(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024007729
(43)【公開日】2024-01-19
(54)【発明の名称】半炭化燃料の製造方法、および半炭化燃料の製造装置
(51)【国際特許分類】
C10L 5/44 20060101AFI20240112BHJP
【FI】
C10L5/44
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022109005
(22)【出願日】2022-07-06
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-01-26
(71)【出願人】
【識別番号】522271812
【氏名又は名称】白川 裕之
(74)【代理人】
【識別番号】100114258
【弁理士】
【氏名又は名称】福地 武雄
(74)【代理人】
【識別番号】100125391
【弁理士】
【氏名又は名称】白川 洋一
(72)【発明者】
【氏名】白川 裕之
【テーマコード(参考)】
4H015
【Fターム(参考)】
4H015AA13
4H015AB01
4H015BA01
4H015BA08
4H015BB03
4H015CB01
(57)【要約】
【課題】より効率的に木質バイオマスを半炭化させることを可能にした、半炭化燃料の製造方法、および半炭化燃料の製造装置を提供する。
【解決手段】木質バイオマス1を半炭化させた半炭化燃料の製造方法であって、加熱炉10に前記木質バイオマス1を格納するステップと、前記木質バイオマス1にマイクロ波を照射して半炭化させるステップと、を少なくとも含み、前記加熱炉10の内壁に断熱材15が設けられ、前記マイクロ波の周波数帯が2.45GHz帯であることを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
木質バイオマスを半炭化させた半炭化燃料の製造方法であって、
加熱炉内に前記木質バイオマスを格納するステップと、
前記木質バイオマスにマイクロ波を照射して半炭化させるステップと、を少なくとも含み、
前記加熱炉の内部に断熱材が設けられていることを特徴とする半炭化燃料の製造方法。
【請求項2】
前記マイクロ波の周波数帯が2.45GHz帯であることを特徴とする請求項1に記載の半炭化燃料の製造方法。
【請求項3】
前記加熱炉は、外部と接する外壁と、前記木質バイオマスを格納する内壁との入れ子構造であり、
前記半炭化させるステップにおいて、前記内壁の内部に向けてガスが流入し、前記外壁および前記内壁の間から加熱によって発生するガスが流出されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の半炭化燃料の製造方法。
【請求項4】
前記半炭化させるステップにおいて、再生可能エネルギーにより供給される電力が用いて、前記マイクロ波を発生させることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の半炭化燃料の製造方法。
【請求項5】
木質バイオマスを半炭化させた半炭化燃料の製造装置であって、
マイクロ波を発生させるマイクロ波発振器と、
前記マイクロ波発振器において発生したマイクロ波により、前記木質バイオマスを半炭化させる加熱炉とを備え、
前記加熱炉の内部に断熱材が設けられていることを特徴とする半炭化燃料の製造装置。
【請求項6】
前記マイクロ波発振器は発生するマイクロ波の周波数帯が2.45GHz帯であることを特徴とする請求項5に記載の半炭化燃料の製造装置。
【請求項7】
前記加熱炉は、外部と接する外壁と、前記木質バイオマスを格納する内壁との入れ子構造であり、
前記内壁の内部に向けてガスが流入し、前記外壁および前記内壁の間から加熱によって発生するガスが流出されることを特徴とする請求項5または請求項6に記載の半炭化燃料の製造装置。
【請求項8】
前記加熱炉は、前記木質バイオマスを搬出入する搬送機構が内部に設けられていることを特徴とする請求項5または請求項6に記載の半炭化燃料の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半炭化燃料の製造方法、および半炭化燃料の製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
カーボンニュートラルの観点から、石炭火力発電所では石炭の代わりに木質バイオマスを数%混燃させる技術が知られている。ただし、木質バイオマスは石炭に比べて発熱量が小さいうえに破砕性に劣るため、木質バイオマスの混燃率を向上させることは技術的に困難である。
【0003】
一方で、前述した木質バイオマスの欠点を改善し、石炭と同等の燃料として利用することを目的とした加工処理技術として、半炭化技術がある(特許文献1を参照)。半炭化技術とは、木質バイオマスが炭化する手前で加熱を停止することで、水分の逸散およびエネルギー損失の抑制の両立を図る技術である。例えば、燃料を燃焼させて発生する高温ガスで加熱するなど、外側からの伝熱によって被加熱物を昇温させる方法が広く用いられているが、これらの方法では半炭化させる過程で二酸化炭素が発生してしまう懸念がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3837490号公報
【特許文献2】特許第6344988号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
また、二酸化炭素の発生を抑えた半炭化技術として、電力を用いた加熱方法であるマイクロ波加熱が挙げられる。特許文献2では、マイクロ波加熱を利用して木質バイオマスを半炭化させる技術が開示されているが、破砕、乾燥、木炭混入、加圧成形などの処理が必要であり、工程が多く煩雑であるうえに、多くのエネルギーが必要である。そのため、より効率的に木質バイオマスを半炭化させる方法が求められている。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、より効率的に木質バイオマスを半炭化させることを可能にした、半炭化燃料の製造方法、および半炭化燃料の製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)上記の目的を達成するために、本発明は以下のような手段を講じた。すなわち、本発明の半炭化燃料の製造方法は、木質バイオマスを半炭化させた半炭化燃料の製造方法であって、加熱炉内に前記木質バイオマスを格納するステップと、前記木質バイオマスにマイクロ波を照射して半炭化させるステップと、を少なくとも含み、前記加熱炉の内部に断熱材が設けられていることを特徴とする。
【0008】
加熱炉の内部に断熱材が設けられているから、木質バイオマスを効率的に加熱することができる。これにより、半炭化に必要なエネルギーが抑えられ、コストが抑えられる。
【0009】
(2)また、上記(1)に記載の半炭化燃料の製造方法において、前記マイクロ波の周波数帯が2.45GHz帯であることを特徴とする。
【0010】
多くの電子レンジで用いられている周波数帯である2.45GHz帯は、水分子に直接作用して加熱できる。そのため、マイクロ波の周波数帯が2.45GHz帯であるから、木質バイオマスを予め乾燥させなくても、マイクロ波の照射により半炭化させることができる。
【0011】
(3)また、上記(1)または(2)に記載の半炭化燃料の製造方法において、前記加熱炉は、外部と接する外壁と、前記木質バイオマスを格納する内壁との入れ子構造であり、前記半炭化させるステップにおいて、前記内壁の内部に向けてガスが流入し、前記外壁および前記内壁の間から加熱によって発生するガスが流出されることを特徴とする。
【0012】
これにより、加熱炉の内部にガスを循環させることができ、マイクロ波の照射だけでなく、ガスによって加熱することが可能となる。そのため、マイクロ波の照射だけで加熱する場合と比べて、効率よく木質バイオマスを加熱することができ、効率的に半炭化させることが可能となる。また、木質バイオマスから発生する水蒸気や木ガス、木酢液、木タールを除去しやすくなることから、石炭火力発電用の燃料として適した半炭化燃料を製造可能となる。
【0013】
(4)また、上記(1)~(3)のいずれかに記載の半炭化燃料の製造方法において、前記半炭化させるステップにおいて、再生可能エネルギーにより供給される電力が用いて、前記マイクロ波を発生させることを特徴とする。
【0014】
近年では太陽光発電の整備が進み、2018年において九州で国内初となる出力制御が行なわれ、2019年4月には約1億3千万kwhの電力が制御されている。これは、太陽光発電において発電量が多くなる時期は電力需要が少ないことから、太陽光発電により発電された電力を持て余しているためである。
【0015】
電力需要が少ない時期において、半炭化燃料の製造に電力を用いることにより、太陽光発電により発電された電力を有効活用することができる。
【0016】
(5)また、本発明の半炭化燃料の製造装置は、木質バイオマスを半炭化させた半炭化燃料の製造装置であって、マイクロ波を発生させるマイクロ波発振器と、前記マイクロ波発振器において発生したマイクロ波により、前記木質バイオマスを半炭化させる加熱炉とを備え、前記加熱炉の内部に断熱材が設けられていることを特徴とする。
【0017】
加熱炉の内部に断熱材が設けられているから、木質バイオマスを効率的に加熱することができる。これにより、半炭化に必要なエネルギーが抑えられ、コストが抑えられる。
【0018】
(6)また、上記(5)に記載の半炭化燃料の製造装置において、前記マイクロ波発振器は発生するマイクロ波の周波数帯が2.45GHz帯であることを特徴とする。
【0019】
多くの電子レンジで用いられている周波数帯である2.45GHz帯は、水分子に直接作用して加熱できる。そのため、マイクロ波の周波数帯が2.45GHz帯であるから、木質バイオマスを予め乾燥させなくても、マイクロ波の照射により半炭化させることができる。
【0020】
(7)また、上記(5)または(6)に記載の半炭化燃料の製造装置において、前記加熱炉は、外部と接する外壁と、前記木質バイオマスを格納する内壁との入れ子構造であり、前記内壁の内部に向けてガスが流入し、前記外壁および前記内壁の間から加熱によって発生するガスが流出されることを特徴とする。
【0021】
これにより、加熱炉の内部にガスを循環させることができ、マイクロ波の照射だけでなく、ガスによって加熱することが可能となる。そのため、マイクロ波の照射だけで加熱する場合と比べて、効率よく木質バイオマスを加熱することができ、効率的に半炭化させることが可能となる。また、木質バイオマスから発生する水蒸気や木ガス、木酢液、木タールを除去しやすくなることから、石炭火力発電用の燃料として適した半炭化燃料を製造可能となる。
【0022】
(8)また、上記(5)~(7)に記載の半炭化燃料の製造装置において、前記加熱炉は、前記木質バイオマスを搬出入する搬送機構が内部に設けられていることを特徴とする。
【0023】
これにより、加熱炉の内部において、ベルトコンベアやスクリューを適用して、木質バイオマスを自動的に搬出入させることができるため、効率よく木質バイオマスを半炭化させることを可能にする。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、より効率的に木質バイオマスを半炭化させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の第一実施形態に係る半炭化燃料の製造装置の構成の一例を示す概念図である。
【
図2】本発明の第一実施形態に係る半炭化燃料の製造方法の一例を示すフローチャートである。
【
図3】本発明の第二実施形態に係る半炭化燃料の製造装置の構成の一例を示す概念図である。
【
図4】本発明の第二実施形態の変更例に係る半炭化燃料の製造装置の構成の一例を示す概念図である。
【
図5】本発明の第一実施形態の変更例に係る半炭化燃料の製造装置の構成の一例を示す概念図である。
【
図6】電子レンジで加熱する前の木材を示す図である。
【
図7】電子レンジで加熱した後の木材を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては同一の参照番号を付し、重複する説明は省略する。なお、構成図において、各構成要素の大きさは概念的に表したものであり、必ずしも実際の寸法比率を表すものではない。
【0027】
[第一実施形態]
[半炭化燃料の製造装置]
図1は、本発明に係る半炭化燃料の製造装置の構成を示す概念図である。半炭化燃料の製造装置100は、マイクロ波を照射することにより木質バイオマス1を加熱し、炭化する手前で加熱を停止することで、木質バイオマス1を半炭化させた半炭化燃料を得られる。
【0028】
木質バイオマス1とは、バイオマスのうち、木材に由来するものを指す。具体的には製材工場等残材、建設発生木材、未利用間伐材などが挙げられるが、発電所の燃料用に伐り出された木材が特に好ましい。製材工場等残材は製材工場で発生する樹皮やのこ屑などの残材や製材端材であり、建設発生木材は土木工事の建設現場や住宅などを解体する時に発生する廃材などであり、未利用間伐材は間伐や主伐により伐採された木材のうち未利用のまま林地に放置されている切捨間伐材や末木、枝条、根元部のことである。木質バイオマス1は、予め破砕や乾燥処理をしてもよいが、しなくてもよい。
【0029】
半炭化燃料の製造装置100は、加熱炉10、マイクロ波発振器20、導波管30、太陽光発電40、ガス循環設備50を備える。
【0030】
加熱炉10は、木質バイオマス1を格納可能な内壁11と、内壁11から一定の距離を空けて設けられ、外表面が外部と接する外壁12とを有し、内壁11の内側面に断熱材15が設けられている。すなわち、内壁11と外壁12とは入れ子構造になっている。加熱炉10には、内壁11の内部に木質バイオマス1が直接格納できるように、例えば、開き戸が設けられていてもよい。また、加熱炉10は、内壁11の上部が開口していることから、内壁11に囲まれた空間と、外壁12に囲まれた空間とが連通している。
【0031】
断熱材15は、マイクロ波を透過する一方で熱を逃さない性質を有する材質から構成されていればよく、例えばアルミナファイバー、発泡アルミナなどが挙げられる。また、断熱材15が設けられる位置としては、内壁11の内側面だけでなく、底面や天面にも設けられてもよく、底面または天面のみに設けられてもよいが、内側面のみに設けることが好ましい。また、内壁11に直接設けられなくてもよく、内壁11の内部に断熱材15が箱状に設けられてもよい。また、外壁12と内壁11との間や外壁12の内部に設けられてもよい。要は、断熱材15は加熱炉10の内部に設けられればよい。
【0032】
マイクロ波発振器20は、供給された電力を用いてマイクロ波を発生させる。また、マイクロ波発振器20により発生したマイクロ波が、木質バイオマス1に照射されるように構成される。マイクロ波発振器20に供給される電力は、太陽光発電による電力が好ましいが、他の方法で発電された電力であってもよい。
【0033】
マイクロ波発振器20により発生するマイクロ波の周波数帯は、2.45GHz帯であることが好ましい。多くの電子レンジで用いられている周波数帯である2.45GHz帯は、水分子に直接作用して加熱できる。そのため、マイクロ波の周波数帯を2.45GHz帯にすることによって、木質バイオマスを予め乾燥させなくても、マイクロ波の照射により半炭化させることを容易にできることが期待される。
【0034】
導波管30は、マイクロ波を伝送するための中空の金属管である。マイクロ波発振器20において発生したマイクロ波は、導波管30を通じて加熱炉10の内部に伝送し、木質バイオマス1に照射される。
【0035】
太陽光発電40は、マイクロ波発振器20に電力を供給する。太陽光発電は、太陽光を利用して発電可能な設備であればよく、例えば、ソーラーパネルである。また、太陽光発電40は、半炭化燃料の製造装置100に設けられてなくてもよく、外部の設備として独立していてもよい。さらに、太陽光発電に限られず、風力発電、地熱発電など、自然の力を利用した再生可能エネルギーによりマイクロ波発振器20に電力が供給されてもよい。
【0036】
ガス循環設備50は、加熱炉10においてガスを循環させる設備である。ガス循環設備50は、流入管51、流出管52、蒸気バルブ55から構成される。ガス循環設備50は、加熱によって発生したガスを流出管52から排出し、そのうち回収した二酸化炭素などの木ガスを流入管51により再び送り込み、炉内を酸素欠乏下にする役割を担う。さらに、流入管51から温かいガスを供給し、流出管52から冷たいガスを流出させることによって、マイクロ波だけでなく、ガスによって木質バイオマス1を加熱することが可能である。
【0037】
流入管51は、加熱炉10の内壁に囲まれた空間にガスを供給する中空管である。そのため、加熱炉10の内壁に囲まれた空間にガスを供給可能な位置に設けられている必要があり、
図1のように加熱炉10の下面に設けられていることがより好ましい。流入管51から流入するガスが温かい場合、温かいガスは下から上に向けて移動する。そのため、流入管51を加熱炉10の下面に設けることによって、流入管51から流入するガスにより木質バイオマス1を均一に加熱することができる。なお、流入管51は必ずしも加熱炉10の下面に設けられる必要はないが、少なくとも下部であることが好ましい。少なくとも下部とは、「加熱炉10の中心から下に位置する部分」という意味である。
【0038】
流出管52は、加熱炉10内部に滞留するガスを流出させる中空管のことである。流出管52は、加熱炉10の内部で滞留するガスを流出可能な位置に設けられればよいが、内壁11と外壁12とで囲まれた空間に滞留するガスを流出可能な位置に設けられることが好ましい。また、内壁11と外壁12とで囲まれた空間に滞留するガスを流出可能な位置であるだけでなく、
図1のように、加熱炉10の下面に設けられることが好ましい。なお、流入管51と同様に、流出管も必ずしも加熱炉10の下面に設けられる必要はなく、例えば、側面の底部から水平方向に延在してもよい。冷たい空気は下に滞留するため、内壁11と外壁12とで囲まれた空間に滞留するガスを流出可能であり、かつ、加熱炉10の下面に設けられることにより、木質バイオマス1を加熱し終えたガスを流出させることができる。
【0039】
蒸気バルブ55は、流出管52から流出されたガスから水蒸気、木ガス、木酢液や木タールを排出する。蒸気バルブ55によって水蒸気を排出することによって、半炭化燃料に含まれる水分含有量を抑えられる。水分含有量が多くなるほど発熱量が低下してしまうため、水分含有量を抑えることによって石炭火力発電に適した半炭化燃料を製造可能となる。また、蒸気バルブ55から木酢液や木タールを回収することができる。一方、蒸気バルブ55から排出された木ガスを再度加熱炉10内へ供給することで、炉内を酸素欠乏雰囲気にすることができる。
【0040】
また、ガス循環設備50は、外部の熱によって流入管51が温められるように構成されることが好ましい。特に、工場排熱によって流入管51が温められる構成であることが好ましい。これにより、工場排熱を有効利用して、加熱炉の内部に供給するガスを温めることができる。
【0041】
[半炭化燃料の製造方法]
次に、半炭化燃料の製造方法について以下に説明する。
図2は、半炭化燃料の製造方法の一例を示すフローチャートである。
【0042】
まず、加熱炉の内壁に囲まれた空間に木質バイオマスを格納する(ステップS1)。そして、マイクロ波発振器20から発生したマイクロ波を木質バイオマスに照射させるとともに、加熱炉内のガスを循環させることにより、木質バイオマスを半炭化させる(ステップS2)。炭化する手前でマイクロ波およびガスによる加熱を停止することにより、木質バイオマスを半炭化させることが可能となる。
【0043】
[第二実施形態]
次に、本発明の第二実施形態について説明する。第二実施形態では、加熱炉の内部に搬送機構を有する点、ガス循環設備を有さない点で第一実施形態と異なり、その他の点では同様の構成を有する。
【0044】
図3は、第二実施形態における半炭化燃料の製造装置である。
図3に示す半炭化燃料の製造装置200は、加熱炉10内に投入された木質バイオマス1が搬送機構60によって搬送されるなかで半炭化され、半炭化された木質バイオマス1が排出されるように構成される。
【0045】
半炭化燃料の製造装置200は、木質バイオマス1を加熱炉内部に投入可能な投入口61と、半炭化された木質バイオマス1を排出可能な排出口62を備えている。投入口61は加熱炉10の上部に設けられ、投入された木質バイオマス1が搬送機構60の一端に配置されるように構成される。排出口62は加熱炉10の下部に設けられ、搬送機構60により搬送された木質バイオマス1を排出可能にする。
【0046】
搬送機構60は、投入口61から投入された木質バイオマス1を排出口62に向けて、水平搬送可能な機構である。搬送機構60は、一方向に向けて水平搬送可能な機構であればよく、
図3では搬送機構60としてスクリューが描かれているが、
図4のようにベルトコンベアであってもよい。また、搬送機構60はローラコンベア、チェーンコンベア等であってもよい。
【0047】
また、
図3の半炭化燃料の製造装置200では、マイクロ波発振器20で発生したマイクロ波が加熱炉10の天面から伝送されるように構成される。具体的には、加熱炉10の上部にマイクロ波発振器20が設けられ、マイクロ波発振器20と加熱炉10の天面との間に導波管30が設けられる。また、マイクロ波が搬送機構60の中央近傍に照射されるように構成されることが好ましい。これにより、加熱炉10の天面から内部に向けてマイクロ波が伝送されるため、搬送機構60により搬送されるなかで、木質バイオマス1が半炭化される。
【0048】
また、
図3の半炭化燃料の製造装置200では、加熱炉10の内表面のうち、天面および底面に断熱材が設けられている。加熱炉10の天面および底面のすべてに断熱材15を設けてもよいが、マイクロ波が特に存する位置のみに設けられることが好ましい。これにより、半炭化燃料の製造装置200を製造するコストを抑えられる。
【0049】
なお、第一実施形態ではマイクロ波発振器20が加熱炉の側面に設けられている場合について、第二実施形態ではマイクロ波発振器20が加熱炉10の天面に設けられている場合について説明したが、マイクロ波発振器20が加熱炉10に対してどの部分に設けられていてもよい。また、断熱材についても、マイクロ波発振器20が設けられている位置や加熱炉の構造に応じて、木質バイオマス1に効率よく伝熱できる位置に設けられればよい。
【0050】
また、搬送機構60は第二実施形態に限られず、
図1に示す第一実施形態に適用してもよい。このとき、内壁11と外壁12の間に木質バイオマス1が入り込まないように、投入口を設けることが望ましい。例えば、
図5のように、内壁11の開口部と貫通するような位置に投入口61を設けたり、投入口61から内壁11の間に仕切り63を設けたりすることが有効である。仕切り63はガスを通過させる一方、木質バイオマス1を入り込まないように、細孔が設けられていることが好ましい。
【0051】
本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の思想と範囲に含まれる様々な変形および均等物に及ぶことはいうまでもない。また、各図面に示された構成要素の構造、形状、数、位置、大きさ等は説明の便宜上のものであり、適宜変更しうる。
【0052】
[実施例]
本発明者は、断熱材で木材を覆った状態でマイクロ波を照射することで、断熱材がもたらす効果を検証するために、電子レンジを用いて木材を加熱した。
検証に用いたものは以下の通りである。
電子レンジ:YAMAZEN YRT-S177(W)5
断熱材:アルミナファイバー
【0053】
図6は、加熱する前の木材を示している。
図6に示すように、同じ大きさおよび形状の木材を準備し、断熱材で包まれた状態で電子レンジによって加熱したものを実施例とし、断熱材で包まずに加熱したものを比較例とした。加熱前の木材は、直径5mm、長さ30mm程度のものを用いた。電子レンジによる加熱は、500W5分で行なった。
【0054】
図7は、加熱後の木材を示している。紙面右側の木材が実施例であり、紙面左側の木材が比較例である。
図7に示すように、実施例では木材が黒くなっており、半炭化もしくは炭化していることが分かる。一方、比較例では木材の色が変わっておらず、半炭化もしくは炭化していないように見受けられる。以上のことから、断熱材によって少ない電力で木質バイオマスを半炭化させることができると考えられる。
【符号の説明】
【0055】
1 木質バイオマス
10 加熱炉
11 内壁
12 外壁
15 断熱材
20 マイクロ波発振器
30 導波管
40 太陽光発電
50 ガス循環設備
51 流入管
52 流出管
55 蒸気バルブ
60 搬送機構
61 投入口
62 排出口
63 仕切り
100、200 半炭化燃料の製造装置
【手続補正書】
【提出日】2022-11-14
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
木質バイオマスを半炭化させた半炭化燃料の製造方法であって、
加熱炉内に前記木質バイオマスを格納するステップと、
前記木質バイオマスにマイクロ波を照射して半炭化させるステップと、を少なくとも含み、
前記加熱炉は、外部と接する外壁と、前記木質バイオマスを格納する内壁とを備え、前記内壁の一部が開口し、内壁に囲まれた空間と外壁に囲まれた空間とが連通する入れ子構造であり、前記加熱炉の内部に断熱材が設けられ、
前記半炭化させるステップにおいて、前記加熱炉内にガスを循環させることを特徴とする半炭化燃料の製造方法。
【請求項2】
木質バイオマスを半炭化させた半炭化燃料の製造方法であって、
加熱炉内に前記木質バイオマスを格納するステップと、
前記木質バイオマスにマイクロ波を照射して半炭化させるステップと、を少なくとも含み、
前記加熱炉は、外部と接する外壁と、前記木質バイオマスを格納する内壁とを備え、前記外壁と前記内壁とが入れ子構造であり、前記内壁内部に断熱材が設けられ、
前記半炭化させるステップにおいて、前記加熱炉内にガスを循環させることを特徴とする半炭化燃料の製造方法。
【請求項3】
前記内壁の内部に向けてガスを流入させ、前記外壁および前記内壁の間から加熱によって発生するガスを流出させることにより、前記加熱炉内にガスを循環させることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の半炭化燃料の製造方法。
【請求項4】
木質バイオマスを半炭化させた半炭化燃料の製造装置であって、
マイクロ波を発生させるマイクロ波発振器と、
前記マイクロ波発振器において発生したマイクロ波により、前記木質バイオマスを半炭化させる加熱炉とを備え、
前記加熱炉は、外部と接する外壁と、前記木質バイオマスを格納する内壁とを備え、前記内壁の一部が開口し、内壁に囲まれた空間と外壁に囲まれた空間とが連通する入れ子構造であり、前記加熱炉の内部に断熱材が設けられ、
前記加熱炉内にガスを循環させるガス循環設備をさらに備えることを特徴とする半炭化燃料の製造装置。
【請求項5】
木質バイオマスを半炭化させた半炭化燃料の製造装置であって、
マイクロ波を発生させるマイクロ波発振器と、
前記マイクロ波発振器において発生したマイクロ波により、前記木質バイオマスを半炭化させる加熱炉とを備え、
前記加熱炉は、外部と接する外壁と、前記木質バイオマスを格納する内壁とを備え、前記外壁と前記内壁とが入れ子構造であり、前記内壁の内部に断熱材が設けられ、
前記加熱炉内にガスを循環させるガス循環設備をさらに備えることを特徴とする半炭化燃料の製造装置。
【請求項6】
前記ガス循環設備は、前記内壁の内部に向けてガスを流入させ、前記外壁および前記内壁の間から加熱によって発生するガスを流出させることにより、前記加熱炉内にガスを循環させることを特徴とする請求項4または請求項5に記載の半炭化燃料の製造装置。
【請求項7】
前記加熱炉は、前記木質バイオマスを搬出入する搬送機構が内部に設けられていることを特徴とする請求項4または請求項5に記載の半炭化燃料の製造装置。
【手続補正2】
【補正対象書類名】図面
【補正方法】変更
【補正の内容】
【手続補正3】
【補正対象書類名】図面
【補正方法】変更
【補正の内容】