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  • 特開-コンクリートの打設方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024077346
(43)【公開日】2024-06-07
(54)【発明の名称】コンクリートの打設方法
(51)【国際特許分類】
   E04G 21/04 20060101AFI20240531BHJP
   E04G 21/02 20060101ALI20240531BHJP
   F16L 55/38 20060101ALI20240531BHJP
   B08B 9/032 20060101ALI20240531BHJP
【FI】
E04G21/04
E04G21/02 103Z
F16L55/38
B08B9/032 321
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022189393
(22)【出願日】2022-11-28
(71)【出願人】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【弁理士】
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】塚原 裕一
【テーマコード(参考)】
2E172
3B116
【Fターム(参考)】
2E172AA05
2E172CA33
3B116AA12
3B116AB51
3B116BB21
3B116BB90
(57)【要約】
【課題】配管内に残留するコンクリートを無駄なく使用することができるとともに、配管内を洗浄することができるコンクリートの打設方法を提供する。
【解決手段】コンクリートの打設方法は、コンクリートCを圧送する圧送用ポンプ11に接続された配管12にコンクリートCが残留した状態で、配管12を外し、配管12内に、境界部材21を挿入し、コンクリートCの流通方向の後方から圧送用ポンプ11で水Wを圧送して、境界部材21を配管12の内周面に当接させつつ流通方向の前方に進めて、境界部材21によってコンクリートCを押し進めて、配管12内に残留したコンクリートCを打設する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリートを圧送する圧送用ポンプに接続された配管にコンクリートが残留した状態で、前記配管を外し、
前記配管内に、境界部材を挿入し、
前記コンクリートの流通方向の後方から前記圧送用ポンプで水を圧送して、前記境界部材を前記配管の内周面に当接させつつ前記流通方向の前方に進めて、前記境界部材によって前記コンクリートを押し進めて、前記配管内に残留した前記コンクリートを打設するコンクリートの打設方法。
【請求項2】
前記境界部材は、
前記配管の軸線に沿うように筒状に形成された筒状部と、
前記筒状部における前記流通方向の前方に配置され、前記筒状部を閉塞する閉塞部と、を有する請求項1に記載のコンクリートの打設方法。
【請求項3】
前記境界部材の外側には、前記流通方向の前方から後方に向かうにしたがって次第に外側にひろがる傾斜面が設けられている請求項1または2に記載のコンクリートの打設方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリートの打設方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、高層建築物の建設時には大量のコンクリートを打設することがある。地上にアジテーター車(以下、「生コン車」と称する)及びコンクリートポンプ車(以下、「ポンプ車」と称する)を配置して、生コン車とポンプ車を接続する。コンクリート打設用の鋼製の配管を、ポンプ車から打設する高さ(階)まで配置する。コンクリートを打設する際には、生コン車からポンプ車にコンクリートを供給して、ポンプ車から配管を介して打設階までコンクリートを圧送して、所定の箇所で打設を行う。大規模な現場では、配管の長さが数百mに達したり、数百mのコンクリートを週に数回打設したりすることがある。
【0003】
コンクリート打設終了時には、配管内に残留したコンクリートを処分する必要がある。ポンプ車を打設時とは逆方向に運転させて、配管内のコンクリートを地上階に向けて戻して、さらに生コン車にまでに戻して、廃棄処分を行う。配管の長さが長ければ、その分廃棄処分するコンクリートが多くなってしまう。コンクリートを配管から除去した後には、配管内側に付着したコンクリートを水で洗浄する必要がある(下記の特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9-85203号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した方法では、以下のような問題点がある。
【0006】
(1)廃棄処分するコンクリートが多く、廃棄費用の負担にも繋がる。
【0007】
(2)数百mの高さからコンクリートを生コン車に戻す作業の場合、戻すのに時間を要して、配管の上端部(打設する側の端部)に残ったコンクリートが硬化し始める。このため、コンクリートをポンプ車に戻す作業中に配管が閉塞することがあり、配管の普及作業に膨大な時間を要することがある。
【0008】
(3)配管内のコンクリート排出後に配管内の洗浄を行うことは、作業員への作業負荷に繋がる。
【0009】
(4)洗浄に使用した水はpHが高いため、中和処理して排水する必要がある。
【0010】
本発明は、上記事情に鑑み、配管内に残留するコンクリートを無駄なく使用することができるとともに、配管内を洗浄することができるコンクリートの打設方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明は以下の手段を採用している。
【0012】
すなわち、本発明に係るコンクリートの打設方法は、コンクリートを圧送する圧送用ポンプに接続された配管にコンクリートが残留した状態で、前記配管を外し、前記配管内に、前記配管の軸線に沿うように境界部材を挿入し、前記コンクリートの流通方向の後方から前記圧送用ポンプで水を圧送して、前記境界部材を前記配管の内周面に当接させつつ前記流通方向の前方に進めて、前記境界部材によって前記コンクリートを押し進めて、前記配管内に残留した前記コンクリートを打設する。
【0013】
このように構成されたコンクリートの打設方法では、配管内に残留するコンクリートは、境界部材よりも流通方向の後方から圧送用ポンプで圧送された水の圧力で、流通方向の前方に押し出される。水が配管内を流通する際に、水は配管の内部を洗浄する。よって、配管内に残留するコンクリートを無駄なく使用することができるとともに、配管内を洗浄することができる。
【0014】
また、本発明に係るコンクリートの打設方法では、前記境界部材は、前記配管の軸線に沿うように筒状に形成された筒状部と、前記筒状部における前記流通方向の前方に配置され、前記筒状部を閉塞する閉塞部と、を有していてもよい。
【0015】
このように構成されたコンクリートの打設方法では、圧送された水が筒状部内に入ることによって、筒状部が広がって、筒状部が配管の内周面に密着する。よって、境界部材よりも流通方向の前方に水が浸入することを抑制することができる。また、筒状部が配管の内周面に密着することによって、配管の内周面のコンクリートを取り除くため、配管内の洗浄性を向上させることができる。
【0016】
また、本発明に係るコンクリートの打設方法では、前記境界部材の外側には、前記流通方向の前方から後方に向かうにしたがって次第に外側にひろがる傾斜面が設けられている。
【0017】
このように構成されたコンクリートの打設方法では、境界部材の外側には、流通方向の前方から後方に向かうにしたがって次第に外側にひろがる傾斜面が設けられている。よって、境界部材が移動する際には、傾斜面が配管の内周面により確実に当たって、配管の内周面のコンクリートを取り除くため、配管内の洗浄性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係るコンクリートの打設方法によれば、配管内に残留するコンクリートを無駄なく使用することができるとともに、配管内を洗浄することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一実施形態に係るコンクリートの打設方法を説明する模式図である。
図2図1のII部拡大図である。
図3図1のIII部矢視図である。
図4】本発明の実施形態によるコンクリートの打設方法において、境界部材が配管の流通方向の前方の端部に到達した状態の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態に係るコンクリートの打設方法について説明する。
【0021】
図1は、本発明の一実施形態に係るコンクリートの打設方法を説明する模式図である。
【0022】
本実施形態に係るコンクリートの打設方法は、例えば、コンクリート打設工事の終了間際に、ポンプ車に接続された配管内のコンクリートを排出するために行う方法である。
【0023】
図1に示すように、地上Gに圧送用ポンプ11が設置されている。圧送用ポンプ11は、不図示のコンクリートポンプ車等に搭載されていてもよい。コンクリートポンプ車は、不図示のアジテーター車(生コン車)に接続されている。
【0024】
コンクリートCが流通する配管12の一端部12aには、接続配管15が接続されている。圧送用ポンプ11は、接続配管15に接続されている。なお、配管12の一端部12aが圧送用ポンプ11に直接接続されていてもよい。
【0025】
配管12には、バルブ13が設けられている。バルブ13は、例えば不図示の制御部と接続されていて、制御部からの開信号を受信することによって開作動して、閉信号を受信することによって閉作動するように構成されている。接続配管15には、流量計14が設けられている。
【0026】
配管12の他端部12bは、コンクリートCを打設する対象領域に向かって開放されている。
【0027】
コンクリートCを配管12の他端部12bから排出して打設する打設工事の終了間際になって、配管12内のコンクリートを排出する方法ついて説明する。
【0028】
配管12内に残留しているコンクリートCの量を算出しておく。配管12のコンクリートCの量が、現段階から打設工事終了までに必要なコンクリートの打設量となった段階で、接続配管15を配管12の一端部12aから取り外す。
【0029】
配管12の一端部12a側に境界部材21を挿入する。後工程で、境界部材21が配管12における上下方向を向く垂直部12dを通過する際に、コンクリートCの自重で境界部材21が落下しないように、境界部材21を配管12に挿入する間はバルブ13を閉めておいて、バルブ13の挿入後速やかにバルブ13を開放する。
【0030】
図2は、図1のII部拡大図である。なお、配管12を断面で示し、境界部材21を正面図で示している。
【0031】
図2に示すように、境界部材21は、配管12と同軸上に配置されている。境界部材21は、筒状部26と、閉塞部27と、を有している。筒状部26は、円筒状に形成されている。筒状部26の軸線は、配管12の軸線に沿うように同軸上に配置されている。閉塞部27は、筒状部26におけるコンクリートCの流通方向Pの前方P1に配置されている。閉塞部27は、筒状部26の前端部に設けられている。閉塞部27は、平板状に形成されて、筒状部26を閉塞している。
【0032】
筒状部26の外側21cには、コンクリートCの流通方向Pの前方P1から後方P2に向かうにしたがって次第に筒状部26の径方向の外側にひろがる傾斜面22が設けられている。傾斜面22は、筒状部26の周方向の全周にわたって設けられている。傾斜面22の後方P2の端部22aは、配管12の内周面12cに当接またはわずかに隙間を有して配置されている。傾斜面22は、流通方向Pに間隔を有して複数設けられている。境界部材21は、ゴム等の弾性体で形成されている。
【0033】
図1に示すように、配管12の他端部12bに、規制部材31が設けられた配管16を設置する。元々付いていた配管12の一部を配管16に交換してもよいし、元々の配管12の先端部に配管16を接続してもよい。
【0034】
図3は、図1のIII部矢視図である。
【0035】
図3に示すように、規制部材31は、棒状をしている。規制部材31は、配管12の内周面12cを直径方向に結んでいる。規制部材31があることによって、境界部材21が配管12から排出されることがない。なお、規制部材31は、配管12の軸線に直交する断面視で、配管12の少なくとも一部を閉塞する形状であれば適宜設定可能である。
【0036】
配管12の一端部12aに境界部材21を設置して、他端部12bに規制部材31を設置した状態で、圧送用ポンプ11で水Wを圧送する。図1に示すように、配管12の内部では、境界部材21よりも前方P1にコンクリートCが配置され、境界部材21よりも後方P2に水Wが配置されている。圧送用ポンプ11によって、水Wが圧送され、水Wの圧力によって境界部材21及び境界部材21の前側に位置するコンクリートCがそれぞれ前方P1に押し出される。配管12の内部に残留しているコンクリートCは前方P1に進み、コンクリートCは配管12の他端部12bから排出されて、打設に使用することができる。
【0037】
境界部材21は配管12の内部を前方P1に進んで行く際に、筒状部26の内部には水Wが入り込んで、筒状部26が径方向の外側に膨らむように弾性変形して、前方P1に進む際に傾斜面22全体が配管12の内周面12cに密着するように変形する。境界部材21の傾斜面22が配管12の内周面12cに当たることで、配管12の内周面12cに付着しているコンクリートCが取り除かれる。
【0038】
境界部材21が配管12の他端部12bにまで到達すると、境界部材21は規制部材31に接触して、それ以上前方P1へ移動することが規制される。よって、境界部材21が配管12から飛び出したり、打設場所で水Wが流出したりすることがない。
【0039】
また、配管12の内部における境界部材21の位置を把握するために、境界部材21に磁石(不図示)を設けておいて、配管12の中間部や他端部12b等に磁石を検知するセンサー(不図示)を取り付けておいてもよい。センサーで磁石の位置確認を行うことで、境界部材21の位置を把握することができる。
【0040】
配管12の内部の残留するコンクリートCの打設量を把握するため、圧送用ポンプ11での水送り量を流量計14によってリアルタイムに把握する。水送り量は、概ね打設量と等しい。
【0041】
配管12の内部に残留したコンクリートCを打設した後には、水Wは廃棄せずにそのまま回収して再利用する。
【0042】
このように構成されたコンクリートの打設方法では、配管12内に残留するコンクリートCは、境界部材21よりも後方P2から圧送用ポンプ11で圧送された水Wの圧力で、前方P1に押し出される。水Wが配管12内を流通する際に、水Wは配管12の内部を洗浄する。よって、配管12内に残留するコンクリートCを無駄なく使用することができるとともに、配管12内を洗浄することができる。
【0043】
また、圧送された水が筒状部26内に入ることによって、筒状部26が広がって、筒状部26配管12管内周面12c面に密着する。よって、境界部材21材より流通方向Pの前方P1に水Wが浸入することを抑制することができる。また筒状部266が配管12の内周面12cに密着することによって、配管12の内周面12cのコンクリートCを取り除くため、配管12内の洗浄性を向上させることができる。
【0044】
また、境界部材21の外側21cには、流通方向Pの前方P1から後方P2に向かうにしたがって次第に外側にひろがる傾斜面22が設けられている。よって、境界部材21が移動する際には、傾斜面22が配管12の内周面12cに当たって、配管12の内周面12cのコンクリートCを取り除くため、配管12内の洗浄性を向上させることができる。
【0045】
また、配管12内のコンクリートCを残留コンクリートとして廃棄処分する必要がないため大きなコストダウンに繋がるとともに、CO削減にも大きく貢献することができる。
【0046】
また、配管12内に残ったコンクリートCを排出するための圧送に用いた水Wはそのまま再利用可能なため、水処理を施して排水する必要がない。
【0047】
以上、本発明の好ましい実施形態を説明したが、本発明はこれら実施形態に限定されることはない。本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、構成の付加、省略、置換、及びその他の変更が可能である。本発明は上述した説明によって限定されることはなく、添付の特許請求の範囲によってのみ限定される。
【0048】
例えば、上記に示す実施形態では、境界部材21の外側21cには、流通方向Pの前方P1から後方P2に向かうにしたがって次第に外側にひろがる傾斜面22が設けられているが、これに限られない。境界部材21の形状は適宜設定可能であり、円柱状であってもよい。
【0049】
2015年9月の国連サミットにおいて採択された17の国際目標として「持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals:SDGs)」がある。本実施形態に係るコンクリートスラブ表面の補修時期予測方法は、このSDGsの17の目標のうち、例えば「8.住み続けられるまちづくりを」の目標などの達成に貢献し得る。
【符号の説明】
【0050】
11 圧送用ポンプ
12 配管
21 境界部材
22 傾斜面
C コンクリート
P 流通方向
P1 前方
P2 後方
W 水
図1
図2
図3
図4