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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024077300
(43)【公開日】2024-06-07
(54)【発明の名称】吸音パネル
(51)【国際特許分類】
   G10K 11/16 20060101AFI20240531BHJP
   B61D 49/00 20060101ALI20240531BHJP
【FI】
G10K11/16 130
B61D49/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022189313
(22)【出願日】2022-11-28
(71)【出願人】
【識別番号】712004783
【氏名又は名称】株式会社総合車両製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100148013
【弁理士】
【氏名又は名称】中山 浩光
(72)【発明者】
【氏名】溝部 良樹
(72)【発明者】
【氏名】中山 義明
(72)【発明者】
【氏名】芝 寿洋
(72)【発明者】
【氏名】木元 裕勝
【テーマコード(参考)】
5D061
【Fターム(参考)】
5D061AA12
5D061AA16
5D061AA22
5D061BB02
5D061BB21
5D061BB28
(57)【要約】
【課題】吸音性能の向上及び十分な剛性の確保が図られる吸音パネルを提供する。
【解決手段】吸音パネル1は、複数の孔部2aを有する表面板2と、表面板2と一定の間隔をもって配置された裏面板3と、表面板2と裏面板3との間に一定の間隔をもって配置された複数のリブ4と、表面板2と裏面板3との間でリブ4間に配置された複数の吸音材5と、を備え、裏面板3は、表面側を向く第1の凸部22と裏面側を向く第2の凸部23とが交互に並ぶ波板21によって構成され、吸音材5と第1の凸部22とが互いに結合され、吸音材5と波板21の第2の凸部23との間に空気層Eが形成されている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の孔部を有する表面板と、
前記表面板と一定の間隔をもって配置された裏面板と、
前記表面板と前記裏面板との間に一定の間隔をもって配置された複数のリブと、
前記表面板と前記裏面板との間で前記リブ間に配置された複数の吸音材と、を備え、
前記裏面板は、表面側を向く第1の凸部と裏面側を向く第2の凸部とが交互に並ぶ波板によって構成され、
前記吸音材と前記第1の凸部とが互いに結合され、前記吸音材と前記波板の前記第2の凸部との間に空気層が形成されている、吸音パネル。
【請求項2】
前記波板と前記リブとが一体の部材で構成されている、請求項1記載の吸音パネル。
【請求項3】
前記吸音材と前記波板との間に多孔板が配置されている、請求項1記載の吸音パネル。
【請求項4】
前記波板を挟むように一対の多孔板が配置されている、請求項1記載の吸音パネル。
【請求項5】
前記第1の凸部及び前記第2の凸部は、断面台形状をなしている、請求項1記載の吸音パネル。
【請求項6】
前記リブは、前記第2の凸部に対応する位置に配置されている、請求項1~5のいずれか一項記載の吸音パネル。
【請求項7】
前記リブは、前記第1の凸部に対応する位置に配置されている、請求項1~5のいずれか一項記載の吸音パネル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、吸音パネルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば鉄道車両の走行時に床下で発生する音を吸音する吸音パネルが知られている。例えば特許文献1に記載の鉄道車両用吸音パネルは、鉄道車両下部の台車からの騒音を吸収する吸音材を備えている。この従来の吸音パネルは、表面保護材と、背面板と、表面保護材と背面板との間に所定の間隔をもって設けられた複数のリブと、表面保護材と背面板との間でリブ間に収納された吸音材とを備えている。吸音材と表面保護材との間には、空気層が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007-283842号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のような吸音パネルでは、鉄道車両の走行時に床下で発生する転動音や、床下で発生した音が防音壁で反射した反射音、床下に配置される機器類の駆動音など、様々な種類の音に対する吸音性能の向上が求められている。また、鉄道車両の床下などに配置されることから、走行時の飛び石・氷などの衝突や、トンネル進入時の気密荷重の付加などが想定され、このような負荷に対する十分な剛性が要求されている。
【0005】
本開示は、上記課題の解決のためになされたものであり、吸音性能の向上及び十分な剛性の確保が図られる吸音パネルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一側面に係る吸音パネルは、複数の孔部を有する表面板と、表面板と一定の間隔をもって配置された裏面板と、表面板と裏面板との間に一定の間隔をもって配置された複数のリブと、表面板と裏面板との間でリブ間に配置された複数の吸音材と、を備え、裏面板は、表面側を向く第1の凸部と裏面側を向く第2の凸部とが交互に並ぶ波板によって構成され、吸音材と第1の凸部とが互いに結合され、吸音材と波板の第2の凸部との間に空気層が形成されている。
【0007】
この吸音パネルでは、第1の凸部及び第2の凸部が交互に並ぶ波板によって裏面板が構成されている。吸音パネルにおいて剛性のベースとなる裏面板に波板を採用することで、裏面板に平板を用いる場合に比べて、吸音パネルの剛性を十分に高めることができる。また、この吸音パネルでは、波板の形状を利用し、吸音材と第2の凸部との間に空気層が形成されている。吸音材の裏側に空気層が形成されることで、吸音材の吸音効率を向上できる。したがって、この吸音パネルでは、吸音性能の向上及び十分な剛性の確保が図られる。
【0008】
波板とリブとが一体の部材で構成されていてもよい。この場合、波板とリブとの接合を省略できる。したがって、吸音パネルの構成の簡略化が図られる。
【0009】
吸音材と波板との間に多孔板が配置されていてもよい。この場合、波板の表面側の空気層と多孔板とによって共鳴吸音体が構成されるため、吸音可能な周波数帯域の拡張が可能となる。
【0010】
波板を挟むように一対の多孔板が配置されていてもよい。波板の表面側及び裏面側の空気層と多孔板とによって共鳴吸音体が構成されるため、吸音可能な周波数帯域の一層の拡張が可能となる。
【0011】
第1の凸部及び第2の凸部は、断面台形状をなしていていてもよい。この場合、空気層を十分な体積で形成できる。また、第1の凸部の頂面が平坦面となるため、吸音材と第1の凸部との結合が容易となる。
【0012】
リブは、第2の凸部に対応する位置に配置されていてもよい。この場合、リブが吸音材の裏面よりも波板側に突出するため、リブの長さを十分に長くできる。リブの長さが十分に確保されることで、吸音パネルの剛性を向上できる。
【0013】
リブは、第1の凸部に対応する位置に配置されていてもよい。この場合、表面側を向く第1の凸部に対応してリブが配置されるため、リブの長さを十分に短くできる。リブの長さを抑えることで、吸音パネルの曲げ剛性を向上及び軽量化が図られる。
【発明の効果】
【0014】
本開示によれば、吸音性能の向上及び十分な剛性の確保が図られる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本開示の一実施形態に係る吸音パネルの正面図である。
図2図1におけるII-II線断面図である。
図3】表面板とリブとの接合構造を示す部分拡大断面図である。
図4】リブと波板における第1の凸部及び第2の凸部との位置関係の一例を示す部分拡大断面図である。
図5】リブと波板における第1の凸部及び第2の凸部との位置関係の別例を示す部分拡大断面図である。
図6】多孔板の変形例を示す部分拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しながら、本開示の一側面に係る吸音パネルの好適な実施形態について詳細に説明する。
【0017】
図1は、本開示の一実施形態に係る吸音パネルの正面図である。図2は、図1におけるII-II線断面図である。図1及び図2に示す吸音パネル1は、例えば鉄道車両の側面のスカート部に配置される部材である。吸音パネル1は、鉄道車両の走行時に生じる様々な種類の音を吸音し、騒音を低減する。吸音パネル1で吸音対象となる音としては、例えば鉄道車両の走行時に床下で発生する転動音(車輪がレール上を回転しながら進むときに発生する振動音)、床下で発生した音が防音壁で反射した反射音、床下に配置される機器類(例えば台車に配置されるモータやギア)の駆動音などが挙げられる。
【0018】
図1及び図2に示すように、吸音パネル1は、表面板2と、裏面板3と、複数のリブ4と、複数の吸音材5と、多孔板6とを含んで構成されている。図1及び図2では、説明の便宜のため、X軸、Y軸、Z軸による直交座標系を付している。鉄道車両に吸音パネル1を取り付けた状態において、X軸は鉄道車両の長手方向(レール方向)、Y軸は鉄道車両の幅方向(枕木方向)、Z軸は鉄道車両の高さ方向にそれぞれ相当する。また、必要に応じて、表面板2側を吸音パネル1の表面(おもて面)、裏面板3側を吸音パネル1の裏面と称する。
【0019】
表面板2は、鉄道車両に吸音パネル1を取り付けた状態において、鉄道車両の側面外方を向く板である。表面板2は、鉄道車両の走行時の飛び石・氷などの衝突や、トンネル進入時の気密荷重の付加といった負荷に対する耐久性の観点、及び取り付け先の鉄道車両の軽量化の観点から、アルミニウム或いはアルミニウム合金などの剛性材料によって形成されている。表面板2は、Y軸方向から見た場合に、例えば矩形状をなしている。表面板2の厚さは、例えば1mm前後となっている。表面板2は、X軸方向から見た場合に、取り付け先の鉄道車両の側面下部の断面形状に応じて、例えば外側に凸となるように緩やかに湾曲していてもよい。
【0020】
表面板2には、音の取り込み口となる複数の孔部2aが設けられている(図1参照)。複数の孔部2aは、表面板2の正面視において、一定のピッチで千鳥状或いは格子状に配列されている。孔部2aのそれぞれは、表面板2の表面から裏面にわたる貫通孔となっている。孔部2aの直径は、例えば1mm~数mm程度となっている。孔部2aによる表面板2の開孔率は、例えば15%~30%程度となっている。表面板2は、1枚の板で構成されていてもよく、Z軸方向或いはX軸方向に分割された分割部材同士を互いに接合することによって構成されていてもよい。
【0021】
Z軸方向或いはX軸方向に分割された分割部材で表面板2を構成する場合、分割部材のそれぞれの孔部2aによる表面板2の開孔率は、互いに等しくてもよく、互いに異なっていてもよい。開孔率を異ならせる場合、例えば開孔率が30%、20%、15%の分割部材を組み合わせて用いてもよい。例えば表面板2を分割部材によってZ方向に分割し、上方側から順に開孔率が30%の分割部材、開孔率が20%の分割部材、開孔率が15%の分割部材を配置する構成としてもよい。
【0022】
裏面板3は、鉄道車両に吸音パネル1を取り付けた状態において、鉄道車両の側面内方を向く板である。裏面板3は、表面板2と同様に、鉄道車両の走行時の飛び石・氷などの衝突や、トンネル進入時の気密荷重の付加といった負荷に対する耐久性の観点、及び取り付け先の鉄道車両の軽量化の観点から、アルミニウム或いはアルミニウム合金などの剛性材料によって形成されている。裏面板3は、Y軸方向から見た場合に、例えば矩形状をなしている。裏面板3は、X軸方向から見た場合に、例えば全体として直線状をなしている。裏面板3の厚さは、例えば1mm前後となっている。
【0023】
裏面板3は、表面板2と一定の間隔をもって配置されており、表面板2との間に吸音材5の空間Sを形成している(図2参照)。本実施形態では、裏面板3は、分割部材3A~3CによってZ軸方向に3つに分割されている。分割部材3A、分割部材3B、分割部材3Cは、この順にZ軸方向の上方から並べられている。分割部材3Aの下端と分割部材3Bの上端とは、互いに突き合せられた状態で溶接等によって接合されている。分割部材3Bの下端と分割部材3Cの上端とは、互いに突き合せられた状態で溶接等によって接合されている。
【0024】
分割部材3Aの上端側には、鉄道車両への吸音パネル1の取り付けに用いられるフランジ部11Aが設けられている。フランジ部11Aは、裏面板3の本体部分よりも表面側に張り出す中空の基端部12Aと、表面板2と連続するように基端部12AからZ軸上方に張り出す先端部13Aとを有している。基端部12Aにおける表面側の壁部には、溶接又はリベット等の接合手段によって表面板2の上端が接合されている。先端部13Aには、例えばX軸方向の両端部及び中央部において挿通孔14Aがそれぞれ設けられている。これらの挿通孔14Aにボルト等の接合部材を挿通し、車両側のボルト孔に螺合することで、吸音パネル1の上側が鉄道車両に固定される。
【0025】
分割部材3Cの下端側には、鉄道車両への吸音パネル1の取り付けに用いられるフランジ部11Bが設けられている。フランジ部11Bは、裏面板3の本体部分よりも表面側に張り出す中空の基端部12Bと、裏面板3の本体部分と連続するように基端部12BからZ軸下方に張り出す先端部13Bとを有している。基端部12Bにおける表面側の壁部には、溶接又はリベット等の接合手段によって表面板2の下端が接合されている。先端部13Bには、例えばX軸方向の両端部及び中央部において挿通孔14Bがそれぞれ設けられている。これらの挿通孔14Bにボルト等の接合部材を挿通し、車両側のボルト孔に螺合することで、吸音パネル1の下側が鉄道車両に固定される。
【0026】
リブ4は、吸音パネル1の剛性を確保するための強度部材である。リブ4は、例えば表面板2及び裏面板3と同様に、アルミニウム或いはアルミニウム合金などの剛性材料によって形成されている。リブ4は、表面板2及び裏面板3を繋ぐように表面板2と裏面板3との間に配置され、表面板2及び裏面板3と同じ長さでX軸方向に延在している。本実施形態では、リブ4は、Z軸方向に所定の間隔をもって4つのリブ4が配列されている。最上段のリブ4は、裏面板3を構成する分割部材3Aにおける中空の基端部12Aの下側の壁部を兼ねている。最下段のリブ4は、裏面板3を構成する分割部材3Cにおける中空の基端部12Bの上側の壁部を兼ねている。
【0027】
中央段の2つのリブ4における表面板2側の端部4aには、図3に示すように、表面板2に沿って屈曲する屈曲部16が設けられている。屈曲部16は、表面板2とリブ4との接合に用いられる部分である。表面板2に屈曲部16を沿わせた状態で、溶接又はリベット等の接合手段によって表面板2と屈曲部16とを接合することにより、表面板2とリブ4とが接合されている。
【0028】
図1及び図2に戻り、吸音材5は、表面板2の孔部2aから取り込まれた音を吸音する部材である。吸音材5は、例えばグラスウールなどの繊維系素材によって構成されている。グラスウールでは、入射した音のエネルギーが繊維及び繊維間の空気を振動させて熱エネルギーに変換されることで吸音効果が奏される。吸音材5は、Y軸方向から見た場合に、例えば矩形状をなしている。吸音材5の厚さは、例えば数十mm程度となっている。
【0029】
吸音材5は、表面板2と裏面板3との間の空間Sにおいて、リブ4間に配置されている。本実施形態では、当該空間Sは、上述した4つのリブ4によってZ軸方向に3つの領域に仕切られている。これらの領域のそれぞれに吸音材5が配置されることにより、Z軸方向に3体の吸音材5が配列されている。吸音材5と表面板2との間には、Y軸方向に僅かな隙間が形成されていてもよい。吸音材5とリブ4との間には、Z軸方向に僅かな隙間が形成されていてもよい。
【0030】
多孔板6は、吸音材5との協働により共鳴吸音体を構成する部材である(図2参照)。多孔板6は、例えばアルミニウムなどの金属材料によって、吸音材5よりも一回り小さい矩形状に形成されている。多孔板6の厚さは、例えば表面板2よりも小さく、裏面板3と同等程度となっている。多孔板6の厚さは、例えば1mm程度となっている。多孔板6は、吸音材5のそれぞれの裏面側に接着などによって固定されている。吸音材5によって中~高周波領域の音を効率的に吸音し、多孔板6を用いた共鳴吸音体によって低周波数領域の音を効率的に吸音することで、吸音パネル1で吸音可能な周波数帯域を拡張できる。
【0031】
多孔板6には、複数の孔部6a(図4参照)が設けられている。複数の孔部6aは、多孔板6の正面視において、一定のピッチで千鳥状或いは格子状に配列されている。孔部6aのそれぞれは、多孔板6の表面から裏面にわたる貫通孔となっている。孔部6aの直径は、例えば1mm~数mm程度となっている。多孔板6の板厚、孔径、及び空気層の厚さの調整により、任意の周波数領域の音を効率的に吸音できる。
【0032】
続いて、上述した裏面板3の構成について更に詳細に説明する。
【0033】
吸音パネル1では、図1及び図2に示すように、裏面板3は、表面側を向く第1の凸部22と裏面側を向く第2の凸部23とが交互に並ぶ波板21によって構成されている。本実施形態では、波板21の第1の凸部22及び第2の凸部23は、いずれも断面台形状をなし、裏面板3のX軸方向の長さの全体にわたってX軸方向に延在している。
【0034】
第1の凸部22は、図2及び図4に示すように、吸音材5の裏面側に接合されている。より具体的には、本実施形態では、第1の凸部22の頂面22aは、吸音材5の裏面の多孔板6に接している。多孔板6は、溶接又はリベット等の接合手段によって第1の凸部22の頂面22aに接合されている。つまり、本実施形態では、第1の凸部22は、多孔板6を介して吸音材5の裏面側に接合されている。
【0035】
第2の凸部23の頂面23aは、図2及び図4に示すように、多孔板6の裏面から一定の間隔をもってY軸方向に離間している。したがって、吸音材5(吸音材5の裏面側の多孔板6)と第2の凸部23との間には、空気層Eが形成されている。空気層Eは、第2の凸部23によって断面台形状に画成され、裏面板3のX軸方向の長さの全体にわたってX軸方向に延在している。
【0036】
吸音パネル1では、波板21とリブ4とが押出型材によって一体の部材で構成されている。本実施形態では、図2に示すように、最上段のリブ4を兼ねる基端部12Aを含むフランジ部11Aと分割部材3Aとが一つの押出型材によって一体に構成され、中央段の2つのリブ4と分割部材3Bとが一つの押出型材によって一体に構成されている。また、最下段のリブ4を兼ねる基端部12Bを含むフランジ部11Bと分割部材3Cとが一つの押出型材によって一体に構成されている。
【0037】
本実施形態では、図4に示すように、リブ4は、第2の凸部23に対応する位置に配置されている。図4の例では、Z軸方向について吸音材5,5間を跨ぐように波板21の第2の凸部23の頂面23aが位置している。そして、リブ4における裏面側の端部4bは、吸音材5の裏面よりも裏面板3(波板21)側に突出し、第2の凸部23の頂面23aにおけるZ軸方向の中央部分と繋がっている。これにより、吸音材5における裏面板3側の角部5aの近傍には、当該角部5aと、リブ4と、第2の凸部23の半分部分とによって囲まれることで、上記空気層Eとは断面形状が異なる空気層Eが形成されている。
【0038】
以上説明したように、吸音パネル1では、第1の凸部22及び第2の凸部23が交互に並ぶ波板21によって裏面板3が構成されている。吸音パネル1において剛性のベースとなる裏面板3に波板21を採用することで、裏面板3に平板を用いる場合に比べて、吸音パネル1の剛性を十分に高めることができる。また、吸音パネル1では、波板21の形状を利用し、吸音材5と第2の凸部23との間に空気層Eが形成されている。吸音材5の裏側に空気層Eが形成されることで、吸音材5の吸音効率を向上できる。したがって、吸音パネル1では、吸音性能の向上及び十分な剛性の確保が図られる。空気層Eの形成にあたって、吸音材5の形状を複雑に加工する必要が無いため、製造コストの低減化も図られる。
【0039】
本実施形態では、波板21とリブ4とが一体の部材で構成されている。これにより、波板21とリブ4との接合を省略できる。したがって、吸音パネル1の構成の簡略化が図られる。
【0040】
本実施形態では、吸音材5と波板21との間に多孔板6が配置されている。この場合、波板21の表面側の空気層と多孔板6とによって共鳴吸音体が構成されるため、吸音可能な周波数帯域の拡張が可能となる。
【0041】
本実施形態では、第1の凸部22及び第2の凸部23が断面台形状をなしていている。これにより、空気層Eを十分な体積で形成できる。また、第1の凸部22の頂面22aが平坦面となるため、吸音材5と第1の凸部22との結合が容易となる。
【0042】
本実施形態では、リブ4が第2の凸部23に対応する位置に配置されている。これにより、リブ4が吸音材5の裏面よりも波板21側に突出するため、リブ4の長さを十分に長くできる。リブ4の長さが十分に確保されることで、吸音パネル1の剛性を向上できる。
【0043】
本開示は、上記実施形態に限られるものではない。例えば上記実施形態では、リブ4が第2の凸部23に対応する位置に配置されているが、図5に示すように、リブ4が第1の凸部22に対応する位置に配置されていてもよい。図5の例では、Z軸方向について、吸音材5,5間を跨ぐように波板21の第1の凸部22の頂面22aが位置している。そして、リブ4における裏面側の端部4bは、第1の凸部22の頂面22aにおけるZ軸方向の中央部分と繋がっている。
【0044】
このような構成によれば、表面側を向く第1の凸部22に対応してリブ4が配置されるため、リブ4の長さを十分に短くできる。リブ4の長さを抑えることで、吸音パネル1の曲げ剛性を向上及び軽量化が図られる。また、図5の例では、多孔板6が吸音材5の角部5aまで延びており、吸音材5の角部5aが多孔板6を介して第1の凸部22の頂面22aと接することで、角部5aの近傍に隙間が生じなくなる。したがって、空気層Eにゴミなどの異物が溜まることを抑制できる。
【0045】
上記実施形態では、波板21とリブ4とが一体の部材で構成されているが、波板21とリブ4とを別体の部材で形成し、これらを溶接又はリベット等の接合手段によって接合した構成としてもよい。また、上記実施形態では、吸音材5と波板21との間に多孔板6が配置されているが、多孔板6の配置を省略してもよい。この場合、吸音材5の裏面に第1の凸部22の頂面22aを直に接触させ、接着等によって吸音材5と第1の凸部22とを接合してもよい。
【0046】
上記実施形態では、第1の凸部22及び第2の凸部23が断面台形状となっているが、第1の凸部22及び第2の凸部23の断面形状は、三角形、正方形、長方形、半円形、半楕円形などの他の形状であってもよい。
【0047】
図4に示した実施形態では、吸音材5と波板21との間に多孔板6が配置されているが、図6に示すように、波板21を挟むように一対の多孔板6,6が配置されていてもよい。波板21の裏面側の多孔板6は、例えば溶接又はリベット等の接合手段によって第2の凸部23の頂面23aに接合され得る。このような構成によれば、波板21の表面側及び裏面側の空気層と多孔板6とによって共鳴吸音体が構成されるため、吸音可能な周波数帯域の一層の拡張が可能となる。また、吸音パネル1を鉄道車両の側面のスカート部に配置した状態において、車両の床下機器或いは台車などで発生する騒音を効率的に吸音することができる。
【0048】
本開示の要旨は、以下の[1]~[7]のとおりである。
[1]複数の孔部を有する表面板と、前記表面板と一定の間隔をもって配置された裏面板と、前記表面板と前記裏面板との間に一定の間隔をもって配置された複数のリブと、前記表面板と前記裏面板との間で前記リブ間に配置された複数の吸音材と、を備え、前記裏面板は、表面側を向く第1の凸部と裏面側を向く第2の凸部とが交互に並ぶ波板によって構成され、前記吸音材と前記第1の凸部とが互いに結合され、前記吸音材と前記波板の前記第2の凸部との間に空気層が形成されている、吸音パネル。
[2]前記波板と前記リブとが一体の部材で構成されている、[1]記載の吸音パネル。
[3]前記吸音材と前記波板との間に多孔板が配置されている、[1]又は[2]記載の吸音パネル。
[4]前記波板を挟むように一対の多孔板が配置されている、[1]~[3]のいずれか記載の吸音パネル。
[5]前記第1の凸部及び前記第2の凸部は、断面台形状をなしている、[1]~[4]のいずれか記載の吸音パネル。
[6]前記リブは、前記第2の凸部に対応する位置に配置されている、[1]~[5]のいずれか記載の吸音パネル。
[7]リブは、前記第1の凸部に対応する位置に配置されている、[1]~[5]のいずれか記載の吸音パネル。
【符号の説明】
【0049】
1…吸音パネル、2…表面板、2a…孔部、3…裏面板、4…リブ、5…吸音材、6…多孔板、21…波板、22…第1の凸部、23…第2の凸部、E…空気層。
図1
図2
図3
図4
図5
図6