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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024077337
(43)【公開日】2024-06-07
(54)【発明の名称】アルコール飲料用香味改善組成物
(51)【国際特許分類】
   C12G 3/04 20190101AFI20240531BHJP
【FI】
C12G3/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022189376
(22)【出願日】2022-11-28
(71)【出願人】
【識別番号】000214537
【氏名又は名称】長谷川香料株式会社
(72)【発明者】
【氏名】酒井 貴博
(72)【発明者】
【氏名】吉本 忠司
(72)【発明者】
【氏名】赤木 由美子
(72)【発明者】
【氏名】国清 悠大
【テーマコード(参考)】
4B115
【Fターム(参考)】
4B115LG02
4B115LH01
4B115LH03
4B115LH05
4B115LH11
4B115LH12
4B115LP02
(57)【要約】
【課題】
簡便かつ高い効果で、アルコール飲料のアルコール感を緩和する方法を提供すること。
【解決手段】
植物原料の多孔質乾燥物を有効成分とするアルコール飲料用香味改善組成物。
アルコール飲料に、植物原料の多孔質乾燥物を有効成分とするアルコール飲料用香味改善組成物を添加する、アルコール飲料のアルコール感緩和方法。
植物原料の多孔質乾燥物を有効成分とするアルコール飲料用香味改善組成物を含有する、アルコール度数が1%以上であるアルコール飲料。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物原料の多孔質乾燥物を有効成分とするアルコール飲料用香味改善組成物。
【請求項2】
前記多孔質乾燥物が、前記植物原料の凍結乾燥物である、請求項1に記載のアルコール飲料用香味改善組成物。
【請求項3】
前記植物原料が柑橘果実である、請求項1に記載のアルコール飲料用香味改善組成物。
【請求項4】
前記植物原料が柑橘果皮である、請求項1に記載のアルコール飲料用香味改善組成物。
【請求項5】
前記多孔質乾燥物の平均粒径が1μm~10mmである、請求項1または2に記載のアルコール飲料用香味改善組成物。
【請求項6】
前記香味改善が、アルコール飲料のアルコール感の緩和である、請求項1または2に記載のアルコール飲料用香味改善組成物。
【請求項7】
前記アルコール飲料のアルコール感が、アルコール飲料のアルコール臭、アルコールの苦味、アルコールのえぐみ、アルコールの辛味およびアルコールの刺激から選ばれる1種または2種以上である、請求項6に記載のアルコール飲料用香味改善組成物。
【請求項8】
アルコール飲料に、請求項1に記載のアルコール飲料用香味改善組成物を添加する、アルコール飲料のアルコール感緩和方法。
【請求項9】
前記アルコール飲料のアルコール感が、アルコール飲料のアルコール臭、アルコールの苦味、アルコールのえぐみ、アルコールの辛味およびアルコールの刺激から選ばれる1種または2種以上である、請求項8に記載のアルコール飲料のアルコール感緩和方法。
【請求項10】
請求項1に記載のアルコール飲料用香味改善組成物を含有するアルコール飲料。
【請求項11】
前記多孔質乾燥物の平均粒径が1μm~10mmである、請求項10に記載のアルコール飲料。
【請求項12】
前記多孔質乾燥物の、前記アルコール飲料中の含有量が、0.0001g/L~10g/Lの範囲である、請求項10または11に記載のアルコール飲料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はアルコール飲料用香味改善組成物、前記アルコール飲料用香味改善組成物をアルコール飲料に添加するアルコール感の緩和方法、および、前記アルコール飲料用香味改善組成物を含有するアルコール飲料に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、アルコールのRTD(Ready To Drink:グラスに移し替えずに飲める缶飲料やPETボトル飲料などの総称)市場は多様化している。
【0003】
例えば、ビールのような苦みの強い飲料よりもジュースに近い味がする甘いサワー系を好む若者が増えている傾向がある。このようなサワー系飲料市場には、アルコールの苦手な人向けにアルコール度数4%以下の低アルコール商品が投入され人気を博している。
【0004】
その一方で、中高年を含む幅広い年代向けに、家飲み・高コストパフォーマンスなどを目的としてアルコール度数が7%~9%程度の高アルコール商品も投入され、これらもまた人気を博している。
【0005】
このようなアルコール度数が7%~9%程度の高アルコール商品は、「ストロング系飲料」、「高アルコールRTD」などとも呼ばれ、主にいわゆるレモンサワーなどの缶酎ハイのうち高アルコール濃度のものを指す。ストロング系飲料は、一般的には日本人のアルコール離れが進んでいるとも言われている中で、販売は好調で、高成長が期待できるカテゴリーの1つとなっている。
【0006】
しかしながら、アルコール飲料に含まれるエタノール(エチルアルコールともいう)は、独特のアルコール感(アルコール臭、アルコールの苦味、アルコールのえぐみ、アルコールの辛味、アルコールの刺激)といった不快な香味を伴い、その香味はアルコール濃度が高いほど強く感じられる。
【0007】
このようなアルコール感の緩和方法としては、炭酸ガスを含み、アルコール濃度が6~12(v/v)%である高アルコール飲料の製造過程において、飲料中に、レモンピールおよびカモミールの抽出物を、0.01~0.1(w/v)%の範囲で含有させることを特徴とする高アルコール飲料の本来の香味を保持しつつ、高アルコール含有によるアルコール感を抑制した高アルコール飲料の製造方法であって、該高アルコール飲料が、チューハイ、カクテル、又は、ハイボールである、製造方法(特許文献1)、アルコール度数が7%以上13%未満である果汁含有高アルコール飲料(リモンチェッロを含むものを除く)であって、糖類の含有量が25g/L以上であり、R-リナロールの含有量が0.2~10mg/Lであり、ノナナールの含有量が0.06~7mg/Lである果汁含有高アルコール飲料(特許文献2)、イソブチルアンゲレートを有効成分として含有する、アルコール飲料に含まれるエタノールの味を抑制するためのエタノール感抑制剤(特許文献3)、1,3-ジヒドロキシアセトンを含有することを特徴とする、アルコール飲料のアルコール感改善剤(特許文献4)、エタノール濃度が2~9.5体積%であるアルコール飲料のアルコール感を抑制するアルコール感調整剤であって、スルフロールまたはネオヘスペリジンジヒドロカルコンの少なくとも一方を含有することを特徴とするアルコール飲料のアルコール感調整剤(特許文献5)、50ppb以上のβ-シトロネロール、0.6ppm以上の4-ビニルグアイヤコール、及び5~10v/v%のアルコールを含有する発酵麦芽高アルコール飲料(特許文献6)、ラカンカ抽出物を含有する、アルコール飲料のバーニング感及びアルコール臭抑制剤(特許文献7)、リンゴ酸濃度とクエン酸濃度の比(リンゴ酸濃度:クエン酸濃度)が1:9~10:0であり、パラサイメンの濃度が0.1~2.0ppmである、アルコール飲料(特許文献8)などが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第6675830号公報
【特許文献2】特許第7093647号公報
【特許文献3】特開2022-129516号公報
【特許文献4】国際公開第2017/010000号
【特許文献5】特許第7064799号公報
【特許文献6】特開2019-122263号公報
【特許文献7】特開2018-82691号公報
【特許文献8】特開2017-148013号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、これまでの素材ではいまだ十分とは言えず、新たな素材の開発が待たれていた。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは前記課題にかんがみ、鋭意研究を行った。その結果、レモン(全果、1/8カット)の凍結乾燥品の粉砕物を高アルコールチューハイ(アルコール度数9%)に添加することにより、前記チューハイのアルコール感が緩和されること、また、前記アルコール感の緩和効果がレモン(全果、1/8カット)の真空乾燥品の粉砕物よりも優れていることを見出し、また、同様の効果が他の植物原料でも認められることを確認し、本発明を完成するに至った。
【0011】
かくして、本発明は以下のものを提供する。
[1]植物原料の多孔質乾燥物を有効成分とするアルコール飲料用香味改善組成物。
[2]前記多孔質乾燥物が、前記植物原料の凍結乾燥物である、[1]に記載のアルコール飲料用香味改善組成物。
[3]前記植物原料が柑橘果実である、[1]に記載のアルコール飲料用香味改善組成物。
[4]前記植物原料が柑橘果皮である、[1]に記載のアルコール飲料用香味改善組成物。
[5]前記多孔質乾燥物の平均粒径が1μm~10mmである、[1]または[2]に記載のアルコール飲料用香味改善組成物。
[6]前記香味改善が、アルコール飲料のアルコール感の緩和である、[1]または[2]に記載のアルコール飲料用香味改善組成物。
[7]前記アルコール飲料のアルコール感が、アルコール飲料のアルコール臭、アルコールの苦味、アルコールのえぐみ、アルコールの辛味およびアルコールの刺激から選ばれる1種または2種以上である、[6]に記載のアルコール飲料用香味改善組成物。
[8]アルコール飲料に、[1]に記載のアルコール飲料用香味改善組成物を添加する、アルコール飲料のアルコール感緩和方法。
[9]前記アルコール飲料のアルコール感が、アルコール飲料のアルコール臭、アルコールの苦味、アルコールのえぐみ、アルコールの辛味およびアルコールの刺激から選ばれる1種または2種以上である、[8]に記載のアルコール飲料のアルコール感緩和方法。
[10][1]に記載のアルコール飲料用香味改善組成物を含有するアルコール飲料。
[11]前記多孔質乾燥物の平均粒径が1μm~10mmである、[10]に記載のアルコール飲料。
[12]前記多孔質乾燥物の、前記アルコール飲料中の含有量が、0.0001g/L~10g/Lの範囲である、[10]または[11]に記載のアルコール飲料。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、簡便かつ高い効果で、アルコール飲料のアルコール感を緩和することができ、アルコール感の緩和されたアルコール飲料を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[植物原料]
本発明で使用することのできる植物原料は、多孔質乾燥物とすることができるものであればいかなる植物原料でも使用することができる。これらの植物原料としては、例えば、果実、野菜、スパイス、ハーブ、樹木や野草の葉、樹木、種子、未熟果などが例示できる。また、本発明で使用することのできる植物原料は、凍結乾燥等により多孔質乾燥物とすることができるものであればよく、例えば、加工された食品、例えば漬物、缶詰、レトルトパウチ等に入った素材であっても凍結乾燥等により多孔質乾燥物とできるものであれば利用することができる。
【0014】
本発明で使用することのできる植物原料の具体例としては、例えば、果実としてはリンゴ、イチゴ、ブルーベリー、ブドウ、ミカン、オレンジ、レモン、ライム、グレープフルーツ、パイナップル、キウイフルーツ、アプリコット、桃、サクランボ、梅、メロン、スイカ、柿、洋ナシ、和ナシ、バナナ、イチジク、ビワ、ザクロ、マンゴー、スターフルーツ、グゥアバ、ライチ、パパイヤ、ドリアン、ドラゴンフルーツなど、野菜としては白菜、ナス、キャベツ、ダイコン、タマネギ、ニンジン、ピーマン、ホウレンソウ、小松菜、春菊、ゴボウ、ダイコン、カブ、ジャガイモ、サツマイモ、サトイモ、トマト、セロリ、レタス、キノコ類など、ハーブ・スパイス類としてはジンジャー、レモングラス、ラベンダー、シソ、ジャスミン、パセリ、セージ、オレガノ、ベルガモット、ホップ、レモンバーム、レモングラス、レモンベルベナ、カモミール、ローズマリー、タイム、ミント、コリアンダー、ブラックペッパー、ホワイトペッパー、クミン、トウガラシ、サンショウ、レモンピール、オレンジピール、グレープフルーツピール、ユズピールなど、ナッツ・種実類としては白胡麻、黒胡麻、クルミ、栗、カシューナッツ、マカデミアナッツ、ピーナッツ、米、麦、はと麦、などが例示できる。
【0015】
また、生の茶葉、生の柿の葉、みかんの葉、みかんの木の小枝、みかんやレモンの未熟果なども多孔質乾燥物とすることができるものであれば本発明の植物原料として使用できる。
【0016】
これらの植物原料は単独で使用しても良く、また複数組み合わせて使用しても良い。
【0017】
これらの植物原料のうち、好ましいものとしては、果実、果実の果皮および野菜が例示でき、特に好ましいものとして柑橘果実(全果またはその細断品)およびその果皮、トマト、梅果実が例示でき、さらに好ましいものとしてレモン果実(全果またはそのカット品)およびその果皮が例示できる。
【0018】
[多孔質乾燥物]
本発明で使用する植物原料の多孔質乾燥物を得る方法としては、凍結乾燥、マイクロ波真空乾燥、または、パフ化を例示することができる。
【0019】
凍結乾燥は、いわゆるフリーズドライともいわれ、例えば、前記植物原料あるいはその細断物を-180℃~-5℃、好ましくは-50℃~-10℃、より好ましくは-30℃~-20℃で凍結後、1KPa以下、好ましくは0.1KPa以下の減圧下で、外部から熱を加え、棚温を室温から60℃程度、品温を凍結時の温度付近(好ましくは、凍結時の温度±5℃)に保ちながら水分を昇華させる方法を例示できる。この場合、凍結時に水分は微細な氷の結晶となるが、氷の結晶が存在した空間がそのまま空洞となるため、多孔質構造が生じる。また、フリーズドライでは、乾燥に際し植物原料が常に低温状態に置かれるため、品質の劣化が少なく、好ましい方法といえる。
【0020】
マイクロ波乾燥は、マイクロ波の照射により加熱され水分を蒸発させる乾燥方法である。電子レンジでも使われている2450MHz帯マイクロ波を使用した乾燥方法で、マイクロ波加熱により、植物原料内部の水分子を直接回転させて加熱することにより、水分を急速に蒸発させることで、元々水分が存在した部分が空洞となり、多孔質構造が作られる。マイクロ波乾燥の方法としては、通常、前記植物原料あるいはその細断物を、例えば100gに対し、2450MHzのマイクロ波を2~4kWの出力条件下で30秒~120秒間、マイクロ波を照射し、膨化乾燥させる方法を例示できる。また、マイクロ波乾燥では、乾燥に際し短時間で乾燥が可能なため、風味の劣化が少なく、また生の植物原料に存在する酵素も同時に失活でき、好ましい方法といえる。
【0021】
パフ化は、いったんある程度乾燥された植物原料を多孔質状態となるようにさらに乾燥する方法である。例えば、前記植物原料あるいはその細断物を熱風乾燥もしくは真空乾燥により、まず水分を15~30%程度まで減少させて熱風乾燥もしくは真空乾燥物を得た後、減圧力下で迅速に加熱、もしくは、加圧化で迅速に加熱後、急速に常圧化に置くことで水分を発泡させ多孔質構造を作るとともに乾燥させる方法である。熱風乾燥もしくは真空乾燥後のパフ化は、前半の段階の熱風乾燥もしくは真空乾燥後の条件にもよるが、前半の段階の熱風乾燥もしくは真空乾燥後の条件によっては、やや加熱劣化を受ける可能性もある。
【0022】
一方、真空乾燥、熱風乾燥、熱風乾燥などの乾燥方法では、水分の蒸発とともに組織が密着するため、多孔質とはなりにくい。
【0023】
[粒径]
植物原料の多孔質乾燥物は、いかなる粒径であってもアルコール飲料に含有させたときに、本発明のアルコール感緩和効果を発揮することができるが、飲料への添加の容易さ、飲料時のテクスチャー、分散安定性などの観点から、適当な粒径の範囲とすることが好ましい。
【0024】
植物原料の多孔質乾燥物の粒径を調整する方法は、いかなる方法も採用することができるが、植物原料を生の状態で細断してから多孔質乾燥物としても良く、植物原料を多孔質乾燥物とした後に細断しても良い。細断には適当なカッターや粉砕機などが使用できる。
【0025】
植物原料の多孔質乾燥物の好ましい粒径の範囲に特に限定は無いが、例えば平均粒径1μm~10mm、好ましくは10μm~2mm、より好ましくは50μm~1mmを例示できる。なお、本発明における平均粒径は、JIS規格篩を使用した篩分法に基づいて測定したものをいう。
【0026】
植物原料の多孔質乾燥物の平均粒径が小さい場合は、本発明の飲料植物原料の多孔質乾燥物が添加されたアルコール飲料の口当たりやのど越しはなめらかで、植物原料の多孔質乾燥物の存在感は薄いが本発明の効果は発揮される。
【0027】
一方、植物原料の多孔質乾燥物の平均粒径が大きい場合は本発明の飲料植物原料の多孔質乾燥物が添加されたアルコール飲料において、植物原料の多孔質乾燥物の存在感が生じてくるが、本発明の効果が発揮されるとともに、ざらつきのある口触り・のど越しや濃厚感が感じられる場合もある。したがって植物原料の多孔質乾燥物の平均粒径は飲料コンセプトに応じて設定すればよい。
【0028】
[アルコール飲料用香味改善組成物]
前記植物原料の多孔質乾燥物は、そのまま本発明のアルコール飲料用香味改善組成物とすることもできるが、例えば、溶媒に浸漬し、溶媒ともに植物原料の多孔質乾燥物を含むスラリーを本発明のアルコール飲料用香味改善組成物とすることもできる。
【0029】
この際の溶媒は、特に限定は無いが、水、エタノール、グリセリン、プロピレングリコール、浸漬酒、各種エキス類、これらの混合物などを例示することができる。
【0030】
また、本発明のアルコール飲料用香味改善組成物には、前記植物原料の多孔質乾燥物には、賦形剤、各種香料などを配合することもできる。
【0031】
[アルコール飲料]
本発明におけるアルコール飲料とは、飲料に含まれるエタノールの含有量(v/v)が1%以上である飲料をいう。
【0032】
本発明のアルコール飲料用香味改善組成物は、特に制限なく各種アルコール飲料、すなわち醸造酒、蒸留酒、混成酒といった酒類に適用できる。具体的には、ビール、日本酒、ワイン等の醸造酒、焼酎、泡盛、ウイスキー、ブランデー、ウォッカ、ラム、テキーラ、ジン、スピリッツ等の蒸留酒、上記酒類に糖類や果実を漬け込んだ果実酒、それら酒類にさらに果汁、フレーバー、炭酸ガス等を混合したカクテル、フィズ、チューハイ(酎ハイ)、ビールテイスト(ビール風味)アルコール飲料などが挙げられる。
【0033】
本発明のアルコール飲料用香味改善組成物を適用する対象として、カクテル、フィズ、チューハイ、ビールテイストのアルコール飲料が好ましく、特に好ましくは、カクテル、フィズ、チューハイを例示できる。
【0034】
また、本発明のアルコール飲料用香味改善組成物が添加されるアルコール飲料の製法についても特に限定されるものではない。しかしながら、製造過程で外部からアルコールを添加して製造されるアルコール飲料において、アルコール由来のネガティブな香味の影響が強いことが知られている。従って、そのような製造工程中で別の酒類又は原料アルコール(醸造アルコール)を添加するような製法で作られるアルコール飲料が、本発明のアルコール飲料用香味改善組成物が添加される対象として好ましい。
【0035】
また、本発明のアルコール飲料用香味改善組成物が添加されるアルコール飲料のアルコール度数は特に限定されるものではないが、本発明による改善効果が発揮されやすいアルコール度数は、通常1(v/v)%以上、好ましくは3(v/v)%以上、より好ましくは5(v/v)%以上、さらに好ましくは6(v/v)%以上、特に好ましくは7(v/v)%以上、最も好ましくは8(v/v)%以上を例示できる。また、アルコール度数の上限は、特に限定されることはないが、通常65(v/v)%以下、好ましくは50(v/v)%以下、より好ましくは30(v/v)%以下、さらに好ましくは20(v/v)%以下、特に好ましくは15(v/v)%以下、最も好ましくは13(v/v)以下を例示できる。
【0036】
[アルコール飲料中における植物原料の多孔質乾燥物の含有量]
アルコール飲料中における、本発明の植物原料の多孔質乾燥物の含有量は、特に限定されるものではないが、通常0.0001g/L~10g/L、好ましくは0.0005g/L~2g/L、より好ましくは0.001g/L~1g/L、さらに好ましくは0.002g/L~0.5g/Lを例示できる。
【0037】
アルコール飲料中における、本発明の植物原料の多孔質乾燥物の含有量が少ない場合、本発明の効果である、アルコール感の低減が十分発揮されない場合があり得る。また、アルコール飲料中における、本発明の植物原料の多孔質乾燥物の含有量が多い場合、本発明の効果であるアルコール感の低減は十分発揮されるが、固形物を含む口触り・のど越しや濃厚感が感じられる場合がある。このような固形物を含む口触り・のど越しや濃厚感は飲料のコンセプトによるところが大きいため、そのコンセプトに応じて本発明の植物原料の多孔質乾燥物の含有量は適宜選択することができる。
【0038】
また、アルコール飲料中における、本発明の植物原料の多孔質乾燥物は分散させることが好ましいが、必ずしも分散させる必要はなく、沈殿した状態でも本発明の効果を発揮することができる。
【0039】
アルコール飲料中において、本発明の植物原料の多孔質乾燥物を分散させる場合には、飲食品に使用することができる各種分散剤が使用でき、例えば、アラビアガム、アルギン酸類(アルギン酸、アルギン酸塩)、カラギーナン、寒天、グアーガム、キサンタンガム、タマリンド種子多糖類、ローカストビーンガム、ペクチン、プルラン、カシアガム、脱アシル型ジェランガム、ネイティブ型ジェランガム、サイリウムシードガム、ゼラチン、トラガントガム、カラヤガム、カードラン、ガティガム、微結晶セルロース、発酵セルロース、微小繊維状セルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等のセルロース誘導体、水溶性ヘミセルロース、大豆多糖類、加工デンプンなどが例示でき、これらのうち、特に、カラギーナン、カルボキシメチルセルロース、ペクチン、キサンタンガム、グアーガムなどが好ましい分散剤として例示できる。
【0040】
[アルコール飲料製造における、本発明品添加の工程]
アルコール飲料を製造する工程において、本発明のアルコール飲料用香味改善剤組成物のアルコール飲料への添加時期は、最終的にアルコール飲料に必要量含まれていれば、いずれの工程で添加しても構わない。
【0041】
例えば、非発酵製法においては、配合、濾過、殺菌、カーボネーション、充填のいずれの工程の間に行っても構わない。また、発酵製法においては、発酵前工程、発酵工程、発酵後工程のいずれの工程で添加しても構わないが、酒税法に基づいて添加時期を選択することが好ましい。特に制限が無い場合は、発酵後の工程で添加することが好ましい。
【0042】
[アルコール飲料への本発明品添加によるアルコール感緩和の効果]
前記アルコール飲料は、アルコール飲料に含まれるアルコール(エタノールまたはエチルアルコールともいう)により、独特のアルコール感(アルコール臭、アルコールの苦味、アルコールのえぐみ、アルコールの辛味、アルコールの刺激)といった不快な香味が感じられる場合が多い。また、その香味は一般的にアルコール濃度が高いほど強く感じられる傾向がある。このようなアルコール感についての感じ方は個人差があり、人によっては好ましく感じる人もいるが、多くの消費者にとっては低減したほうが、嗜好性が高まる場合が多い。
【0043】
アルコール飲料中に本発明の植物原料の多孔質乾燥物を有効成分とするアルコール飲料用香味改善組成物を含有させることにより、アルコール飲料の香味が改善され、特にアルコール飲料に独特のアルコール感が緩和される。さらに、前記アルコール感としてはアルコール臭、アルコールの苦味、アルコールのえぐみ、アルコールの辛味およびアルコールの刺激が挙げられる。
【実施例0044】
以下に実施例および比較例を挙げて本発明の具体的態様を詳しく説明するが、本発明の本質は前記開示した技術的思想にあるのであり、実施例により何ら限定されるものではない。なお、以下の記載中に割合を示す数字(%)が多数あるが(w/w、v/v、w/v、v/w)、特に限定がない場合は質量基準の割合(w/w)を意味する。
【0045】
(実施例1)レモン全果の凍結乾燥物
生レモン(水分約90%)600gを細断(1/8カット)、水洗後、蒸し殺菌(80~90℃、10分間)し、-25℃で24時間保持して予備凍結させた。この予備凍結物をフリーズドライ装置に供し、15Paまで減圧後、棚温45℃、品温-20~-15℃を維持しながら凍結真空乾燥(約24時間所要)し、凍結乾燥レモン(「多孔質乾燥物」)62.4gを得た(水分4.0%)。
【0046】
これを、ミキサーにて軽く粉砕し40メッシュ(目開き425μm)金網を通過する画分を集めた。未通過物は再度ミキサーにて軽く粉砕し40メッシュ(目開き425μm)金網を通過する画分を集めた。この工程を繰り返し、前記40メッシュ通過画分60.5gを得、これをアルコール飲料用香味改善組成物(本発明品1)とした。本発明品1の平均粒径は約250μmであった。
【0047】
(比較例1)レモン全果の真空乾燥物
生レモン(水分約90%)600gを細断(1/8カット)、水洗後、蒸し殺菌(80~90℃、10分間)し、真空乾燥機にて、棚温55℃、品温40℃を維持しながら真空乾燥(約12時間所要)し、真空乾燥レモン62.4gを得た(水分4.0%)。
【0048】
これを、ミキサーにて軽く粉砕し40メッシュ(目開き425μm)金網を通過する画分を集めた。未通過物は再度ミキサーにて軽く粉砕し40メッシュ(目開き425μm)金網を通過する画分を集めた。この工程を繰り返し、前記40メッシュ通過画分60.5gを得た(比較品1)。比較品1の平均粒径は約250μmであった。
【0049】
(比較例2)レモン全果の自然乾燥物
生レモン(水分約90%)600gを細断(1/8カット)、水洗後、蒸し殺菌(80~90℃、10分間)し、冷暗所(気温20℃、湿度65%)にて3日間乾燥後、さらに乾燥機にて、棚温70℃にて乾燥(約3時間所要)し、自然乾燥レモン62.3gを得た(水分4.0%)。
【0050】
これを、ミキサーにて軽く粉砕し40メッシュ(目開き425μm)金網を通過する画分を集めた。未通過物は再度ミキサーにて軽く粉砕し40メッシュ(目開き425μm)金網を通過する画分を集めた。この工程を繰り返し、前記40メッシュ通過画分60.1gを得た(比較品2)。比較品2の平均粒径は約250μmであった。
【0051】
(比較例3)レモン全果の熱風乾燥物
生レモン(水分約90%)600gを細断(1/8カット)、水洗後、蒸し殺菌(80~90℃、10分間)し、70℃熱風を送風し6時間乾燥し、熱風乾燥レモン62.4gを得た(水分4.0%)。
【0052】
これを、ミキサーにて軽く粉砕し40メッシュ(目開き425μm)金網を通過する画分を集めた。未通過物は再度ミキサーにて軽く粉砕し40メッシュ(目開き425μm)金網を通過する画分を集めた。この工程を繰り返し、前記40メッシュ通過画分60.5gを得た(比較品3)。比較品3の平均粒径は約250μmであった。
【0053】
(アルコール飲料への添加例1)
下記表1に示す飲料処方(飲料処方1)にて、本発明品1、比較品1~比較品3のいずれかを0.2g添加、あるいは本発明品または比較品無添加のレモンチューハイ(アルコール度数約9(v/v)%)を調整した。
【0054】
【表1】
【0055】
(官能評価1)
前記本発明品1、比較品1~比較品3のいずれかを含有するか、あるいは本発明品等無添加のレモンチューハイ(表1の処方)を10名のパネリストにて官能評価を行った。
【0056】
評価項目は、(1)アルコール臭、(2)アルコールの苦味、(3)アルコールのえぐみ、(4)アルコールの辛味、(5)アルコールの刺激について、無添加のそれぞれの項目を、0点を基準として-3~3点(香味の良好な方を大きい点数とする)の7段階で評価した(-3点:非常にネガティブな効果がある、-2点:ネガティブな効果がある、-1点:ややネガティブな効果がある、0点:無添加とほぼ同等、1点:ややポジティブな効果あり、2点:ポジティブな効果あり)。また、自由項目として総合的な評価を記入させた。その結果の平均値および平均的な内容を表2に示す。
【0057】
【表2】
【0058】
表2に示した通り、本発明品1のアルコール飲料用香味改善組成物(レモン果実の多孔質乾燥物の粉砕物)を添加したレモンチューハイは、本発明品1のアルコール飲料用香味改善組成物無添加のレモンチューハイと比べ、明らかにアルコール感が緩和されていた。一方、比較品1(レモン果実の真空乾燥物の粉砕物)、比較品2(レモン果実の自然乾燥物の粉砕物)または比較品3(レモン果実の熱風乾燥物の粉砕物)を添加したレモンチューハイのアルコール感についてはアルコール臭、アルコールの苦味、アルコールのえぐみ、アルコールの辛味およびアルコールの刺激のいずれについても無添加(コントロール)と大差なく、アルコール感緩和効果は認められなかった。また、比較品3(レモン果実の熱風乾燥物の粉砕物)を添加したレモンチューハイについては、ややカラメル様の香味が付与されてしまうという欠点が見られた。
【0059】
(官能評価2)添加量との関係
前記飲料処方1(表1の処方)に、本発明品1を表3に示す量添加し、前記官能評価1と同一の評価項目、評価基準にて官能評価を行った。その結果を表3に示す。
【0060】
【表3】
【0061】
表3に示した通り、本発明品1のアルコール飲料用香味改善組成物(レモン果実の多孔質乾燥物の粉砕物)を添加したレモンチューハイは、本発明品1の広い添加濃度範囲(0.001~1(w/v)%)においてアルコール感を緩和する効果が認められた。この効果は、アルコール飲料中0.001(w/v)%という低濃度においても認められた。また、0.02%以上の添加量においては、添加量を増やしてもアルコール感緩和の効果はあまり変化せず、1(w/v)%の添加では、レモンチューハイを飲んだ時の口当たり、のど越しにややざらつき感を感じた。しかしながらこのような口当たりやのど越しもざらつきは、飲料のコンセプトが、例えば果肉を含むようなものであれば、全く問題なく使用できると認められる。
【0062】
(実施例2)レモン果皮の凍結乾燥物(スラリータイプ)
市販冷凍レモン皮500g(水分80.2(w/w)%)を解凍後、軽く水洗し、蒸し殺菌(80~90℃、10分間)後、再度-25℃で24時間保持して予備凍結させた。この予備凍結物をフリーズドライ装置に供し、15Paまで減圧後、棚温45℃、品温-20~-15℃を維持しながら凍結真空乾燥(約24時間所要)し、凍結乾燥レモンピ-ル(「多孔質乾燥物」)105.3gを得た(水分6.0%)。
【0063】
これを、ミキサーにて軽く粉砕し100メッシュ(目開き150μm)金網を通過する画分を集めた。未通過物は再度ミキサーにて軽く粉砕し100メッシュ(目開き150μm)金網を通過する画分を集めた。この工程を繰り返し、前記100メッシュ通過画分102.3gを得た。この100メッシュ通過画分の平均粒径は約90μmであった。前記100メッシュ通過画分50gと30(v/v)%エタノール水溶液450gをよく混合し、スラリーとし、これをアルコール飲料用香味改善組成物(本発明品2、凍結乾燥レモン果皮=多孔質乾燥物含有量10%)とした。
【0064】
(比較例4)レモン果皮の真空乾燥物(スラリータイプ)
市販冷凍レモン皮500g(水分80.2(w/w)%)を解凍後、軽く水洗し、蒸し殺菌(80~90℃、10分間)後、真空乾燥機にて、棚温55℃、品温40℃を維持しながら真空乾燥(約12時間所要)し、真空乾燥レモンレモンピ-ル105.3gを得た(水分6.0%)。
【0065】
これを、ミキサーにて軽く粉砕し100メッシュ(目開き150μm)金網を通過する画分を集めた。未通過物は再度ミキサーにて軽く粉砕し100メッシュ(目開き150μm)金網を通過する画分を集めた。この工程を繰り返し、前記100メッシュ通過画分102.3gを得た。この100メッシュ通過画分の平均粒径は約90μmであった。前記100メッシュ通過画分50gと30(v/v)%エタノール水溶液450gをよく混合し、スラリー(比較品4、真空乾燥レモン果皮含有量10%)とした。
【0066】
(アルコール飲料への添加例2)
下記表4に示す飲料処方(飲料処方2)にて、本発明品2または比較品4のいずれかを2g添加、あるいは本発明品または比較品無添加のレモンチューハイ(アルコール度数約5(v/v)%)を調整した。
【0067】
【表4】
【0068】
(官能評価3)
前記本発明品2、比較品4のいずれかを含有するか、あるいは本発明品または比較品無添加のレモンチューハイ(表4に示す処方)を10名のパネリストにて官能評価を行った。評価項目および評価基準は官能評価1と同じとした。その結果を表5に示す。
【0069】
【表5】
【0070】
表5に示した通り、本発明品2のアルコール飲料用香味改善組成物(レモン果皮の多孔質乾燥物の粉砕物を10%含有するスラリー)を添加したレモンチューハイは、本発明品2のアルコール飲料用香味改善組成物無添加のレモンチューハイと比べ、明らかにアルコール感が緩和されていた。一方、比較品4(レモン果皮の真空乾燥物の粉砕物を10%含有するスラリー)を添加したレモンチューハイのアルコール感についてはアルコール臭、アルコールの苦味、アルコールのえぐみ、アルコールの辛味およびアルコールの刺激のいずれについても無添加(コントロール)と大差なく、アルコール感緩和効果は認められなかった。
【0071】
(実施例3)梅干しの凍結乾燥物
市販の紀州南高梅の梅干し(塩分10%)の種子を取り除いた部分600g(水分67.8%)を-25℃で24時間保持して予備凍結させた。この予備凍結物をフリーズドライ装置に供し、15Paまで減圧後、棚温45℃、品温-20~-15℃を維持しながら凍結真空乾燥(約24時間所要)し、凍結乾燥梅干し(「多孔質乾燥物」)201.2gを得た(水分4.0%)。
【0072】
これを、ミキサーにて粉砕し100メッシュ(目開き150μm)金網を通過する画分を集めた。未通過物は再度ミキサーにて軽く粉砕し150メッシュ金網を通過する画分を集めた。この工程を繰り返し、前記100メッシュ通過画分198.6gを得た。この100メッシュ通過画分の平均粒径は約90μmであった。前記100メッシュ通過画分50gと30(v/v)%エタノール水溶液450gをよく混合し、スラリーとし、これをアルコール飲料用香味改善組成物(本発明品3、凍結乾燥梅干し(=多孔質乾燥物)含有量10%)とした。
【0073】
(実施例4)梅干しのパフ化物乾燥物
市販の紀州南高梅の梅干し(塩分10%)の種子を取り除いた部分600g(水分67.8%)を60℃のオーブンで予備乾燥して残留水分含有量を40%まで低減した後、1辺約1cmの立方体を成形し、これを真空マイクロ波オーブンに入れて40℃で5分間加熱しパフ化した。ついで真空乾燥機にて、棚温55℃、品温40℃を維持しながら真空乾燥(約2時間所要)し、パフ化乾燥梅干し(「多孔質乾燥物」)198.3gを得た(水分4.2%)。
【0074】
これを、ミキサーにて粉砕し100メッシュ(目開き150μm)金網を通過する画分を集めた。未通過物は再度ミキサーにて軽く粉砕し150メッシュ金網を通過する画分を集めた。この工程を繰り返し、前記100メッシュ通過画分197.7gを得た。この100メッシュ通過画分の平均粒径は約90μmであった。前記100メッシュ通過画分50gと30(v/v)%エタノール水溶液450gをよく混合し、スラリーとし、これをアルコール飲料用香味改善組成物(本発明品4、パフ化乾燥梅干し(=多孔質乾燥物)含有量10%)とした。
【0075】
(比較例5)梅干しの真空乾燥物
市販の紀州南高梅の梅干し(塩分10%)の種子を取り除いた部分600g(水分67.8%)を真空乾燥機にて、棚温55℃、品温40℃を維持しながら真空乾燥(約12時間所要)し、真空乾燥梅干し203.0gを得た(水分4.1%)。
【0076】
これを、ミキサーにて粉砕し100メッシュ(目開き150μm)金網を通過する画分を集めた。未通過物は再度ミキサーにて軽く粉砕し150メッシュ金網を通過する画分を集めた。この工程を繰り返し、前記100メッシュ通過画分196.5gを得た。この100メッシュ通過画分の平均粒径は約90μmであった。前記100メッシュ通過画分50gと30(v/v)%エタノール水溶液450gをよく混合し、スラリーとした(比較品5、真空乾燥梅干し含有量10%)とした。
【0077】
(アルコール飲料への添加例3)
市販の梅酒(アルコール度数15(v/v)%)に、本発明品3、本発明品4または比較品5のいずれかを2g添加し、あるいは本発明品または比較品無添加にて梅酒を調整した。
【0078】
(官能評価4)
前記本発明品3、本発明品4または比較品5のいずれかを含有するか、あるいは本発明品無添加の前記梅酒を10名のパネリストにて官能評価を行った。評価項目および評価基準は官能評価1と同じとした。その結果を表6に示す。
【0079】
【表6】
【0080】
表6に示した通り、本発明品3および4(いずれも梅干しの多孔質乾燥物の粉砕物を10%含有するスラリー)のアルコール飲料用香味改善組成物を添加した梅酒は、本発明品無添加の梅酒と比べ、明らかにアルコール感が緩和されていた。
【0081】
一方、比較品5(梅干し真空乾燥物の粉砕物を10%含有するスラリー)を添加したレモンチューハイのアルコール感についてはアルコール臭、アルコールの苦味、アルコールのえぐみ、アルコールの辛味およびアルコールの刺激のいずれについても無添加(コントロール)と大差なく、アルコール感緩和効果は認められなかった。
【0082】
この結果において、梅干しの凍結乾燥物のみならず、梅干しのパフ化乾燥物についても、アルコール飲料のアルコール感緩和効果が認められ、一方、梅干しの真空乾燥物にはアルコール飲料のアルコール感緩和効果が認められなかったことから、乾燥物が多孔質になっていることが、本発明の効果を発揮することにおいて重要な要素であると認められた。
【0083】
(実施例5)トマトの凍結乾燥物
市販のトマト(長野産、桃太郎系)のへたと皮を取り除き、2cm角にカットした。この1000g(水分89.7%)を-25℃で24時間保持して予備凍結させた。この予備凍結物をフリーズドライ装置に供し、15Paまで減圧後、棚温45℃、品温-20~-15℃を維持しながら凍結真空乾燥(約24時間所要)し、凍結乾燥トマト(「多孔質乾燥物」)106.2gを得た(水分4.1%)。
【0084】
これを、ミキサーにて軽く粉砕し40メッシュ(目開き425μm)金網を通過する画分を集めた。未通過物は再度ミキサーにて軽く粉砕し40メッシュ(目開き425μm)金網を通過する画分を集めた。この工程を繰り返し、前記40メッシュ通過画分104.3gを得、これをアルコール飲料用香味改善組成物(本発明品5)とした。本発明品5の平均粒径は約250μmであった。
【0085】
(比較例6)トマトの真空乾燥物
市販のトマト(長野産、桃太郎系)のへたと皮を取り除き、2cm角にカットした。この1000g(水分89.7%)を、真空乾燥機にて、棚温55℃、品温40℃を維持しながら真空乾燥(約12時間所要)し、真空乾燥トマト105.8gを得た(水分4.0%)。
【0086】
これを、ミキサーにて軽く粉砕し40メッシュ(目開き425μm)金網を通過する画分を集めた。未通過物は再度ミキサーにて軽く粉砕し40メッシュ(目開き425μm)金網を通過する画分を集めた。この工程を繰り返し、前記40メッシュ通過画分103.9gを得た(比較品6)。比較品6の平均粒径は約250μmであった。
【0087】
(アルコール飲料への添加例4)
市販のトマトリキュール(アルコール度数12(v/v)%)に、本発明品5または比較品6のいずれかを0.2g添加し、あるいは本発明品または比較品無添加にてトマトリキュールを調整した。
【0088】
(官能評価5)
前記本発明品5または比較品6のいずれかを含有するか、あるいは本発明品無添加の前記トマトリキュールを10名のパネリストにて官能評価を行った。評価項目および評価基準は官能評価1と同じとした。その結果を表7に示す。
【0089】
【表7】
【0090】
表7に示した通り、本発明品5のアルコール飲料用香味改善組成物(トマトの凍結乾燥物の粉砕物)を添加したトマトリキュールは、本発明品無添加のトマトリキュールと比べ、明らかにアルコール感が緩和されていた。
【0091】
一方、比較品6(トマトの真空乾燥物の粉砕物)を添加したトマトリキュールのアルコール感についてはアルコール臭、アルコールの苦味、アルコールのえぐみ、アルコールの辛味およびアルコールの刺激のいずれについても無添加(コントロール)と大差なく、アルコール感緩和効果は認められなかった。
【0092】
(実施例6)緑茶の生葉の凍結乾燥物
静岡県産やぶきた種の緑茶葉の1番茶(生の茶葉)を茶畑から摘み取り、その1000g(水分79.5%)を水洗後、そのまま冷凍し、-25℃で24時間保持して予備凍結させた。この予備凍結物をフリーズドライ装置に供し、15Paまで減圧後、棚温45℃、品温-20~-15℃を維持しながら凍結真空乾燥(約24時間所要)し、凍結乾燥生茶葉(「多孔質乾燥物」)210.5gを得た(水分3.5%)。
【0093】
これを、ミキサーにて軽く粉砕し40メッシュ(目開き425μm)金網を通過する画分を集めた。未通過物は再度ミキサーにて軽く粉砕し40メッシュ(目開き425μm)金網を通過する画分を集めた。この工程を繰り返し、前記40メッシュ通過画分206.4gを得、これをアルコール飲料用香味改善組成物(本発明品6)とした。本発明品6の平均粒径は約250μmであった。
【0094】
(比較例7)緑茶(通常の方法により製茶)の粉砕物
前記実施例6で採取した生緑茶葉と同じ茶畑で採取し、同時期に製茶した茶200g(水分2.8%)をミキサーにて軽く粉砕し40メッシュ(目開き425μm)金網を通過する画分を集めた。未通過物は再度ミキサーにて軽く粉砕し40メッシュ(目開き425μm)金網を通過する画分を集めた。この工程を繰り返し、前記40メッシュ通過画分197.3gを得た(比較品7)。比較品7の平均粒径は約270μmであった。
【0095】
(アルコール飲料への添加例5)
市販の缶入り緑茶ハイ(アルコール度数3(v/v)%、無炭酸)に、本発明品6または比較品7のいずれかを0.01(w/v)%添加し、あるいは本発明品または比較品無添加にて緑茶ハイを調整した。
【0096】
(官能評価6)
前記本発明品6または比較品7のいずれかを含有するか、あるいは本発明品無添加の前記緑茶ハイを10名のパネリストにて官能評価を行った。評価項目および評価基準は官能評価1と同じとした。その結果を表8に示す。
【0097】
【表8】
【0098】
表8に示した通り、本発明品6のアルコール飲料用香味改善組成物(生茶葉の凍結乾燥物の粉砕物)を添加した緑茶ハイは、本発明品無添加の緑茶ハイと比べ、明らかにアルコール感が緩和されていた。
【0099】
一方、比較品7(一般的製法により製茶された緑茶の粉砕物)を添加した緑茶ハイのアルコール感についてはアルコール臭、アルコールの苦味、アルコールのえぐみ、アルコールの辛味およびアルコールの刺激のいずれについても無添加(コントロール)と大差なく、アルコール感緩和効果は認められなかった。
【0100】
(実施例7)炊飯米の凍結乾燥物
市販の米(コシヒカリ)300gを水洗後、水400gを加え、市販炊飯器を用いて炊飯し、炊飯米660gを得た。この炊飯米を-25℃で24時間保持して予備凍結させた。この予備凍結物をフリーズドライ装置に供し、15Paまで減圧後、棚温45℃、品温-20~-15℃を維持しながら凍結真空乾燥(約24時間所要)し、凍結乾燥炊飯米(「多孔質乾燥物」)296.5gを得た(水分3.9%)。
【0101】
これを、ミキサーにて軽く粉砕し40メッシュ(目開き425μm)金網を通過する画分を集めた。未通過物は再度ミキサーにて軽く粉砕し40メッシュ(目開き425μm)金網を通過する画分を集めた。この工程を繰り返し、前記40メッシュ通過画分286.4gを得、これをアルコール飲料用香味改善組成物(本発明品6)とした。本発明品7の平均粒径は約250μmであった。
【0102】
(比較例8)炊飯米の真空乾燥物
市販の米(コシヒカリ)300gを水洗後、水400gを加え、市販炊飯器を用いて炊飯し、炊飯米660gを得た。これを真空乾燥機にて、棚温55℃、品温40℃を維持しながら真空乾燥(約12時間所要)し、真空乾燥炊飯米297.3gを得た(水分4.0%)。
【0103】
これを、ミキサーにて軽く粉砕し40メッシュ(目開き425μm)金網を通過する画分を集めた。未通過物は再度ミキサーにて軽く粉砕し40メッシュ(目開き425μm)金網を通過する画分を集めた。この工程を繰り返し、前記40メッシュ通過画分288.3gを得た(比較品8)。比較品8の平均粒径は約250μmであった。
【0104】
(アルコール飲料への添加例6)
市販のビール風味アルコール飲料(第三のビール、アルコール度数7(v/v)%)に、本発明品7または比較品8のいずれかを0.1g/L添加し、あるいは本発明品または比較品無添加にてビール風味アルコール飲料を調整した。
【0105】
(官能評価7)
前記本発明品7または比較品8のいずれかを含有するか、あるいは本発明品無添加の前記ビール風味アルコール飲料を10名のパネリストにて官能評価を行った。評価項目および評価基準は官能評価1と同じとした。その結果を表9に示す。
【0106】
【表9】
【0107】
表9に示した通り、本発明品7のアルコール飲料用香味改善組成物(炊飯米の凍結乾燥物の粉砕物)を添加したビール風味アルコール飲料は、本発明品無添加のビール風味アルコール飲料と比べ、明らかにアルコール感が緩和されていた。
【0108】
一方、比較品8(炊飯米の真空乾燥物の粉砕物)を添加したビール風味アルコール飲料のアルコール感についてはアルコール臭、アルコールの苦味、アルコールのえぐみ、アルコールの辛味およびアルコールの刺激のいずれについても無添加(コントロール)と大差なく、アルコール感緩和効果は認められなかった。