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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024077238
(43)【公開日】2024-06-07
(54)【発明の名称】積層型コイル部品
(51)【国際特許分類】
   H01F 27/29 20060101AFI20240531BHJP
   H01F 17/00 20060101ALI20240531BHJP
   H01F 17/04 20060101ALI20240531BHJP
【FI】
H01F27/29 123
H01F17/00 D
H01F17/04 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022189200
(22)【出願日】2022-11-28
(71)【出願人】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】越路 健二郎
(72)【発明者】
【氏名】高井 駿
(72)【発明者】
【氏名】山田 梨加
【テーマコード(参考)】
5E070
【Fターム(参考)】
5E070AA01
5E070AB01
5E070BA12
5E070EA01
(57)【要約】      (修正有)
【課題】外部電極の接合強度を高めることが可能な積層型コイル部品を提供する。
【解決手段】積層型コイル部品1は、複数の絶縁層31が積層され内部にコイル30が設けられた積層体10と、積層体の表面に設けられてコイルに接続された外部電極とを有し、積層体は長さ方向に相対する第1端面11及び第2端面12と、長さ方向に直交する高さ方向に相対する第1主面13及び第2主面14と、長さ、高さ方向に直交する幅方向に相対する第1側面及び第2側面と、を有し、外部電極は第1端面の少なくとも一部から第1主面の一部に延在する第1外部電極21と、第2端面の少なくとも一部から第1主面の一部に延在する第2外部電極22と、を有する。各外部電極は、少なくともAg及びガラスを含む下地電極を有し、外部電極及び積層体の間の界面から積層体へガラスが拡散した距離は、2.44μm以上、6.90μm以下である。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の絶縁層が積層方向に積層されてなり内部にコイルが設けられた積層体と、前記積層体の表面に設けられて前記コイルに電気的に接続された外部電極とを有し、
前記積層体は、長さ方向に相対する第1端面及び第2端面と、前記長さ方向に直交する高さ方向に相対する第1主面及び第2主面と、前記長さ方向及び前記高さ方向に直交する幅方向に相対する第1側面及び第2側面と、を有し、
前記外部電極は、前記積層体の前記第1端面の少なくとも一部から前記第1主面の一部にわたって延在する第1外部電極と、前記積層体の前記第2端面の少なくとも一部から前記第1主面の一部にわたって延在する第2外部電極とを有し、
前記外部電極は、少なくともAg及びガラスを含む下地電極を有し、
前記外部電極及び前記積層体の間の界面から前記積層体へ前記ガラスが拡散した距離は、2.44μm以上、6.90μm以下である、積層型コイル部品。
【請求項2】
前記積層体の積層方向及び前記コイルのコイル軸が前記第1主面に平行である、請求項1に記載の積層型コイル部品。
【請求項3】
前記ガラスは、少なくともBiを含み、
前記ガラスが拡散した距離は、Biが拡散した距離である、請求項1又は2に記載の積層型コイル部品。
【請求項4】
前記積層型コイル部品のサイズは、0603サイズ、0402サイズ又は1005サイズである請求項1又は2に記載の積層型コイル部品。
【請求項5】
前記絶縁層は、少なくともFe、Ni、Zn及びCuを含む磁性相と、少なくともSiを含む非磁性相とを有する、請求項1又は2に記載の積層型コイル部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層型コイル部品に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、グリーンシートに凹溝を加工して該凹溝に複数個分の導電性ペーストを縦横に印刷し、複数枚のグリーンシートを積層して内部に複数のコイルを形成し、切断、焼成し、両端部に端子電極を設けることにより製造される積層型電子部品であって、前記導電性ペーストにより構成されるコイル導体は、焼成後の断面形状において、前記凹溝の両側にコイル導体の一部が重なり、かつ、前記コイル導体の断面の厚みtと幅wとのアスペクト比t/wが0.7以上であることを特徴とする積層型電子部品が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004-207608号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載された積層型コイル部品では、外部電極に相当する端子電極の接合強度が不充分となるおそれがある。
【0005】
本発明は上記の課題を解決するためになされたものであり、外部電極の接合強度を高めることが可能な積層型コイル部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の積層型コイル部品は、複数の絶縁層が積層方向に積層されてなり内部にコイルが設けられた積層体と、上記積層体の表面に設けられて上記コイルに電気的に接続された外部電極とを有し、上記積層体は、長さ方向に相対する第1端面及び第2端面と、上記長さ方向に直交する高さ方向に相対する第1主面及び第2主面と、上記長さ方向及び上記高さ方向に直交する幅方向に相対する第1側面及び第2側面と、を有し、上記外部電極は、上記積層体の上記第1端面の少なくとも一部から上記第1主面の一部にわたって延在する第1外部電極と、上記積層体の上記第2端面の少なくとも一部から上記第1主面の一部にわたって延在する第2外部電極とを有し、上記外部電極は、少なくともAg及びガラスを含む下地電極を有し、上記外部電極及び上記積層体の間の界面から上記積層体へ上記ガラスが拡散した距離は、2.44μm以上、6.90μm以下である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、外部電極の接合強度を高めることが可能な積層型コイル部品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本発明の積層型コイル部品の一例を模式的に示す斜視図である。
図2図2は、本発明の積層型コイル部品の一例を模式的に示す断面図である。
図3図3は、図2に示す積層型コイル部品を構成する絶縁層の様子を模式的に示す分解斜視模式図である。
図4図4は、図2に示す積層型コイル部品を構成する絶縁層の様子を模式的に示す分解平面模式図である。
図5図5は、ガラス(Bi)の拡散距離の測定方法を説明するための模式図である。
図6図6は、実施例1~6、及び、比較例1~3の積層型コイル部品のガラス(Bi)の拡散距離と破壊確率が1%となる固着力をプロットした散布図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の積層型コイル部品について説明する。
しかしながら、本発明は、以下の構成及び態様に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において適宜変更して適用することができる。なお、以下において記載する本発明の個々の好ましい構成及び態様を2つ以上組み合わせたものもまた本発明である。
【0010】
図1は、本発明の積層型コイル部品の一例を模式的に示す斜視図である。
図1に示す積層型コイル部品1は、積層体(素体)10と第1外部電極21と第2外部電極22とを備えている。積層体10は、6面を有する略直方体形状である。積層体10の構成については後述するが、複数の絶縁層が積層方向に積層されてなり、内部にコイルが設けられている。第1外部電極21及び第2外部電極22は、それぞれ、コイルに電気的に接続されている。
【0011】
本明細書における積層型コイル部品及び積層体では、長さ方向、高さ方向、幅方向を、図1におけるx方向、y方向、z方向とする。ここで、長さ方向(x方向)と高さ方向(y方向)と幅方向(z方向)は互いに直交する。
長さ方向(x方向)は積層方向と平行な方向である。
【0012】
図1に示すように、積層体10は、長さ方向(x方向)に相対する第1端面11及び第2端面12と、長さ方向に直交する高さ方向(y方向)に相対する第1主面13及び第2主面14と、長さ方向及び高さ方向に直交する幅方向(z方向)に相対する第1側面15及び第2側面16とを有する。
【0013】
図1には示されていないが、積層体10は、角部及び稜線部に丸みが付けられていることが好ましい。角部は、積層体の3面が交わる部分であり、稜線部は、積層体の2面が交わる部分である。
【0014】
第1外部電極及び第2外部電極は、積層体の端面の少なくとも一部から積層体の主面にわたって延在する外部電極である。
図1に示す積層型コイル部品1では、第1外部電極21は、積層体10の第1端面11の一部を覆い、かつ、第1端面11から延伸して第1主面13の一部を覆って配置されている。
第1外部電極21は、第1端面11のうち、第1主面13と交わる稜線部を含む領域を覆っている。
【0015】
なお、図1では、積層体10の第1端面11を覆う部分の第1外部電極21の高さは一定であるが、積層体10の第1端面11の一部を覆う限り、第1外部電極21の形状は特に限定されない。例えば、積層体10の第1端面11において、第1外部電極21は、端部から中央部に向かって高くなる山なり形状であってもよい。また、積層体10の第1主面13を覆う部分の第1外部電極21の長さは一定であるが、積層体10の第1主面13の一部を覆う限り、第1外部電極21の形状は特に限定されない。例えば、積層体10の第1主面13において、第1外部電極21は、端部から中央部に向かって長くなる山なり形状であってもよい。
【0016】
図1に示すように、第1外部電極21は、さらに、第1端面11及び第1主面13から延伸して、第1側面15の一部及び第2側面16の一部を覆って配置されていてもよい。この場合、第1側面15及び第2側面16を覆う部分の第1外部電極21は、いずれも、第1端面11と交わる稜線部及び第1主面13と交わる稜線部に対して斜めに形成されていることが好ましい。なお、第1外部電極21は、第1側面15の一部及び第2側面16の一部を覆って配置されていなくてもよい。
【0017】
図1に示す積層型コイル部品1では、第2外部電極22は、積層体10の第2端面12の一部を覆い、かつ、第2端面12から延伸して第1主面13の一部を覆って配置されている。
第1外部電極21と同様、第2外部電極22は、第2端面12のうち、第1主面13と交わる稜線部を含む領域を覆っている。
【0018】
第1外部電極21と同様、積層体10の第2端面12の一部を覆う限り、第2外部電極22の形状は特に限定されない。例えば、積層体10の第2端面12において、第2外部電極22は、端部から中央部に向かって高くなる山なり形状であってもよい。また、積層体10の第1主面13の一部を覆う限り、第2外部電極22の形状は特に限定されない。例えば、積層体10の第1主面13において、第2外部電極22は、端部から中央部に向かって長くなる山なり形状であってもよい。
【0019】
第1外部電極21と同様、第2外部電極22は、さらに、第2端面12及び第1主面13から延伸して、第1側面15の一部及び第2側面16の一部を覆って配置されていてもよい。この場合、第1側面15及び第2側面16を覆う部分の第2外部電極22は、いずれも、第2端面12と交わる稜線部及び第1主面13と交わる稜線部に対して斜めに形成されていることが好ましい。なお、第2外部電極22は、第1側面15の一部及び第2側面16の一部を覆って配置されていなくてもよい。
【0020】
以上のように第1外部電極21及び第2外部電極22が配置されているため、積層型コイル部品1を基板上に実装する場合には、積層体10の第1主面13が実装面となる。
【0021】
また、図1に示す形態とは異なり、第1外部電極が、積層体の第1端面の全部を覆い、かつ、第1端面から延伸して第1主面の一部、第2主面の一部、第1側面の一部、及び、第2側面の一部を覆っていてもよい。
また、第2外部電極が、積層体の第2端面の全部を覆い、かつ、第2端面から延伸して第1主面の一部、第2主面の一部、第1側面の一部、及び、第2側面の一部を覆っていてもよい。
この場合、積層体の第1主面、第2主面、第1側面及び第2側面のいずれかが実装面となる。
【0022】
本発明の積層型コイル部品のサイズは特に限定されないが、0603サイズ、0402サイズ又は1005サイズであることが好ましい。
【0023】
第1外部電極及び第2外部電極は、各々、少なくともAg(銀)及びガラスを含む下地電極を有している。
【0024】
Agとガラスの合計体積に対するAg粉末の体積割合は、2体積%以上、90体積%以下であることが好ましい。
【0025】
第1外部電極及び第2外部電極は、各々、複層構造であってもよく、積層体の表面側から順に、例えば、上記下地電極(下地電極層)と、ニッケル被膜と、スズ被膜と、を有していてもよい。
【0026】
第1外部電極及び積層体の間の界面から積層体へ、第1外部電極の下地電極に含まれるガラスが拡散した距離は、2.44μm以上、6.90μm以下である。
これにより、第1外部電極と積層体間の接合強度を高めることができる。例えば、固着力の測定試験において、破壊確率が1%となる固着力を3N以上得ることができる。
同様に、第2外部電極及び積層体の間の界面から積層体へ、第2外部電極の下地電極に含まれるガラスが拡散した距離は、2.44μm以上、6.90μm以下である。
これにより、第2外部電極と積層体間の接合強度を高めることができる。例えば、固着力の測定試験において、破壊確率が1%となる固着力を3N以上得ることができる。
これは、ガラスが積層体へ拡散すると、第1及び第2外部電極と積層体間の界面が強くなる(界面がぼやける)ためであると考えられる。すなわち、積層体へ拡散したガラスがある種の接着剤の役割を発揮するためであると考えられる。
他方、ガラスが積層体に拡散していないと、第1及び第2外部電極が下地電極から剥れやすくなると考えられる。
【0027】
また、第1及び第2外部電極を小型にしても、第1及び第2外部電極と積層体との間で必要とされる接合強度を確保することができる。そのため、第1及び第2外部電極を小さくして浮遊容量を低減し、高周波領域での透過係数S21を良好なものとすることができる。
【0028】
上記ガラスが拡散した距離が2.44μm未満であると、積層体-下地電極間での破壊が発生し、第1及又は第2外部電極の接合強度を向上できないことがある。
上記ガラスが拡散した距離が6.90μmを超えると、第1又は第2外部電極周辺の積層体での破壊が発生し、第1又は第2外部電極の接合強度を向上できないことがある。
【0029】
上記ガラスが拡散した距離は、2.44μm以上、6.90μm以下であることが好ましく、2.52μm以上、6.72μ以下であることがより好ましく、2.6μm以上、5.2μm以下であることがさらに好ましい。
上記ガラスが拡散した距離が2.44μm以上、6.90μm以下であると、破壊確率が1%となる固着力を3N以上得ることが可能である。
上記ガラスが拡散した距離が2.6μm以上、5.2μm以下であると、破壊確率が1%となる固着力を4N以上得ることが可能である。
【0030】
上記ガラスが拡散した距離は、積層型コイル部品の断面を、例えば波長分散型X線分析法(WDX;Wavelength Dispersive X ray spectrometry)を用いて元素分析ことにより、求めることができる。
具体的な測定方法については、実施例の項目で説明する。
【0031】
上記ガラスが拡散した距離は、下地電極形成時の焼き付け温度を変更することによって調整することが可能であり、一般的には焼き付け温度がより高温になるほどガラスの拡散距離はより大きくなる。なお、ガラスの拡散距離は焼き付け温度だけで決まらず、ガラスや絶縁層の組成、それらの組み合わせや、焼き付け時間等の焼付条件によって変化するので、焼き付け温度が同じであっても、本発明の拡散距離になるとは限らない。
【0032】
なお、ここで、積層体にガラスが拡散するとは、積層体の絶縁層中にガラスが拡散することを意味しており、通常ではガラスは積層体のコイル(コイル導体)へはほとんど拡散しない。
【0033】
第1外部電及び第2外部電極の各下地電極に含まれるガラスは、少なくともBiを含むことが好ましく、上記ガラスが拡散した距離は、Biが拡散した距離であることが好ましい。
これにより、例えば波長分散型X線分析法(WDX)を用いてBiをマーカー(分析対象)としてガラスが拡散した距離を容易に測定することができる。
【0034】
なお、上記ガラスが拡散した距離を算出するために使用可能なマーカーは、絶縁層に含まれず、かつ下地電極のガラスに含まれる元素を基本とし、その中からSiやOを除いた濃度が高いものから1種類の元素を選択して測定することがより好ましい。具体的にはBiが最も好ましく、Biでは測定できない場合は、Kが好ましい。
【0035】
また、Bi等のマーカー成分は、通常は、単独で存在しておらず、ガラスの他の成分と共存し、下地電極及び積層体の絶縁層中にてアモルファス相を形成している。
【0036】
第1外部電及び第2外部電極の各下地電極に含まれるガラスは、SiをSiOに換算して3重量%以上、90重量%以下、BをBに換算して0.001重量%以上、20重量%以下、BiをBiに換算して0.001重量%以上、20重量%以下、KをKOに換算して0.001重量%以上、20重量%以下の割合で含むことが好ましい。
【0037】
絶縁層は、少なくともFe、Ni、Zn及びCuを含む磁性相と、少なくともSiを含む非磁性相とを有することが好ましい。絶縁層は、例えばフェライトやガラス等の焼結体であり、樹脂を含んでいてもよい。
このように、絶縁層を磁性材料及び非磁性材料のコンポジット材料から構成することによって、第1外部電及び第2外部電極の各下地電極に含まれるガラスが積層体へ拡散しやすくなる。
【0038】
磁性相は、磁性材料を有する相であり、磁性相は、少なくともFe、Ni、Zn及びCuを含む。磁性相は、磁性材料のみからなる相であってもよい。
磁性相は、Co、Bi、Sn、Mn等をさらに含んでいてもよい。
【0039】
磁性材料は、Ni-Cu-Zn系フェライト材料であることが好ましく、磁性相は、Ni-Cu-Zn系フェライト材料で構成されることが好ましい。磁性相がNi-Cu-Zn系フェライト材料で構成されることにより、積層型コイル部品のインダクタンスが高まる。
【0040】
Ni-Cu-Zn系フェライト材料は、Co、Bi、Sn、Mn等の添加物や、不可避不純物をさらに含んでいてもよい。
【0041】
また、磁性相は、元素分析した場合にFe、Ni、Zn及びCuを含む相である。また、磁性相は、元素分析した場合にCo、Bi、Sn、Mn等をさらに含む相であってもよい。
【0042】
磁性相は、Fe換算で40mol%以上、49.5mol%以下のFeと、ZnO換算で2mol%以上、35mol%以下のZnと、CuO換算で6mol%以上、13mol%以下のCuと、NiO換算で10mol%以上、45mol%以下のNiと、を含むことが好ましい。
【0043】
非磁性相は、非磁性材料を有する相であり、少なくともSiを含む。非磁性相は、非磁性材料のみからなる相であってもよい。
非磁性相を構成する非磁性材料としては、ガラス材料、フォルステライト(2MgO・SiO)、ウィルマイト[aZnO・SiO(aは、1.8以上、2.2以下)]等が挙げられる。
なお、本明細書において、「少なくともSiを含む非磁性相」とは、Siを含む相のみから構成されていてもよいし、Siを含む相と、Siを含まない相とから構成されていてもよい。Siを含まない相としては、例えばSiを含まない結晶相等が挙げられる。
【0044】
非磁性相は、ガラス材料を含むことが好ましい。非磁性相がガラス材料を含むと、第1外部電及び第2外部電極の各下地電極に含まれるガラスが積層体へ拡散しやすくなる。
【0045】
非磁性相に含まれるガラス材料は、上記ガラスが拡散した距離を算出するために使用するマーカー(例えばBiやK)を含まないことが好ましい。
【0046】
より具体的には、ガラス材料としては、ホウケイ酸ガラスが好ましい。
ホウケイ酸ガラスは、SiをSiOに換算して70重量%以上、85重量%以下、BをBに換算して10重量%以上、25重量%以下、アルカリ金属AをAOに換算して0.5重量%以上、5重量%以下、AlをAlに換算して0重量%以上、5重量%以下の割合で含むことが好ましい。アルカリ金属AとしてはK、Na等が挙げられる。
なお、マーカーとしてKを使用する場合は、アルカリ金属AとしてはNaが好適である。
【0047】
非磁性相は、フィラーとして、フォルステライト(2MgO・SiO)、石英(SiO)等をさらに含んでいてもよい。
【0048】
磁性相及び非磁性相については、以下のようにして区別することができる。まず、積層型コイル部品の積層体に対して、積層方向に沿う断面を研磨により露出させた後、走査型透過電子顕微鏡-エネルギー分散型X線分析(STEM-EDX)で元素マッピングを行う。そして、Fe元素、Ni元素、Zn元素及びCu元素が存在する領域を磁性相、磁性相以外の領域を非磁性相として、両相を区別する。
なお、積層方向に沿う断面は、後述する図2に示すような断面である。
【0049】
また、非磁性相の合計体積に対するフォルステライトの体積割合が1.5体積%以上、20体積%以下であることが好ましい。
フォルステライトに含まれる元素であるMg元素が存在する領域をフォルステライトが存在する領域として区別し、非磁性相の面積に対するフォルステライトが存在する領域の面積割合を測定することにより、非磁性相に含まれるフォルステライトの体積割合を求めることができる。
非磁性相の1.5体積%以上、20体積%以下がフォルステライトであると、積層体の強度が向上する。
【0050】
続いて、積層型コイル部品を構成する積層体が内蔵するコイルの例について説明する。
コイルは、絶縁層とともに積層方向に積層された複数のコイル導体が電気的に接続されることにより形成される。
【0051】
図2は、本発明の積層型コイル部品の一例を模式的に示す断面図であり、図3は、図2に示す積層型コイル部品を構成する絶縁層の様子を模式的に示す分解斜視模式図であり、図4は、図2に示す積層型コイル部品を構成する絶縁層の様子を模式的に示す分解平面模式図である。
図2は、絶縁層、コイル導体及び連結導体、並びに、積層体の積層方向を模式的に示すものであり、実際の形状及び接続等を厳密には表していない。例えば、コイル導体はビア導体を介して接続されている。
【0052】
図2に示すように、積層型コイル部品1は、絶縁層とともに積層された複数のコイル導体32が電気的に接続されることにより形成されるコイル30を内蔵する積層体10と、コイル30に電気的に接続される第1外部電極21及び第2外部電極22を備える。
積層体10には、コイル導体32が配置された領域と、第1連結導体41又は第2連結導体42が配置された領域とが存在する。積層体10の積層方向、及び、コイル30の軸方向(図2中、コイル軸Aを示す)は、第1主面13に対して平行である。
【0053】
図3及び図4に示すように、積層体10は、図2中の絶縁層31として、絶縁層31aと、絶縁層31bと、絶縁層31cと、絶縁層31dと、を有している。積層体10は、図2中の絶縁層35aとして、絶縁層35aと、絶縁層35aと、絶縁層35aと、絶縁層35aと、を有している。積層体10は、図2中の絶縁層35bとして、絶縁層35bと、絶縁層35bと、絶縁層35bと、絶縁層35bと、を有している。
【0054】
コイル30は、図2中のコイル導体32として、コイル導体32aと、コイル導体32bと、コイル導体32cと、コイル導体32dと、を有している。
【0055】
コイル導体32a、コイル導体32b、コイル導体32c、及び、コイル導体32dは、各々、絶縁層31a、絶縁層31b、絶縁層31c、及び、絶縁層31dの主面上に配置されている。
【0056】
コイル導体32a、コイル導体32b、コイル導体32c、及び、コイル導体32dの長さは、各々、コイル30の3/4ターンの長さである。つまり、コイル30の3ターンを構成するためのコイル導体32の積層数は4である。積層体10においては、コイル導体32a、コイル導体32b、コイル導体32c、及び、コイル導体32dが1つの単位(3ターン分)として繰り返し積層されている。
【0057】
コイル導体32aは、ライン部36aと、ライン部36aの端部に配置されるランド部37aと、を有している。コイル導体32bは、ライン部36bと、ライン部36bの端部に配置されるランド部37bと、を有している。コイル導体32cは、ライン部36cと、ライン部36cの端部に配置されるランド部37cと、を有している。コイル導体32dは、ライン部36dと、ライン部36dの端部に配置されるランド部37dと、を有している。
【0058】
絶縁層31a、絶縁層31b、絶縁層31c、及び、絶縁層31dには、各々、ビア導体33a、ビア導体33b、ビア導体33c、及び、ビア導体33dが積層方向に貫通するように配置されている。
【0059】
コイル導体32a及びビア導体33a付きの絶縁層31aと、コイル導体32b及びビア導体33b付きの絶縁層31bと、コイル導体32c及びビア導体33c付きの絶縁層31cと、コイル導体32d及びビア導体33d付きの絶縁層31dとは、1つの単位(図3及び図4中の点線で囲まれた部分)として繰り返し積層されている。これにより、コイル導体32aのランド部37aと、コイル導体32bのランド部37bと、コイル導体32cのランド部37cと、コイル導体32dのランド部37dとは、ビア導体33a、ビア導体33b、ビア導体33c、及び、ビア導体33dを介して接続される。つまり、積層方向に隣り合うコイル導体のランド部は、ビア導体を介して互いに接続される。
【0060】
以上により、積層体10に内蔵されるソレノイド状のコイル30が構成される。
【0061】
積層方向から平面視したとき、コイル導体32a、コイル導体32b、コイル導体32c、及び、コイル導体32dで構成されるコイル30は、円形状であってもよいし、多角形状であってもよい。積層方向から平面視したとき、コイル30が多角形状である場合、多角形の面積相当円の直径をコイル30のコイル径とし、多角形の重心を通り積層方向に延伸する軸をコイル30のコイル軸とする。
【0062】
絶縁層35a、絶縁層35a、絶縁層35a、及び、絶縁層35aには、各々、ビア導体33pが積層方向に貫通するように配置されている。絶縁層35a、絶縁層35a、絶縁層35a、及び、絶縁層35aの主面上には、ビア導体33pに接続されるランド部が配置されていてもよい。
【0063】
ビア導体33p付きの絶縁層35aと、ビア導体33p付きの絶縁層35aと、ビア導体33p付きの絶縁層35aと、ビア導体33p付きの絶縁層35aとは、コイル導体32a及びビア導体33a付きの絶縁層31aと重なるように積層されている。これにより、ビア導体33p同士がつながって第1連結導体41を構成し、第1連結導体41が第1端面11に露出する。その結果、第1外部電極21とコイル30(コイル導体32a)とが、第1連結導体41を介して互いに接続される。
【0064】
第1連結導体41は、第1外部電極21とコイル30との間を直線状に接続することが好ましい。第1連結導体41が第1外部電極21とコイル30との間を直線状に接続するとは、積層方向から平面視したとき、第1連結導体41を構成するビア導体33p同士が重なっていることを意味し、ビア導体33p同士は厳密に直線状に並んでいなくてもよい。
【0065】
絶縁層35b、絶縁層35b、絶縁層35b、及び、絶縁層35bには、各々、ビア導体33qが積層方向に貫通するように配置されている。絶縁層35b、絶縁層35b、絶縁層35b、及び、絶縁層35bの主面上には、ビア導体33qに接続されるランド部が配置されていてもよい。
【0066】
ビア導体33q付きの絶縁層35bと、ビア導体33q付きの絶縁層35bと、ビア導体33q付きの絶縁層35bと、ビア導体33q付きの絶縁層35bとは、コイル導体32d及びビア導体33d付きの絶縁層31dと重なるように積層されている。これにより、ビア導体33q同士がつながって第2連結導体42を構成し、第2連結導体42が第2端面12に露出する。その結果、第2外部電極22とコイル30(コイル導体32d)とが、第2連結導体42を介して互いに接続される。
【0067】
第2連結導体42は、第2外部電極22とコイル30との間を直線状に接続することが好ましい。第2連結導体42が第2外部電極22とコイル30との間を直線状に接続するとは、積層方向から平面視したとき、第2連結導体42を構成するビア導体33q同士が重なっていることを意味し、ビア導体33q同士は厳密に直線状に並んでいなくてもよい。
【0068】
なお、第1連結導体41を構成するビア導体33pと第2連結導体42を構成するビア導体33qとの各々にランド部が接続されている場合、第1連結導体41及び第2連結導体42の形状は、ランド部を除いた形状を意味する。
【0069】
図3及び図4では、コイル30の3ターンを構成するためのコイル導体32の積層数が4である場合、すなわち、繰り返し形状が3/4ターン形状である場合を例示したが、コイルの1ターンを構成するためのコイル導体32の積層数は特に限定されない。
例えば、コイルの1ターンを構成するためのコイル導体の積層数が2、すなわち、繰り返し形状が1/2ターン形状であってもよい。
【0070】
積層方向から平面視したときに、コイルを構成するコイル導体は互いに重なることが好ましい。また、積層方向から平面視したとき、コイルの形状は円形であることが好ましい。なお、コイルがランド部を含む場合には、ランド部を除いた形状(すなわちライン部の形状)をコイルの形状とする。
また、連結導体を構成するビア導体にランド部が接続されている場合には、ランド部を除いた形状(すなわちビア導体の形状)を連結導体の形状とする。
【0071】
なお、図3に示すコイル導体は、繰り返しパターンが円形となるような形状であるが、繰り返しパターンが四角形等の多角形となるようなコイル導体であってもよい。
また、コイル導体の繰り返し形状は3/4ターン形状ではなく、1/2ターン形状であってもよい。
【0072】
図2図3及び図4に示すような構成の積層型コイル部品において、積層型コイル部品のサイズが0603サイズである場合、高周波特性を向上させるためには、以下のように設計することが好ましい。
【0073】
コイルのターン数は、33ターン以上、42ターン以下であることが好ましい。ターン数がこの程度であると、コイル導体間のトータルの静電容量を低減することができるため、透過係数S21を良好な範囲にすることができる。
また、コイル長が0.49mm以上、0.55mm以下であることが好ましい。
【0074】
コイル導体の幅は、45μm以上、75μm以下であることが好ましい。コイル導体の幅は図2に両矢印Wで示す寸法である。
コイル導体の厚みは、3.5μm以上、6.0μm以下であることが好ましい。コイル導体の厚みは図2に両矢印Tで示す寸法である。
コイル導体間の距離は、3.0μm以上、5.0μm以下であることが好ましい。コイル導体間の距離は図2に両矢印Dで示す寸法である。
【0075】
コイル導体のランド部の直径は、30μm以上、50μm以下であることが好ましい。コイル導体のランド部の直径は図4に両矢印Rで示す寸法である。
【0076】
積層体の第1主面が実装面である場合、積層体の第1主面を覆う部分の第1外部電極の長さ、第2外部電極の長さは、それぞれ0.20mm以下であることが好ましい。また、0.10mm以上であることが好ましい。
積層体の第1主面を覆う部分の第1外部電極の長さ、第2外部電極の長さは、図2に両矢印Eで示す寸法である。
【0077】
本発明の積層型コイル部品は、例えば、以下の方法で製造される。
【0078】
<磁性材料作製工程>
Fe、ZnO、CuO、及び、NiOを所定の比率になるように秤量する。各酸化物には、不可避不純物が含まれていてもよい。次に、これらの秤量物を湿式で混合した後、粉砕することにより、スラリーを作製する。この際、Mn、Bi、Co、SiO、SnO等の添加剤を添加してもよい。そして、得られたスラリーを乾燥させた後、仮焼成する。仮焼成温度については、例えば、700℃以上、800℃以下とする。仮焼成時間については、例えば、2時間以上、5時間以下とする。このようにして、磁性材料として、粉末状のフェライト材料を作製する。
【0079】
フェライト材料は、40mol%以上、49.5mol%以下のFeと、2mol%以上、35mol%以下のZnOと、6mol%以上、13mol%以下のCuOと、10mol%以上、45mol%以下のNiOと、を含むことが好ましい。
【0080】
<非磁性材料作製工程>
非磁性材料の粉末を秤量する。ホウケイ酸ガラスとしてカリウム等のアルカリ金属、ホウ素、ケイ素、アルミニウムを所定の割合で含有するガラス粉末を準備する。また、フィラーとして、フォルステライト粉末を準備する。フィラーとして、石英粉末をさらに準備してもよい。
【0081】
ホウケイ酸ガラスは、SiをSiOに換算して70重量%以上、85重量%以下、BをBに換算して10重量%以上、25重量%以下、アルカリ金属AをAOに換算して0.5重量%以上、5重量%以下、AlをAlに換算して0重量%以上、5重量%以下の割合で含むことが好ましい。
【0082】
非磁性材料は、フィラーとしてのフォルステライト粉末を、1.5体積%以上、20体積%以下含むことが好ましい。
【0083】
<導電性ペースト作製工程>
Ag粉末を準備し、所定量の溶剤(オイゲノール等)、樹脂(エチルセルロース等)、及び分散剤とともにプラネタリーミキサーで混錬した後、3本ロールミルで分散させることで内部導体用の導電性ペーストを作製する。
【0084】
<グリーンシート作製工程>
磁性材料及び非磁性材料を所定の比率になるように秤量する。次に、これらの秤量物と、ポリビニルブチラール系樹脂等の有機バインダと、エタノール、トルエン等の有機溶剤と、可塑剤と、等を混合した後、粉砕することにより、スラリーを作製する。そして、得られたスラリーをドクターブレード法等で、所定の厚みのシート状に成形した後、所定の形状、例えば矩形状に打ち抜くことにより、グリーンシートを作製する。
グリーンシートの厚さは20μm以上、30μm以下であることが好ましい。
【0085】
磁性材料と非磁性材料の合計体積に対する磁性材料の体積割合は、10体積%以上、80体積%以下であることが好ましく、15体積%以上、70体積%以下であることがより好ましく、20体積%以上、60体積%以下であることがさらに好ましい。
磁性材料と非磁性材料の合計体積に対する磁性材料の体積割合が10体積%未満であると、積層体の強度が弱くなるおそれがある。
磁性材料と非磁性材料の合計体積に対する磁性材料の体積割合が80体積%を超えると、磁性材料と非磁性材料が焼結し難くなるおそれがある。
【0086】
<導体パターン形成工程>
まず、グリーンシートの所定の箇所にレーザー照射を行うことにより、ビアホールを形成する。
【0087】
次に、導電性ペーストを、スクリーン印刷法等により、ビアホールに充填しつつグリーンシートの表面に塗工する。これにより、グリーンシートに対して、ビア導体用導体パターンをビアホールに形成しつつ、ビア導体用導体パターンに接続されたコイル導体用導体パターンを表面上に形成する。このようにして、グリーンシートにコイル導体用導体パターン及びビア導体用導体パターンが形成されたコイルシートを作製する。コイルシートについては複数枚作製し、各コイルシートに対して、図3及び図4に示したコイル導体に相当するコイル導体用導体パターンと、図3及び図4に示したビア導体に相当するビア導体用導体パターンとを形成する。
【0088】
また、導電性ペーストを、スクリーン印刷法等により、ビアホールに充填することにより、グリーンシートにビア導体用導体パターンが形成されたビアシートを、コイルシートとは別に作製する。ビアシートについても複数枚作製し、各ビアシートに対して、図3及び図4に示したビア導体に相当するビア導体用導体パターンを形成する。
【0089】
<積層体ブロック作製工程>
コイルシート及びビアシートを、図3及び図4に相当する順序で積層方向に積層した後、熱圧着することにより、積層体ブロックを作製する。
【0090】
<積層体・コイル作製工程>
まず、積層体ブロックをダイサー等で所定の大きさに切断することにより、個片化されたチップを作製する。
【0091】
次に、個片化されたチップを焼成する。焼成温度については、例えば、900℃以上、920℃以下とする。また、焼成時間については、例えば、2時間以上、4時間以下とする。
【0092】
個片化されたチップを焼成することにより、コイルシート及びビアシートのグリーンシートは、絶縁層となる。その結果、複数の絶縁層が、積層方向、ここでは、長さ方向に積層されてなる積層体が作製される。積層体には、磁性相と非磁性相とが形成される。
【0093】
個片化されたチップを焼成することにより、コイルシートのコイル導体用導体パターン及びビア導体用導体パターンは、各々、コイル導体及びビア導体となる。その結果、複数のコイル導体が積層方向に積層されつつ、ビア導体を介して電気的に接続されてなるコイルが作製される。
【0094】
以上により、積層体と、積層体の内部に設けられたコイルとが作製される。絶縁層の積層方向とコイルのコイル軸の方向とは、積層体の実装面である第1主面に平行になり、ここでは、長さ方向に沿って平行になる。
【0095】
個片化されたチップを焼成することにより、ビアシートのビア導体用導体パターンは、ビア導体となる。その結果、複数のビア導体が長さ方向に積層されつつ電気的に接続されてなる、第1連結導体及び第2連結導体が作製される。第1連結導体は、積層体の第1端面から露出することになる。第2連結導体は、積層体の第2端面から露出することになる。
【0096】
積層体に対しては、例えば、バレル研磨を施すことにより、角部及び稜線部に丸みを付けてもよい。
【0097】
<外部電極形成工程>
まず、Ag粉末と、Biを含むガラスとを含む導電性ペーストを、積層体の第1端面及び第2端面に塗工する。
【0098】
Ag粉末とガラスの合計体積に対するAg粉末の体積割合は、2体積%以上、90体積%以下であることが好ましい。
【0099】
導電性ペーストに含まれるガラスは、BiをBiに換算して0.001重量%以上、20重量%以下、SiをSiOに換算して3重量%以上、90重量%以下、BをBに換算して0.001重量%以上、20重量%以下、KをKOに換算して0.001重量%以上、20重量%以下の割合で含むことが好ましい。
【0100】
次に、得られた各塗膜を焼き付けることにより、積層体の表面上に下地電極を形成する。より具体的には、積層体の第1端面から、第1主面、第1側面、及び、第2側面の各面の一部にわたって延在する下地電極を形成する。また、積層体の第2端面から、第1主面、第1側面、及び、第2側面の各面の一部にわたって延在する下地電極を形成する。ここで、各塗膜の焼き付けは、大気等の酸化性雰囲気中で実施されるが、還元雰囲気であってもよい。
【0101】
各塗膜の焼き付け温度については、750℃以上、870℃以下であることが好ましく、800℃以上、850℃以下であることがより好ましく、800℃以上、830℃以下であることがさらに好ましい。
【0102】
各塗膜の焼き付け時間については、10分以上、120分以下であることが好ましく、20分以上、90分以下であることがより好ましく、30分以上、60分以下であることがさらに好ましい。
【0103】
その後、電解めっき等により、各下地電極の表面上に、ニッケル被膜とスズ被膜とを順に形成する。
【0104】
このようにして、第1連結導体を介してコイルに電気的に接続された第1外部電極と、第2連結導体を介してコイルに電気的に接続された第2外部電極とを形成する。
以上により、積層型コイル部品が製造される。
【0105】
本明細書には、以下の内容が開示されている。
【0106】
<1>
複数の絶縁層が積層方向に積層されてなり内部にコイルが設けられた積層体と、前記積層体の表面に設けられて前記コイルに電気的に接続された外部電極とを有し、
前記積層体は、長さ方向に相対する第1端面及び第2端面と、前記長さ方向に直交する高さ方向に相対する第1主面及び第2主面と、前記長さ方向及び前記高さ方向に直交する幅方向に相対する第1側面及び第2側面と、を有し、
前記外部電極は、前記積層体の前記第1端面の少なくとも一部から前記第1主面の一部にわたって延在する第1外部電極と、前記積層体の前記第2端面の少なくとも一部から前記第1主面の一部にわたって延在する第2外部電極とを有し、
前記外部電極は、少なくともAg及びガラスを含む下地電極を有し、
前記外部電極及び前記積層体の間の界面から前記積層体へ前記ガラスが拡散した距離は、2.44μm以上、6.90μm以下である、積層型コイル部品。
【0107】
<2>
前記積層体の積層方向及び前記コイルのコイル軸が前記第1主面に平行である、<1>に記載の積層型コイル部品。
【0108】
<3>
前記ガラスは、少なくともBiを含み、
前記ガラスが拡散した距離は、Biが拡散した距離である、<1>又は<2>に記載の積層型コイル部品。
【0109】
<4>
前記積層型コイル部品のサイズは、0603サイズ、0402サイズ又は1005サイズである<1>から<3>のいずれか1つに記載の積層型コイル部品。
【0110】
<5>
前記絶縁層は、少なくともFe、Ni、Zn及びCuを含む磁性相と、少なくともSiを含む非磁性相とを有する、<1>から<4>のいずれか1つに記載の積層型コイル部品。
【実施例0111】
以下、本発明の積層型コイル部品をより具体的に開示した実施例を示す。なお、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
【0112】
[実施例1~6、及び、比較例1~3]
実施例1~6、及び、比較例1~3の積層型コイル部品用の積層体を、以下の方法で製造した。
【0113】
<磁性材料作製工程>
Feが48.0mol%、ZnOが30.0mol%、NiOが14.0mol%、CuOが8.0mol%の比率になるように、主成分を秤量した。次に、これらの秤量物と、純水と、分散剤とを、PSZメディアとともにボールミルに入れて混合した後、粉砕することにより、スラリーを作製した。そして、得られたスラリーを乾燥させた後、800℃で2時間仮焼成した。このようにして、磁性材料として、粉末状のフェライト材料を作製した。
【0114】
<非磁性材料作製工程>
Si、B、K、Alを所定の割合で含むホウケイ酸ガラス粉末と、フィラーとしてのフォルステライト粉末及び石英粉末とを準備した。ホウケイ酸ガラス粉末とフォルステライト粉末と石英粉末とを、体積比でホウケイ酸ガラス:フォルステライト:石英=93:6:1の割合となるように秤量した。次に、これらの秤量物と、純水と、分散剤とを、PSZメディアとともにボールミルに入れて混合した後、粉砕することにより、スラリーを作製した。そして、得られたスラリーを乾燥させることで、粉末状の非磁性材料を作製した。
【0115】
<グリーンシート作製工程>
磁性材料及び非磁性材料の体積割合が、磁性材料:非磁性材料=60:40になるように、磁性材料及び非磁性材料を秤量した。次に、これらの秤量物と、有機バインダとしてのポリビニルブチラール系樹脂と、有機溶剤としてのエタノール及びトルエンとを、PSZメディアとともにボールミルに入れて混合した後、粉砕することにより、スラリーを作製した。そして、得られたスラリーをドクターブレード法で、所定の厚みのシート状に成形した後、所定の形状に打ち抜くことにより、グリーンシートを作製した。
【0116】
<導体パターン形成工程>
Ag粉末と、所定量の溶剤(オイゲノール)と、樹脂(エチルセルロース)と、分散剤とをプラネタリーミキサーで混錬した後、3本ロールミルで分散させることで導電性ペーストを作製した。
グリーンシートの所定箇所にビアホールを形成し、導電性ペーストを充填してビア導体を形成した後、コイル導体パターンを印刷し、コイルシートを得た。
別途、グリーンシートの所定箇所にレーザーを照射することにより、ビアホールを形成した。ビアホールに導電性ペーストを充填してビア導体を形成してビアシートを得た。
【0117】
<積層体ブロック作製工程>
コイルシート及びビアシートを、図3及び図4に相当する順序で積層方向に積層した後、熱圧着することにより、積層体ブロックを作製した。
【0118】
<積層体・コイル作製工程>
積層体ブロックをダイサーで切断して個片化することにより、個片化されたチップを作製した。続いて、個片化されたチップを910℃で4時間焼成して積層体とした。積層体には、磁性相と、非磁性相とが形成された。
【0119】
<外部電極形成工程>
Ag粉末と、Biを含むガラスとを含有する外部電極用の導電性ペーストを塗膜形成槽に流し込み、所定厚みの塗膜が形成されるようにした。この塗膜に、積層体の外部電極を形成する箇所を浸漬した。
浸漬後、大気中にて後に示す表1の温度で1時間焼き付けることで、外部電極の下地電極を形成した。下地電極の厚みは略5μmとした。
焼き付け後の下地電極において、Bi及びSiとの重量比は、それぞれBi及びSiOに換算して、Bi(Bi):Si(SiO)=0.0001~1:1であった。
続いて、電解めっきで、下地電極の上にめっき電極としてニッケル被膜及びスズ被膜を順次形成して、外部電極を形成した。
【0120】
以上により、実施例1~6、及び、比較例1~3の積層型コイル部品を製造した。
作製した積層型コイル部品のサイズは、長さ方向における寸法が0.6mm、高さ方向における寸法が0.3mm、幅方向における寸法が0.3mmであった。
【0121】
<ガラスの拡散距離の測定>
図5は、ガラス(Bi)の拡散距離の測定方法を説明するための模式図である。作製した試料(実施例1~6、及び、比較例1~3の積層型コイル部品)の幅方向(z方向)が垂直になるように立てて、試料の周囲を樹脂で固めた。研磨機で試料の幅方向に、幅方向の略中央部が露出する深さまで研磨を行った。得られた試料の断面について、波長分散型X線分析法(WDX)を用いて、次のようにして外部電極の下地電極に含まれるガラス、ここではガラスの一成分であるBiが、外部電極及び積層体の間の界面から拡散した距離を測定した。すなわち、図5に示すように、x方向は外部電極120(下地電極120a)と積層体110の界面(10μmの位置)を挟んで、外部電極120側略0μmの位置から、積層体110側略20μmの位置までの20μm区間、y方向は積層体110の底面から略20μmの位置までの20μm区間の正方形領域をBi元素の線分析を行った。詳細には、前述の正方形領域を256×256の単位正方形領域に分割し、単位正方形ごとにBi元素の検出量を測定した。そして、x方向の1単位正方形おきに、y方向の256単位正方形分のBi元素の検出量の平均値をとることでx方向のBi元素の検出量と定義する。なお、y方向の測定領域は、外部電極及び積層体の間の界面が存在する範囲に限る。界面が存在しないy方向の範囲は測定結果から除外する。そして、界面からX線強度が平坦(バックグランド)になる位置までをガラス(Bi)が拡散した距離とした。ここで、x方向のBi元素の検出量の5点移動平均値を算出し、+x方向(外部電極から積層体に向かう方向)において3点連続で前の点との差が初めて3%以内となった点をバックグランドとする。結果を下記表1に示した。
なお、界面の位置は、チップ断面の観察像から判別ができる。界面の位置は当然、x方向にも幅がある(変動する)場合がほとんどであるが、その場合は各y座標値で判別された界面のx座標値の平均を取得すればよい。例えば、チップ断面画像を上述のWDXによるBi元素の検出と同じ単位正方形領域(縦横20μmの正方形領域を256×256に分割した領域)に分割して画像解析し、各y座標値で判別された界面のx座標値の平均を算出するのが好ましい。
今回の測定においては、界面の位置とX線強度のピーク位置が一致したため、便宜上X線強度がピークを示す位置を下地電極と積層体間の界面の位置とした。
【0122】
<外部電極の接合強度の測定>
作製した試料(実施例1~6、及び、比較例1~3の積層型コイル部品)をそれぞれ15個準備し、各試料をガラスエポキシ基板に実装し、接合強度試験機ボンドテスターを用いて固着力の測定を行った。その結果をワイブルプロットし、破壊確率が1%となる固着力を求めた。また、評価した試料15個について、故障モードを評価し、どのモードが支配的かを評価した。故障モードは、積層体-下地電極(Ag)間での破壊、下地電極(Ag)-めっき電極間での破壊、外部電極周辺の積層体での破壊、フィレットでの破壊に分けた。結果を下記表1に示した。
【0123】
【表1】
【0124】
また、図6に、実施例1~6、及び、比較例1~3の積層型コイル部品のガラス(Bi)の拡散距離と破壊確率が1%となる固着力をプロットした散布図を示した。図6には、比較例2及び実施例1~3の4点を通る近似線と、実施例4~6及び比較例3の4点を通る近似線とを示している。これらの近似線から、破壊確率が1%となる固着力が3N以上となるのは、ガラス(Bi)の拡散距離が2.44μm以上、6.90μm以下であることが分かる。
【0125】
表1及び図6に示す通り、Bi、すなわちガラスの拡散距離が2.44μm以上、6.90μm以下である、実施例1~6では、破壊確率が1%となる固着力が3N以上得られ、破壊モードも外部電極周辺の積層体又はフィレットでの破壊が主であり、充分な固着力が得られていると考えられる。
なお、実施例1~6、及び、比較例1~3において、それぞれガラス(Bi)の拡散距離については、試料15個の平均値である。
【0126】
また、一般的に、破壊確率が1%となる固着力が2Nを超えると市場における実装環境に耐え得る積層型コイル部品とみなされるが、ここではマージンを取ってその1.5倍の3Nを基準にして接合強度を評価した。
【符号の説明】
【0127】
1 積層型コイル部品
10、110 積層体
11 第1端面
12 第2端面
13 第1主面
14 第2主面
15 第1側面
16 第2側面
21 第1外部電極
22 第2外部電極
30 コイル
31、31a、31b、31c、31d、35a、35a、35a、35a、35a、35b、35b、35b、35b、35b 絶縁層
32、32a、32b、32c、32d コイル導体
33a、33b、33c、33d、33p、33q ビア導体
36a、36b、36c、36d ライン部
37a、37b、37c、37d ランド部
41 第1連結導体
42 第2連結導体
120 外部電極
120a 下地電極

図1
図2
図3
図4
図5
図6