(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024077345
(43)【公開日】2024-06-07
(54)【発明の名称】創傷治療用医薬組成物、及び当該創傷治療用医薬組成物の製造方法
(51)【国際特許分類】
A61K 36/185 20060101AFI20240531BHJP
A61P 17/02 20060101ALI20240531BHJP
【FI】
A61K36/185
A61P17/02
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022189392
(22)【出願日】2022-11-28
(71)【出願人】
【識別番号】397021235
【氏名又は名称】株式会社サニープレイス
(74)【代理人】
【識別番号】100123652
【弁理士】
【氏名又は名称】坂野 博行
(72)【発明者】
【氏名】向井 信人
(72)【発明者】
【氏名】西本 壮吾
(72)【発明者】
【氏名】湊 律子
【テーマコード(参考)】
4C088
【Fターム(参考)】
4C088AB12
4C088AC04
4C088BA08
4C088BA09
4C088BA10
4C088CA05
4C088CA06
4C088CA09
4C088NA14
4C088ZA89
(57)【要約】
【課題】
本発明の目的は、廃棄されるザクロ種子の有効活用及び付加価値化をめざして創傷治療の作用を有する組成物を提供することにある。
【解決手段】
本発明の創傷治療用医薬組成物は、ザクロ種子エキスを含有することを特徴とする。また、本発明の創傷治療用医薬組成物の好ましい実施態様において、ザクロ種子を粉砕して得た粉砕物を、エタノール、メタノール、水、ヘキサンからなる群から選択される少なくとも1種の溶媒に浸漬して、上清を分取して前記ザクロ種子エキスを得たことを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ザクロ種子エキスを含有することを特徴とする創傷治療用医薬組成物。
【請求項2】
ザクロ種子を粉砕して得た粉砕物を、エタノール、メタノール、水、ヘキサンからなる群から選択される少なくとも1種の溶媒に浸漬して、上清を分取して前記ザクロ種子エキスを得たことを特徴とする請求項1記載の組成物。
【請求項3】
前記溶媒は、エタノールである請求項2記載の組成物。
【請求項4】
前記ザクロ種子エキスの濃度は、1~100μg/mLである請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物を有効成分とすることを特徴とする医薬部外品。
【請求項6】
ザクロ種子を粉砕して得た粉砕物を溶媒中に浸漬した後、上清を分取する工程と、前記上清を分取することによりザクロ種子エキスを得る工程と、得られたザクロ種子エキスを有効的な量に調整する工程と、を有することを特徴とするザクロ種子エキスを含有する創傷治療用医薬組成物の製造方法。
【請求項7】
溶媒が、エタノール、メタノール、ヘキサン、水からなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項5記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、創傷治療用医薬組成物、及び当該創傷治療用医薬組成物の製造方法に関し、特に、ザクロ種子エキスを含有する創傷治療用医薬組成物、及び当該創傷治療用医薬組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ザクロは果実全体に対して種子がかなりの割合を占める果実であるが、原則として、搾汁後に残る種子は廃棄されている。ザクロ種子を利用した少ない例として、ザクロ種子エキスを用いたサプリメント提案システムであって、提案サプリメント演算手段が、希望事項情報が美容の場合には、提案サプリメントとして、マルチビタミン、マルチミネラル、ビタミンA、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンB12、ビタミンC、ビタミンE、ビタミンP、ナイアシン、ビオチン、コラーゲン、エラスチン、ポリフェノール、パントテン酸、ヒアルロン酸、アセチルグルコサミン、イノシトール、コエンザイムQ10、αカロチン、βカロチン、大豆サポニン、ロイヤルゼリー、ツイントース、葉酸、バラ花弁エキス、ザクロ種子エキス、ブラックコホッシュエキス、大豆イソフラボン、葛イソフラボンスクワレン、ビール酵母、コロハエキス、カルシウム、マグネシウム、銅、鉄、亜鉛、マンガン、とから成る群の少なくとも1つを出力するサプリメント提案システムが知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、現在のところ多くの場合、ザクロ種子は原則として、廃棄物として処理されており、前記特許文献以外は、有効に利用されていないのが現状である。一方で、廃棄物の有効利用が見直されている。かかる状況下、廃棄物たるザクロ種子が種々の疾患に対して効果的であれば、より有益となる。
【0005】
したがって、本発明の目的は、廃棄されるザクロ種子の有効活用及び付加価値化をめざして創傷治療の作用を有する組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明者らは、ザクロ種子の有効活用について鋭意検討した結果、本発明を見出すに至った。
【0007】
すなわち、本発明の創傷治療用医薬組成物は、ザクロ種子エキスを含有することを特徴とする。
【0008】
また、本発明の創傷治療用医薬組成物の好ましい実施態様において、ザクロ種子を粉砕して得た粉砕物を、エタノール、メタノール、水、ヘキサンからなる群から選択される少なくとも1種の溶媒に浸漬して、上清を分取して前記ザクロ種子エキスを得たことを特徴とする。
【0009】
また、本発明の創傷治療用医薬組成物の好ましい実施態様において、前記溶媒は、エタノールであることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の創傷治療用医薬組成物の好ましい実施態様において、前記ザクロ種子エキスの濃度は、1~100μg/mLであることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の医薬部外品は、本発明の創傷治療用医薬組成物を有効成分とすることを特徴とする。
【0012】
また、本発明の創傷治療用医薬組成物の製造方法は、ザクロ種子を粉砕して得た粉砕物を溶媒中に浸漬した後、上清を分取する工程と、前記上清を分取することによりザクロ種子エキスを得る工程と、得られたザクロ種子エキスを有効的な量に調整する工程と、を有することを特徴とするザクロ種子エキスを含有することを特徴とする。
【0013】
また、本発明の創傷治療用医薬組成物の製造方法の好ましい実施態様において、溶媒が、エタノール、メタノール、ヘキサン、水からなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明の創傷治療用医薬組成物によれば、従来廃棄物として処理されていたザクロ種子を有効利用することが可能であるという有利な効果を奏する。また、本発明の創傷治療用医薬組成物によれば、治療速度を向上させることが可能であるという有利な効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、本発明の一実施態様における組成物を用いた場合のザクロ種子抽出物による創傷治療試験の結果を示す図である。縦軸は、創傷部分面積を示し、横軸は、時間を示す。Control(コントロール)及びPSE(ザクロ種子エキス)の種々の濃度における創傷治療試験の結果を示す。具体的には、
図1は、創傷治癒試験、及び経過時間毎の創傷部分面積を示す。(n=3、平均値±標準誤差、*p < 0.05、**p < 0.01 vs Control)。
【
図2】
図2は、コントロールによる創傷治療試験におけるウェルの顕微鏡写真(倍率:40倍)を示す。図中のa、b及びcは、系列の違いを示す。1濃度当たり3ウェル用意し、1ウェル目(横に創傷)をa、2ウェル目(縦に創傷)をb、3ウェル目(斜めに創傷)をcと名付けている。
【
図3】
図3は、本発明の一実施態様における組成物を用いた場合のザクロ種子抽出物による創傷治療試験におけるウェルの顕微鏡写真(倍率:40倍)を示す。具体的に、PSE(ザクロ種子エキス(抽出物))1μg/mL添加した場合のウェルの顕微鏡写真(倍率:40倍)を示す。図中のa、b及びcは、系列の違いを示す。1濃度当たり3ウェル用意し、1ウェル目(横に創傷)をa、2ウェル目(縦に創傷)をb、3ウェル目(斜めに創傷)をcと名付けている。
【
図4】
図4は、本発明の一実施態様における組成物を用いた場合のザクロ種子抽出物による創傷治療試験におけるウェルの顕微鏡写真(倍率:40倍)を示す。具体的に、PSE(ザクロ種子エキス(抽出物))10μg/mL添加した場合のウェルの顕微鏡写真(倍率:40倍)を示す。図中のa、b及びcは、系列の違いを示す。1濃度当たり3ウェル用意し、1ウェル目(横に創傷)をa、2ウェル目(縦に創傷)をb、3ウェル目(斜めに創傷)をcと名付けている。
【
図5】
図5は、本発明の一実施態様における組成物を用いた場合のザクロ種子抽出物による創傷治療試験におけるウェルの顕微鏡写真(倍率:40倍)を示す。具体的に、PSE(ザクロ種子エキス(抽出物))50μg/mL添加した場合のウェルの顕微鏡写真(倍率:40倍)を示す。図中のa、b及びcは、系列の違いを示す。1濃度当たり3ウェル用意し、1ウェル目(横に創傷)をa、2ウェル目(縦に創傷)をb、3ウェル目(斜めに創傷)をcと名付けている。
【
図6】
図6は、コントロール、及び本発明の一実施態様における組成物を用いた場合のザクロ種子抽出物による創傷治療試験におけるウェルの顕微鏡写真(倍率:40倍)を示す。具体的に、コントロール、及びPSE(ザクロ種子エキス(抽出物))1、10及び50μg/mLを、それぞれ添加した場合のウェルの顕微鏡写真(倍率:40倍)を示す。経過時間は、24時間である。図中のa、b及びcは、系列の違いを示す。1濃度当たり3ウェル用意し、1ウェル目(横に創傷)をa、2ウェル目(縦に創傷)をb、3ウェル目(斜めに創傷)をcと名付けている。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の創傷治療用医薬組成物は、ザクロ種子エキスを含有することを特徴とする。ザクロ種子エキスは、ザクロの種子由来のエキスである。本発明に適用するザクロ種子エキスは、ザクロの種子由来である限り、総てのザクロ種子エキスを対象とする。
【0017】
また、本発明において、創傷とは、特に限定されないが、例えば、外的、内的要因によって起こる体表組織の物理的な損傷を意味する。一般に、創と傷という異なるタイプの損傷をまとめて指す総称である。通常は、体以外の物に対するものも含めて傷と呼ばれている。創傷の形状や原因(機転)などによって擦過傷、切創、裂創、刺創 等々に分類されている。創傷の応急処置として、止血を止めるには、通常、圧迫による。創傷からの回復を促すために創傷環境調整が提唱されており、壊死組織の除去、感染や炎症への対処、乾燥の防止、滲出液の管理などがある。軽い傷は水道水や、生理食塩水によって洗浄され、外用薬、適切な湿潤環境を維持するための薄い創傷被覆材が用いられることもある。
【0018】
また、創傷治療の対象となるのは、体表組織、具体的には、皮膚等である。したがって、本明細書において主として皮膚について説明するが、本発明は、これに限定される意図ではない。
【0019】
また、本発明の創傷治療用医薬組成物の好ましい実施態様において、ザクロ種子を粉砕して得た粉砕物を、エタノール、メタノール、水、ヘキサンからなる群から選択される少なくとも1種の溶媒に浸漬して、上清を分取して前記ザクロ種子エキスを得たことを特徴とする。例えば、振とう抽出させることができる。振とう抽出において、例えば、約4℃等の低温室にてローテーターにセットして回転させながら抽出することができる。また、本発明の創傷治療用医薬組成物の好ましい実施態様において、前記溶媒は、エタノール抽出物に高い活性が認められるという観点から、エタノールであることを特徴とする。
【0020】
また、本発明の創傷治療用医薬組成物の好ましい実施態様において、前記ザクロ種子エキスの濃度は、特に限定されないが、例えば、細胞生存率に対する影響がないという観点から、1~100μg/mL、より好ましくは、1~50μg/mLであることを特徴とする。例えば、後述する実施例に示すように、乾燥ザクロ種子をミルサーで粉末化し、10倍量の100%エタノールを加え、4℃で低温振盪抽出を行い、24時間後、室温、3,000rpmで20分間遠心分離を行い、その上清を減圧濃縮することでザクロ種子エタノール抽出物 (PSE : Punica granatum Seed Ethanol extract)を得る場合に、減圧濃縮により得られた抽出物を、重量を測定したのち DMSO に溶解して濃度を調製することができる。抽出物(DMSO未溶解・溶解後どちらも)は試験に使用するまで-20℃等の温度で凍結保存することができる。
【0021】
また、本発明の創傷治療用医薬組成物の製造方法は、ザクロ種子を粉砕して得た粉砕物を溶媒中に浸漬した後、上清を分取する工程と、前記上清を分取することによりザクロ種子エキスを得る工程と、得られたザクロ種子エキスを有効的な量に調整する工程と、を有することを特徴とするザクロ種子エキスを含有することを特徴とする。
【0022】
ここで、まず、ザクロ種子エキスの調製方法について説明する。まず、ザクロ種子を準備する。ザクロ種子は、必要に応じて洗浄し、乾燥する。乾燥は十分に行なうのが好ましい。後の粉砕を均質に行なうためである。
【0023】
次に、ザクロ種子を粉砕する。粉砕の方法は特に限定されず、ボールミル、ハンマーミル、ローラーミル、ロッドミル、サンプルミル、スタンプミル、ディスインテグレーター、乳鉢、冷却装置付きブレンダーなどの公知の粉砕機を用いることができる。なお、粉砕時における発熱により、ザクロ種子組成物の分解等が発生することも考えられることより、粉砕時間を数秒とし、十数回繰り返すことができる。
【0024】
次いで、ザクロ種子を粉砕し粉砕物を得た後、各種溶媒に前記粉砕物を浸漬する。この場合の溶媒は、特に限定されず、所望とする効果に対応して適宜溶媒を設定することができる。
【0025】
また、本発明の創傷治療用医薬組成物の製造方法の好ましい実施態様において、溶媒が、エタノール、メタノール、ヘキサン、水からなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする。溶媒としては、エタノール、メタノール、水、へキサン、酢酸エチル、クロロホルム、アセトンなどの極性、非極性溶媒を問わず挙げることができる。好ましくは、メタノール、エタノール、水等を挙げることができる。
【0026】
浸漬は、緩やかな攪拌下で行なうことができる。各種溶媒に前記粉砕物を浸漬して各種溶液を得る。各種溶液について、溶液の状態に応じて攪拌を行い、場合によりそのまま溶液を放置しても良い。攪拌する場合には、特に限定されないが、10時間~48時間、好ましくは、およそ1日(24時間)攪拌を持続させることができる。
【0027】
その後、上清を分取することによりザクロ種子エキスを得ることができる。必要に応じて、上清を蒸発乾固する。蒸発乾固は、エバポレーターを用いて、20℃~60℃、好ましくは、37℃~40℃の温浴上で行なうことができる。蒸発乾固することにより、ザクロ種子エキスを長期間保存することができる。
【0028】
ザクロ種子中に含まれる成分は、ザクロ種子を極性の異なる溶媒を用いて抽出することにより、その物性により振り分けられる。したがって、使用した溶媒により、ザクロ種子エキスの成分の種類及び含有量は異なる。
【0029】
また、本発明の医薬部外品は、本発明の創傷治療用医薬組成物を有効成分とすることを特徴とする。本発明に適用可能な医薬部外品については、本発明の創傷治療用医薬組成物を有効成分とする限り、特に限定されない。
【0030】
<有効量>
本発明による組成物は、有効的な量のザクロ種子エキス、及び適当な投与形態の形で調製される。
【0031】
本発明の組成物におけるザクロ種子エキスの投与量は、投与対象患者の病態及びその重篤度、投薬形態、選択した投与経路及び1日当たりの投与回数等により変更することができる。
【0032】
本発明の組成物におけるザクロ種子エキスの投与量は、マウスで実施する時、1000 mg/kg/day投与量に設定することができ、ヒトにおいては感受性の相違等により、更に低い量であることが好ましい。
【0033】
また、投与形態は、経口剤(タブレット、カプセル、被膜タブレット、顆粒、溶液、シロップ)、塗布のための軟膏やクリームなどを挙げることができる。投与対象患者は、皮膚の水分補給及びバリア機能という観点から、女性、男性、大人、子供等を問わず、対象とすることが可能である。
【0034】
投与形態には、従来の他の成分、例えば、安定保存剤、甘味料、着色剤、芳香料などを含むことができる。
【0035】
<急性毒性試験>
ザクロ種子エキスの含有成分については、リノレン酸も含まれる成分であるため毒性は認められないと考えられている。
【実施例0036】
以下では本発明の一実施例を説明するが、本発明は、下記の実施例に限定して解釈されるものではない。
【0037】
実施例1
まず、溶媒として、エタノールを用いて、ザクロ種子エキスの調製を試みた。ザクロ種子を粉砕し、100%エタノールで振とう抽出した。これらを濃縮乾固して再溶解し、ザクロ種子エタノール抽出物として実験に供した。具体的には、以下の通りである。
【0038】
<ザクロ種子抽出物の調製>
<試料>
ザクロ種子:株式会社サニープレイスより入手
<機器>
ミルサー:岩谷産業株式会社製
ロータリーエバポレーター:EYELA 東京理化器械株式会社製
凍結乾燥機 FDU-1200:EYELA 東京理化器械株式会社製
<試薬>
100% Ethanol:和光純薬工業株式会社製
酢酸エチル:和光純薬工業株式会社製
ヘキサン:和光純薬工業株式会社製
メタノール:和光純薬工業株式会社製
シリカゲル(Wakasil(登録商標)60, 64-210μm):和光純薬工業株式会社製
MilliQ 水
<器具>
クロマトカラム フィルター付き (30φ×300mm):コスモスビード製
【0039】
<PSE(Punica granatum Seed Ethanol extract)の調製方法>
乾燥ザクロ種子をミルサーで粉末化し、10倍量の100%エタノール(和光純薬工業株式会社製)を加え、4℃で低温振盪抽出を行った。24時間後、室温、3,000rpmで20分間遠心分離を行い、その上清を減圧濃縮することでザクロ種子エタノール抽出物(PSE : Punica granatum Seed Ethanol extract)を得た。
【0040】
減圧濃縮により得られたすべての抽出物は、重量を測定したのちDMSO(Dimethyl Sulfoxide)に溶解して濃度を調製した(PSE は 50μg/mL)。すべての抽出物(DMSO未溶解・溶解後どちらも)は試験に使用するまで-20℃で凍結保存した。
【0041】
<ザクロ種子抽出物の皮膚機能性に関する研究―スクラッチ試験(創傷治癒)―>
<略称一覧>
・PSE:Punica granatum Seed Ethanol extract(ザクロ種子エタノール抽出物)
・DMSO:Dimethyl Sulfoxide
・FBS:ウシ胎児血清(Fetal Bovine Serum)
【0042】
<実験方法>
<前培養>
―条件―
・6 well plate(1 well当たりの全量 1mL)
・ヒトケラチノサイト HaCaT cell 使用…播種時の細胞密度:1.0×105 cells/mL
・FBS濃度:10%
・使用培地:D-MEMウェル中央がコンフルエント状態になるまで培養(所要時間:18h)、単層を形成
【0043】
<スクラッチ(Scratch)>
―実験操作―
パスツールピペットの先に10μLチップを挿し込み、ウェル中央部分に引っ掻き傷を作製した(創傷)。(1系列目は横向き、2系列目は縦向き、3系列目は斜め向きにスクラッチすることで、データの混同を防止。)
【0044】
<本培養>
―条件―
・FBS 濃度:5%
・PSE 濃度:1、10、50 μg/mLの 3段階。0.1%DMSO(50μg/mLの終濃度と同濃度)含有 MEMα培地を Control(0μg/mL)として使用した。
【0045】
―実験操作―
創傷した各ウェルを D-MEM 1 mLで洗浄した後、10%FBS/D-MEM、2×Final Conc.PSE/D-MEMをそれぞれ500μL/wellずつ添加し、培養を開始した。
【0046】
<顕微鏡写真撮影>
培養開始時刻を 0 h とし、0、3、6、9、12、18、24、27、33 h 経過時に顕微鏡写真(倍率:40 倍)の撮影を行った。
【0047】
<データ処理>
創傷部分の輪郭をプロットし、画像解析ソフトを用いて傷の面積を算出した。0h における傷面積を 100%とし、各時間経過後の傷の面積の割合を濃度ごとに比較した。創傷部分の判別がつかない状態は完全治癒とみなし、0%と記録した。有意差検定には t検定を用いた。
【0048】
<実験結果>
Controlウェルの引っ掻き傷が完全に埋まるまで要した時間は、27~33時間以上であったが、PSE添加ウェルではおおよそ 24時間以内に傷が判別できなくなった。このことから、PSE添加ウェルにおける治癒速度の向上が示唆された。また,今回の条件に限っては、その効果は、10μg/mLで最も高く、12時間経過時点で Controlの面積が 26.8%(vs Control-0 h)であるのに対し 8.7%(vs 10μg/mL-0 h)と、その時点までの治癒速度を 1.2 倍程度まで向上させることが判明した。
【0049】
以上の結果、ザクロ種子抽出物を添加培養したところ、Controlと比較して、創傷治癒速度が向上することが明らかとなった。