(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024077374
(43)【公開日】2024-06-07
(54)【発明の名称】インク供給装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/175 20060101AFI20240531BHJP
B41J 2/18 20060101ALI20240531BHJP
【FI】
B41J2/175 111
B41J2/18
B41J2/175 501
B41J2/175 503
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022189436
(22)【出願日】2022-11-28
(71)【出願人】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100135013
【弁理士】
【氏名又は名称】西田 隆美
(72)【発明者】
【氏名】浅田 和彦
(72)【発明者】
【氏名】山下 真祐
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA26
2C056EB20
2C056EB30
2C056EB51
2C056FA13
2C056FA14
2C056HA42
2C056KB16
(57)【要約】 (修正有)
【課題】タンク内の沈殿物のヘッドへの侵入を効率良く除去できる技術を提供する。
【解決手段】このインク供給装置は、複数のヘッドに供給するインクを貯留する供給リザーバと、供給リザーバからインクを排出する排出配管とを有する。供給リザーバは、複数のヘッドに連通する複数の供給ポートを有する筒状の第1水平リザーバ51と、第1水平リザーバ51の一端と連通する第1開口を側面に有する第1垂直リザーバとを有する。第1水平リザーバ51の底面は、一端から他端に向かって下へ向かうように、水平方向に対して0.3°以上の傾斜角で傾斜し、第1水平リザーバは、他端の底部に、排出配管と連通接続する第1排出口を有する。これにより、第1水平リザーバ51内の沈殿物は、傾斜する底面に沿って移動し、第1排出口のある他端の最下点に集まることにより、効率良く第1水平リザーバ51内の沈殿物を排出することができる。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクジェット式の印刷装置において、複数のヘッドにインクを供給するインク供給装置であって、
複数の前記ヘッドに供給する前記インクを貯留する、供給リザーバと、
ポンプを有し、前記供給リザーバから前記インクを排出する排出配管と、
を有し、
前記供給リザーバは、
複数の前記ヘッドの並ぶ方向に沿って延びる筒状であり、複数の前記ヘッドのそれぞれに連通する複数の供給ポートを有する、第1水平リザーバと、
前記第1水平リザーバの一端と直接または間接的に連通する第1開口を側面に有し、前記第1水平リザーバよりも上下方向に大きい有底筒状の第1垂直リザーバと、
を有し、
前記第1水平リザーバの底面は、前記一端から他端に向かって下へ向かうように、水平方向に対して0.3°以上の傾斜角で傾斜し、
前記第1水平リザーバは、前記他端の底部に、前記排出配管と連通接続する第1排出口を有する、インク供給装置。
【請求項2】
請求項1に記載のインク供給装置であって、
前記第1垂直リザーバは、その底部の最下点に、前記排出配管と連通接続する第2排出口を有する、インク供給装置。
【請求項3】
請求項2に記載のインク供給装置であって、
前記第1垂直リザーバは、平面状の底面を有し、
前記第1垂直リザーバの底面は、前記第1水平リザーバから離れるにつれて上へ向かうように、水平方向に対して0.3°以上の傾斜角で傾斜し、
前記第1垂直リザーバの前記第1水平リザーバ側の端部の底部に、前記第2排出口を有する、インク供給装置。
【請求項4】
請求項1に記載のインク供給装置であって、
インクジェット式の印刷装置において、複数のヘッドにインクを供給するインク供給装置であって、
複数の前記ヘッドから回収した前記インクを貯留する、回収リザーバ
をさらに有し、
前記回収リザーバは、
複数の前記ヘッドの並ぶ方向に沿って延びる筒状であり、複数の前記ヘッドのそれぞれに連通する複数の回収ポートを有する、第2水平リザーバと、
前記第2水平リザーバの一端と直接または間接的に連通する第2開口を側面に有し、前記第2水平リザーバよりも上下方向に大きい有底筒状の第2垂直リザーバと、
を有し、
前記第2水平リザーバの底面は、前記一端から他端に向かって下へ向かうように、水平方向に対して0.3°以上の傾斜角で傾斜し、
前記第2水平リザーバは、前記他端の底部に、前記排出配管と連通接続する第3排出口を有する、インク供給装置。
【請求項5】
請求項4に記載のインク供給装置であって、
前記第2垂直リザーバは、その底部の最下点に、前記排出配管と連通接続する第4排出口を有する、インク供給装置。
【請求項6】
請求項5に記載のインク供給装置であって、
前記第2垂直リザーバは、平面状の底面を有し、
前記第2垂直リザーバの底面は、前記第2水平リザーバから離れるにつれて上へ向かうように、水平方向に対して0.3°以上の傾斜角で傾斜し、
前記第2垂直リザーバの前記第2水平リザーバ側の端部の底部に、前記第4排出口を有する、インク供給装置。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6のいずれか一項に記載のインク供給装置であって、
複数の前記供給ポートはそれぞれ、
前記第1水平リザーバの底面を上下に貫通して連通させる第1筒状部
を有し、
前記第1筒状部の上端部は、前記第1水平リザーバの底面よりも上方に位置し、
前記第1筒状部の下端部は、前記ヘッドと連結する配管に連通接続される、インク供給装置。
【請求項8】
請求項4ないし請求項6のいずれか一項に記載のインク供給装置であって、
複数の前記回収ポートはそれぞれ、
前記第2水平リザーバの底面を上下に貫通して連通させる第2筒状部
を有し、
前記第2筒状部の上端部は、前記第2水平リザーバの底面よりも上方に位置し、
前記第2筒状部の下端部は、前記ヘッドと連結する配管に連通接続される、インク供給装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット式の印刷装置において、複数のヘッドにインクを供給するインク供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット式の印刷装置において使用されるインクの中には、インクの成分が凝集して、沈殿物が生じやすい種類のものがある。例えば、軟包装用のインクには、水性顔料型の凝集の生じやすいインクが用いられる。
【0003】
インクジェット式の印刷装置では、ヘッドに設けられたノズルにおいてインクが外気に触れるため、印刷を行わないノズルにおいて、溶媒が蒸発して凝集が生じやすくなる。このため、ヘッドへインクを供給するとともにヘッドからインクを回収する循環方式を採用することにより、ヘッド内におけるインクの滞留を抑制し、ノズルにおける凝集を抑制している。循環方式を採用した印刷装置は、例えば、特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の印刷装置には、水平方向に配列されたヘッドの上方に配置され、ヘッドにインクを供給する水平リザーバ(横型タンク512)と、水平リザーバと連通接続され、水平リザーバよりも上下方向に長い垂直リザーバ(縦型タンク511)とが備えられている。水平リザーバ内にはインクが充填され、垂直リザーバ内には、上部に気体層が形成されている。
【0006】
上記の構造において、時間の経過とともに、僅かなインクの凝集が蓄積し、水平リザーバおよび垂直リザーバのそれぞれの底部に、凝集物が沈殿する。このような沈殿物がヘッドへ侵入しないように、沈殿物を除去することが望ましい。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みなされたものであり、リザーバ内の沈殿物のヘッドへの侵入を効率良く除去できる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本願の第1発明は、インクジェット式の印刷装置において、複数のヘッドにインクを供給するインク供給装置であって、複数の前記ヘッドに供給する前記インクを貯留する、供給リザーバと、ポンプを有し、前記供給リザーバから前記インクを排出する排出配管と、を有し、前記供給リザーバは、複数の前記ヘッドの並ぶ方向に沿って延びる筒状であり、複数の前記ヘッドのそれぞれに連通する複数の供給ポートを有する、第1水平リザーバと、前記第1水平リザーバの一端と直接または間接的に連通する第1開口を側面に有し、前記第1水平リザーバよりも上下方向に大きい有底筒状の第1垂直リザーバと、を有し、前記第1水平リザーバの底面は、前記一端から他端に向かって下へ向かうように、水平方向に対して0.3°以上の傾斜角で傾斜し、前記第1水平リザーバは、前記他端の底部に、前記排出配管と連通接続する第1排出口を有する。
【0009】
本願の第2発明は、第1発明のインク供給装置であって、前記第1垂直リザーバは、その底部の最下点に、前記排出配管と連通接続する第2排出口を有する。
【0010】
本願の第3発明は、第2発明のインク供給装置であって、前記第1垂直リザーバは、平面状の底面を有し、前記第1垂直リザーバの底面は、前記第1水平リザーバから離れるにつれて上へ向かうように、水平方向に対して0.3°以上の傾斜角で傾斜し、前記第1垂直リザーバの前記第1水平リザーバ側の端部の底部に、前記第2排出口を有する。
【0011】
本願の第4発明は、第1発明のインク供給装置であって、インクジェット式の印刷装置において、複数のヘッドにインクを供給するインク供給装置であって、複数の前記ヘッドから回収した前記インクを貯留する、回収リザーバをさらに有し、前記回収リザーバは、複数の前記ヘッドの並ぶ方向に沿って延びる筒状であり、複数の前記ヘッドのそれぞれに連通する複数の回収ポートを有する、第2水平リザーバと、前記第2水平リザーバの一端と直接または間接的に連通する第2開口を側面に有し、前記第2水平リザーバよりも上下方向に大きい有底筒状の第2垂直リザーバと、を有し、前記第2水平リザーバの底面は、前記一端から他端に向かって下へ向かうように、水平方向に対して0.3°以上の傾斜角で傾斜し、前記第2水平リザーバは、前記他端の底部に、前記排出配管と連通接続する第3排出口を有する。
【0012】
本願の第5発明は、第4発明のインク供給装置であって、前記第2垂直リザーバは、その底部の最下点に、前記排出配管と連通接続する第4排出口を有する。
【0013】
本願の第6発明は、第5発明のインク供給装置であって、前記第2垂直リザーバは、平面状の底面を有し、前記第2垂直リザーバの底面は、前記第2水平リザーバから離れるにつれて上へ向かうように、水平方向に対して0.3°以上の傾斜角で傾斜し、前記第2垂直リザーバの前記第2水平リザーバ側の端部の底部に、前記第4排出口を有する。
【0014】
本願の第7発明は、第1発明ないし第6発明のいずれか一発明のインク供給装置であって、複数の前記供給ポートはそれぞれ、前記第1水平リザーバの底面を上下に貫通して連通させる第1筒状部を有し、前記第1筒状部の上端部は、前記第1水平リザーバの底面よりも上方に位置し、前記第1筒状部の下端部は、前記ヘッドと連結する配管に連通接続される。
【0015】
本願の第8発明は、第4発明ないし第6発明のいずれか一発明のインク供給装置であって、複数の前記回収ポートはそれぞれ、前記第2水平リザーバの底面を上下に貫通して連通させる第2筒状部を有し、前記第2筒状部の上端部は、前記第2水平リザーバの底面よりも上方に位置し、前記第2筒状部の下端部は、前記ヘッドと連結する配管に連通接続される。
【発明の効果】
【0016】
本願の第1発明から第8発明によれば、第1水平リザーバの底面が傾斜していることにより、第1水平リザーバの底面は、端部に最下点を有する。第1水平リザーバ内の沈殿物は、傾斜する底面に沿って移動し、当該最下点に集まる。その最下点に排出口を設けることにより、効率良く第1水平リザーバ内の沈殿物を排出することができる。
【0017】
特に、本願の第2発明および第3発明によれば、第1垂直リザーバについても、最下点に排出口を設けることにより、効率良く第1垂直リザーバ内の沈殿物を排出することができる。
【0018】
特に、本願の第4発明によれば、第1水平リザーバと同様に、効率良く第2水平リザーバ内の沈殿物を排出することができる。
【0019】
特に、本願の第5発明および第6発明によれば、第2垂直リザーバについても、最下点に排出口を設けることにより、効率良く第2垂直リザーバ内の沈殿物を排出することができる。
【0020】
特に、本願の第7発明によれば、第1水平リザーバの底面に沿って移動する沈殿物が供給ポート内に入るのを抑制できる。したがって、供給ポートを介してヘッド側へ沈殿物が侵入するのを抑制できる。
【0021】
特に、本願の第8発明によれば、第2水平リザーバの底面に沿って移動する沈殿物が回収ポート内に入るのを抑制できる。したがって、供給ポートを介してヘッド側へ沈殿物が侵入するのを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図5】供給リザーバ内の気泡および沈殿物の挙動を示すイメージ図である。
【
図6】回収リザーバ内の気泡および沈殿物の挙動を示すイメージ図である。
【
図7】ヘッドユニットの一部を示した断面図である。
【
図8】ヘッドユニットの一部を示した斜視図である。
【
図11】変形例に係る供給リザーバ内の気泡および沈殿物の挙動を示すイメージ図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0024】
<1.印刷装置の構成>
以下では、本発明の一実施形態に係るインク供給装置1を有する印刷装置9について、
図1を参照しつつ説明する。
図1は、印刷装置9の概略図である。印刷装置9は、装置各部を制御部90により制御することで、長尺帯状の印刷媒体Mを搬送しつつ、塗布処理、印刷処理および乾燥処理を印刷媒体Mに施す。
【0025】
具体的には、この印刷装置9は、軟包装用の長尺帯状のフィルムシートに対してインクジェット方式で水性顔料型インクを吐出する印刷装置である。なお、印刷媒体Mの素材はOPP(oriented polypropylene)やPET(polyethylene terephthalate)等のフィルムである。ただし、印刷媒体Mの素材は、樹脂製のフィルムに限られず、紙等の他の素材であってもよい。なお、印刷媒体Mの2つの面のうち、画像が印刷される面を表面、表面の反対側の面を裏面と称する。
【0026】
印刷装置9は、搬送機構91と、塗布処理部92と、印刷処理部93と、乾燥処理部94とを有する。
【0027】
搬送機構91は、印刷媒体Mを所定の搬送経路に沿って搬送するための装置である。搬送機構91は、繰り出しローラ911と、巻き取りローラ912と、その他の多数の搬送ローラ913を有する。繰り出しローラ911および巻き取りローラ912と、搬送ローラ913の一部とは、モータ等によって回転する回転ローラである。また、搬送ローラ913の他の一部は、印刷媒体Mの動きに従って回転する従動ローラである。
【0028】
印刷装置9の駆動時には、繰り出しローラ911および巻き取りローラ912と、搬送ローラ913の一部の回転ローラとが回転することによって、印刷媒体Mは、繰り出しローラ911から繰り出され、塗布処理部92による塗布処理、印刷処理部93による印刷処理、ならびに乾燥処理部94による乾燥処理を実施された後に、巻き取りローラ912に巻き取られる。なお、
図1中、印刷媒体Mの表面側に、搬送方向を示す矢印を付している。
【0029】
塗布処理部92は、印刷媒体Mの表面に液状のプライマー(塗布液)を塗布するための装置である。塗布処理部92は、パン921と、グラビアローラ922とを有する。パン921には、液状のプライマーが貯留される。グラビアローラ922は、搬送機構91によって搬送される印刷媒体Mの表面にプライマーを塗布するためのローラである。グラビアローラ922は、パン921に貯留されたプライマーに部分的に浸かるように配置される。
【0030】
グラビアローラ922は、表面が下側となるように搬送される印刷媒体Mに対して、外周面にプライマーを保持しつつ回転することにより、印刷媒体Mの表面にプライマーを塗布する。なお、印刷媒体Mの進行方向と、グラビアローラ922の回転方向(
図1中に矢印で示す)とは、逆方向である。すなわち、グラビアローラ922は、いわゆるリバースキス方式でプライマーを印刷媒体Mの表面に塗布する。
【0031】
印刷処理部93は、筐体930と、カラー印刷部931と、白色印刷部932とを有する。筐体930の内部には、カラー印刷部931および白色印刷部932が配置される。カラー印刷部931は、表面が上側となるように搬送される印刷媒体Mに対して、上方から複数色のインクを吐出する。本実施形態では、カラー印刷部931は、互いに異なる色のインクを吐出する4つのヘッドユニット20を有する。カラー印刷部931において吐出されるインクは、例えば、シアン、マゼンタ、イエロー、およびブラックである。白色印刷部932は、表面が上側となるように搬送される印刷媒体Mに対して、上方から白色のインクを吐出する。白色印刷部932は、白色のインクを吐出するヘッドユニット20を1つ有する。
【0032】
ヘッドユニット20と、ヘッドユニット20の有する複数のヘッド21にインクを供給するためのインク供給装置1の詳細な構成については、後述する。
【0033】
なお、印刷処理部93は、さらに、カラー印刷部931の下流側かつ白色印刷部932の上流側と、白色印刷部932の下流側とにそれぞれ、印刷媒体Mの表面に吐出されたインクを乾燥させるプレ乾燥部(図示省略)が設けられている。
【0034】
乾燥処理部94は、印刷処理部93において印刷媒体Mの表面に吐出されたインクを乾燥させる装置である。乾燥処理部94は、筐体である乾燥炉941を有する。乾燥炉941の内部において、搬送機構91によって形成される印刷媒体Mの搬送経路はS字状となっている。なお、搬送機構91は、乾燥炉941内において印刷媒体Mの表面に接触する箇所には搬送ローラ913に代えてエアターンバー914を有する。
【0035】
制御部90は、例えば、CPU等のプロセッサ、RAM等のメモリ、およびハードディスクドライブ等の記憶部を有するコンピュータにより構成される。印刷装置9は、コンピュータプログラムに従って、上述した搬送機構91、塗布処理部92、印刷処理部93、、乾燥処理部94、および後述するインク供給装置1の各部の動作を制御する。これにより、印刷装置9における印刷処理が進行する。
【0036】
<2.インク供給装置の構成>
次に、ヘッドユニット20の有する複数のヘッド21にインクを供給するためのインク供給装置1の構成について、
図2を参照しつつ説明する。
【0037】
図2に示すように、ヘッドユニット20は、水平方向(
図1の紙面に対して直交する方向)に配列された複数のヘッド21を有する。なお、
図2中、回収リザーバ23と接続された、破線で示される複数のヘッド21は、供給リザーバ22と接続された、実線で示される複数のヘッド21と同じものであり、図面の構成上重複して記載されている。
【0038】
インク供給装置1は、インクの貯留部として、ヘッドユニット20の供給リザーバ22および回収リザーバ23と、ドラムタンク31と、バッファタンク32とを有する。また、インク供給装置1は、各貯留部間のインクの輸送手段として、第1輸送部41、第2輸送部42、第3輸送部43、および第4輸送部44を有する。
【0039】
ヘッドユニット20には、複数のヘッド21と、供給リザーバ22と、回収リザーバ23とが備えられている。ヘッド21は、その下部の表面に、印刷媒体Mにインクを吐出する複数の吐出ノズルを有している。
【0040】
供給リザーバ22は、ヘッド21に供給するためのインクを貯留するインク貯留部である。供給リザーバ22は、第1水平リザーバ51と、第1垂直リザーバ52とを有する。
【0041】
第1水平リザーバ51は、複数のヘッド21の並ぶ方向に沿って略水平に延びる筒状の貯留部である。第1水平リザーバ51の一端は、第1垂直リザーバ52と連通接続される。第1水平リザーバ51の他端は、閉塞している。第1水平リザーバ51の底部には、第1水平リザーバ51の内外を上下方向に連通する複数の供給ポート510が設けられている。供給ポート510はそれぞれ、供給ポート510の下方に配置されたヘッド21と供給配管211を介して連通接続される。
【0042】
第1垂直リザーバ52は、有底有蓋筒状の貯留部である。第1垂直リザーバ52は、第1水平リザーバ51よりも上下方向に大きい。第1垂直リザーバ52は、その側面に、第1水平リザーバ51の一端と直接連通する第1開口520を有する。
【0043】
第1垂直リザーバ52は、レベルセンサ521を備えている。レベルセンサ521の検出信号により、制御部90は、供給リザーバ22内のインクの貯留量を判定することができる。なお、レベルセンサ521は、フロート式のレベルセンサであってもよいし、その他の方式のレベルセンサであってもよい。
【0044】
供給リザーバ22において、第1水平リザーバ51にはインクが充填されるとともに、第1垂直リザーバ52には、上部に一定以上の気体層が生じるようにインク貯留量が調整される。第1垂直リザーバ52の気体層は、圧力調整部522と接続される。これにより、第1垂直リザーバ52内の圧力が所定の供給リザーバ用負圧に保たれる。
【0045】
回収リザーバ23は、ヘッド21から回収したインクを貯留するインク貯留部である。回収リザーバ23は、第2水平リザーバ61と、第2垂直リザーバ62とを有する。
【0046】
第2水平リザーバ61は、複数のヘッド21の並ぶ方向に沿って略水平に延びる筒状の貯留部である。第2水平リザーバ61の一端は、第2垂直リザーバ62と連通接続される。第2水平リザーバ61の他端は、閉塞している。第2水平リザーバ61の底部には、第2水平リザーバ61の内外を上下方向に連通する複数の回収ポート610が設けられている。回収ポート610はそれぞれ、回収ポート610の下方に配置されたヘッド21と回収配管212を介して連通接続される。
【0047】
第2垂直リザーバ62は、有底有蓋筒状の貯留部である。第2垂直リザーバ62は、第2水平リザーバ61よりも上下方向に大きい。第2垂直リザーバ62は、その側面に、第2水平リザーバ61の一端と直接連通する第2開口620を有する。
【0048】
第2垂直リザーバ62は、レベルセンサ621を備えている。レベルセンサ621の検出信号により、制御部90は、回収リザーバ23内のインクの貯留量を判定することができる。なお、レベルセンサ621は、フロート式のレベルセンサであってもよいし、その他の方式のレベルセンサであってもよい。
【0049】
回収リザーバ23において、第2水平リザーバ61にはインクが充填されるとともに、第2垂直リザーバ62には、上部に一定以上の気体層が生じるようにインク貯留量が調整される。第2垂直リザーバ62の気体層は、圧力調整部622と接続される。これにより、第2垂直リザーバ62内の圧力が所定の回収リザーバ用負圧に保たれる。回収リザーバ用負圧は、供給リザーバ用負圧よりも小さな圧力である。すなわち、大気圧と回収リザーバ用負圧との差は、大気圧と供給リザーバ用負圧との差よりも大きい。
【0050】
ドラムタンク31は、最もインクの最大貯留量の大きいインクの貯留部である。ドラムタンク31からバッファタンク32を介してヘッドユニット20内の供給リザーバ22および回収リザーバ23へとインクが供給される。
【0051】
バッファタンク32は、一時的にインクを貯留する。バッファタンク32におけるインク貯留量は、ドラムタンク31よりも小さく、かつ、供給リザーバ22および回収リザーバ23よりも大きい。ドラムタンク31およびバッファタンク32は、ヘッドユニット20から離れた領域に配置される。
【0052】
バッファタンク32には、温度センサ321、ヒータ322、レベルセンサ323、および攪拌ユニット324が備えられている。
【0053】
温度センサ321は、バッファタンク32内に貯留されるインクの温度を検出する。ヒータ322は、バッファタンク32の外壁に装着され、バッファタンク32内のインクを加熱する。制御部90は、温度センサ321が検出したインク温度に基づいてヒータ322を制御する。
【0054】
レベルセンサ323は、バッファタンク32内に貯留されたインクの高さを検出し、その検出結果を制御部90に出力する。また、攪拌ユニット324は、バッファタンク32内に貯留されたインクを攪拌し、加熱ムラおよび濃度ムラを防止している。
【0055】
第1輸送部41は、ドラムタンク31からバッファタンク32へインクを輸送する。第1輸送部41は、配管411と、配管411に介挿されるバルブ412、ポンプ413およびバルブ414を有する。配管411の一端は、ドラムタンク31内のインク貯留領域に配置される。配管411の他端は、バッファタンク32の内部と連通する。制御部90によりバルブ412および414が開放されるとともにポンプ413が作動することにより、ドラムタンク31に貯留されたインクが配管411を介してバッファタンク32に送液される。
【0056】
第2輸送部42は、バッファタンク32から回収リザーバ23へインクを輸送する。第2輸送部42は、配管421と、配管421に介挿されるポンプ422、フィルタ423、脱気ガスユニット424およびバルブ425とを有する。配管421の一端は、バッファタンク32内のインク貯留領域に配置される。配管421の他端は、回収リザーバ23の第2垂直リザーバ62の内部と連通する。フィルタ423は、インクに含まれる固形成分(凝集物、沈殿物)を除去する。脱気ガスユニット424は、インクに含まれる気泡や、インクに溶解した気体成分の一部を除去する。制御部90がバルブ425を開放しポンプ422を作動することにより、バッファタンク32に貯留されたインクが配管421を介して第2垂直リザーバ62に送液される。
【0057】
第3輸送部43は、回収リザーバ23から供給リザーバ22へインクを輸送する。第3輸送部43は、配管431と、配管431に改装されるポンプ432、フィルタ433、脱気ガスユニット434とを有する。配管431の一端は回収リザーバ23の第2垂直リザーバ62内のインク貯留領域に配置される。配管431の他端は、供給リザーバ22の第1垂直リザーバ52の内部と連通する。フィルタ433は、インクに含まれる固形成分(凝集物、沈殿物)を除去する。脱気ガスユニット434は、インクに含まれる気泡や、インクに溶解した気体成分の一部を除去する。制御部90がポンプ432を作動することにより、回収リザーバ23の第2垂直リザーバ62に貯留されたインクが配管431を介して供給リザーバ22の第1垂直リザーバ52に送液される。
【0058】
第4輸送部44は、供給リザーバ22からバッファタンク32へインクを輸送する。第4輸送部44は、配管441と、配管441に介挿されるバルブ442およびポンプ443とを有する。配管441の一端は、供給リザーバ22の第1垂直リザーバ52のインク貯留領域に配置される。配管441の他端は、バッファタンク32の内部と連通する。制御部90がポンプ443を作動することにより、供給リザーバ22の第1垂直リザーバ52に貯留されたインクが配管441を介してバッファタンク32に送液される。
【0059】
このような構成により、供給リザーバ22と、複数の供給配管211、ヘッド21および回収配管212と、回収リザーバ23と、第3輸送部43とによって、インクの循環経路が形成される。第3輸送部43のポンプ432を駆動させると、回収リザーバ23の第2垂直リザーバ62から供給リザーバ22の第1垂直リザーバ52内にインクが供給されることにより、第1垂直リザーバ52から、第1水平リザーバ51、複数の供給配管211、ヘッド21および回収配管212、ならびに回収リザーバ23の第2水平リザーバ61を通って、第2垂直リザーバ62へ戻るインクの流れが生じる。当該インク循環経路を、「ヘッドユニット内循環」と称する。
【0060】
なお、上述の通り、回収リザーバ用負圧は、供給リザーバ用負圧よりも小さな圧力である。すなわち、回収リザーバ23の第2水平リザーバ61内の圧力は、供給リザーバ22の第1水平リザーバ51内の圧力と比べて小さい。このため、それぞれのヘッド21について、供給配管211と連通する第1水平リザーバ51の圧力よりも回収配管212と連通する第2水平リザーバ61の圧力の方が小さいため、ヘッド21内において、供給配管211から回収配管212へと向かうインクの流れが生じる。
【0061】
また、バッファタンク32と、第2輸送部42と、回収リザーバ23と、第3輸送部43と、供給リザーバ22と、第4輸送部44とによって、インクの循環経路が形成される。第2輸送部42、第3輸送部43および第4輸送部44における輸送を同時に行うと、バッファタンク32から、第2輸送部42、回収リザーバ23、第3輸送部43、供給リザーバ22、および第4輸送部44を通って、バッファタンク32へ戻るインクの流れが生じる。当該インク循環経路を、「ヘッドユニット外循環」と称する。
【0062】
印刷工程やヘッド21のメンテナンス工程においてヘッド21からインクが吐出され、供給リザーバ22内のインクが減少すると、第1垂直リザーバ52内のインク液面が下がる。このような場合には、レベルセンサ521における検出信号により、制御部90が第1垂直リザーバ52における液面レベルの低下を認識する。すると、制御部90は、レベルセンサ521およびレベルセンサ621において検知される液面レベルが所定範囲となるように、第2輸送部42および第3輸送部43におけるインクの輸送を開始する。なお、ヘッドユニット内循環やヘッドユニット外循環により既にインクの輸送を行っている場合には、制御部90は、第2輸送部42および第3輸送部43におけるインクの輸送量を増加させる。
【0063】
また、バッファタンク32からヘッドユニット20へのインク供給によってバッファタンク32内のインクが減少すると、バッファタンク32内のインク液面が下がる。このような場合には、レベルセンサ323における検出信号により、制御部90がバッファタンク32内における液面レベルの低下を認識する。すると、制御部90は、レベルセンサ323において検知される液面レベルが処置範囲となるように、第1輸送部41におけるインクの輸送を行う。
【0064】
<3.供給リザーバおよび回収リザーバにおける気泡および沈殿物の除去>
続いて、供給リザーバ22および回収リザーバ23における気泡および沈殿物の除去について、
図3~
図8を参照しつつ説明する。
図3は、ヘッドユニット20の斜視図である。
図4は、ヘッドユニット20の側面図である。なお、
図3および
図4において、一部の構成については省略して図示している。
図5は、供給リザーバ22内の気泡および沈殿物の挙動を示すイメージ図である。
図6は、回収リザーバ23内の気泡および沈殿物の挙動を示すイメージ図である。
【0065】
図7は、ヘッドユニット20の一部を示した斜視断面図である。具体的には、
図7には、ヘッドユニット20のうち、供給配管211および回収配管212を含むヘッド21、供給リザーバ22、および回収リザーバ23が示されている。
図8は、ヘッドユニット20の一部を示した斜視図である。具体的には、
図8には、供給リザーバ22、回収リザーバ23、および排出部70が示されている。
【0066】
図3、
図4および
図7に示すように、本実施形態の第1水平リザーバ51は、断面円形の円筒状である。第1水平リザーバ51の断面形状は、第1垂直リザーバ52と接続される一端51aから、閉塞された他端51bまで、一定形状を保っており、円形である。すなわち、第1水平リザーバ51は、他端が閉塞された円筒状である。このため、第1水平リザーバ51の天面(内部の上面)と底面(内部の下面)とは平行である。
【0067】
また、本実施形態の第2水平リザーバ61も、第1水平リザーバ51と同様に、断面円形の円筒状である。第2水平リザーバ61の断面形状は、第2垂直リザーバ62と接続される一端61aから、閉塞された他端61bまで、一定形状を保っており、円形である。すなわち、第2水平リザーバ61は、他端が閉塞された円筒状である。このため、第2水平リザーバ61の天面(内部の上面)と底面(内部の下面)とは平行である。
【0068】
本実施形態の第1垂直リザーバ52および第2垂直リザーバ62は、直方体状の筐体29内に収容されている。第1垂直リザーバ52は、
図2に概念的に示すように、有底有蓋の四角筒状、すなわち直方体状である。第1垂直リザーバ52の底面は平面状であり、筐体29の底面と平行である。また、第2垂直リザーバ62は、
図2に概念的に示すように、有底有蓋の四角筒状、すなわち直方体状である。第2垂直リザーバ62の底面は平面状であり、筐体29の底面と平行である。
【0069】
図4、
図5および
図6に誇張して示すように、供給リザーバ22および回収リザーバ23は、ヘッド21が並ぶ方向(すなわち水平方向)に対して傾斜している。これにより、第1水平リザーバ51の天面および底面、第1垂直リザーバ52の底面、第2水平リザーバ61の天面および底面、ならびに第2垂直リザーバ62の底面が、水平方向に対して傾斜している。
【0070】
具体的には、第1水平リザーバ51は、閉塞した他端51bから、第1垂直リザーバ52と第1開口520を介して接続される一端51aまで、その天面および底面が、他端51bから一端51aに向かって上へ向かうように傾斜する。
【0071】
また、第2水平リザーバ61は、閉塞した他端61bから、第2垂直リザーバ62と第2開口620を介して接続される一端61aまで、その天面および底面が、他端61bから一端61aに向かって上へ向かうように傾斜する。
【0072】
また、第1垂直リザーバ52の底面は、第1水平リザーバ51の底面と平行である。すなわち、第1垂直リザーバ52の底面は、水平方向に対して傾斜している。同様に、第2垂直リザーバ62の底面は、第2水平リザーバ61の底面と平行である。すなわち、第2垂直リザーバ62の底面は、水平方向に対して傾斜している。
【0073】
このように、第1水平リザーバ51の天面が、一端51a側に向かうにつれて上へ向かうように傾斜していることにより、
図5中に概念的に示すように、第1水平リザーバ51内において気泡Bが発生または混入した場合に、気泡Bが天面に沿って一端51aへと向かう。そして、当該気泡Bは、第1開口520を介して第1垂直リザーバ52内へ向かい、第1垂直リザーバ52の上部の気体層に吸収される。これにより、第1水平リザーバ51に、凝集発生の原因となり得る気泡除去用の配管を設けることなく、第1水平リザーバ51内の気泡Bを除去できる。
【0074】
同様に、第2水平リザーバ61の天面が、一端61a側に向かうにつれて上へ向かうように傾斜していることにより、
図6中に概念的に示すように、第2水平リザーバ61内において気泡Bが発生または混入した場合に、気泡Bが天面に沿って一端61aへと向かう。そして、当該気泡Bは、第2開口620を介して第2垂直リザーバ62内へ向かい、第2垂直リザーバ62の上部の気体層に吸収される。これにより、第2水平リザーバ61に、凝集発生の原因となり得る気泡除去用の配管を設けることなく、第2水平リザーバ61内の気泡Bを除去できる。
【0075】
本実施形態のように、他のインクに比べて凝集しやすい水性顔料型のインクを用いる場合、このように凝集発生の原因を低減する構成は、特に有用である。また、本実施形態では、第1水平リザーバ51および第2水平リザーバ61は、樹脂製である。これにより、水性顔料型のインクを用いる場合、第1水平リザーバ51および第2水平リザーバ61が金属製である場合と比べて、インクの凝集が生じにくい。
【0076】
なお、図面中、供給リザーバ22および回収リザーバ23の傾斜角は、
図3および
図4において約1°、
図5および
図6において約5°として示している。第1水平リザーバ51および第2水平リザーバ61の天面の傾斜角は、水平方向に対して0.3°以上であることが好ましい。0.3°以上の角度があることにより、気泡が天面に沿って移動しやすくなる。
【0077】
また、第1水平リザーバ51および第2水平リザーバ61の傾斜角は、水平方向に対して1.5°以下であることが好ましい。本実施形態のように、第1水平リザーバ51が断面形状一定である場合、天面が傾くと底面も併せて傾く。すると、底面に設けられた供給ポート510とヘッド21との距離が、一端51a側と他端51b側とで大きく異なる。このため、供給配管211の長さを一定とすると、他端51b側における供給配管211のたるみが大きくなってしまう。傾斜角が1,5°以下であれば、他端51b側における供給配管211のたるみを抑えることができる。なお、第2水平リザーバ61についても同様である。
【0078】
気泡の移動しやすさ、および、配管211,212の設計上の配置を考慮すると、第1水平リザーバ51および第2水平リザーバ61の傾斜角は、0.5°以上1.0°以下であることがより好ましい。
【0079】
また、第1水平リザーバ51の底面が、一端51aから他端51b側へ向かうにつれて下へ向かうように傾斜していることにより、
図5中に概念的に示すように、第1水平リザーバ51内において底面に沈殿した沈殿物Pが、底面に沿って、底面の最下点である他端51bへと向かう。
【0080】
ここで、
図7および
図7中の拡大図に示すように、第1水平リザーバ51の底面に備えられる供給ポート510は、第1水平リザーバ51の底面を上下に貫通して、第1水平リザーバ51の内外を連通させる第1筒状部510aを有する。第1筒状部510aの上端部は、第1水平リザーバ51の底面(内面)よりも上方に位置する。第1筒状部510aの下端部は、第1水平リザーバ51の外側において、ヘッド21と連結する供給配管211に連通接続される。
【0081】
このように、第1筒状部510aの上端部が第1水平リザーバ51の底面よりも上方に位置することにより、第1水平リザーバ51の底面に沈殿し、底面に沿って他端51b側へと移動する沈殿物が供給ポート510、供給配管211およびヘッド21に侵入するのを抑制できる。
【0082】
同様に、第2水平リザーバ61の底面が、一端61aから他端61b側へ向かうにつれて下へ向かうように傾斜していることにより、第2水平リザーバ61内において底面に沈殿した沈殿物Pが、底面に沿って、底面の最下点である他端61bへと向かう。
【0083】
図7に示すように、第2水平リザーバ61の底面に備えられる回収ポート610は、第2水平リザーバ61の底面を上下に貫通して、第2水平リザーバ61の内外を連通させる第2筒状部610aを有する。第2筒状部610aの上端部は、第2水平リザーバ61の底面(内面)よりも上方に位置する。第2筒状部610aの下端部は、第2水平リザーバ61の外側において、ヘッド21と連結する回収配管212に連通接続される。
【0084】
このように、第2筒状部610aの上端部が第2水平リザーバ61の底面よりも上方に位置することにより、第2水平リザーバ61の底面に沈殿し、底面に沿って他端61b側へと移動する沈殿物が回収ポート610、回収配管212およびヘッド21内に侵入するのを抑制できる。
【0085】
また、第1垂直リザーバ52の底面は、第1開口520側に向かうにつれて下へ向かうように傾斜していることにより、
図5中に概念的に示すように、第1垂直リザーバ52内において底面に沈殿した沈殿物Pが、底面に沿って、底面の最下点である第1開口520側の端部へと向かう。
【0086】
同様に、第2垂直リザーバ62の底面は、第2開口620側に向かうにつれて下へ向かうように傾斜していることにより、
図6中に概念的に示すように、第2垂直リザーバ62内において底面に沈殿した沈殿物Pが、底面に沿って、底面の最下点である第2開口620側の端部へと向かう。
【0087】
このように、第1水平リザーバ51、第1垂直リザーバ52、第2水平リザーバ61および第2垂直リザーバ62のそれぞれ底面が、その底面の最下点に向かって傾斜する形状となっている。したがって、それぞれの最下点に沈殿物Pが集まる。
【0088】
図8に示すように、第1水平リザーバ51は、底面の最下点である他端51b付近において、底面を上下に貫通する第1排出口81を有する。第1垂直リザーバ52は、底面の最下点である第1開口520側の端部付近において、底面を上下に貫通する第2排出口82を有する。第2水平リザーバ61は、底面の最下点である他端61b付近において、底面を上下に貫通する第3排出口83を有する。第2垂直リザーバ62は、底面の最下点である第2開口620側の端部付近において、底面を上下に貫通する第4排出口84を有する。このように、それぞれ、沈殿物が集まる底面の最下点付近に、沈殿物を排出するための排出口が設けられている。
【0089】
インク供給装置1は、第1水平リザーバ51、第1垂直リザーバ52、第2水平リザーバ61および第2垂直リザーバ62に溜まった沈殿物を排出するための排出部70を有する。
【0090】
図8に示すように、排出部70は、第1排出配管71、第2排出配管72、第1電磁弁73、第2電磁弁74、第3排出配管75、排出ポンプ76、ドレン出口77および雫受け78を有する。
【0091】
第1排出配管71は、第1流入口711と、第2流入口712と、流出口713(図示省略)と、配管部714とを有する。第1流入口711は、第1水平リザーバ51の第1排出口81に接続される。第2流入口712は、第2水平リザーバ61の第3排出口83に接続される。流出口713は、第1電磁弁73の入力側に接続される。配管部714はY字状に分岐するため、第1流入口711および第2流入口712からそれぞれ流入した液体は、合流して流出口713から流出する。
【0092】
図9および
図10に示すように、第2排出配管72は、第1流入口721と、第2流入口722と、流出口723と、配管部724とを有する。第1流入口721は、第1垂直リザーバ52の第2排出口82に接続される。第2流入口722は、第2垂直リザーバ62の第4排出口84に接続される。流出口723は、第2電磁弁74の入力側に接続される。配管部724はY字状に分岐するため、第1流入口721および第2流入口722からそれぞれ流入した液体は、合流して流出口723から流出する。
【0093】
第3排出配管75は、第1流入口751と、第2流入口752と、流出口753と、配管部754とを有する。第1流入口751は、第1電磁弁73の出力側に接続される。第2流入口752は、第2電磁弁74の出力側に接続される。配管部754はY字状に分岐するため、第1流入口751および第2流入口752からそれぞれ流入した液体は、合流して流出口753から流出する。なお、第1電磁弁73および第2電磁弁74のいずれか一方のみが開放されている場合には、第1流入口751および第2流入口752のいずれか一方のみから液体が流入し、流出口753から流出する。
【0094】
排出ポンプ76は、フレキシブルな配管をローラでしごくことにより、配管内に流体の流れを発生させる、いわゆるチューブポンプである。排出ポンプ76にこのようなチューブポンプを使用することより、配管内を流れるインクが沈殿物を含む場合であっても、動作不良を起こすことなく、沈殿物を含めて送り出すことができる。
【0095】
排出ポンプ76は、第3排出配管75の配管部754のうち、Y字状分岐よりも流出口753側に取り付けられる。これにより、排出ポンプ76を駆動させると、第3排出配管75には、第1流入口751から流出口753へ向かうインクの流れと、第2流入口752から流出口753へ向かうインクの流れとが生じる。
【0096】
また、第3排出配管75の流出口753は、ドレン出口77に接続される。ドレン出口77は、下方に向かってインクを排出するように備えられている。ドレン出口77の下方には、皿状の雫受け78が備えられている。雫受け78は、雫受け移動機構780により、ドレン出口77の真下に位置する雫受け位置(
図9の位置)と、ドレン出口77と上下に重ならない退避位置(図示省略)との間で移動する。雫受け移動機構780には、例えば、エアシリンダが用いられる。
【0097】
本実施形態では、排出部70によるインクの排出処理を行う場合には、水平リザーバ51,61からのインクの排出と、垂直リザーバ52,62からのインクの排出とを別々に行う。その手順は以下のとおりである。
【0098】
まず、第1電磁弁73を開放しつつ、排出ポンプ76を駆動させる。第1電磁弁73の開放により、第1排出配管71の流出口713と、第3排出配管75の第1流入口751とが、第1電磁弁73を介して連通する。そして、排出ポンプ76の駆動によって第3排出配管75には、第1流入口751から流出口753へ向かうインクの流れが生じる。これにより、第1排出配管71内に第1流入口711および第2流入口712から流出口713へ向かう流体の流れが生じる。その結果、第1排出配管71の第1流入口711と接続される第1水平リザーバ51の第1排出口81と、第1排出配管71の第2流入口712と接続される第2水平リザーバ61の第3排出口83とから、沈殿物を含むインクが吸引され、ドレン出口77から排出される。所定時間経過後、第1電磁弁73を閉鎖する。このとき、排出ポンプ76は停止してもよいし、駆動させたままでもよい。
【0099】
その後、第2電磁弁74を開放しつつ、排出ポンプ76を駆動させる。第2電磁弁74の開放により、第2排出配管72の流出口723と、第3排出配管75の第2流入口752とが、第2電磁弁74を介して連通する。そして、排出ポンプ76の駆動によって第3排出配管75には、第2流入口752から流出口753へ向かうインクの流れが生じる。これにより、第2排出配管72内に第1流入口721および第2流入口722から流出口723へ向かう流体の流れが生じる。その結果、第2排出配管72の第1流入口721と接続される第1垂直リザーバ52の第2排出口82と、第2排出配管72の第2流入口722と接続される第2垂直リザーバ62の第4排出口84とから、沈殿物を含むインクが吸引され、ドレン出口77から排出される。所定時間経過後、第2電磁弁74を閉鎖するとともに、排出ポンプ76を停止する。このように、インクの排出処理を行う。
【0100】
排出部70によるインクの排出処理は、印刷装置9における印刷処理の休止時に行われる。印刷処理の休止時には、例えば、ヘッドユニット20の下方に、排出されたインクを受けるキャップが配置される。そして、ヘッドユニット20のメンテナンスとして、ヘッド21からパージ処理等のインクの吐出を行ったり、排出部70によるインクの排出処理を行ったりする。このため、排出部70によるインクの排出処理を行う際には、雫受け78を退避位置に配置し、ドレン出口77から排出されるインクがキャップへ向かうようにする。その後、印刷処理を行う場合には、ヘッドユニット20とキャップが離間し、ヘッドユニット20は印刷媒体M上に配置される。このとき、雫受け78を雫受け位置へと配置する。これにより、ドレン出口77の周囲に付着したインクが下方に配置された印刷媒体Mへと落下するのが抑制される。
【0101】
<4.変形例>
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記の実施形態に限定されるものではない。
【0102】
上記の実施形態では、水平リザーバ51,61の一端51a,61aが、垂直リザーバ52,62と開口520,620を介して直接連通していたが、本発明はこれに限られない。水平リザーバ51,61の一端51a,61aは、接続配管等を介して間接的に連通しても良い。
【0103】
図11は、変形例に係る供給リザーバ22M内の気泡および沈殿物の挙動を示すイメージ図である。この供給リザーバ22Mでは、第1水平リザーバ51Mの一端51Maと、第1垂直リザーバ52Mの有する第1開口520Mとが、接続配管53Mを介して連通接続される。
【0104】
図11の例では、第1水平リザーバ51Mの天面と、接続配管53Mの天面とは、第1水平リザーバ51Mの他端51Mbから第1開口520Mまで同じ傾斜角度で続いている。これにより、第1水平リザーバ51Mの他端51Mbから第1開口520Mまでの天面が、第1水平リザーバ51Mの他端51Mbから一端51Maへ向かうにつれて上へ向かうように、水平方向に対して所定の傾斜角で傾斜している。このようにすれば、第1水平リザーバ51Mと第1垂直リザーバ52Mとが、接続配管53Mを介して間接的に連通接続される場合であっても、第1水平リザーバ51M内の気泡が、第1水平リザーバ51Mの天面および接続配管53Mの天面に沿って第1開口520を介して第1垂直リザーバ52M内へと移動できる。
【0105】
また、上記の実施形態では、垂直リザーバ52,62の底面が水平方向に対して傾斜した平面状であった。このため、底面の最下点は、垂直リザーバ52,62の底面の端部となり、排出口82,84が垂直リザーバ52,62の端部付近に設けられていた。しかしながら、垂直リザーバ52,62の底面は平面状に限られない。例えば、底面が、中央に向かうにつれて下方へ向かう漏斗状であって、底面中央が最下点となり、底面中央に排出口が設けられてもよい。
【0106】
また、上記の実施形態では、インクとして水性の顔料型インクを用いたが、本発明はこれに限られない。インクは、油性インクであってもよいし、染料インクであってもよい。
【0107】
また、上記の実施形態では、印刷装置9が塗布処理部92や乾燥処理部94を有していたが、本発明はこれに限られない。本発明のインク供給装置は、印刷処理のみを行う印刷装置に用いられてもよい。
【0108】
また、上記の実施形態や変形例に登場した各要素を、矛盾が生じない範囲で、適宜に組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0109】
1 インク供給装置
9 印刷装置
20 ヘッドユニット
21 ヘッド
22,22M 供給リザーバ
23 回収リザーバ
51,51M 第1水平リザーバ
51a,51Ma 第1水平リザーバの一端
51b,51Mb 第1水平リザーバの他端
52,52M 第1垂直リザーバ
53M 接続配管
61 第2水平リザーバ
61a 第2水平リザーバの一端
61b 第2水平リザーバの他端
62 第2垂直リザーバ
70 排出部
71 第1排出配管
72 第2排出配管
75 第3排出配管
76 排出ポンプ
211 供給配管
212 回収配管
510 供給ポート
510a 第1筒状部
520,520M 第1開口
610 回収ポート
610a 第2筒状部
620 第2開口