(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024007726
(43)【公開日】2024-01-19
(54)【発明の名称】電池モジュール
(51)【国際特許分類】
H01M 50/271 20210101AFI20240112BHJP
H01M 50/273 20210101ALI20240112BHJP
H01M 50/55 20210101ALI20240112BHJP
H01M 50/342 20210101ALI20240112BHJP
【FI】
H01M50/271 Z
H01M50/273
H01M50/55 101
H01M50/271 S
H01M50/342 201
H01M50/342 101
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022108991
(22)【出願日】2022-07-06
(71)【出願人】
【識別番号】520184767
【氏名又は名称】プライムプラネットエナジー&ソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】稲村 卓思
(72)【発明者】
【氏名】蔭山 崇俊
(72)【発明者】
【氏名】江頭 拓也
【テーマコード(参考)】
5H012
5H040
5H043
【Fターム(参考)】
5H012DD05
5H012JJ10
5H040AA18
5H040AA20
5H040AS07
5H040AT02
5H040CC05
5H040NN03
5H043AA04
5H043AA13
5H043BA15
5H043BA17
5H043BA19
5H043CA04
5H043GA23
5H043LA21D
5H043LA34D
(57)【要約】
【課題】電池セルからの噴出物に起因する電気的短絡を抑制することが可能な電池モジュールを提供する。
【解決手段】第1方向に配列された複数の電池セルと、複数の電池セルの上に設けられたカバー部材とを備える。複数の電池セルの各々は、ガス排出弁を有する筐体と、筐体上に設けられた電極端子とを含む。カバー部材は、第1領域と、第1領域よりも強度が低い第2領域とを含む。第1領域は、少なくとも1つの電極端子上に位置する。第2領域は、少なくとも1つのガス排出弁上に位置する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向に配列された複数の電池セルと、
前記複数の電池セルの上に設けられたカバー部材とを備え、
前記複数の電池セルの各々は、ガス排出弁を有する筐体と、前記筐体上に設けられた電極端子とを含み、
前記カバー部材は、第1領域と、前記第1領域よりも強度が低い第2領域とを含み、
前記第1領域は、少なくとも1つの前記電極端子上に位置し、
前記第2領域は、少なくとも1つの前記ガス排出弁上に位置する、電池モジュール。
【請求項2】
前記第2領域は、少なくとも複数の前記ガス排出弁上に位置するように前記第1方向に延在する、請求項1に記載の電池モジュール。
【請求項3】
前記第2領域は、前記カバー部材に形成された切り欠き部、薄肉部、または溝部を含む、請求項1または請求項2に記載の電池モジュール。
【請求項4】
前記第2領域は、前記カバー部材の空洞に脱着可能な蓋を設けることにより形成される、請求項1または請求項2に記載の電池モジュール。
【請求項5】
前記第2領域は、前記カバー部材の前記第2領域を前記第1領域に対して相対的に強度の低い素材で構成することによって形成される、請求項1または請求項2に記載の電池モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、電池モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
電池モジュールを構成する電池セルの外装缶内の圧力が上昇したとき、外装缶の一部を開放して内部のガスを排出する技術が従来から知られている。同様に、電池パックのケース内の圧力が上昇したとき、パックケースの一部を開放して内部のガスを排出する技術も従来から知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012-104471号公報
【特許文献2】特開2014-041841号公報
【特許文献3】特開2014-060165号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
複数の電池セルの上にカバー部材が設けられる構造を有する電池モジュールにおいて、電池セルの外装缶内の圧力の上昇に伴って外装缶の一部が開放されたとき、外装缶内から噴出するガスによりカバー部材が吹き飛ばされると、バスバー、電圧検出線などが露出する。外装缶内からの金属を含む噴出物が露出したバスバー、電圧検出線などに付着した場合、電気的短絡が生じ得る。
【0005】
本技術の目的は、電池セルからの噴出物に起因する電気的短絡を抑制することが可能な電池モジュールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本技術は、以下の電池モジュールを提供する。
[1]第1方向に配列された複数の電池セルと、複数の電池セルの上に設けられたカバー部材とを備え、複数の電池セルの各々は、ガス排出弁を有する筐体と、筐体上に設けられた電極端子とを含み、カバー部材は、第1領域と、第1領域よりも強度が低い第2領域とを含み、第1領域は、少なくとも1つの電極端子上に位置し、第2領域は、少なくとも1つのガス排出弁上に位置する、電池モジュール。
【0007】
[2]第2領域は、少なくとも複数のガス排出弁上に位置するように第1方向に延在する、[1]に記載の電池モジュール。
【0008】
[3]第2領域は、カバー部材に形成された切り欠き部、薄肉部、または溝部を含む、[1]または[2]に記載の電池モジュール。
【0009】
[4]第2領域は、カバー部材の空洞に脱着可能な蓋を設けることにより形成される、[1]または[2]に記載の電池モジュール。
【0010】
[5]第2領域は、カバー部材の第2領域を第1領域に対して相対的に強度の低い素材で構成することによって形成される、[1]または[2]に記載の電池モジュール。
【発明の効果】
【0011】
本技術によれば、複数の電池セルの上に設けられたカバー部材において、相対的に強度が低い第2領域をガス排出弁上に設けることにより、ガス排出時において、第2領域に位置するカバー部材を選択的に破壊させることができ、電極端子上に位置する第1領域を保護することができる。この結果、電池セルからの噴出物に起因する電気的短絡を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】電池モジュールの基本的構成を示す図である。
【
図3】電池モジュール上に配線モジュールを設けた状態を示す斜視図である。
【
図5】電池セルからガスが排出される状態を模式的に示す図である。
【
図6】プレート部材の第2領域の周辺を模式的に示す図である。
【
図9】プレート部材の第2領域のさらなる変形例を示す断面図(その1)である。
【
図10】プレート部材の第2領域のさらなる変形例を示す断面図(その2)である。
【
図11】プレート部材の第2領域のさらなる変形例を示す断面図(その3)である。
【
図12】プレート部材の第2領域のさらなる変形例を示す断面図(その4)である。
【
図13】プレート部材の第2領域のさらなる変形例を示す断面図(その5)である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本技術の実施の形態について説明する。なお、同一または相当する部分に同一の参照符号を付し、その説明を繰返さない場合がある。
【0014】
なお、以下に説明する実施の形態において、個数、量などに言及する場合、特に記載がある場合を除き、本技術の範囲は必ずしもその個数、量などに限定されない。また、以下の実施の形態において、各々の構成要素は、特に記載がある場合を除き、本技術にとって必ずしも必須のものではない。また、本技術は、本実施の形態において言及する作用効果を必ずしもすべて奏するものに限定されない。
【0015】
なお、本明細書において、「備える(comprise)」および「含む(include)」、「有する(have)」の記載は、オープンエンド形式である。すなわち、ある構成を含む場合に、当該構成以外の他の構成を含んでもよいし、含まなくてもよい。
【0016】
また、本明細書において幾何学的な文言および位置・方向関係を表す文言、たとえば「平行」、「直交」、「斜め45°」、「同軸」、「沿って」などの文言が用いられる場合、それらの文言は、製造誤差ないし若干の変動を許容する。本明細書において「上側」、「下側」などの相対的な位置関係を表す文言が用いられる場合、それらの文言は、1つの状態における相対的な位置関係を示すものとして用いられるものであり、各機構の設置方向(たとえば機構全体を上下反転させる等)により、相対的な位置関係は反転ないし任意の角度に回動し得る。
【0017】
本明細書において、「電池」は、リチウムイオン電池に限定されず、ニッケル水素電池およびナトリウムイオン電池などの他の電池を含み得る。本明細書において、「電極」は正極および負極を総称し得る。また、「電極板」は正極板および負極板を総称し得る。
【0018】
本明細書において、「電池セル」は、ハイブリッド車(HEV:Hybrid Electric Vehicle)、プラグインハイブリッド車(PHEV:Plug-in Hybrid Electric Vehicle)、および電気自動車(BEV:Battery Electric Vehicle)などに搭載可能である。ただし、「電池セル」の用途は、車載用に限定されるものではない。
【0019】
図1は、組電池1の基本的構成を示す図である。
図1に示すように、組電池1は、電池セル100と、エンドプレート200と、拘束部材300とを備える。
【0020】
複数の電池セル100は、Y軸方向(第1方向)に並ぶように設けられる。これにより、電池セル100の積層体が形成される。電池セル100は、電極端子110を含む。複数の電池セル100の間には、図示しないセパレータが介装されている。2つのエンドプレート200に挟持された複数の電池セル100は、エンドプレート200によって押圧され、2つのエンドプレート200の間で拘束されている。
【0021】
エンドプレート200は、Y軸方向において組電池1の両端に配置されている。エンドプレート200は、組電池1を収納するケースなどの基台に固定される。拘束部材300は、2つのエンドプレート200を互いに接続する。
【0022】
複数の電池セル100およびエンドプレート200の積層体に対してY軸方向の圧縮力を作用させた状態で拘束部材300をエンドプレート200に固定し、その後に圧縮力を解放することにより、2つのエンドプレート200を接続する拘束部材300に引張力が働く。その反作用として、拘束部材300は、2つのエンドプレート200を互いに近づける方向に押圧する。
【0023】
図2は、電池セル100を示す斜視図である。
図2に示すように、電池セル100は、角型形状を有する。電池セル100は、電極端子110と、筐体120(外装缶)とを有する。すなわち、電池セル100は角型二次電池セルである。
【0024】
電極端子110は、筐体120上に形成されている。電極端子110は、Y軸方向(第1の方向)に直交するX軸方向(第2方向)に沿って並ぶ正極端子111および負極端子112を有する。正極端子111および負極端子112は、X軸方向において、互いに離れて設けられている。
【0025】
筐体120は、直方体形状を有し、電池セル100の外観をなす。筐体120は、図示しない電極体および電解液を収容するケース本体120Aと、ケース本体120Aの開口を封止する封口板120Bとを含む。封口板120Bは、溶接によりケース本体120Aに接合される。
【0026】
筐体120は、上面121と、下面122と、第1側面123と、第2側面124と、2つの第3側面125とを有する。筐体120には、ガス排出弁126が設けられている。
【0027】
上面121は、Y軸方向およびX軸方向に直交するZ軸方向(第3方向)に直交する平面である。上面121には、電極端子110が配置されている。下面122は、Z軸方向に沿って上面121に対向している。
【0028】
第1側面123および第2側面124の各側面は、Y軸方向に直交する平面からなる。第1側面123および第2側面124の各側面は、筐体120が有する複数の側面のうちで最も大きい面積を有する。第1側面123および第2側面124の各側面は、Y軸方向に見て、矩形形状を有する。第1側面123および第2側面124の各側面は、Y軸方向に見て、X軸方向が長手方向となり、Z軸方向が短手方向となる矩形形状を有する。
【0029】
複数の電池セル100は、Y軸方向に隣り合う電池セル100,100の間において、第1側面123どうし、第2側面124どうしが向かい合わせとなるように積層されている。これにより、複数の電池セル100が積層されるY軸方向において、正極端子111と負極端子112とが、交互に並んでいる。
【0030】
ガス排出弁126は、上面121に設けられている。ガス排出弁126は、電池セル100の温度が上昇し(熱暴走)、筐体120の内部で発生したガスにより筐体120の内圧が所定値以上となった場合に、そのガスを筐体120の外部に排出する。
【0031】
図3は、組電池1上に配線モジュールを設けた状態を示す斜視図である。
図3に示すように、組電池1上にプレート部材400が載置され、プレート部材400上にフレキシブルプリント基板500が設けられる。フレキシブルプリント基板500はコネクタ600を介して外部機器と電気的に接続可能である。プレート部材400上には、フレキシブルプリント基板500を覆うようにカバー部材700が設けられる。なお、フレキシブルプリント基板500に代えて、電線やフレキシブルフラットケーブル(FFC)を電圧検出線として用いてもよい。
【0032】
図4は、電池モジュールの上面図である。
図4に示すように、複数の電池セル100の上に設けられたカバー部材700は、第1領域710と、第2領域720とを含む。
【0033】
第1領域710は、複数の電極端子110上に位置するようにY軸方向に延在する。第1領域710は、少なくとも1つの電極端子110上に位置するように形成されればよい。
【0034】
第2領域は、複数のガス排出弁126上に位置するようにY軸方向に延在する。第2領域720は、少なくとも1つのガス排出弁126上に位置するように形成されればよい。第2領域720は、第1領域710よりも強度が低くなるように形成される。
【0035】
図5は、電池セル100からガスが排出される状態を模式的に示す図である。
図5に示すように、電池セル100の筐体120の内圧上昇に伴ってガス排出弁126が開放されたとき、ガス排出弁126から噴出するガスによりカバー部材700が吹き飛ばされると、バスバー、電圧検出線などの活電部材が露出する。筐体120内からの金属を含む噴出物が活電部材に付着した場合、電気的短絡が生じ得る。これらの活電部材は、電池セル100の電極端子110と電気的に接続されるため、X軸方向(第2方向)の中心から離間した位置にある。
【0036】
これに対し、本実施の形態に係る電池モジュールにおいては、複数の電池セル100の上に設けられたカバー部材700において、相対的に強度が低い第2領域720がガス排出弁126上に設けられている。したがって、ガス排出弁126からガスが噴出するとき、ガス排出弁126上に位置するカバー部材700の第2領域720を選択的に破壊させることができる。この結果、電極端子110上に位置する第1領域710を保護することができる、つまり第1領域710を活電部材上に維持できる。よって、電池セル100からの噴出物が活電部材に付着することに起因する電気的短絡を抑制することができる。
【0037】
図6は、第2領域720の周辺を模式的に示す図である。
図6に示す例では、カバー部材700は、ガス排出弁126の上部領域を取り囲むように形成された切り欠き部721を有する。これにより、ガス排出弁126からのガスの噴出時に第2領域720を選択的に破壊させ、カバー部材の第1領域710を保護している。
【0038】
図7は、第2領域720の変形例を示す斜視図である。
図8は、
図7に示す第2領域720を示す断面図である。
図7、
図8の変形例では、カバー部材700に略円形の溝部722を形成することにより、ガス排出弁126からのガスの噴出時に第2領域720を選択的に破壊させ、カバー部材の第1領域710を保護している。
【0039】
図9から
図13は、第2領域420のさらなる変形例を示す断面図である。
図9,
図10に示すように、カバー部材700の一部に薄肉部723を形成することによって第2領域720が構成されてもよいし、
図11に示すように、
図8とは異なる断面形状の溝部722を形成することによって第2領域720が構成されてもよい。
【0040】
図12に示すように、たとえば樹脂、ゴム等の他の素材からなる別部品724(蓋)をカバー部材700の孔部に脱着可能に設けることによって第2領域720が形成されてもよいし、
図13に示すように、たとえばテープ、ネット等の他の素材からなる別部品725をカバー部材700に設けられた孔部に取り付けることによって第2領域720が形成されてもよい。
【0041】
また、第2領域720は、カバー部材700の第2領域720を第1領域710に対して相対的に強度の低い素材で構成することによって形成されてもよい。
【0042】
以上、本技術の実施の形態について説明したが、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本技術の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0043】
1 組電池、100 電池セル、110 電極端子、111 正極端子、112 負極端子、120 筐体、120A ケース本体、120B 封口板、121 上面、122 下面、123 第1側面、124 第2側面、125 第3側面、126 ガス排出弁、200 エンドプレート、300 拘束部材、400 プレート部材、420 第2領域、500 フレキシブルプリント基板、600 コネクタ、700 カバー部材、710 第1領域、720 第2領域、721 切欠き部、722 溝部、723 薄肉部、724,725 別部品。
【手続補正書】
【提出日】2023-07-11
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0012
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0012】
【
図1】電池モジュールの基本的構成を示す図である。
【
図3】電池モジュール上に配線モジュールを設けた状態を示す斜視図である。
【
図5】電池セルからガスが排出される状態を模式的に示す図である。
【
図6】
カバー部材の第2領域の周辺を模式的に示す図である。
【
図9】
カバー部材の第2領域のさらなる変形例を示す断面図(その1)である。
【
図10】
カバー部材の第2領域のさらなる変形例を示す断面図(その2)である。
【
図11】
カバー部材の第2領域のさらなる変形例を示す断面図(その3)である。
【
図12】
カバー部材の第2領域のさらなる変形例を示す断面図(その4)である。
【
図13】
カバー部材の第2領域のさらなる変形例を示す断面図(その5)である。