(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024077385
(43)【公開日】2024-06-07
(54)【発明の名称】光源装置
(51)【国際特許分類】
H01L 33/50 20100101AFI20240531BHJP
G01N 21/84 20060101ALI20240531BHJP
H01L 33/64 20100101ALI20240531BHJP
H01L 33/00 20100101ALI20240531BHJP
【FI】
H01L33/50
G01N21/84 E
H01L33/64
H01L33/00 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022189450
(22)【出願日】2022-11-28
(71)【出願人】
【識別番号】504174434
【氏名又は名称】レボックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105315
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 温
(74)【代理人】
【識別番号】100173680
【弁理士】
【氏名又は名称】納口 慶太
(72)【発明者】
【氏名】黒田 虹輝
【テーマコード(参考)】
2G051
5F142
5F241
【Fターム(参考)】
2G051AB02
2G051BA00
2G051BA06
2G051CA04
5F142DA15
5F142DB32
5F142DB40
5F142DB42
5F142GA33
5F142HA01
5F241BD02
5F241BD04
(57)【要約】
【課題】種々の蛍光体の使用が可能な光源装置を提供する。
【解決手段】励起光源11と、励起光源の光が入射して赤外光を励起する赤外蛍光体14と、赤外蛍光体14の光量を調整する光量調整システム20と、励起光源の光及び赤外光のうちの何れか一方を透過させ、他方を反射させるダイクロイックミラー12と、を備え、光量調整システム20が温度センサ22と、温度変更機器24と、を備えた。赤外蛍光体14においては、光量調整システム20による光量調整の内容に応じた励起効率で、蛍光波長の光が得られる。赤外蛍光体14で励起された光は、光源装置10の出射口15を経て、光源装置10の外部に出射される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
励起光源と、
前記励起光源の光が入射して赤外光を励起する赤外蛍光体と、
前記赤外蛍光体の光量を調整する光量管理システムと、を備えた光源装置。
【請求項2】
前記励起光源の光及び前記赤外光のうちの何れか一方を透過させ、他方を反射させる光学素子を備えた、請求項1に記載の光源装置。
【請求項3】
前記光量管理システムが温度測定手段を備えた、請求項1又は2に記載の光源装置。
【請求項4】
前記光量管理システムが温度調整手段を備えた、請求項3に記載の光源装置。
【請求項5】
前記光量管理システムが、前記励起光源の光量を調整する励起光量調整手段を備えた、請求項3に記載の光源装置。
【請求項6】
前記光量管理システムが光量測定手段を備えた、請求項1又は2に記載の光源装置。
【請求項7】
前記光量管理システムが、前記励起光源の光量を調整する励起光量調整手段を備えた、請求項6に記載の光源装置。
【請求項8】
前記光量管理システムが温度調整手段を備えた、請求項6に記載の光源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製品検査等に用いることが可能な高輝度の光源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、高輝度光源装置として、青色もしくは紫外光の励起光源とYAG蛍光体(黄色)を備えるプロジェクター用光源が一般的に知られている。このようなプロジェクター用光源は、例えば、特許文献1(段落0050、0051など)や特許文献2(段落0040、0072、
図3など)に開示されている。また、特許文献2に開示された発明においては、蛍光体に対する冷却効率の向上が図られている。さらに、特許文献3(段落0032、
図2など)には、波長変換素子(691)が蛍光体層(693)及び反射層(694)を有することが開示されている。
【0003】
特許文献1~3に開示されたような光源装置においては、蛍光体温度が150℃程度までであれば、特に光量を一定に保つための厳密な温度管理は不要である。特許文献1(段落0058)には、波長変換層(32)の光入射面(32a)は、発熱によって約150℃ 近くにまで上昇することが開示されている。また、後掲の非特許文献1における
図4(内部量子効率におけるYAG単結晶蛍光体と従来の焼結YAG粉末蛍光体との比較)には、従来の焼結YAG粉末蛍光における内部量子効率すなわち励起効率が、150℃程度までは安定していることが示されている。
【0004】
また、製品検査等に使用する光源装置(産業用の光源装置)では、連続的に搬送される複数の検査対象に対して、同一の照明条件、すなわち明るさで撮像する必要がある。同一の明るさで検査対象を撮像するためには、カメラの露光時間内、及びカメラの各フレームにおいて、光源装置の光量が、可能な限り厳密に一定であることが求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2018-088307号公報
【特許文献2】特開2020-160117号公報
【特許文献3】特許第7107351号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】株式会社タムラ製作所ホームページ、ニュース一覧(2015年)、2015.04.22、「超高輝度・ハイパワー白色光源に適したYAG単結晶蛍光体を開発-レーザーヘッドライトなどLED光源では困難な超高輝度製品への応用に期待-」、https://www.tamura-ss.co.jp/jp/whatsnew/2015/20150422.html
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、YAG蛍光体等のような従来の蛍光体以外の蛍光体として、赤外蛍光体の使用を考えた場合、蛍光体における温度と励起効率との関係は150℃以下であっても一定でなく、単に蛍光体を置き換えただけでは、光量を一定に保つことが困難である。
【0008】
そこで、本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、赤外蛍光体を効果的に利用することが可能な光源装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明による光源装置の特徴は、
励起光源と、
前記励起光源の光が入射して赤外光を励起する赤外蛍光体と、
前記赤外蛍光体の光量を調整する光量管理システムと、を備える。
このような光源装置によれば、使用環境や運転時間に伴う前記赤外蛍光体の温度上昇による励起効率の変化を加味した光源の出力制御が可能である。
前記赤外蛍光体は700nm以上の波長にピークを有するものである。
前記光量管理システムは、温度上昇に伴い変化する赤外蛍光体の蛍光出力が可能な限り一定となるように調整するものであればよい。
【発明の効果】
【0010】
赤外蛍光体を効果的に利用することが可能な光源装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】一実施形態に係る光源装置を示す概略構成図である。
【
図2】温度調整システムを概略的に示すブロック図である。
【
図3】制御部による温度調整を概略的に示すフローチャートである。
【
図4】第1赤外蛍光体の蛍光スペクトルを示すグラフである。
【
図5】第2赤外蛍光体の蛍光スペクトルを示すグラフである。
【
図6】光量調整システムを概略的に示すブロック図である。
【
図7】
図6の光量調整システムの制御部による光量調整を概略的に示すフローチャートである。
【
図8】他の実施形態の光量調整システムを備えた光源装置を示す概略構成図である。
【
図9】
図8の光量調整システムを概略的に示すブロック図である。
【
図10】
図9の光量調整システムの制御部による光量調整を概略的に示すフローチャートである。
【
図11】さらに他の実施形態の光量調整システムを概略的に示すブロック図である。
【
図12】
図11の光量調整システムの制御部による光量調整を概略的に示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<光源装置の概要>
以下に本発明の実施形態に係る光源装置について、図面に基づき説明する。
図1は、一実施形態に係る光源装置10の基本的な構成を概略的に示している。本実施形態の光源装置10は、工場等において製品の欠陥検査などに用いられる産業用の光源装置である。光源装置10は、励起光源11、ダイクロイックミラー12、レンズ系13、赤外蛍光体14、出射口15、及び、温度調整システム16を備えている。
【0013】
励起光源11としては、赤外蛍光体14(後述する)で励起される光18の波長よりも短い波長(短波長)の光17を発生させることが可能な光源が採用されている。励起光源11は、LEDチップ(図示略)により光17を出力する。励起光源11には、熱伝達が可能な状態で、放熱器11Aが取り付けられている。放熱器11Aとしては、例えば、ヒートシンクやヒートパイプなどを採用することが可能である。
【0014】
ダイクロイックミラー12は、励起光源11からの光17の波長を反射させ、赤外蛍光体14からの光(蛍光光)18の波長を透過させる特性を有している。
【0015】
赤外蛍光体14としては、赤外波長の光18を励起する蛍光体が用いられている。赤外波長としては、例えば、700~1,000,000nm程度の波長の種々の赤外波長を採用できる。赤外蛍光体14は、例えば板状の担体(図示略)における板面に膜として形成されている。
【0016】
励起光源11から出射された光(励起光)17は、ダイクロイックミラー12で反射され、赤外蛍光体14へ入射する。赤外蛍光体14へ入射した光は、赤外蛍光体14において、蛍光波長の光18に変調される。赤外蛍光体14から出射された光18は、ダイクロイックミラー12を透過し、出射口15を通って、光源装置10の外部へ出力される。レンズ系13は、複数のレンズを用いたものであってもよい。
【0017】
出射口15は、光源装置10の筐体19に設けられており、投射光学系を備えている。出射口15の投射光学系は、レンズを含む複数の光学素子、又は、単数の光学素子(レンズ等)により構成することが可能である。また、出射口15には、光ファイバ等を用いて導波路を構成するライトガイド20が接続される。
【0018】
温度調整システム16は、赤外蛍光体14の温度を調整する機能を有している。本実施形態の温度調整システム16は、
図2に示すように、温度センサ22、温度変更機器24、及び、制御部26等を備えている。また、図示は省略するが、温度調整システム16には、放熱器(例えば、ヒートシンク、ヒートパイプなど)が備えられている。放熱器は、赤外蛍光体14に対する放熱を行う。放熱器は、例えば、赤外蛍光体14との間に温度センサ22を挟むように設置することも可能である。
【0019】
温度センサ22は、赤外蛍光体14の温度を検出する機能を有している。温度センサ22と赤外蛍光体14との間の熱伝達が良好に行われるよう、温度センサ22を赤外蛍光体14に接するように配置されている。温度センサ22の検出結果の情報は、制御部26に入力される。制御部26は、CPU、メモリ、通信部等を備えている。制御部26は、例えば光源装置10の使用者(ユーザ)により入力された調光値と、赤外蛍光体14の温度等のパラメーターに応じて、温度変更機器24を制御(フィードバック制御)する機能を有している。温度変更機器24は、光源装置10の筐体19内において、赤外蛍光体14に対して熱の影響を及ぼすことが可能な位置に配置されている。温度変更機器24は、制御部26の制御により赤外蛍光体14を冷却する機能を有している。
【0020】
温度変更機器24としては、モータ駆動により冷却ファンを回転させる冷却ファン装置を採用することが可能である。冷却ファン装置としては、例えば、PWM(パルス幅変調)により回転数制御されるもの等を採用することが可能である。冷却ファンを回転させることで、赤外蛍光体14が冷却される。
【0021】
例えば、励起光源11から一定の明るさの光17を出射し、赤外蛍光体14による光18の励起を行いながら、冷却ファンの回転数を相対的に高くすることで、赤外蛍光体14の冷却効果は向上する。また、同じ条件下で、冷却ファンの回転数を相対的に低くすることで、赤外蛍光体14の冷却効果は低下する。さらに、同じ条件下で、冷却ファンを停止することで、赤外蛍光体14を短時間で温度上昇させることもできる。ここでいう光の明るさは、ルーメン、ルクス、カンデラ、又は、ケルビンなどの単位の何れにより表されるものであってもよい。
【0022】
温度変更機器24としては、冷却ファン装置に限らず、例えば、ペルチェ素子を用いた機器を採用することが可能である。ペルチェ素子について印加電圧の制御が行われ、ペルチェ素子に電流が供給される。ペルチェ素子は、吸熱(及び放熱)を行う。ペルチェ素子の吸熱を利用することにより、赤外蛍光体14を冷却することができる。ペルチェ素子に供給される電流の値を下げたり、電流の供給を停止したりすることで、光励起を行っている赤外蛍光体14を温度上昇させることも可能である。このように、温度変更機器24は、冷却と昇温の何れにも利用することが可能である。
【0023】
温度変更機器24を制御する制御部26は、光源装置10の筐体19内において、赤外蛍光体14や温度変更機器24から離間した位置に配置されていてもよい。また、制御部26は、光源装置10の筐体19の外に配置されていてもよい。
【0024】
図3は、制御部26による温度変更の流れを概略的に示している。制御部26は、温度センサ22に検出結果を示す情報に基づいて温度値を確認し(ステップ(S)1)、光源装置10の使用者(ユーザ)により入力された調光値を確認する(S2)。調光値の確認(S2)を先に行い、温度値の確認(S1)を後に行ってもよい。
【0025】
この後、制御部26は、温度値と調光値との差に基づき補正値を算出し(S3)、温度変更機器24を制御する(S4)。この結果、赤外蛍光体14の温度が、目的の温度に調整される。
【0026】
以上説明したような光源装置10は、励起光源11により赤外蛍光体14をダウンコンバージョン励起し、蛍光波長の光を得る。赤外蛍光体14においては、温度調整システム16による温度調整の内容に応じた励起効率で、蛍光波長の光が得られる。赤外蛍光体14で励起された光は、光源装置10の出射口15を経て、光源装置10の外部に出射される。
【0027】
赤外蛍光体14は、可視光を励起する蛍光体(可視蛍光体)と比較して、温度上昇による励起効率の低下が大きい。一般的な可視蛍光体においては、前述した非特許文献1の
図4に示されているように、150℃前後まで温度上昇しても励起効率が大きく変化することはない。しかし、赤外蛍光体14においては、温度上昇にほぼ比例して励起効率が減少する。
【0028】
また、励起光源11に用いられているLEDチップ(図示略)の表面温度は、例えば、100℃度近くまで上昇することがある。可視蛍光体であれば、その温度-励起効率特性より、LEDチップの温度に十分耐え得るが、赤外蛍光体14は耐えることができない。
【0029】
加えて、蛍光体の発熱量については、励起波長と蛍光波長の1光子当たりのエネルギー差にも比例すること(ストークスシフト)が知られており、ストークスシフトが大きい赤外蛍光体14は、可視蛍光体よりも発熱量が多い傾向にある。
【0030】
これらのことから、蛍光体として赤外蛍光体14を用いることにより、蛍光体が温度上昇の影響を受け易くなる。そして、赤外蛍光体14と温度調整システム16とを備え、温度調整システム16を用いて赤外蛍光体14の温度調整を行うことにより、蛍光体として、赤外蛍光体14を利用することが可能となる。
【0031】
そして、赤外蛍光体14の温度を低下させたり、温度を上昇させたりすることにより、光源装置10から出射される光の明るさを変更することが可能となる。また、温度調整システム16を、赤外蛍光体14の温度が一定に保たれるように制御することにより、光源装置10から出射される光17の明るさを一定に保つことができる。
【0032】
これらの結果、赤外領域であっても、高輝度・高出力の光源装置を提供することができる。さらに、温度条件をパラメーターに含むことにより、励起光強度に対して励起効率が変動するような蛍光体を用いても、調光値と励起光源11の光量との相関を制御することができる。そして、光源装置10における光の明るさの自由度を向上でき、必要な明るさを簡便に提供することが可能となる。
【0033】
このように、本実施形態の光源装置10は、従来の光源装置と比べ、(1)蛍光体の蛍光波長が可視領域の波長ではなく赤外領域の波長である点、及び、(2)調光値に対する光の明るさのリニアリティを保証するために蛍光体温度の測定(本実施形態では温度センサ22による)が行われている点、において大きく異なっている。
【0034】
赤外蛍光体14の温度の制御は、実験等によって予めリファレンスデータ(参照データ)を取得しておき、取得したリファレンスデータに基づいて温度を調節することにより、簡便に実行できる。赤外蛍光体14における温度の変動は、光の明るさの変動よりもなだらかであり、温度に対する励起効率の減少量は、予め取得したリファレンスデータにより特定しておくことができる。したがって、赤外蛍光体14の励起効率は、リファレンスデータを用いた温度制御により、比較的少ない制御負荷で、調節することが可能である。
【0035】
また、ペルチェ素子等を用いた温度変更機器24により赤外蛍光体14の温度を調節することから、励起光源11の側の調節を伴うことなく、赤外蛍光体14により励起される光の明るさを調節することが可能である。
【0036】
また、本実施形態に係る光源装置10は、以下のようにも表現することが可能である。例えば、光源装置10は、光源により蛍光体をダウンコンバージョン励起し、蛍光波長を得る照明装置において、蛍光波長より短波長の励起光源(励起光源11など)と、赤外波長が励起される蛍光体(赤外蛍光体14など)と、励起波長を透過もしくは反射し蛍光波長を反射もしくは透過する光学素子(ダイクロイックミラー12など)を備え、蛍光体の温度が一定温度以上に上がらないように調整される。
【0037】
<実験例1>
図4は、赤外蛍光体14として、第1近赤外光を励起する蛍光体に係る実験例を示している。
図4は、赤外蛍光体(sample 1)の蛍光スペクトルについて、励起された光の波長(横軸、単位:nm)と、励起された光の強度(縦軸、単位:%)の関係を示している。
図4の実験例では、710~720[nm]辺りのスペクトルの強度がほぼ100%となっている。
【0038】
<実験例2>
図5は、赤外蛍光体14として、第2近赤外光を励起する蛍光体に係る実験例を示している。
図5は、赤外蛍光体(sample 2)の蛍光スペクトルについて、
図4と同様に、励起された光の波長(横軸、単位:nm)と、励起された光の強度(縦軸、単位:%)の関係を示している。
図5の実験例では、800~840[nm]辺りのスペクトルの強度がほぼ100%となっている。
【0039】
なお、本実施形態の光源装置10は、上述したものに限定されず、種々に変形することが可能である。例えば、
図1の例では、ダイクロイックミラー12は、励起光源11の光17の波長を反射し、赤外蛍光体14の光18の波長を透過する特性を有している。しかし、ダイクロイックミラー12は、例えば、励起光源11の光17の波長を透過し、赤外蛍光体14の光18の波長を反射する特性を有しているものであってもよい。この場合は、ダイクロイックミラー12を透過した光が赤外蛍光体14へ入射し、ダイクロイックミラー12で反射した光が、出射口15へ向かうこととなる。
【0040】
また、ダイクロイックミラー12を他の光学素子(例えば、ビームスプリッターなど)に置き換えても良い。
【0041】
<光量調整システムを備えた実施形態>
次に、温度調整システム16に代えて光量調整システムを用いた実施形態について説明する。以下では、
図1~
図5の例と同様の部分については同一符号を付し、適宜説明は省略する。
【0042】
図6に示すように、温度センサ22の検出結果を利用し、LEDに供給される電流を制御部36により制御して(LEDのフィードバック制御を行って)、明るさを調整することが可能である。
【0043】
図6は、温度センサ22を用いて構成された光量調整システム30を概略的に示している。光量調整システム30において、温度センサ22の検出結果の情報は、制御部36に入力される。制御部36は、例えば光源装置10の使用者(ユーザ)により入力された調光値と、赤外蛍光体14の光の明るさ(パラメーター)に応じて、励起光源11を制御(フィードバック制御)する機能を有している。なお、制御部36と励起光源11との間に光量調整器(光量調整手段)を設け、制御部36が光量調整器を制御することで励起光源11の光量が調整されるようにしてもよい。
【0044】
図7は、制御部36による光量調整の流れを概略的に示している。制御部36は、温度センサ22の検出結果を示す情報に基づいて光量値を判定し(S11)、光源装置10の使用者(ユーザ)により入力された調光値を確認する(S12)。調光値の確認(S12)を先に行い、温度値の確認(S11)を後に行ってもよい。
【0045】
この後、制御部36は、温度値と調光値とに基づいて必要な補正値を算出し(S13)、励起光源11を制御する(S14)。この結果、赤外蛍光体14から励起される光の明るさ(ここでは光量)が、目的の光量に調整される。
【0046】
このようにすることで、温度センサ22を用いた光量調整システム30により、赤外蛍光体14を効果的に利用することが可能となる。
【0047】
<光量調整システムを用いた他の実施形態>
次に、光量調整システムを用いた他の実施形態について説明する。以下では、
図1~
図5の例と同様の部分については同一符号を付し、適宜説明は省略する。
図6及び
図7の例と同様の部分についても同一符号を付し、適宜説明は省略する。
【0048】
図6に示すような温度センサ22による温度検出に代えて、例えば、
図8~
図10に示すように、光センサ(照度センサ、光強度センサ、光量センサ等)42を用いて、赤外蛍光体14からの光を検出することも可能である。この場合、光センサ42による検出結果を利用し、LEDに供給される電流を制御部26により制御して(LEDのフィードバック制御を行って)、明るさを調整することが可能である。
【0049】
図8及び
図9は、光センサ42を用いて構成された光量調整システム40を概略的に示している。光量調整システム40において、光センサ42は、赤外蛍光体14により励起される光の明るさ(ここでは光量)を検出する機能を有している。光センサ42の検出結果の情報は、制御部46に入力される。制御部46は、例えば光源装置10の使用者(ユーザ)により入力された調光値と、赤外蛍光体14の光の明るさ(パラメーター)に応じて、励起光源11を制御(フィードバック制御)する機能を有している。
【0050】
光センサ42は、筐体19内において、赤外蛍光体14の光18の明るさを検出することが可能な位置に配置されている。
図8の例では、光センサ42は、赤外蛍光体14の光18の漏れ光を検出している。
図8では、光センサ42は、光量調整システム40から分離して示されているが、光センサ42は、
図9に示すように、光量調整システム40の一部を構成している。
【0051】
なお、制御部46と励起光源11との間に光量調整器(光量調整手段)を設け、制御部46が光量調整器を制御することで励起光源11の光量が調整されるようにしてもよい。また、この場合も、赤外蛍光体14を冷却する放熱器(図示略)を設けてもよい。
【0052】
図10は、制御部46による光量調整の流れを概略的に示している。制御部46は、光センサ42の検出結果を示す情報に基づいて光量値を確認し(S21)、光源装置10の使用者(ユーザ)により入力された調光値を確認する(S22)。調光値の確認(S22)を先に行い、光量値の確認(S21)を後に行ってもよい。
【0053】
この後、制御部36は、光量値と調光値とに基づいて必要な補正値を算出し(S23)、励起光源11を制御する(S24)。この結果、赤外蛍光体14から励起される光の明るさ(ここでは光量)が、目的の光量に調整される。
【0054】
このようにすることで、光センサ42を用いた光量調整システム40により、赤外蛍光体14を効果的に利用することが可能となる。
【0055】
また、図示は省略するが、さらに他の実施形態として、光量検出に基づく温度調整を行うことも可能である。この場合は、例えば、
図11に概略的に示すように、光量管理システム(
図11の例では光量調整システム50)が温度調整手段を備えるようにする。
図2の例と同様に、温度変更機器24と制御部56の組み合わせにより温度調整手段を構成する。
【0056】
光センサ42が、赤外蛍光体14の光18の明るさを検出する。制御部56は、
図12に示すように、光センサ42の検出結果を示す情報に基づいて光量値を確認し(S31)、使用者(ユーザ)により入力された調光値を確認する(S32)。調光値の確認(S32)を先に行い、光量値の確認(S31)を後に行ってもよい。
【0057】
この後、制御部56は、温度値と調光値との差に基づき補正値を算出し(S33)、温度変更機器24を制御する(S34)。この結果、赤外蛍光体14の温度が、目的の温度に調整され、赤外蛍光体14により励起される光の明るさが調節される。
【0058】
なお、これまでに説明した温度検出に基づく温度調整(
図2など)、温度検出に基づく光量調整(
図6など)、光量検出に基づく光量調整(
図9など)、光量検出に基づく温度調整(
図11など)を、適宜組み合わせて1つの光源装置に適用することも可能である。
【0059】
<実施形態から抽出可能な発明>
(1)励起光源(励起光源11など)と、
前記励起光源の光が入射して赤外光を励起する赤外蛍光体(赤外蛍光体14など)と、
前記赤外蛍光体の光量を調整する光量管理システム(温度調整システム16、光量調整システム30、光量調整システム40など)と、を備えた光源装置。
なお、励起光源は、例えば、出力を変更できる励起光源(出力可変の励起光源)とすることが可能である。
また、赤外蛍光体の光量を調整する光量管理システムは、例えば、赤外蛍光体の、温度依存の光量の低下に対して光量を調整する光量管理システムとすることができる。
(2)前記励起光源の光及び前記赤外光のうちの何れか一方を透過させ、他方を反射させる光学素子(ダイクロイックミラー12など)を備えた、上記(1)に記載の光源装置。
(3)前記光量管理システムが温度測定手段(温度センサ22など)を備えた、上記(1)又は(2)に記載の光源装置。
(4)前記光量管理システムが温度調整手段(温度変更機器24と制御部26の組み合わせなど)を備えた、上記(3)に記載の光源装置。
(5)前記光量管理システムが、前記励起光源の光量を調整する励起光量調整手段(励起光源11と制御部36の組み合わせなど)を備えた、上記(3)に記載の光源装置。
(6)前記光量管理システムが光量測定手段(光センサ42など)を備えた、上記(1)又は(2)に記載の光源装置。
(7)前記光量管理システムが、前記励起光源の光量を調整する励起光量調整手段(励起光源11と制御部46の組み合わせなど)を備えた、上記(6)に記載の光源装置。
(8)前記光量管理システムが温度調整手段(温度変更機器24と制御部56の組み合わせなど)を備えた、上記(6)に記載の光源装置。
【0060】
<実施形態に係る発明についての補足>
<<調光と出力安定化との関係>>
各実施形態に係る発明の目的の一つは、調光値(励起光強度)可変の光源において調光値ごとに蛍光強度を安定させることである。通常、赤外蛍光体14のように、励起光強度が変わる光源において、蛍光強度から温度を測定することは困難である。しかし、各実施形態に係る発明は、独自の構成により、光量管理システムが調光値可変の光源における各調光値に対して出力を安定化させることを可能とする。
【0061】
<<用途に応じた出力安定化の本質>>
前述したように、各実施形態に係る光源装置は、工場等において製品の欠陥検査などに用いられる産業用の光源装置である。したがって、その他の用途の光源装置や光学機器とは、出力安定化の本質において異なる。
【0062】
<<温度センサ22の用途>>
温度センサ22を備えた実施形態(
図2、
図6)に係る発明は、赤外蛍光体14の温度を制御するために用いられている。
【0063】
また、光センサ42を備えた実施形態(
図9)では、光センサ42の検出結果は励起光源11の制御に用いられているが、これに限定されず、例えば、光センサ42の検出結果に基づき、
図2に示す実施形態の温度変更機器24を制御してもよい。
【0064】
この場合、赤外蛍光体14の光18の明るさが目標値よりも低ければ、温度変更機器24を、赤外蛍光体14の温度が下がるように制御する。なお、このような制御に加え、赤外蛍光体14の光18の明るさが目標値よりも高ければ、温度変更機器24を、赤外蛍光体14の温度が上がるように制御することも可能である。
【0065】
<<調光の前後における安定した出力>>
温度調整システム16(
図2)を備えた実施形態に係る発明や、光量調整システム30(
図6)を備えた実施形態に係る発明は、赤外蛍光体14の温度依存による変化を加味した光量管理システムを搭載することで出力を安定化する光源装置であるということができる。
【0066】
これらの実施形態(
図2、
図6)に係る発明は、例えば、調光値に対して所定の出力になるように励起光源の電力を調整するようなものとは異なる。また、YAG蛍光体の場合は励起光源の調整のみで安定したフィードバックが可能であるが、このようなYAG蛍光体を用いたものとも、上述の各実施形態(
図2、
図6)に係る発明は異なっている。
【0067】
さらに、赤外蛍光体を用いる場合、蛍光体の温度によって光の明るさが変化するため、調光値を変更した後の強度は、変更前の調光値の蛍光体温度に依存した強度になり、励起光源の出力と比例しない。
【0068】
しかし、温度調整システム16(
図2)を備えた実施形態に係る発明や、光量調整システム30(
図6)を備えた実施形態に係る発明は、前述のように赤外蛍光体14の温度依存による変化を加味した光量管理システムを構成しているため、調光の前後によらず、安定した出力を行うことが可能である。
【0069】
<その他>
なお、上述したように、本発明は、実施の形態によって記載したが、この開示の一部をなす記載及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきでない。このように、本発明は、ここでは記載していない様々な実施の形態等を含むことはもちろんである。
【符号の説明】
【0070】
10 光源装置
11 励起光源
12 ダイクロイックミラー
14 赤外蛍光体
15 出射口
16 温度調整システム
22 温度センサ
24 温度変更機器
26、36、46、56 制御部
30、40、50 光量調整システム
42 光センサ