(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024077359
(43)【公開日】2024-06-07
(54)【発明の名称】照明受光装置
(51)【国際特許分類】
G01N 21/21 20060101AFI20240531BHJP
G03B 15/00 20210101ALI20240531BHJP
G03B 15/02 20210101ALI20240531BHJP
G03B 11/00 20210101ALI20240531BHJP
G02B 5/30 20060101ALI20240531BHJP
【FI】
G01N21/21 Z
G03B15/00 T
G03B15/02 R
G03B11/00
G03B15/02 S
G02B5/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022189416
(22)【出願日】2022-11-28
(71)【出願人】
【識別番号】596099446
【氏名又は名称】シーシーエス株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】513099603
【氏名又は名称】兵庫県公立大学法人
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100111453
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻井 智
(72)【発明者】
【氏名】吉村 憲久
(72)【発明者】
【氏名】吉木 啓介
【テーマコード(参考)】
2G059
2H083
2H149
【Fターム(参考)】
2G059AA05
2G059EE02
2G059FF01
2G059GG02
2G059GG04
2G059JJ02
2G059JJ19
2G059JJ22
2G059KK04
2G059LL04
2H083AA06
2H083AA26
2H083AA58
2H149AA22
2H149AB01
2H149BA01
2H149EA10
(57)【要約】
【課題】本発明は、受光素子でのSN比を改善できる照明受光装置を提供する。
【解決手段】本発明の照明受光装置Dは、特定偏光素子PMC、偏光選択光学素子PS、受光素子IS、照明部ILの光源および照明光学系、ならびに、撮像光学系Gr1、Gr2を備え、特定偏光素子PMCは、対象物WKに対し、前記光源を配置する第1位置側かつ受光素子ISを配置する第2位置側に配置されるともに、前記特定偏光素子PMCの内部で生じた反射光が受光素子ISの前記受光面の外側を通過するように傾けて配置され、偏光選択光学素子PSは、特定偏光素子PMCに対し、前記第1位置より前記第2位置側に配置され、前記照明光学系の第1光軸AX1と前記撮像光学系の第2光軸AX2とは互いに同軸である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
面内の位置に応じてジョーンズ行列が異なる偏光素子である特定偏光素子と、
特定方向の偏光成分を選択的に取り出して射出する偏光選択光学素子と、
所定の受光面で受光する受光素子と、
光を放射する光源と、
前記光源から放射された光を照明光にして所定の対象物に照明する照明光学系と、
前記対象物の光像を前記受光素子の前記受光面に結像する撮像光学系とを備え、
前記特定偏光素子は、前記対象物に対し、前記光源を配置する第1位置側かつ前記受光素子を配置する第2位置側に配置されるともに、前記特定偏光素子の内部で生じた反射光が前記受光素子の前記受光面の外側を通過するように傾けて配置され、
前記偏光選択光学素子は、前記特定偏光素子に対し、前記第1位置より前記第2位置側に配置され、
前記照明光学系の第1光軸と前記撮像光学系の第2光軸とは互いに同軸である、
照明受光装置。
【請求項2】
前記受光素子の前記受光面は、3:4のアスペクト比を持つ矩形形状であり、
前記撮像光学系は、前記特定偏光素子を配置する第3位置より前記対象物を配置する第4位置側に配置される第1光学系を含み、
前記第1光学系は、前記特定偏光素子の許容入射角をαとし、前記特定偏光素子の傾き角をβとし、前記撮像光学系の最大像高の主光線と前記特定偏光素子近傍における前記撮像光学系の第2光軸との成す角をθとし、前記撮像光学系の視野をFoVとし、前記第1光学系の焦点距離をEFLとした場合に、FoV/(2×EFL)<Sin(α/1.8)を満たす、
請求項1に記載の照明受光装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の対象物を照明し、その反射光を受光する照明受光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
所定の対象物を照明し、その反射光を受光する照明受光装置の一例として、例えば、特許文献1に開示された試料測定装置がある。この特許文献1に開示された試料測定装置は、光源と、当該光源から射出される光を受光する受光素子と、該受光素子よりも前記光源側に配置されており入射光のうち特定方向の偏光成分の光を選択的に取り出す光学素子とを有する試料測定装置であって、測定対象試料よりも前記光源側に配置されており前記光源から射出される光を透過または反射する特定偏光素子、および、測定対象試料よりも前記受光素子側に配置されており測定対象試料を透過または反射した光を透過または反射する特定偏光素子の両方を含む。前記特定偏光素子は、面内にx軸方向とこれに直交するy軸方向とを有し、面内の位置によってジョーンズ行列が異なっている透過型または反射型の偏光素子である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記特定偏光素子は、例えば、ガラス板の間に液晶を挟み込んだ構造であるため、前記ガラス板および液晶によって反射が生じる。この特定偏光素子内部で生じる反射光は、偏光が変化しているため、受光素子の手前で取り除くことが困難であり、迷光(ノイズ)となって、前記受光素子でのSN比を低下させてしまう。
【0005】
本発明は、上述の事情に鑑みて為された発明であり、その目的は、受光素子でのSN比を改善できる照明受光装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、種々検討した結果、上記目的は、以下の本発明により達成されることを見出した。すなわち、本発明の一態様にかかる照明受光装置は、面内の位置に応じてジョーンズ行列が異なる偏光素子である特定偏光素子と、特定方向の偏光成分を選択的に取り出して射出する偏光選択光学素子と、所定の受光面で受光する受光素子と、光を放射する光源と、前記光源から放射された光を照明光にして所定の対象物に照明する照明光学系と、前記対象物の光像を前記受光素子の前記受光面に結像する撮像光学系とを備え、前記特定偏光素子は、前記対象物に対し、前記光源を配置する第1位置側かつ前記受光素子を配置する第2位置側に配置されるともに、前記特定偏光素子の内部で生じた反射光が前記受光素子の前記受光面の外側を通過するように傾けて配置され、前記偏光選択光学素子は、前記特定偏光素子に対し、前記第1位置より前記第2位置側に配置され、前記照明光学系の第1光軸と前記撮像光学系の第2光軸とは互いに同軸である。好ましくは、上述の照明受光装置において、前記受光素子の前記受光面は、相対的に短い短辺と相対的に長い長辺とを持つ矩形形状であり、前記特定偏光素子は、前記反射光が前記長辺の外側を通過するように傾けて配置される。好ましくは、上述の照明受光装置において、前記受光素子の前記受光面は、相対的に短い短辺と相対的に長い長辺とを持つ矩形形状であり、前記特定偏光素子は、前記反射光が前記長辺の外側を通過するように、前記受光素子の前記受光面の法線から、前記短辺に沿う短辺方向に前記特定偏光素子の第3光軸を傾けて配置される。
【0007】
このような照明受光装置は、前記特定偏光素子を、その内部で生じた反射光が受光素子の受光面の外側を通過するように傾けて配置するので、前記反射光を前記受光面で受光しないから、受光素子でのSN比を改善できる。
【0008】
他の一態様では、上述の照明受光装置において、前記受光素子の前記受光面は、3:4のアスペクト比を持つ矩形形状であり、前記撮像光学系は、前記特定偏光素子を配置する第3位置より前記対象物を配置する第4位置側に配置される第1光学系を含み、前記第1光学系は、前記特定偏光素子の許容入射角をαとし、前記特定偏光素子の傾き角をβとし、前記撮像光学系の最大像高の主光線と前記特定偏光子近傍における前記撮像光学系の第2光軸との成す角をθとし、前記撮像光学系の視野をFoVとし、前記第1光学系の焦点距離をEFLとした場合に、FoV/(2×EFL)<Sin(α/1.8)を満たす。
【0009】
このような照明受光装置は、一般的な3:4のアスペクト比を持つ矩形形状の受光面を持つ受光素子について、その受光素子でのSN比を好適に改善できる。なお、前記第1光学系の焦点距離EFLは、前記第1光学系が1個のレンズで構成される場合には、前記レンズの焦点距離であり、前記第1光学系が複数のレンズで構成される場合には、前記複数のレンズにおける合成焦点距離である。
【発明の効果】
【0010】
本発明にかかる照明受光装置は、受光素子でのSN比を改善できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施形態における照明受光装置の構成を説明するための模式図である。
【
図2】前記照明受光装置における受光素子を説明するための図である。
【
図3】傾き角に関し、前記照明受光装置の満たす条件を説明するための図である。
【
図4】一例として、特定偏光素子の入射角依存性を説明するための図である。
【
図5】一例として、前記照明受光装置の傾き計測装置への適用を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明の1または複数の実施形態が説明される。しかしながら、発明の範囲は、開示された実施形態に限定されない。なお、各図において同一の符号を付した構成は、同一の構成であることを示し、適宜、その説明を省略する。本明細書において、総称する場合には添え字を省略した参照符号で示し、個別の構成を指す場合には添え字を付した参照符号で示す。
【0013】
図1は、実施形態における照明受光装置の構成を説明するための模式図である。
図1は、受光素子の受光面の対角線および撮像光学系の光軸に直交する方向から照明受光装置Dを見た図である。
図2は、前記照明受光装置における受光素子を説明するための図である。
図3は、傾き角に関し、前記照明受光装置の満たす条件を説明するための図である。
図4は、一例として、特定偏光素子の入射角依存性を説明するための図である。
図4Aは、入射角φh、φpに対する位相差のグラフを示し、その横軸は、入射角φh、φp[deg]であり、その縦軸は、位相差[deg]である。破線は、第1入射角(例えば水平方向の入射角)φhに対する位相差のグラフであり、実線は、第2入射角(例えば垂直方向の入射角)φpに対する位相差のグラフである。
図4Bは、第1入射角(例えば水平方向の入射角)φhを示し、
図4Cは、第2入射角(例えば垂直方向の入射角)φを示す。
【0014】
実施形態における照明受光装置Dは、所定の対象物(ワーク)WKを照明し、その反射光を受光する装置であり、例えば、
図1に示すように、照明部ILと、ビームスプリッタBSと、特定偏光素子PMCと、第1光学系Gr1と、偏光選択光学素子PSと、第2光学系Gr2と、受光素子ISとを備える。前記所定の対象物WKは、任意であり、限定されない。
【0015】
照明部ILは、所定の配置面に配置された所定の対象物WKに照明光を照射する装置であり、例えば、光源と、バンドパスフィルタと、光学系とを備える。前記光源は、所定の電源から給電され、所定の光を放射する装置であり、例えば、特定方向の偏光成分を放射するレーザ光源等を備えて構成される。あるいは、例えば、光源は、ランダム偏光を放射する発光ダイオード(LED)と、前記LEDから放射された光が入射され、特定方向の偏光成分を選択的に取り出して射出光とする偏光子とを備えて構成されてもよい。前記バンドパスフィルタは、入射光における所定の波長範囲の光を透過して射出光として射出し、前記入射光における前記波長範囲を除く光を遮光する光学素子である。前記波長範囲は、狭いほど好ましく、前記バンドパスフィルタからは、単色光が射出されることが好ましい。前記光学系は、集光した光をビームスプリッタBSに入射させるものであり、例えば、2個の、入射光を平行光にして射出光として射出する第1レンズおよび入射光を集光して射出光として射出する第2レンズを備えて構成される。
【0016】
ビームスプリッタBSは、照明光の波長において、入射光を所定の分割比で2つの光に分割して射出する光学素子である。ビームスプリッタBSは、いわゆるプレート型のものや薄膜状のものであってよいが、
図1に示す例では、いわゆるキューブ型が用いられている。このキューブ型のビームスプリッタBSは、2個の直角プリズムを各傾斜面同士で貼り合わせて略立方体形状にしたもので、一方の直角プリズムの前記傾斜面には入射光を分割するための誘電多層膜が被覆(コート)されて形成されている。
【0017】
特定偏光素子PMCは、面内にx軸方向とこれに直交するy軸方向とを有し、前記面内の位置に応じてジョーンズ行列が異なる偏光素子であり、例えば、前記特許文献1に開示されている。一例では、特定偏光素子PMCは、xy平面内にM個の領域を有し、領域Riと、当該領域Riに対して特定偏光素子PMCの中心軸対象の位置にある領域Rjと、前記領域Rjに隣接している領域Rkとを有し、次の条件Aおよび条件Bを満たす。条件Aは、ジョーンズベクトルがJxyである光を領域Riに入射させ、透過した光をさらに領域Rjに入射させたとき、前記領域Rjを透過した光のジョーンズベクトルは、Jxyと同じである。条件Bは、領域Rkのジョーンズ行列は、領域Rjのジョーンズ行列とは異なるものである。特定偏光素子PMCについては、さらに、後述する。
【0018】
第1光学系Gr1は、入射光を、前記配置面に配置された対象物WKに照射する対物レンズである。
【0019】
偏光選択光学素子PSは、入射光から特定方向の偏光成分を選択的に取り出して射出光として射出する偏光子である。偏光選択光学素子PSは、例えば、特定偏光素子PMCを透過し、対象物WKで反射し、特定偏光素子PMCおよびビームスプリッタBSを透過した所定方向の偏光成分(例えばZ偏光成分)を選択的に取り出して射出光として射出する。
【0020】
受光素子ISは、入射光を所定の受光面で受光し、光電変換することによって前記入射光に応じた電気信号を出力する装置である。受光素子ISは、相対的に短い短辺と相対的に長い長辺とを持つ矩形形状の受光面、例えば
図2に示すように、一般的な3:4のアスペクト比を持つ矩形形状の受光面、を持つ2次元イメージセンサを備えて構成される。
【0021】
第2光学系Gr2は、前記照明光で照明された前記対象物WKの光像を、第1光学系Gr1とともに、前記受光素子ISの前記受光面に結像するための光学系であり、1または複数のレンズを備えて構成される。
【0022】
これら前記光源、前記バンドパスフィルタおよび前記光学系は、これらの各光軸を光軸(第1光軸)AX1に合わせて第1光軸AX1に沿ってこの順で順次に配設される。前記バンドパスフィルタおよび前記光学系は、照明光学系を構成し、第1光軸AX1は、この照明光学系の光軸(照明部ILの光軸)である。前記光源から放射された光(本実施形態ではY偏光成分)は、前記バンドパスフィルタに入射され、所定の波長範囲の光となって前記光学系に入射され、照明部ILの照明光として前記光学系から射出される。
【0023】
これら前記光源、前記バンドパスフィルタおよび前記光学系を備える照明部ILは、第1光軸AX1と、ビームスプリッタBSの前記傾斜面と45°で交差するように、ビームスプリッタBSに対して配置される。ビームスプリッタBSの前記傾斜面における第1光軸AX1の交差点は、前記傾斜面の中央位置(例えば前記傾斜面が矩形である場合にその2対角線の交点位置)であることが好ましい。したがって、照明部ILから射出された照明光は、その第1光軸AX1に沿って伝播(進行)し、ビームスプリッタBSに入射され、その前記傾斜面で伝播方向(進行方向)が90°曲げられる。すなわち、前記光源、前記バンドパスフィルタおよび前記光学系における第1光軸AX1は、90°曲げられる。前記照明光は、前記傾斜面で反射され、所定方向の偏光成分(Y偏光成分)の照明光となって、前記傾斜面で90°曲げられた第1光軸AX1に沿って伝播する。
【0024】
特定偏光素子PMCは、前記対象物WKに対し、前記光源を配置する第1位置側かつ前記受光素子ISを配置する第2位置側に配置される。そして、特定偏光素子PMCは、
図1に示すように、前記特定偏光素子PMCの内部で生じた反射光(第2反射光)が前記受光素子ISの前記受光面の外側を通過するように傾けて配置される。より具体的には、特定偏光素子PMCは、前記第2反射光が前記長辺の外側を通過するように傾けて配置される。より詳しくは、特定偏光素子PMCは、前記第2反射光が前記長辺の外側を通過するように、前記受光素子ISの前記受光面の法線から、前記短辺に沿う短辺方向に前記特定偏光素子PMCの第3光軸を傾けて配置される。ビームスプリッタBSから射出された前記所定方向の偏光成分の照明光は、特定偏光素子PMCに入射され、特定偏光素子PMCの入射位置に応じたジョーンズ行列に従った偏光成分となって特定偏光素子PMCから射出される。
【0025】
第1光学系Gr1は、前記特定偏光素子PMCを配置する第3位置より、前記対象物WKを配置する第4位置側に配置される。特定偏光素子PMCから射出された、その入射位置に応じたジョーンズ行列に従った偏光成分の照明光は、第1光学系Gr1に入射され、前記対象物WKを照明する。前記対象物WKの反射光(第1反射光)は、第1光学系Gr1に入射され、第1光学系Gr1を介して特定偏光素子PMCに入射され、特定偏光素子PMCの入射位置に応じたジョーンズ行列に従った偏光成分となって特定偏光素子PMCから射出される。特定偏光素子PMCから射出された、その入射位置に応じたジョーンズ行列に従った偏光成分の第1反射光は、ビームスプリッタBSに入射し、所定の分割比で分割された透過成分のみ、射出される。
【0026】
偏光選択光学素子PSは、前記特定偏光素子PMCに対し、前記光源を配置する前記第1位置より、前記受光素子ISを配置する前記第2位置側に配置される。より具体的には、
図1に示す例では、偏光選択光学素子PSは、ビームスプリッタBSにおける前記傾斜面を透過した照明光の第1反射光を射出する射出側であって、第2光学系Gr2の物体側(前記対象物WK側)である位置に配置される。ビームスプリッタBSから射出された第1反射光は、第2光学系Gr2に入射され、前記対象物WKの光像(前記所定方向に直交する偏光成分の第1反射光で構成された前記対象物WKの光像)が受光素子ISの受光面に結像される。受光素子ISは、光電変換し、前記受光面で受光した前記対象物WKの光像に応じた電気信号を出力する。この受光素子ISから出力された電気信号は、この電気信号を処理する適宜な装置(例えばコンピュータ等の情報処理装置等)へ出力される。
【0027】
本実施形態では、第1光学系Gr1、特定偏光素子PMC、ビームスプリッタBS、偏光選択光学素子PS、第2光学系Gr2および受光素子ISは、これらの各光軸を光軸(第2光軸)AX2と合わせて第2光軸AX2に沿って物体側から像側(前記受光素子IS側)へこの順に順次に配設される。第1光学系Gr1および第2光学系Gr2は、前記照明光で照明された前記対象物WKの光像を結像する撮像光学系を構成し、第2光軸AX2は、この撮像光学系の光軸である。この撮像光学系と前記照明光学系とは、前記照明光学系の第1光軸AX1と前記撮像光学系の第2光軸AX2とがビームスプリッタBSの前記傾斜面で互いに直交するように、配置され、前記照明光学系の第1光軸AX1がビームスプリッタBSの前記傾斜面で90°曲げられるから、前記照明光学系の第1光軸AX1と前記撮像光学系の第2光軸AX2とは互いに同軸である。ここで、前記光源の第1位置は、前記照明光学系の第1光軸AX1と前記撮像光学系の第2光軸AX2とが交差する前記傾斜面上の位置とみなすことができる。
【0028】
ここで、特定偏光素子PMCは、入射角依存性を有しており、このため、特定偏光素子PMCには、入射光を、特定偏光素子PMCの入射位置に応じたジョーンズ行列に従った偏光成分にして射出光として射出することができる許容入射角度がある。このため、第1光学系Gr1は、次式1の条件を満たす。特定偏光素子PMCの許容入射角をαとし、特定偏光素子PMCの傾き角をβとし、前記撮像光学系の最大像高の主光線と第2光軸AX2との成す角をθとし、前記撮像光学系の視野をFoVとし、第1光学系Gr1の焦点距離をEFLとした場合に、
図3から、α>(θ+β)であるから、β<α-θとなる。特定偏光素子PMCにおける必要な傾き角βは、受光素子ISの受光面におけるアスペクト比から、β>(0.6×θ+θ)/2となる。以上より、θ<α/1.8、sinθ=FoV/(2×EFL)が求まり、これらから、次式1の不等式が求まる。
式1;FoV/(2×EFL)<Sin(α/1.8)
【0029】
また、特定偏光素子PMCにおいて、第1方向(例えば水平方向、
図4B参照)の第1入射角φhに対する位相差の入射角依存性と、前記第1方向に直交する第2方向(例えば垂直方向、
図4C参照)の第2入射角φpに対する位相差の入射角依存性とは、例えば、
図4Aに示すように異なる。第1入射角φhに対する位相差の入射角依存性において、その位相差は、第1入射角φhの変化に対し、相対的に大きく変化する一方、第2入射角φpに対する位相差の入射角依存性において、その位相差は、第2入射角φpの変化に対し、相対的に小さく変化している。すなわち、第2入射角φpに対する位相差の入射角依存性は、少ない。このため、上述の実施形態において、特定偏光素子PMCは、
図3に示す傾き角βが
図4Cに示す第2入射角φpであるように、配置されることが好ましい。つまり、上述の実施形態において、特定偏光素子PMCは、位相差の入射角依存性の少ない入射角が傾き角度となるように配置されることが好ましい。
【0030】
なお、本実施形態において、これら前記バンドパスフィルタおよび前記光学系は、前記光源から放射された光を照明光にして所定の対象物に照明する照明光学系の一例に相当する。第1光学系Gr1および第2光学系Gr2は、前記対象物の光像を前記受光素子の前記受光面に結像する撮像光学系の一例に相当する。
【0031】
以上説明したように、本実施形態における照明受光装置Dは、特定偏光素子PMCを、その内部で生じた第2反射光が受光素子ISの受光面の外側を通過するように傾けて配置するので、前記第2反射光を前記受光面で受光しないから、受光素子ISでのSN比を改善できる。
【0032】
上記照明受光装置Dは、第1光学系Gr1が上述の式1の条件を満たす場合に、一般的な3:4のアスペクト比を持つ矩形形状の受光面を持つ受光素子ISについて、その受光素子ISでのSN比を好適に改善できる。
【0033】
なお、上述の実施形態における照明受光装置Dは、種々の適用が可能である。例えば、前記特許文献1に開示されているように、表面観察やバルク中の欠陥観察に適用できる。前記表面観察では、上記照明受光装置Dは、傾きやうねりの計測、欠陥やパーティクル等のコンタミ計測、マイクロパターニング等で形成された微小段差計測および粗さ計測等に適用できる。前記バルク中の欠陥観察では、上記照明受光装置Dは、ガラス中の気泡等の観察および歪み等による屈折率の不均一部分の検出等に適用できる。
【0034】
一例として、対象物WKの傾きの計測について説明する。
図5は、一例として、前記照明受光装置の傾き計測装置への適用を説明するための図である。
図5には、偏光選択光学素子PS、ビームスプリッタBS、特定偏光素子PMC、第1光学系Gr1および対象物WKが図示され、残余の図示が省略されている。
【0035】
対象物WKの傾きを計測する場合、特定偏光素子PMCは、例えば、入射光と射出光との間で半波長λ/2の位相差を生じさせる第1領域AR1と、前記位相差を生じさせない第2領域AR2とを備えるように構成され、前記第1領域AR1と前記第2領域AR2とは、互いに同心円状に、かつ、前記第1領域における少なくとも1個の第1境界が前記第2領域の第2境界と共有されるように形成されている。前記半波長λ/2の波長λは、対象物WKを照明する照明光の波長λである。より具体的には、第2領域AR2は、所定の径を持つ円形状に形成され、第1領域AR1は、前記第2領域AR2の外周を囲むように環形状(リング状、ドーナツ状)に形成される。
【0036】
図5において、対象物WKが平坦面の表裏面を持つ板状体である場合、実線で示すように、前記対象物WKが前記配置面に水平に配置され、傾いていないと、Y偏光成分の照明光、および、対象物WKで反射した前記照明光の反射光は、偏光選択光学素子PSを透過できないので、受光素子ISに到達せず、受光素子ISの受光面で受光されない。一方、破線で示すように、前記対象物WKが傾くと、Y偏光成分の照明光、および、対象物WKで反射した前記照明光の反射光は、一部がZ偏光成分となって偏光選択光学素子PSを透過し、受光素子ISに到達するので、受光素子ISの受光面で受光される。例えば、照明部ILから放射された照明光LB1は、ビームスプリッタBSで反射され、特定偏光素子PMCの第2領域AR2を透過し、第1光学系Gr1を介して、傾いた対象物WKに入射されて反射される。この照明光LB1の第1反射光は、第1光学系Gr1を介して、特定偏光素子PMCの第1領域AR1に入射され、半波長λ/2の位相差が生じてZ偏光成分となって特定偏光素子PMCからビームスプリッタBSに入射される。このZ偏光成分の第1反射光は、ビームスプリッタBSを透過して偏光選択光学素子PSに入射され、偏光選択光学素子PSがZ偏光成分を透過するように設定されているため、これを透過して、第2光学系Gr2を介して受光素子ISの受光面に到達する。例えば、照明部ILから放射された照明光LB2は、ビームスプリッタBSで反射され、特定偏光素子PMCの第1領域AR1に入射され、半波長λ/2の位相差が生じてZ偏光成分となって第1領域AR1から、第1光学系Gr1を介して、傾いた対象物WKに入射されて反射される。この照明光LB2の第1反射光は、第1光学系Gr1を介して、特定偏光素子PMCの第2領域AR2に入射され、特定偏光素子PMCからビームスプリッタBSに入射される。このZ偏光成分の第1反射光は、ビームスプリッタBSを透過して偏光選択光学素子PSに入射され、これを透過して、第2光学系Gr2を介して受光素子ISの受光面に到達する。このように対象物WKが傾くと、第1反射光の一部のZ偏光成分が受光素子ISの受光面に到達し、受光素子ISから前記Z偏光成分に応じた電気信号が出力される。この電気信号を前記情報処理装置等で検出することで対象物WKの傾きが検知できる。前記電気信号の大きさと傾き角度とを予め対応付けることで、対象物WKの傾き角度が計測できる。
【0037】
本発明を表現するために、上述において図面を参照しながら実施形態を通して本発明を適切且つ十分に説明したが、当業者であれば上述の実施形態を変更および/または改良することは容易に為し得ることであると認識すべきである。したがって、当業者が実施する変更形態または改良形態が、請求の範囲に記載された請求項の権利範囲を離脱するレベルのものでない限り、当該変更形態または当該改良形態は、当該請求項の権利範囲に包括されると解釈される。
【符号の説明】
【0038】
D;照明受光装置、WK;対象物、IL;照明部、AX1;照明光学系の第1光軸、BS;ビームスプリッタ、PMC;特定偏光素子、Gr1;第1光学系、Gr2;第2光学系、PS;偏光選択光学素子、IS;受光素子