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特開2024-77279舗装層の再生工法とそれによって得られる再生舗装層
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024077279
(43)【公開日】2024-06-07
(54)【発明の名称】舗装層の再生工法とそれによって得られる再生舗装層
(51)【国際特許分類】
   E01C 23/00 20060101AFI20240531BHJP
【FI】
E01C23/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022189271
(22)【出願日】2022-11-28
(71)【出願人】
【識別番号】507194017
【氏名又は名称】株式会社高速道路総合技術研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000233653
【氏名又は名称】ニチレキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003074
【氏名又は名称】弁理士法人須磨特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹林 宏樹
(72)【発明者】
【氏名】飯高 裕之
(72)【発明者】
【氏名】馬場 弘毅
(72)【発明者】
【氏名】平岡 富雄
(72)【発明者】
【氏名】山本 孝洋
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼内 大
【テーマコード(参考)】
2D053
【Fターム(参考)】
2D053AA02
2D053AA05
2D053AA08
2D053AA15
2D053AD01
2D053AD03
(57)【要約】
【課題】 施工対象となる既設舗装が水分過剰と思われる状態にあるときにも、十分な締め固め性と重機走行性を確保して、再生舗装層を構築することができる舗装層の再生工法と、それによって得られる再生舗装層を提供することを課題とする。
【解決手段】 既設舗装の一部を再生骨材として使用する舗装層の再生工法であって、使用する前記再生骨材の含水比が目標とする含水比を上回るとき、吸水性材料を添加して、前記再生骨材が含む水分の質量から前記吸水性材料が吸収する水分の質量を除いて求められる前記再生骨材の見掛けの含水比を前記目標とする含水比と一致させる工程を含む舗装層の再生工法と、それによって得られる再生舗装層を提供することによって上記課題を解決する。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
既設舗装の一部を再生骨材として使用する舗装層の再生工法であって、
使用する前記再生骨材の含水比が目標とする含水比を上回るとき、吸水性材料を添加して、前記再生骨材が含む水分の質量から前記吸水性材料が吸収する水分の質量を除いて求められる前記再生骨材の見掛けの含水比を前記目標とする含水比と一致させる工程を含む舗装層の再生工法。
【請求項2】
ローラ転圧による締固め工程を含む、請求項1記載の舗装層の再生工法。
【請求項3】
前記吸水性材料が、吸水性を有する無機系の粒状材料及び/又は吸水性を有する有機系の材料である請求項1又は2記載の舗装層の再生工法。
【請求項4】
前記吸水性を有する無機系の粒状材料が、珪藻土焼成セラミック、ゼオライト、メサライト、パーライト、ガラス発泡軽量材、焼成フライアッシュなどの多孔質セラミックスから選ばれる1種又は2種以上の粒状材料である請求項3記載の舗装層の再生工法。
【請求項5】
前記吸水性を有する有機系の材料が、ポリアクリル酸塩系、ポリスルホン酸塩系、無水マレイン酸塩系、ポリアクリルアミド系、ポリビニルアルコール系、ポリエチレンオキシド系、又はポリアミン系の人工ポリマー、又は、ポリアスパラギン酸塩系、ポリグルタミン酸塩系、ポリアルギン酸塩系、デンプン系、セルロース系、又はポリグリコール系の天然ポリマーから選ばれる1種又は2種以上である請求項3記載の舗装層の再生工法。
【請求項6】
再生される舗装層が、表層、基層、又は路盤層である請求項1又は2記載の舗装層の再生工法。
【請求項7】
再生骨材と吸水性材料とを含む、再生舗装層。
【請求項8】
前記吸水性材料が、
珪藻土焼成セラミック、ゼオライト、メサライト、パーライト、ガラス発泡軽量材、焼成フライアッシュなどの多孔質セラミックスから選ばれる1種又は2種以上の無機系の粒状材料であるか、
ポリアクリル酸塩系、ポリスルホン酸塩系、無水マレイン酸塩系、ポリアクリルアミド系、ポリビニルアルコール系、ポリエチレンオキシド系、又はポリアミン系の人工ポリマー、又は、ポリアスパラギン酸塩系、ポリグルタミン酸塩系、ポリアルギン酸塩系、デンプン系、セルロース系、又はポリグリコール系の天然ポリマーから選ばれる1種又は2種以上の有機系の材料であるか、
又はそれらの双方である、
請求項7記載の再生舗装層。
【請求項9】
骨材と吸水性材料とを混合して、前記吸水性材料が吸収する水分の質量を除いて求められる前記骨材の見掛けの含水比を低減させることを特徴とする、含水比に依存する骨材物性の改善方法。
【請求項10】
前記吸水性を有する材料が、
珪藻土焼成セラミック、ゼオライト、メサライト、パーライト、ガラス発泡軽量材、焼成フライアッシュなどの多孔質セラミックスから選ばれる1種又は2種以上の無機系の粒状材料であるか、
ポリアクリル酸塩系、ポリスルホン酸塩系、無水マレイン酸塩系、ポリアクリルアミド系、ポリビニルアルコール系、ポリエチレンオキシド系、又はポリアミン系の人工ポリマー、又は、ポリアスパラギン酸塩系、ポリグルタミン酸塩系、ポリアルギン酸塩系、デンプン系、セルロース系、又はポリグリコール系の天然ポリマーから選ばれる1種又は2種以上の有機系の材料であるか、
又はそれらの双方である、
請求項9記載の改善方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は舗装層の再生工法とそれによって得られる再生舗装層に関する。
【背景技術】
【0002】
老朽化したアスファルト舗装の路盤を、その上のアスファルト混合物層を含めて、掘削、破砕し、これにアスファルト乳剤又はフォームドアスファルトや、さらにはセメントなどの添加材料を現位置で混合して敷き均し、締め固めて再生路盤層を構築する工法は、例えば、特許文献1、2に見られるとおり、従来から行われている工法である。
【0003】
上記工法は、既設舗装の大部分をそのまま現位置で利用するので、材料の搬出・搬入が少なく、省エネルギーであり、資源の有効活用やCO排出量の削減にも貢献できるという利点を備えている。また、打換え工法と比べて安価に施工できるという点も利点である。
【0004】
しかしながら、上記工法は、既設舗装の大部分をそのまま現位置で利用するので、施工時の既設舗装の状態によって施工性や構築される再生路盤層の物性が大きく左右されるという問題を有している。
【0005】
例えば、施工直前に降雨があったときには、既設舗装が水分を比較的多く含んだ状態となり、この状態のまま既設舗装を掘削、破砕すると、水分を比較的多く含んだ破砕物が得られることになる。したがって、この破砕物を再生骨材として、これにアスファルト乳剤やセメントなどを混合すると、混合物の含水比は最適含水比を大きく上回ることが予想される。
【0006】
因みに、最適含水比とは混合物を締め固めたときに乾燥密度が最大となるときの含水比である。混合物の含水比が最適含水比を上回っていると、混合物を十分に密度高く締め固めることができず、所期の強度を備えた再生路盤層や再生表層などを構築することが困難となる。さらには、混合物の含水比が大き過ぎると、混合物の流動性が高まり、混合物の上をスタビライザやローラ転圧機などの施工用重機が走行できなくなり、重機を用いた施工ができないという不都合も生じる。
【0007】
既設舗装が乾燥状態にあり、含水量が少なすぎるときに、散水などによって含水量を調整すれば良く、対応は比較的容易である。しかし、既設舗装が水分を多く含み、その破砕物とアスファルト乳剤やセメントなどとの混合物の含水比が最適含水比を上回る場合には、既設舗装或いはその破砕物である再生骨材の含水比を減少させる方向に調整することは一般に困難である。既設舗装或いはその破砕物の含水比を低下させる方法としては、例えば、施工日をずらして既設舗装の水分が自然に低下するのを待つか、水分を多く含む路盤材等を取り除き、乾いた路盤材などと入れ替えるか、或いは、破砕した路盤材などをスタビライザで混合して抜気するなどの方法があるが、いずれも多大な労力や時間を必要とし、施工効率の著しい低下が避けられないのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2000-314105号公報
【特許文献2】特開2002-69922号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記従来の舗装層の再生工法の問題点を解決するために為されたもので、施工対象となる既設舗装が水分過剰と思われる状態にあるときにも、十分な締め固め性と重機走行性を確保して、再生舗装層を構築することができる舗装層の再生工法と、それによって得られる再生舗装層を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、種々検討した結果、既設舗装或いはその破砕物である再生骨材の含水比を減少させる方向に調整することが一般に困難であるのは、従来の対応方法が全て既設舗装又はその破砕物である再生骨材に含まれる水分を乾燥その他の方法によって系外に除去することに重点を置いているからではないかと思い至った。そこで、従来の対応方法とは発想を180度転換し、既設舗装又はその破砕物である再生骨材に含まれる水分を系内に残したまま、水分含量を低下させたときに得られるのと同等の締め固め性や施工性を実現する方法を検討した。その結果、意外にも、過剰量の水分を吸収するに足る量の吸水性の材料を添加すると、既設舗装又はその破砕物である再生骨材に含まれる水分を系外に除去することなく、適量の水分を含む再生骨材を用いたときに得られるのと変わらぬ施工性で、所期のレベルの物性を備えた再生舗装層を構築することができることを見出した。
【0011】
すなわち、本発明は、既設舗装の一部を再生骨材として使用する舗装層の再生工法であって、使用する前記再生骨材の含水比が目標とする含水比を上回るとき、吸水性材料を添加して、前記再生骨材が含む水分の質量から前記吸水性材料が吸収する水分の質量を除いて求められる前記再生骨材の見掛けの含水比を前記目標とする含水比と一致させる工程を含む舗装層の再生工法と、その工法によって得られる再生舗装層を提供することによって、上記の課題を解決するものである。
【0012】
本発明に係る舗装層の再生工法においては、使用する再生骨材の含水比が目標とする含水比を上回るとき、当該再生骨材を乾燥させるなどして過剰に含まれている水分を系外に除去するのではなく、吸水性材料を添加する。そして、当該吸水性材料が吸収する水分の質量を除いて求められる前記再生骨材の見掛けの含水比を目標とする含水比と一致させることによって、過剰に含まれている水分を系内に残したまま、使用する再生骨材の含水比が目標とする含水比であるときと変わらぬ施工性を実現するものである。
【0013】
好適な一態様において、目標とする含水比とは、再生骨材を少なくとも一部含む骨材と、アスファルト乳剤やセメントなどの添加材料とを設計どおりの配合割合で混合して混合物としたときに、その混合物の含水比が最適含水比となるときの前記再生骨材の含水比である。また、好適な他の一態様において、目標となる含水比とは、再生骨材を少なくとも一部に含む骨材とアスファルト乳剤やセメントなどの添加材料とを設計どおりの配合割合で混合して混合物としたときに、当該混合物がローラ転圧により十分な締固め率で締固めができる混合物となるときの前記再生骨材の含水比である。いずれの場合においても、再生骨材は使用する骨材の少なくとも一部として含まれておればよく、使用する骨材の全量が再生骨材であっても良い。
【0014】
各種材料を設計どおりの配合割合で混合して得られる混合物の最適含水比と、各種材料を設計どおりの配合割合で混合して得られる混合物がローラ転圧により十分な締固め率で締固めができる混合物となるときの当該混合物の含水比とは一般に一致するが、仮に異なっている場合には、後者の含水比を目標とする含水比とするのが好ましい。なお、目標とする含水比は、幅のある数値範囲であっても良い。
【0015】
好適な一態様において、本発明に係る舗装層の再生工法は、ローラ転圧による締固め工程を含んでいる。本発明に係る再生工法がローラ転圧による締固め工程を含む場合には、所期のレベルの物性を備えた再生舗装層をローラ転圧機などの重機を用いて効率良く構築することができるという利点が得られる。
【0016】
吸水性材料としては、吸水性を有する無機系の粒状材料、又は吸水性を有する有機系の材料、又はその双方を用いることができる。好適な一態様において、吸水性を有する無機系の粒状材料は多孔質セラミックスであり、例えば、珪藻土焼成セラミック、ゼオライト、メサライト、パーライト、ガラス発泡軽量材、焼成フライアッシュなどから選ばれる1種又は2種以上の粒状材料を用いることができる。
【0017】
また、他の好適な一態様において、吸水性を有する有機系の材料は吸水性を有する人工ポリマー又は天然ポリマーである。用いることができる人工ポリマーとしては、例えば、ポリアクリル酸塩系、ポリスルホン酸塩系、無水マレイン酸塩系、ポリアクリルアミド系、ポリビニルアルコール系、ポリエチレンオキシド系、又はポリアミン系の人工ポリマーが挙げられ、また、用いることができる天然ポリマーとしては、例えば、ポリアスパラギン酸塩系、ポリグルタミン酸塩系、ポリアルギン酸塩系、デンプン系、セルロース系、又はポリグリコール系の天然ポリマーを挙げることができる。これらの有機系の材料は1種だけで用いても良いし、2種以上を混合して用いても良い。
【0018】
本発明は、その第一の観点においては、上述した舗装層の再生工法であるが、使用する骨材の見掛けの含水比を吸水性材料を添加することによって好ましい含水比に調節するものであるので、他の観点からいえば、本発明は、骨材と吸水性材料とを混合して、前記吸水性材料が吸収する水分の質量を除いて求められる前記骨材の見掛けの含水比を低減させることを特徴とする、含水比に依存する骨材物性の改善方法を提供するものでもある。
【発明の効果】
【0019】
本発明の舗装層の再生工法によれば、使用する再生骨材の含水比が目標とする含水比よりも大きい場合であっても、過剰な水分を系外に除去することなく、目標とする含水比である場合と変わらぬ施工性を実現することができ、再生舗装層を効率よく構築することができるという利点が得られる。また、本発明の含水比に依存する骨材物性の改善方法によれば、水分を系外に除去する手間暇を掛けることなく含水比に依存する骨材物性を改善することができるので、骨材を使用する各種施工において施工効率を高めることができるという利点が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、主として路上路盤再生工法を例に、本発明について詳細に説明するが、本発明に係る舗装層の再生工法が路上路盤再生工法に限られるものでないことは勿論である。
【0021】
1.舗装層の再生工法
舗装層の再生工法の代表的なものとしては、既設舗装の路盤を現位置で再生する路上路盤再生工法が挙げられる。路上路盤再生工法は、既設舗装を少なくとも路盤層の一部を含む深さまで掘削、破砕し、この破砕物を再生骨材として、これにアスファルト乳剤又はフォームドアスファルトやセメントなどの添加材料を加えて混合し、これを敷き均し、締め固めて再生路盤層とする構築方法である。
【0022】
本発明に係る舗装層の再生工法が、路上路盤再生工法である場合、その作業工程は、基本的に、従来から行われている路上路盤再生工法となんら異なるものではない。既設舗装を掘削、破砕する工程や、破砕物と添加材料と混合する工程は、基本的にどのような器具又は機械を用いて行っても良いが、典型的には、路上混合式のスタビライザ若しくはロードスタビライザを用いて行われる。
【0023】
また、既設舗装を掘削、破砕する深さは、少なくとも路盤層の一部を掘削、破砕する深さであれば良く、安定処理を施して再生路盤層とすることを予定している路盤層の厚さをカバーする深さまで掘削、破砕すれば良い。なお、作業の手間を厭わなければ、既設舗装の掘削、破砕に先だって、施工面上に、単位面積あたりに必要とされる量のセメントの一部又は全部を散布しておき、散布されているセメント共々、既設舗装を掘削、破砕するようにしても良い。
【0024】
次に、掘削、破砕された破砕物を再生骨材とし、これにアスファルト乳剤とセメントとを混合する。アスファルト乳剤に代えてフォームドアスファルトを混合しても良い。この混合は、既設路盤層を掘削、破砕したその現位置において行われる。前述したロードスタビライザは、通常、掘削、破砕機能に加えて、アスファルト乳剤やその他の添加材を噴出、散布する機能を有しているので、その機能を利用して、破砕物にアスファルト乳剤を散布しながら、掘削、破砕を続けることによって、破砕物とアスファルト乳剤とを混合することができる。
【0025】
セメントに関しては、前述したとおり、既設舗装の施工面上に、単位面積あたり必要とされる量のセメントの一部又は全部を予め散布しておき、その後、既設舗装を掘削、破砕することで破砕物である再生骨材に混合するようにしても良い。或いは、アスファルト乳剤が破砕物上に散布されるのと同時及び/又は相前後して、破砕物上にセメントを散布して破砕物と混合するようにしても良い。また、これら2つの散布、混合ルートを併用しても良い。ただし、アスファルト乳剤とセメントとを予め所定の割合で混合しておいて、アスファルト乳剤を噴出、散布するノズルから、アスファルト乳剤とセメントとを一緒に破砕物上に散布して破砕物と混合するのが作業としては最も簡便であるので、好ましい。
【0026】
添加混合するアスファルト乳剤に含まれるアスファルトの種類には特段の制限はない。ストレートアスファルト、ブローンアスファルト、セミブローンアスファルト、天然アスファルト、溶剤脱瀝アスファルトなどを使用することができ、これらにスチレン・ブタジエンブロック共重合体(SBS)、スチレン・イソプレンブロック共重合体(SIS)、スチレン・ブタジエンランダム共重合体(SBR)、エチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン・エチルアクリレート共重合体(EEA)、ポリスチレン・ポリエチレンブチレンブロック共重合体(SEBS)、天然ゴム(NR)、クロロプレンゴム(CR)、イソプレンゴム(IR)、石油樹脂、オイルなどを混合した改質アスファルトも使用できる。なお、オイルとしては芳香族系炭化水素、脂肪酸系炭化水素などが挙げられ、樹脂としてはC9、テルペンフェノールなどが挙げられる。さらに、ゴムラテックス、合成高分子エマルジョン、水溶性高分子を単体で、或いは複数を組合わせて混合したものを改質剤として、乳化剤に添加したり、乳剤製造後に添加しても良い。
【0027】
アスファルト乳剤の乳化に用いられる乳化剤は、カチオン系、ノニオン系、アニオン系のいずれを使用しても良く、中でも、特に破砕された路盤材との混合性の良さが求められる場合には、非イオン性界面活性剤を乳化剤として用いたノニオン系乳剤が好ましい。また、早期の強度発現が求められる場合には、陽イオン性界面活性剤を乳化剤として用いたカチオン系乳剤の使用が推奨される。
【0028】
使用するセメントにも特段の制限はなく、例えば、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、超速硬ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、低熱ポルトランドセメント等の各種ポルトランドセメントや、高炉セメント、シリカセメント、フライアッシュセメント、ジェットセメント、アルミナセメントなどを用いることができる。中でも、施工時間短縮が求められる場合には、早期の強度発現性の観点から、超速硬ポルトランドセメント又は早強ポルトランドセメントを用いるのが好ましく、また、硬化に伴うひび割れが懸念される場合には、中庸熱ポルトランドセメント、低熱ポルトランドセメントなどの使用が推奨される。さらには、消石灰や生石灰などをセメントの代わりとして用いても良い。
【0029】
なお、前記破砕物に対し、上述したアスファルト乳剤及びセメントに加えて、繊維を混合して、構築される再生路盤層の耐ひび割れ性を向上さても良い。混合する繊維としては、例えば、バサルトファイバーなどの鉱物質繊維、ガラス繊維や鋼繊維などの無機物繊維、カーボン繊維、ビニロン又はセルロースなどの有機物繊維を用いることができる。混合する繊維のサイズは、直径が5~100μm、繊維長が5~40mm程度のものが好ましい。繊維材料は、前記破砕物に対し、0.1質量%~5.0質量%で配合するのが好ましい。
【0030】
2.再生骨材と含水比
本発明の舗装層の再生工法は、従来から行われている上記工程に加えて、既設舗装を破砕して得られる破砕物であって骨材として使用される再生骨材の含水比が目標とする含水比を上回るとき、吸水性材料を前記再生骨材に混合し、混合した吸水性材料が吸収する水分の質量を除いて求められる前記再生骨材の見掛けの含水比を目標とする含水比と一致させる工程を含んでいる。
【0031】
再生骨材の含水比とは、再生骨材に含まれている水分の質量を、前記再生骨材の乾燥質量に対する割合(百分率)で表した値であり、下記式(1)で求められる値である。
Rw=(Ww/Ws)×100[%] (1)
ただし、式(1)において、
Rw:含水比(%)
Ww:再生骨材に含まれている水分の質量
Ws:再生骨材の乾燥質量
である。
【0032】
再生骨材の含水比は、施工対象とする既設舗装を予め一部掘削、破砕して破砕物をサンプリングし、その破砕物に含まれている水分の質量、及びその破砕物の乾燥質量を測定し、その測定値に基づいて、式(1)によって求めることができる。
【0033】
3.目標とする含水比
好適な一例において、目標とする含水比とは、再生骨材を少なくとも一部に含む骨材とアスファルト乳剤やセメントなどの添加材料とを設計どおりの配合割合で混合して混合物としたときに、その混合物の含水比が最適含水比となるときの前記再生骨材の含水比である。再生骨材とアスファルト乳剤やセメントなどの添加材料との配合割合は、用いるアスファルト乳剤やセメントなどの添加材料の種類とともに、構築される再生舗装層に求められる強度等に基づいて予め設計され決められているのが普通である。その予め決められた種類の添加材料を用い、設計どおりの配合割合で、再生骨材と他の添加材料とを混合したときに、混合物の含水比が最適含水比となる再生骨材の含水比が、目標とする含水比である。なお、骨材として、再生骨材だけではなく、新規骨材も使用する場合には、使用する新規骨材の含水比や配合量も考慮に入れた上で、再生骨材の目標とする含水比が求められることは勿論である。
【0034】
因みに、最適含水比とは、「突固めによる土の締固め試験方法」(JIS A1210)8(c)に「乾燥密度を縦軸に、含水比を横軸にとって測定値を記入し、これらを滑らかな曲線で結び、乾燥密度-含水比曲線とする。この曲線の乾燥密度の最大値を最大乾燥密度ρdmax(g/cm)、それに対応する含水比を最適含水比wopt(%)とする。」と記載されているとおり、締め固めによって乾燥密度が最も大きくなるときの含水比である。
【0035】
したがって、再生骨材の含水比が目標とする含水比と一致していると、その再生骨材を用いて設計どおりの配合割合で調製された混合物の含水比は最適含水比と一致し、当該混合物を転圧ローラなどによって締め固めたときには最も大きな締固め密度が得られる。また、構築される再生路盤層には所期のレベルの強度発現が期待できる。なお、最適含水比の求め方は、例えば、「路上再生セメント・アスファルト乳剤安定処理配合設計の手引き」、社団法人日本アスファルト乳剤協会、平成15年、1~4頁に詳述されている。
【0036】
最適含水比は、乾燥密度-含水比曲線において最大乾燥密度を与える含水比の値として求められるので、通常、一点であり、混合物の含水比がこの最適含水比となる再生骨材の含水比を目標とする含水比とするときには、目標とする含水比も一点である。しかし、最適含水比を求めるときに供試体として用いられる複数の混合物は、それぞれが自身の含水比を有する混合物であるので、最適含水比を、比較的大きな締固め密度が得られた上位二つの混合物の含水比に基づいて、例えば一方の含水比を上限、他方の含水比を下限とするなどして、数値範囲として設定しても良く、その場合には目標とする含水比もまた幅のある数値範囲として設定されることになる。
【0037】
他の好適な一例において、再生骨材を少なくとも一部に含む骨材とアスファルト乳剤やセメントなどの添加材料とを設計どおりの配合割合で混合して混合物としたときに、当該混合物がローラ転圧により十分な締固め率で締固めができる混合物となるときの前記再生骨材の含水比を目標とする含水比としても良い。
【0038】
得られた混合物がローラ転圧により十分な締固め率で締固めができる混合物であるか否かは、混合物の締固め率と流動性に基づいて判定することができる。混合物の締固め率は、「転圧コンクリート舗装技術指針(案)」、社団法人日本道路協会、平成2年10月、76~77頁、「付録3 マーシャル突固め試験方法」に記載されている方法に準じて求めることができる。一般に、締固め率が96.0%以上である混合物は、十分な締固めが可能な混合物であるとされている。
【0039】
一方、混合物の流動性は、例えば、スランプ値に基づいて判定することができる。すなわち、混合物のスランプ値を測定し、その値が一定値以下であるときには、その混合物は流動し難く、その上をローラ転圧機などの重機が走行可能な混合物であると判断できる。因みに、後述する実験例においては、スランプ値が0cmである場合に十分に流動性が十分に小さく、ローラ転圧による締固めが可能な混合物であると判定している。しかし、この0cmというスランプ値の基準値は絶対的なものではなく、再生舗装層となる混合物の配合組成や施工現場の状況などに応じて適宜変更しても良い。なお、スランプ値の測定方法は、JIS A1101「コンクリートのスランプ試験方法」に記載されている。
【0040】
上記のとおり、再生骨材とアスファルト乳剤やセメントなどの添加材料とを設計どおりの配合割合で混合して混合物とし、その締固め率とスランプ値を測定して、締固め率が一定値以上、スランプ値が一定値以下であれば、その混合物はローラ転圧重機を用いて十分な締固めが可能な混合物であると判断できる。そのような混合物とすることができる再生骨材の含水比を目標とする含水比とすれば良い。
【0041】
混合物の締固め率が一定値以上でスランプ値が一定値以下となる再生骨材の含水比は、一点である場合もあれば、幅のある数値範囲である場合もある。したがって、ローラ転圧により十分な締固めが可能な混合物とすることができる再生骨材の含水比を目標とする含水比とする場合には、目標とする含水比を一点の値として設定しても良いし、幅のある数値範囲として設定しても良い。
【0042】
混合物の最適含水比に基づいて定められる目標とする含水比と、ローラ転圧により十分な締固めが可能な混合物とすることができるか否かに基づいて定められる目標とする含水比とは、どちらを用いても良い。ただし、後者の目標とする含水比の方が、基準となる締固め率やスランプ値を変更することで、施工現場の状況や混合物の配合組成等にも柔軟に対応することができるので、より好適である。
【0043】
4.吸水性材料
本発明に係る舗装層の再生工法においては、用いる再生骨材の含水比が目標とする含水比を上回るとき、吸水性材料を再生骨材に混合する。なお、用いる再生骨材の含水比が目標とする含水比を下回るときには、施工対象となる既設舗装に散水などして、再生骨材の含水比を大きくすれば良い。
【0044】
混合する吸水性材料としては、水分を吸収することができる材料であれば良く、無機系又は有機系の吸水性材料、又はその双方を用いることができる。無機系の吸水性材料としては多孔質セラミックスが好適である。多孔質セラミックスとしては、例えば、珪藻土焼成セラミック、ゼオライト、メサライト、パーライト、ガラス発泡軽量材、焼成フライアッシュなどが用いられ、中でも珪藻土焼成セミック又はゼオライトが好ましく、珪藻土焼成セラミックが最も好ましい。これらの無機系の吸水性材料は2種以上を混合して用いても良い。また、これら無機系の吸水性材料は粒状であるのが好ましい。なお、用いる無機系の吸水性材料の吸水率には特段の制限はないが、吸水率が余りに小さいと使用量が増大するので好ましくなく、通常は吸水率20質量%以上であるのが好ましく、より好ましくは40質量%以上である。
【0045】
他方、有機系の吸水性材料としては、吸水性を有する人工又は天然ポリマーが用いられ、人工ポリマーとしては、例えば、ポリアクリル酸塩系、ポリスルホン酸塩系、無水マレイン酸塩系、ポリアクリルアミド系、ポリビニルアルコール系、ポリエチレンオキシド系、又はポリアミン系の人工ポリマー、天然ポリマーとしては、例えば、ポリアスパラギン酸塩系、ポリグルタミン酸塩系、ポリアルギン酸塩系、デンプン系、セルロース系、又はポリグリコール系の天然ポリマーを用いることができ、ポリアクリル酸塩系の人工ポリマーが好ましく用いられる。これらは1種を単独で用いても良いし、2種以上を混合して用いても良い。
【0046】
5.見掛けの含水比
上記の吸水性材料は、当該吸水性材料が吸収する水分の質量を除いて求められる前記再生骨材の見掛けの含水比を目標含水比と一致させるに足る量だけ添加され、再生骨材と混合される。
【0047】
再生骨材の見掛けの含水比とは、混合される吸水性材料が吸収する水分の質量を除いて求められる再生骨材の含水比である。再生骨材の見掛けの含水比は、吸水性材料が無機系材料のときには、吸水性材料の質量を骨材の質量としてカウントして、下記式(2)で求められる。
Rwf={(Ww-Wa)/(Ws+A)}×100[%] (2)
ただし、式(2)において、
Rwf:見掛けの含水比(%)
Ww:再生骨材に含まれている水分の質量
Wa:吸水性材料に吸収される水分の質量
Ws:再生骨材の乾燥質量
A:吸水性材料の質量
である。
【0048】
一方、吸水性材料が有機系材料のときには、再生骨材の見掛けの含水比は、吸水性材料の質量を骨材の質量としてカウントしないで、下記式(3)で求められる。
Rwf={(Ww-Wa)/Ws}×100[%] (3)
【0049】
なお、吸水性材料が有機系材料であるとき、吸水性材料の質量を骨材の質量としてカウントしないのは、有機系の吸水性材料の吸水率は一般に極めて大きいので、再生骨材と混合する吸水性材料の質量は通常極めて少量であるからである。吸水性材料が有機系材料であるときにも、吸水性材料の質量を骨材の質量に含めて再生骨材の見掛けの含水比を求めても良いことは勿論である。
【0050】
なお、吸水性材料が吸収する水分の質量Waは、例えば、下記式(4)で求めることができる。
Wa=A×(a/100) (4)
ただし、式(4)において、
A:吸水性材料の質量
a:吸水性材料の吸水率[%]
である。
【0051】
吸水性材料の吸水率は、「舗装調査・試験法便覧」(平成31年版、第2分冊)、公益社団法人日本道路協会、平成31年3月、11~13頁「A002 細骨材の密度および吸水率試験方法」に記載されている方法若しくはそれに準じる方法によって求めることができる。
【0052】
本発明の再生工法は、使用する再生骨材の含水比が目標とする含水比を上回るとき、吸水性材料を前記再生骨材に混合し、再生骨材の見掛けの含水比を目標とする含水比と一致させる工程を含んでいる。一致させるとは、再生骨材の見掛けの含水比を目標とする含水比とを数値的に一致させるか、或いは、目標とする含水比が幅のある数値範囲であるときには、再生骨材の見掛けの含水比をこの数値範囲内に入る値とすることをいう。使用する再生骨材の見掛けの含水比を目標とする含水比と一致させるためには、式(2)又は式(3)で計算される見掛けの含水比Rwf(%)が目標とする含水比と一致するに足る量の吸水性材料を再生骨材と混合すれば良い。
【0053】
なお、再生骨材の含水比を目標とする含水比と一致させるに足る吸水性材料の量は、用いる吸水性材料の吸水率が分かっている場合には、上記式(2)又は式(3)に基づいて求めることができるが、用いる吸水性材料の吸水率が不明であるか、求めるのに多大な労力を要する場合には、再生骨材と混合する吸水性材料の量を実験によって求めても良い。
【0054】
すなわち、設計どおりの配合割合で再生骨材、アスファルト乳剤、セメントなどの添加材料を混合した混合物を調製し、これに使用予定の吸水性材料を量を変えて添加し、得られる混合物の乾燥密度を測定し、乾燥密度が最大となるときの吸水性材料の添加量を、再生骨材の見掛けの含水比を目標とする含水比と一致させる添加量であるとしても良い。或いは、設計どおりの配合割合で再生骨材、アスファルト乳剤、セメントなどの添加材料を混合した混合物を調製し、これに使用予定の吸水性材料を量を変えて添加し、得られる混合物の締固め率及びスランプ値を測定し、締固め率が一定値以上、スランプ値が一定値以下となるときの吸水性材料の添加量を、再生骨材の見掛けの含水比を目標とする含水比と一致させる添加量であるとしても良い。
【0055】
上記のようにして、吸水性材料を添加することによって、再生骨材の見掛けの含水比を目標とする含水比と一致させると、意外にも、水分を系外に除去していないにもかかわらず、含水比が目標とする含水比である再生骨材を使用して施工したときと変わらぬ施工性が得られる。すなわち、吸水性材料を添加して再生骨材の見掛けの含水比を目標とする含水比と一致させると、高い締固め率での締固めが可能になるだけでなく、混合物の流動性が低下し、混合物上をスタビライザやローラ転圧機などの施工用重機を走行させることができるようになる。そのため、高い施工効率で、混合物の混合や、ローラ転圧による十分な締め固めを行うことができ、結果として、所期のレベルの強度を備えた再生路盤層を構築することが可能となる。
【0056】
なお、以上の説明では、本発明に係る舗装層の再生工法が、路盤層を現位置で再生する路上路盤再生工法である場合について主として説明したが、本発明に係る舗装層の再生工法によって再生される舗装層は路盤層に限られず、その他、表層又は基層であっても良い。また、本発明に係る舗装層の再生工法においては、使用する骨材の全量が既設舗装を破砕して得られる再生骨材であっても良いし、再生骨材に加えて新規骨材を含んでいても良い。
【0057】
以下、実験に基づいて、本発明をさらに詳細に説明する。
【0058】
<実験1:目標とする含水比の決定>
想定される一つの配合組成の混合物について、その目標とする含水比を実験により求めた。目標とする含水比としては、締固め率とスランプ値を指標として、ローラ転圧により十分な締固めが可能な混合物であるか否かを判定し、ローラ転圧により十分な締固めが可能な混合物であると判定されたときの骨材の含水比を目標とする含水比とした。
【0059】
実験に用いた材料、及び混合物の配合を下記表1に示す。なお、本実験においては、骨材として、路盤材として用いられることが多い粒度調整砕石を用いたが、可能であれば予定されている施工現場から既設舗装を掘削、破砕して破砕物を取得し、これを骨材として用いて実験を行っても良い。
【0060】
【表1】
【0061】
含水比が1質量%、2質量%、3質量%、4質量%、又は5質量%とそれぞれ異なる5種類の骨材を用意した。用意した5種類の骨材のそれぞれを上記表1に示す配合割合でセメント及びアスファルト乳剤と混合し、骨材の含水比が異なる5種類の混合物を調製した。調製した混合物を用いて、締固め率及びスランプ値を測定した。結果を表2に示す。
【0062】
<締固め率>
締固め率は、「転圧コンクリート舗装技術指針(案)」、社団法人日本道路協会、平成2年10月、76~77頁、「付録3 マーシャル突固め試験方法」に記載されている測定方法に準じて測定した。すなわち、供試体混合物を試験用モールドに充填し、マーシャル突固めハンマで50回突き固め、供試体上面のモールド上端からの深さを測定し、モールド底面までの深さとの差より供試体高さを求め、供試体容積Vを計算した。これを予め測定した試料質量で除し、供試体密度(g/cm)を求めた。この供試体密度を同供試体の理論最大密度で除し、締固め率(%)とした。すなわち、
締固め率(%)={[供試体密度(g/cm)])/[理論最大密度(g/cm)]}×100[%] (5)
なお、供試体の理論最大密度は下記式(6)で求めた。
理論最大密度(g/cm)=(供試体に含まれる各材料の質量の合計(g))/(供試体に含まれる各材料の容積の合計(cm)) (6)
締固め率が96.0%以上のとき十分に締め固め性が可能と判断した。
【0063】
<スランプ値>
JIS A1101「コンクリートのスランプ試験方法」に記載されている試験方法に基づき、試料として上記5種類の混合物を用い、スランプ値を測定した。スランプ値が0cmのとき、スタビライザやローラ転圧機などの施工重機が走行可能と判断した。
【0064】
【表2】
【0065】
表2に示すとおり、含水比が2質量%又は1質量%の骨材を用いて混合物を調製した場合には、得られた混合物のスランプ値はいずれも0cmであり、基準値を満足した。しかし、締固め率は95.5%又は93.8%と低く、基準とした96.0%以上をクリアすることができなかった。このため、骨材の含水比が2質量%以下では、ローラ転圧により十分な締固めが可能な混合物とすることはできないと判断された。
【0066】
他方、含水比が4質量%又は5質量%の骨材を用いて混合物を調製した場合には、得られた混合物は、締固め率は98.0%又は97.8%と高く、いずれも基準値とした96.0%以上をクリアした。しかし、スランプ値が8cm又は15cmと大きく流動性の高い混合物であり、重機の走行はできないと判断される混合物であった。このため、骨材の含水比が4質量%以上では、ローラ転圧による締固めが可能な混合物とすることはできないと判断された。
【0067】
これに対し、含水比が3質量%である骨材を用いて混合物を調製した場合には、得られた混合物の締固め率は97.8%と高く、基準とした96.0%を超えた。また、スランプ値は0cmであり、やはり基準とした0cm以下を満足した。このため、骨材の含水比が3質量%のときには、その上を重機の走行が可能で、ローラ転圧により十分な締固めが可能な混合物とすることができると判断された。以上の結果から、実験を行った配合組成の混合物については、目標とする含水比は3質量%であると決定した。
【0068】
なお、上記の実験では骨材の含水比を1質量%から5質量%まで1質量%刻みで異ならせて実験を行った結果、2質量%以下及び4質量%以上では基準をクリアせず、3質量%のときにローラ転圧により十分な締固めが可能と判断される混合物が得られた。これに基づき、目標とする含水比を3質量%と決定した。しかし、仮に、骨材の含水比を1質量%から5質量%まで0.5質量%刻みで異ならせて同様の実験を行い、骨材の含水比が2質量%以下及び4質量%以上では基準をクリアしないけれども、2.5質量%、3.0質量%、及び3.5質量%のときに締固め率及びスランプ値が共に基準値を充足し、ローラ転圧により十分な締固めが可能であると判断される混合物が得られた場合には、2.5質量%から3.5質量%までの数値的に幅のある含水比を目標とする含水比として決定しても良い。
【0069】
なお、使用する材料の種類も含めて混合物の配合組成が変われば、目標含水比もまた変わるであろうことは十分に予想されるので、上記の3質量%という目標含水比は、表1に示した配合組成の混合物についての目標含水比である。目標含水比が上述した3質量%、又は2.5質量%以上3.5質量%以下に限定されるものではないことはいうまでもない。
【0070】
<実験2:含水比が混合物の物性に及ぼす影響>
実験1におけると同じ材料を用いて、表1に示したと同じ配合組成で、骨材の含水比だけを3質量%、5質量%、又は7質量%と異ならせて、用いた骨材の含水比だけが異なる3種類の混合物1、2、3を調製した。得られた混合物1、2、3の締固め率及びスランプ値を測定した。併せて、それら3種類の混合物のそれぞれを用いて供試体を3体ずつ作成し、下記に示す方法で、その曲げ強度を測定した。結果を表3に示す。なお、表3には混合物に含まれる水分の内訳も併せて示した。
【0071】
<曲げ強度の測定方法>
「JIS A 1106 コンクリートの曲げ強度試験方法」に規定されている方法に準じて、3等分点載荷法により、曲げ強度を測定した。なお、スランプ値が0cmである混合物については、混合物を型枠(15×15×53cm)に投入し、振動タンパで入念に締固めて硬化させ、7日間養生して、供試体とした。一方、スランプ値が0cmを超える混合物については、混合物を型枠(15×15×53cm)に投入し、内部振動機を混合物内に挿入し、混合物から大きな気泡が出なくなるまで締め固めて硬化させ、7日間養生して、供試体とした。供試体は混合物ごとに3体ずつ作成し、曲げ試験で得られた曲げ強度の平均値を当該混合物の曲げ強度とした。
【0072】
【表3】
【0073】
表3に示すとおり、含水比が目標とする含水比と同じ3質量%である骨材を使用した混合物1は、先に表2に示したと同様に、97.8%という高い締固め率を示した。また、スランプ値も0cmであり、その上を重機の走行が可能で、ローラ転圧機を用いた転圧により十分な締固めが可能な混合物であった。また、混合物1を型枠に入れて締固め、硬化させた供試体は、1.15(N/mm)という高い曲げ強度を示した。
【0074】
これに対し、含水比が、目標とする含水比3質量%を上回り、5質量%である骨材を使用した混合物2、及び、さらに含水比が大きく7質量%である骨材を使用した混合物3は、いずれも96.0%を超える高い締固め率を示したものの、スランプ値がそれぞれ15cm及び25cmと大きく、高い流動性を示した。このため、混合物2及び混合物3は、その上を重機が走行することができず、ロータ転圧機を用いた転圧ができないと判断される混合物であった。また、混合物2及び混合物3を型枠に入れて硬化させた供試体の曲げ強度は、それぞれ、0.75(N/mm)及び0.66(N/mm)と低く、一応の目安となる1.0(N/mm)という曲げ強度を下回る値であった。
【0075】
以上のとおり、使用する骨材の含水比が目標とする含水比を上回る場合には、得られる混合物は締固め率は高いものの、流動性が大きく、ローラ転圧による締固めができないものであった。また、得られる硬化体の曲げ強度も低く、所期の強度を備えた再生路盤層を構築するには難しいと判断される混合物であった。
【0076】
<実験3:吸水性材料の添加が混合物の物性に及ぼす影響-その1->
実験2で調製した混合物1、2、3の配合において、それぞれ、0質量部、2.58質量部、及び5.0質量部の吸水性材料を添加し、添加した吸水性材料の分だけ骨材の配合量を減らした以外は、実験2におけると同様にして混合物1a、2a、3aを調製した。
【0077】
使用した吸水性材料は以下のとおり。
吸水性材料:セラミックス多孔体(商品名「イソライトCG1」イソライト工業株式会社製[焼成珪藻土含有量:45~75質量%]、粒状[直径:0.3~2mm]、吸水率:61質量%)
【0078】
吸水性材料の添加量は、式(2)に基づいてA(吸水性材料の質量)を計算することによって求めた。
Rwf={(Ww-Wa)/(Ws+A)}×100[%] (2)
ただし、式(2)において、
Rwf(%)(見かけの含水比)=3質量%(目標とする含水比)
Ww(骨材に含まれている水分の質量)=(85.0-A)×骨材の含水比
Wa(吸水性材料が吸収する水分の質量)=A×吸水性材料の吸水率
Ws(骨材の乾燥質量)=85.0-A
としてAを求めた。なお、本実験においては吸水性材料として無機系材料を用いているので、吸水性材料の質量Aを骨材の質量としてカウントし、(吸水性材料の質量A+骨材の乾燥質量Ws)=85.0質量部であることを前提とした。
【0079】
調製した混合物1a、2a、3aについて、実験2におけると同様にして、締固め率及びスランプ値を測定し、さらに曲げ強度を測定した。結果を表4に示す。なお、混合物1aの結果は混合物1と同じであり、表3から転記した。
【0080】
【表4】
【0081】
表4に示すとおり、混合物2aにおいて用いられた骨材の含水比は5.0質量%であり、目標とする含水比である3質量%を上回っている。ところが、吸水性材料を2.58質量部添加することによって、骨材の見掛けの含水比を目標とする含水比である3質量%と一致させたところ、97.6%という高い締固め率が得られ、スランプ値も0cmであった。すなわち、混合物2aは、重機の走行が可能な混合物であり、ローラ転圧により十分な転圧が可能な混合物である。また、曲げ強度も1.05(N/mm)と高く、優れた物性を備えていた。この結果は、同じく含水比が5質量%である骨材を使用し、吸水性材料を添加しない混合物2の結果と比べると、極めて良い結果である。また、含水比が目標とする含水比と一致する骨材を使用した混合物1aと比べても、混合物の施工性及び硬化体の強度の双方において何らの遜色もない。
【0082】
同様に、混合物3aにおいて用いられた骨材の含水比は7.0質量%であり、目標とする含水比である3質量%を上回っている。ところが、吸水性材料を5.0質量部添加することによって、見掛けの含水比を目標とする含水比である3質量%と一致させたところ、97.8%という高い締固め率が得られた。スランプ値も0cmであった。混合物3aは、重機の走行が可能な混合物であり、ローラ転圧により十分な転圧が可能な混合物である。また、曲げ強度も1.08(N/mm)と高く、優れた物性を備えていた。この結果は、同じく含水比が7質量%の骨材を使用し、吸水性材料を添加しない混合物3の結果と比べると、極めて良い結果である。また、含水比が目標とする含水比と一致する骨材を使用した混合物1aの結果と比べても、混合物の施工性及び硬化体の強度の双方において何らの遜色もない。
【0083】
以上のとおり、使用する骨材の含水比が目標とする含水比を上回る場合に、吸水性材料を混合し、吸水性材料に吸収される水分の質量を除いて求められる骨材の見掛けの含水比を目標とする含水比と一致させると、含水比が目標とする含水比と同じ骨材を使用して得られる混合物と変わらぬ締め固め性や施工性を有する混合物を得ることができた。また、その混合物の硬化体は所期の強度を備えたものであった。
【0084】
これを骨材の側からみると、使用する骨材の含水比が目標とする含水比を上回る場合に、吸水性材料を混合し、吸水性材料に吸収される水分の質量を除いて求められる骨材の見掛けの含水比を目標とする含水比と一致させることによって、含水比に依存する骨材の物性が改善されたとみることもでき、上記のような吸水性材料の添加は、含水比に依存する骨材物性の改善方法としても有用である。
【0085】
なお、以上の実験は、既設舗装の一部を掘削、破砕して得られた再生骨材を用いて行われたものではないが、骨材として、路盤材に使用されることの多い粒度調整砕石を用いているので、再生骨材を用いた時にも同様の結果が得られるであろうと判断することには合理性がある。
【0086】
因みに、本実験で用いた混合物の配合組成は、骨材85質量部に対し、セメントを5.8質量部、アスファルト乳剤を9.2質量部含み、路上路盤再生工法で通常用いられる混合物の配合組成と比べると、骨材に対するセメント及びアスファルト乳剤の配合量が大きい。このような配合組成は、骨材に対するセメントの配合割合が大きいので、強度の大きな再生舗装層を構築することが期待できる。しかし、その一方で、アスファルト乳剤の量も多いので、多くの施工現場では既設舗装を破砕して得られる再生骨材の含水比が過大となり、再生骨材の含水比を低下させない限り、混合物の流動性が大きく、ローラ転圧機などを用いての締め固めができないことが予想される。ところが、本発明の再生工法によれば、施工現場で得られる再生骨材の含水比が過大で目標とする含水比よりも大きい場合には、適宜、吸水性材料を添加することによって、再生骨材の含水比が目標とする含水比にある場合と同様の作業性を実現することができる。上記のとおり、本発明の再生工法によれば、骨材に対するセメント及びアスファルト乳剤の配合量が比較的多い配合設計であっても、再生骨材の含水比に左右されることなく、過大な作業負担なしに、ローラ転圧による締め固め工程を実施して、強度の大きな再生舗装層を構築することができるという利点が得られる。
【0087】
<実験4:吸水性材料の添加が混合物の物性に及ぼす影響-その2->
吸水性材料を下記の吸水性材料に変え、実験2で調製した混合物1、2、3の配合において、それぞれ、0質量部、3.21質量部、及び6.18質量部の吸水性材料を添加し、添加した吸水性材料の分だけ骨材の配合量を減らした以外は、実験2におけると同様にして混合物4a、5a、6aを調製した。
【0088】
使用した吸水性材料は以下のとおり。
吸水性材料:セラミックス多孔体(商品名「ゼオフィル1424#」新東北化学工業株式会社製[天然ゼオライト(モルデナイト型ゼオライト)]、粒状[直径:1.0~2.0mm]、吸水率:48質量%)
【0089】
吸水性材料の添加量は、式(2)に基づいてA(吸水性材料の質量)を計算することによって求めた。
Rwf={(Ww-Wa)/(Ws+A)}×100[%] (2)
ただし、式(2)において、
Rwf(%)(見かけの含水比)=3質量%(目標とする含水比)
Ww(骨材に含まれている水分の質量)=(85.0-A)×骨材の含水比
Wa(吸水性材料が吸収する水分の質量)=A×吸水性材料の吸水率
Ws(骨材の乾燥質量)=85.0-A
とした。なお、本実験においては吸水性材料として無機系材料を用いているので、吸水性材料の質量Aを骨材の質量としてカウントし、(吸水性材料の質量A+骨材の乾燥質量Ws)=85.0質量部であることを前提とした。
【0090】
調製した混合物4a、5a、6aについて、実験2におけると同様にして、締固め率及びスランプ値を測定し、さらに曲げ強度を測定した。結果を表5に示す。なお、混合物4aの結果は混合物1と同じであり、表3から転記した。
【0091】
【表5】
【0092】
表5に示すとおり、混合物5aにおいて用いられた骨材の含水比は5.0質量%であり、目標とする含水比である3質量%を上回っている。ところが、吸水性材料を3.21質量部添加することによって、骨材の見掛けの含水比を目標とする含水比である3質量%と一致させたところ、97.5%という高い締固め率が得られ、スランプ値も0cmであった。すなわち、混合物5aは、重機の走行が可能な混合物であり、ローラ転圧により十分な転圧が可能な混合物である。また、曲げ強度も0.95(N/mm)と比較的高く、優れた物性を備えていた。この結果は、同じく含水比が5質量%の骨材を使用し、吸水性材料を添加しない混合物2の結果と比べると、極めて良い結果である。
【0093】
同様に、混合物6aにおいて用いられた骨材の含水比は7.0質量%であり、目標とする含水比である3質量%を上回っている。ところが、吸水性材料を6.18質量部添加することによって、見掛けの含水比を目標とする含水比である3質量%と一致させたところ、97.6%という高い締固め率が得られた。スランプ値も0cmであった。混合物6aは、重機の走行が可能な混合物であり、ローラ転圧により十分な転圧が可能な混合物である。また、曲げ強度も0.80(N/mm)と比較的高く、優れた物性を備えていた。この結果は、同じく含水比が7質量%の骨材を使用し、吸水性材料を添加しない混合物3の結果と比べると、極めて良い結果である。
【0094】
以上のとおり、使用する吸水性材料をセラミックス多孔体である焼成珪藻土から同じくセラミックス多孔体である天然ゼオライトに変えた場合であっても、骨材の見掛けの含水比を目標とする含水比と一致させるに足る量の吸水性材料を添加することによって、使用する骨材の含水比が目標とする含水比と一致している場合と同様に高い施工性を実現することができた。また、得られる硬化体の強度も優れていた。
【0095】
<実験5:吸水性材料の添加が混合物の物性に及ぼす影響-その3->
吸水性材料を下記の有機系の吸水性材料に変え、吸水性材料の添加が混合物の物性に及ぼす影響を調べた。
【0096】
使用した吸水性材料は以下のとおり。
吸水性材料:アクリル酸塩系人工ポリマー(商品名「高含水泥土改良剤MT-2」株式会社森環境技術研究所製[アクリル酸重合体部分ナトリウム塩架橋物]、粉体状、吸水率:不明)
【0097】
用いる吸水性材料の吸水率が不明であったので、実験2で調製した混合物2(骨材の含水比:5質量%)の配合において吸水性材料の添加量を、対骨材に対する質量%で、0、0.04、0.08、0.12質量%と変えて、混合物7a、7b、7c、7dを調製した。同様に、実験2で調製した混合物3(骨材の含水比:7質量%)の配合において吸水性材料の添加量を、対骨材に対する質量%で、0、0.08、0.16、0.24質量%と変えて、混合物8a、8b、8c、8dを調製した。
【0098】
調製した混合物7b~7d、8b~8dについて、実験2におけると同様にして、締固め率及びスランプ値を測定し、さらに曲げ強度を測定した。結果を表6及び表7に示す。なお、混合物1の配合及び物性値は表3から転記した。また、混合物7a及び8aの配合は、それぞれ混合物2及び3と同じであるので、混合物7a及び8aの物性値は、表3における混合物2及び3の物性値を転記した。
【0099】
【表6】
【0100】
【表7】
【0101】
表6に示すとおり、含水比が5質量%である骨材を用いた混合物7a~7dにおいては、吸水性材料の添加量が0.04質量%以下(混合物7a、7b)では、締固め率は96.0%を上回ったものの、スランプ値が15cm又は7cmと大きく、ローラ転圧による締固めができない混合物であった。ところが、吸水性材料の添加量が0.08質量%(混合物7c)、0.12質量%(混合物7d)に増加すると、スランプ値は0cmとなり、締固め率も高い値が維持された。
【0102】
以上の結果から、用いる骨材の含水比が、目標とする含水比である3質量%を上回り、5質量%である場合には、当該有機系の吸水性材料の添加量は、骨材質量に対して0.08質量%以上、少なくとも0.08~0.12質量%であるのが好ましく、それにより、ローラ転圧により十分な締固めが可能な混合物とすることができると判断された。したがって、用いる骨材の含水比が、目標とする含水比である3質量%を上回り、5質量%である場合には、骨材質量に対して0.08質量%以上、好ましくは、0.08~0.12質量%という添加量が、用いる骨材の見掛けの含水比を目標とする含水比とすることができる当該有機系の吸水性材料の添加量であることが分った。ただし、当該有機系の吸水性材料を用いる場合には、添加量の多寡によって曲げ強度には大きな変化は認められなかった。
【0103】
同様に、表7に示すとおり、含水比が7質量%である骨材を用いた混合物8a~8dにおいては、吸水性材料の添加量が0.08質量%以下(混合物8a、8b)では、締固め率は96.0%を上回ったものの、スランプ値が25cm又は11cmと大きく、ローラ転圧による締固めができない混合物であった。ところが、吸水性材料の添加量が0.16質量%(混合物8c)、0.24質量%(混合物8d)に増加すると、スランプ値は0cmとなり、締固め率も高い値が維持された。
【0104】
以上の結果から、用いる骨材の含水比が、目標とする含水比である3質量%を上回り、7質量%である場合には、当該有機系の吸水性材料の添加量は、骨材質量に対して0.16質量%以上、少なくとも0.16~0.24質量%添加するのが好ましく、それにより、ローラ転圧により十分な締固めが可能な混合物とすることができると判断された。したがって、用いる骨材の含水比が、目標とする含水比である3質量%を上回り、7質量%である場合には、骨材質量に対して0.16質量%以上、好ましくは、0.16~0.24質量%という添加量が、用いる骨材の見掛けの含水比を目標とする含水比とすることができる当該有機系の吸水性材料の添加量であることが分った。ただし、用いる骨材の含水比が7質量%である場合にも、当該有機系の吸水性材料の添加量の多寡によって曲げ強度には大きな変化は認められなかった。
【0105】
以上のとおり、吸水性材料として有機系の吸水性材料を用いる場合であっても、吸水性材料を添加することによって、用いる骨材の見掛けの含水比を目標とする含水比と一致させることで、ローラ転圧により十分な締固めが可能な混合物とすることができる。また、吸水性材料の吸水率が不明である場合には、予め吸水性材料の添加量を種々異ならせた供試体を作成し、その締固め率及びスランプ値を測定することにより、用いる骨材の見掛けの含水比を目標とする含水比と一致させる添加量を求めておけば良い。なお、吸水率が判明している場合には、上記式(3)によって吸水性材料の添加量を求めれば良いことは勿論である。
【0106】
<実験6:セメント及びアスファルト乳剤高配合系での骨材含水比が施工性に及ぼす影響>
実験1~5における配合設計よりも、さらにセメント量及びアスファルト乳剤量を高めた高配合設計の混合物について、使用する骨材の含水比が施工性に及ぼす影響を調べる実験を行った。使用した材料及びその配合割合を表8に示す。なお、予め行った予備実験によって、表8に示す配合割合の混合物がローラ転圧により十分な締固めが可能な混合物となるときの骨材の含水比は1.5質量%であることが確認されたので、目標とする含水比を1.5質量%とした。
【0107】
【表8】
【0108】
含水比が1.5質量%、3質量%、5質量%、又は7質量%とそれぞれ異なる4種類の骨材を用意した。用意した4種類の骨材のそれぞれを上記表8に示す配合割合でセメント及びアスファルト乳剤と混合し、骨材の含水比が異なる4種類の混合物9、10、11、12を調製した。調製した混合物9~12を用いて、締固め率及びスランプ値を測定した。結果を表9に示す。
【0109】
【表9】
【0110】
表9に示すとおり、使用した骨材の含水比が目標とする含水比と一致する混合物9は、97.7%という高い締固め率を示し、スランプ値も0cmであり、ローラ転圧により十分な締固めが可能と判断される混合物であった。
【0111】
これに対し、使用した骨材の含水比が目標とする含水比を上回り3.0質量%、5質量%、又は7質量%と高い混合物10、11、12は、締固め率は96.0%を上回る高い値を示したものの、スランプ値が15cm、25cm、25cmと大きく、高い流動性を示した。その結果、混合物10、11、12は、その上をローラ転圧機などの重機を走行させてのローラ転圧ができないと判断される混合物であった。
【0112】
<実験7:セメント及びアスファルト乳剤高配合系での吸水性材料の添加が混合物の物性に及ぼす影響>
吸水性材料として、実験3で用いたのと同じ、セラミックス多孔体(商品名「イソライトCG1」イソライト工業株式会社製[焼成珪藻土含有量:45~75質量%]、粒状[直径:0.3~2mm]、吸水率:61質量%)を用い、実験6で調製した混合物9、10、11、12の配合において、それぞれ、0質量部、1.8質量部、4.2質量部、及び6.5質量部の上記吸水性材料を添加し、添加した吸水性材料の分だけ骨材の配合量を減らした以外は、実験3におけると同様にして混合物9a、10a、11a、及び12aを調製した。
【0113】
吸水性材料の上記添加量は、式(2)に基づいてA(吸水性材料の質量)を計算することによって求めた値である。
Rwf={(Ww-Wa)/(Ws+A)}×100[%] (2)
ただし、式(2)において、
Rwf(%)(見かけの含水比)=1.5質量%(目標とする含水比)
Ww(骨材に含まれている水分の質量)=(80.0-A)×骨材の含水比
Wa(吸水性材料が吸収する水分の質量)=A×吸水性材料の吸水率
Ws(骨材の乾燥質量)=80.0-A
とした。なお、本実験においては吸水性材料として無機系材料を用いているので、吸水性材料の質量Aを骨材の質量としてカウントし、(吸水性材料の質量A+骨材の乾燥質量Ws)=80.0質量部であることを前提とした。
【0114】
調製した混合物9a、10a、11a、12aについて、実験2におけると同様にして、締固め率及びスランプ値を測定し、さらに曲げ強度を測定した。結果を表10に示す。なお、混合物9aは混合物9と同じであり、その締固め率及びスランプ値は表9から転記した。
【0115】
【表10】
【0116】
表10に示すとおり、混合物10aにおいて用いられた骨材の含水比は3.0質量%であり、目標とする含水比である1.5質量%を上回っているが、吸水性材料を1.8質量部添加することによって、骨材の見掛けの含水比を目標とする含水比である1.5質量%と一致させたところ、97.6%という高い締固め率が得られるとともに、スランプ値も0cmであった。すなわち、混合物10aは、重機の走行が可能な混合物であり、ローラ転圧により十分な転圧が可能な混合物である。また、曲げ強度も2.2(N/mm)と比較的高く、優れた物性を備えていた。
【0117】
同様に、混合物11a及び12aにおいて用いられた骨材の含水比は、それぞれ5.0質量%及び7.0質量%であり、いずれも目標とする含水比である1.5質量%を上回っている。ところが、吸水性材料を、それぞれ4.2質量部及び6.5質量部添加することによって、見掛けの含水比を目標とする含水比である1.5質量%と一致させたところ、それぞれ、97.7%及び97.4%という高い締固め率が得られた。また、スランプ値はいずれも0cmであった。混合物11a及び12aは、重機の走行が可能な混合物であり、ローラ転圧により十分な転圧が可能な混合物である。また、曲げ強度は、双方とも2.0(N/mm)と高く、優れた物性を備えていた。
【0118】
以上のとおり、骨材80質量部に対してセメントとアスファルト乳剤とを両者合計で20.0質量部配合した添加材高配合の混合物であっても、吸水性材料を添加して、使用する骨材の見掛けの含水比を目標とする含水比と一致させることによって、使用する骨材の含水比が目標とする含水比と一致する骨材を使用したときと変わらぬ施工性を備えた混合物とすることが可能である。
【0119】
このように本発明に係る舗装層の再生工法は、対象とする混合物の配合組成に関わらず有用であるが、骨材に対するセメント及びアスファルト乳剤の設計配合量が比較的多い混合物を用いて再生舗装層を構築する場合には、使用する再生骨材の含水比が目標とする含水比を上回ることが多いので、特に有用である。骨材に対するセメント及びアスファルト乳剤の設計配合量が比較的多い混合物としては、例えば、アスファルト乳剤中の蒸発残留物の質量とセメントの質量の合計が、混合物中の乾燥固形分の合計質量の10質量%以上となる割合で含まれている混合物が挙げられる。そのような混合物においては、アスファルト乳剤中の蒸発残留物の質量のセメント質量に対する比が0.7以上1.2以下となる割合でアスファルト乳剤とセメントとが配合されているのが望ましい。
【0120】
以上のようにして、吸水性材料を混合して構築された再生舗装層は、再生骨材と吸水性材料を含んでいることで特徴付けられる舗装層であり、さらには、アスファルトと、セメントの硬化体を含んでいることで特徴付けられる再生舗装層である。したがって、本発明に係る舗装層の再生工法を実行して得られる再生舗装層は、再生骨材と吸水性材料を含む再生舗装層であり、通常、アスファルトとセメントの硬化体とをさらに含む再生舗装層である。
【0121】
さらに、以上のようにして、吸水性材料を混合して骨材の見掛けの含水比を目標含水比と一致させることによって、骨材の含水比に依存する物性を改善することは、舗装層の再生工法に限らず、使用する骨材の含水比が、その骨材を他の添加材料と混合して得られる混合物やその硬化体の物性に影響を及ぼす場合にも多大なる効果を発揮することは明らかである。したがって、上述した方法は、再生骨材に限らず、骨材に吸水性材料を混合して、吸水性材料が吸収する水分の質量を除いて求められる骨材の見掛けの含水比を低減させることによって、含水比に依存する骨材物性、或いは骨材の含水比に依存する骨材含有混合物の物性を改善する方法でもある。
【産業上の利用可能性】
【0122】
以上説明したとおり、本発明の舗装層の再生工法によれば、施工対象となる既設舗装が比較的に多量の水分を含む場合であっても、吸水性材料を添加し、見掛けの含水比を低下させることによって、施工性良く、再生舗装層を構築することができる。このため、水分の自然蒸発を待ったり、路盤材や既設舗装の破砕物を入れ替えたりすることなく、速やかに計画どおりに舗装層を再生構築することができる。本発明の産業上の利用可能性は多大である。