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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024077282
(43)【公開日】2024-06-07
(54)【発明の名称】車両制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60R 11/02 20060101AFI20240531BHJP
   G01C 21/26 20060101ALI20240531BHJP
【FI】
B60R11/02 C
G01C21/26 A
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022189276
(22)【出願日】2022-11-28
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-09-13
(71)【出願人】
【識別番号】596078256
【氏名又は名称】フジ電機工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000947
【氏名又は名称】弁理士法人あーく事務所
(72)【発明者】
【氏名】細見 亜季法
(72)【発明者】
【氏名】野口 優也
(72)【発明者】
【氏名】山岡 貴弘
【テーマコード(参考)】
2F129
3D020
【Fターム(参考)】
2F129AA03
2F129BB20
2F129EE02
2F129EE52
2F129EE67
2F129GG23
2F129HH12
3D020BA05
3D020BA06
3D020BE03
(57)【要約】
【課題】車両走行中であってもテレビの視聴を可能としながらも、車載ナビゲーション装置による自車両の位置認識の精度を十分に得ることができる車両制御装置を提供する。
【解決手段】車両ECU1からの車両CAN信号を受信する車両制御装置2に、車両CAN信号を車速信号に変換し、該車速信号として車速情報を表すパルス波形と車両停止情報を表すパルス波形とが交互に現れる変調波形を生成する変換信号生成部24を備えさせる。この変調波形の変換信号を車載ナビゲーション装置3に向けて送信することにより、車両走行中であってもカーテレビ装置の視聴を可能としながらも、車載ナビゲーション装置3による自車両の位置認識の精度を十分に得ることができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車載ナビゲーション装置に搭載されているカーテレビ装置の車両走行中における視聴を可能とする車両制御装置において、
車両情報が入力される情報入力部と、
前記情報入力部に入力された前記車両情報を利用して、前記車載ナビゲーション装置における自車位置認識のために供される車速情報および前記カーテレビ装置を視聴可能とする条件としての車両停止情報を含む変換信号を生成する変換信号生成部と、
前記変換信号生成部によって生成された前記変換信号を前記車載ナビゲーション装置に向けて送信する変換信号送信部と、を備えていることを特徴とする車両制御装置。
【請求項2】
請求項1記載の車両制御装置において、
前記情報入力部に入力される前記車両情報は、車両ECUからの車両CAN信号であり、
前記変換信号生成部は、前記車両CAN信号を、前記変換信号としての車速信号に変換するものであることを特徴とする車両制御装置。
【請求項3】
請求項2記載の車両制御装置において、
前記変換信号生成部は、前記車速信号として車速パルス波形を生成するものであって、前記車速情報を表すパルス波形と、前記車両停止情報を表すパルス波形とが交互に現れる変調波形を生成するものであることを特徴とする車両制御装置。
【請求項4】
請求項3記載の車両制御装置において、
前記車速情報を表すパルス波形の時間長さは1.0sec以下の値に設定されていることを特徴とする車両制御装置。
【請求項5】
請求項3または4記載の車両制御装置において、
前記車両停止情報を表すパルス波形の時間長さは1.5secを超える値に設定されていることを特徴とする車両制御装置。
【請求項6】
請求項3記載の車両制御装置において、
所定期間内における、前記車速情報を表すパルス波形の時間長さと、前記車両停止情報を表すパルス波形の時間長さとの比は1:2に設定されていることを特徴とする車両制御装置。
【請求項7】
請求項6記載の車両制御装置において、
前記車速情報を表すパルス波形の時間長さは0.8secであり、前記車両停止情報を表すパルス波形の時間長さは1.6secであることを特徴とする車両制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両制御装置に係る。特に、本発明は、車両に搭載されたカーテレビ装置の車両走行中における視聴制限を解除するための車両制御装置の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、メーカ純正や販売店オプション等の車載ナビゲーション装置に搭載されているカーテレビ装置(以下、単にテレビという場合もある)には、運転者による運転の安全性確保のために、車両走行中に視聴ができないような機能が搭載されている。しかしながら、運転を行わない助手席や後部座席の同乗者も車両走行中にテレビを視聴することができないため、同乗者にとっては不便であった。
【0003】
そこで、例えば特許文献1に開示されているように、車両走行中であってもテレビの視聴を可能にするテレビキャンセラが提案されている。従来の一般的なテレビキャンセラは、車載ナビゲーション装置に対して送信している車速信号に代えて、車両が停止(停車)していることを模擬する模擬信号を送信することにより、車両走行中であるにも拘わらず、車両が停止していると車載ナビゲーション装置に判断させ、これによって、車両走行中におけるテレビの視聴を可能にしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013-244955号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前述した模擬信号(車両が停止していると判断させるための模擬信号)を用いた方式では、テレビの視聴中には車載ナビゲーション装置に車速信号が送信されないことから、車載ナビゲーション装置が認識する車両の位置(自車両の位置)が実際の位置からずれてしまい、車載ナビゲーション装置の精度(ナビゲーションのための位置認識の精度)が十分に得られない可能性があった。
【0006】
つまり、車載ナビゲーション装置は、受信した車速信号(例えば電圧信号)の情報を基に実際の自車両の位置と地図上における自車両の位置とを合致させるように設計されているが、前述した模擬信号を用いた方式の場合、テレビの視聴中には車載ナビゲーション装置に車速信号が入力されないことから、車速信号を利用することによる自車両の位置の更新を行うことができず、その結果、車載ナビゲーション装置が認識する自車両の位置が実際の位置からずれてしまって自車両の位置認識の精度が十分に得られない可能性があった。
【0007】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、車両走行中であってもテレビの視聴を可能としながらも、車載ナビゲーション装置による自車両の位置認識の精度を十分に得ることができる車両制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の目的を達成するための本発明の解決手段は、車載ナビゲーション装置に搭載されているカーテレビ装置の車両走行中における視聴を可能とする車両制御装置を前提とする。そして、この車両制御装置は、車両情報が入力される情報入力部と、前記情報入力部に入力された前記車両情報を利用して、前記車載ナビゲーション装置における自車位置認識のために供される車速情報および前記カーテレビ装置を視聴可能とする条件としての車両停止情報を含む変換信号を生成する変換信号生成部と、前記変換信号生成部によって生成された前記変換信号を前記車載ナビゲーション装置に向けて送信する変換信号送信部とを備えていることを特徴とする。
【0009】
この特定事項により、乗員からテレビ視聴要求が生じた際、変換信号生成部は、情報入力部に入力された車両情報を利用して変換信号を生成する。この変換信号は、車載ナビゲーション装置における自車位置認識のために供される車速情報およびカーテレビ装置を視聴可能とする条件としての車両停止情報を含む信号となっている。変換信号に車両停止情報が含まれていることから、車両停止を条件としているカーテレビ装置の視聴が可能となる。また、変換信号に車速情報が含まれていることから、この車速情報を利用することによって、車載ナビゲーション装置が認識する車両の位置(自車両の位置)を実際の位置に追従させていくことが可能となる。その結果、車載ナビゲーション装置の精度(ナビゲーションのための位置認識の精度)を十分に得ることが可能になる。このように、本解決手段によれば、車両走行中であってもカーテレビ装置の視聴を可能としながらも、車載ナビゲーション装置による自車両の位置認識の精度を十分に得ることができる。
【0010】
また、前記情報入力部に入力される前記車両情報は、車両ECUからの車両CAN信号であり、前記変換信号生成部は、前記車両CAN信号を、前記変換信号としての車速信号に変換するものである。
【0011】
この場合、前記変換信号生成部は、前記車速信号として車速パルス波形を生成するものであって、前記車速情報を表すパルス波形と、前記車両停止情報を表すパルス波形とが交互に現れる変調波形を生成するものである。
【0012】
このようにして車速情報を表すパルス波形と車両停止情報を表すパルス波形とが交互に現れる変調波形を生成して車載ナビゲーション装置に向けて送信することにより、車両停止情報(車両停止情報を表すパルス波形)が含まれていることに起因するカーテレビ装置の視聴を可能にすることと、車速情報(車速情報を表すパルス波形)が含まれていることに起因する車載ナビゲーション装置が認識する車両の位置を実際の位置に追従させていくこととの両立を確実に得ることができる。
【0013】
具体的に、前記車速情報を表すパルス波形の時間長さは1.0sec以下の値に設定されている。
【0014】
この車速情報を表すパルス波形の時間長さが1.0secを超える場合、カーテレビ装置の視聴ができない可能性がある。つまり、車両走行中であってもカーテレビ装置の視聴を可能にするためには、前記車速情報を表すパルス波形の時間長さは1.0sec以下の値に設定することが必要となる。
【0015】
また、前記車両停止情報を表すパルス波形の時間長さは1.5secを超える値に設定されている。
【0016】
この車両停止情報を表すパルス波形の時間長さが1.5sec以下であった場合、カーテレビ装置の視聴ができない可能性がある。つまり、車両走行中であってもカーテレビ装置の視聴を可能にするためには、前記車両停止情報を表すパルス波形の時間長さは1.5secを超える値に設定することが必要となる。
【0017】
より具体的に、所定期間内における、前記車速情報を表すパルス波形の時間長さと、前記車両停止情報を表すパルス波形の時間長さとの比は1:2に設定されている。
【0018】
ここでいう比の1:2の概念は約1:2を含むものであり、例えば、車両停止情報を表すパルス波形の時間長さとしては、車速情報を表すパルス波形の時間長さの2倍の時間長さに対して±10%程度の範囲も含むものである。
【0019】
この特定事項は、車速情報を表すパルス波形と車両停止情報を表すパルス波形とが交互に現れる変調波形の最適化を図ったものである。これにより、前述した効果をいっそう確実なものとすることができる。
【0020】
更には、前記車速情報を表すパルス波形の時間長さは0.8secであり、前記車両停止情報を表すパルス波形の時間長さは1.6secであることがより好ましい。
【0021】
ここでいう各時間長さの概念についても、車速情報を表すパルス波形の時間長さとしては約0.8secであり、車両停止情報を表すパルス波形の時間長さとしては約1.6secである。具体的に、前述した車速情報を表すパルス波形の時間長さと車両停止情報を表すパルス波形の時間長さとの比(約1:2)を満たすことを条件として、車速情報を表すパルス波形の時間長さとしては0.8secに対して±25%程度(より好ましくは±10%程度)の範囲を含んでおり、前記車両停止情報を表すパルス波形の時間長さとしては1.6secに対して±6%程度の範囲を含んでいる。
【発明の効果】
【0022】
本発明では、車載ナビゲーション装置における自車位置認識のために供される車速情報およびカーテレビ装置を視聴可能とする条件としての車両停止情報を含む変換信号を生成し、この変換信号を車載ナビゲーション装置に向けて送信するようにしている。これにより、車両走行中であってもカーテレビ装置の視聴を可能としながらも、車載ナビゲーション装置による自車両の位置認識の精度を十分に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】実施形態に係る車両ECU、車両制御装置および車載ナビゲーション装置の接続状態の概略構成を示すブロック図である。
図2図2(a)は車両ECUから送信される車速信号の一例を示す波形図であり、図2(b)は車両制御装置によって変調された車速信号の一例を示す波形図である。
図3】車両制御装置における処理動作の手順を示すフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。本実施形態は、車内通信の形態としてCAN-BUS(Controller Area Network-BUS)通信を採用した場合について説明する。尚、車内通信の形態としては、CAN-BUS通信に限らず、AVC-LAN(Audio Visual Communication-Local Area Network)やLIN(Local Interconnect Network)等を採用してもよい。
【0025】
図1は、本実施形態に係る車両ECU1、車両制御装置2および車載ナビゲーション装置(ディスプレイオーディオとも呼ばれる)3の接続状態の概略構成を示すブロック図である。尚、この図1は、車載オーディオシステムのうち、車両走行中であってもカーテレビ装置(車載ナビゲーション装置3に搭載されたカーテレビ装置)の視聴を可能にするための構成および本発明における特徴部分の構成を抜粋して示している。
【0026】
図1に示すように、車両ECU1、車両制御装置2および車載ナビゲーション装置3の接続状態としては、車両ECU1と車両制御装置2とが、CAN信号線L1および信号線L2によって接続され、車両ECU1から車両制御装置2への信号の送信が可能となっている。また、車両制御装置2と車載ナビゲーション装置3とが、車速信号線L3およびパーキングブレーキ信号線L4によって接続され、車両制御装置2から車載ナビゲーション装置3への信号の送信が可能となっている。
【0027】
-車両ECU-
車両ECU1は車両を制御するコンピュータである。一般的に、1台の車両には複数の車両ECUが搭載されており、図1における車両ECU1はこれら複数の車両ECUの集合に相当する。車両ECU1は、各種信号の送信部としてCAN信号送信部11および車速信号送信部12を備えている。
【0028】
CAN信号送信部11は、CAN信号線L1によって車両制御装置2に接続されており、各種車両情報をデジタル信号によって車両ECU1から車両制御装置2へ送信可能な構成となっている。尚、CAN-BUS上には車両を制御するための様々な車両ECUが接続されているため、CAN-BUS上の通信データには車両のあらゆる情報が含まれている。例えば、車両に搭載された各種制御装置がそれぞれどのような動作状態であるのかといった情報や車速の情報等が含まれている。この車速の情報が含まれていることにより、車速に応じた信号が、車両ECU1からCAN信号線L1によって車両制御装置2に送信可能となっている。
【0029】
車速信号送信部12は、信号線L2によって車両制御装置2に接続されており、車速情報を車両ECU1から車両制御装置2へ送信可能な構成となっている。つまり、車速に応じたパルス波形信号が、車両ECU1から信号線L2によって車両制御装置2に送信可能となっている。
【0030】
-車両制御装置-
車両制御装置2は、車両ECU1から送信された信号に応じて、カーテレビ装置の視聴を可能にする条件を満たすための情報や自車両の位置認識のための情報を車載ナビゲーション装置3に送信する装置である。
【0031】
また、車両制御装置2には、パーキングブレーキ信号発生器4およびテレビスイッチ5が信号線L5,L6によって接続されている。パーキングブレーキ信号発生器4は、車両のパーキングブレーキレバー(所謂サイドブレーキレバー)の状態に応じてパーキングブレーキ信号を出力(送信)する。つまり、パーキングブレーキレバーが引き上げられた状態(パーキングブレーキが掛けられた状態)では車両制御装置2に向けて送信されるパーキングブレーキ信号をLoとし、パーキングブレーキレバーが下げられた状態(パーキングブレーキが解除された状態)では車両制御装置2に向けて送信されるパーキングブレーキ信号をHiとする。これに限らず、パーキングブレーキレバーが引き上げられた状態ではパーキングブレーキ信号をHiとし、パーキングブレーキレバーが下げられた状態ではパーキングブレーキ信号をLoとするようにしてもよい。尚、パーキングブレーキレバーに代えてパーキングブレーキスイッチを備えた車両にあっては、パーキングブレーキスイッチのON/OFF操作に応じて前述と同様にパーキングブレーキ信号を切り替えるものとなる。尚、パーキングブレーキ信号は車両ECU1のCAN信号送信部11から送信される車両情報に含まれるようになっていてもよい。この場合、個別のパーキングブレーキ信号発生器4を備えさせる必要はない。
【0032】
テレビスイッチ5は、乗員によるON操作(乗員のテレビ視聴要求に伴うON操作)によってテレビの視聴を可能にするためのスイッチである。つまり、テレビスイッチ5がON操作されると、テレビ視聴要求信号を車両制御装置2に向けて送信し、テレビスイッチ5がOFF操作されると、純正状態(信号線L2と車速信号線L3とが接続される状態)となる。テレビスイッチ5は、車両に備えられているスイッチを使用してもよい。
【0033】
そして、車両制御装置2は、内蔵されたROM等の記憶媒体に記憶された制御プログラムによって実現される機能部として、CAN信号受信部(情報入力部)21、車速信号受信部22、信号経路切替部23、変換信号生成部24、車速信号送信部(変換信号送信部)25、パーキングブレーキ信号送信部26を備えている。以下、これら各部の機能の概略について説明する。
【0034】
CAN信号受信部21は、車両ECU1のCAN信号送信部11から送信された各種車両情報(前記車速の情報を含む)をCAN信号線L1を介して受信する。
【0035】
車速信号受信部22は、車両ECU1の車速信号送信部12から送信された車速情報を信号線L2を介して受信する。
【0036】
信号経路切替部23は、車速信号送信部12から送信される車速信号およびパーキングブレーキ信号発生器4から送信されるパーキングブレーキ信号の送信先を切り替えるものである。この切り替えは、テレビスイッチ5のON・OFFに応じて行われる。
【0037】
具体的に、テレビスイッチ5がOFFの場合(カーテレビ装置の視聴要求が生じていない場合)には、車速信号受信部22が車速信号送信部25に接続されて、車載ナビゲーション装置3に車速信号が送信される状態となる。一方、テレビスイッチ5がONの場合(カーテレビ装置の視聴要求が生じている場合)には、車速信号受信部22は車速信号送信部25に接続されない状態(切断状態)となる。この車速信号受信部22の接続状態の切り替えは図示しないリレー等の開閉スイッチによって実現される。
【0038】
また、テレビスイッチ5がONの場合には、パーキングブレーキ信号発生器4からのパーキングブレーキ信号を送信する信号線は図示しないアースラインに接続される。これにより、パーキングブレーキ信号が、パーキングブレーキ信号線L4により車載ナビゲーション装置3に送信される状態となる(パーキングブレーキレバーが引き上げられていると車載ナビゲーション装置3が判断する状態となる)。このアースラインへの接続の切り替えも図示しないリレー等の開閉スイッチによって実現される。
【0039】
変換信号生成部24は、CAN信号受信部21が受信した車両情報を利用して、車載ナビゲーション装置3における自車位置認識のために供される車速情報およびカーテレビ装置を視聴可能とする条件としての車両停止情報を含む変換信号を生成する。具体的に、変換信号生成部24は、テレビスイッチ5がONとなっていることを条件として、CAN信号送信部11から受信した車両情報に係る信号(車両CAN信号)を車速信号に変換する。この車速信号は、車速パルス波形として生成されるものであり、車速情報を表すパルス波形と車両停止情報を表すパルス波形とが交互に現れる変調波形として生成される。ここで変換信号生成部24によって変換および変調されるパルス波形の信号(車速信号)は、車速信号送信部12から送信されるパルス波形の信号(車速信号)とは異なるものである。以下,各パルス波形の信号について具体的に説明する。
【0040】
図2(a)は車両ECU1から送信される車速信号(例えば車速信号送信部12から送信される車速信号)の一例を示す波形図であり、図2(b)は変換信号生成部24によって変調された車速信号の一例を示す波形図である。
【0041】
テレビスイッチ5がOFFの場合(カーテレビ装置の視聴要求が生じていない場合)には、車両制御装置2が受信した車速信号は、変換および変調されることなく、車速信号送信部25から車速信号線L3を経て車載ナビゲーション装置3に送信される。これにより、車載ナビゲーション装置3では、この車速信号(図2(a)に示す車速信号)を利用することによる自車両の位置の更新が可能であり、車載ナビゲーション装置3が認識する自車両の位置が実際の位置からずれてしまうことがなく、自車両の位置認識の精度が十分に得られる。
【0042】
尚、車速信号は、車速に応じたDuty比を有しており、図2(a)に示すものは、所定期間A(例えば2.4sec)中に7個のON期間を有したDuty比50%の波形となっている。つまり、パルス幅が0.16secでパルス周期が0.32secとなっているDuty比50%の波形となっている。車速信号は、車速に応じて変化するため、図2(a)に示すものには限定されず、車速に応じてパルス幅、パルス周期、Duty比は変化することになる。
【0043】
一方、テレビスイッチ5がONの場合(カーテレビ装置の視聴要求が生じている場合)には、車両制御装置2が受信した車速信号は、変換信号生成部24によって変換および変調され、車速信号送信部25から車速信号線L3を経て車載ナビゲーション装置3に送信される。
【0044】
具体的には、例えば図2(b)に示す車速信号が車載ナビゲーション装置3に送信される。この変換信号生成部24によって変換および変調された車速信号としては前述したように車速情報を表すパルス波形と車両停止情報を表すパルス波形とが交互に現れる変調波形として生成されている。そして、車速情報を表すパルス波形の時間長さ(図2(b)における時間長さA1を参照)としては1.0sec以下の値に設定されている。また、車両停止情報を表すパルス波形の時間長さ(図2(b)における時間長さA2を参照)としては1.5secを超える値に設定されている。
【0045】
本実施形態にあっては、車速情報を表すパルス波形の時間長さ(図2(b)における時間長さA1を参照)と、車両停止情報を表すパルス波形の時間長さ(図2(b)における時間長さA2を参照)との比が約1:2に設定されたものとなっている。具体的に、車速情報を表すパルス波形の時間長さは1.0sec以下の値であって、より具体的には約0.8secであり、車両停止情報を表すパルス波形の時間長さは1.5secを超える値であって、より具体的には約1.6secとなっている。図2(b)に示すものは、車速情報を表すパルス波形としては、所定期間(例えば2.4sec)中における0.8secの期間A1中に7個のON期間を有し、この0.8secの期間A1中におけるDuty比が50%の波形となっている。つまり、パルス幅が約0.053secでパルス周期が約0.106secとなっているDuty比50%の波形となっている。前述したように車速情報を表すパルス波形の時間長さA1と車両停止情報を表すパルス波形の時間長さA2との比が約1:2に設定されたものとなっていることから、例えば、車両が60km/hで走行している場合、車速情報を表すパルス波形は約180km/hで走行している場合に相当する波形となっている。これにより、前記所定期間においてパルス波形に基づいて認識される車両の移動距離が実際の移動距離に略合致したものとして得られるようになっている。これらの値はこれに限定されるものではなく、種々の条件(例えば車速領域等)に応じて変更される場合がある。また、車速情報を表すパルス波形(車速信号の波形)は、車速に応じて変化するため、図2(b)に示すものには限定されない。
【0046】
また、車両停止情報を表すパルス波形としては、所定期間(例えば2.4sec)中における1.6secの期間A2がOFFであって、この1.6secの期間A2中におけるDuty比が0%の波形となっている。
【0047】
尚、前述した車速情報を表すパルス波形としては、車速情報を表すパルス波形と車両停止情報を表すパルス波形とが反転することも本発明の技術的思想の範疇である。例えば、車速情報を表すパルス波形のDuty比が50%であり、車両停止情報を表すパルス波形のDuty比が100%である場合が挙げられる。
【0048】
また、前述した車速情報を表すパルス波形の時間長さA1と車両停止情報を表すパルス波形の時間長さA2との比としての約1:2は、車両停止情報を表すパルス波形の時間長さA2として車速情報を表すパルス波形の時間長さA1の2倍の時間長さに対して±10%程度の範囲を含むものである。また、前述した車速情報を表すパルス波形の時間長さと車両停止情報を表すパルス波形の時間長さとの比(約1:2)を満たすことを条件として、車速情報を表すパルス波形の時間長さA1としては0.8secに対して±25%程度(より好ましくは±10%程度)の範囲を含んでおり、車両停止情報を表すパルス波形の時間長さA2としては1.6secに対して±6%程度の範囲を含んでいる。
【0049】
-車載ナビゲーション装置-
車載ナビゲーション装置3は、ナビゲーション部31、ディスプレイ32、テレビチューナ33、車速信号受信部34、パーキングブレーキ信号受信部35等を備えている。
【0050】
ナビゲーション部31は、乗員が車載ナビゲーション装置3を操作することによって設定された目的地に向けての経路を設定する公知のナビゲーション機能を有する。ディスプレイ32は、設定された経路の地図情報の表示やテレビ視聴時のテレビ画像の表示を行う。テレビチューナ33は、図示しないテレビアンテナと接続されており、該テレビアンテナによって受信された複数のテレビ放送波の中からユーザの選択に応じて、目的の放送局のチャンネルを選局し、選局されたテレビ放送波に基づいた放送内容を示す画像データをディスプレイ32に送信する。
【0051】
車速信号受信部34は、車速信号線L3によって車両制御装置2に接続されており、テレビスイッチ5がONの場合(カーテレビ装置の視聴要求が生じている場合)には、前記変換信号生成部24によって生成された変換信号を受信する。パーキングブレーキ信号受信部35はパーキングブレーキ信号線L4によって車両制御装置2に接続されており、該車両制御装置2からパーキングブレーキ信号が受信可能となっている。
【0052】
尚、車載ナビゲーション装置3は、搭載する車両のメーカ純正のものであってもよいし、同様の構成を有するのであれば、メーカ純正のものに限定されず、車両の販売店のオプション製品や市販品であってもよい。
【0053】
-処理動作の手順-
次に、本実施形態に係る車両制御装置2における処理動作の手順を図3のフローチャートに沿って説明する。
【0054】
先ず、車載オーディオシステムに車両制御装置2が取り付けられた場合、ステップST1では、この車両制御装置2による初期設定処理が行われる。ステップST1では、取り付けられた車両制御装置2による初期設定処理が行われる。
【0055】
この初期設定処理が行われた後、ステップST2では、車両制御装置2の動作モードメモリの読み込みが行われる。
【0056】
その後、ステップST3に移り、スイッチ操作(例えばテレビスイッチ5の操作)が行われたか否かを判定する。スイッチ操作が行われたことでステップST3でYES判定された場合にはステップST4に移り、当該スイッチ操作が行われたことに伴う周知の処理が実行される。
【0057】
その後、ステップST5に移り、車両ECU1から車両情報を取得したか否かを判定する。ここで取得される車両情報としては、前述したようにテレビスイッチ5がON操作されている場合には、CAN信号受信部21からの車両情報となる。尚、スイッチ操作が行われず、ステップST3でNO判定されている場合にはステップST4の処理を実行することなくステップST5の判定動作を行うことになる。
【0058】
車両ECU1から車両情報を取得したことでステップST5でYES判定された場合にはステップST6に移り、この取得した車両情報の処理を行い、この処理時間が、予め規定された時間を経過したか否かをステップST7で判定する。尚、車両情報を取得しておらず、ステップST5でNO判定されている場合にはステップST6の処理を実行することなくステップST7の判定動作を行うことになる。
【0059】
規定された時間を経過したことでステップST7でYES判定された場合には、ステップST8に移り、変換信号生成部24における前述した信号の変換および変調の処理が行われて変換信号(例えば図2(b)で示した変換信号)が生成される。この処理は規定された時間が経過するまで(ステップST7でNO判定されている期間中)は実行されない。変換信号生成部24によって変換信号が生成された場合、この変換信号が車載ナビゲーション装置3に送信されることになる。これにより、車両走行中であってもカーテレビ装置の視聴を可能としながらも、車載ナビゲーション装置3による自車両の位置認識の精度を十分に得ることが可能になる。
【0060】
ステップST9では、車両のスタートスイッチ等の操作によってACC-OFFとなったか否かを判定する。ACC-ON状態が維持されている間(ステップST9でNO判定されている間)は、前述したステップST3~ステップST9の動作を繰り返す。一方、ACC-OFFとなった場合には本処理動作を終了する。
【0061】
-実施形態の効果-
以上説明したように、本実施形態では、乗員からテレビ視聴要求が生じた際、変換信号生成部24によって前記変換信号が生成されるようになっている。この変換信号は、カーテレビ装置を視聴可能とする条件としての車両停止情報を含む信号であることから、車両停止を条件としているカーテレビ装置の視聴が可能となる。また、この変換信号は、車載ナビゲーション装置3における自車位置認識のために供される車速情報を含む信号であることから、この車速情報を利用することによって、車載ナビゲーション装置3が認識する車両の位置(自車両の位置)を実際の位置に追従させていくことが可能となる。その結果、車載ナビゲーション装置3にカーテレビ装置が搭載されたシステムであっても車載ナビゲーション装置3の精度(ナビゲーションのための位置認識の精度)を十分に得ることが可能になる。このように、本実施形態によれば、車両走行中であってもカーテレビ装置の視聴を可能としながらも、車載ナビゲーション装置3による自車両の位置認識の精度を十分に得ることができる。
【0062】
特に、本実施形態では、所定期間内における、車速情報を表すパルス波形の時間長さと、車両停止情報を表すパルス波形の時間長さとの比を約1:2に設定していることにより、車速情報を表すパルス波形と車両停止情報を表すパルス波形とが交互に現れる変調波形の最適化を図ることができ、車両停止情報(車両停止情報を表すパルス波形)が含まれていることに起因するカーテレビ装置の視聴を可能にすることと、車速情報(車速情報を表すパルス波形)が含まれていることに起因する車載ナビゲーション装置3が認識する車両の位置を実際の位置に追従させていくこととの両立を確実に得ることができる。
【0063】
尚、本発明の発明者らは、前述の効果を発揮する条件として、車両停止情報を表すパルス波形の時間長さとしては、車速情報を表すパルス波形の時間長さの2倍の時間長さに対して±10%程度の範囲であることを実験によって確認している。また、本発明の発明者らは、前述の効果を発揮する条件として、前述した車速情報を表すパルス波形の時間長さと車両停止情報を表すパルス波形の時間長さとの比(約1:2)を満たすことを条件として、車速情報を表すパルス波形の時間長さとしては0.8secに対して±25%程度の範囲であり、車両停止情報を表すパルス波形の時間長さとしては1.6secに対して±6%程度の範囲であることについても実験によって確認している。
【0064】
尚、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲および該範囲と均等の範囲で包含される全ての変形や応用が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明は、車両走行中であってもテレビの視聴を可能としながらも、車載ナビゲーション装置による自車両の位置認識の精度を十分に得ることができる車両制御装置に適用可能である。
【符号の説明】
【0066】
1 車両ECU
2 車両制御装置
21 CAN信号受信部(情報入力部)
24 変換信号生成部
25 車速信号送信部(変換信号送信部)
3 車載ナビゲーション装置
図1
図2
図3
【手続補正書】
【提出日】2023-06-19
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車載ナビゲーション装置に搭載されているカーテレビ装置の車両走行中における視聴を可能とする車両制御装置において、
車両情報が入力される情報入力部と、
前記情報入力部に入力された前記車両情報を利用して、前記車載ナビゲーション装置における自車位置認識のために供される車速情報および前記カーテレビ装置を視聴可能とする条件としての車両停止情報を含む変換信号を生成する変換信号生成部と、
前記変換信号生成部によって生成された前記変換信号を前記車載ナビゲーション装置に向けて送信する変換信号送信部と、を備えており、
前記情報入力部に入力される前記車両情報は、車両ECUのCAN信号送信部から送信される車速の情報を含む車両CAN信号であり、
前記変換信号生成部は、前記変換信号として前記車速情報を表すパルス波形と前記車両停止情報を表すパルス波形とが交互に現れる変調波形を生成するものであり、
前記車速情報を表すパルス波形は、前記入力された車両情報における車速が高いほど、また、同一車速であっても前記車両停止情報を表すパルス波形の時間長さに対する前記車速情報を表すパルス波形の時間長さの比が小さいほど、前記車速情報を表すパルス波形の期間中におけるパルス幅が短くなる波形として与えられるものであることを特徴とする車両制御装置。
【請求項2】
請求項1記載の車両制御装置において、
前記車速情報を表すパルス波形の時間長さは1.0sec以下の値に設定されていることを特徴とする車両制御装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の車両制御装置において、
前記車両停止情報を表すパルス波形の時間長さは1.5secを超える値に設定されていることを特徴とする車両制御装置。
【請求項4】
請求項1記載の車両制御装置において、
所定期間内における、前記車速情報を表すパルス波形の時間長さと前記車両停止情報を表すパルス波形の時間長さとの比は1:2に設定されていることを特徴とする車両制御装置。
【請求項5】
請求項4記載の車両制御装置において、
前記車速情報を表すパルス波形の時間長さは0.8secであり、前記車両停止情報を表すパルス波形の時間長さは1.6secであることを特徴とする車両制御装置。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0008
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0008】
前記の目的を達成するための本発明の解決手段は、車載ナビゲーション装置に搭載されているカーテレビ装置の車両走行中における視聴を可能とする車両制御装置を前提とする。そして、この車両制御装置は、車両情報が入力される情報入力部と、前記情報入力部に入力された前記車両情報を利用して、前記車載ナビゲーション装置における自車位置認識のために供される車速情報および前記カーテレビ装置を視聴可能とする条件としての車両停止情報を含む変換信号を生成する変換信号生成部と、前記変換信号生成部によって生成された前記変換信号を前記車載ナビゲーション装置に向けて送信する変換信号送信部とを備えており、前記情報入力部に入力される前記車両情報は、車両ECUのCAN信号送信部から送信される車速の情報を含む車両CAN信号であり、前記変換信号生成部は、前記変換信号として前記車速情報を表すパルス波形と前記車両停止情報を表すパルス波形とが交互に現れる変調波形を生成するものであり、前記車速情報を表すパルス波形は、前記入力された車両情報における車速が高いほど、また、同一車速であっても前記車両停止情報を表すパルス波形の時間長さに対する前記車速情報を表すパルス波形の時間長さの比が小さいほど、前記車速情報を表すパルス波形の期間中におけるパルス幅が短くなる波形として与えられるものであることを特徴とする。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0010
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0011
【補正方法】削除
【補正の内容】