(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024077244
(43)【公開日】2024-06-07
(54)【発明の名称】内燃機関の制御装置、内燃機関の制御方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
F02D 45/00 20060101AFI20240531BHJP
G01H 17/00 20060101ALI20240531BHJP
【FI】
F02D45/00 370
F02D45/00 368A
G01H17/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022189208
(22)【出願日】2022-11-28
(71)【出願人】
【識別番号】316015888
【氏名又は名称】三菱重工エンジン&ターボチャージャ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】橋本 直樹
(72)【発明者】
【氏名】北村 陽昌
(72)【発明者】
【氏名】高柳 恒
【テーマコード(参考)】
2G064
3G384
【Fターム(参考)】
2G064AA15
2G064AB02
2G064AC12
2G064AC22
2G064BA02
2G064CC02
2G064DD21
3G384DA27
3G384DA42
3G384EB10
3G384EC04
3G384ED01
3G384ED07
3G384FA33B
(57)【要約】
【課題】信号線の断線箇所、断線した信号線の本数、内燃機関が運用されている環境などに関わらず、各信号線の断線状態を精度よく判定する。
【解決手段】内燃機関に装着される振動センサが第1信号線に出力する第1電荷信号であって、振動センサが検出した振動の大きさを示す第1電荷信号から生成される第1電圧信号と、閾値電圧とを比較し、第1電圧信号が閾値電圧を超える場合、一定値の出力信号を出力する第1比較回路と、振動センサが第2信号線に出力する第2電荷信号であって、第1電荷信号の反転信号である第2電荷信号から生成される第2電圧信号と、閾値電圧とを比較し、第2電圧信号が閾値電圧を超える場合、一定値の出力信号を出力する第2比較回路と、第1比較回路及び第2比較回路の各々が出力する出力信号に基づいて、第1信号線と、第2信号線とにおける断線状態を検出する信号処理部と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関に装着される振動センサが第1信号線に出力する第1電荷信号であって、前記振動センサが検出した振動の大きさを示す第1電荷信号から生成される第1電圧信号と、閾値電圧とを比較し、前記第1電圧信号が前記閾値電圧を超える場合、一定値の出力信号を出力する第1比較回路と、
前記振動センサが第2信号線に出力する第2電荷信号であって、前記第1電荷信号の反転信号である第2電荷信号から生成される第2電圧信号と、前記閾値電圧とを比較し、前記第2電圧信号が前記閾値電圧を超える場合、一定値の出力信号を出力する第2比較回路と、
前記第1比較回路及び前記第2比較回路の各々が出力する前記出力信号に基づいて、前記第1信号線と、前記第2信号線とにおける断線状態を検出する信号処理部と、
を備える内燃機関の制御装置。
【請求項2】
前記第1比較回路、及び前記第2比較回路の各々は、
前記閾値電圧と、比較対象の電圧信号とを比較するコンパレータと、
前記コンパレータによる前記閾値電圧との比較の前に、前記比較対象の電圧信号から電源ノイズを除去するフィルタ回路と、
を備える請求項1に記載の内燃機関の制御装置。
【請求項3】
前記第1比較回路、及び前記第2比較回路の各々は、
前記コンパレータによる前記閾値電圧との比較の前に、前記フィルタ回路によって電源ノイズが除去された電圧信号からマイナス成分を除去するクリッパ回路
を備える請求項2に記載の内燃機関の制御装置。
【請求項4】
前記第1信号線に接続し、前記第1電荷信号から前記第1比較回路が備える前記フィルタ回路に供給する電圧信号を生成する第1チャージアンプ回路と、
前記第2信号線に接続し、前記第2電荷信号から前記第2比較回路が備える前記フィルタ回路に供給する電圧信号を生成する第2チャージアンプ回路と、
を備える請求項2または請求項3に記載の内燃機関の制御装置。
【請求項5】
前記信号処理部は、
前記内燃機関における連続した所定数のサイクルの各々における断線判定区間に、前記第1比較回路が少なくとも1つの前記出力信号を出力しているサイクルの数をカウントし、カウントしたサイクルの数と、許容サイクル数とに基づいて、前記第1信号線が断線しているか否かを判定する判定処理を行う第1信号線断線状態判定部と、
連続した前記所定数のサイクルの各々における断線判定区間に、前記第2比較回路が少なくとも1つの前記出力信号を出力しているサイクルの数をカウントし、カウントしたサイクルの数と、前記許容サイクル数とに基づいて、前記第2信号線が断線しているか否かを判定する判定処理を行う第2信号線断線状態判定部と、
を備える請求項1に記載の内燃機関の制御装置。
【請求項6】
前記信号処理部は、
前記内燃機関の1サイクルにおける断線判定区間に、前記第1比較回路が前記出力信号を出力した回数をカウントする区間内カウント操作処理を行い、当該1サイクルにおいてカウントした回数と、予め定められる閾値とに基づいて、前記第1信号線断線状態判定部に判定処理を開始させるか否かを判定し、前記第1信号線断線状態判定部に判定処理を開始させる場合、自らは停止し、前記第1信号線断線状態判定部に判定処理を開始させない場合、次のサイクルに対する前記区間内カウント操作処理を行う第1事前判定部と、
前記内燃機関の1サイクルにおける断線判定区間に、前記第2比較回路が前記出力信号を出力した回数をカウントする区間内カウント操作処理を行い、当該1サイクルにおいてカウントした回数と、予め定められる閾値とに基づいて、前記第2信号線断線状態判定部に判定処理を開始させるか否かを判定し、前記第2信号線断線状態判定部に判定処理を開始させる場合、自らは停止し、前記第2信号線断線状態判定部に判定処理を開始させない場合、次のサイクルに対する前記区間内カウント操作処理を行う第2事前判定部と、を備え、
前記第1信号線断線状態判定部は、
前記第1信号線の状態が断線していない状態であると判定した場合、前記第1事前判定部に前記区間内カウント操作処理を開始させて、自らは停止し、
前記第2信号線断線状態判定部は、
前記第2信号線の状態が断線していない状態であると判定した場合、前記第2事前判定部に前記区間内カウント操作処理を開始させて、自らは停止する、
請求項5に記載の内燃機関の制御装置。
【請求項7】
前記第1信号線断線状態判定部と前記第2信号線断線状態判定部の各々は、
各々に対応する信号線の状態が断線している状態の場合に用いる前記許容サイクル数と、各々に対応する信号線の状態が断線していない状態の場合に用いる前記許容サイクル数とを同一数とするか、または、異なる数とする、
請求項5または請求項6に記載の内燃機関の制御装置。
【請求項8】
内燃機関に装着される振動センサが第1信号線に出力する第1電荷信号であって、前記振動センサが検出した振動の大きさを示す第1電荷信号から生成される第1電圧信号と、閾値電圧とを比較し、前記第1電圧信号が前記閾値電圧を超える場合、一定値の出力信号を出力する第1比較ステップと、
前記振動センサが第2信号線に出力する第2電荷信号であって、前記第1電荷信号の反転信号である第2電荷信号から生成される第2電圧信号と、前記閾値電圧とを比較し、前記第2電圧信号が前記閾値電圧を超える場合、一定値の出力信号を出力する第2比較ステップと、
前記第1比較ステップ及び前記第2比較ステップの各々において出力される前記出力信号に基づいて、前記第1信号線と、前記第2信号線とにおける断線状態を検出する信号処理ステップと、
を含む内燃機関の制御方法。
【請求項9】
内燃機関に装着される振動センサが第1信号線に出力する第1電荷信号であって、前記振動センサが検出した振動の大きさを示す第1電荷信号から生成される第1電圧信号と、閾値電圧とを比較し、前記第1電圧信号が前記閾値電圧を超える場合、一定値の出力信号を出力する第1比較回路と、
前記振動センサが第2信号線に出力する第2電荷信号であって、前記第1電荷信号の反転信号である第2電荷信号から生成される第2電圧信号と、前記閾値電圧とを比較し、前記第2電圧信号が前記閾値電圧を超える場合、一定値の出力信号を出力する第2比較回路と、を備える内燃機関の制御装置が備えるコンピュータを、
前記第1比較回路及び前記第2比較回路の各々が出力する前記出力信号に基づいて、前記第1信号線と、前記第2信号線とにおける断線状態を検出する信号処理手段、
として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、内燃機関の制御装置、内燃機関の制御方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
エンジンやガスタービンなどの内燃機関では、例えば、効率を高めるために点火時期を進角する制御が行われる。ただし、単に点火時期を進角すると、ノッキングと呼ばれる異常燃焼が生じ易くなる。そのため、例えば、ノックセンサと呼ばれる圧電素子を用いた振動センサによってノッキングの有無の監視を行い、ノッキングが発生しない範囲で効率を高めることができるような点火時期の調整が行われる(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
ノックセンサは、内燃機関のシリンダヘッドに直接装着されており、ECU(Engine Control Unit)と信号線によって接続される。ECUは、ノックセンサが出力するノックセンサ信号を、信号線を介して取得し、取得したノックセンサ信号を内部の回路によって処理することによりノッキングの有無の監視を行う。ところで、この信号線が、内燃機関の振動によって断線することがあり、信号線が断線すると、ECUにおいてノッキングの有無の監視を行うことができなくなり、点火時期の調整もできなくなるという課題がある。この課題の解決のため、信号線の断線を検出する様々な技術が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
図19は、特許文献1に開示される技術の概略を示すブロック図であり、ECU300に備えられるノックセンサ信号を処理する回路構成の一例を示す図である。
図19に示すように、ノックセンサ200と、ECU300とは、2本の信号線210-1,210-2によって接続される。
【0005】
ノックセンサ200は、ノックセンサ信号として、振動の大きさを示す2つの電荷信号を出力する。2つの電荷信号において、一方の電荷信号のプラスとマイナスを反転させた反転信号が他方の電荷信号になる。ノックセンサ200は、一方の電荷信号を信号線210-1に出力し、他方の電荷信号を信号線210-2に出力する。ノックセンサ200が出力する電荷信号は、微弱な信号である。そのため、チャージアンプ回路320-1,320-2の各々は、各々に接続する信号線210-1,210-2を通じて取得する電荷信号を、増幅しつつ当該電荷信号の大きさに比例した電圧信号に変換して出力する。
【0006】
差動増幅回路330は、チャージアンプ回路320-1,320-2の各々が出力する電圧信号の差動信号を生成する。チャージアンプ回路320-1,320-2の各々が出力する電圧信号は、プラスマイナスが逆の信号である。そのため、差動増幅回路330が出力する差動信号において、2つの電圧信号の差、すなわち、ノックセンサ200が検出した振動の大きさが強調されて現れると共に、ノイズが除去された状態になる。したがって、信号処理部340は、差動増幅回路330が出力する差動信号に基づいて、ノックセンサ200が検出した振動、すなわち内燃機関の振動の大きさを検出することができる。
【0007】
図19の構成において、以下のような、信号線210-1,210-2の断線状態を判定する断線判定手法が知られている。ノックセンサ200が出力する電荷信号は、微弱な信号であり、ノイズの影響を受けやすい。そのため、まず、内燃機関のサイクルにおいてノイズの影響を受けにくい程度の大きさの振動が確実に発生する断線判定区間を定める。
【0008】
信号処理部340は、断線判定区間において、差動増幅回路330が出力する差動信号の二乗平均値を算出し、算出した二乗平均値を「断線値」とする。信号処理部340は、得られた断線値が、予め定められる閾値未満の場合、断線判定区間において、本来、生じるはずの振動が生じていないと推定されることから、信号線210-1,210-2が断線していると判定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2019-197034号公報
【特許文献2】特開2021-105336号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、
図19を参照して説明した断線判定手法の場合、以下のような課題が存在する。例えば、信号線210-1,210-2のいずれか一方が断線すると、チャージアンプ回路320-1が取り込む電荷信号と、チャージアンプ回路320-2が取り込む電荷信号とは、互いが反転信号になるという関係を満たさなくなる。
【0011】
例えば、信号線210-1は断線していないが、信号線210-2が断線しているという例を想定する。この場合、ECU300の電源に起因する低周波ノイズは、断線していない方の信号線210-1に接続するチャージアンプ回路320-1が出力する電圧信号にのみ重畳する。信号線210-1,210-2の両方が断線していない場合、差動増幅回路330による差動増幅により、低周波ノイズは除去されるが、一方にのみ低周波ノイズが重畳していると、低周波ノイズの成分が、差動増幅によって強調されて現れることになる。この場合に、低周波ノイズの振幅値が、断線していない状態でノックセンサ200が検出した振動を示す差動信号の振幅値と大差ない値である場合、低周波ノイズの成分の二乗平均値が、閾値を超えてしまうことがある。その際、信号線210-2が断線しているのにも関わらず、断線していないと判定してしまうことになる。
【0012】
また、信号線210-1,210-2が断線している位置が、ノックセンサ200寄りの位置であるか、ECU300寄りの位置であるかによって、チャージアンプ回路320-1,320-2の各々が取り込む電荷信号の波形の形状に違いが生じる。また、信号線210-1,210-2の両方が断線している場合と、信号線210-1,210-2のいずれか一方が断線している場合とでも、チャージアンプ回路320-1,320-2が取り込む電荷信号の波形の形状に違いが生じる。また、内燃機関の場所を動かす等、内燃機関が運用されている環境における要因により、チャージアンプ回路320-1,320-2が取り込む電荷信号の波形の形状に違いが生じることもある。
【0013】
これらの波形の形状の違いが、差動増幅回路330が出力する差動信号の振幅値に影響する。そのため、差動信号の二乗平均値である断線値を用いる手法では、信号処理部340が断線値に基づいて行う断線判定の際に、一律の閾値で断線判定を行おうとしても、断線していないのに断線していると判定してしまったりする課題がある。また、逆に、上記した場合のように、断線しているのにも関わらず、断線していないと判定してしまったりする課題もある。
【0014】
本開示は、上記課題を解決すべくなされたもので、信号線の断線箇所、断線した信号線の本数、内燃機関が運用されている環境などに関わらず、各信号線の断線状態を精度よく判定する内燃機関の制御装置、内燃機関の制御方法、及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するために、本開示に係る内燃機関の制御装置は、内燃機関に装着される振動センサが第1信号線に出力する第1電荷信号であって、前記振動センサが検出した振動の大きさを示す第1電荷信号から生成される第1電圧信号と、閾値電圧とを比較し、前記第1電圧信号が前記閾値電圧を超える場合、一定値の出力信号を出力する第1比較回路と、前記振動センサが第2信号線に出力する第2電荷信号であって、前記第1電荷信号の反転信号である第2電荷信号から生成される第2電圧信号と、前記閾値電圧とを比較し、前記第2電圧信号が前記閾値電圧を超える場合、一定値の出力信号を出力する第2比較回路と、前記第1比較回路及び前記第2比較回路の各々が出力する前記出力信号に基づいて、前記第1信号線と、前記第2信号線とにおける断線状態を検出する信号処理部と、を備える。
【0016】
本開示に係る内燃機関の制御方法は、内燃機関に装着される振動センサが第1信号線に出力する第1電荷信号であって、前記振動センサが検出した振動の大きさを示す第1電荷信号から生成される第1電圧信号と、閾値電圧とを比較し、前記第1電圧信号が前記閾値電圧を超える場合、一定値の出力信号を出力する第1比較ステップと、前記振動センサが第2信号線に出力する第2電荷信号であって、前記第1電荷信号の反転信号である第2電荷信号から生成される第2電圧信号と、前記閾値電圧とを比較し、前記第2電圧信号が前記閾値電圧を超える場合、一定値の出力信号を出力する第2比較ステップと、前記第1比較ステップ及び前記第2比較ステップの各々において出力される前記出力信号に基づいて、前記第1信号線と、前記第2信号線とにおける断線状態を検出する信号処理ステップと、を含む。
【0017】
本開示に係るプログラムは、内燃機関に装着される振動センサが第1信号線に出力する第1電荷信号であって、前記振動センサが検出した振動の大きさを示す第1電荷信号から生成される第1電圧信号と、閾値電圧とを比較し、前記第1電圧信号が前記閾値電圧を超える場合、一定値の出力信号を出力する第1比較回路と、前記振動センサが第2信号線に出力する第2電荷信号であって、前記第1電荷信号の反転信号である第2電荷信号から生成される第2電圧信号と、前記閾値電圧とを比較し、前記第2電圧信号が前記閾値電圧を超える場合、一定値の出力信号を出力する第2比較回路と、を備える内燃機関の制御装置が備えるコンピュータを、前記第1比較回路及び前記第2比較回路の各々が出力する前記出力信号に基づいて、前記第1信号線と、前記第2信号線とにおける断線状態を検出する信号処理手段、として機能させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0018】
本開示の内燃機関の制御装置、内燃機関の制御方法、及びプログラムによれば、信号線の断線箇所、断線した信号線の本数、内燃機関が運用されている環境などに関わらず、各信号線の断線状態を精度よく判定することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本開示の第1の実施形態に係る内燃機関制御システムの構成例を示す概略ブロック図である。
【
図2】本開示の第1の実施形態に係るECUの回路構成例を示す図である。
【
図3】本開示の第1の実施形態に係るチャージアンプ回路の出力電圧信号と、フィルタ回路の出力電圧信号との一例を示す図である。
【
図4】本開示の第1の実施形態に係るチャージアンプ回路の出力電圧信号の一例を示す図である。
【
図5】本開示の第1の実施形態に係るフィルタ回路の出力電圧信号の一例を示す図である。
【
図6】本開示の第1の実施形態に係る断線判定区間を示すパルス信号の一例と、比較回路が出力するパルス信号の一例とを示す図である。
【
図7】本開示の第1の実施形態に係る信号処理部の内部構成例と、信号処理部と、比較回路及び差動増幅回路との接続関係を示す概略ブロック図である。
【
図8】本開示の第1の実施形態に係る信号線状態テーブルのデータ形式例を示す図である。
【
図9】本開示の第1の実施形態に係る許容カウンタ数テーブルのデータ形式例を示す図である。
【
図10】本開示の第1の実施形態に係る信号線の判定状態の状態遷移図である。
【
図11】本開示の第1の実施形態に係るカウンタ操作部の動作例を示すフローチャートである。
【
図12】本開示の第1の実施形態に係る判定処理部の動作例を示すフローチャートである。
【
図13】本開示の第2の実施形態に係る信号処理部の内部構成例と、信号処理部と、比較回路及び差動増幅回路との接続関係を示す概略ブロック図である。
【
図14】本開示の第2の実施形態に係る信号線の判定状態の状態遷移図である。
【
図15】本開示の第2の実施形態に係る事前判定部の動作例を示すフローチャートである。
【
図16】本開示の第2の実施形態に係るカウンタ操作部の動作例を示すフローチャートである。
【
図17】本開示の第2の実施形態に係る判定処理部の動作例を示すフローチャートである。
【
図18】本開示の各実施形態に係るコンピュータの構成を示す概略ブロック図である。
【
図19】ノックセンサが出力する電荷信号から振動の大きさを検出する回路構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本開示の実施形態に係る内燃機関の制御装置、内燃機関の制御方法、及びプログラムについて、
図1~
図18を参照して説明する。
図1は、本開示の第1の実施形態に係る内燃機関制御システム100の構成例を示す概略ブロック図である。
図2は、本開示の第1の実施形態に係るECU1の回路構成例を示す図である。
図3は、本開示の第1の実施形態に係るチャージアンプ回路10-1,10-2の出力電圧信号と、フィルタ回路21-1,21-2の出力電圧信号との一例を示す図である。
図4は、本開示の第1の実施形態に係るチャージアンプ回路10-1,10-2の出力電圧信号の一例を示す図である。
図5は、本開示の第1の実施形態に係るフィルタ回路21-1,21-2の出力電圧信号の一例を示す図である。
図6は、本開示の第1の実施形態に係る断線判定区間を示すパルス信号51の一例と、比較回路20-1,20-2が出力するパルス信号61の一例とを示す図である。
図7は、本開示の第1の実施形態に係る信号処理部40の内部構成例と、信号処理部40と、比較回路20-1,20-2及び差動増幅回路30との接続関係を示す概略ブロック図である。
図8は、本開示の第1の実施形態に係る信号線状態テーブル48のデータ形式例を示す図である。
図9は、本開示の第1の実施形態に係る許容カウンタ数テーブル49のデータ形式例を示す図である。
図10は、本開示の第1の実施形態に係る信号線6-1,6-2の判定状態の状態遷移図である。
図11は、本開示の第1の実施形態に係るカウンタ操作部44-1,44-2の動作例を示すフローチャートである。
図12は、本開示の第1の実施形態に係る判定処理部45-1,45-2の動作例を示すフローチャートである。
図13は、本開示の第2の実施形態に係る信号処理部40aの内部構成例と、信号処理部40aと、比較回路20-1,20-2及び差動増幅回路30との接続関係を示す概略ブロック図である。
図14は、本開示の第2の実施形態に係る信号線6-1,6-2の判定状態の状態遷移図である。
図15は、本開示の第2の実施形態に係る事前判定部46-1,46-2の動作例を示すフローチャートである。
図16は、本開示の第2の実施形態に係るカウンタ操作部44a-1,44a-2の動作例を示すフローチャートである。
図17は、本開示の第2の実施形態に係る判定処理部45a-1,45a-2の動作例を示すフローチャートである。
図18は、本開示の各実施形態に係るコンピュータ90の構成を示す概略ブロック図である。なお、各図において同一の構成には同一の符号を用いて説明を適宜省略する。
【0021】
<第1の実施形態>
(第1の実施形態の構成)
図1に示すように、内燃機関制御システム100は、ECU1、ノックセンサ2、内燃機関3、及びノックセンサ2と、ECU1とを接続する2本の信号線6-1,6-2とを備える。内燃機関3は、例えば、エンジンやガスタービンなどであり、内燃機関気筒4と、シリンダヘッド5とを備える。
【0022】
ノックセンサ2は、シリンダヘッド5に直接装着される。ノックセンサ2は、圧電素子を用いた振動センサであり、加速度センサと同様の原理によって振動を検出する。ノックセンサ2は、ノックセンサ信号として、検出した振動の大きさを示す2つの電荷信号を生成する。ここで、2つの電荷信号とは、一方の電荷信号のプラスとマイナスを反転させた反転信号が他方の電荷信号になっている電荷信号である。ノックセンサ2は、生成した一方の電荷信号を信号線6-1に出力し、生成した他方の電荷信号を信号線6-2に出力する。
【0023】
ECU1は、内燃機関3の制御装置である。ECU1は、信号線6-1,6-2を通じてノックセンサ2が出力した2つの電荷信号を取得し、取得した2つの電荷信号に基づいて、内燃機関3に発生している振動の程度を監視し、監視した結果に基づいて内燃機関3を制御する。また、ECU1は、取得した2つの電荷信号に基づいて、信号線6-1,6-2の断線状態を検出する。
【0024】
図2に示すように、ECU1は、チャージアンプ回路10-1,10-2、比較回路20-1、差動増幅回路30、抵抗器15、及び信号処理部40を備える。なお、
図2では、抵抗器15は、チャージアンプ回路10-1,10-2に含まれないように図示している。ただし、抵抗器15は、一方の端子で、GNDに接続し、他方の端子で2つのチャージアンプ回路10-1,10-2の非反転入力端子に接続し、チャージアンプ回路10-1,10-2の非反転入力端子に基準電圧を供給する。そのため、抵抗器15は、チャージアンプ回路10-1,10-2に共有される回路素子であり、チャージアンプ回路10-1,10-2の構成要素の1つとみなしてもよい。
【0025】
チャージアンプ回路10-1は、オペアンプ11-1、抵抗器12-1、及びコンデンサ13-1を備えており、オペアンプ11-1の反転入力端子に信号線6-1が接続する。抵抗器12-1、及びコンデンサ13-1は、オペアンプ11-1の反転入力端子と、出力端子とに並列に接続する。コンデンサ13-1によって、信号線6-1を通じて得られる微弱な電荷信号が蓄電されることにより増幅が行われ、電荷信号の大きさに比例した電圧信号が得られることになる。したがって、チャージアンプ回路10-1は、信号線6-1を通じて得られる電荷信号を、増幅すると共に当該電荷信号の大きさに比例した電圧信号に変換して出力端子から出力する。以下、チャージアンプ回路10-1が出力する電圧信号を電圧信号V1という。
【0026】
チャージアンプ回路10-2は、チャージアンプ回路10-1と同一の構成を有している。すなわち、オペアンプ11-2と、オペアンプ11-1とは、同一の特性であり、抵抗器12-2と、抵抗器12-1とは同一の抵抗値を有しており、コンデンサ13-2と、コンデンサ13-1とは、同一の静電容量を有している。オペアンプ11-2の反転入力端子には、信号線6-2が接続する。チャージアンプ回路10-2は、信号線6-2を通じて得られる電荷信号を、増幅すると共に当該電荷信号の大きさに比例した電圧信号に変換して出力端子から出力する。以下、チャージアンプ回路10-2が出力する電圧信号を電圧信号V2という。
【0027】
差動増幅回路30は、抵抗器32-1,32-2、オペアンプ33、及び入力処理回路34を備える。抵抗器32-1は、一方でチャージアンプ回路10-1の出力に接続し、他方でオペアンプ33の非反転入力端子に接続する。抵抗器32-2は、一方でチャージアンプ回路10-2の出力に接続し、他方でオペアンプ33の反転入力端子に接続する。なお、抵抗器32-1の抵抗値と、抵抗器32-2の抵抗値とは、異なっていてもよいし、同一であってもよい。オペアンプ33は、非反転入力端子から得られる電圧信号と、反転入力端子から得られる電圧信号との差動信号を生成すると共に、生成した差動信号を増幅して出力端子から出力する。入力処理回路34は、オペアンプ33が出力端子から出力する電圧信号の電圧値を、信号処理部40に適応する電圧値に変換して出力する。例えば、オペアンプ33が、5Vの電源電圧で動作しており、信号処理部40が、3.3Vの電源電圧で動作している場合、入力処理回路34は、最大5Vの電圧信号を、最大3.3Vの電圧信号に変換する回路になる。
【0028】
比較回路20-1は、フィルタ回路21-1、クリッパ回路22-1、コンパレータ25-1、抵抗器26-1,27-1,28-1、及び入力処理回路29-1を備える。フィルタ回路21-1は、チャージアンプ回路10-1の出力に接続し、チャージアンプ回路10-1が出力する電圧信号V1に重畳している低周波の電源ノイズを除去するハイパスフィルタによるフィルタリング処理を行う。
【0029】
クリッパ回路22-1は、ダイオード23-1,24-1を備えており、フィルタ回路21-1によってフィルタリングされた電圧信号V1のマイナス成分をカットする。クリッパ回路22-1において、マイナス成分をカットするのは、一方がGNDに接続するダイオード23-1であり、ダイオード24-1は、カソード端子に供給される電圧Vk以上のプラス成分をカットする。プラス成分がカットされないようにするため、電圧Vkの値は、フィルタ回路21-1が出力する電圧信号の最大値以上の値に予め設定される。
【0030】
抵抗器26-1の一方の端子に基準電圧Vrefが供給され、他方の端子に抵抗器27-1の一方の端子が接続し、抵抗器27-1の他方の端子は、GNDに接続する。これにより、抵抗器26-1,27-1によって、基準電圧Vrefが分圧され、抵抗器26-1,27-1の接続点において閾値電圧Vthが得られる。抵抗器28-1は、一方の端子にプルアップ用の電圧Vpが供給され、他方の端子にコンパレータ25-1の出力端子が接続する。入力処理回路29-1に供給される最大電圧値が、電圧Vpとみなすことができるように、抵抗器28-1として、入力処理回路29-1の入力インピーダンスに比べると、無視できる程度の非常に小さな抵抗値を有する抵抗器が適用される。
【0031】
コンパレータ25-1は、本体に電源電圧VCCが供給され、一方の入力端子にクリッパ回路22-1が接続し、他方の入力端子に抵抗器26-1,27-1の接続点が接続する。すなわち、コンパレータ25-1の一方の入力端子には、クリッパ回路22-1が出力する電圧信号が供給され、他方の入力端子には、閾値電圧Vthが供給される。コンパレータ25-1は、クリッパ回路22-1が出力する電圧信号が、閾値電圧Vthを超えている場合、出力をHighにし、クリッパ回路22-1が出力する電圧信号が、閾値電圧Vth以下である場合、出力をLowにする。
【0032】
したがって、抵抗器26-1,27-1の抵抗値は、閾値電圧Vthの電圧値が、断線判定区間において、断線が発生している場合にコンパレータ25-1が、Lowを出力し、断線が発生していない場合にHighを出力する電圧値の範囲になるように予め定められる。ここで、断線判定区間とは、上記したように、内燃機関3のサイクルにおける区間であって、電源ノイズの影響を受けにくい程度の大きさの振動が確実に発生する区間であり、例えば、バルブ着座時のクランク角区間である。なお、内燃機関3のサイクルとは、燃焼サイクルのことであり、1回の燃焼が発生する内燃機関の行程が、1サイクルになる。また、バルブ着座時とは、吸気バルブの着座時、すなわち、吸気バルブが閉じるタイミングであり、このタイミングにおいて、吸気バルブを閉じる際の機械的な動きによる振動が必ず発生する。
【0033】
これにより、コンパレータ25-1の出力がHighの場合、上記したように抵抗器28-1の抵抗値が、入力処理回路29-1の入力インピーダンスに比べて非常に小さいため、入力処理回路29-1に電圧Vpが供給される。また、コンパレータ25-1の出力がLowの場合、入力処理回路29-1には、0[V]が供給される。すなわち、入力処理回路29-1の入力端子には、電圧値がVp[V]か0[V]のいずれかであるパルス信号が供給されることになる。
【0034】
入力処理回路29-1は、入力処理回路34と同様に、入力端子において得られる電圧信号の電圧値を、信号処理部40に適応する電圧値に変換して出力する。したがって、比較回路20-1は、電源ノイズとマイナス成分とを除去した電圧信号V1から閾値電圧Vthを超える範囲を抽出し、抽出した範囲を矩形波の幅で示すパルス信号を生成する回路ということがいえる。なお、比較回路20-1において、基準電圧Vrefと、電圧Vpとが同一の電圧値であってもよいし、基準電圧Vrefと、電源電圧VCCとが同一の電圧値であってもよいし、電源電圧VCCと、電圧Vpとが同一の電圧値であってもよいし、電源電圧VCCと、基準電圧Vrefと、電圧Vpとが同一の電圧値であってもよい。
【0035】
比較回路20-2は、比較回路20-1と同一の構成を有している。すなわち、フィルタ回路21-2とフィルタ回路21-1、クリッパ回路22-2とクリッパ回路22-1、コンパレータ25-2とコンパレータ25-1、及び入力処理回路29-2と入力処理回路29-1は、それぞれ同一の特性である。抵抗器26-2と抵抗器26-1、抵抗器27-2と抵抗器27-1、及び抵抗器28-2と抵抗器28-1は、それぞれ同一の抵抗値を有している。
【0036】
信号処理部40は、比較回路20-1,20-2の各々が出力するパルス信号に基づいて、信号線6-1,6-2における断線状態を検出する。信号処理部40は、差動増幅回路30が出力する差動信号に基づいて、ノックセンサ2が検出した振動、すなわち内燃機関3の振動の大きさを検出する。信号処理部40は、検出した断線状態や振動の大きさに基づいて、内燃機関3に対して制御が必要であると判定した場合、図示しない内燃機関3に接続する制御信号線を通じて制御信号を内燃機関3に出力する。
【0037】
(第1の実施形態のチャージアンプ回路、及び比較回路の動作)
チャージアンプ回路10-1は、信号線6-1から電荷信号が供給されると、供給された電荷信号を電圧信号V
1に変換して出力する。
図3(a)に示す電圧信号波形が、電圧信号V
1の一例である。なお、
図3(a)において縦軸は、電圧の大きさを示す軸であり、横軸は、時間を示す軸である。なお、
図3(a)において、符号51で示す破線のパルス信号は、参考として示した断線判定区間を示すパルス信号(以下、パルス信号51という)であり、パルス信号51において、High状態の区間が断線判定区間を示すことになる。なお、パルス信号51は、チャージアンプ回路10-1が出力する信号ではなく、信号処理部40が、内燃機関3のサイクルにおけるバルブ着座時のクランク角区間、すなわち断線判定区間を検出して、パルス信号51に相当する信号を生成する。以下、
図3(b)、
図4(a),(b)、
図5(a),(b)においても縦軸と横軸は、
図3(a)と同様であり、破線で示すパルス信号51は、いずれも断線判定区間を示すパルス信号である。
【0038】
比較回路20-1のフィルタ回路21-1は、チャージアンプ回路10-1から電圧信号V
1が供給されると、供給された電圧信号V
1に対して、低周波の電源ノイズを除去するハイパスフィルタによるフィルタリング処理を行う。これにより、フィルタ回路21-1は、電圧信号V
1から低周波の電源ノイズを除去した、
図3(b)に示す電圧信号を出力する。
【0039】
チャージアンプ回路10-2は、チャージアンプ回路10-1と同様の動作を行い、比較回路20-2は、比較回路20-1と同様の動作を行うため、比較回路20-2のフィルタ回路21-2が出力する電圧信号は、
図3(b)に示す電圧信号においてプラスマイナスが反転した電圧信号になる。
【0040】
図3(a),(b)は、信号線6-1,6-2の両方が断線していない場合の例である。これに対して、信号線6-1が断線しており、信号線6-2が断線していない場合、断線している信号線6-1に接続するチャージアンプ回路10-1が出力する電圧信号V
1の波形は、
図4(a)に示す波形となる。なお、
図4(a)は、ノックセンサ2の入力端子の近くで信号線6-1に断線が発生している場合の例である。また、断線していない信号線6-2に接続するチャージアンプ回路10-2が出力する電圧信号V
2の波形は、
図4(b)に示す波形となる。
図4(a)に示されるように、断線している信号線6-1に接続するチャージアンプ回路10-1が出力する電圧信号V
1の振幅は、全体にわたって微小な値になる。
【0041】
フィルタ回路21-1が、
図4(a)に示す電圧信号V
1をフィルタリングすることにより、
図5(a)に示す電圧信号が得られる。
図5(a)に示すように、フィルタ回路21-1が出力する電圧信号は、全体にわたって、ほぼ0[V]になる。したがって、コンパレータ25-1に供給される閾値電圧V
thの値が、例えば、
図5(a)に示す電圧信号の最大値と予想される値以上の値になっていれば、入力処理回路29-1には、矩形波を含んだパルス信号ではなく、0[V]の電圧信号が供給され続ける状態になる。
【0042】
フィルタ回路21-2が、
図4(b)に示す電圧信号V
2をフィルタリングすることにより、
図5(b)に示す電圧信号が得られる。
図3(b)に示す電圧信号の振幅と、
図5(b)に示す電圧信号の振幅とを比較すると、以下のようになることが分かる。すなわち、信号線6-1,6-2の両方が断線していない場合に、フィルタ回路21-1,21-2が出力する電圧信号の振幅に比べると、信号線6-1,6-2のいずれか一方が断線している場合に、断線していない方に対応するフィルタ回路21-1,21-2が出力する電圧信号の振幅は小さくなる。つまり、信号線6-1,6-2の一方が断線すると、断線していない他方の電圧は、減衰する。
【0043】
したがって、コンパレータ25-1,25-2に供給される閾値電圧V
thは、信号線6-1,6-2の一方が断線している場合に、断線していない方に対応するクリッパ回路22-1,22-2が出力する電圧信号の振幅の大きさを考慮して定められる必要がある。より具体的に、閾値電圧V
thの設定条件を整理すると、以下のような2つの設定条件を定めることができる。第1の設定条件は、
図5(a)に示す電圧信号からマイナス成分が除去された電圧信号が供給された場合に、断線判定区間において、コンパレータ25-1,25-2が、常にLowを出力するという条件である。第2の設定条件は、
図5(b)の電圧信号からマイナス成分が除去された電圧信号の中で断線判定区間に存在する電圧信号の振幅値のうち、ノックセンサ2が検出する振動に対応する振幅値の場合に、コンパレータ25-1,25-2が、Highを出力するという条件である。
【0044】
上記の2つの設定条件にしたがって閾値電圧V
thを設定することにより、信号線6-1,6-2の両方が断線していない場合、及び、信号線6-1,6-2の一方が断線している場合に、断線していない信号線6-1,6-2に対応する比較回路20-1,20-2は、例えば、
図6の符号61で示すようなパルス信号(以下、パルス信号61という)を出力することになる。なお、
図6において、符号51で示す破線は、
図3(a)と同じく断線判定区間を示すパルス信号である。したがって、パルス信号51がHighの間、すなわち断線判定区間において、パルス信号61に含まれる矩形波が存在するか否かによって、信号線6-1,6-2の断線状態を判定することが可能になる。
【0045】
(第1の実施形態の信号処理部の構成)
図7に示すように、信号処理部40は、ハードウェアである構成要素またはハードウェアとソフトウェアとの組み合わせから構成される機能的構成要素として、内燃機関制御部41、記憶部42、及び信号線断線状態判定部43-1,43-2を備える。内燃機関制御部41は、内燃機関3と図示しない制御信号線によって接続される。内燃機関制御部41は、制御信号線を通じて得られる制御信号に基づいて、内燃機関気筒4におけるサイクルの状態を監視する。内燃機関制御部41は、例えば、クランク角を進角させたり、遅角させたりする制御信号を、制御信号線を通じて内燃機関3に出力する。内燃機関制御部41は、差動増幅回路30が出力する差動信号に基づいて、内燃機関3におけるノッキングの有無を監視する。内燃機関制御部41は、ノッキングの有無の監視結果に対応して内燃機関3に対して行う制御に関する制御信号を、制御信号線を通じて内燃機関3に出力する。内燃機関制御部41は、記憶部42に記憶されている信号線6-1,6-2が断線しているか否かを示す情報に対応して内燃機関3に対して行う制御に関する制御信号を、制御信号線を通じて内燃機関3に出力する。
【0046】
内燃機関制御部41は、内燃機関気筒4におけるサイクルの状態の監視に基づいて得られるバルブ着座時のクランク角区間、すなわち断線判定区間の開始を示す断線判定区間開始信号と、当該断線判定区間の終了を示す断線判定区間終了信号とを、信号線断線状態判定部43-1,43-2に出力する。例えば、
図3から
図6に示すパルス信号51のパルスの立ち上がりのタイミングが、内燃機関制御部41が、断線判定区間開始信号を出力するタイミングであり、パルス信号51のパルスの立ち下がりのタイミングが、内燃機関制御部41が、断線判定区間終了信号を出力するタイミングである。
【0047】
記憶部42は、
図8に示す信号線状態テーブル48と、
図9に示す許容カウンタ数テーブル49とを記憶する。信号線状態テーブル48は、「信号線種類」、「状態」の項目を有しており、「信号線種類」には、信号線6-1を示す「第1信号線」と、信号線6-2を示す「第2信号線」とが予め書き込まれる。「状態」の項目には、対応する「信号線種類」の信号線6-1,6-2が断線している場合、「断線状態」が書き込まれ、対応する「信号線種類」の信号線6-1,6-2が断線していない場合、「接続状態」が書き込まれる。なお、初期状態では、「状態」の項目は、いずれも「接続状態」が書き込まれる。
【0048】
許容カウンタ数テーブル49は、「状態」、「許容カウンタ数」の項目を有しており、「状態」の項目には、「接続状態」、または、「断線状態」のいずれかが予め書き込まれる。「許容カウンタ数」の項目には、対応する「状態」の項目が「接続状態」である場合、接続状態において適用される許容カウンタ数が予め書き込まれ、対応する「状態」の項目が「断線状態」である場合、断線状態において適用される許容カウンタ数が予め書き込まれる。以下、接続状態において適用される許容カウンタ数を、「接続状態許容カウンタ数」といい、断線状態において適用される許容カウンタ数を、「断線状態許容カウンタ数」という。
【0049】
信号線断線状態判定部43-1は、カウンタ操作部44-1と、判定処理部45-1とを備える。カウンタ操作部44-1は、比較回路20-1と、内燃機関制御部41とに接続する。カウンタ操作部44-1は、内燃機関3における連続した所定数のサイクルの各々における断線判定区間に、各々に対応する比較回路20-1が少なくとも1つの出力信号を出力しているサイクルの数をカウントする。ここで、出力信号とは、比較回路20-1が出力するパルス信号に含まれる矩形波の信号(以下、矩形信号という)である。判定処理部45-1は、カウンタ操作部44-1と、記憶部42とに接続する。判定処理部45-1は、カウンタ操作部44-1がカウントしたサイクルの数と、判定を行う際の信号線6-1の状態に対応する接続状態許容サイクル数、または、断線状態許容サイクル数とに基づいて信号線6-1が断線しているか否かを判定する。
【0050】
信号線断線状態判定部43-2は、カウンタ操作部44-2と、判定処理部45-2とを備える。カウンタ操作部44-2は、カウンタ操作部44-1と同一の構成を有しており、比較回路20-2と、内燃機関制御部41とに接続する。判定処理部45-2は、判定処理部45-1と同一の構成を有しており、カウンタ操作部44-2と、記憶部42とに接続する。
【0051】
(第1の実施形態における信号線の判定状態の状態遷移)
図10は、信号処理部40における信号線6-1,6-2の各々に対する判定状態の状態遷移図である。
図10に示すように、信号線6-1,6-2の各々の判定状態は、処理が開始された後、断線判定状態81になり、その後、断線判定状態81と断線解除判定状態82の間を遷移する。なお、この判定状態の状態遷移は、信号線6-1,6-2の各々において独立して生じるものであり、信号線6-1の判定状態と、信号線6-2の判定状態が、同一の判定状態になる場合もあれば、異なる判定状態になる場合もある。断線判定状態81とは、信号線6-1,6-2が接続状態であることを示しており、断線解除判定状態82とは、信号線6-1,6-2が断線状態であることを示している。
【0052】
以下、
図11及び
図12のフローチャートを参照しつつ、カウンタ操作部44-1,44-2、及び判定処理部45-1,45-2の処理について説明する。また、処理の過程において、
図10のいずれの判定状態に遷移するかを合わせて説明する。なお、信号線断線状態判定部43-1と、信号線断線状態判定部43-2とは、断線を判定する対象が、信号線6-1であるか、信号線6-2であるかの違いだけであり、それ以外については同様の動作を行うため、以下、信号線断線状態判定部43-1の動作について説明する。
【0053】
(第1の実施形態のカウンタ操作部の動作)
図11に示すように、カウンタ操作部44-1は起動すると、内部の記憶領域に設ける断線判定用カウンタと、サイクル数カウンタとを「0」に初期化する(Sa1)。カウンタ操作部44-1は、内燃機関制御部41から断線判定区間開始信号を受けるまで待機する(Sa2)。カウンタ操作部44-1は、内燃機関制御部41から断線判定区間開始信号を受けるとサイクル数カウンタの値を「1」増加させる(Sa3)。カウンタ操作部44-1は、比較回路20-1の出力を一定時間監視する。ここで、一定時間とは、例えば、1つの断線判定区間の平均的な時間長よりも短い時間である。
【0054】
カウンタ操作部44-1は、一定時間が経過すると、比較回路20-1から出力信号を取得したか否かを判定する(Sa5)。カウンタ操作部44-1は、比較回路20-1から出力信号を取得していると判定した場合(Sa5、Yes)、断線判定用カウンタの値を「1」増加させる(Sa6)。Sa6の処理の後、カウンタ操作部44-1は、処理をSa8の処理に進める。
【0055】
一方、カウンタ操作部44-1は、比較回路20-1から出力信号を取得していないと判定した場合(Sa5、No)、内燃機関制御部41から断線判定区間終了信号を受けているか否かを判定する(Sa7)。なお、カウンタ操作部44-1は、内燃機関制御部41が出力する断線判定区間開始信号、及び断線判定区間終了信号を受けた順に蓄積するキュー方式のバッファを内部に備えている。
【0056】
カウンタ操作部44-1は、内部のバッファを参照して、内燃機関制御部41から断線判定区間終了信号を受けていないと判定したとする(Sa7、No)。この場合、カウンタ操作部44-1は、再び、Sa4以降の処理を行う。一方、カウンタ操作部44-1は、内部のバッファを参照して、内燃機関制御部41から断線判定区間終了信号を受けていると判定したとする(Sa7、Yes)。この場合、カウンタ操作部44-1は、処理をSa8の処理に進める。
【0057】
Sa8の処理において、カウンタ操作部44-1は、サイクル数カウンタの値が、予め定められる所定数に一致するか否かを判定する(Sa8)。ここで、所定数は、2以上の整数値であり、例えば、「100」程度の値が予め定められる。カウンタ操作部44-1は、サイクル数カウンタの値が、所定数に一致していないと判定した場合(Sa8、No)、再びSa2以降の処理を行う。一方、カウンタ操作部44-1は、サイクル数カウンタの値が、所定数に一致すると判定した場合(Sa8、Yes)、断線判定用カウンタの値を判定処理部45-1に出力し(Sa9)、再び、Sa1の処理を行う。
【0058】
例えば、内燃機関制御部41が出力する断線判定区間開始信号と、断線判定区間終了信号とによって示される断線判定区間が、
図6に示す断線判定区間55-1,55-2,55-3,…,55-nであるとする。なお、断線判定区間は、吸気バルブの着座時のクランク角区間であるため、1サイクルに1つ存在する。そのため、
図6には、内燃機関3のnサイクルが示されていることになる。また、比較回路20-1が出力するパルス信号が、
図6のパルス信号61であるとする。この場合、断線判定区間55-1には、比較回路20-1が出力する出力信号、すなわちパルス信号61に含まれる矩形信号として、出力信号61-1,61-2,61-3の3つが存在する。したがって、カウンタ操作部44-1は、Sa6の処理において、断線判定用カウンタの値を「1」増加させる。ここで、留意すべき点は、1つの断線判定区間55-1に、3つの出力信号61-1,61-2,61-3が存在していても、断線判定用カウンタの値を1しか増加させない点である。このようにすることで、出力信号が少なくとも1つ含むサイクルの数をカウントすることができることになる。
【0059】
また、Sa4の処理における一定時間が、例えば、出力信号61-1~61-3の全てを取得することができるような時間長である場合、カウンタ操作部44-1は、Sa5の判定処理の際に、3つの出力信号61-1,61-2,61-3を取得することになる。これに対して、Sa4の処理における一定時間が、例えば、出力信号61-1のみを取得する時間長である場合、カウンタ操作部44-1は、Sa5の判定処理の際に、1つの出力信号61-1のみを取得することになる。いずれの場合であっても、Sa5の処理では、カウンタ操作部44-1は、出力信号の個数に関わらず、比較回路20-1から少なくとも1つの出力信号を取得しているか否かを判定するため、Sa5の判定結果に違いはない。そのため、Sa4の処理において参照する一定時間は、1つの断線判定区間の平均的な時間長よりも短い時間であって、1つの出力信号の取得が見込まれる程度の短時間であることが、処理負荷の軽減の観点で望ましい。
【0060】
図6において、出力信号61-4は、いずれの断線判定区間55-1~55-nにも含まれていないため、断線判定用カウンタによるカウントの対象にはならない。断線判定区間55-2には、1つの出力信号61-5が存在するので、カウンタ操作部44-1は、Sa6の処理において、断線判定用カウンタの値を「1」増加させる。断線判定区間55-3には、出力信号が存在しないため、断線判定用カウンタによるカウントの対象にはならない。断線判定区間55-nには、2つの出力信号6-(m-1),6-mが存在するので、カウンタ操作部44-1は、Sa6の処理において、断線判定用カウンタの値を「1」増加させる。
【0061】
これにより、カウンタ操作部44-1が、Sa9の処理において出力する断線判定用カウンタの値は、少なくとも1つの出力信号を含むサイクルの数を示すことになる。
【0062】
(第1の実施形態の判定処理部の動作)
上記したように、記憶部42の信号線状態テーブル48の「状態」の項目は、初期状態では、いずれも「接続状態」である。したがって、
図12に示す判定処理部45-1による処理が、1度も行われていない状態では、信号線状態テーブル48の「状態」の項目は、いずれも「接続状態」になっている。この場合、信号線6-1の判定状態は、
図10に示す状態遷移図において、断線判定状態81になる。
【0063】
判定処理部45-1は、カウンタ操作部44-1から断線判定用カウンタの値を受けると起動する。判定処理部45-1は、カウンタ操作部44-1が出力する断線判定用カウンタの値を取り込む(Sb1)。判定処理部45-1は、自らに対応する信号線である信号線6-1、すなわち第1信号線の状態を、記憶部42の信号線状態テーブル48から読み出す(Sb2)。ここでは、判定処理部45-1は、信号線6-1の状態として「接続状態」を読み出すことになる。判定処理部45-1は、読み出した信号線6-1の状態に対応する許容カウンタ数を、記憶部42の許容カウンタ数テーブル49から読み出す(Sb3)。ここでは、判定処理部45-1は、「接続状態」に対応する接続状態許容カウンタ数を読み出すことになる。
【0064】
判定処理部45-1は、Sb1の処理で取り込んだ断線判定用カウンタの値が、読み出した接続状態許容カウンタ数以上であるか否かを判定する(Sb4)。判定処理部45-1は、断線判定用カウンタの値が、接続状態許容カウンタ数以上であると判定したとする(Sb4、Yes)。この場合、断線判定区間、すなわちバルブ着座時のクランク角区間において通常発生する振動が生じており、信号線6-1が接続しているとみなして、判定処理部45-1は、記憶部42の信号線状態テーブル48の信号線6-1に対応する第1信号線の「状態」の項目を「接続状態」に書き換える(Sb5)。なお、ここでは、第1信号線の「状態」の項目は、書き換えられる前も、書き換え後も「接続状態」である。そのため、信号線6-1の判定状態は、
図10に示す状態遷移図において、断線判定状態81に維持される。
【0065】
一方、判定処理部45-1は、断線判定用カウンタの値が、接続状態許容カウンタ数以上でないと判定したとする(Sb4、No)。この場合、断線判定区間において通常発生する振動が生じていないことから、信号線6-1が断線しているとみなして、判定処理部45-1は、記憶部42の信号線状態テーブル48の信号線6-1に対応する第1信号線の「状態」の項目を「断線状態」に書き換える(Sb6)。なお、ここでは、第1信号線の「状態」の項目は、「接続状態」から「断線状態」に書き換えられることになる。そのため、信号線6-1の判定状態は、
図10に示す状態遷移図において、断線判定状態81から断線解除判定状態82に遷移する。例えば、内燃機関制御部41は、信号線状態テーブル48の第1信号線の「状態」が、「接続状態」から「断線状態」に書き換えられたことを検出すると、信号線6-1が断線していることを外部に通知したり、内燃機関3に対して断線時に行う保護動作を開始させる制御信号を、制御信号線を通じて内燃機関3に出力したりする。
【0066】
Sb5,Sb6の処理の後、判定処理部45-1は、処理を終了し、カウンタ操作部44-1から次の断線判定用カウンタの値を受けるのを待機する。
【0067】
例えば、Sb6の処理を経由することにより、信号線6-1の状態が「断線状態」になっており、信号線6-1の判定状態が、断線解除判定状態82になっているとする。この状態で、判定処理部45-1が、再び、カウンタ操作部44-1から断線判定用カウンタの値を受けると、Sb1からSb3の処理が行われる。Sb2の処理において、判定処理部45-1は、信号線6-1の状態として「断線状態」を読み出す。Sb3の処理において、判定処理部45-1は、断線状態許容カウンタ数を読み出す。ここで、Sb4の処理において、判定処理部45-1が、断線判定用カウンタの値が、断線状態許容カウンタ数以上であると判定したとする。この場合、Sb5の処理が行われ、判定処理部45-1は、信号線状態テーブル48において、信号線6-1の状態を「断線状態」から「接続状態」に書き換える。そのため、信号線6-1の判定状態は、
図10に示す状態遷移図において、断線解除判定状態82から断線判定状態81に遷移する。例えば、内燃機関制御部41は、信号線状態テーブル48の第1信号線の「状態」が、「断線状態」から「接続状態」に書き換えられたことを検出すると、信号線6-1の断線が回復したことを外部に通知したり、内燃機関3に保護動作をさせている場合は、保護動作を終了させる制御信号を、制御信号線を通じて内燃機関3に出力したりする。
【0068】
一方、Sb4の処理において、判定処理部45-1が、断線判定用カウンタの値が、断線状態許容カウンタ数以上でないと判定したとする。この場合、Sb6の処理が行われ、判定処理部45-1は、信号線状態テーブル48において、信号線6-1の状態を「断線状態」に書き換える。ただし、ここでは、第1信号線の「状態」の項目は、書き換えられる前も、書き換えられた後も「断線状態」になる。そのため、信号線6-1の判定状態は、
図10に示す状態遷移図において、断線解除判定状態82に維持される。
【0069】
なお、信号線断線状態判定部43-2については、上記の
図11、
図12の処理において、カウンタ操作部44-1をカウンタ操作部44-2に読み替え、判定処理部45-1を判定処理部45-2に読み替え、比較回路20-1を比較回路20-2に読み替え、信号線6-1を信号線6-2に読み替え、第1信号線を第2信号線に読み替えた処理が行われる。
【0070】
(第1の実施形態の構成による作用・効果)
第1の実施形態では、ECU1が備える比較回路20-1、より詳細には、フィルタ回路21-1、クリッパ回路22-1、コンパレータ25-1、抵抗器26-1~28-1によって構成される回路により、電圧信号V1からパルス信号を生成する。このパルス信号は、信号線6-1,6-2の断線箇所の違い、信号線6-1,6-2の断線本数の違い、内燃機関3が運用される環境の違いなどによって、電圧信号V1において生じる波形の変化を考慮してスクリーニングし、Vp[V]と0[V]という2つの値で振動の有無を表す信号になる。より詳細には、スクリーニングとは、フィルタ回路21-1による低周波の電源ノイズの除去、クリッパ回路22-1によるマイナス成分の除去、コンパレータ25-1及び抵抗器26-1~28-1による閾値電圧Vthを用いた閾値判定に基づく波形整形を行うことである。
【0071】
当該波形整形により生成されたパルス信号に含まれる矩形信号は、信号線6-1が断線しているか否かをノックセンサ2が検出した振動に基づいて判定する際の精度の良い指標になる。この制度の良い指標である矩形信号を用いることにより、振動の有無を誤検出するリスクを低減すると共に、振動の検出漏れを防ぐことができる。このことは、ECU1が備える比較回路20-2においても同様であり、比較回路20-2が生成するパルス信号に含まれる矩形信号は、信号線6-2が断線しているか否かをノックセンサ2が検出した振動に基づいて判定する際の精度の良い指標になる。すなわち、第1の実施形態の構成では、差動信号を用いずに、信号線6-1に対応する比較回路20-1と、信号線6-2に対応する比較回路20-2とを備えて、信号線6-1,6-2の各々に対して独立に断線しているか否かを判定するようになっており、上記した、差動信号に起因する課題を解決するようにしている。したがって、信号線6-1,6-2の断線箇所、断線した信号線6-1,6-2の本数、内燃機関3が運用されている環境などに関わらず、信号線6-1,6-2の断線状態を精度よく判定することが可能になる。
【0072】
信号処理部40の信号線断線状態判定部43-1,43-2の各々は、各々に対応する比較回路20-1,20-2が出力する出力信号、すなわち、パルス信号に含まれる矩形信号を、断線判定区間において少なくとも1つ含むサイクルが、連続した所定数のサイクルにおいて幾つ存在するかによって、各々に対応する信号線6-1,6-2が断線しているか否かを判定する。このように連続した所定数のサイクルの各々の断線判定区間において矩形信号の有無を判定するようにしているのは、内燃機関3の振動が一定した挙動ではないことに起因している。言い換えると、1つのサイクルの断線判定区間において矩形信号の有無を判定するだけでは、断線状態を誤って判定してしまう可能性がある。そのため、信号処理部40の信号線断線状態判定部43-1,43-2によって、連続した所定数のサイクルの各々の断線判定区間において矩形信号の有無を判定することにより、精度のよい断線判定を行うことが可能になる。
【0073】
なお、上記では、所定数として、2以上の整数であって、例えば、「100」程度の値としている。所定数を大きくすればするほど、信号線6-1,6-2が断線しているか否かを判定する精度は高くなるが、大きくし過ぎると、判定に要する時間が長くなる。そのため、所定数は、信号線断線状態判定部43-1,43-2による判定時間が、実用的な時間になる程度に設定されることが望ましい。
【0074】
図19を参照して説明した差動信号の二乗平均値を「断線値」として断線の判定を行う手法では、信号線6-1,6-2のどちらが断線しているのかを特定することができなかった。これに対して、第1の実施形態では、信号線6-1に対して比較回路20-1と、信号線断線状態判定部43-1とを備え、信号線6-2に対して比較回路20-2と、信号線断線状態判定部43-2とを備えるようにしている。そのため、第1の実施形態のECU1では、信号線6-1,6-2のどちらが断線しているのかまで特定することができる。
【0075】
信号線6-1,6-2の断線を電気的に検知しようとする場合、例えば、ノックセンサ2の入力端子にプルダウン抵抗などを挿入したり、信号線6-1,6-2の経路上に検知用の回路を挿入したりする手法も考えれる。ただし、これらの手法を採用した場合、ノックセンサ2の出力インピーダンスとの整合が取れず、微弱な信号であるノックセンサ2の出力信号、すなわち電荷信号の特性が変化してしまう恐れがある。これに対して、第1の実施形態では、新たに備える比較回路20-1,20-2を、チャージアンプ回路10-1,10-2の後段に備えるようにしているので、ノックセンサ2が出力する電荷信号の特性に影響を与えずに、信号線6-1,6-2の断線を検出することができる。
【0076】
図12のSb4の判定において採用する許容サイクル数を、「接続状態」と「断線状態」とによって異なる値になるようにしているのは、以下のような理由である。例えば、内燃機関3の始動時や内燃機関3に対して一時的に大きな負荷が加わった際に、内燃機関3が不安定状態になる。この不安定状態において、ノックセンサ2が、断線判定区間、すなわちバルブ着座時のクランク角区間において、安定状態の場合よりも少ない頻度で振動を検出してしまうような場合も想定される。この場合、信号線6-1が接続状態であるのにも関わらず、カウンタ操作部44-1が、比較回路20-1から出力信号を受ける頻度が低下する。そのため、判定処理部45-1は、信号線状態テーブル48の第1信号線の状態を「接続状態」から「断線状態」に書き換えてしまい、信号線6-1の判定状態が、断線判定状態81から断線解除判定状態82に遷移してしまう場合がある。
【0077】
断線解除判定状態82になると、上記したように、内燃機関制御部41が内燃機関3に対して保護動作を開始させるようなこともある。この場合に、Sb4の判定において、1つの許容カウンタ数を用いていると、保護動作の状態では、断線判定用カウンタの値が許容サイクル数以上に増加するまで、長時間を要してしまう恐れがある。そこで、上記のように、接続状態と断線状態の各々に対応する許容カウンタ数を定め、断線状態許容カウンタ数を、接続状態許容カウンタ数よりも小さな値としておく。これは、言い換えると、断線解除判定状態82の場合に、信号線6-1が断線しているか否かを判定する閾値レベルを下げることになる。このようにすることで、比較回路20-1の出力信号を含むサイクルの数が少なくても、断線解除判定状態82から断線判定状態81に遷移させることが可能になる。その結果、Sb4の判定において、1つの許容カウンタ数を用いる場合よりも、迅速に、内燃機関制御部41が内燃機関3の保護動作を停止させて、内燃機関3を正常な動作を行う安定状態に戻すことが可能になる。なお、信号線6-1が実際に断線している場合には、断線判定用カウンタの値が大きくならないので、断線判定用カウンタの値が断線状態許容カウンタ数以上にならず、断線解除判定状態82が継続されることになる。
【0078】
ただし、断線状態許容カウンタ数を小さくし過ぎてしまうと、断線判定状態81と、断線解除判定状態82との間の状態遷移が頻繁に発生する恐れがあったり、信号線6-1が実際に断線しているのに断線判定状態81に遷移させてしまったりする不具合が生じることになる。そのため、このような不具合が起こらないように、断線状態許容カウンタ数を、適切な値に定める必要がある。なお、上記した断線状態許容カウンタ数を、接続状態許容カウンタ数よりも小さくするというのは一例であり、接続状態許容カウンタ数と、断線状態許容カウンタ数とを同一の値にしてもよく、断線状態許容カウンタ数を、接続状態許容カウンタ数よりも大きな値としてもよい。
【0079】
<第2の実施形態>
(第2の実施形態の構成)
第2の実施形態の構成は、
図2に示すECU1において、信号処理部40が、
図13に示す信号処理部40aに置き換えられる以外の構成については、第1の実施形態と同一の構成である。なお、以下では、信号処理部40に替えて信号処理部40aを備えるECU1を、説明の便宜上、ECU1aという。また、第2の実施形態において、第1の実施形態と同一の構成については、同一の符号を付している。信号処理部40aは、内燃機関制御部41a、記憶部42、信号線断線状態判定部43a-1,43a-2、及び事前判定部46-1,46-2を備える。
【0080】
事前判定部46-1,46-2を新たに備えることにより、第2の実施形態では、信号線6-1,6-2の判定状態は、
図14に示す状態遷移を行う。なお、
図14に示す判定状態の状態遷移も、
図10と同様に、信号線6-1,6-2の各々において独立して生じるものであり、信号線6-1の判定状態と、信号線6-2の判定状態とが、同一の判定状態になる場合もあれば、異なる判定状態になる場合もある。
【0081】
図14において、事前判定状態83は、信号線6-1,6-2が接続状態であることを示している。断線判定状態81aは、信号線6-1,6-2が接続状態であるが、事前判定部46-1,46-2の判定結果としては、信号線6-1,6-2が断線している可能性があるという状態を示している。断線解除判定状態82aは、信号線6-1,6-2が断線状態であることを示している。
【0082】
事前判定部46-1,46-2の各々は、1つの断線判定区間、すなわち1サイクルの断線判定区間において、各々に対応する比較回路20-1,20-2が出力信号を出力した回数をカウントすることを、断線判定区間ごとに行う。事前判定部46-1,46-2の各々は、1つの断線判定区間においてカウントした回数と、予め定められる閾値とに基づいて、各々に対応する信号線断線状態判定部43a-1,43a-2を動作させるか否かを判定する。
【0083】
カウンタ操作部44a-1,44a-2の各々は、第1の実施形態のカウンタ操作部44-1,44-2に対して、上記した第2の実施形態において追加される状態遷移を行う構成が追加された構成になる。判定処理部45a-1,45a-2の各々は、第1の実施形態の判定処理部45-1,45-2に対して、上記した第2の実施形態において追加される状態遷移を行う構成が追加された構成になる。
【0084】
内燃機関制御部41aは、第1の実施形態の内燃機関制御部41に対して、以下に示す構成が追加された構成を備える。内燃機関制御部41aは、起動時に事前判定部46-1,46-2に処理開始信号を出力する構成を備える。内燃機関制御部41aは、断線判定区間開始信号及び断線判定区間終了信号を事前判定部46-1,46-2に出力する構成を備える。
【0085】
以下、
図15から
図17のフローチャートを参照しつつ、事前判定部46-1,46-2、カウンタ操作部44a-1,44a-2、及び判定処理部45a-1,45a-2の処理について説明する。また、処理の過程において、
図14のいずれの状態に遷移するかを合わせて説明する。なお、事前判定部46-1と信号線断線状態判定部43a-1を組み合わせた構成と、事前判定部46-2と信号線断線状態判定部43a-2を組み合わせた構成とは、断線を判定する対象が、信号線6-1であるか、信号線6-2であるかの違いだけであり、それ以外については同様の動作を行うため、以下、事前判定部46-1と、信号線断線状態判定部43a-1の動作について説明する。
【0086】
(第2の実施形態の事前判定部の動作)
事前判定部46-1は、処理開始信号を受けると起動する。ここで、処理開始信号は、信号処理部40aの起動時、すなわちECU1aの起動時に内燃機関制御部41aが出力する場合と、判定処理部45a-1が処理の過程において出力する場合とがある。ここでは、信号処理部40aが起動して、内燃機関制御部41aが処理開始信号を事前判定部46-1に出力する場合について説明する。事前判定部46-1は、内燃機関制御部41aが出力する処理開始信号を取り込む(Sc1)。これにより、
図14に示す信号線6-1の判定状態は、事前判定状態83になる。なお、記憶部42の信号線状態テーブル48の「状態」の項目は、初期状態では、いずれも「接続状態」である。
【0087】
事前判定部46-1は、内部の記憶領域に設ける区間内判定用カウンタを「0」に初期化する(Sc2)。事前判定部46-1は、内燃機関制御部41aから断線判定区間開始信号を受けるまで待機する(Sc3)。事前判定部46-1は、断線判定区間開始信号を受けると、比較回路20-1の出力を一定時間監視する。ここで、一定時間とは、例えば、1つの断線判定区間の平均的な時間長よりも短い時間であって、1つの出力信号の取得が見込まれる程度の短時間である。
【0088】
事前判定部46-1は、一定時間が経過すると、比較回路20-1から出力信号を取得したか否かを判定する(Sc5)。事前判定部46-1は、比較回路20-1から出力信号を取得していると判定した場合(Sc5、Yes)、区間内判定用カウンタの値を、取得した出力信号の個数分増加させる(Sc6)。Sc6の処理の後、事前判定部46-1は、処理をSc7の処理に進める。一方、事前判定部46-1は、比較回路20-1から出力信号を取得していないと判定した場合(Sc5、No)、処理をSc7の処理に進める。
【0089】
事前判定部46-1は、内燃機関制御部41aから断線判定区間終了信号を受けているか否かを判定する(Sc7)。なお、事前判定部46-1は、内燃機関制御部41aが出力する断線判定区間開始信号、及び断線判定区間終了信号を受けた順に蓄積するキュー方式のバッファを内部に備えている。事前判定部46-1は、内部のバッファを参照して、内燃機関制御部41aから断線判定区間終了信号を受けていないと判定したとする(Sc7、No)。この場合、事前判定部46-1は、再び、Sc4の処理を行う。
【0090】
一方、事前判定部46-1は、内部のバッファを参照して、内燃機関制御部41aから断線判定区間終了信号を受けていると判定したとする(Sc7、Yes)。この場合、事前判定部46-1は、次に、区間内判定用カウンタの値が、予め定められる閾値以上であるか否かを判定する(Sc8)。ここで、事前判定部46-1が、Sc7の処理において「Yes」の判定をした時点で、区間内判定用カウンタが示す値は、1つの断線判定区間において比較回路20-1が出力信号を出力した回数を示すことになる。
【0091】
例えば、内燃機関制御部41aが出力する1組の断線判定区間開始信号と、断線判定区間終了信号とによって示される断線判定区間が、
図6に示す断線判定区間55-1であるとする。この場合、断線判定区間55-1には、出力信号61-1,61-2,61-3が存在する。そのため、事前判定部46-1が、断線判定区間55-1に対してSc8の処理を行う際の区間内判定用カウンタの値は「3」になる。
【0092】
事前判定部46-1は、区間内判定用カウンタの値が、閾値以上であると判定した場合(Sc8、Yes)、再び、Sc2以降の処理を行う。一方、事前判定部46-1は、区間内判定用カウンタの値が、閾値以上でないと判定した場合(Sc8、No)、カウンタ操作部44a-1に処理開始信号を出力し(Sc9)、処理を終了する。なお、Sc8の処理において、事前判定部46-1が「Yes」の判定をした場合、
図14の状態遷移図において、信号線6-1の判定状態は、事前判定状態83に維持される。一方、Sc8の処理において、事前判定部46-1が「No」の判定をした場合、
図14の状態遷移図において、信号線6-1の判定状態は、事前判定状態83から断線判定状態81aに遷移する。
【0093】
上記のSc8の処理における閾値として、任意の正の整数値を適用するようにしてもよい。例えば、閾値として「1」を適用した場合、1つの断線判定区間において、比較回路20-1が出力信号を1つも出力していない場合、事前判定部46-1は、Sc8の処理において「No」の判定をすることになる。比較回路20-1が出力信号を1つも出力していない状態とは、信号線6-1が断線している可能性が高い状態であると推定される。そのため、この場合、信号線6-1の判定状態を、事前判定状態83から断線判定状態81aに状態遷移させて、信号線断線状態判定部43a-1に、信号線6-1が接続状態であるか、または、断線状態であるかを判定させることになる。
【0094】
(第2の実施形態のカウンタ操作部の動作)
カウンタ操作部44a-1は、事前判定部46-1から処理開始信号を受けると起動する。カウンタ操作部44a-1は、処理開始信号を取り込む(Sd1)。カウンタ操作部44a-1は、内部の記憶領域に設ける断線判定用カウンタと、サイクル数カウンタとを「0」に初期化する(Sd2)。カウンタ操作部44a-1は、信号処理部40aの他の機能部から信号を受けるまで待機する(Sd3)。なお、カウンタ操作部44a-1は、信号処理部40aの他の機能部が出力する信号を受けた順に蓄積するキュー方式のバッファを備えているものとする。
【0095】
カウンタ操作部44a-1は、信号処理部40aの他の機能部から信号を受けた場合、すなわち内部のバッファに信号が蓄積された場合、当該信号の種類を判定する(Sd4)。カウンタ操作部44a-1は、受けた信号の種類が、「強制終了信号」であると判定した場合(Sd4、強制終了信号)、処理を終了する。なお、強制終了信号は、判定処理部45a-1が出力する信号である。カウンタ操作部44a-1は、受けた信号の種類が、強制終了信号、及び断線判定区間開始信号以外の「その他の信号」であると判定した場合(Sd4、その他)、再び、Sd3の処理を行う。
【0096】
カウンタ操作部44a-1は、受けた信号の種類が、「断線判定区間開始信号」であると判定した場合(Sd4、断線判定区間開始信号)、処理をSd5の処理に進める。Sd5~Sd8の処理は、それぞれ、
図11に示す第1の実施形態のカウンタ操作部44-1によるSa3~Sa6の処理と同一の処理が、カウンタ操作部44a-1によって行われる。ただし、Sd8の処理の後、処理は、Sd11の処理に進められる。
【0097】
カウンタ操作部44a-1は、Sd7の処理において「No」の判定をした場合、信号処理部40aの他の機能部から信号を受けているか否かを判定する(Sd9)。カウンタ操作部44a-1は、信号処理部40aの他の機能部から信号を受けていないと判定した場合(Sd9、No)、再び、Sd6の処理を行う。一方、カウンタ操作部44a-1は、信号処理部40aの他の機能部から信号を受けていると判定した場合(Sd9、Yes)、Sd4の処理と同様に、受けた信号の種類を判定する(Sd10)。
【0098】
カウンタ操作部44a-1は、受けた信号の種類が、「強制終了信号」であると判定した場合(Sd10、強制終了信号)、処理を終了する。カウンタ操作部44a-1は、受けた信号の種類が、強制終了信号、及び断線判定区間開始信号以外の「その他の信号」であると判定した場合(Sd10、その他)、再び、Sd6の処理を行う。
【0099】
カウンタ操作部44a-1は、受けた信号の種類が、「断線判定区間終了信号」であると判定した場合(Sd10、断線判定区間終了信号)、処理を、Sd11の処理に進める。Sd11,Sd12の処理は、
図11に示す第1の実施形態のカウンタ操作部44-1によるSa8,Sa9の処理と同一の処理が、カウンタ操作部44a-1によって行われる。ただし、Sd11の処理において「No」の判定がされた場合、処理は、Sd3の処理に進められ、Sd12の処理の後、処理は、Sd2の処理に進められる。
【0100】
(第2の実施形態の判定処理部の動作)
判定処理部45a-1は、カウンタ操作部44a-1から断線判定用カウンタの値を受けると起動する。Se1~Se4の処理は、それぞれ、
図12に示す第1の実施形態の判定処理部45-1によるSb1~Sb4の処理と同一の処理が、判定処理部45a-1によって行われる。
【0101】
判定処理部45a-1が、Se4の処理において「Yes」の判定を行った場合(Se4、Yes)、判定処理部45a-1は、記憶部42の信号線状態テーブル48の信号線6-1、すなわち第1信号線の「状態」を「接続状態」に書き換える(Se5)。この場合に、第1信号線の「状態」の項目が、書き換えられる前に「接続状態」である場合、Se5の処理による「接続状態」への書き換えによって、信号線6-1の判定状態は、
図14に示す状態遷移図において、断線判定状態81aから事前判定状態83に遷移する。
【0102】
そのため、判定処理部45a-1は、カウンタ操作部44a-1に強制終了信号を出力する(Se6)。カウンタ操作部44a-1は、判定処理部45a-1から強制終了信号を受けると、
図16のSd4、または、Sd10の処理において、受けた信号の種類を「強制終了信号」であると判定して、処理を終了する。判定処理部45a-1は、処理開始信号を事前判定部46-1に出力し、事前判定部46-1に、
図15に示す処理を開始させる(Se7)。
【0103】
これに対して、第1信号線の「状態」の項目が、書き換えられる前に「断線状態」である場合、Se5の処理による「接続状態」への書き換えによって、信号線6-1の判定状態は、
図14に示す状態遷移図において、断線解除判定状態82aから事前判定状態83に遷移する。この場合も同様に、Se6,Se7の処理により、カウンタ操作部44a-1に処理を終了させて、事前判定部46-1に処理を開始させる。
【0104】
なお、Se5,Se6,Se7の処理は、Se5,Se6,Se7の順で行われてもよいし、Se5,Se6,Se7の順を任意に入れ替えた順番で行われてもよい。
【0105】
一方、判定処理部45a-1が、Se4の処理において「No」の判定を行った場合(Se4、No)、判定処理部45a-1は、記憶部42の信号線状態テーブル48の信号線6-1、すなわち第1信号線の「状態」を「断線状態」に書き換える(Se8)。この場合において、第1信号線の「状態」の項目が、書き換えられる前に「接続状態」である場合、Se8の処理による「断線状態」への書き換えによって、信号線6-1の判定状態は、
図14に示す状態遷移図において、断線判定状態81aから断線解除判定状態82aに遷移する。
【0106】
これに対して、第1信号線の「状態」の項目が、書き換えられる前に「断線状態」である場合、Se8の処理による「断線状態」への書き換えによって、信号線6-1の判定状態は、
図14に示す状態遷移図において、断線解除判定状態82aに維持される。
【0107】
なお、事前判定部46-2、信号線断線状態判定部43a-2については、上記の
図15、
図16、
図17の処理において、事前判定部46-1を事前判定部46-2に読み替え、カウンタ操作部44a-1をカウンタ操作部44a-2に読み替え、判定処理部45a-1を判定処理部45a-2に読み替え、比較回路20-1を比較回路20-2に読み替え、信号線6-1を信号線6-2に読み替え、第1信号線を第2信号線に読み替えた処理が行われる。
【0108】
(第2の実施形態の構成による作用・効果)
第2の実施形態のECU1aにより、上記した第1の実施形態のECU1と同様の作用効果が得られる。更に、第2の実施形態のECU1aが備える信号処理部40aの構成では、信号線6-1,6-2の判定状態として、
図14に示す事前判定状態83が追加されている。この事前判定状態83が追加されることにより、第2の実施形態の信号処理部40aは、以下のような点で、第1の実施形態の信号処理部40とは異なる作用効果がある。
【0109】
第1の実施形態では、カウンタ操作部44-1,44-2が終了することなく動作し、カウンタ操作部44-1,44-2が動作する途中で、判定処理部45-1,45-2が並列して動作する。ところで、信号線6-1,6-2の状態は、ほとんど接続状態であり、断線状態になる頻度は、接続状態の時間に比べると、非常に短い時間である。このような信号線6-1,6-2の状態のことを考慮すると、第1の実施形態の信号処理部40による処理は、負荷が大きく、また、カウンタ操作部44-1,44-2が動作することにより、カウンタ用の記憶容量として、断線判定用カウンタと、サイクル数カウンタの2つのカウンタ用の記憶容量も必要になる。
【0110】
これに対して、第2の実施形態の信号処理部40aでは、事前判定状態83を設けたことにより、信号線6-1,6-2が接続状態である間は、事前判定部46-1,46-2のみが動作することになり、第1の実施形態の信号処理部40に比べると処理の負荷が少なくなる。また、事前判定部46-1,46-2が動作する際には、区間内判定用カウンタという1つのカウンタの記憶容量を確保すればよいため、第1の実施形態のカウンタ操作部44-1,44-2に比べると、使用する記憶容量を削減することができるという利点がある。
【0111】
(第1及び第2の実施形態の他の構成例)
第1及び第2の実施形態では、信号処理部40,40aを備えて、
図11、
図12、
図15、
図16、
図17に示す処理を行うことにより、信号線6-1,6-2が断線しているか否かを判定するようにしている。これに対して、信号処理部40,40aに替えて、断線判定区間ごとに、比較回路20-1,20-2が出力する出力信号が少なくとも1つ存在するか否か、または、予め定められる複数の数の出力信号が存在するか否かに基づいて、信号線6-1,6-2が断線しているか否かを判定する信号処理部を備えるようにしてもよい。このような信号処理部を用いる場合、信号処理部40,40aに比べて、断線判定に関する精度は低下するが、信号処理部40,40aに比べて、簡易な処理によって信号線6-1,6-2が断線しているか否かを判定することが可能になる。
【0112】
第1及び第2の実施形態では、
図12のSb4、
図15のSc8、
図17のSe4に示す処理において、等号付き不等号を用いた判定処理を行っている。しかしながら、本開示は、当該実施の形態に限られるものではなく、「以上であるか否か」という判定処理は一例に過ぎず、閾値の定め方に応じて、「超過するか否か」という判定処理に置き換えられてもよい。
【0113】
以上、本開示の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施の形態に限られるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【0114】
(コンピュータ構成)
図18は、上記の第1及び第2の実施形態に係る信号処理部40,40aの各々を実現するコンピュータの構成を示す概略ブロック図である。コンピュータ90は、プロセッサ91、メインメモリ92、ストレージ93、及びインタフェース94を備える。上記の信号処理部40,40aが備える内燃機関制御部41,41a、記憶部42、カウンタ操作部44-1,44-2,44a-1,44a-2、判定処理部45-1,45-2,45a-1,45a-2、及び事前判定部46-1,46-2は、コンピュータ90に実装される。これらの機能部の動作は、プログラムの形式でストレージ93に記憶される。プロセッサ91は、プログラムをストレージ93から読み出してメインメモリ92に展開し、当該プログラムに従って
図11、
図12、
図15、
図16、
図17に示す処理を実行する。また、プロセッサ91は、プログラムに従って、記憶部42に対応する記憶領域をメインメモリ92に確保する。また、インタフェース94には、比較回路20-1,20-2、及び差動増幅回路30が接続し、プロセッサ91は、インタフェース94を介して、比較回路20-1,20-2が出力するパルス信号、及び差動増幅回路30が出力する差動信号を取り込む。
【0115】
プログラムは、コンピュータ90に発揮させる機能の一部を実現するためのものであってもよい。例えば、プログラムは、ストレージに既に記憶されている他のプログラムとの組み合わせ、または他の装置に実装された他のプログラムとの組み合わせによって機能を発揮させるものであってもよい。なお、他の実施形態においては、コンピュータは、上記構成に加えて、または上記構成に代えてPLD(Programmable Logic Device)などのカスタムLSI(Large Scale Integrated Circuit)を備えてもよい。PLDの例としては、PAL(Programmable Array Logic)、GAL(Generic Array Logic)、CPLD(Complex Programmable Logic Device)、FPGA(Field Programmable Gate Array)等が挙げられる。この場合、プロセッサによって実現される機能の一部または全部が当該集積回路によって実現されてよい。
【0116】
ストレージ93の例としては、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)、DVD-ROM(Digital Versatile Disc Read Only Memory)、半導体メモリ等が挙げられる。ストレージ93は、コンピュータ90のバスに直接接続された内部メディアであってもよいし、インタフェース94または通信回線を介してコンピュータ90に接続される外部メディアであってもよい。また、このプログラムが通信回線によってコンピュータ90に配信される場合、配信を受けたコンピュータ90が当該プログラムをメインメモリ92に展開し、上記処理を実行してもよい。また、ストレージ93は、一時的でない有形の記憶媒体である。
【0117】
<付記>
各実施形態に記載の内燃機関3の制御装置であるECU1,1aは、例えば以下のように把握される。
【0118】
(1)第1の態様に係る内燃機関(例えば、内燃機関3)の制御装置(例えば、ECU1,1a)は、内燃機関に装着される振動センサ(例えば、ノックセンサ2)が第1信号線(例えば、信号線6-1)に出力する第1電荷信号であって、前記振動センサが検出した振動の大きさを示す第1電荷信号から生成される第1電圧信号と、閾値電圧(例えば、閾値電圧Vth)とを比較し、前記第1電圧信号が前記閾値電圧を超える場合、一定値の出力信号を出力する第1比較回路(例えば、比較回路20-1)と、前記振動センサが第2信号線(例えば、信号線6-2)に出力する第2電荷信号であって、前記第1電荷信号の反転信号である第2電荷信号から生成される第2電圧信号と、前記閾値電圧とを比較し、前記第2電圧信号が前記閾値電圧を超える場合、一定値の出力信号を出力する第2比較回路(例えば、比較回路20-2)と、前記第1比較回路及び前記第2比較回路の各々が出力する前記出力信号に基づいて、前記第1信号線と、前記第2信号線とにおける断線状態を検出する信号処理部(例えば、信号処理部40,40a)と、を備える。本態様によれば、信号線6-1,6-2の断線箇所、断線した信号線6-1,6-2の本数、内燃機関3が運用されている環境などに関わらず、各信号線6-1,6-2の断線状態を精度よく判定することが可能になる。
【0119】
(2)第2の態様に係る内燃機関の制御装置は、(1)の内燃機関の制御装置であって、前記第1比較回路、及び前記第2比較回路の各々は、前記閾値電圧と、比較対象の電圧信号とを比較するコンパレータ(例えば、コンパレータ25-1,25-2)と、前記コンパレータによる前記閾値電圧との比較の前に、前記比較対象の電圧信号から電源ノイズを除去するフィルタ回路(例えば、フィルタ回路21-1,21-2)と、を備える。本態様によれば、電源ノイズを除去することにより、断線判定の精度を高めることができる。
【0120】
(3)第3の態様に係る内燃機関の制御装置は、(2)の内燃機関の制御装置であって、前記第1比較回路、及び前記第2比較回路の各々は、前記コンパレータによる前記閾値電圧との比較の前に、前記フィルタ回路によって電源ノイズが除去された電圧信号からマイナス成分を除去するクリッパ回路(例えば、クリッパ回路22-1,22-2)を備える。本態様によれば、マイナス成分を除去することにより、断線判定の精度を高めることができる。
【0121】
(4)第4の態様に係る内燃機関の制御装置は、(2)または(3)の内燃機関の制御装置であって、前記第1信号線に接続し、前記第1電荷信号から前記第1比較回路が備える前記フィルタ回路に供給する電圧信号を生成する第1チャージアンプ回路(例えば、チャージアンプ回路10-1)と、前記第2信号線に接続し、前記第2電荷信号から前記第2比較回路が備える前記フィルタ回路に供給する電圧信号を生成する第2チャージアンプ回路(例えば、チャージアンプ回路10-2)と、を備える。本態様によれば、微弱な電荷信号を、増幅すると共に電荷信号の大きさに比例した電圧信号に変換することができる。
【0122】
(5)第5の態様に係る内燃機関の制御装置は、(1)の内燃機関の制御装置であって、前記信号処理部は、前記内燃機関における連続した所定数のサイクルの各々における断線判定区間に、前記第1比較回路が少なくとも1つの前記出力信号を出力しているサイクルの数をカウントし、カウントしたサイクルの数と、許容サイクル数とに基づいて、前記第1信号線が断線しているか否かを判定する判定処理を行う第1信号線断線状態判定部(例えば、信号線断線状態判定部43-1,43a-1)と、連続した前記所定数のサイクルの各々における断線判定区間に、前記第2比較回路が少なくとも1つの前記出力信号を出力しているサイクルの数をカウントし、カウントしたサイクルの数と、前記許容サイクル数とに基づいて、前記第2信号線が断線しているか否かを判定する判定処理を行う第2信号線断線状態判定部(例えば、信号線断線状態判定部43-2,43a-2)と、を備える。本態様によれば、例えば、内燃機関3の振動が一定した挙動ではない場合に、各信号線6-1,6-2の断線状態を精度よく判定することが可能になる。
【0123】
(6)第6の態様に係る内燃機関の制御装置は、(5)の内燃機関の制御装置であって、前記信号処理部は、前記内燃機関の1サイクルにおける断線判定区間に、前記第1比較回路が前記出力信号を出力した回数をカウントする区間内カウント操作処理を行い、当該1サイクルにおいてカウントした回数と、予め定められる閾値とに基づいて、前記第1信号線断線状態判定部(例えば、信号線断線状態判定部43a-1)に判定処理を開始させるか否かを判定し、前記第1信号線断線状態判定部に判定処理を開始させる場合、自らは停止し、前記第1信号線断線状態判定部に判定処理を開始させない場合、次のサイクルに対する前記区間内カウント操作処理を行う第1事前判定部(例えば、事前判定部46-1)と、前記内燃機関の1サイクルにおける断線判定区間に、前記第2比較回路が前記出力信号を出力した回数をカウントする区間内カウント操作処理を行い、当該1サイクルにおいてカウントした回数と、予め定められる閾値とに基づいて、前記第2信号線断線状態判定部(例えば、信号線断線状態判定部43a-2)に判定処理を開始させるか否かを判定し、前記第2信号線断線状態判定部に判定処理を開始させる場合、自らは停止し、前記第2信号線断線状態判定部に判定処理を開始させない場合、次のサイクルに対する前記区間内カウント操作処理を行う第2事前判定部(例えば、事前判定部46-2)と、を備え、前記第1信号線断線状態判定部は、前記第1信号線の状態が断線していない状態であると判定した場合、前記第1事前判定部に前記区間内カウント操作処理を開始させて、自らは停止し、前記第2信号線断線状態判定部は、前記第2信号線の状態が断線していない状態であると判定した場合、前記第2事前判定部に前記区間内カウント操作処理を開始させて、自らは停止する。本態様によれば、例えば、信号線6-1,6-2が、断線している場合、または、断線している可能性がある場合のみ、信号線断線状態判定部43a-1,43a-2が判定処理を行い、信号線6-1,6-2が安定した接続状態にある場合は、事前判定部46-1,46-2が処理を行うので、負荷を軽減できると共に、カウンタの記憶容量を削減することができる。
【0124】
(7)第7の態様に係る内燃機関の制御装置は、(5)または(6)の内燃機関の制御装置であって、前記第1信号線断線状態判定部と前記第2信号線断線状態判定部の各々は、各々に対応する信号線の状態が断線している状態の場合に用いる前記許容サイクル数と、各々に対応する信号線の状態が断線していない状態の場合に用いる前記許容サイクル数とを同一数とするか、または、異なる数とする。本態様によれば、例えば、断線している場合と、断線していない場合とで、異なる許容サイクル数を用いることにより、内燃機関3の始動時や内燃機関3に対して一時的に大きな負荷が加わった際に、信号線6-1,6-2が断線していないにも関わらず、断線していると判定されたとしても、迅速に、信号線6-1,6-2が、断線していないと判定される本来の状態に戻すことができる。
【符号の説明】
【0125】
1 ECU
2 ノックセンサ
3 内燃機関
4 内燃機関気筒
5 シリンダヘッド
6-1,6-2 信号線
10-1,10-2 チャージアンプ回路
11-1,11-2 オペアンプ
12-1,12-2,15 抵抗器
13-1,13-2 コンデンサ
20-1,20-2 比較回路
21-1,21-2 フィルタ回路
22-1,22-2 クリッパ回路
23-1,23-2,24-1,24-2 ダイオード
25-1,25-2 コンパレータ
26-1,26-2,27-1,27-2,28-1,28-2 抵抗器
29-1,29-2 入力処理回路
30 差動増幅回路
32-1,32-2 抵抗器
33 オペアンプ
34 入力処理回路
40 信号処理部
41 内燃機関制御部
42 記憶部
43-1,43-2 信号線断線状態判定部
44-1,44-2 カウンタ操作部
45-1,45-2 判定処理部
46-1,46-2 事前判定部
100 内燃機関制御システム