(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024077379
(43)【公開日】2024-06-07
(54)【発明の名称】屋上またはバルコニーの壁部の断熱防水構造および断熱防水施工方法
(51)【国際特許分類】
E04B 2/56 20060101AFI20240531BHJP
E04B 1/76 20060101ALI20240531BHJP
E04B 1/80 20060101ALI20240531BHJP
E04B 1/64 20060101ALI20240531BHJP
【FI】
E04B2/56 644B
E04B1/76 500D
E04B1/76 500F
E04B1/80 Z
E04B1/64 C
E04B2/56 644C
E04B2/56 645B
【審査請求】未請求
【請求項の数】21
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022189442
(22)【出願日】2022-11-28
(71)【出願人】
【識別番号】000217365
【氏名又は名称】田島ルーフィング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100108903
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 和広
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100208225
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 修二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100217179
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 智史
(74)【代理人】
【識別番号】100093665
【弁理士】
【氏名又は名称】蛯谷 厚志
(72)【発明者】
【氏名】関根 治之
(72)【発明者】
【氏名】杉本 牧彌
(72)【発明者】
【氏名】冨岡 祐介
【テーマコード(参考)】
2E001
2E002
【Fターム(参考)】
2E001DA03
2E001DD01
2E001FA04
2E001GA12
2E001GA24
2E001HD01
2E001HE03
2E001KA01
2E001MA02
2E001MA13
2E002MA23
2E002MA24
2E002MA32
(57)【要約】
【課題】発泡ウレタンの充填を含まない屋上またはバルコニーの壁部(外断熱)の断熱防水構造および断熱防水施工方法を提供する。
【解決手段】断熱防水構造1は、外壁2、外壁の下方に位置する立上り部3、外壁の下面と立上り部の上面との間の空間4、外壁および立上り部を支持する躯体5の表面のうち前記空間に接する表面と立上り部の上面と立上り部の外側面とを覆う防水材6、前記空間内に着脱可能に配置された断熱材ブロック7、ならびに断熱材ブロックを包囲するように設けられた水切り金物8を含み、好ましくは、断熱材ブロックは断熱材ブロック固定部材9によって躯体に固定され、断熱材ブロック固定部材はねじ11によって躯体に取り付けられ、外壁の下面と水切り金物の上面との間にシール材10が充填されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
屋上またはバルコニーの壁部の断熱防水構造であって、断熱防水構造は、外壁、外壁の下方に位置する立上り部、外壁の下面と立上り部の上面との間の空間、外壁および立上り部を支持する躯体の表面のうち前記空間に接する表面と立上り部の上面と立上り部の外側面とを覆う防水材、前記空間内に着脱可能に配置された断熱材ブロック、ならびに断熱材ブロックを包囲するように設けられた水切り金物を含む、断熱防水構造。
【請求項2】
外壁が外壁材および断熱材を含む、請求項1に記載の断熱防水構造。
【請求項3】
外壁の断熱材が、ポリスチレン系発泡体、ポリウレタン系発泡体またはフェノールフォームを含み、25~200mmの厚みを有する、請求項2に記載の断熱防水構造。
【請求項4】
立上り部が断熱材を含む、請求項1に記載の断熱防水構造。
【請求項5】
立上り部の断熱材が、ポリスチレン系発泡体、ポリウレタン系発泡体またはフェノールフォームを含み、25~200mmの厚みを有する、請求項4に記載の断熱防水構造。
【請求項6】
前記空間が50~150mmの高さを有する、請求項1に記載の断熱防水構造。
【請求項7】
水切り金物は、上板部と、上板部の屋外側端辺から下方に垂下する屋外側縦板部と、上板部の屋内側端辺から上方に延びる屋内側縦板部とを含み、0.23~2.3mmの厚みを有する亜鉛メッキ鋼板、溶融55%アルミニウム-亜鉛合金めっき鋼板またはステンレス鋼板で構成されている、請求項1に記載の断熱防水構造。
【請求項8】
水切り金物の上板部の幅が25~200mmであり、屋外側縦板部の高さが40~200mmであり、屋内側縦板部の高さが10~50mmである、請求項7に記載の断熱防水構造。
【請求項9】
断熱材ブロックが、ポリスチレン系発泡体、ポリウレタン系発泡体またはフェノールフォームを含み、25~200mmの厚みを有する、請求項1に記載の断熱防水構造。
【請求項10】
断熱材ブロックが、断熱材ブロックを保持し得る断熱材ブロック固定部材によって、躯体に固定されている、請求項1に記載の断熱防水構造。
【請求項11】
断熱材ブロック固定部材は、上板部と、上板部の屋外側端辺から下方に垂下する屋外側縦板部と、屋外側縦板部の下端辺から屋内方向に延びる下板部と、上板部の屋内側端辺から上方に延びる屋内側縦板部とを含み、
断熱材ブロック固定部材は、断熱材ブロックの上面が上板部に対向し、断熱材ブロックの外側面が屋外側縦板部に対向し、断熱材ブロックの下面の少なくとも一部が下板部に対向するように、断熱材ブロックを保持し、屋内側縦板部が躯体に対向するように、断熱材ブロック固定部材が躯体に取り付けられている、請求項10に記載の断熱防水構造。
【請求項12】
断熱材ブロック固定部材の上板部の幅が25~200mmであり、屋外側縦板部の高さが40~140mmであり、下板部の幅が3~100mmであり、屋内側縦板部の高さが10~50mmである、請求項11に記載の断熱防水構造。
【請求項13】
断熱材ブロック固定部材は、ねじによって躯体に取り付けられている、請求項10に記載の断熱防水構造。
【請求項14】
断熱材ブロック固定部材は、0.23~5.0mmの厚みを有する金属または樹脂の板で構成されている、請求項10に記載の断熱防水構造。
【請求項15】
防水材が、アスファルト系防水シート、ポリ塩化ビニル系防水シートまたはポリウレタン系防水である、請求項1に記載の断熱防水構造。
【請求項16】
防水材が、さらに、屋上またはバルコニーの平場部または平場部断熱材を覆う、請求項1に記載の断熱防水構造。
【請求項17】
断熱防水構造が、さらに、外壁の下面と水切り金物の上面との間に充填されたシール材を含む、請求項1に記載の断熱防水構造。
【請求項18】
シール材が変成シリコーン系シール材である、請求項17に記載の断熱防水構造。
【請求項19】
外壁、外壁の下方に位置する立上り部、および外壁の下面と立上り部の上面との間の空間を有する屋上またはバルコニーの壁部の断熱防水施工方法であって、前記方法は、
外壁および立上り部を支持する躯体の表面のうち前記空間に接する表面と、立上り部の上面と、立上り部の外側面とに、防水材を貼り付ける工程、
前記空間内に断熱材ブロックを着脱可能に配置する工程、および
断熱材ブロックの上面および外側面を包囲するように水切り金物を取り付ける工程
を含む、断熱防水施工方法。
【請求項20】
断熱防水施工方法が、さらに、外壁の下面と水切り金物の上面との間にシール材を充填する工程を含む、請求項19に記載の断熱防水施工方法。
【請求項21】
前記空間内に断熱材ブロックを着脱可能に配置する工程が、断熱材ブロックを保持し得る断熱材ブロック固定部材に断熱材ブロックを保持させる工程、および断熱材ブロック固定部材を躯体に固定する工程を含む、請求項19に記載の断熱防水施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屋上またはバルコニーの壁部の断熱防水構造および断熱防水施工方法に関する。より詳しくは、本発明は、寒冷地において多くみられる外断熱を採用した屋上またはバルコニーの壁部の断熱防水構造および断熱防水施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
バルコニーの立上り部と外壁(外装部材)との取り合い部などには、通気空間が形成される。この通気空間には、躯体側への浸水を防止するために、水切具が配置される。また、通常、水切具は通気性も必要であるため、通気空間に隣接する(露出する)壁面には、防水シートが貼り付けられる。この場合、水切具は、通気空間の屋外側を覆うように取り付けられるため、防水シートが貼り付けられてから、防水シート上に取り付けられる(特許文献1)。
【0003】
北海道等の寒冷地においては、壁部の外断熱が多くみられるが、今後高断熱化が進むことで、壁部の外断熱はより広範囲の地域にて採用されることが想定される。
壁部の外断熱に関し、特に屋上、バルコニー等での防水と壁部(外断熱)との取り合いの例として、
図2に示すものが知られている。
図2の断熱防水構造50は、立上り断熱材51と断熱工法による外壁52の間に水切り金物53が配置され、外壁52は外壁材52aと断熱材52bで構成され、床面断熱材54の上面ならびに立上り断熱材51の外側面および上面にアスファルト防水層55が設けられ、外壁52の下面と水切り金物53の間および立上り断熱材51の上面と水切り金物53の間に発泡ウレタン56が充填されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図2の断熱防水構造50においては、アスファルト防水層55の施工は外壁52よりも先に実施する必要があるので、工程調整が難しく、また、発泡ウレタン充填・形成が煩雑(湿式工事となり技能が必要であり、かつ、充填後に手作業により成型が必要)であり、さらに、次期防水改修時に一部外壁材の撤去および発泡ウレタンの撤去ならびに再施工が必要であるが、発泡ウレタンは被着体への接着性が良好のため、撤去が困難であり、かつ撤去時の粉塵飛散のリスクがある、という問題点がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、
図2の断熱防水構造における発泡ウレタンに代えて、断熱材ブロックを用いることにより、上記問題点を解決したものである。
本発明(I)は、屋上またはバルコニーの壁部の断熱防水構造であって、断熱防水構造は、外壁、外壁の下方に位置する立上り部、外壁の下面と立上り部の上面との間の空間、外壁および立上り部を支持する躯体の表面のうち前記空間に接する表面と立上り部の上面と立上り部の外側面とを覆う防水材、前記空間内に着脱可能に配置された断熱材ブロック、ならびに断熱材ブロックを包囲するように設けられた水切り金物を含むことを特徴とする。
本発明(II)は、外壁、外壁の下方に位置する立上り部、および外壁の下面と立上り部の上面との間の空間を有する屋上またはバルコニーの壁部の断熱防水施工方法であって、前記方法は、
外壁および立上り部を支持する躯体の表面のうち前記空間に接する表面と、立上り部の上面と、立上り部の外側面とに、防水材を貼り付ける工程、
前記空間内に断熱材ブロックを着脱可能に配置する工程、および
断熱材ブロックの上面および外側面を包囲するように水切り金物を取り付ける工程
を含むことを特徴とする。
【0007】
本発明は、次の実施態様を含む。
[1]屋上またはバルコニーの壁部の断熱防水構造であって、断熱防水構造は、外壁、外壁の下方に位置する立上り部、外壁の下面と立上り部の上面との間の空間、外壁および立上り部を支持する躯体の表面のうち前記空間に接する表面と立上り部の上面と立上り部の外側面とを覆う防水材、前記空間内に着脱可能に配置された断熱材ブロック、ならびに断熱材ブロックを包囲するように設けられた水切り金物を含む、断熱防水構造。
[2]外壁が外壁材および断熱材を含む、[1]に記載の断熱防水構造。
[3]外壁の断熱材が、ポリスチレン系発泡体、ポリウレタン系発泡体またはフェノールフォームを含み、25~200mmの厚みを有する、[2]に記載の断熱防水構造。
[4]立上り部が断熱材を含む、[1]~[3]のいずれかに記載の断熱防水構造。
[5]立上り部の断熱材が、ポリスチレン系発泡体、ポリウレタン系発泡体またはフェノールフォームを含み、25~200mmの厚みを有する、[4]に記載の断熱防水構造。
[6]前記空間が50~150mmの高さを有する、[1]~[5]のいずれかに記載の断熱防水構造。
[7]水切り金物は、上板部と、上板部の屋外側端辺から下方に垂下する屋外側縦板部と、上板部の屋内側端辺から上方に延びる屋内側縦板部とを含み、0.23~2.3mmの厚みを有する亜鉛メッキ鋼板、溶融55%アルミニウム-亜鉛合金めっき鋼板またはステンレス鋼板で構成されている、[1]~[6]のいずれかに記載の断熱防水構造。
[8]水切り金物の上板部の幅が25~200mmであり、屋外側縦板部の高さが40~200mmであり、屋内側縦板部の高さが10~50mmである、[7]に記載の断熱防水構造。
[9]断熱材ブロックが、ポリスチレン系発泡体、ポリウレタン系発泡体またはフェノールフォームを含み、25~200mmの厚みを有する、[1]~[8]のいずれかに記載の断熱防水構造。
[10]断熱材ブロックが、断熱材ブロックを保持し得る断熱材ブロック固定部材によって、躯体に固定されている、[1]~[9]のいずれかに記載の断熱防水構造。
[11]断熱材ブロック固定部材は、上板部と、上板部の屋外側端辺から下方に垂下する屋外側縦板部と、屋外側縦板部の下端辺から屋内方向に延びる下板部と、上板部の屋内側端辺から上方に延びる屋内側縦板部とを含み、
断熱材ブロック固定部材は、断熱材ブロックの上面が上板部に対向し、断熱材ブロックの外側面が屋外側縦板部に対向し、断熱材ブロックの下面の少なくとも一部が下板部に対向するように、断熱材ブロックを保持し、屋内側縦板部が躯体に対向するように、断熱材ブロック固定部材が躯体に取り付けられている、[10]に記載の断熱防水構造。
[12]断熱材ブロック固定部材の上板部の幅が25~200mmであり、屋外側縦板部の高さが40~140mmであり、下板部の幅が3~100mmであり、屋内側縦板部の高さが10~50mmである、[11]に記載の断熱防水構造。
[13]断熱材ブロック固定部材は、ねじによって躯体に取り付けられている、[10]~[12]のいずれかに記載の断熱防水構造。
[14]断熱材ブロック固定部材は、0.23~5.0mmの厚みを有する金属または樹脂の板で構成されている、[10]~[13]のいずれかに記載の断熱防水構造。
[15]防水材が、アスファルト系防水シート、ポリ塩化ビニル系防水シートまたはポリウレタン系防水である、[1]~[14]のいずれかに記載の断熱防水構造。
[16]防水材が、さらに、屋上またはバルコニーの平場部または平場部断熱材を覆う、[1]~[15]のいずれかに記載の断熱防水構造。
[17]断熱防水構造が、さらに、外壁の下面と水切り金物の上面との間に充填されたシール材を含む、[1]~[16]のいずれかに記載の断熱防水構造。
[18]シール材が変成シリコーン系シール材である、[17]に記載の断熱防水構造。
[19]外壁、外壁の下方に位置する立上り部、および外壁の下面と立上り部の上面との間の空間を有する屋上またはバルコニーの壁部の断熱防水施工方法であって、前記方法は、
外壁および立上り部を支持する躯体の表面のうち前記空間に接する表面と、立上り部の上面と、立上り部の外側面とに、防水材を貼り付ける工程、
前記空間内に断熱材ブロックを着脱可能に配置する工程、および
断熱材ブロックの上面および外側面を包囲するように水切り金物を取り付ける工程
を含む、断熱防水施工方法。
[20]断熱防水施工方法が、さらに、外壁の下面と水切り金物の上面との間にシール材を充填する工程を含む、[19]に記載の断熱防水施工方法。
[21]前記空間内に断熱材ブロックを着脱可能に配置する工程が、断熱材ブロックを保持し得る断熱材ブロック固定部材に断熱材ブロックを保持させる工程、および断熱材ブロック固定部材を躯体に固定する工程を含む、[19]または[20]に記載の断熱防水施工方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明の断熱防水構造は、外壁の下面と立上り部の上面との間の空間に、発泡ウレタンを充填せずに、断熱材ブロックを着脱可能に配置しているので、防水材の改修を容易に実施することができる。
本発明の断熱防水施工方法は、外壁の下面と立上り部の上面との間の空間に、発泡ウレタンを充填せずに、断熱材ブロックを着脱可能に配置するので、湿式工事に関する技能を必要とせず、容易に施工することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本発明の断熱防水構造の断面図である。
【
図2】
図2は、従来の断熱防水構造の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の断熱防水構造の断面図を
図1に示す。ただし、本発明は
図1に示されたものに限定されない。
断熱防水構造1は、屋上またはバルコニーの壁部の断熱防水構造であって、外壁2、外壁の下方に位置する立上り部3、外壁の下面2aと立上り部の上面3aとの間の空間4、外壁2および立上り部3を支持する躯体5の表面のうち前記空間4に接する表面5aと立上り部の上面3aと立上り部の外側面3bとを覆う防水材6、前記空間4内に着脱可能に配置された断熱材ブロック7、ならびに断熱材ブロック7を包囲するように設けられた水切り金物8を含む。
【0011】
外壁2は、好ましくは、外壁材2bおよび断熱材2cを含む。
立上り部3は、好ましくは断熱材を含む。
外壁2および立上り部3が断熱材を含むことにより、寒冷地における壁部の外断熱を構築することができる。断熱材は、限定するものではないが、好ましくは、ポリスチレン系発泡体、ポリウレタン系発泡体またはフェノールフォームを含む。断熱材の厚みは、限定するものではないが、好ましくは25~200mmであり、より好ましくは75~125mmであり、さらに好ましくは90~100mmである。断熱材の厚みが前記数値範囲内にあることにより、断熱性能の確保と施工面、納まり面のバランスをとることができる。
外壁材2bは、好ましくは、窯業系サイディングや建築用仕上塗材で構成される。外壁材2bの厚みは、好ましくは1~50mmであり、より好ましくは2~30mmであり、さらに好ましくは3~26mmである。
【0012】
外壁の下面2aと立上り部の上面3aとの間には空間4が設けられている。外壁の下面2aと立上り部の上面3aとの間に空間4を設けることにより、防水層端末を躯体表面5aに密着させることで水密性を確保できる。特に外壁2と躯体表面5aに生じた結露水が躯体5に侵入することを防ぐことが可能となる。
空間4は好ましくは50~150mmの高さを有する。すなわち、外壁の下面2aと立上り部の上面3aとの間の間隔は、好ましくは50~150mmであり、より好ましくは60~120mmであり、さらに好ましくは80~100mmである。外壁の下面2aと立上り部の上面3aとの間の間隔が前記数値範囲内にあることにより、防水層を躯体5に対して確実に施工できることで水密性確保につながる。
【0013】
防水材6は、少なくとも、躯体5の表面のうち前記空間4に接する表面5a、立上り部の上面3aおよび立上り部の外側面3bを覆い、好ましくは、さらに屋上またはバルコニーの平場部12または平場部断熱材13を覆う。
防水材6は、限定するものではないが、好ましくは、アスファルト系防水シート、ポリ塩化ビニル系防水シートまたはポリウレタン系防水である。
【0014】
断熱材ブロック7は、空間4内に着脱可能に配置される。断熱材ブロック7を空間4内に配置することにより、空間4に断熱性能を付与することができ、室内側に結露を発生させるヒートブリッジを無くすことができる。
断熱材ブロック7は、限定するものではないが、好ましくは、ポリスチレン系発泡体、ポリウレタン系発泡体またはフェノールフォームを含む。
断熱材ブロック7の形状は、限定するものではないが、好ましくは直方体である。
断熱材ブロック7は、好ましくは25~200mmの厚みを有し、より好ましくは75~125mmの厚みを有し、さらに好ましくは90~100mmの厚みを有する。ただし、断熱材ブロック7の厚みとは、断熱材ブロック7を空間4内に配置した状態で、外壁2の外表面に垂直な方向の寸法をいう。
断熱材ブロック7の鉛直方向の寸法は、空間4内に配置することが可能な寸法である必要があるが、好ましくは50~150mmであり、より好ましくは60~120mmであり、さらに好ましくは80~100mmである。
1つの断熱材ブロック7の長さは、空間4の長さと同じであってもよいし、空間4の長さよりも短くてもよい。ただし、断熱材ブロック7の長さとは、断熱材ブロック7を空間4内に配置した状態で、外壁2の外表面に平行な水平方向の寸法をいう。空間4の長さとは、外壁2の外表面に平行な水平方向の寸法をいう。すなわち、1つの空間4に1つの断熱材ブロック7を配置してもよいし、1つの空間4に複数の断熱材ブロック7を配置してもよい。断熱材ブロック7の長さは、好ましくは300~3600mmであり、より好ましくは600~2700mmであり、さらに好ましくは900~1800mmである。
【0015】
断熱材ブロック7を空間4内に配置する方法は、着脱可能である限り限定するものではないが、接着剤、釘、ねじ、その他の固定具を用いて配置することができる。ただし、ねじとは、ボルトおよびビスを含む概念をいう。好ましくは、断熱材ブロック7は、断熱材ブロックを保持し得る断熱材ブロック固定部材9によって、躯体5に固定される。
【0016】
断熱材ブロック固定部材9は、好ましくは、上板部9aと、上板部の屋外側端辺から下方に垂下する屋外側縦板部9bと、屋外側縦板部の下端辺から屋内方向に延びる下板部9cと、上板部の屋内側端辺から上方に延びる屋内側縦板部9dとを含む。
断熱材ブロック固定部材の寸法は、断熱材ブロック7を保持することができる限り限定されないが、断熱材ブロック固定部材の上板部9aの幅は、好ましくは25~200mmであり、より好ましくは75~125mmであり、さらに好ましくは90~100mmである。ただし、上板部9aの幅とは、断熱材ブロック固定部材9を躯体5に取り付けた状態で、外壁の外表面に垂直な方向の寸法をいう。
屋外側縦板部9bの高さは、好ましくは40~140mmであり、より好ましくは50~110mmであり、さらに好ましくは70~90mmである。ただし、屋外側縦板部9bの高さとは、断熱材ブロック固定部材9を躯体5に取り付けた状態で、鉛直方向の寸法をいう。
下板部9cの幅は、好ましくは3~100mmであり、より好ましくは5~50mmであり、さらに好ましくは10~30mmである。ただし、下板部9cの幅とは、断熱材ブロック固定部材9を躯体5に取り付けた状態で、外壁の外表面に垂直な方向の寸法をいう。
屋内側縦板部9dの高さは、好ましくは10~50mmであり、より好ましくは15~40mmであり、さらに好ましくは30~35mmである。ただし、屋内側縦板部9dの高さとは、断熱材ブロック固定部材9を躯体5に取り付けた状態で、鉛直方向の寸法をいう。
【0017】
断熱材ブロック固定部材9は、断熱材ブロック7の上面が上板部9aに対向し、断熱材ブロック7の外側面が屋外側縦板部9bに対向し、断熱材ブロック7の下面の少なくとも一部が下板部9cに対向するように、断熱材ブロック7を保持する。断熱材ブロック固定部材7は、屋内側縦板部9dが躯体5に対向するように、好ましくはねじ11によって、躯体5に取り付けられる。
【0018】
断熱材ブロック固定部材9は、断熱材ブロック7の長さ方向全体を保持してもよいし、断熱材ブロック7を部分的に保持してもよい。すなわち、断熱材ブロック固定部材9の長さは、断熱材ブロック7の長さと同じでもよいし、断熱材ブロック7の長さより長くてもよいし、断熱材ブロック7の長さより短くてもよい。ただし、断熱材ブロック固定部材9の長さとは、断熱材ブロック固定部材9を躯体5に取り付けた状態で、外壁の外表面に平行な水平方向の寸法をいう。断熱材ブロック固定部材9の長さは、好ましくは50~3800mmであり、より好ましくは75~2800mmであり、さらに好ましくは100~2000mmである。
【0019】
断熱材ブロック固定部材9は、好ましくは、0.23~5.0mmの厚みを有する金属または樹脂の板で構成される。金属としては、亜鉛メッキ鋼板、溶融55%アルミニウム-亜鉛合金めっき鋼板(ガルバリウム鋼板(登録商標))、ステンレス鋼板等が挙げられ、樹脂としては、ポリプロピレン、ポリエチレン、塩化ビニル樹脂、ポリカーボネート等が挙げられるが、なかでも、断熱材ブロック固定部材9を構成する好ましい材料は、溶融55%アルミニウム-亜鉛合金めっき鋼板、塩化ビニル樹脂である。断熱材ブロック固定部材9の厚みは、好ましくは0.23~5.0mmであり、より好ましくは0.27~2.3mmであり、さらに好ましくは0.35~1.2mmである。
【0020】
断熱材ブロックを包囲するように水切り金物8が設けられる。水切り金物8を設けることにより、躯体側への浸水を防止することができる。
水切り金物8は、好ましくは、上板部8aと、上板部の屋外側端辺から下方に垂下する屋外側縦板部8bと、上板部の屋内側端辺から上方に延びる屋内側縦板部8cとを含む。
屋外側縦板部8bの下端部は、屋内側に折り返されていることが好ましい。すなわち、水切り金物8は、屋外側縦板部8bの下端部に、折り返し部8dを有することが好ましい。折り返し部8dを有することにより、雨水を速やかに滴下させ、空間4に侵入するのを防ぐことができる。
【0021】
水切り金物8を構成する材料は、躯体側への浸水を防止することができる限り限定されないが、好ましくは金属であり、なかでも、亜鉛メッキ鋼板、溶融55%アルミニウム-亜鉛合金めっき鋼板、ステンレス鋼板が好ましい。水切り金物8の厚みは、好ましくは0.23~2.3mmであり、より好ましくは0.27~1.2mmであり、さらに好ましくは0.35~0.8mmである。水切り金物8は、好ましくは0.23~2.3mmの厚みを有する亜鉛メッキ鋼板、溶融55%アルミニウム-亜鉛合金めっき鋼板またはステンレス鋼板で構成され、より好ましくは0.27~1.2mmの厚みを有する溶融55%アルミニウム-亜鉛合金めっき鋼板またはステンレス鋼板で構成され、さらに好ましくは、0.35~0.8mmの厚みを有する溶融55%アルミニウム-亜鉛合金めっき鋼板またはステンレス鋼板で構成される。
【0022】
水切り金物8の上板部8aの幅は、好ましくは25~200mmであり、より好ましくは75~125mmであり、さらに好ましくは90~100mmである。ただし、上板部8aの幅とは、水切り金物8を躯体5に取り付けた状態で、外壁の外表面に垂直な方向の寸法をいう。
屋外側縦板部8bの高さは、好ましくは40~200mmであり、より好ましくは65~175mmであり、さらに好ましくは80~150mmである。ただし、屋外側縦板部8bの高さとは、水切り金物8を躯体5に取り付けた状態で、鉛直方向の寸法をいう。
屋内側縦板部8cの高さは、好ましくは10~50mmであり、より好ましくは15~35mmであり、さらに好ましくは20~25mmである。ただし、屋内側縦板部8cの幅とは、水切り金物8を躯体5に取り付けた状態で、外壁の外表面に垂直な方向の寸法をいう。
【0023】
断熱防水構造1は、好ましくは、さらに、外壁2の下面2aと水切り金物8の上面との間に充填されたシール材10を含む。シール材10を設けることにより、雨水が防水層端末に侵入することを防ぐことが可能となる。
シール材10は、限定するものではないが、好ましくは変成シリコーン系シール材である。ただし、変成シリコーン系シール材とは、変成シリコーン樹脂を主成分とした湿気硬化型のシール材をいう。
【0024】
本発明の断熱防水構造は、防水材の施工と外壁の施工の順番を問わないので、工程調整が容易である。また、発泡ウレタンの施工は不要なので、湿式工事に関する技能を必要とせず、断熱材ブロックの取り付け工事は発泡ウレタンの施工に比べ容易である。さらに、次期防水改修時はシール材の撤去と断熱材ブロックのねじ固定部を取り外すことで可能であり、防水改修後は断熱材ブロックと水切り金物の再設置が可能である。
【0025】
本発明(II)は、外壁2、外壁2の下方に位置する立上り部3、および外壁2の下面2aと立上り部3の上面3aとの間の空間4を有する屋上またはバルコニーの壁部の断熱防水施工方法に関する。
本発明の断熱防水施工方法は、
外壁2および立上り部3を支持する躯体5の表面のうち前記空間4に接する表面5aと、立上り部3の上面3aと、立上り部3の外側面3bとに、防水材6を貼り付ける工程、
前記空間4内に断熱材ブロック7を着脱可能に配置する工程、および
断熱材ブロック7の上面および外側面を包囲するように水切り金物8を取り付ける工程
を含む。
【0026】
防水材6を貼り付ける工程において、防水材6を貼り付ける方法は、限定するものではないが、熱アスファルト防水工法の場合はアスファルト系ルーフィングを溶融アスファルトにて流し貼りをすることによって、実施することができる。
【0027】
空間4内に断熱材ブロック7を着脱可能に配置する工程において、空間4内に断熱材ブロック7を着脱可能に配置する方法は、限定するものではないが、接着剤、釘、ねじ、その他の固定具を用いて配置することができる。
【0028】
空間4内に断熱材ブロック7を着脱可能に配置する工程は、好ましくは、断熱材ブロック7を保持し得る断熱材ブロック固定部材9に断熱材ブロック7を保持させる工程、および断熱材ブロック固定部材9を躯体5に固定する工程を含む。
断熱材ブロック固定部材9に断熱材ブロック7を保持させる方法は、限定するものではないが、断熱材ブロック固定部材9が、上板部9aと、上板部の屋外側端辺から下方に垂下する屋外側縦板部9bと、屋外側縦板部の下端辺から屋内方向に延びる下板部9cと、上板部の屋内側端辺から上方に延びる屋内側縦板部9dとを含む場合は、断熱材ブロック7の上面が断熱材ブロック固定部材9の上板部9aに対向し、断熱材ブロック7の外側面が断熱材ブロック固定部材9の屋外側縦板部9bに対向し、断熱材ブロック7の下面の少なくとも一部が断熱材ブロック固定部材9の下板部9cに対向するように、断熱材ブロック7を載置することによって、断熱材ブロック固定部材9に断熱材ブロック7を保持させることができる。
【0029】
断熱材ブロック7の上面および外側面を包囲するように水切り金物8を取り付ける工程において、水切り金物8を取り付ける方法は、限定するものではないが、水切り金物8が上板部8aと屋外側縦板部8bと屋内側縦板部8cとを含む場合は、屋内側縦板部8cを躯体5に対向させ、ねじ11を用いて屋内側縦板部8cを躯体5に固定することによって、水切り金物8を取り付けることができる。
【0030】
断熱防水施工方法は、好ましくは、さらに、外壁2の下面2aと水切り金物8の上面との間にシール材10を充填する工程を含む。
シール材10を充填する方法は、限定するものではないが、コーキングガンを使用することによって、実施することができる。
【0031】
本発明の断熱防水施工方法は、防水材の施工と外壁の施工の順番を問わないので、工程調整が容易である。また、発泡ウレタンの施工は不要なので、湿式工事に関する技能を必要とせず、断熱材ブロックの取り付け工事は発泡ウレタンの施工に比べ容易である。さらに、次期防水改修時はシール材の撤去と断熱材ブロックのねじ固定部を取り外すことで可能である。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明は、寒冷地において多くみられる外断熱を採用した屋上またはバルコニーの壁部の断熱防水構造および断熱防水施工方法として好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0033】
1 断熱防水構造
2 外壁
2a 外壁の下面
2b 外壁材
2c 断熱材
3 立上り部
3a 立上り部の上面
3b 立上り部の外側面
4 空間
5 躯体
6 防水材
7 断熱材ブロック
8 水切り金物
9 断熱材ブロック固定部材
10 シール材
11 ねじ
12 平場部
13 平場部断熱材