IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本電産サンキョー株式会社の特許一覧

特開2024-77368産業用ロボットのハンドおよび産業用ロボット
<>
  • 特開-産業用ロボットのハンドおよび産業用ロボット 図1
  • 特開-産業用ロボットのハンドおよび産業用ロボット 図2
  • 特開-産業用ロボットのハンドおよび産業用ロボット 図3
  • 特開-産業用ロボットのハンドおよび産業用ロボット 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024077368
(43)【公開日】2024-06-07
(54)【発明の名称】産業用ロボットのハンドおよび産業用ロボット
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/677 20060101AFI20240531BHJP
   B25J 15/08 20060101ALI20240531BHJP
【FI】
H01L21/68 A
B25J15/08 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022189428
(22)【出願日】2022-11-28
(71)【出願人】
【識別番号】000002233
【氏名又は名称】ニデックインスツルメンツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100125690
【弁理士】
【氏名又は名称】小平 晋
(72)【発明者】
【氏名】青木 雅裕
(72)【発明者】
【氏名】細川 正己
【テーマコード(参考)】
3C707
5F131
【Fターム(参考)】
3C707AS24
3C707BS15
3C707CY25
3C707DS01
3C707ES03
3C707ET08
3C707EU17
3C707EV08
3C707HS14
3C707NS13
5F131AA02
5F131CA09
5F131CA12
5F131DB02
5F131DB05
5F131DB06
5F131DB12
5F131DB14
5F131DB15
5F131DB42
5F131DB45
5F131DB52
5F131DB62
5F131DB76
5F131JA03
5F131JA20
5F131JA22
5F131JA26
5F131JA33
(57)【要約】
【課題】搬送対象物が搭載される搭載部と、搭載部の基端側が固定される搭載支持部と、搭載部に搭載される搬送対象物を水平方向の一定位置で保持するための保持機構とを備える産業用ロボットのハンドにおいて、液体が使用される環境下で使用されても、保持機構の一部を構成する駆動機構が収容される搭載支持部の内部の配置空間への液体の浸入を効果的に抑制することが可能なハンドを提供する。
【解決手段】このハンドは、搭載支持部16の内部への液体の浸入を防止するための複数のシール部材20、21と、搭載支持部16の内部に気体を供給する気体供給機構とを備えている。複数のシール部材20、21は、軸部32の軸方向に配列され軸配置穴41aに配置されるとともに、軸部32の外周面に接触している。気体供給機構は、搭載支持部16の内部の配置空間Sに気体を供給して配置空間Sを陽圧にしている。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送対象物を搬送する産業用ロボットのハンドにおいて、
前記搬送対象物が搭載される搭載部と、少なくとも一部が中空状に形成されるとともに前記搭載部の基端側が固定される搭載支持部と、前記搭載部に搭載される前記搬送対象物を水平方向の一定位置で保持するための保持機構と、前記搭載支持部の内部への液体の浸入を防止するための複数のシール部材と、前記搭載支持部の内部に気体を供給する気体供給機構とを備え、
前記保持機構は、前記搬送対象物の端面が当接する当接面を有し前記搭載部の先端側に取り付けられる端面当接部材と、前記搬送対象物の端面に接触して前記当接面に前記搬送対象物の端面を押し付ける押付部と前記押付部が先端側に取り付けられる軸状の軸部とを有し前記搭載支持部に保持される押付部材と、前記搭載支持部の内部の配置空間に収容されるとともに前記軸部の基端側が連結され前記搭載支持部に対して前記押付部材を水平方向に直線的に移動させる駆動機構とを備え、
前記搭載支持部には、前記軸部の一部が配置されるとともに前記配置空間に通じる軸配置穴が形成され、
複数の前記シール部材は、前記軸部の軸方向に配列され前記軸配置穴に配置されるとともに、前記軸部の外周面に接触し、
前記気体供給機構は、前記配置空間に気体を供給して前記配置空間を陽圧にすることを特徴とするハンド。
【請求項2】
前記シール部材として、前記軸部の軸方向において互いに間隔をあけた状態で配置される第1シール部材および第2シール部材の2個の前記シール部材を備え、
前記軸部の軸方向において前記押付部が配置される側を第1方向側とすると、
前記第1シール部材は、前記第2シール部材よりも前記第1方向側に配置されていることを特徴とする請求項1記載のハンド。
【請求項3】
前記搭載支持部には、前記搭載支持部の外側面から、前記軸配置穴の、前記第1シール部材と前記第2シール部材との間の部分に通じる液体の抜き穴が形成されていることを特徴とする請求項2記載のハンド。
【請求項4】
前記第1シール部材は、オムニシールであり、
前記第2シール部材は、UパッキンまたはVパッキンであることを特徴とする請求項2または3記載のハンド。
【請求項5】
前記駆動機構は、前記押付部が前記搬送対象物の端面に接触して前記当接面に前記搬送対象物の端面を押し付ける把持位置と、前記押付部が前記搬送対象物の端面から離れる退避位置との間で前記押付部材を移動させ、
前記押付部材が前記把持位置に配置されているときには、前記軸部の一部は、前記搭載支持部の外部に配置され、
前記軸部の軸方向において前記押付部が配置される側を第1方向側とし、前記軸部の、前記押付部材が前記把持位置に配置されているときに前記搭載支持部の外部に配置されている部分を外部配置部とすると、
前記押付部材が前記退避位置に配置されているときに、前記外部配置部は、最も前記第1方向側に配置される前記シール部材よりも前記第1方向側に配置されていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のハンド。
【請求項6】
前記搭載支持部は、前記軸配置穴が形成されるとともに内周側で複数の前記シール部材を保持する筒状のシール保持部材と、前記シール保持部材と別体で形成されるとともに前記シール保持部材が固定される支持部本体とを備え、
前記支持部本体には、前記シール保持部材が配置されるとともに前記配置空間に通じるシール保持部材配置穴が形成され、
前記シール保持部材は、前記支持部本体に対して着脱可能になっており、
前記シール保持部材の外周面または前記シール保持部材配置穴の内周面には、前記配置空間への液体の浸入を防止するための外周側シール部材が配置される外周側シール配置凹部が形成されていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のハンド。
【請求項7】
前記シール部材として、前記軸部の軸方向において互いに間隔をあけた状態で配置される第1シール部材および第2シール部材の2個の前記シール部材を備え、
前記軸部の軸方向において前記押付部が配置される側を第1方向側とし、前記第1方向側の反対側を第2方向側とすると、
前記第1シール部材は、前記第2シール部材よりも前記第1方向側に配置され、
前記第1シール部材は、オムニシールであり、
前記第2シール部材は、UパッキンまたはVパッキンであり、
前記シール保持部材は、前記第2シール部材が配置される内周側シール配置凹部が内周側に形成される筒状のシール保持部材本体と、前記第1方向側から前記シール保持部材本体の内周側に挿入される筒状の挿入部を有するカバー部材とを備え、
前記カバー部材は、前記シール保持部材本体と別体で形成されるとともに、前記シール保持部材本体に対して着脱可能になっており、
前記シール保持部材本体の内周側には、前記第1シール部材の、前記第2方向側への移動を規制する第1規制面が形成され、
前記挿入部の前記第2方向側の端面は、前記第1シール部材の、前記第1方向側への移動を規制する第2規制面となっていることを特徴とする請求項6記載のハンド。
【請求項8】
請求項1から3のいずれかに記載のハンドと、前記ハンドが連結されるアームと、前記アームが連結される本体部とを備えることを特徴とする産業用ロボット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送対象物を搬送する産業用ロボットで使用される産業用ロボットのハンドに関する。また、本発明は、かかるハンドを備える産業用ロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体ウエハを搬送するための水平多関節型の産業用ロボットが知られている(たとえば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の産業用ロボットは、半導体ウエハが搭載されるハンドと、ハンドが先端側に回動可能に連結されるアームと、アームの基端側が回動可能に連結される本体部とを備えている。ハンドは、半導体ウエハが搭載される搭載部と、ハンドの基端側部分を構成するハンド基部と、搭載部に搭載される半導体ウエハを水平方向の一定位置で保持するための保持機構とを備えている。搭載部の基端側は、ハンド基部に固定されている。ハンド基部は、アームの先端側に回動可能に連結されている。
【0003】
特許文献1に記載の産業用ロボットでは、保持機構は、半導体ウエハの端面が当接する当接面を有する端面当接部材と、半導体ウエハの端面に接触して端面当接部材の当接面に半導体ウエハの端面を押し付ける押付部材と、押付部材を水平方向に直線的に移動させる駆動機構とを備えている。駆動機構は、中空状に形成されるハンド基部の内部に収容されている。押付部材の基端部は、駆動機構に連結されており、ハンド基部の内部に収容されている。押付部材の先端側部分は、ハンド基部の外部に配置されており、押付部材の先端が半導体ウエハの端面に接触可能となっている。ハンド基部には、押付部材が挿通される開口部が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015-36186号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の産業用ロボットが、半導体ウエハに対して水等の液体が使用される環境下で使用される場合(すなわち、半導体ウエハが搭載されるハンドが、液体が使用される環境下で使用される場合)、ハンド基部の開口部からハンド基部の内部に液体が浸入するおそれがある。また、ハンド基部の内部に液体が浸入すると、ハンド基部の内部に収容される駆動機構が腐食するおそれが生じる。
【0006】
そこで、本発明の課題は、搬送対象物が搭載される搭載部と、搭載部の基端側が固定される搭載支持部と、搭載部に搭載される搬送対象物を水平方向の一定位置で保持するための保持機構とを備える産業用ロボットのハンドにおいて、液体が使用される環境下で使用されても、保持機構の一部を構成する駆動機構が収容される搭載支持部の内部の配置空間への液体の浸入を効果的に抑制することが可能なハンドを提供することにある。また、本発明の課題は、かかるハンドを備える産業用ロボットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明の一態様の産業用ロボットのハンドは、搬送対象物を搬送する産業用ロボットのハンドにおいて、搬送対象物が搭載される搭載部と、少なくとも一部が中空状に形成されるとともに搭載部の基端側が固定される搭載支持部と、搭載部に搭載される搬送対象物を水平方向の一定位置で保持するための保持機構と、搭載支持部の内部への液体の浸入を防止するための複数のシール部材と、搭載支持部の内部に気体を供給する気体供給機構とを備え、保持機構は、搬送対象物の端面が当接する当接面を有し搭載部の先端側に取り付けられる端面当接部材と、搬送対象物の端面に接触して当接面に搬送対象物の端面を押し付ける押付部と押付部が先端側に取り付けられる軸状の軸部とを有し搭載支持部に保持される押付部材と、搭載支持部の内部の配置空間に収容されるとともに軸部の基端側が連結され搭載支持部に対して押付部材を水平方向に直線的に移動させる駆動機構とを備え、搭載支持部には、軸部の一部が配置されるとともに配置空間に通じる軸配置穴が形成され、複数のシール部材は、軸部の軸方向に配列され軸配置穴に配置されるとともに、軸部の外周面に接触し、気体供給機構は、配置空間に気体を供給して配置空間を陽圧にすることを特徴とする。
【0008】
本態様の産業用ロボットのハンドは、搭載支持部の内部への液体の浸入を防止するための複数のシール部材と、搭載支持部の内部に気体を供給する気体供給機構とを備えている。また、本態様では、複数のシール部材は、軸部の軸方向に配列され軸配置穴に配置されるとともに、軸部の外周面に接触し、気体供給機構は、配置空間に気体を供給して配置空間を陽圧にしている。そのため、本態様では、液体が使用される環境下でハンドが使用されても、液体が軸配置穴を通過して搭載支持部の内部の配置空間に浸入するのを効果的に抑制することが可能になる。
【0009】
本態様において、たとえば、ハンドは、シール部材として、軸部の軸方向において互いに間隔をあけた状態で配置される第1シール部材および第2シール部材の2個のシール部材を備え、軸部の軸方向において押付部が配置される側を第1方向側とすると、第1シール部材は、第2シール部材よりも第1方向側に配置されている。
【0010】
本態様において、搭載支持部には、搭載支持部の外側面から、軸配置穴の、第1シール部材と第2シール部材との間の部分に通じる液体の抜き穴が形成されていることが好ましい。このように構成すると、仮に、軸配置穴の、第1シール部材が配置された部分を液体が通過して、軸配置穴の、第1シール部材と第2シール部材との間の部分まで液体が浸入したとしても、浸入した液体を抜き穴から排出することが可能になる。したがって、液体が軸配置穴を通過して搭載支持部の内部の配置空間に浸入するのをより効果的に抑制することが可能になる。
【0011】
本態様において、第1シール部材は、オムニシールであり、第2シール部材は、UパッキンまたはVパッキンであることが好ましい。このように構成すると、たとえば、第1シール部材および第2シール部材がOリングである場合と比較して、第1シール部材および第2シール部材と軸部との摺動摩擦を低減することが可能になる。したがって、第1シール部材および第2シール部材の摩耗を抑制しつつ、搭載支持部の内部の配置空間に液体が浸入するのを効果的に抑制することが可能になる。また、このように構成すると、第1シール部材がオムニシールであり、第1シール部材のシール性が高いため、搭載支持部の内部の配置空間に液体が浸入するのをより効果的に抑制することが可能になる。
【0012】
本態様において、駆動機構は、押付部が搬送対象物の端面に接触して当接面に搬送対象物の端面を押し付ける把持位置と、押付部が搬送対象物の端面から離れる退避位置との間で押付部材を移動させ、押付部材が把持位置に配置されているときには、軸部の一部は、搭載支持部の外部に配置され、軸部の軸方向において押付部が配置される側を第1方向側とし、軸部の、押付部材が把持位置に配置されているときに搭載支持部の外部に配置されている部分を外部配置部とすると、押付部材が退避位置に配置されているときに、外部配置部は、最も第1方向側に配置されるシール部材よりも第1方向側に配置されていることが好ましい。
【0013】
このように構成すると、押付部材が把持位置に配置されているときに搭載支持部の外部に配置されて液体が付着する外部配置部がシール部材に接触するのを防止することが可能になる。したがって、たとえば、研磨剤が含まれる薬液が使用される環境下でハンドが使用されても、薬液に含まれる研磨剤が付着した外部配置部がシール部材に接触するのを防止することが可能になる。その結果、研磨剤が含まれる薬液が使用される環境下でハンドが使用されても、外部配置部に付着した研磨剤に起因するシール部材の損傷を防止することが可能になる。
【0014】
本態様において、搭載支持部は、軸配置穴が形成されるとともに内周側で複数のシール部材を保持する筒状のシール保持部材と、シール保持部材と別体で形成されるとともにシール保持部材が固定される支持部本体とを備え、支持部本体には、シール保持部材が配置されるとともに配置空間に通じるシール保持部材配置穴が形成され、シール保持部材は、支持部本体に対して着脱可能になっており、シール保持部材の外周面またはシール保持部材配置穴の内周面には、配置空間への液体の浸入を防止するための外周側シール部材が配置される外周側シール配置凹部が形成されていることが好ましい。このように構成すると、支持部本体からシール保持部材を取り外せば、複数のシール部材を一緒に支持部本体から取り外すことができる。したがって、複数のシール部材の交換作業を容易に行うことが可能になる。
【0015】
本態様において、ハンドは、シール部材として、軸部の軸方向において互いに間隔をあけた状態で配置される第1シール部材および第2シール部材の2個のシール部材を備え、軸部の軸方向において押付部が配置される側を第1方向側とし、第1方向側の反対側を第2方向側とすると、第1シール部材は、第2シール部材よりも第1方向側に配置され、第1シール部材は、オムニシールであり、第2シール部材は、UパッキンまたはVパッキンであり、シール保持部材は、第2シール部材が配置される内周側シール配置凹部が内周側に形成される筒状のシール保持部材本体と、第1方向側からシール保持部材本体の内周側に挿入される筒状の挿入部を有するカバー部材とを備え、カバー部材は、シール保持部材本体と別体で形成されるとともに、シール保持部材本体に対して着脱可能になっており、シール保持部材本体の内周側には、第1シール部材の、第2方向側への移動を規制する第1規制面が形成され、挿入部の第2方向側の端面は、第1シール部材の、第1方向側への移動を規制する第2規制面となっていることが好ましい。
【0016】
このように構成すると、たとえば、第1シール部材および第2シール部材がOリングである場合と比較して、第1シール部材および第2シール部材と軸部との摺動摩擦を低減することが可能になる。したがって、第1シール部材および第2シール部材の摩耗を抑制しつつ、搭載支持部の内部の配置空間に液体が浸入するのを効果的に抑制することが可能になる。また、このように構成すると、第1シール部材がオムニシールであり、第1シール部材のシール性が高いため、搭載支持部の内部の配置空間に液体が浸入するのをより効果的に抑制することが可能になる。
【0017】
また、このように構成すると、第1シール部材の第1方向側への移動を規制する第2規制面が形成されるカバー部材が、シール保持部材本体と別体で形成されていて、シール保持部材本体に対して着脱可能になっているため、UパッキンやVパッキンと比較して剛性の高いオムニシールが第1シール部材としてシール保持部材の内周側に配置されていても、シール保持部材本体からカバー部材を取り外すことで、シール保持部材の内周側に第1シール部材を容易に配置することが可能になる。
【0018】
本態様のハンドは、ハンドが連結されるアームと、アームが連結される本体部とを備える産業用ロボットに用いることができる。この産業用ロボットでは、液体が使用される環境下でハンドが使用されても、液体が軸配置穴を通過して搭載支持部の内部の配置空間に浸入するのを効果的に抑制することが可能になる。
【発明の効果】
【0019】
以上のように、本発明では、搬送対象物が搭載される搭載部と、搭載部の基端側が固定される搭載支持部と、搭載部に搭載される搬送対象物を水平方向の一定位置で保持するための保持機構とを備える産業用ロボットのハンドにおいて、液体が使用される環境下で使用されても、保持機構の一部を構成する駆動機構が収容される搭載支持部の内部の配置空間への液体の浸入を効果的に抑制することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の実施の形態にかかる産業用ロボットの側面図である。
図2図1に示す産業用ロボットの平面図である。
図3図2に示すハンドの構成を説明するための平面図である。
図4図3のE-E断面の構成を説明するための断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態を説明する。
【0022】
(産業用ロボットの概略構成)
図1は、本発明の実施の形態にかかる産業用ロボット1の側面図である。図2は、図1に示す産業用ロボット1の平面図である。
【0023】
本形態の産業用ロボット1(以下、「ロボット1」とする。)は、搬送対象物である半導体ウエハ2(以下、「ウエハ2」とする。)を搬送するための水平多関節型のロボットである。ウエハ2は、円板状に形成されている。ロボット1は、半導体製造システムに組み込まれて使用される。ロボット1は、ウエハ2が搭載されるハンド3と、ハンド3が連結されるアーム4と、アーム4が連結される本体部5とを備えている。本形態のロボット1は、ウエハ2に対して水等の液体が使用される環境下で使用される。すなわち、本形態では、ウエハ2が搭載されるハンド3は、液体が使用される環境下で使用される。
【0024】
アーム4の先端側には、ハンド3が回動可能に連結されている。本体部5には、アーム4の基端側が回動可能に連結されている。アーム4は、基端側が本体部5に回動可能に連結されるアーム部7と、アーム部7の先端側に基端側が回動可能に連結されるアーム部8とから構成されている。ハンド3およびアーム部7、8は、上下方向を回動の軸方向として回動する。アーム4は、水平方向に伸縮動作を行う。
【0025】
本体部5は、アーム4の基端側(すなわち、アーム部7の基端側)が回動可能に連結される昇降体11と、昇降体11が収容される筐体12と、筐体12に対して昇降体11を昇降させる昇降機構とを備えている。アーム部7の基端側は、昇降体11の上端部に回動可能に連結されている。昇降機構は、筐体12に収容されている。本体部5とアーム部7とアーム部8とハンド3とは、上下方向において、下側からこの順番で配置されている。また、ロボット1は、アーム部7、8およびハンド3を回動させてアーム4を伸縮させるアーム駆動機構等を備えている。
【0026】
(ハンドの構成)
図3は、図2に示すハンド3の構成を説明するための平面図である。図4は、図3のE-E断面の構成を説明するための断面図である。
【0027】
ハンド3は、たとえば、上下方向から見たときの形状が長方形状となるように形成されている。ハンド3は、ウエハ2が搭載される搭載部15と、搭載部15の基端側が固定される搭載支持部16と、ハンド3の基端側部分を構成するハンド基部17とを備えている。ハンド基部17は、アーム部8の先端側に回動可能に連結されている。ハンド基部17は、上下方向を回動の軸方向としてアーム部8に対して回動可能となっている。搭載支持部16は、ハンド基部17に回動可能に連結されている。搭載支持部16は、水平方向を回動の軸方向としてハンド基部17に対して回動可能となっている。搭載支持部16の少なくとも一部は、中空状に形成されている。
【0028】
搭載部15と搭載支持部16とハンド基部17とは、水平方向においてこの順番で配列されている。以下の説明では、水平方向であって、搭載部15と搭載支持部16とハンド基部17とが配列される方向を「前後方向」とし、上下方向(鉛直方向)と前後方向とに直交する図3等のY方向を「左右方向」とする。また、前後方向の一方側である図3等のX1方向側を「前」側とし、その反対側である図3等のX2方向側を「後ろ」側とする。搭載部15は、搭載支持部16の前側に配置され、搭載支持部16は、ハンド基部17の前側に配置されている。搭載支持部16は、前後方向を回動の軸方向としてハンド基部17に対して回動可能となっている。
【0029】
ハンド3は、搭載部15に搭載されるウエハ2を水平方向の一定位置で保持するための保持機構19(図2参照)と、搭載支持部16の内部への液体の浸入を防止するための複数のシール部材20、21と、搭載支持部16の内部に気体を供給する気体供給機構22(図2参照)とを備えている。本形態のハンド3は、第1シール部材としてのシール部材20と、第2シール部材としてのシール部材21との2個のシール部材20、21を備えている。また、ハンド3は、前後方向を回動の軸方向としてハンド基部17に対して搭載部15および搭載支持部16を少なくとも180°回動させる回動機構(図示省略)を備えている。ロボット1では、搭載部15に搭載されるウエハ2を搭載部15と一緒に反転させることが可能になっている。
【0030】
搭載部15は、たとえば、長方形の平板状に形成されている。搭載部15は、搭載部15の厚さ方向と上下方向とが一致するように配置されている。また、搭載部15は、長方形状に形成される搭載部15の長辺の方向と前後方向とが一致するように配置されている。搭載支持部16は、上下方向の厚さが薄い扁平な直方体のブロック状に形成されている。搭載部15の後端部は、搭載支持部16の前端部に固定されている。
【0031】
保持機構19は、搭載部15に搭載されるウエハ2の端面(外周面)に3方向から接触して搭載部15に搭載されるウエハ2を水平方向において一定位置で保持するエッジグリップ型の保持機構である。保持機構19は、ウエハ2の端面が当接する当接面25aを有する端面当接部材25と、ウエハ2の端面に接触して端面当接部材25の当接面25aにウエハ2の端面を押し付ける押付部としてのローラ部26を有する押付部材27と、押付部材27を水平方向に直線的に移動させる駆動機構28とを備えている。
【0032】
端面当接部材25は、搭載部15の先端側に取り付けられている。すなわち、端面当接部材25は、搭載部15の前端側に取り付けられている。具体的には、端面当接部材25は、搭載部15の上面の前端部の2箇所に固定されている。搭載部15の基端側の上面(すなわち、搭載部15の後端側の上面)には、ウエハ2が載置される2個のウエハ載置部材29が固定されている。搭載部15に搭載されるウエハ2の下面は、端面当接部材25およびウエハ載置部材29に接触している。なお、図1では、端面当接部材25およびウエハ載置部材29の図示を省略している。
【0033】
押付部材27は、搭載支持部16に保持されている。具体的には、押付部材27は、前後方向への直線的な移動が可能となるように搭載支持部16に保持されている。押付部材27は、ローラ部26が先端側に取り付けられる軸状の軸部32を備えている。軸部32は、前後方向に細長い円柱状に形成されている。軸部32の軸方向は、前後方向と一致している。すなわち、前後方向は、軸部32の軸方向となっている。
【0034】
ローラ部26は、軸部32の前端部に取り付けられている。ローラ部26は、ローラ33と、ローラ33を回転可能に保持するローラ保持部材34とを備えている。ローラ保持部材34は、軸部32の前端部に固定されている。ローラ33は、上下方向を回転の軸方向とする回転が可能となるようにローラ保持部材34に保持されている。本形態の前側(X1方向側)は、軸部32の軸方向において押付部であるローラ部26が配置される側である第1方向側となっており、後ろ側(X2方向側)は、第1方向側の反対側である第2方向側となっている。
【0035】
駆動機構28は、中空状に形成される搭載支持部16の内部の配置空間S(図4参照)に収容されている。駆動機構28は、駆動源としてのエアシリンダ35と、エアシリンダ35の動力で前後方向に直線的に移動するスライダ36とを備えている。スライダ36は、エアシリンダ35のロッドに連結されている。スライダ36には、ガイドブロック37が固定されている。ガイドブロック37は、搭載支持部16に固定されるガイドレール38に係合している。
【0036】
スライダ36は、ガイドブロック37とガイドレール38とによって前後方向に案内される。軸部32の基端側は、スライダ36に連結されている。具体的には、軸部32の後端部がスライダ36に固定されている。軸部32の後端部は、1本のネジ39によってスライダ36の前端部に固定されている。ネジ39は、たとえば、六角穴付き止めネジである。押付部材27は、ネジ39を緩めることでスライダ36から取り外すことが可能になっている。
【0037】
駆動機構28は、搭載支持部16に対して押付部材27を前後方向に直線的に移動させる。また、駆動機構28は、ローラ部26がウエハ2の端面に接触して(具体的には、ローラ33がウエハ2の端面に接触して)当接面25aにウエハ2の端面を押し付ける把持位置(図3の二点鎖線参照)と、ローラ部26がウエハ2の端面から離れる(具体的には、ローラ33がウエハ2の端面から離れる)退避位置(図3の実線参照)との間で押付部材27を移動させる。押付部材27は、把持位置に向かって前側に移動するとともに、退避位置に向かって後ろ側に移動する。
【0038】
搭載支持部16は、内周側でシール部材20、21を保持する筒状のシール保持部材41と、シール保持部材41と別体で形成される支持部本体42と、支持部本体42と別体で形成され支持部本体42に固定されるカバー部材43とを備えている。支持部本体42は、上面が開口する直方体の箱状に形成されている。カバー部材43は、平板状に形成されている。カバー部材43は、支持部本体42の上面の開口を覆うように支持部本体42の上面側に固定されている。配置空間Sは、支持部本体42とカバー部材43とによって画定されている。駆動機構28は、支持部本体42の内部に配置されている。
【0039】
支持部本体42の前端部の内側には、シール保持部材41を保持する保持部42aが形成されている。保持部42aは、支持部本体42の左右方向の中心位置に形成されている。保持部42aには、シール保持部材41が配置されるシール保持部材配置穴42bが形成されている。すなわち、支持部本体42にはシール保持部材配置穴42bが形成されている。シール保持部材配置穴42bは、前後方向で保持部42aを貫通する丸穴である。シール保持部材配置穴42bは、支持部本体42の前端面で開口するとともに配置空間Sに通じている。
【0040】
シール保持部材41は、鍔付きの円筒状に形成されている。シール保持部材41の鍔部を除いた部分は、前側からシール保持部材配置穴42bの中に挿入されている。シール保持部材41は、シール保持部材41の軸方向と前後方向とが一致するように配置されている。シール保持部材41の鍔部は、シール保持部材41の前端部を構成している。シール保持部材41は、支持部本体42に固定されている。具体的には、シール保持部材41の鍔部が保持部42aの前端側に固定されている。また、シール保持部材41は、複数のネジ44によって支持部本体42に固定されている。ネジ44は、たとえば、六角穴付きボルトである。シール保持部材41は、ネジ44を取り外すことで支持部本体42から取り外すことが可能になっている。すなわち、シール保持部材41は、支持部本体42に対して着脱可能になっている。
【0041】
シール保持部材41の内周側は、軸部32の一部が配置される軸配置穴41aとなっている。すなわち、搭載支持部16には、軸配置穴41aが形成されている。具体的には、シール保持部材41に軸配置穴41aが形成されている。ローラ部26は、シール保持部材41よりも前側に配置されている。軸部32の径方向において、軸部32の外周面と軸配置穴41aの内周面との間には隙間が形成されている。軸配置穴41aは、配置空間Sに通じている。軸配置穴41aには、シール部材20、21が配置されている。シール部材20とシール部材21とは、前後方向において互いに間隔をあけた状態で配置されている。すなわち、シール部材20とシール部材21とは、前後方向に配列されている。本形態では、シール部材20は、シール部材21よりも前側に配置されている。
【0042】
シール部材20、21は、リップパッキンであり、環状に形成されている。具体的には、シール部材20は、オムニシールであり、シール部材21は、UパッキンまたはVパッキン(Yパッキン)である。シール部材20、21は、軸部32の外周側に配置されている。シール部材20、21は、軸部32の外周面に接触している。具体的には、シール部材20、21のリップ部分が軸部32の外周面に密着している。シール部材20、21は、軸配置穴41aから配置空間Sに液体が浸入するのを防止する機能を果たしている。
【0043】
シール保持部材41の内周面には、シール部材20が配置されるシール配置凹部41bと、シール部材21が配置されるシール配置凹部41cとが形成されている。すなわち、軸配置穴41aには、シール配置凹部41b、41cが形成されている。シール配置凹部41b、41cは、シール保持部材41の径方向の外側に向かって窪む環状に形成されている。シール配置凹部41bは、シール部材20の前後方向の移動を規制し、シール配置凹部41cは、シール部材21の前後方向の移動を規制している。シール配置凹部41bは、シール配置凹部41cよりも前側に形成されている。本形態のシール配置凹部41cは、内周側シール配置凹部である。
【0044】
シール保持部材41の外周側には、シール保持部材41の外周面とシール保持部材配置穴42bの内周面との隙間から配置空間Sに液体が浸入するのを防止するためのシール部材45が配置されている。シール部材45は、Oリングであり、環状に形成されている。シール保持部材41の外周面には、シール部材45が配置されるシール配置凹部41dが形成されている。シール配置凹部41dは、シール保持部材41の径方向の内側に向かって窪む環状に形成されている。本形態のシール部材45は、外周側シール部材であり、シール配置凹部41dは、外周側シール配置凹部である。
【0045】
また、シール保持部材41は、シール配置凹部41cが内周側に形成される筒状のシール保持部材本体47と、シール保持部材本体47と別体で形成される筒状のカバー部材48とを備えている。本形態のシール保持部材41は、シール保持部材本体47とカバー部材48とによって構成されている。
【0046】
シール保持部材本体47は、鍔付きの円筒状に形成されている。シール保持部材本体47の鍔部を除いた部分は、シール保持部材配置穴42bの中に挿入されている。シール保持部材本体47は、シール保持部材本体47の軸方向と前後方向とが一致するように配置されている。シール保持部材本体47の鍔部は、シール保持部材本体47の前端部を構成している。シール配置凹部41dは、シール保持部材本体47の外周面に形成されている。
【0047】
カバー部材48は、鍔付きの円筒状に形成されている。カバー部材48は、シール保持部材本体47の内周側に前側から挿入される筒状の挿入部48aを備えている。挿入部48aは、円筒状に形成されている。挿入部48aの長さ(前後方向の長さ)は、シール保持部材本体47の長さ(前後方向の長さ)よりも短くなっている。たとえば、挿入部48aの長さは、シール保持部材本体47の長さの半分程度となっている。
【0048】
カバー部材48は、カバー部材48の軸方向と前後方向とが一致するように配置されている。カバー部材48の鍔部は、挿入部48aの前端に繋がっており、カバー部材48の前端部を構成している。カバー部材48の鍔部は、シール保持部材本体47の鍔部の前側に配置されている。カバー部材48の鍔部の後面は、シール保持部材本体47の鍔部の前面に接触している。シール保持部材本体47とカバー部材48とは、ネジ44によって一緒に保持部42aに固定されている。カバー部材48は、シール保持部材本体47に着脱可能となっている。
【0049】
挿入部48aが内周側に挿入されるシール保持部材本体47の前側部分の内径は、シール保持部材本体47の後ろ側部分の内径よりも大きくなっている。シール保持部材本体47の後ろ側部分の内径は、カバー部材48の内径とほぼ等しくなっている。シール配置凹部41cは、シール保持部材本体47の後ろ側部分の内周側に形成されている。シール保持部材本体47の前側部分の内周面とシール保持部材本体47の後ろ側部分の内周面との境界には、前後方向に直交する円環状の段差面47aが形成されている。
【0050】
シール配置凹部41bは、段差面47aと挿入部48aの後端面48bとの間に形成されている。すなわち、シール部材20は、段差面47aと後端面48bとの間に配置されている。本形態の段差面47aは、シール部材20の後ろ側への移動を規制する第1規制面となっている。すなわち、シール保持部材本体47の内周側には、第1規制面が形成されている。また、挿入部48aの後端面48bは、シール部材20の後ろ側への移動を規制する第2規制面となっている。また、本形態では、シール保持部材本体47の後ろ側部分の内周側と挿入部48aの内周側とに軸配置穴41aが形成されている。
【0051】
搭載支持部16には、搭載支持部16の外側面から、軸配置穴41aの、シール部材20とシール部材21との間の部分に通じる液体の抜き穴16aが形成されている。抜き穴16aは、搭載支持部16の下面から、軸配置穴41aの、シール部材20とシール部材21との間の部分まで貫通する貫通穴である。図4に示すように、抜き穴16aは、シール保持部材本体47の後ろ側部分に形成される貫通穴と、支持部本体42の下面部に形成される貫通穴とによって構成されている。抜き穴16aは、シール部材45よりも前側に形成されている。
【0052】
上述のように、駆動機構28は、ローラ33がウエハ2の端面に接触して当接面25aにウエハ2の端面を押し付ける把持位置と、ローラ33がウエハ2の端面から離れる退避位置との間で押付部材27を移動させる。押付部材27が把持位置に配置されているときには、軸部32の前端側の一部は、搭載支持部16の外部に配置されている。軸部32の、押付部材27が把持位置に配置されているときに搭載支持部16の外部に配置されている部分を外部配置部32aとすると、たとえば、図4の破線で囲まれた部分が外部配置部32aとなっている。図4に示すように、押付部材27が退避位置に配置されているときには、外部配置部32aは、前側に配置されるシール部材20よりも前側に配置されている。
【0053】
気体供給機構22は、配置空間Sに気体を供給して配置空間Sを陽圧にする。本形態の気体供給機構22は、配置空間Sに空気を供給する。気体供給機構22は、配置空間Sに圧縮空気を送る送風機等の圧縮空気の供給源と、圧縮空気の供給源と配置空間Sとを繋ぐ配管等を備えている。
【0054】
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本形態では、ハンド3は、搭載支持部16の内部への液体の浸入を防止するための2個のシール部材20、21と、搭載支持部16の内部に気体を供給する気体供給機構22とを備えている。また、本形態では、軸部32の外周面に接触する2個のシール部材20、21が軸配置穴41aに配置され、気体供給機構22が配置空間Sに気体を供給して配置空間Sを陽圧にしている。そのため、本形態では、液体が使用される環境下でハンド3が使用されても、液体が軸配置穴41aを通過して搭載支持部16の内部の配置空間Sに浸入するのを効果的に抑制することが可能になる。
【0055】
本形態では、搭載支持部16に、搭載支持部16の外側面から、軸配置穴41aの、シール部材20とシール部材21との間の部分に通じる液体の抜き穴16aが形成されている。そのため、本形態では、仮に、軸配置穴41aの、シール部材20が配置された部分を液体が通過して、軸配置穴41aの、シール部材20とシール部材21との間の部分まで液体が浸入したとしても、浸入した液体を抜き穴16aから排出することが可能になる。特に本形態では、抜き穴16aが搭載支持部16の下面に通じているため、仮に、軸配置穴41aの、シール部材20とシール部材21との間の部分まで液体が浸入したとしても、重力の作用で、浸入した液体を抜き穴16aから排出しやすくなる。したがって、本形態では、液体が軸配置穴41aを通過して配置空間Sに浸入するのをより効果的に抑制することが可能になる。
【0056】
本形態では、シール部材20は、オムニシールであり、シール部材21は、UパッキンまたはVパッキンである。そのため、本形態では、たとえば、シール部材20、21がOリングである場合と比較して、シール部材20、21と軸部32との摺動摩擦を低減することが可能になる。したがって、本形態では、シール部材20、21の摩耗を抑制しつつ、配置空間Sに液体が浸入するのを効果的に抑制することが可能になる。また、本形態では、シール部材20がオムニシールであり、シール部材20のシール性が高いため、配置空間Sに液体が浸入するのをより効果的に抑制することが可能になる。
【0057】
本形態では、押付部材27が退避位置に配置されているときに、軸部32の外部配置部32aは、前側に配置されるシール部材20よりも前側に配置されている。そのため、本形態では、押付部材27が把持位置に配置されているときに搭載支持部16の外部に配置されて液体が付着する外部配置部32aがシール部材20、21に接触するのを防止することが可能になる。したがって、本形態では、たとえば、研磨剤が含まれる薬液が使用される環境下でハンド3が使用されても、薬液に含まれる研磨剤が付着した外部配置部32aがシール部材20、21に接触するのを防止することが可能になる。その結果、本形態では、研磨剤が含まれる薬液が使用される環境下でハンド3が使用されても、外部配置部32aに付着した研磨剤に起因するシール部材20、21の損傷を防止することが可能になる。
【0058】
本形態では、搭載支持部16は、内周側でシール部材20、21を保持するシール保持部材41と、シール保持部材41と別体で形成されるとともにシール保持部材41が固定される支持部本体42とを備えており、シール保持部材41は、支持部本体42に対して着脱可能になっている。また、本形態では、ネジ39を緩めてスライダ36から押付部材27を取り外すとともに、ネジ44を取り外して支持部本体42からシール保持部材41を取り外せば、2個のシール部材20、21を一緒に支持部本体42から取り外すことができる。したがって、本形態では、2個のシール部材20、21の交換作業を容易に行うことが可能になる。
【0059】
また、本形態では、シール保持部材41の外周面にシール部材45が配置されるシール配置凹部41dが形成されているため、支持部本体42からシール保持部材41を取り外せば、2個のシール部材20、21と一緒にシール部材45も支持部本体42から取り外すことができる。したがって、本形態では、3個のシール部材20、21、45の交換作業を容易に行うことが可能になる。
【0060】
本形態では、シール部材20の前側への移動を規制する後端面48bが形成されるカバー部材48が、シール保持部材本体47と別体で形成されていて、シール保持部材本体47に対して着脱可能になっている。そのため、本形態では、UパッキンやVパッキンと比較して剛性の高いオムニシールであるシール部材20がシール保持部材41の内周側に配置されていても、シール保持部材本体47からカバー部材48を取り外すことで、シール保持部材41の内周側にシール部材20を容易に配置することが可能になる。
【0061】
(他の実施の形態)
上述した形態は、本発明の好適な形態の一例ではあるが、これに限定されるものではなく本発明の要旨を変更しない範囲において種々変形実施が可能である。
【0062】
上述した形態において、シール部材20は、UパッキンまたはVパッキンであっても良い。また、上述した形態において、シール部材21は、オムニシールであっても良い。また、上述した形態において、シール部材20、21は、Oリングであっても良い。さらに、上述した形態において、ハンド3は、軸配置穴41aに配置される3個以上のシール部材を備えていても良い。
【0063】
上述した形態において、シール保持部材41は、1個の部材によって構成されていても良い。すなわち、シール保持部材本体47とカバー部材48とが一体で形成されていても良い。また、上述した形態において、シール保持部材41と支持部本体42とが一体で形成されていても良い。さらに、上述した形態において、搭載支持部16に抜き穴16aが形成されていなくても良い。また、上述した形態において、シール保持部材配置穴42bの内周面にシール部材45が配置される外周側シール配置凹部が形成されていても良い。
【0064】
上述した形態において、駆動機構28は、エアシリンダ35に代えてモータ等の駆動源を備えていても良い。また、上述した形態において、ローラ33は、ローラ保持部材34に対して回転可能になっていなくても良い。また、上述した形態において、押付部材27は、ローラ部26以外の押付部を備えていても良い。さらに、上述した形態において、搭載支持部16は、ハンド基部17に対して回動可能となっていなくても良い。また、上述した形態において、気体供給機構22は、配置空間Sに空気以外の気体を供給しても良い。
【0065】
上述した形態において、ロボット1は、アーム4の先端側に回動可能に連結される2個のハンド3を備えていても良い。また、上述した形態において、アーム4は、3個以上のアーム部によって構成されていても良い。また、上述した形態において、ロボット1によって搬送される搬送対象物は、ウエハ2以外のものであっても良い。この場合には、たとえば、搬送対象物は、正方形または長方形の平板状に形成されていても良い。
【0066】
本発明が適用される産業用ロボットは、水平多関節型の産業用ロボット以外のロボットであっても良い。たとえば、本発明が適用される産業用ロボットは、ハンド3の直線的な往復移動が可能となるようにハンド3が連結されるアームと、アームが回動可能に連結される本体部と、アームに対してハンド3を直線的に往復移動させるリニア駆動部とを備える産業用ロボットであっても良い。
【0067】
(本技術の構成)
なお、本技術は以下のような構成を取ることが可能である。
(1)搬送対象物を搬送する産業用ロボットのハンドにおいて、
前記搬送対象物が搭載される搭載部と、少なくとも一部が中空状に形成されるとともに前記搭載部の基端側が固定される搭載支持部と、前記搭載部に搭載される前記搬送対象物を水平方向の一定位置で保持するための保持機構と、前記搭載支持部の内部への液体の浸入を防止するための複数のシール部材と、前記搭載支持部の内部に気体を供給する気体供給機構とを備え、
前記保持機構は、前記搬送対象物の端面が当接する当接面を有し前記搭載部の先端側に取り付けられる端面当接部材と、前記搬送対象物の端面に接触して前記当接面に前記搬送対象物の端面を押し付ける押付部と前記押付部が先端側に取り付けられる軸状の軸部とを有し前記搭載支持部に保持される押付部材と、前記搭載支持部の内部の配置空間に収容されるとともに前記軸部の基端側が連結され前記搭載支持部に対して前記押付部材を水平方向に直線的に移動させる駆動機構とを備え、
前記搭載支持部には、前記軸部の一部が配置されるとともに前記配置空間に通じる軸配置穴が形成され、
複数の前記シール部材は、前記軸部の軸方向に配列され前記軸配置穴に配置されるとともに、前記軸部の外周面に接触し、
前記気体供給機構は、前記配置空間に気体を供給して前記配置空間を陽圧にすることを特徴とするハンド。
(2)前記シール部材として、前記軸部の軸方向において互いに間隔をあけた状態で配置される第1シール部材および第2シール部材の2個の前記シール部材を備え、
前記軸部の軸方向において前記押付部が配置される側を第1方向側とすると、
前記第1シール部材は、前記第2シール部材よりも前記第1方向側に配置されていることを特徴とする(1)記載のハンド。
(3)前記搭載支持部には、前記搭載支持部の外側面から、前記軸配置穴の、前記第1シール部材と前記第2シール部材との間の部分に通じる液体の抜き穴が形成されていることを特徴とする(2)記載のハンド。
(4)前記第1シール部材は、オムニシールであり、
前記第2シール部材は、UパッキンまたはVパッキンであることを特徴とする(2)または(3)記載のハンド。
(5)前記駆動機構は、前記押付部が前記搬送対象物の端面に接触して前記当接面に前記搬送対象物の端面を押し付ける把持位置と、前記押付部が前記搬送対象物の端面から離れる退避位置との間で前記押付部材を移動させ、
前記押付部材が前記把持位置に配置されているときには、前記軸部の一部は、前記搭載支持部の外部に配置され、
前記軸部の軸方向において前記押付部が配置される側を第1方向側とし、前記軸部の、前記押付部材が前記把持位置に配置されているときに前記搭載支持部の外部に配置されている部分を外部配置部とすると、
前記押付部材が前記退避位置に配置されているときに、前記外部配置部は、最も前記第1方向側に配置される前記シール部材よりも前記第1方向側に配置されていることを特徴とする(1)から(4)のいずれかに記載のハンド。
(6)前記搭載支持部は、前記軸配置穴が形成されるとともに内周側で複数の前記シール部材を保持する筒状のシール保持部材と、前記シール保持部材と別体で形成されるとともに前記シール保持部材が固定される支持部本体とを備え、
前記支持部本体には、前記シール保持部材が配置されるとともに前記配置空間に通じるシール保持部材配置穴が形成され、
前記シール保持部材は、前記支持部本体に対して着脱可能になっており、
前記シール保持部材の外周面または前記シール保持部材配置穴の内周面には、前記配置空間への液体の浸入を防止するための外周側シール部材が配置される外周側シール配置凹部が形成されていることを特徴とする(1)から(5)のいずれかに記載のハンド。
(7)前記シール部材として、前記軸部の軸方向において互いに間隔をあけた状態で配置される第1シール部材および第2シール部材の2個の前記シール部材を備え、
前記軸部の軸方向において前記押付部が配置される側を第1方向側とし、前記第1方向側の反対側を第2方向側とすると、
前記第1シール部材は、前記第2シール部材よりも前記第1方向側に配置され、
前記第1シール部材は、オムニシールであり、
前記第2シール部材は、UパッキンまたはVパッキンであり、
前記シール保持部材は、前記第2シール部材が配置される内周側シール配置凹部が内周側に形成される筒状のシール保持部材本体と、前記第1方向側から前記シール保持部材本体の内周側に挿入される筒状の挿入部を有するカバー部材とを備え、
前記カバー部材は、前記シール保持部材本体と別体で形成されるとともに、前記シール保持部材本体に対して着脱可能になっており、
前記シール保持部材本体の内周側には、前記第1シール部材の、前記第2方向側への移動を規制する第1規制面が形成され、
前記挿入部の前記第2方向側の端面は、前記第1シール部材の、前記第1方向側への移動を規制する第2規制面となっていることを特徴とする(6)記載のハンド。
(8)(1)から(7)のいずれかに記載のハンドと、前記ハンドが連結されるアームと、前記アームが連結される本体部とを備えることを特徴とする産業用ロボット。
【符号の説明】
【0068】
1 ロボット(産業用ロボット)
2 ウエハ(半導体ウエハ、搬送対象物)
3 ハンド
4 アーム
5 本体部
15 搭載部
16 搭載支持部
16a 抜き穴
19 保持機構
20 シール部材(第1シール部材)
21 シール部材(第2シール部材)
22 気体供給機構
25 端面当接部材
25a 当接面
26 ローラ部(押付部)
27 押付部材
28 駆動機構
32 軸部
32a 外部配置部
41 シール保持部材
41a 軸配置穴
41c シール配置凹部(内周側シール配置凹部)
41d シール配置凹部(外周側シール配置凹部)
42 支持部本体
42b シール保持部材配置穴
45 シール部材(外周側シール部材)
47 シール保持部材本体
47a 段差面(第1規制面)
48 カバー部材
48a 挿入部
48b 後端面(挿入部の第2方向側の端面、第2規制面)
S 配置空間
X1 第1方向側
X2 第2方向側
図1
図2
図3
図4