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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024077241
(43)【公開日】2024-06-07
(54)【発明の名称】殺菌装置および殺菌方法
(51)【国際特許分類】
   A61L 2/20 20060101AFI20240531BHJP
   A61L 101/10 20060101ALN20240531BHJP
【FI】
A61L2/20
A61L101:10
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022189204
(22)【出願日】2022-11-28
(71)【出願人】
【識別番号】000236056
【氏名又は名称】三菱電機ビルソリューションズ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】秋本 博之
(72)【発明者】
【氏名】大上 明徳
(72)【発明者】
【氏名】堂岸 善宏
(72)【発明者】
【氏名】山田 翔太
(72)【発明者】
【氏名】生沼 学
(72)【発明者】
【氏名】野村 亜加音
【テーマコード(参考)】
4C058
【Fターム(参考)】
4C058AA19
4C058BB07
4C058CC02
4C058DD01
4C058DD07
4C058DD11
4C058DD13
4C058EE01
4C058EE12
4C058EE16
4C058EE22
4C058JJ14
4C058JJ27
4C058JJ29
(57)【要約】
【課題】複数の対象物を効率的に殺菌することができる殺菌装置および殺菌方法を提供する。
【解決手段】殺菌装置100は、通気性を有する複数の対象物5を収容する処理容器1と、殺菌成分を含有するガスを処理容器1の内部に供給するガス供給手段と、処理容器1の内部を通流したガスを、処理容器1の外部へ排出させる排出手段とを備える。処理容器1の内部において、複数の対象物5は、ガスが各対象物を通流するように配置される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
通気性を有する複数の対象物を殺菌する殺菌装置であって、
前記複数の対象物を収容する処理容器と、
殺菌成分を含有するガスを前記処理容器の内部に供給するガス供給手段と、
前記処理容器の内部を通流した前記ガスを、前記処理容器の外部へ排出させる排出手段とを備え、
前記処理容器の内部において、前記複数の対象物は、前記ガスが各対象物を通流するように配置される、殺菌装置。
【請求項2】
前記複数の対象物は、前記処理容器の内部における前記ガスの通流方向に沿って直列に配置される、請求項1に記載の殺菌装置。
【請求項3】
前記複数の対象物は、互いに形状が異なる、請求項1または2に記載の殺菌装置。
【請求項4】
前記複数の対象物の少なくとも1つの対象物の外周と前記処理容器の内面との隙間に配置され、当該隙間を封止する封止部材をさらに備える、請求項1または2に記載の殺菌装置。
【請求項5】
前記封止部材は、前記処理容器に固定される、請求項4に記載の殺菌装置。
【請求項6】
前記封止部材は、可撓性を有している、請求項4に記載の殺菌装置。
【請求項7】
前記処理容器は、前記複数の対象物を出し入れするための開閉部を有しており、前記開閉部が閉止されることにより前記開閉部の内面と前記封止部材とが密着される、請求項4に記載の殺菌装置。
【請求項8】
前記複数の対象物よりも前記ガスの通流方向の下流側に配置され、前記ガスに含有される前記殺菌成分の濃度を測定する濃度計と、
基準濃度に対する前記濃度計の測定値の偏差に基づいて、前記ガス供給手段における前記ガスの供給流量および前記殺菌成分の供給量の少なくとも一方を制御する制御部とをさらに備える、請求項2に記載の殺菌装置。
【請求項9】
前記複数の対象物よりも前記ガスの通流方向の上流側に配置され、前記ガスの圧力を測定する圧力計と、
基準圧力に対する前記圧力計の測定値の偏差に基づいて、前記ガス供給手段における前記ガスの供給流量および前記殺菌成分の供給量の少なくとも一方を制御する制御部とをさらに備える、請求項2に記載の殺菌装置。
【請求項10】
前記ガス供給手段および前記排出手段は、第1の通流方向に沿って前記複数の対象物に前記ガスを通流させるための第1の通流経路と、前記第1の通流方向とは反対の第2の通流方向に沿って前記複数の対象物に前記ガスを通流させるための第2の通流経路とを選択的に形成するように構成され、
前記ガスの通流経路を、前記第1の通流経路および前記第2の通流経路の間で切り替えるように、前記ガス供給手段および前記排出手段を制御する制御部をさらに備える、請求項2に記載の殺菌装置。
【請求項11】
前記第1の通流経路において前記複数の対象物よりも前記第1の通流方向の下流側に配置され、前記ガスに含有される前記殺菌成分の濃度を測定する第1の濃度計と、
前記第2の通流経路において前記複数の対象物よりも前記第2の通流方向の下流側に配置され、前記ガスに含有される前記殺菌成分の濃度を測定する第2の濃度計とをさらに備え、
前記制御部は、前記第1の通流経路が形成されている場合に、前記第1の濃度計の測定値の時間積分値を閾値に到達したことに応じて、前記ガスの通流経路を前記第2の通流経路に切り替えるとともに、前記第2の通流経路が形成されている場合に、前記第2の濃度計の測定値の時間積分値を前記閾値に到達したことに応じて、前記ガスの通流経路を前記第1の通流経路に切り替える、請求項10に記載の殺菌装置。
【請求項12】
前記処理容器の内部に供給される前記ガスの圧力を測定する圧力計をさらに備え、
前記第1の通流経路が形成されている場合には、前記制御部は、前記第1の濃度計の測定値または前記圧力計の測定値に基づいて、前記ガス供給手段における前記ガスの供給流量および前記殺菌成分の供給量の少なくとも一方を制御し、
前記第2の通流経路が形成されている場合には、前記制御部は、前記第2の濃度計の測定値または前記圧力計の測定値に基づいて、前記ガス供給手段における前記ガスの供給流量および前記殺菌成分の供給量の少なくとも一方を制御する、請求項11に記載の殺菌装置。
【請求項13】
前記排出手段は、前記処理容器の内部において、前記複数の対象物よりも前記ガスの通流方向の下流側に配置され、前記殺菌成分を分解する分解剤を備える、請求項1または2に記載の殺菌装置。
【請求項14】
前記処理容器の内部に供給される前記ガスを加湿するための加湿器をさらに備える、請求項1または2に記載の殺菌装置。
【請求項15】
前記複数の対象物は、前記処理容器の内部における前記ガスの通流方向に沿って並列に配置される、請求項1に記載の殺菌装置。
【請求項16】
通気性を有する複数の対象物を殺菌する殺菌方法であって、
前記複数の対象物を処理容器の内部に収容する工程と、
殺菌成分を含有するガスを前記処理容器の内部に供給する工程と、
前記処理容器の内部を通流した前記ガスを、前記処理容器の外部へ排出させる工程とを備え、
前記収容する工程は、前記処理容器の内部において、前記ガスが各対象物を通流するように、前記複数の対象物を配置する工程を含む、殺菌方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、殺菌装置および殺菌方法に関する。
【背景技術】
【0002】
殺菌装置の一態様として、特開2009-160304号公報(特許文献1)には、オゾンガスを含む気体の循環流路に、布団類またはマット類である対象物を配置し、対象物に気体を通過させて、対象物を殺菌するように構成された殺菌装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009-160304号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載される殺菌装置では、複数の対象物を殺菌する場合において、当該複数の対象物の配置、および、各対象物の形状及び大きさの違い等に起因して、全ての対象物に適切に気体を通過させることができない可能性がある。その結果、殺菌効果が低下することが懸念される。
【0005】
本開示はこのような問題点を解決するためになされたものであり、本開示の目的は、複数の対象物を効率的に殺菌することができる殺菌装置および殺菌方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のある局面では、通気性を有する複数の対象物を殺菌する殺菌装置であって、複数の対象物を収容する処理容器と、殺菌成分を含有するガスを処理容器の内部に供給するガス供給手段と、処理容器の内部を通流したガスを、処理容器の外部へ排出させる排出手段とを備える。処理容器の内部において、複数の対象物は、ガスが各対象物を通流するように配置される。
【0007】
本開示の他の局面では、通気性を有する複数の対象物を殺菌する殺菌方法であって、複数の対象物を処理容器の内部に収容するステップと、殺菌成分を含有するガスを処理容器の内部に供給するステップと、処理容器の内部を通流したガスを、処理容器の外部へ排出させるステップとを備える。収容するステップは、処理容器の内部において、ガスが各対象物を通流するように、複数の対象物を配置するステップを含む。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、複数の対象物を効率的に殺菌することができる殺菌装置および殺菌方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施の形態1に係る殺菌装置の概略構成図である。
図2】実施の形態1の変形例に係る殺菌装置の概略構成図である。
図3】実施の形態2に係る殺菌装置の概略構成図である。
図4】実施の形態3に係る殺菌装置の概略構成図である。
図5図4に示した制御部の構成例を説明するブロック図である。
図6図5の制御器による第1の制御例を示すフローチャートである。
図7図5の制御器による第2の制御例を示すフローチャートである。
図8図5の制御器による第3の制御例を示すフローチャートである。
図9】実施の形態4に係る殺菌装置の概略構成図である。
図10】流路切替弁が第1の状態であるときの殺菌装置の動作を示す図である。
図11】流路切替弁が第2の状態であるときの殺菌装置の動作を示す図である。
図12図9に示した制御部の構成例を説明するブロック図である。
図13図12に示した切替制御部の動作例を示すフローチャートである。
図14】実施の形態5に係る殺菌装置の概略構成図である。
図15】実施の形態1に係る殺菌装置を用いた殺菌方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本開示の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。なお以下では、図中の同一または相当部分には同一符号を付して、その説明は原則的に繰り返さないものとする。
【0011】
[実施の形態1]
<殺菌装置の構成>
図1は、実施の形態1に係る殺菌装置の概略構成図である。実施の形態1に係る殺菌装置100は、通気性を有する対象物5に殺菌成分を含有するガスを通流させることにより、対象物5に殺菌処理を施すように構成される。
【0012】
対象物5は、例えば、空調用フィルタである。空調用フィルタは、網目状構造からなる板状のフィルタ面と、フィルタ面の外周を取り囲む枠部材とを有しており、空気中に含まれる粉塵および油分等の異物をフィルタ面で捕集するように構成されている。殺菌装置100は、空調用フィルタのフィルタ面に殺菌成分を含有するガスを通流させることによって、空調用フィルタに付着および捕捉された菌を殺菌する。殺菌成分を有するガスは、例えば、オゾンガスである。
【0013】
なお、対象物5は通気性を有していればよく、空調用フィルタに限定されるものではない。殺菌装置100は、例えば、布団およびマット等を殺菌することも可能である。また、ガスは殺菌成分を含んでいればよく、オゾンガスに限定されるものではない。
【0014】
図1に示すように、殺菌装置100は、処理容器1と、送風機2と、オゾン発生器3と、オゾン分解剤6と、給気管22とを備える。
【0015】
処理容器1は、複数の対象物5を収容可能に構成されている。図1の例では、処理容器1には、3個の対象物5が収容されている。具体的には、処理容器1は、水平方向に延在する筒状部分10を有している。筒状部分10の延在方向における第1の端部は閉じられており、給気口11が形成されている。筒状部分10の延在方向における第2の端部は開放されており、排気口12が形成されている。給気口11を介して筒状部分10の内部にオゾンガスが取り込まれる。筒状部分10の内部には、オゾンガスを通流させるための通流経路が形成される。
【0016】
複数の対象物5は、筒状部分10の内部の通流経路に、各対象物5にオゾンガスが通流するように配置される。図1の例では、複数の対象物5は、当該通流経路に、オゾンガスの通流方向に沿って直列に配置されている。各対象物5は、オゾンガスが通流可能な状態で筒状部分10の内面に固定される。例えば、対象物5が空調用フィルタである場合には、フィルタ面が通流方向とは垂直をなすように対象物5を固定することが好ましい。このようにすると、フィルタ面全体にオゾンガスを通流させることができる。
【0017】
筒状部分10の外周面には、開閉部4が設けられている。開閉部4を開放することにおり、複数の対象物5を筒状部分10に対して出し入れすることができる。殺菌処理の実行中、開閉部4は閉止されている。
【0018】
送風機2には、給気管22の上流端が接続されている。給気管22の下流端は給気口11に接続されている。送風機2は給気管22に空気を送り込む。給気管22には、オゾン発生器3が接続されている。オゾン発生器3は、オゾンを生成して給気管22に供給する。送風機2から送り込まれた空気とオゾン発生器3から供給されたオゾンとが混合されて、オゾンガスが生成される。生成されたオゾンガスは、給気管22を通流し、給気口11を介して処理容器1の内部に供給される。送風機2、給気管22、オゾン発生器3および給気口11は「ガス供給手段」を構成する。オゾン発生器3は、筒状部分10の内部に設けられてもよい。
【0019】
給気口11から筒状部分10の内部に取り込まれたオゾンガスは、複数の対象物5を順番に通流する。複数の対象物5は、通流方向の最上流の対象物5から順番にオゾンガスによって殺菌される。通流経路に従って複数の対象物5を通流したオゾンガスは、排気口12を介して処理容器1の外部に排出される。
【0020】
通流経路の、複数の対象物5の下流側には、オゾン分解剤6が取り付けられている。オゾン分解剤6は、オゾンガスを加熱して、オゾンガスを熱分解するように構成されている。オゾン分解剤6によって熱分解されたオゾンガスは、排気口12へ導かれる。なお、オゾン分解剤6は、熱分解に代えて、あるいは、熱分解に加えて、所定の触媒の作用によりオゾンガスを分解する構成としてもよい。排気口12およびオゾン分解剤6は「排出手段」を構成する。
【0021】
このように処理容器1の内部に複数の対象物5をオゾンガスの通流方向に沿って直列に配置することにより、処理容器1に供給されたオゾンガスを複数の対象物5の各々に通流させることができる。よって、複数の対象物5の全てに殺菌処理を施すことができる。
【0022】
(変形例)
図1では、複数の対象物5をオゾンガスの通流方向に沿って直列に配置する構成について説明したが、図2に示すように、複数の対象物5をオゾンガスの通流方向に沿って互いに並列に配置する構成としてもよい。
【0023】
図2は、実施の形態1の変形例に係る殺菌装置100の概略構成図である。本変形例に係る殺菌装置100は、図1に示した殺菌装置100とは、給気口11と排気口12との間の筒状部分10が、複数の筒状部分10A~10Cに分岐されている点が異なる。複数の筒状部分10A~10Cの上流端は互いに接続されている。図2の例では、複数の筒状部分10A~10Cの下流端が互いに接続されているが、複数の筒状部分10A~10Cの下流端は分かれて入れもよい。
【0024】
複数の筒状部分10A~10Cの各々には、対象物5が収容されている。対象物5は、オゾンガスが通流可能な状態で、対応する筒状部分の内面に固定される。例えば、対象物5が空調用フィルタである場合には、フィルタ面が通流方向とは垂直をなすように対象物5を固定することが好ましい。このようにすると、フィルタ面全体にオゾンガスを通流させることができる。
【0025】
本変形例に係る殺菌装置100においては、給気口11から取り込まれたオゾンガスは、筒状部分10A~10Cの上流端で分流され、筒状部分10A~10Cを互いに並列に通流する。オゾンガスは、筒状部分10A~10Cの下流端で合流され、オゾン分解剤6を経由して排気口12へ導かれ、殺菌装置100の外部へ排出される。
【0026】
本変形例に係る殺菌装置100では、複数の対象物5がオゾンガスの通流方向に沿って並列に配置されているため、複数の対象物5の各々にオゾンガスを通流させて殺菌することができる。ただし、オゾンガスは複数の筒状部分10A~10Cに分流されるため、筒状部分10A~10Cの各々に殺菌処理に必要な流量のオゾンガスが流れるように、給気口11から取り込まれるオゾンガスの流量を調整する必要がある。
【0027】
以上のように実施の形態1およびその変形例に係る殺菌装置100では、処理容器1に供給されたオゾンガスが各対象物5を通流するように、処理容器1の内部に複数の対象物5が配置されているため、複数の対象物5の全てに殺菌処理を施すことができる。よって、複数の対象物5を効率的に殺菌することができる。
【0028】
[実施の形態2]
図3は、実施の形態2に係る殺菌装置100の概略構成図である。実施の形態2に係る殺菌装置100は、図1に示した実施の形態1に係る殺菌装置100とは、封止部材8を備える点が異なる。
【0029】
図3に示すように、実施の形態2に係る殺菌装置100においても、複数の対象物5は、処理容器1の筒状部分10に、オゾンガスの通流方向に沿って直列に配置されている。対象物5が空調用フィルタである場合には、各対象物5は、フィルタ面が通流方向とは垂直をなすように、枠部材が筒状部分10の内面に固定される。
【0030】
ただし、空調用フィルタの形状や大きさによっては、空調用フィルタの枠部材と筒状部分10の内面との間に隙間が生じてしまう場合がある。この場合、オゾンガスの一部が当該隙間を通流するため、フィルタ面を通流するオゾンガスの流量が減少する。その結果、フィルタ面に対する殺菌効果が減少することが懸念される。
【0031】
大きさおよび/または形状が異なる多種多様の対象物5に対応するために、実施の形態2に係る殺菌装置100は、対象物5の外周を囲むように封止部材8を取り付け可能に構成されている。封止部材8は、対象物5の外周と筒状部分10の内面との間の隙間に配置され、当該隙間を封止するとともに、対象物5を保持する機能を有している。
【0032】
封止部材8は、対象物5に比べて通気性が十分に低いため、上記隙間をオゾンガスが通流することを妨げることができる。これにより、フィルタ面を通流するオゾンガスの流量が減少することを抑制することができる。
【0033】
封止部材8は、例えば、ウレタン樹脂またはゴム等の弾性変形が可能な材料を用いて形成することができる。封止部材8は、可撓性を有しており、対象物5の外周と筒状部分10の内面との間の隙間の形状に合わせて変形することができるため、当該隙間を容易に埋めることができる。なお、開閉部4が閉止されることにより開閉部4の内面と封止部材8とが密着される。
【0034】
図示は省略するが、図2に示した殺菌装置100においても、筒状部分10A~10Cの各々の内面と対象物5の外面との間の隙間に封止部材8を配置して当該隙間を封止することにより、対象物5を通流するオゾンガスの流量が減少することを抑制することができる。
【0035】
以上説明したように実施の形態2に係る殺菌装置100によれば、対象物5の大きさや形状によって対象物5を通流するオゾンガスが減少することを抑制することができる。その結果、個々の対象物5の大きさや形状によらず、複数の対象物5を効率的に殺菌することが可能となる。
【0036】
[実施の形態3]
図4は、実施の形態3に係る殺菌装置100の概略構成図である。実施の形態3に係る殺菌装置100は、図3に示した実施の形態2に係る殺菌装置100とは、圧力計14、オゾン濃度計16、および制御部20を備える点が異なる。
【0037】
圧力計14は、処理容器1の筒状部分10の内部の圧力を測定する。圧力計14は、測定値を示す信号を制御部20に与える。圧力計14は、図4に示すように、複数の対象物5の上流側の通流経路に取り付けられることが好ましい。これは、送風機2から給気口11を介して処理容器1の内部に送ることができる送風量は、複数の対象物5の圧力損失によって決まるためである。したがって、処理容器1に代えて、給気管22に圧力計14を取り付ける構成としてもよい。
【0038】
オゾン濃度計16は、処理容器1の筒状部分10の内部のオゾン濃度を測定する。オゾン濃度計16は、測定値を示す信号を制御部20に与える。オゾン濃度計16は、図4に示すように、複数の対象物5の下流側とオゾン分解剤6との間の通流経路に取り付けられることが好ましい。オゾンガスが複数の対象物5を順番に通流する際、オゾンガス中のオゾン濃度が徐々に低下する。全ての対象物5を通流したオゾンガスのオゾン濃度を測定することにより、最下流の対象物5にも殺菌処理に適当なオゾン濃度を有するオゾンガスを通流させることができたか否かを判断することができる。
【0039】
制御部20は、圧力計14およびオゾン濃度計16から測定値を示す信号を受ける。制御部20は、入力された信号に基づいて、送風機2の送風量および/またはオゾン発生器3におけるオゾン発生量を制御するように構成される。送風機2の送風量は「処理容器1へのガスの供給流量」に相当し、オゾン発生器3におけるオゾン発生量は「ガスに含まれる殺菌成分の含有量」に相当する。
【0040】
図5は、図4に示した制御部20の構成例を説明するブロック図である。図5に示すように、制御部20は、減算器200,202と、制御器204とを含む。
【0041】
減算器200は、予め定められた基準圧力Prefに対する、圧力計14による圧力の測定値の偏差を算出する。減算器202は、予め定められた基準オゾン濃度OCrefに対する、オゾン濃度計16によるオゾン濃度の測定値の偏差を算出する。制御器204は、減算器200または減算器202が算出した偏差に基づいて、送風機2およびオゾン発生器3の少なくとも一方を制御する。以下、送風機2およびオゾン発生器3の制御例について説明する。
【0042】
図6は、図5の制御器204による第1の制御例を示すフローチャートである。このフローチャート示される一連の処理は、殺菌処理の実行中、制御器204により繰り返し実行される。
【0043】
図6に示すように、制御器204は、ステップS01により、オゾン濃度の測定値OCと基準オゾン濃度OCrefとを比較する。オゾン濃度の測定値が基準オゾン濃度OCrefよりも高い場合(S01のYES判定時)には、制御器204は、複数の対象物5に対し、必要以上の高いオゾン濃度を有するオゾンガスを通流させていると判断する。この場合、制御器204は、ステップS02により、オゾン発生量を減少させるようにオゾン発生器3を制御することによって、オゾンガスのオゾン濃度を低下させる。
【0044】
一方、オゾン濃度の測定値が基準オゾン濃度OCref以下である場合(S01のNO判定時)には、制御器204は、続いてステップS03により、オゾン濃度の測定値が基準オゾン濃度OCref未満であるか否かを判定する。オゾン濃度の測定値が基準オゾン濃度OCref未満である場合(S03のYES判定時)には、制御器204は、最下流の対象物5に殺菌処理に適当なオゾン濃度を有するオゾンガスを通流できていないと判断する。この場合、制御器204は、ステップS04に進み、オゾン発生量を増加させるようにオゾン発生器3を制御することによって、オゾンガスのオゾン濃度を上昇させる。
【0045】
制御器204は、オゾン濃度の測定値が基準オゾン濃度OCrefになるまで、S01~S04の処理を繰り返し実行する。基準オゾン濃度OCrefに対するオゾン濃度の測定値の偏差が0に近づくように、オゾン発生器3におけるオゾン発生量を制御することにより、複数の対象物5の全てに対して、殺菌処理に適当なオゾン濃度のオゾンガスを通流させることができる。
【0046】
図7は、図5の制御器204による第2の制御例を示すフローチャートである。このフローチャート示される一連の処理は、殺菌処理の実行中、制御器204により繰り返し実行される。図7に示すフローチャートは、図6に示したフローチャートにおけるS02,S04を、S05,S06にそれぞれ変更したものである。
【0047】
図7に示すように、オゾン濃度の測定値が基準オゾン濃度OCrefよりも高い場合(S01のYES判定時)には、制御器204は、複数の対象物5に対し、必要以上の高いオゾン濃度を有するオゾンガスを通流させていると判断する。この場合、制御器204は、ステップS05により、送風機2の送風量を増加させるように、送風機2を制御する。送風機2の送風量を増やすことで、オゾンガスのオゾン濃度を低下させる。
【0048】
一方、オゾン濃度の測定値が基準オゾン濃度OCref以下である場合(S01のNO判定時)には、制御器204は、ステップS03により、オゾン濃度の測定値が基準オゾン濃度OCref未満であるか否かを判定する。オゾン濃度の測定値が基準オゾン濃度OCref未満である場合(S03のYES判定時)には、制御器204は、ステップS06に進み、送風機2の送風量を減少させるように、送風機2を制御する。送風機2の送風量を減らすことで、オゾンガスのオゾン濃度を上昇させる。
【0049】
制御器204は、オゾン濃度の測定値が基準オゾン濃度OCrefになるまで、S01,S03,S05およびS06の処理を繰り返し実行する。基準オゾン濃度OCrefに対するオゾン濃度の測定値の偏差が0に近づくように、送風機2の送風量を制御することにより、複数の対象物5の全てに対して、殺菌処理に適当なオゾン濃度のオゾンガスを通流させることができる。
【0050】
図8は、図5の制御器204による第3の制御例を示すフローチャートである。このフローチャート示される一連の処理は、殺菌処理の実行中、制御器204により繰り返し実行される。
【0051】
図8に示すように、制御器204は、ステップS11により、圧力計14による処理容器1内の圧力の測定値と、基準圧力Prefとを比較する。圧力の測定値が基準圧力Prefよりも高い場合(S11のYES判定時)には、制御器204は、複数の対象物5に対し、必要以上の高いオゾン濃度を有するオゾンガスを通流させていると判断する。この場合、制御器204は、ステップS12により、オゾン発生量を減少させるようにオゾン発生器3を制御するとともに、ステップS13により、送風機2の送風量を増加させるように送風機2を制御する。これにより、オゾンガスのオゾン濃度を低下させる。
【0052】
一方、圧力の測定値が基準圧力Pref以下である場合(S11のNO判定時)には、制御器204は、続いてステップS14により、圧力の測定値が基準圧力Pref未満であるか否かを判定する。圧力の測定値が基準圧力Pref未満である場合(S14のYES判定時)、制御器204は、最下流の対象物5に殺菌処理に適当なオゾン濃度を有するオゾンガスを通流できていないと判断する。この場合、制御器204は、ステップS15に進み、オゾン発生量を増加させるようにオゾン発生器3を制御するとともに、ステップS16により、送風機2の送風量を減少させるように、送風機2を制御する。これにより、オゾンガスのオゾン濃度を上昇させる。
【0053】
制御器204は、圧力の測定値が基準圧力Prefになるまで、S11~S16の処理を繰り返し実行する。基準圧力Prefに対する圧力の測定値の偏差が0に近づくように、オゾン発生器3におけるオゾン発生量および送風機2の送風量を制御することにより、複数の対象物5の全てに対して、殺菌処理に適当なオゾン濃度のオゾンガスを通流させることができる。
【0054】
以上説明したように実施の形態3に係る殺菌装置100によれば、オゾンガスの通流経路に直列に複数の対象物5が配置された構成において、最下流の対象物5にも殺菌処理に適当なオゾン濃度のオゾンガスが通流するように、オゾン発生器3のオゾン発生量および/または送風機2の送風量が制御される。したがって、処理容器1に収容される対象物5の個数、各対象物5の形状および大きさ、ならびに、複数の対象物5による圧力損失によらず、複数の対象物5の全てに対して、殺菌処理に適当なオゾン濃度のオゾンガスを通流させることができる。
【0055】
[実施の形態4]
図9は、実施の形態4に係る殺菌装置100の概略構成図である。実施の形態4に係る殺菌装置100は、図3に示した殺菌装置100とは、オゾン分解剤6A,6B、給気口11A,11B、排気口12A,12B、圧力計14、オゾン濃度計16A,16B、給気管22A,22B、流路切替弁24、排気管26A,26B、排気弁28A,28B、および制御部20を備える点が異なる。
【0056】
図6に示すように、処理容器1の筒状部分10の延在方向における第1の端部は閉じられており、給気口11Aおよび排気口12Bが形成されている。筒状部分10の延在方向における第2の端部は閉じられており、給気口11Bおよび排気口12Aが形成されている。
【0057】
複数の対象物5は、給気口11Aおよび排気口12Bと、給気口11Bおよび排気口12Aとの間の通流経路に、オゾンガスの通流方向に沿って直列に配置されている。対象物5が空調用フィルタである場合には、各対象物5は、フィルタ面が通流方向とは垂直をなすように、枠部材が筒状部分10の内面に固定される。対象物5の外周と筒状部分10の内面との間の隙間には、封止部材8は配置されている。
【0058】
給気口11Aには、給気管22Aの下流端が接続されている。給気口11Bには、給気管22Bの下流端が接続されている。流路切替弁24は、三方弁であり、入力ポートと、第1および第2の出力ポートとを有している。
【0059】
給気管22Aの上流端は、流路切替弁24の第1の出力ポートに接続されている。給気管22Bの上流端は、流路切替弁24の第2の出力ポートに接続されている。流路切替弁24の入力ポートには、給気管22の下流端が接続されている。
【0060】
送風機2は、給気管22の上流端に接続されている。送風機2は給気管22に空気を送り込む。圧力計14は、送風機2から送り込まれた空気の圧力を測定し、測定値を示す信号を制御部20に与える。
【0061】
給気管22には、オゾン発生器3が接続されている。オゾン発生器3は、オゾンを生成して給気管22に供給する。送風機2から送り込まれた空気とオゾン発生器3から供給されたオゾンとが混合されて、オゾンガスが生成される。生成されたオゾンガスは、給気管22を通流して流路切替弁24の入力ポートに送られる。
【0062】
流路切替弁24は、給気管22から送られたオゾンガスの通流経路を、給気管22Aおよび給気管22Bの間で切り替え可能に構成されている。具体的には、流路切替弁24は、入力ポートと第1の出力ポートとが連通し、第2の出力ポートが閉止されている状態(以下、「第1の状態」とも称する)と、入力ポートと第2の出力ポートとが連通し、第1のポートが閉止されている状態(以下、「第2の状態」とも称する)とに、内部流路を切り替え可能に構成されている。流路切替弁24は、制御部20によって制御される。制御部20は、例えば、図示しないタイマを用いて、流路切替弁24を、第1の状態および第2の状態の間で交互に切り替えることができる。
【0063】
図10は、流路切替弁24が第1の状態であるときの殺菌装置100の動作を示す図である。図10に示すように、流路切替弁24が第1の状態のときには、オゾンガスは、流路切替弁24および給気管22Aを通流し、給気口11Aを介して筒状部分10に取り込まれる。筒状部分10に取り込まれたオゾンガスは、筒状部分10の内部を排気口12Aに向かって通流する。複数の対象物5は、通流方向の最上流の対象物5から順番にオゾンガスによって殺菌される。
【0064】
排気口12Aには、排気管26Aの上流端が接続されている。排気管26Aには、排気弁28Aが介挿接続されている。排気弁28Aが開放されると、排気口12Aから排気管26Aを経由して、処理容器1の外部にオゾンガスが排出される。排気弁28Aは、流路切替弁24が第1の状態のときに開放され、流路切替弁24が第2の状態のときに閉止される。排気弁28Aは、制御部20によって制御される。
【0065】
このように流路切替弁24が第1の状態であるときには、送風機2から給気管22、給気管22A、筒状部分10および排気管26Aを経由してオゾンガスが通流する、第1の通流経路が形成される。
【0066】
第1の通流経路において、複数の対象物5と排気口12Aとの間には、オゾン分解剤6Aが取り付けられている。オゾン分解剤6Aは、オゾンガスを加熱して、オゾンガスを熱分解する。オゾン分解剤6Aによって熱分解されたオゾンガスは、排気口12Aへ導かれる。なお、オゾン分解剤6Aは、熱分解に代えて、あるいは、熱分解に加えて、所定の触媒の作用によりオゾンガスを分解する構成としてもよい。
【0067】
オゾン濃度計16Aは、流路切替弁24が第1の状態のときに作動し、オゾン分解剤6Aへ導かれるオゾンガスのオゾン濃度を測定する。オゾン濃度計16Aは、測定値を示す信号を制御部20に与える。
【0068】
図11は、流路切替弁24が第2の状態であるときの殺菌装置100の動作を示す図である。図11に示すように、流路切替弁24が第2の状態のときには、オゾンガスは、流路切替弁24および給気管22Bを通流し、給気口11Bを介して筒状部分10に取り込まれる。筒状部分10に取り込まれたオゾンガスは、筒状部分10の内部を排気口12Bに向かって通流する。第2の状態におけるオゾンガスの通流方向は、第1の状態におけるオゾンガスの通流方向とは反対向きとなる。複数の対象物5は、通流方向の最上流の対象物5から順番にオゾンガスによって殺菌される。
【0069】
排気口12Bには、排気管26Bの上流端が接続されている。排気管26Bには、排気弁28Bが介挿接続されている。排気弁28Bが開放されると、排気口12Bから排気管26Bを経由して、処理容器1の外部にオゾンガスが排出される。なお、排気弁28Bは、流路切替弁24が第1の状態のときに閉止され、流路切替弁24が第2の状態の時に開放される。排気弁28Bは、制御部20によって制御される。
【0070】
このように流路切替弁24が第2の状態であるときには、送風機2から給気管22、給気管22B、筒状部分10および排気管26Bを経由してオゾンガスが通流する、第2の通流経路が形成される。
【0071】
第2の通流経路において、複数の対象物5と排気口12Bとの間には、オゾン分解剤6Bが取り付けられている。オゾン分解剤6Bは、オゾンガスを加熱して、オゾンガスを熱分解する。オゾン分解剤6Bによって熱分解されたオゾンガスは、排気口12Bへ導かれる。なお、オゾン分解剤6Bは、熱分解に代えて、あるいは、熱分解に加えて、所定の触媒の作用によりオゾンガスを分解する構成としてもよい。
【0072】
オゾン濃度計16Bは、流路切替弁24が第2の状態のときに作動し、オゾン分解剤6Bへ導かれるオゾンガスのオゾン濃度を測定する。オゾン濃度計16Bは、測定値を示す信号を制御部20に与える。
【0073】
処理容器1の内部に取り込まれたオゾンガスは、複数の対象物5を順番に通流するに従って、オゾン濃度が徐々に低下する。そのため、最上流の対象物5には殺菌処理に適当なオゾン濃度を有するオゾンガスが通流させることができる一方で、最下流の対象物5を通流するオゾンガスのオゾン濃度が殺菌処理に適当なオゾン濃度を満たしていない場合が起こり得る。この場合、最下流の対象物5に対する殺菌効果が低下することが懸念される。
【0074】
実施の形態4に係る殺菌装置100では、図10および図11に示したように、第1の通流経路におけるオゾンガスの通流方向と、第2の通流経路におけるオゾンガスの通流方向とは互いに逆向きとなる。したがって、第1の通流経路および第2の通流経路を切り替えることで、実質的に、オゾンガスの通流方向に対する複数の対象物5の並び順を入れ替えることが可能となる。これによると、第1の通流経路にて最下流となる対象物5は、第2の通流経路では最上流となり、高いオゾン濃度のオゾンガスを受けることができる。よって、最下流の対象物5に対する殺菌効果の低下を抑制することが可能となる。
【0075】
また、第1の通流経路および第2の通流経路を切り替えることで、各対象物5におけるオゾンガスの通流方向が切り替えられるため、対象物5の両面からオゾンガスを通流させることが可能となる。よって、対象物5の両面の表面上に付着した菌を殺菌することができる。
【0076】
制御部20は、流路切替弁24および排気弁28A,28Bを制御することによって、第1の通流経路および第2の通流経路の切り替えを行う。制御部20はさらに、圧力計14およびオゾン濃度計16A,16Bから与えられる信号に基づいて、送風機2およびオゾン発生器3を制御する。図12は、図9に示した制御部20の構成例を説明するブロック図である。
【0077】
図12に示すように、制御部20は、タイマ210、切替制御部212、減算器200,202A,202B、切替回路214、および制御器204を含む。図12に示す制御部20は、図5に示した制御部20とは、減算器202に代えて、減算器202A,202Bを含む点、および、タイマ210、切替制御部212および切替回路214を含む点が異なる。
【0078】
タイマ210は、流路切替弁24が第1の状態である時間と、流路切替弁24が第2の状態である時間とを計時するように構成されている。タイマ210の計時値は、流路切替弁24が第1の状態から第2の状態へ切り替えられたとき、および、流路切替弁24が第2の状態から第1の状態に切り替えられたときに、リセット(初期化)される。
【0079】
切替制御部212は、タイマ210の計時値と、オゾン濃度計16A,16Bによるオゾン濃度の測定値とに基づいて、流路切替弁24を、第1の状態および第2の状態の間で切り替える。切替制御部212はさらに、流路切替弁24の切り替えに合わせて、排気弁28A,28Bを相補的に開閉する。
【0080】
図13は、図12に示した切替制御部212の動作例を示すフローチャートである。このフローチャート示される一連の処理は、殺菌処理の実行中、切替制御部212により繰り返し実行される。
【0081】
図13に示すように、切替制御部212は、ステップS21により、流路切替弁24の状態が切り替えられたか否かを判定する。流路切替弁24が第1の状態から第2の状態に切り替えられた場合、または、流路切替弁24が第2の状態から第1の状態に切り替えられた場合(S21のYES判定時)には、切替制御部212は、ステップS22により、タイマ210を起動させ、流路切替弁24が第1の状態(または第2の状態)である時間を計時する。
【0082】
切替制御部212は、ステップS23により、タイマ210の計時値を用いて、流路切替弁24が第1の状態(または第2の状態)であるときのオゾン濃度の時間積分値を算出する。S23では、流路切替弁24が第1の状態であるときには、切替制御部212は、オゾン濃度計16Aによるオゾン濃度の測定値を時間積分する。一方、流路切替弁24が第2の状態であるときには、切替制御部212は、オゾン濃度計16Bによるオゾン濃度の測定値を時間積分する。
【0083】
流路切替弁24が第1の状態であるときのオゾン濃度の時間積分値は、第1の通流経路による殺菌効果を定量化する指標となる。流路切替弁24が第2の状態であるときのオゾン濃度の時間積分値は、第2の通流経路による殺菌効果を定量化する指標となる。オゾン濃度が高くなるほど、および/または、オゾンガスの通流時間が長くなるほど、殺菌効果は高くなる。
【0084】
切替制御部212は、算出されたオゾン濃度の時間積分値と、予め定められた閾値Xthとを比較することにより、十分な殺菌効果が得られたか否かを判定する。オゾン濃度の時間積分値が閾値Xth未満である場合(S24のNO判定時)には、切替制御部212は、十分な殺菌効果が得られていないと判定し、処理をS23に戻す。
【0085】
これに対して、オゾン濃度の時間積分値が閾値Xth以上である場合(S24のYES判定時)には、切替制御部212は、十分な殺菌効果が得られたものと判定する。この場合、切替制御部212は、ステップS25により、流路切替弁24の状態を切り替える。S25では、切替制御部212は、流路切替弁24を、第1の状態から第2の状態に切り替える。または、流路切替弁24を、第2の状態から第1の状態に切り替える。
【0086】
続いて、切替制御部212は、ステップS26により、タイマ210の計時値をリセットする。さらにステップS27により、切替制御部212は、流路切替弁24の状態に応じて、排気弁28A、28Bの一方を開放するとともに、他方を閉止することで、第1の通流経路および第2の通流経路の切り替えを行う。
【0087】
なお、図13では、オゾン濃度の時間積分値に基づいて、オゾンガスの通流経路を、第1の通流経路および第2の通流経路の間で切り替える構成について説明したが、タイマ210の計時値に基づいて、所定の周期毎(例えば数分毎)にオゾンガスの通流経路を切り替える構成としてもよい。
【0088】
図12に戻って、減算器202Aは、基準オゾン濃度OCrefに対する、オゾン濃度計16Aによるオゾン濃度の測定値の偏差を算出する。減算器202Aが算出した偏差は、切替回路214の第1の入力となる。減算器202Bは、基準オゾン濃度OCrefに対する、オゾン濃度計16Bによるオゾン濃度の測定値の偏差を算出する。減算器202Bが算出した偏差は、切替回路214の第2の入力となる。
【0089】
切替回路214には、切替制御部212から、流路切替弁24の状態を示す信号が与えられる。切替回路214は、切替制御部212から与えられる信号に基づいて、第1の入力および第2の入力の何れか一方を選択して制御器204へ出力する。具体的には、流路切替弁24が第1の状態であるときには、切替回路214は、第1の入力を選択する。流路切替弁24が第2の状態であるときには、切替回路214は、第2の入力を選択する。
【0090】
減算器200は、基準圧力Prefに対する、圧力計14による圧力の測定値の偏差を算出する。減算器200は、算出された偏差を制御器204へ出力する。
【0091】
制御器204は、切替回路214から入力される偏差、または減算器200から入力される偏差に基づいて、送風機2およびオゾン発生器3の少なくとも一方を制御する。具体的には、制御器204は、図6から図8に示した第1から第3の制御例の何れかに従って、オゾン発生器3におけるオゾン発生量および送風機2の送風量の少なくとも一方を制御することができる。
【0092】
以上説明したように実施の形態4に係る殺菌装置100では、オゾンガスの通流経路に直列に複数の対象物5が配置された構成において、複数の対象物5におけるオゾンガスの通流方向を、互いに反対方向となる2つの方向の間で切り替えることができる。これによると、複数の対象物5の並び順に起因して、一部の対象物5に対する殺菌効果が低下することを抑制することができる。
【0093】
さらに、第1の通流経路および第2の通流経路の各々において、オゾンガスのオゾン濃度の測定値または処理容器1内の圧力の測定値に応じて、オゾン発生器3のオゾン発生量および/または送風機2の送風量を制御することにより、複数の対象物5の全てに対して、殺菌処理に適当なオゾン濃度のオゾンガスを通流させることができる。
【0094】
[実施の形態5]
図14は、実施の形態5に係る殺菌装置100の概略構成図である。実施の形態5に係る殺菌装置100は、図3に示した殺菌装置100とは、加湿器30、圧力計14、オゾン濃度計16、および制御部20を備える点が異なる。
【0095】
図14に示すように、給気管22には、加湿器30が接続されている。加湿器30は、給気管22を通流するオゾンガスに霧状の水粒子を噴霧することにより、オゾンガスを加湿する。加湿されたオゾンガスは、給気口11を介して処理容器1の内部に供給される。
【0096】
オゾンガスによる殺菌では、一般的に湿度の高い条件下では高い殺菌効果を示す傾向がある。オゾンガスを加湿することにより、対象物5に対する殺菌効果を高めることができる。
【0097】
なお、給気管22に代えて、処理容器1に加湿器30を取り付けてもよい。処理容器1の内部を加湿することで、対象物5の表面を湿らせた状態でオゾンガスと接触させることができるため、殺菌効果を高めることができる。
【0098】
圧力計14は、給気管22の内部の圧力を測定する。圧力計14は、測定値を示す信号を制御部20に与える。オゾン濃度計16は、処理容器1の筒状部分10の内部のオゾン濃度を測定する。オゾン濃度計16は、測定値を示す信号を制御部20に与える。
【0099】
制御部20は、圧力計14およびオゾン濃度計16から測定値を示す信号を受ける。制御部20は、入力された信号に基づいて、送風機2の送風量、オゾン発生器3におけるオゾン発生量を制御するように構成される。制御部20は、図6から図8に示した第1から第3の制御例の何れかに従って、オゾン発生器3におけるオゾン発生量および送風機2の送風量の少なくとも一方を制御することができる。
【0100】
[実施の形態6]
図15は、実施の形態1に係る殺菌装置100を用いた殺菌方法を示すフローチャートである。図15に示すように、殺菌方法は、少なくとも、通気性を有する複数の対象物5を処理容器1の内部に収容する工程(S30)と、処理容器1の内部において、オゾンガスが各対象物5を通流するように、複数の対象物5を配置する工程(S31)と、オゾンガスを処理容器1の内部に供給する工程(S32)と、処理容器1の内部を通流したオゾンガスを、処理容器1の外部へ排出させる工程(S33)とを備える。
【0101】
複数の対象物5を配置する工程(S31)には、図1に示したように、複数の対象物5をオゾンガスの通流方向に沿って直列に配置する工程が含まれる。あるいは、複数の対象物5を配置する工程(S31)には、図2に示したように、複数の対象物5をオゾンガスの通流方向に沿って並列に配置する工程が含まれる。
【0102】
なお、上述した実施の形態および変更例について、明細書内で言及されていない組み合わせを含めて、不都合または矛盾が生じない範囲内で、実施の形態で説明された構成を適宜組み合わせることは出願当初から予定されている。
【0103】
以下、本開示の諸態様を付記としてまとめて記載する。
【0104】
(付記1)
通気性を有する複数の対象物を殺菌する殺菌装置であって、
前記複数の対象物を収容する処理容器と、
殺菌成分を含有するガスを前記処理容器の内部に供給するガス供給手段と、
前記処理容器の内部を通流した前記ガスを、前記処理容器の外部へ排出させる排出手段とを備え、
前記処理容器の内部において、前記複数の対象物は、前記ガスが各対象物を通流するように配置される、殺菌装置。
【0105】
(付記2)
前記複数の対象物は、前記処理容器の内部における前記ガスの通流方向に沿って直列に配置される、付記1に記載の殺菌装置。
【0106】
(付記3)
前記複数の対象物は、互いに形状が異なる、付記1または2に記載の殺菌装置。
【0107】
(付記4)
前記複数の対象物の少なくとも1つの対象物の外周と前記処理容器の内面との隙間に配置され、当該隙間を封止する封止部材をさらに備える、付記1から3のいずれか1項に記載の殺菌装置。
【0108】
(付記5)
前記封止部材は、前記処理容器に固定される、付記4に記載の殺菌装置。
【0109】
(付記6)
前記封止部材は、可撓性を有している、付記4または5に記載の殺菌装置。
【0110】
(付記7)
前記処理容器は、前記複数の対象物を出し入れするための開閉部を有しており、前記開閉部が閉止されることにより前記開閉部の内面と前記封止部材とが密着される、付記4から6のいずれか1項に記載の殺菌装置。
【0111】
(付記8)
前記複数の対象物よりも前記ガスの通流方向の下流側に配置され、前記ガスに含有される前記殺菌成分の濃度を測定する濃度計と、
基準濃度に対する前記濃度計の測定値の偏差に基づいて、前記ガス供給手段における前記ガスの供給流量および前記殺菌成分の供給量の少なくとも一方を制御する制御部とをさらに備える、付記2または3に記載の殺菌装置。
【0112】
(付記9)
前記複数の対象物よりも前記ガスの通流方向の上流側に配置され、前記ガスの圧力を測定する圧力計と、
基準圧力に対する前記圧力計の測定値の偏差に基づいて、前記ガス供給手段における前記ガスの供給流量および前記殺菌成分の供給量の少なくとも一方を制御する制御部とをさらに備える、付記2または3に記載の殺菌装置。
【0113】
(付記10)
前記ガス供給手段および前記排出手段は、第1の通流方向に沿って前記複数の対象物に前記ガスを通流させるための第1の通流経路と、前記第1の通流方向とは反対の第2の通流方向に沿って前記複数の対象物に前記ガスを通流させるための第2の通流経路とを選択的に形成するように構成され、
前記ガスの通流経路を、前記第1の通流経路および前記第2の通流経路の間で切り替えるように、前記ガス供給手段および前記排出手段を制御する制御部をさらに備える、付記2または3に記載の殺菌装置。
【0114】
(付記11)
前記第1の通流経路において前記複数の対象物よりも前記第1の通流方向の下流側に配置され、前記ガスに含有される前記殺菌成分の濃度を測定する第1の濃度計と、
前記第2の通流経路において前記複数の対象物よりも前記第2の通流方向の下流側に配置され、前記ガスに含有される前記殺菌成分の濃度を測定する第2の濃度計とをさらに備え、
前記制御部は、前記第1の通流経路が形成されている場合に、前記第1の濃度計の測定値の時間積分値を閾値に到達したことに応じて、前記ガスの通流経路を前記第2の通流経路に切り替えるとともに、前記第2の通流経路が形成されている場合に、前記第2の濃度計の測定値の時間積分値を前記閾値に到達したことに応じて、前記ガスの通流経路を前記第1の通流経路に切り替える、付記10に記載の殺菌装置。
【0115】
(付記12)
前記処理容器の内部に供給される前記ガスの圧力を測定する圧力計をさらに備え、
前記第1の通流経路が形成されている場合には、前記制御部は、前記第1の濃度計の測定値または前記圧力計の測定値に基づいて、前記ガス供給手段における前記ガスの供給流量および前記殺菌成分の供給量の少なくとも一方を制御し、
前記第2の通流経路が形成されている場合には、前記制御部は、前記第2の濃度計の測定値または前記圧力計の測定値に基づいて、前記ガス供給手段における前記ガスの供給流量および前記殺菌成分の供給量の少なくとも一方を制御する、付記11に記載の殺菌装置。
【0116】
(付記13)
前記排出手段は、前記処理容器の内部において、前記複数の対象物よりも前記ガスの通流方向の下流側に配置され、前記殺菌成分を分解する分解剤を備える、付記1から12のいずれか1項に記載の殺菌装置。
【0117】
(付記14)
前記処理容器の内部に供給される前記ガスを加湿するための加湿器をさらに備える、付記1から付記13のいずれか1項に記載の殺菌装置。
【0118】
(付記15)
前記複数の対象物は、前記処理容器の内部における前記ガスの通流方向に沿って並列に配置される、付記1に記載の殺菌装置。
【0119】
(付記16)
通気性を有する複数の対象物を殺菌する殺菌方法であって、
前記複数の対象物を処理容器の内部に収容する工程と、
殺菌成分を含有するガスを前記処理容器の内部に供給する工程と、
前記処理容器の内部を通流した前記ガスを、前記処理容器の外部へ排出させる工程とを備え、
前記収容する工程は、前記処理容器の内部において、前記ガスが各対象物を通流するように、前記複数の対象物を配置する工程を含む、殺菌方法。
【0120】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0121】
1 処理容器、2 送風機、3 オゾン発生器、4 開閉部、5 対象物、6,6A,6B オゾン分解剤、8 封止部材、10,10A~10C 筒状部分、11,11A,11B 給気口、12,12A,12B 排気口、14 圧力計、16,16A,16B オゾン濃度計、20 制御部、22,22A,22B 給気管、24 流路切替弁、26A,26B 排気管、28A,28B 排気弁、30 加湿器、100 殺菌装置、200,202,202A,2020B 減算器、204 制御器、210 タイマ、212 切替制御部、214 切替回路。
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