の数を変更することによって、減速機構24の減速比が変更されるよう構成されていてもよい。なお、ハンドル25のアーム長さを変更可能に構成される場合には、減速比が一定である減速機構を用いることも可能である。
【0079】
(第5実施形態)
第5実施形態のケーブル送り装置1では、
図8及び
図9に示すように、ケーシング11に、浮子付きケーブル4がプーリ20に掛かっているかどうかを視認可能にするための窓部65が設けられている。
【0080】
プーリ20の外周20aには、浮子5が入り込むように凹部20bが形成されており、この凹部20bは、
図10に示すように、周方向に間隔をおいて並んだ歯20cによって形成される。プーリ20を回転させて浮子付きケーブル4を押し出すときには、浮子5が歯20cの前面に引っ掛かった状態にあり、浮子5が歯20cの前面によって押し出される。このため、ハンドル25の回転を始める時やハンドル25の回転を急に速くする時には、浮子5が径方向の外側に変位するため、浮子5がケーシング11の内周壁11aと歯20cの外端との間に挟まってしまい、破損してしまうことがある。一方で、水流によって浮子付きケーブル4が押し出されている場合においてハンドル25の回転を急に遅くした時には、
図11に示すように、浮子5が歯20cの前面から離れることがある。この場合において、被検査管10内での浮子付きケーブル4の詰まりが発生したときには、ケーブル4の詰まりによる負荷変動がハンドル25に伝わらないため、詰まりの察知が遅れてしまう。この状態でハンドル25の操作を続けてしまうと、浮子5がケーシング11の内周壁11aと歯20cの外端との間に挟まってしまい、浮子付きケーブル4を破損してしまうことがある。したがって、ケーシング11に窓部65が設けられて、浮子付きケーブル4がプーリ20に掛かっているかどうかを視認することを可能とすることにより、浮子付きケーブル4の破損に至るような事態が生ずることを防止することができる。
【0081】
図8及び
図9に示すように、ケーシング11において、プーリ20を挟む両側壁に開口が形成されるとともに、この開口を透明板で塞ぐことより、ケーシング11の外側からプーリ20の外周20aを視認できる窓部65が形成される。窓部65は、プーリ20の外周20aに沿うように互いに間隔をおいて並ぶ複数の窓65aを有する。窓部65(複数の窓65a)は、プーリ20の外周20aの全体に亘って設けられてもよいが、
図8に示すように、ケーシング11において少なくとも、浮子付きケーブル4がプーリ20の外周20aに掛かる部分に設けられていればよい。また、窓部65は、複数の窓65aを有する構成に限られるものではなく、1つの窓65aを有する構成でもよい。この場合の窓65aは、プーリ20の外周20aに沿って延びるように周方向に長い形状であってもよい。
【0082】
ケーシング11が窓部65を有する構成は、ケーブル送り装置1が減速機構24を備えた構成に限られるものではない。すなわち、
図12に示すように、減速機構24が設けられる代わりに、アーム長さを変更可能なハンドル25がプーリ軸22に直接接続されているケーブル送り装置において、ケーシング11に窓部65が設けられていてもよい。
【0083】
(第6実施形態)
第6実施形態のケーブル送り装置1では、
図13に示すように、プーリ20の回転数を表示する表示器68が設けられている。表示器68は、プーリ軸22に設けられた図略のエンコーダに電気的に接続されていて、エンコーダから出力される信号に基づいて、プーリ20の回転数を表示する。なお、表示器68に表示される回転数は、リアルタイムに更新される。
【0084】
表示器68は、ケーブル送り装置1のすぐ横に配置されてもよく、あるいはケーシング11に取り付けられていてもよい。プーリ20の回転数が表示されることにより、作業者は、表示器68に表示された回転数が一定になるように、ハンドル25の回転数を調整することができる。例えば、減速機構24による減速比が変更されたり、ハンドル25のアーム長さが変更された場合等には、ハンドル25の回転速度を調整することが難しい場合があるが、表示器68にプーリ20の回転数が表示されることにより、作業者はハンドル25の回転速度を調整しやすくできる。これにより、プーリ20の回転速度が、浮子5が径方向の外側に変位するような速度になることや、浮子5が歯20cから離れるような速度になることを抑制できるため、浮子付きケーブル4の破損に至るような事態が生ずることを防止することができる。
【0085】
なお、ケーブル送り装置1が、プーリ20の回転数を表示する表示器68を備える構成は、減速機構24が設けられるものに限られるものではなく、ハンドル25のアーム長さを変更することによって、変更手段30が、プーリ20の回転負荷に対するハンドル25の回転操作負荷の大きさの割合を変更する構成が採用されている場合に設けられてもよい。
【0086】
今回開示された実施形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと解されるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなくて特許請求の範囲により示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0087】
1 ケーブル送り装置
3 探傷センサー
4 浮子付きケーブル
7 ポンプユニット
10 被検査管
12 挿通路
13a 引込口
14a 送出口
20 プーリ
24 減速機構
25 ハンドル
25a ハンドル回転軸
25b ハンドルアーム
25c 把持部
30 変更手段
33 出力軸
34 第1取付軸
35 第2取付軸
36 減速部
38 第1歯車ユニット
39 第2歯車ユニット
40 減速ユニット
68 表示器
100 探傷検査装置