(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024077302
(43)【公開日】2024-06-07
(54)【発明の名称】ウェットティシュー製品
(51)【国際特許分類】
A47K 7/00 20060101AFI20240531BHJP
【FI】
A47K7/00 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022189315
(22)【出願日】2022-11-28
(71)【出願人】
【識別番号】000183462
【氏名又は名称】日本製紙クレシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 光
(72)【発明者】
【氏名】藤田 祐樹
(72)【発明者】
【氏名】大岡 康伸
(72)【発明者】
【氏名】甲斐 秀彦
(57)【要約】
【課題】シートにパルプ繊維を含む紙を用いてもシートが破れにくく、収納容器からの取り出し性及び風合いに優れ、収納容器もコンパクトであるウェットティシュー製品を提供する。
【解決手段】少なくともパルプ繊維を含む紙製のシートを巻き取って薬液を含浸させた、ウェットティシューのロール体と、上端部に開口部を有し、ロール体を収納する容器本体と、容器本体の開口部を閉塞するように着脱自在に取り付けられる蓋体とを備えた収納容器とを含む、ウェットティシュー製品であって、シートは、表面に抄紙機由来の凹凸のパターンを有し、凹部と凸部を合わせた高さが100μm以上300μm以下であり、シートは、流れ方向における略等間隔において、幅方向にミシン目を施されており、湿潤状態でのミシン目を含むタブ強度が145cN/シート幅以上500cN/シート幅以下である、ウェットティシュー製品を提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともパルプ繊維を含む紙製のシートを巻き取って薬液を含浸させた、ウェットティシューのロール体と、
上端部に開口部を有し、前記ロール体を収納する容器本体と、前記容器本体の開口部を閉塞するように着脱自在に取り付けられる蓋体とを備えた収納容器とを含む、ウェットティシュー製品であって、
前記シートは、表面に抄紙機由来の凹凸のパターンを有し、前記凹凸における、凹部と凸部を合わせた高さが100μm以上300μm以下であり、
前記シートは、流れ方向における略等間隔において、幅方向にミシン目を施されており、
前記シートにおける、湿潤状態での前記ミシン目を含むタブ強度が145cN/シート幅以上500cN/シート幅以下であることを特徴とする、ウェットティシュー製品。
【請求項2】
前記シートに、KES圧縮試験機によって0.5gf/cm2の荷重をかけた際の前記シートの厚みをT0、KES圧縮試験機によって50gf/cm2の荷重をかけた際の前記シートの厚みTmとしたときに、(T0-Tm)/T0が0.35以上0.65以下であることを特徴とする、請求項1に記載のウェットティシュー製品。
【請求項3】
前記シートにおける、KES圧縮試験機のWC(圧縮仕事量)が0.35gf・cm/cm2以上0.65gf・cm/cm2以下であることを特徴とする、請求項1に記載のウェットティシュー製品。
【請求項4】
前記シートにおける、JIS P 8113に基づく湿潤時のCD方向の引張強度(WCDT)は、2.2N/25mm以上3.8N/25mm以下であることを特徴とする、請求項1に記載のウェットティシュー製品。
【請求項5】
前記シートに、KES圧縮試験機によって0.5gf/cm2の荷重をかけた際の前記シートの厚みT0が、400μm以上800μm以下であることを特徴とする、請求項1に記載のウェットティシュー製品。
【請求項6】
前記ミシン目のボンド幅が0.5mm以上3.0mm以下であることを特徴とする、請求項1に記載のウェットティシュー製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙製のシートに薬液を含浸させたウェットティシュー製品に関する。
【背景技術】
【0002】
ウェットティシューは、手指の清拭や机などの清掃に用いられ、手指を拭くためには程よい柔らかさが、物を拭くためには程よい強度が求められる。
【0003】
ウェットティシューには様々な形状があり、ミシン目を挿入しながらロール状に巻き取ったシートを、プラスティックのボトルとキャップ(場合によりエラストマーなどの取り出し中栓を有する)に封入した、所謂ボトルタイプのウェットティシューがある。
【0004】
ボトルタイプのウェットティシューはシートをロール状に巻き取っているため、コンパクトで大容量の製品にすることができる。また、上記のようなロール状であるため、ロールの中心部からシートを1枚ずつ取り出し、キャップに設けられた取り出し口によってシートに抵抗を与え、ロールに設けられたミシン目から切り離す構造となる。
【0005】
ウェットティシューの収納容器の文献として、例えば特許文献1には、シート体の長手方向に所定の間隔でミシン目が形成されたウェットティッシュのロール体を収納する容器本体と、該容器本体の上面に取り付けられ該容器本体に嵌着される蓋体とを備えたウェットティッシュ収納容器であって、上記蓋体は、上記蓋体の上面に位置される取出部と、上記蓋体の上面にヒンジを介して上記取出部を開閉可能に設けられる小蓋と、上記取出部の下面に設けられる貫通孔と、上記貫通孔に取り付けられ、上記ウェットティッシュと係合するために設けられる係合孔を有するゴム状弾性体からなる口栓とを備え、上記取出部は、上記蓋体の上面に対して傾斜していることを特徴とするウェットティッシュ収納容器が開示されている。
【0006】
また、ウェットティシューの収納容器の取り出し口の文献として、特許文献2には、ウェットティッシュ容器の蓋材の取出口部に嵌着するパッキンであって、ゴム弾性を有する楕円状の円板で、中央位置に、外周の形状に相似する楕円状の取出孔を設け、該楕円状の取出孔の短軸線上の一方外側に、取出孔に連通して外周に至り上面から下面に至る所定幅のスリット状切欠きを設け、楕円状の取出孔の短軸線上の他方外側に、スリット状切欠きと対向させて取出孔に連通し上面から下面に至る窪み状切欠きを設け、下面の周縁部から中央上方へ、中央部に所定肉厚をもたせて漸次薄肉にし、かつ、蓋材の取出口部に嵌着したときに、スリット状切欠きと窪み状切欠きが潰れて隙間がなくなって、楕円状の取出孔が縮径して円形状の取出孔になることを特徴とする易着脱及び切断ウェットティッシュ用パッキンが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2016-216116号公報
【特許文献2】特開2008-074457号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、このようなボトルタイプのウェットティシューのシートに紙を用いる場合、不織布と異なり、シートに伸びがなく、また、シート自体が破れやすいため、従来の方法では、シートの取り出し性に劣る問題があった。
具体的には、シートを1枚ずつ切り離すために取り出し口での抵抗を高くすると、シート自体の強度が不足し、ミシン目以外の箇所から意図せずに破れてしまう。取り出し抵抗を小さくすると、シートがミシン目で切れずに2枚以上連なって出てきてしまう。取り出し抵抗が小さい状態でもミシン目でカットするためにミシン目の強度を低くすると、シートをロール状に巻き取る際に断紙が発生し、コンパクトに巻き取ることができないといった問題である。
【0009】
一方で、シート自体の強度を高くすると、取り出し性と巻き取り加工の問題は改善できるが、今度はシートの風合いが低下し、触感が劣った製品になってしまう。
【0010】
さらに、巻き取ったシート同士が張り付きやすく、残り枚数が少なくなった際に、シート同士が張り付いて、取り出し口に詰まってしまう問題があった。
【0011】
このように、従来の技術ではボトル形態のウェットティシューにおいて、シートに紙を用いる場合に、使いやすさと風合いを両立することは困難であった。
【0012】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、シートにパルプ繊維を含む紙を用いてもシートが破れにくく、収納容器からの取り出し性及び風合いに優れ、収納容器もコンパクトであるウェットティシュー製品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
発明者は鋭意検討を行い、少なくともパルプ繊維を含む紙製のシートを巻き取って薬液を含浸させた、ウェットティシューのロール体と、上端部に開口部を有し、ロール体を収納する容器本体と、容器本体の開口部を閉塞するように着脱自在に取り付けられる蓋体とを備えた収納容器とを含む、ウェットティシュー製品において、シートの表面に抄紙機由来の凹凸のパターンを施し、凹凸における、凹部と凸部を合わせた高さを所定の数値範囲内に規定し、かつ、シートの流れ方向における略等間隔において、幅方向にミシン目を施し、シートにおける、湿潤状態でのミシン目を含むタブ強度を所定の数値範囲内に規定することで、シートが破れにくく、収納容器からの取り出し性及び風合いに優れ、収納容器もコンパクトであるウェットティシュー製品とすることができ、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、以下のものを提供する。
【0014】
(1)本発明の第1の態様は、少なくともパルプ繊維を含む紙製のシートを巻き取って薬液を含浸させた、ウェットティシューのロール体と、上端部に開口部を有し、前記ロール体を収納する容器本体と、前記容器本体の開口部を閉塞するように着脱自在に取り付けられる蓋体とを備えた収納容器とを含む、ウェットティシュー製品であって、前記シートは、表面に抄紙機由来の凹凸のパターンを有し、前記凹凸における、凹部と凸部を合わせた高さが100μm以上300μm以下であり、前記シートは、流れ方向における略等間隔において、幅方向にミシン目を施されており、前記シートにおける、湿潤状態での前記ミシン目を含むタブ強度が145cN/シート幅以上500cN/シート幅以下であることを特徴とする、ウェットティシュー製品である。
【0015】
(2)本発明の第2の態様は、(1)に記載のウェットティシュー製品であって、前記シートに、KES圧縮試験機によって0.5gf/cm2の荷重をかけた際の前記シートの厚みをT0、KES圧縮試験機によって50gf/cm2の荷重をかけた際の前記シートの厚みTmとしたときに、(T0-Tm)/T0が0.35以上0.65以下であることを特徴とするものである。
【0016】
(3)本発明の第3の態様は、(1)に記載のウェットティシュー製品であって、前記シートにおける、KES圧縮試験機のWC(圧縮仕事量)が0.35gf・cm/cm2以上0.65gf・cm/cm2以下であることを特徴とするものである。
【0017】
(4)本発明の第4の態様は、(1)に記載のウェットティシュー製品であって、前記シートにおける、JIS P 8113に基づく湿潤時のCD方向の引張強度(WCDT)は、2.2N/25mm以上3.8N/25mm以下であることを特徴とするものである。
【0018】
(5)本発明の第5の態様は、(1)に記載のウェットティシュー製品であって、前記シートに、KES圧縮試験機によって0.5gf/cm2の荷重をかけた際の前記シートの厚みT0が、400μm以上800μm以下であることを特徴とするものである。
【0019】
(6)本発明の第6の態様は、(1)に記載のウェットティシュー製品であって、前記ミシン目のボンド幅が0.5mm以上3.0mm以下であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、シートにパルプ繊維を含む紙を用いてもシートが破れにくく、収納容器からの取り出し性及び風合いに優れ、収納容器もコンパクトであるウェットティシュー製品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の一実施形態に係るウェットティシュー製品の全体を示す斜視図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係るウェットティシューロール体の全体を示す斜視図である。
【
図3】シートのマイクロスコープによる高さプロファイル(マッピング)のX-Y平面画像である。
【
図4】
図3(b)の線分S1-S2における凹凸の高さ(測定断面曲線S)プロファイルの画像である。
【
図5】
図4の(測定)断面曲線Sを処理した粗さ曲線Wの画像である。
【
図6】
図5からのシートの抄紙機由来の凹凸の高さの求め方を示す図である。
【
図7】シートの抄紙工程において、抄紙機由来の凹凸を付与する箇所の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という。)について詳細に説明する。以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨の範囲内で適宜に変形して実施できる。
【0023】
<ウェットティシュー収納容器>
本発明の一実施形態に係るウェットティシュー製品1は、
図1及び
図2に示すように、少なくともパルプ繊維を含む紙製のシート10x(以下、ウェットティシュー10xとも称する)を巻き取って薬液を含浸させた、ウェットティシューロール体10(以下、単にロール体10とも称する)と、上端部に開口部を有し、ロール体10を収納する容器本体21と、容器本体21の開口部を閉塞するように着脱自在に取り付けられる蓋体22とを備えたウェットティシュー収納容器20(以下、単に収納容器20とも称する)とを含むものである。
【0024】
(容器本体)
ウェットティシュー収納容器20の容器本体21は、ロール体10を収納できる大きさであれば、形状は特に限定されないが、持ち運びのしやすさの観点から、
図1に示すように、高さ方向の中央部に、上端部及び下端部のそれぞれから連続的に直径が小さくなるくびれ部が形成されている(いわゆるウェストシェイプ形状である)ことが好ましい。
【0025】
(蓋体)
収納容器20の蓋体22において、取り出し口の材質や形状は限定されないが、例えば
図1に示すように、貫通孔221と、貫通孔221の近傍に設けられた導入孔222と、貫通孔221と導入孔222とを連通する誘導路223と、貫通孔221、導入孔222、誘導路223を開閉自在に覆う小蓋224と、を備えていてもよい。
また、蓋体22は、貫通孔221を閉塞するように取り付けられ、シート10xを引き出す引き出し孔225を有した、エラストマーからなる中栓226を備えることが好ましい。中栓226を備えることで、取り出し時に後述するシート10xのミシン目10cを切り取りやすくなり、取り出し性が適性化しやすい。
【0026】
(ウェットティシュー)
本発明の一実施形態に係るウェットティシューのロール体10は、
図2に示すように、少なくともパルプ繊維を含む紙製のシート10xを巻き取って薬液を含浸させたものである。
なお、
図2に示すように、シート10xの表面のうち、ロール外側に指向した表面を表面10a(シート10xの表面)と称し、ロール中心部に指向した表面を裏面10b(シート10xの裏面)と称する。また、シート10xの端部をロール体10の最外周の端縁10eと称する。
【0027】
シート10xは、流れ方向における略等間隔において、幅方向にミシン目10cを施されており、ミシン目10cの間を1枚のシート10xとする。なお、シート10xは1プライ又は2プライであることが好ましく、1プライであることがより好ましい。
1枚のシート10xにおけるシート長は特に限定されないが、下限値は好ましくは100mm以上であり、より好ましくは130mm以上であり、更に好ましくは150mm以上である。また、上限値は好ましくは300mm以下であり、より好ましくは250mm以下であり、更に好ましくは200mm以下である。
また、1枚のシート10xにおけるシート幅は特に限定されないが、下限値は好ましくは100mm以上であり、より好ましくは120mm以上であり、更に好ましくは130mm以上である。また、上限値は好ましくは180mm以下であり、より好ましくは160mm以下であり、更に好ましくは150mm以下である。
【0028】
シート10xに用いるパルプ繊維は、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)等、一般的なパルプ繊維(木材パルプ)を用いることができる。その中でも、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)及び広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)を含むことが好ましい。また、パルプ繊維におけるNBKPとLBKPの含有割合は50:50以上100:0以下が好ましく、70:30以上100:0以下がより好ましく、90:10以上100:0以下が更に好ましく、100:0が最も好ましい。
NBKPとしては、例えばラジアータパイン、スラッシュパイン、サザンパイン、ロッジポールパイン、スプルース及びダグラスファーからなる繊維が好ましい。なお、NBKPの代わりにNUKP、LBKPの代わりにLUKPを用いることもできる。
【0029】
また、シート10xに含浸させる薬液は、通常ウェットティシューに用いられるアルコール、保湿剤、防腐剤、抗菌剤、安定化剤等を配合すればよい。
このとき、シート10xへの薬液の含浸倍率が、2倍以上4倍以下であることが好ましく、2.3倍以上3.5倍以下であることがより好ましく、2.5倍以上3.2倍以下であることが更に好ましい。含浸倍率が2倍未満であるとシート10xを手に持ったときの風合いに劣り、4倍を超えるとシート10xの強度が低下して破れやすくなる。
含浸倍率の測定方法は、まずシート10xの面積及び重量を測定し、その後、シート10xをアルコール溶液で洗浄し、絶乾させる。絶乾後、23℃、50%RH環境下で調湿し、シート10xの重量を測定する。そして、紙1gに対して含浸された薬液の重量を含浸倍率とする。
【0030】
なお、後述するシート10xの湿潤時の引張強度を適正化しやすくするために、シート10xは水解性を有さないことが好ましい。また、製造時においてエンボスロールのような設備に限定されず、かつ、エンボスを施すとコンパクト性に劣るため、シート10xはエンボス加工による凹凸を表面及び裏面に有さないことが好ましい。
【0031】
さらに、シート10xにおけるミシン目10cのボンド幅は、0.5mm以上3.0mm以下であることが好ましい。ボンド幅が0.5mm未満であると、ミシン目10cが切れやすくなるため、シート10xをコンパクトに巻き取りにくい。ボンド幅が3.0mmを超えると、ミシン目10cが切れにくくなり、結果としてシート10xが連続して出てきてしまい、取り出し性に劣る。なお、ボンド幅は0.8mm以上2.5mm以下であることがより好ましく、1.0mm以上2.0mm以下であることが更に好ましい。
ミシン目10cのボンド幅は、定規で一箇所のミシン目10cにおけるボンド幅を全て測定し、その平均とする。また、ボンド幅はシート10xの製造時におけるミシン刃の形状で変更することができる。
【0032】
(シートの物性)
シート10xの絶乾状態における坪量は特に限定されないが、下限値が好ましくは20g/m2以上であり、より好ましくは25g/m2以上であり、更に好ましくは30g/m2以上である。また、上限値は好ましくは50g/m2以下であり、より好ましくは45g/m2以下であり、更に好ましくは40g/m2以下である。坪量が20g/m2未満であるとシートが10xを手に持ったときの風合いに劣り、50g/m2を超えるとシート10xが嵩張ってコンパクトに巻き取りにくい。
シート10xの絶乾状態における坪量は、JIS P 8124に準拠して測定される。
【0033】
また、シート10xにおける、湿潤状態でのミシン目10cを含むタブ強度(ミシン目強度とも称する)は145cN/シート幅以上500cN/シート幅以下である。タブ強度が145cN/シート幅未満であるとミシン目10cが切れやすくなるため、シート10xをコンパクトに巻き取りにくい。タブ強度が500cN/シート幅を超えると、ミシン目10cが切れにくくなり、結果としてシート10xが連続して出てきてしまい、取り出し性に劣る。なお、タブ強度は195cN/シート幅以上450cN/シート幅以下であることが好ましく、245cN/シート幅以上400cN/シート幅以下であることがより好ましい。
【0034】
タブ強度の測定方法としては、まずミシン目10cが引張試験機のチャック間に位置するようにしてシート10xをセットし、JIS P 8113に基づく湿潤時におけるMD方向の引張強度WMDT(Wet Machine Direction Tensile Strength)を測定する。このとき、つかみ幅:100mm、伸張速度:300±5mm/minの条件で測定し、10回の平均値を最終的なタブ強度とする。シート幅がつかみ具に対して大きい場合、つかみ具の幅に合わせて数回折りこんで測定する。
なお、シート10xにおけるMD方向とは、シート10xの抄紙工程における作業の流れ方向(Machine Direction)であり、CD方向はMD方向に直交する方向(Cross Direction)である。タブ強度はミシン目10cのボンド幅や、後述するWCDTの数値の調整で調整することができる。
【0035】
さらに、シート10xにおける、JIS P 8113に基づく湿潤時のCD方向の引張強度(WCDT)は、2.2N/25mm以上3.8N/25mm以下であることが好ましい。WCDTが2.2N/25mm未満であると、取り出し時にシート10xが破れやすくなる。WCDTが3.8N/25mmを超えると、シート10xが風合いに劣る。なお、WCDTは2.4N/25mm以上3.6N/25mm以下であることがより好ましく、2.6N/25mm以上3.3N/25mm以下であることが好ましい。
【0036】
WCDTの測定は、JIS P 8113に基づく。具体的には、シート10xを1枚取り出し、幅25mmに裁断後、引張試験機によって、つかみ幅:100mm、伸張速度:300±5mm/minで測定し、10回の平均値とする。なお、WCDTの測定は、ミシン目10cを含まない部分のシート10xを用いて測定する。
シート10xにおける湿潤時の引張強度は、抄紙工程における湿潤紙力剤や乾燥紙力剤の添加、繊維配向の方向調整、又は坪量の数値の調整といった、一般的な方法で調整することができる。
【0037】
そして、シート10xに、KES圧縮試験機によって0.5gf/cm2の荷重をかけた際の前記シートの厚みT0が400μm以上800μm以下であることが好ましい。T0が400μm未満であると、シート10xを手に持った際の風合いに劣り、800μmを超えると、シート10xが嵩張ってコンパクトに巻き取りにくい。なお、T0は500μm以上780μm以下であることがより好ましく、600μm以上750μm以下であることが更に好ましい。
【0038】
また、KES圧縮試験機によって50gf/cm2の荷重をかけた際のシートの厚みをTmとしたときに、(T0-Tm)/T0が0.35以上0.65以下であることが好ましい。数値が0.35未満であると、取り出し口でシート10xが変形しにくく、中栓226等に引っかかってシート10xが破れやすい。数値が0.65を超えると、シート10xが嵩張ってコンパクトに巻き取りにくい。なお、(T0-Tm)/T0は0.40以上0.60以下であることがより好ましく、0.45以上0.55以下であることが更に好ましい。
【0039】
さらに、上記のTmは160μm以上440μm以下であることが好ましい。Tmが160μm未満であると、シート10xを手に持った際の風合いに劣り、440μmを超えると、シート10xが嵩張ってコンパクトに巻き取りにくい。なお、Tmは200μm以上400μm以下であることが好ましく、250μm以上350μm以下であることがより好ましい。
【0040】
そして、上記の厚みに関連して、KES圧縮試験機のWC(圧縮仕事量)が0.35gf・cm/cm2以上0.65gf・cm/cm2以下であることが好ましい。WCが0.15gf・cm/cm2未満であると、取り出し口でシート10xが変形しにくく、中栓226等に引っかかってシート10xが破れやすい。WCが0.65gf・cm/cm2を超えると、シート10xが嵩張ってコンパクトに巻き取りにくい。
なお、WC(圧縮仕事量)は、0.40gf・cm/cm2以上0.60gf・cm/cm2以下であることがより好ましく、0.45gf・cm/cm2以上0.55gf・cm/cm2以下であることが更に好ましい。
【0041】
厚み及びWCは、KES-G5圧縮試験機(カトーテック株式会社製)を用いて測定する。
2cm2の加圧板と受圧板の間に、薬液を含浸させたシート10xを140mm×200mmの大きさにカットしたサンプルを設置し、0.020cm/secの速さで加圧板を下降させ、その際に変化する圧力と、その時のサンプルの厚みを測定する。なお、シート10xのシート長及び/又はシート幅が140mm×200mmの大きさに満たないときは、該当するシート長及び/又はシート幅をカットせずにそのままサンプルとして用いる。
T0は圧力が0.5gf/cm2におけるサンプルの厚み(μm)であり、Tmは圧力が50gf/cm2におけるサンプルの厚み(μm)である。T0及びTmの値は、10回の測定を行った平均値として算出した値である。また、WCは圧縮仕事量であり、同様に10回の平均値を算出する。
シート10xにおけるT0やTmは後述する凹凸のパターンの高さや、原紙の水分率(乾燥条件)などによって調整でき、WCも同様にシート10xの坪量や、凹凸のパターンの高さによって調整できる。
【0042】
なお、シート10xの表面にはエンボスとは異なる、抄紙機由来の凹凸のパターンを有し、凹凸における、凹部と凸部を合わせた高さが100μm以上300μm以下である。高さが100μm未満であると、シート10x同士が張り付きやすく、ロール体10の使い終わり時においてシート10xの詰まりが生じやすい。高さが300μmを超えるとシート10xをコンパクトに巻き取りにくい。
なお、凹凸のパターンの高さは、130μm以上270μm以下であることがより好ましく、150μm以上250μm以下であることが更に好ましい。抄紙機由来の凹凸はクレープ率の調整等、一般的な方法で調整することができる。
【0043】
シート10xの抄紙機由来の凹凸の高さは、マイクロスコープを用いて測定する。マイクロスコープとしては、KEYENCE社製の製品名「ワンショット3D測定マイクロスコープ VR-3100」を使用することができる。マイクロスコープの画像の観察・測定・画像解析ソフトウェアとしては、製品名「VR-H1A」を使用することができる。又、測定条件は、測定倍率12倍、視野面積24mm×18mmで測定する。測定倍率と視野面積は、求める凹凸の大きさによって、適宜変更してもよい。
なお、3次元測定機や輪郭形状測定機は、点や線で測定されるが、ワンショット3D測定の場合、面全体を測定するため、全体の形状やうねりがわかりやすい。
【0044】
図3から
図6を参照して、抄紙機由来の凹凸の高さの具体的な測定方法について説明する。なお、測定は薬液を含浸させた状態のシート10xに対して行う。
図3(a)は、マイクロスコープによる高さプロファイル(マッピング)のX-Y平面画像である。
図3の上下方向がシート10xのCD方向、左右方向がシート10xのMD方向となる。そして、
図3(b)に示すように、高さプロファイル(マッピング)のX-Y平面画像の縦方向に任意の位置で、縦方向に平行な線分S1-S2を引くと、
図4に示す凹凸の高さ(測定断面曲線)プロファイルが得られる。なお、個々の凹凸は縦方向に沿って延びており、線分S1-S2はこれら複数の凹凸を横断するので、X-Y平面画像の縦方向のどの位置で線分S1-S2を引いても、凹凸の高さプロファイルはほとんど変わらない。
【0045】
ここで、高さプロファイルは、実際のシート表面の凹凸を表す(測定)断面曲線Sであるが、ノイズ(シート10x表面に繊維塊があったり、繊維がヒゲ状に伸びていたり、繊維のない部分に起因した急峻なピーク)をも含んでおり、凹凸の高さの算出に当たっては、このようなノイズピークを除去する必要がある。
そこで、
図4の(測定)断面曲線Sを重み平均ラジオボタンのフィルターのサイズを±12とし、スムージングした
図5の粗さ曲線Wを得る。なお、重み平均ラジオボタンのフィルターを用いたスムージングは、上記の解析ソフトを使用すれば、自動で得られる。
【0046】
得られた粗さ曲線Wについて、
図6に示すように、凸部と隣接する凹部の縦軸の差を10箇所(H1~H10)測定し、平均を凹凸の高さ(Rc)とする。また、高さプロファイル1画像につき線分S1-S2を3本設定し、
図5の粗さ曲線Wを3つ得る。そして、これら3つの粗さ曲線WそれぞれにつきRcを求める。試料の画像を3枚用意し、合計9個のデータ(Rc)を平均して求めた、凹凸の高さを採用する。
【0047】
(ウェットティシュー製品の製造方法)
本実施形態に係るウェットティシュー製品1の製造方法としては、通常のウェットティシュー製品等と同様の工程で製造することができる。具体的には、まずウェットティシューロール体10の製造方法として、(1)抄紙及びクレーピング、(2)ミシン目加工、(3)ロール巻き取り加工及び薬液含浸、といった工程によって、ウェットティシューロール体10を得ることができる。なお、薬液含浸のタイミングはロール巻き取り加工の後であることが好ましい。
【0048】
抄紙工程では、上述したように抄紙工程由来の凹凸のパターンがシート10xに施される。この凹凸のパターンを有することにより、シート10xのT
m、T
0といった厚みやWCを適正化しやすい。なお、抄紙工程由来とは、シート10xの抄紙工程において、抄紙機のヘッドボックスからヤンキードライヤー32の入口までの間に付与されることを意味する。具体的には、
図7に示す抄紙工程の一部において、脱水ロール31とヤンキードライヤー32の間に配置される、ベルトプレス部30にて凹凸を付与することができる。ベルトプレス部30では、湿紙34と凹凸ベルト33(凹凸ベルト33は、ベルトプレス部30とヤンキードライヤー32をループしている)を一緒にプレスすることで、湿紙34に凹凸のパターンを付与することができる。
【0049】
その後、ウェットティシューロール体10を容器本体21に収納し、蓋体22を閉めることでウェットティシュー製品1となる。
【0050】
以上説明したとおり、本実施形態によれば、シートにパルプ繊維を含む紙を用いてもシートが破れにくく、収納容器からの取り出し性及び風合いに優れ、収納容器もコンパクトであるウェットティシュー製品を提供することができる。
【実施例0051】
以下、実施例により本発明を更に詳しく説明するが、本発明は以下の実施例により何ら限定されるものではない。
【0052】
表1~表3に示す各条件において、実施例1~25及び比較例1~12のそれぞれの、ウェットティシューのロール体を容器本体及び蓋体を備えた収納容器に収納したウェットティシュー製品を作製し、以下の評価を行った。
【0053】
1.取り出し時のシートの破れにくさ
モニター30名により、ウェットティシューの収納容器からの取り出し時における、ウェットティシュー(シート)の破れにくさを4段階で評価した。評価は、使用上においてほとんど破れず問題ないものを◎、概ね破れず実用上問題ないものを○、やや破れが生じるものを△、破れが生じて実用に耐えないものを×とした。
【0054】
2.1枚ずつの取り出しやすさ
モニター30名により、ウェットティシューの収納容器からの取り出し時における、ウェットティシュー(シート)の1枚ずつの取り出しやすさを4段階で評価した。評価は、使用上において確実に1枚ずつ取り出すことができ問題ないものを◎、概ね1枚ずつ取り出すことができ実用上問題ないものを○、 がりが生じる頻度がやや多いものを△、 がりが生じる頻度が多く実用に耐えないものを×とした。
【0055】
3.最後の数枚の取り出しやすさ
モニター30名により、ウェットティシューの最後の数枚の収納容器からの取り出し時における、ウェットティシュー(シート)の取り出しやすさを4段階で評価した。評価は、詰まることがほとんどなく、使用上において問題ないものを◎、詰まることが概ねなく、実用上問題ないものを○、つまりが生じる頻度がやや多く、取り出しにくいものを△、つまりが生じる頻度が多く、実用に耐えないものを×とした。
【0056】
4.製品のコンパクト性及び加工性
シートをロール状に巻き取る際の断紙の発生状態(加工性)と、ロール体の収納容器への装填のしやすさ(コンパクト性)を4段階で評価した。評価は、断紙がほとんど発生せず、装填もしやすいものを◎、断紙があまり発生せず、装填も特に困難でないものを○、断紙がやや発生しやすかったり、装填がややしにくかったりするものを△、断紙が非常に発生しやすかったり、装填が非常にしにくかったりするものを×とした。
【0057】
5.シートの風合い
モニター30名により、ウェットティシュー(シート)の風合いを4段階で評価した。
評価は、風合いに優れるものを◎、ある程度風合いがあるものを○、風合いにやや劣るものを△、風合いに劣るものを×とした。
【0058】
表1及び2に、各実施例の条件及び評価結果を示し、表3に、各比較例の条件及び評価結果を示す。
【表1】
【0059】
【0060】
【0061】
以上より、本実施例によればシートにパルプ繊維を含む紙を用いてもシートが破れにくく、収納容器からの取り出し性及び風合いに優れ、収納容器もコンパクトであるウェットティシュー製品が得られることが確認された。