(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024077388
(43)【公開日】2024-06-07
(54)【発明の名称】情報処理方法、情報処理装置、情報処理プログラム、および、該情報処理プログラムを記憶したコンピュータ読取可能な記憶媒体
(51)【国際特許分類】
G06F 30/20 20200101AFI20240531BHJP
G06F 30/10 20200101ALI20240531BHJP
【FI】
G06F30/20
G06F30/10 100
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022189453
(22)【出願日】2022-11-28
(71)【出願人】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】目良 貢
(72)【発明者】
【氏名】本田 正徳
(72)【発明者】
【氏名】足立 崇勝
(72)【発明者】
【氏名】松村 広隆
(72)【発明者】
【氏名】曽我部 洋
【テーマコード(参考)】
5B146
【Fターム(参考)】
5B146DC03
5B146DC04
5B146EA11
(57)【要約】
【課題】計算時間の抑制と、因子選択の均質化とを両立する。
【解決手段】情報処理方法は、連続体(部品P1)の構造を分析するための各説明変数89のサンプリングに用いられる点群データ79を生成する。この方法は、N通りの第1因子dを取得する初期設定ステップ(ステップS1)と、N通りの第1因子dからn組の第1因子dを選択することで、該n組の第1因子dに対応したn通りの第2因子eを取得するデータ選択ステップ(ステップS2)と、第2因子e間の相関係数を判定する相関判定ステップ(ステップS3)と、第1因子dの選択対象を変更しながらデータ選択ステップ及び相関判定ステップが繰り返された後、相関係数がゼロに最近接した場合におけるn組の第1因子dを、サンプル数nの点群データ79に設定するデータ決定ステップ(ステップS5)と、を備える。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータの演算部を用いることで、連続体の構造を分析するための各説明変数のサンプリングに用いられる点群データを生成する情報処理方法であって、
Nを2以上の自然数とし、nをN以下の自然数とし、前記連続体を構成する各部位の位置座標が含まれる数値データ群を第1因子とし、該第1因子に対応して算出される、前記連続体の構造を特徴付ける指標群を第2因子とすると、
前記演算部が、N通りの前記第1因子を取得する初期設定ステップと、
前記演算部が、N通りの前記第1因子の中からn組の前記第1因子を選択することで、該n組の前記第1因子の各々に対応したn通りの前記第2因子を取得するデータ選択ステップと、
前記演算部が、前記データ選択ステップで取得された第2因子間の相関係数を判定する相関判定ステップと、
前記第1因子の選択対象を変更しながら前記データ選択ステップ及び前記相関判定ステップの処理が繰り返された後、前記演算部が、前記相関係数がゼロに最近接した場合におけるn組の前記第1因子を、サンプル数nの前記点群データに設定するデータ決定ステップと、を備える
ことを特徴とする情報処理方法。
【請求項2】
請求項1に記載された情報処理方法において、
前記演算部が、前記点群データに対応した数値データ群を説明変数とし、かつ前記連続体の構造に応じて変動する指標を目的変数としたときの最適解を、機械学習を用いて探索する探索ステップをさらに備える
ことを特徴とする情報処理方法。
【請求項3】
請求項1に記載された情報処理方法において、
前記第2因子は、前記連続体を構成する部位間の相対的な位置関係を示す指標を含む
ことを特徴とする情報処理方法。
【請求項4】
請求項1に記載された情報処理方法において、
前記第1因子は、
前記連続体を複数の要素に分割したときの要素間の節点の位置座標と、
前記連続体に対する衝突物の衝突位置と、
水平方向又は鉛直方向に対する前記衝突物の衝突角度と、を含み、
前記第2因子は、
前記節点のうち所定の2点を結んだ直線の長さと、
前記所定の2点を結んだ直線に対する、前記衝突物の相対的な衝突角度、及び、該衝突角度に基づいた三角関数と、を含む
ことを特徴とする情報処理方法。
【請求項5】
請求項1に記載された情報処理方法において、
N通りの前記第1因子は、時系列方向における同時刻、又は、周波数方向における同周波数で設定された、N通りの前記連続体の構造を示す
ことを特徴とする情報処理方法。
【請求項6】
請求項1に記載された情報処理方法において、
N通りの前記第1因子は、時系列方向又は周波数方向にN分割された、同一の前記連続体の構造を示す
ことを特徴とする情報処理方法。
【請求項7】
請求項1に記載された情報処理方法において、
前記データ選択ステップで選択されるn組の前記第1因子を特定第1因子群とすると、
前記演算部は、前記データ選択ステップの繰り返しに際し、前記相関係数の絶対値を目的変数とした遺伝的アルゴリズムに基づいて、前記目的変数を減少させるように、前記特定第1因子群を構成する前記第1因子の組み合わせを更新する
ことを特徴とする情報処理方法。
【請求項8】
請求項1に記載された情報処理方法において、
前記データ選択ステップで選択されるn組の前記第1因子を特定第1因子群とし、前記データ選択ステップで取得されるn通りの前記第2因子を第2因子群とすると、
前記演算部は、所定回数にわたり繰り返される前記相関判定ステップの各々において、
前記第2因子群の中から異なる2通りの第2因子を選択してその間の相関係数を計算し、
前記第2因子の選択対象を繰り返し変更しつつ、該変更の度に前記相関係数を計算することで、該相関係数の絶対値の最大値を探索し、
前記演算部は、前記相関判定ステップの各々で探索された前記最大値のうち、該最大値がゼロに最近接した場合における前記第2因子群に対応した前記特定第1因子群を決定し、該特定第1因子群を前記点群データに設定する
ことを特徴とする情報処理方法。
【請求項9】
コンピュータの演算部を用いることで、連続体の構造を分析するための各説明変数のサンプリングに用いられる点群データを生成する情報処理装置であって、
Nを2以上の自然数とし、nをN以下の自然数とし、前記連続体を構成する各部位の位置座標が含まれる数値データ群を第1因子とし、該第1因子に対応して算出される、前記連続体の構造を特徴付ける指標群を第2因子とすると、
前記演算部が、N通りの前記第1因子を取得する初期設定手段と、
前記演算部が、N通りの前記第1因子の中からn組の前記第1因子を選択することで、該n組の前記第1因子の各々に対応したn通りの前記第2因子を取得するデータ選択手段と、
前記演算部が、前記データ選択手段により取得された第2因子間の相関係数を判定する相関判定手段と、
前記第1因子の選択対象を変更しながら前記データ選択手段及び前記相関判定手段による処理が繰り返された後、前記演算部が、前記相関係数がゼロに最近接した場合におけるn組の前記第1因子を、サンプル数nの前記点群データに設定するデータ決定手段と、を備える
ことを特徴とする情報処理装置。
【請求項10】
コンピュータの演算部を用いることで、連続体の構造を分析するための各説明変数のサンプリングに用いられる点群データを生成する情報処理プログラムであって、
Nを2以上の自然数とし、nをN以下の自然数とし、前記連続体を構成する各部位の位置座標が含まれる数値データ群を第1因子とし、該第1因子に対応して算出される、前記連続体の構造を特徴付ける指標群を第2因子とすると、
前記コンピュータに、
前記演算部が、N通りの前記第1因子を取得する初期設定ステップと、
前記演算部が、N通りの前記第1因子の中からn組の前記第1因子を選択することで、該n組の前記第1因子の各々に対応したn通りの前記第2因子を取得するデータ選択ステップと、
前記演算部が、前記データ選択ステップで取得された第2因子間の相関係数を判定する相関判定ステップと、
前記第1因子の選択対象を変更しながら前記データ選択ステップ及び前記相関判定ステップが繰り返された後、前記演算部が、前記相関係数がゼロに最近接した場合におけるn組の前記第1因子を、サンプル数nの前記点群データに設定するデータ決定ステップと、を実行させる
ことを特徴とする情報処理プログラム。
【請求項11】
請求項10に記載された情報処理プログラムを記憶している
ことを特徴とするコンピュータ読取可能な記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、情報処理方法、情報処理装置、情報処理プログラム、および、該情報処理プログラムを記憶したコンピュータ読取可能な記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1には、計画行列における説明変数のサンプリング手法が開示されている。具体的に、この特許文献1には、製品の工学設計最適化を行う方法において、複数の実験計画法(DOE)サンプルを、遺伝的アルゴリズムに基づいて選択することが開示されている。ここで、各DOEサンプルは、設計空間における他と重複しない設計を表している。
【0003】
そして、前記特許文献1によれば、選択されたDOEサンプルに基づいて製品の最適設計を導き出すとともに、その最適設計をCAE解析によって検証することができるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来、製品の断面形状等を示した連続体においては、その連続体を有限要素としたときの各節点の位置座標等、連続体を構成する各部位の位置座標を均質に選択する(例えば、各位置座標を等間隔でシフトさせる)ことで、説明変数をサンプリングすることが考えられてきた。
【0006】
一方、連続体の構造分析においては、前述のように定義される位置座標よりはむしろ、連続体における各部位間の長さ、相対的な角度など、各位置座標に対応して算出される因子こそが、本質的な役割を果たす可能性がある。
【0007】
そのため、従来知られたように位置座標を均質に選択した場合、位置座標と因子との関係次第では、因子の値に偏りが生じてしまい、均質な選択とはならない可能性がある。その場合、最終的に得られた説明変数を最適化問題に適用したときに、最適解の探索に不都合を来すおそれがある。
【0008】
可能な限り均質な抽出とするためには、前記因子の値を直に等間隔でシフトさせることが考えられる。しかしながら、既存のCAE環境を流用したり、構造分析における他の工程への影響を最小限に抑えたりするためには、前記位置座標に立脚した解析を行わざるを得ない場合もある。
【0009】
また、実際の構造分析においては、前述の位置座標(例えば節点の位置座標)を直にシフトさせることで、製品の断面形状・設計図面等がどのように変化するかを対話的に理解しながら分析を進める場合がある。
【0010】
この場合、前記因子の値を直にシフトさせては不都合となる。すなわち、長さ等の因子を直にシフトさせると、断面の輪郭線が交差したり、重複したり、はみ出したりする等、位置座標をシフトさせる場合には起こり得ない構造が出現し得る。そうした構造は、サンプリングに用いることはできず、無駄なサンプルとなってしまう。無駄なサンプルの出現は、計算時間を抑制する上で不都合である。
【0011】
そこで、前記因子の値を直にシフトさせずとも結果的に均質な選択になるように、サンプリング数を可能な限り増やすことも考えられる。しかしながら、サンプリング数の増大は、計算時間の増大を招くため不都合である。
【0012】
ここに開示する技術は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、計算時間の抑制と、因子選択の均質化とを両立することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本開示の第1の態様は、コンピュータの演算部を用いることで、連続体の構造を分析するための各説明変数のサンプリングに用いられる点群データを生成する情報処理方法に係る。
【0014】
そして、前記第1の態様によれば、前記情報処理方法は、Nを2以上の自然数とし、nをN以下の自然数とし、前記連続体を構成する各部位の位置座標が含まれる数値データ群を第1因子とし、該第1因子に対応して算出される、前記連続体の構造を特徴付ける指標群を第2因子とすると、前記演算部が、N通りの前記第1因子を取得する初期設定ステップと、前記演算部が、N通りの前記第1因子の中からn組の前記第1因子を選択することで、該n組の前記第1因子の各々に対応したn通りの前記第2因子を取得するデータ選択ステップと、前記演算部が、前記データ選択ステップで取得された第2因子間の相関係数を判定する相関判定ステップと、前記第1因子の選択対象を変更しながら前記データ選択ステップ及び前記相関判定ステップの処理が繰り返された後、前記演算部が、前記相関係数がゼロに最近接した場合におけるn組の前記第1因子を、サンプル数nの前記点群データに設定するデータ決定ステップと、を備える。
【0015】
ここでいう「連続体」には、固体、液体、流体のいずれも含まれる。
【0016】
本願発明者らは、相関係数が0に近い場合、0から遠い場合と比べて、より均質(無作為)な選択であるとみなすことができるという事実に着目した。
【0017】
具体的に、前記第1の態様によると、位置座標を含んだ第1因子こそ、データ選択ステップにおける選択対象とされるものの、その選択が均質か否かの判定には、各位置座標に対応して算出される第2因子間の相関係数が用いられるようになっている。これにより、第2因子の値を直に等間隔でシフトさせずとも、この第2因子に関し、因子選択の均質化を実現することができる。
【0018】
また、前記第1の態様に係る方法は、サンプリング数を増加させることには依拠しない手法にあたるため、計算時間の抑制と、因子選択の均質化とを両立することが可能になる。
【0019】
また、前記第1の態様によると、最終的に得られる点群データは、2点間の長さ等、連続体の構造を特徴付ける因子ではなく、あくまでも各部位の位置座標に基づいたものとなる。これにより、点群データを用いた構造分析に際し、前者の因子ではなく、位置座標を直にシフトさせることができる。そのことで、無駄なサンプルの出現を抑制しつつ、製品の断面形状・設計図面等がどのように変化するかを対話的に理解しながら分析を進めることが可能になる。
【0020】
また、本開示の第2の態様によれば、前記情報処理方法は、前記演算部が、前記点群データに対応した数値データ群を説明変数とし、かつ前記連続体の構造に応じて変動する指標を目的変数としたときの最適解を、機械学習を用いて探索する探索ステップをさらに備える、としてもよい。
【0021】
前記第2の態様によると、第2因子について因子選択の均質化が実現されたことで、その選択に基づいた最適解の探索を、より適切かつより効率的に行うことが可能になる。この第2の態様に係る構成は、前記第1の態様における計算時間の抑制と相まって、計算コストの節約に有利となる。
【0022】
また、本開示の第3の態様によれば、前記第2因子は、前記連続体を構成する部位間の相対的な位置関係を示す指標を含む、としてもよい。
【0023】
前記第3の態様によると、第2因子について因子選択の均質化が実現されたことで、前記部位間の相対的な位置関係を、サンプル間でより均質に変化させることができる。これにより、説明変数を用いた構造分析を、より適切かつより効率的に行うことが可能になる。
【0024】
また、本開示の第4の態様によれば、前記第1因子は、前記連続体を複数の要素に分割したときの要素間の節点の位置座標と、前記連続体に対する衝突物の衝突位置と、水平方向又は鉛直方向に対する前記衝突物の衝突角度と、を含み、前記第2因子は、前記節点のうち所定の2点を結んだ直線の長さと、前記所定の2点を結んだ直線に対する、前記衝突物の相対的な衝突角度、及び、該衝突角度に基づいた三角関数と、を含む、としてもよい。
【0025】
前記第4の態様によると、第2因子について因子選択の均質化が実現されたことで、節点を結んだ直線の長さを、サンプル間でより均質に変化させることができる。これにより、説明変数を用いた構造分析を、より適切かつより効率的に行うことが可能になる。
【0026】
さらに、前記第4の態様によると、第2因子について因子選択の均質化が実現されたことで、連続体および衝突物の間の相対的な衝突角度さえも、サンプル間でより均質に変化させることができる。相対的な衝突角度を均質に変化させることで、衝突時に本質的な寄与を果たすような衝突角度の大きさを、取りこぼしなく確実に導き出すことができる。これにより、説明変数を用いた構造分析を、より適切かつより効率的に行うことが可能になる。
【0027】
また、本開示の第5の態様によれば、N通りの前記第1因子は、時系列方向における同時刻、又は、周波数方向における同周波数で設定された、N通りの前記連続体の構造を示す、としてもよい。
【0028】
前記第5の態様によると、例えばN通りの製品における初期形状を比較検討する際に、各初期形状における第2因子の値を、製品間で均質に変化させることができるようになる。これにより、初期形状の比較検討を、より適切かつより効率的に行うことが可能になる。
【0029】
また、本開示の第6の態様によれば、N通りの前記第1因子は、時系列方向又は周波数方向にN分割された、同一の前記連続体の構造を示す、としてもよい。
【0030】
前記第6の態様によると、例えば一の製品における形状の経時変化を分析する際に、各時刻における第2因子の値を、タイムステップ間で均質に変化させることができるようになる。これにより、形状の経時変化の分析を、より適切かつより効率的に行うことが可能になる。
【0031】
また、本開示の第7の態様によれば、前記データ選択ステップで選択されるn組の前記第1因子を特定第1因子群とすると、前記演算部は、前記データ選択ステップの繰り返しに際し、前記相関係数の絶対値を目的変数とした遺伝的アルゴリズムに基づいて、前記目的変数を減少させるように、前記特定第1因子群を構成する前記第1因子の組み合わせを更新する、としてもよい。
【0032】
前記第7の態様によると、遺伝的アルゴリズムに基づいて第1因子の組み合わせを更新することで、データ選択ステップの処理が繰り返される度に、相関係数の絶対値を、段階的にゼロに近接させていくことができる。これにより、データ選択ステップの繰り返し回数を抑制することができ、計算時間を抑制する上で有利になる。
【0033】
また、本開示の第8の態様によれば、前記データ選択ステップで選択されるn組の前記第1因子を特定第1因子群とし、前記データ選択ステップで取得されるn通りの前記第2因子を第2因子群とすると、前記演算部は、所定回数にわたり繰り返される前記相関判定ステップの各々において、前記第2因子群の中から異なる2通りの第2因子を選択してその間の相関係数を計算し、前記第2因子の選択対象を繰り返し変更しつつ、該変更の度に前記相関係数を計算することで、該相関係数の絶対値の最大値を探索し、前記演算部は、前記相関判定ステップの各々で探索された前記最大値のうち、該最大値がゼロに最近接した場合における前記第2因子群に対応した前記特定第1因子群を決定し、該特定第1因子群を前記点群データに設定する、としてもよい。
【0034】
前記第8の態様によると、相関係数の絶対値の最大値をゼロに近接させていくことで、非最大値を用いる場合に比べて、第2因子に係る因子選択の均質化を、より確実に実現することができる。
【0035】
また、本開示の第9の態様は、コンピュータの演算部を用いることで、連続体の構造を分析するための各説明変数のサンプリングに用いられる点群データを生成する情報処理装置に係る。
【0036】
そして、前記第9の態様によれば、前記情報処理装置は、Nを2以上の自然数とし、nをN以下の自然数とし、前記連続体を構成する各部位の位置座標が含まれる数値データ群を第1因子とし、該第1因子に対応して算出される、前記連続体の構造を特徴付ける指標群を第2因子とすると、前記演算部が、N通りの前記第1因子を取得する初期設定手段と、前記演算部が、N通りの前記第1因子の中からn組の前記第1因子を選択することで、該n組の前記第1因子の各々に対応したn通りの前記第2因子を取得するデータ選択手段と、前記演算部が、前記データ選択手段により取得された第2因子間の相関係数を判定する相関判定手段と、前記第1因子の選択対象を変更しながら前記データ選択手段及び前記相関判定手段の処理が繰り返された後、前記演算部が、前記相関係数がゼロに最近接した場合におけるn組の前記第1因子を、サンプル数nの前記点群データに設定するデータ決定手段と、を備える。
【0037】
前記第9の態様によると、計算時間の抑制と、因子選択の均質化とを両立することが可能になる。
【0038】
また、本開示の第10の態様は、コンピュータの演算部を用いることで、連続体の構造を分析するための各説明変数のサンプリングに用いられる点群データを生成する情報処理プログラムに係る。
【0039】
そして、前記第10の態様によれば、前記情報処理プログラムは、Nを2以上の自然数とし、nをN以下の自然数とし、前記連続体を構成する各部位の位置座標が含まれる数値データ群を第1因子とし、該第1因子に対応して算出される、前記連続体の構造を特徴付ける指標群を第2因子とすると、前記コンピュータに、前記演算部が、N通りの前記第1因子を取得する初期設定ステップと、前記演算部が、N通りの前記第1因子の中からn組の前記第1因子を選択することで、該n組の前記第1因子の各々に対応したn通りの前記第2因子を取得するデータ選択ステップと、前記演算部が、前記データ選択ステップで取得された第2因子間の相関係数を判定する相関判定ステップと、前記第1因子の選択対象を変更しながら前記データ選択ステップ及び前記相関判定ステップの処理が繰り返された後、前記演算部が、前記相関係数がゼロに最近接した場合におけるn組の前記第1因子を、サンプル数nの前記点群データに設定するデータ決定ステップと、を実行させる。
【0040】
前記第10の態様によると、計算時間の抑制と、因子選択の均質化とを両立することが可能になる。
【0041】
また、本開示の第11の態様は、前記情報処理プログラムを記憶していることを特徴とするコンピュータ読取可能な記憶媒体に係る。
【0042】
前記第11の態様によると、計算時間の抑制と、因子選択の均質化とを両立することが可能になる。
【発明の効果】
【0043】
以上説明したように、本開示によれば、計算時間の抑制と、因子選択の均質化とを両立することができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【
図1】
図1は、情報処理装置のハードウェア構成を例示する図である。
【
図2】
図2は、情報処理装置のソフトウェア構成を例示する図である。
【
図3】
図3は、情報処理方法の手順を例示するフローチャートである。
【
図5】
図5は、相関判定ステップの詳細を例示するフローチャートである。
【
図6】
図6は、特定第1因子群の最終的な選択結果及び点群データを例示する図である。
【
図8】
図8は、従来のサンプリング手法を説明するための図である。
【
図9】
図9は、本開示に係るサンプリング手法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
以下、本開示の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の説明は例示である。
【0046】
<装置構成>
図1は、本開示に係る情報処理装置(具体的には、情報処理装置を構成するコンピュータ1)のハードウェア構成を例示する図であり、
図2は、そのソフトウェア構成を例示する図である。
【0047】
図1に例示するように、コンピュータ1は、コンピュータ1全体の制御を司る中央処理装置(Central Processing Unit:CPU)3と、ブートプログラム等を記憶するリードオンリーメモリ(Read Only Memory:ROM)5と、メインメモリとして機能するランダムアクセスメモリ(Random Access Memory:RAM)7と、2次記憶装置としてのソリッドステートドライブ(Solid State Drive:SSD)9と、を備える。なお、2次記憶装置としては、SSD9の代わりに、ハードディスクドライブ(Hard Disk Drive:HDD)等を用いることもできる。
【0048】
これらの要素のうち、CPU3は、種々のプログラムを実行する。CPU3は、いわゆるプロセッサであって、本実施形態における演算部として機能する。また、RAM7及びSSD9は、CPU3による実行されるプログラムを一時的または継続的に記憶する。RAM7及びSSD9は、それぞれ、本実施形態における記憶部として機能する。
【0049】
コンピュータ1はまた、ディスプレイ11と、ディスプレイ11上に表示される画像データを格納するグラフィックスメモリ(Video RAM:VRAM)13と、マンマシンインターフェースとしてのキーボード15及びマウス17と、を備える。ディスプレイ11は、CPU3による演算結果を表示することができ、本実施形態における表示部として機能する。また、本実施形態に係るコンピュータ1は、通信用のインターフェース21を解して外部機器との間でデータを送受することができる。
【0050】
図2に例示するように、SSD9のプログラムメモリには、オペレーティングシステム(Operating System:OS)19、初期設定プログラム29A、データ選択プログラム29B、相関判定プログラム29C、反復演算プログラム29D、データ決定プログラム29E、探索プログラム29F、アプリケーションプログラム39等が格納される。
【0051】
これらの要素のうち、初期設定プログラム29A、データ選択プログラム29B、相関判定プログラム29C、反復演算プログラム29D、データ決定プログラム29E及び探索プログラム29Fは、本実施形態における情報処理プログラム29を構成する。
【0052】
ここで、情報処理プログラム29とは、後述の情報処理方法を実行するためのプログラムであって、同方法を構成する各ステップをコンピュータ1に実行させるように構成されている。情報処理プログラム29は、CD-ROM、DVD-ROM、USBフラッシュドライブ等、有体かつコンピュータ読取可能な記憶媒体18に予め記憶されている。
【0053】
SSD9のプログラムにおいて、初期設定プログラム29A、データ選択プログラム29B、相関判定プログラム29C、反復演算プログラム29D、データ決定プログラム29E及び探索プログラム29Fは、それぞれ、キーボード15、マウス17等から入力される指令に応じて起動される。その際、初期設定プログラム29A等は、SSD9からRAM7にロードされ、CPU3によって実行されることになる。
【0054】
一方、SSD9のデータメモリには、第1因子群49の値と、第2因子群59の値と、特定第1因子群69の値と、点群データ79と、説明変数89の値と、目的変数99の値とが格納される。第1因子群49、第2因子群59、特定第1因子群69、点群データ79、説明変数89及び目的変数99の詳細は後述する。
【0055】
この他、初期設定プログラム29A、データ選択プログラム29B、相関判定プログラム29C、反復演算プログラム29D、データ決定プログラム29E及び探索プログラム29Fを実行することで生成される種々のデータ、並びに、アプリケーションプログラム39の実行結果については、必要に応じて、SSD9のデータメモリに格納されたり、メインメモリとしてのRAM7に格納されたりする。
【0056】
以下、情報処理方法の具体的な方法論について詳細に説明する。
【0057】
<方法論>
図3は、情報処理方法の手順を例示するフローチャートである。この情報処理方法は、コンピュータ1のCPU3を用いることで、連続体の構造を分析するための各説明変数89のサンプリングに用いられる点群データ79を生成するものである。連続体の構造の分析は、例えばCAE解析による分析としてもよい。その場合、点群データ79は、例えばCAE解析のための点群データとなる。
【0058】
図3に示すように、情報処理方法は、初期設定ステップ(ステップS1)と、データ選択ステップ(ステップS2)と、相関判定ステップ(ステップS3)と、データ選択ステップ及び相関判定ステップを繰り返し行うための反復演算ステップ(ステップS4)と、データ決定ステップ(ステップS5)と、探索ステップ(ステップS6)と、をそれぞれ実行することで実施される。なお、各ステップの実行結果は、いずれも、表示部としてのディスプレイ11上に表示することができる。
【0059】
これらのステップのうち、初期設定ステップは、CPU3が前述の初期設定プログラム29Aを実行することで実施される。同様に、データ選択ステップは、CPU3がデータ選択プログラム29Bを実行することで実施され、相関判定ステップは、CPU3が相関判定プログラム29Cを実行することで実施され、反復演算ステップは、CPU3が反復演算プログラム29Dを実行することで実行され、データ決定ステップは、CPU3がデータ決定プログラム29Eを実行することで実施され、探索ステップは、CPU3が探索プログラム29Fを実行することで実施される。
【0060】
CPU3が初期設定プログラム29A等を実行することで、コンピュータ1は、初期設定ステップを実行する初期設定手段と、データ選択ステップを実行するデータ選択手段と、相関判定ステップを実行する相関判定手段と、反復演算ステップを実行する反復演算手段と、データ決定ステップを実行するデータ決定手段と、探索ステップを実行する探索手段と、を備える情報処理装置として機能することになる。
【0061】
以下、情報処理方法を構成する各ステップについて順番に説明する。
【0062】
(初期設定ステップ)
図4は、連続体の構造を例示する図である。ここでいう連続体には、有形の物品が含まれる。
図4では、連続体の一例として、所定の製品を構成する部品P1を示す。この部品P1の断面形状は、各要素を接続する4つの節点Ca,Cb,Cc,Cdの位置座標によって特徴付けられている。なお、ここでいう「製品」には、少なくとも、車両部品と、車両部品のアセンブリと、車両とが含まれる。
【0063】
以下の説明は、
図3のステップS1において行われる処理を示している。すなわち、
図3において制御プロセスがステップS1に進むと、CPU3は、以下に示す初期設定ステップを実行する。
【0064】
本実施形態に係る初期設定ステップは、CPU3が、第1因子群49を取得するように構成されている。第1因子群49の取得は、SSD9、記憶媒体18等から第1因子群49を読み込むことで行ってもよいし、キーボード15等を介してユーザが直に入力することで行ってもよい。
【0065】
ここで、Nを2以上の自然数とし、連続体を構成する各部位の位置座標が含まれる数値データ群を第1因子dとすると、第1因子群49は、N通り(全N組)の第1因子dからなる。
【0066】
第1因子群49を構成する各第1因子dは、それぞれ、複数の数値データ(具体的には、計m個の数値データ)によって構成されている。各第1因子dを構成するm個の数値データの値は、その少なくとも一部が、第1因子d毎に変わり得る。
【0067】
言い換えると、第1因子群49を構成する各第1因子dは、それぞれ、m次元ベクトルである。第1因子群49は、計N通りのm次元ベクトルによって構成されるデータ集合であって、N×m次元ベクトルとみなすことができる。
【0068】
N×m次元ベクトルとしての第1因子群49は、N通りの第1因子dのうち、jパターン目(j=1,2,…,N)の第1因子dをdjとし、jパターン目の第1因子djの第i成分(i=1,2,…,m)をdjiとし、第1因子群49に変数Dを割り当てると、以下のように表すことができる。
【0069】
【0070】
前述のように、第1因子dにおける少なくとも一部の成分は、連続体を構成する各部位の位置座標を示す。ここでいう位置座標とは、いわゆるCAE(Computer-Aided Engineering)における設計変数であって、連続体を複数の要素に分割したときの要素間の節点の位置座標を示す。また、ここでいう位置座標は、一次元直線、二次元平面及び三次元空間のいずれかにおける位置座標であってもよい。N通りの第1因子dは、例えば、当該因子を構成する各成分を無作為にサンプリングすることで設定することができる。その設定に際し、構造としての断面形状の輪郭線が交差したり、重複したり、はみ出したりするサンプルを排除してもよい。
【0071】
この場合、第1因子dは、いわゆる設計変数(又は設計因子)の集合とみなすことができ、各第1因子dの位置座標が定義された空間は、いわゆる設計空間又はCAE空間とみなすことができる。この空間は、いわば“物理空間”とも呼称することができる。
【0072】
図4の例の場合、4つの節点Ca,Cb,Cc,Cdそれぞれの位置座標が、第1因子dの各成分を構成する。各第1因子dは、4つの節点Ca,Cb,Cc,Cdそれぞれのx成分とy成分を一列に並べた8次元ベクトルとなる。
【0073】
この場合、N通りの第1因子dとは、少なくとも一部の節点の位置を異ならせた、N通りの部品P1及びその断面形状を示すことになる。第1因子群49は、第1因子dのサンプリングデータセットに相当する。
【0074】
例えば、節点Caのx座標をxaとし、そのy座標をyaとする。他の節点Cb,Cc,Cdについても同様にx座標及びy座標の添え字を定義すると、この場合の第1因子dは、以下のように表すことができる。
【0075】
【0076】
また、例えば、連続体としての部品P1の性能のうち、特に衝突性能を分析しようとした場合、第1因子dの成分に、連続体(部品P1)に対する衝突物P2の衝突位置と、水平方向又は鉛直方向に対する衝突物P2の衝突角度と、を含めてもよい。
【0077】
図4の例の場合、部品P1に対する衝突物P2の衝突点Ceの位置座標と、鉛直方向(y方向)に対する衝突物P2の衝突角度θ’と、を第1因子dの成分にさらに含めることができる。
【0078】
また、N通りの第1因子dは、時系列方向における同時刻、又は、周波数方向における同周波数で設定された、N通りの連続体の構造を示している。
図4の場合、N通りの第1因子dは、同一のタイミング(例えば、部品P1に衝突物P2が接触した瞬間)で取得された、N通りの部品P1それぞれの断面形状を示している。
【0079】
第1因子dの取得が完了すると、制御プロセスは、
図3のステップS2に進む。
【0080】
(データ選択ステップ)
以下の説明は、
図3のステップS2において行われる処理を示している。すなわち、
図3において制御プロセスがステップS2に進むと、CPU3は、以下に示すデータ選択ステップを実行する。
【0081】
本実施形態に係るデータ選択ステップは、nをN以下の自然数とすると、CPU3が、第1因子群49(つまり、N通りの第1因子d)の中からn組の第1因子dを選択することで特定第1因子群69を設定するとともに、その特定第1因子群69を構成する第1因子dの各々に対応した第2因子群59(n通りの第2因子e)を取得するように構成されている。
【0082】
ここでいう特定第1因子群69は、選択されたn組の第1因子dによって構成されている。特定第1因子群69は、第1因子群49の部分集合である。CPU3は、N通りの第1因子dからn組を選択する際に、何番目の第1因子dを選択したか(つまり、上記jの値)を示すIDリスト(不図示)を作成し、それをRAM7及び/又はSSD9に記憶させてもよい。
【0083】
また、ここでいう第2因子群59は、n通り(全n組)の第2因子eからなる。第2因子eは、第1因子dに対応して算出される、連続体の構造を特徴付ける指標群である。
【0084】
第2因子群59を構成する各第2因子eは、それぞれ、計p個の数値データによって構成されている。各第2因子eを構成するp個の数値データの値は、その少なくとも一部が、第2因子e毎に変わり得る。
【0085】
言い換えると、第2因子群59を構成する各第2因子eは、それぞれ、p次元ベクトルである。第2因子群59は、計n通りのp次元ベクトルによって構成されるデータ集合であって、n×p次元ベクトルとみなすことができる。
【0086】
n×p次元ベクトルとしての第2因子群59は、n通りの第2因子eのうち、lパターン目(l=1,2,…,n)の第2因子eをelとし、lパターン目の第2因子elの第k成分(k=1,2,…,p)をelkとし、第2因子群59に変数Eを割り当てると、以下のように表すことができる。
【0087】
【0088】
前述のように、第2因子eは、第1因子dに対応して算出される、連続体の構造を特徴付ける指標群である。ここで、lパターン目の第2因子elは、同じlパターン目の第1因子dlに基づいて算出される。第2因子elの各成分の値は、第1因子dlを数学的に変換することで算出することができる。
【0089】
詳しくは、lパターン目の第2因子elは、同じlパターン目の第1因子dlを構成する数値データの一部又は全部(m次元ベクトルを構成する成分の一部又は全部)を変換することによって算出されるようになっている。
【0090】
さらに詳しくは、CPU3は、例えば前述のIDリストに基づいて、データ選択ステップにおいて何番目の第1因子dが選択されたかを判断し、選択された第1因子dに対応した第2因子eを取得するようになっている。その際、選択された第1因子dが判断される度に、その都度、第1因子dを用いて第2因子eを算出してもよいし、選択された第1因子dが判断する度に、事前に算出しておいた第2因子eをSSD9等から読み込んでもよい。
【0091】
また、第2因子eは、いわゆる構造力学において用いられる指標群としてもよい。具体的に、第2因子eは、連続体を構成する部位間の相対的な位置関係を示す指標としてもよい。相対的な位置関係を示す指標としては、連続体を構成する部位間の距離を用いたり、相対角度、及び相対角度に基づいた三角関数等を用いたりすることもできる。また、第2因子eには、連続体を複数の要素に分割したときの要素間の節点のうち、1つ又は複数の節点における曲率及び曲率半径を用いることもできる。
【0092】
この場合、第2因子eは、いわば“構造力学的因子”と呼称することができ、各第2因子eの値が定義された空間は、いわば“構造力学的空間”と呼称することができる。
【0093】
図4の例の場合、4つの節点Ca,Cb,Cc,Cdのうち、所定の2点(例えば、節点Caと節点Cb)を結んだ直線の長さrと、4つの節点Ca,Cb,Cc,Cdのうち、所定の2点(例えば、節点Caと節点Cb)を結んだ直線と所定方向(図例ではx方向)との間の角度をθとしたときの余弦cosθとが、第2因子eに含まれる。仮に、長さrと角度θのみによって第2因子eが構成されるものとすると、この場合の各第2因子eは、長さrの値と余弦cosθの値を並べた2次元ベクトルとなる。なお、ここでいう「所定方向」は、水平方向(x方向)又は鉛直方向(y方向)としてもよいし、いずれか2つの節点を結んだ直線方向としてもよい。
【0094】
n通りの第2因子eは、長さr及び余弦cosθの値が異なり得る、n通りの部品P1及びその断面形状を示す。第2因子群59は、第2因子eのサンプリングデータセットに相当する。
【0095】
前述した仮の例を採用した場合(長さrと余弦cosθのみによって第2因子eが構成される場合)、第2因子eは、以下のように表すことができる。
【0096】
【0097】
また、例えば、連続体としての部品P1の性能のうち、特に衝突性能を分析しようとした場合、第2因子eに、所定の2点を結んだ直線に対する、衝突物P2の相対的な衝突角度、及び、その衝突角度に基づいた三角関数を含めてもよい。
【0098】
図4の例の場合、節点Caと節点Cbを結んだ直線に対する、衝突物P2の相対的な衝突角度θ”を第2因子eの成分含めることができる。
【0099】
第2因子群59の取得が完了すると、制御プロセスは、
図3のステップS3に進む。
【0100】
なお、本実施形態に係るデータ選択ステップは、後述のように、所定回数にわたり繰り返されるようになっている。データ選択ステップの処理が繰り返される度に、CPU3は、第1因子dの選択対象、すなわち特定第1因子群69を構成する第1因子dの組み合わせを変更する。第1因子dの組み合わせが変更されることで、n組の第2因子e、すなわち第2因子群59も変更されることになる。
【0101】
(相関判定ステップ)
図5は、相関判定ステップの詳細を例示するフローチャートである。
【0102】
以下の説明は、
図3のステップS3において行われる処理を示している。すなわち、
図3において制御プロセスがステップS3に進むと、CPU3は、以下に示す相関判定ステップを実行する。相関判定ステップの詳細は、
図5に例示する通りである。
【0103】
本実施形態に係る相関判定ステップは、CPU3が、データ選択ステップで取得された第2因子e間の相関を判定するように構成されている。
【0104】
具体的に、ステップS31において、CPU3はまず、データ選択ステップで取得された第2因子群59を読み込む。
【0105】
続くステップS32において、CPU3は、第2因子群59(n通りの第2因子e)から、異なる2通りの第2因子eを選択する。ここでは、異なる2通りの第2因子eとして、lパターン目の第2因子elと、l’パターン目の第2因子el’と、が選択されたものとする。l’はn以下かつlとは異なる自然数である。
【0106】
続くステップS33において、CPU3は、選択した第2因子el,el’間の相関係数を計算する。ここで計算される相関係数は、p次元ベクトル間の相関係数である。
【0107】
続くステップS34において、CPU3は、ステップS34で算出された相関係数の絶対値を算出する。
【0108】
続くステップS35において、CPU3は、ステップS32からステップS34の工程が、nC2通りの全選択肢(2通りの第2因子eを選択する際の、全ての選択肢)について実行されたか否かを判定する。
【0109】
ステップS35の判定がNOの場合、制御プロセスはステップS32に戻る。この場合、CPU3は、ステップS32における第2因子eの選択対象を変更した上で、ステップS33とステップS34を再度実行する。ステップS35の判定がYESになるまでステップS32からステップS34を繰り返すことで、nC2個の前記絶対値が算出されることになる。
【0110】
一方、ステップS35の判定がYESの場合、制御プロセスはステップS36に進む。このステップS36において、CPU3は、nC2個の前記絶対値から、その最大値を探索する。探索された最大値は、SSD9等に一時的に又は継続的に記憶される。
【0111】
このように、
図5のステップS32からステップS36において、CPU3は、n通りの第2因子eから異なる2通りの第2因子e
l,e
l’を選択して相関係数を計算し、第2因子e
l,e
l’の選択対象を繰り返し変更しつつ、該変更の度に相関係数を計算することで、該相関係数の絶対値の最大値を探索する。
【0112】
図5のフローに従って探索される最大値は、第1因子dの選択対象を変更して特定第1因子群69を再設定するための目的変数に用いることができる。
図2の目的変数と区別すべく、これを「更新用目的変数」と呼称し、これに変数Cを割り当てると、この更新用目的変数Cは、以下のように表すことができる。
【0113】
【0114】
上式において、lとl’は、ステップS32で説明したように、1からpまでの相異なる自然数の組である。また、式中のcorr(el,el’)は、ステップS33で説明したように、2つのベクトルel,el’間の相関係数である。
【0115】
更新用目的変数Cの探索が完了すると、制御プロセスは、
図3のステップS4に進む。
【0116】
なお、本実施形態に係る相関判定ステップは、データ選択ステップと同様に、前記所定回数にわたり繰り返されるようになっている。CPU3は、所定回数にわたり繰り返される相関判定ステップの各々において、前述のステップS31からステップS36をそれぞれ実行する。データ選択ステップの繰り返しによる第2因子群59の変更に伴って、相関判定ステップで算出される更新用目的変数Cも、同ステップの処理が繰り返される度に変更されるようになっている。
【0117】
(反復演算ステップ)
以下の説明は、
図3のステップS4において行われる処理を示している。すなわち、
図3において制御プロセスがステップS4に進むと、CPU3は、以下に示す反復演算ステップを実行する。
【0118】
図3のステップS4に示すように、反復演算ステップにおいて、CPU3は、データ選択ステップ及び相関判定ステップの繰り返し回数Iが所定の閾値Th以上となったか否か(I≧Th?)を判定する。この判定がYESの場合、CPU3は、制御プロセスをステップS5に進める。
【0119】
一方、ステップS4の判定がNOの場合、CPU3は、前記繰り返し回数Iを+1加算する(I=I+1)とともに、その上で制御プロセスをステップS2に戻す。この場合、CPU3は、データ選択ステップ及び相関判定ステップの順番で、これらのステップを繰り返す。
【0120】
ここで、CPU3は、データ選択ステップの繰り返しに際し、前述の相関係数の絶対値(特に、本実施形態では絶対値の最大値)を目的変数(更新用目的変数C)とした遺伝的アルゴリズムに基づいて、その更新用目的変数Cを減少させるように、特定第1因子群69を構成する第1因子dの組み合わせを更新する。
【0121】
ここで用いられる遺伝的アルゴリズムは、更新用目的変数Cを適応度とし、ステップS4の判定を終了判定とした上で、n組の第1因子dの内訳を交叉・突然変異させることで実施されるものである。これは、第1因子dの組み合わせ(より正確には、サンプルの組み合わせ)を最適化対象としたときの、遺伝的アルゴリズムによる組み合わせ最適化に相当する。
【0122】
この場合、初回のデータ選択ステップにおいて、複数の特定第1因子群69が生成される。それら複数の特定第1因子群69は、それぞれ親データに設定される。そして、各特定第1因子群69の適応度は、対応する第2因子群59に基づいた更新用目的変数Cとして、データ選択ステップに続く初回の相関判定ステップで評価される。
【0123】
そして、適応度が評価された後、ステップS4を通じてデータ選択ステップに戻ると、同ステップで複数の親データが選択・交叉・突然変異されて、複数の特定第1因子群69が更新される(子データが生成される)。それに続く相関判定ステップで、各特定第1因子群69に対応した第2因子群59と、各第2因子群59に基づいた更新用目的変数Cとが算出された後、ステップS4の判定結果に応じてデータ選択ステップに戻る。それ以降、繰り返し回数Iが所定の閾値Th以上になるまで、同様の工程が繰り返される。
【0124】
ここで、更新用目的変数Cを減少させるように第1因子dの組み合わせを更新していくことで、それに続く相関係数の絶対値の最大値を徐々に減少させていくことが可能となる。相関係数の絶対値の最大値を減少させていくことで、第2因子群59を構成する第2因子e間の相関係数に、突出して大きな値が含まれないようにすることができる。これにより、第2因子群59における第2因子e間の相関を、可能な限り無相関に近づけることができる。
【0125】
このように、本実施形態に係る反復演算ステップは、CPU3に、その繰り返し回数Iが所定の閾値Th以上となるまで、第1因子dの選択対象を変更しながらデータ選択ステップ及び相関判定ステップを繰り返させるように構成されている。
【0126】
なお、組み合わせ最適化に遺伝的アルゴリズムを用いることは、必須ではない。粒子群最適化、ベイズ最適化等、組合わせ最適化に適用可能な任意の手法を用いることができる。
【0127】
繰り返し回数Iが所定の閾値Th以上になると、制御プロセスはステップS5に進む。
【0128】
(データ決定ステップ)
図6は、特定第1因子群69の最終的な選択結果及び点群データ79を例示する図である。以下の説明は、
図3のステップS5において行われる処理を示している。すなわち、
図3において制御プロセスがステップS5に進むと、CPU3は、以下に示すデータ決定ステップを実行する。
【0129】
本実施形態に係るデータ決定ステップは、CPU3が、相関係数がゼロに最近接した場合における特定第1因子群69を、点群データ79に設定するように構成されている。
【0130】
詳しくは、CPU3は、繰り返し行われた相関判定ステップの各々で探索された前記最大値(更新用目的変数C)のうち、該最大値(更新用目的変数C)がゼロに最近接した場合における第2因子群59に対応したn組の第1因子d(特定第1因子群69)を決定し、これをサンプル数nの点群データ79に設定する(
図6を参照)。
【0131】
点群データ79は、サンプル数nの設計変数の集合(いわゆるサンプルデータ集合)とみなすことができる。この点群データ79においては、n組中f番目(f=1,2,…,n)の第1因子dfが、f番目のサンプルに対応する。
【0132】
ステップS5で設定された点群データ79は、SSD9等に記憶され、続くステップS6で適宜読み込まれるようになっている。点群データ79の設定及び記憶が完了すると、制御プロセスは、ステップS6に進む。
【0133】
前述のように、N通りの第1因子dが、同一のタイミングで取得された、N通りの部品P1それぞれの断面形状を示している場合、サンプル数nは、その断面形状のバリエーションの数を示すことになる。
図6の場合、例えば1番目のサンプルは、n通りの初期形状のうち、1番目の初期形状を示すことになる。
【0134】
(探索ステップ)
図7は、説明変数89を例示する図である。また、
図10は、探索ステップの具体例を示す図である。以下の説明は、
図3のステップS6において行われる処理を示している。すなわち、
図3において制御プロセスがステップS6に進むと、CPU3は、以下に示す探索ステップを実行する。
【0135】
本実施形態に係る探索ステップでは、CPU3が、点群データ79に対応した数値データ群を説明変数89とし、かつ連続体の構造に応じて変動する指標を目的変数99としたときの最適解を、機械学習を用いて探索するように構成されている。
【0136】
点群データ79と同じく、説明変数89は、サンプル数nかつ多次元の数値データである。一方、目的変数99は、サンプル数nかつ一次元又は多次元の数値データである。
【0137】
説明変数89が例えばo次元ベクトルであるとすると、説明変数89をサンプル数nの順番に並べることで、n行o列(又はo行n列)のいわゆる計画行列が構築される。この計画行列に基づいて、CAE解析、機械学習等、各種手法によって連続体の構造を分析することが可能になる。
【0138】
なお、コンピュータ1は、点群データ79に選ばれた各第1因子dの値を説明変数89としてもよいし、各第1因子dの値に対応して取得される数値データを説明変数89としてもよい。言い換えると、点群データ79それ自体を説明変数89に設定してもよいし、点群データ79に基づいた他の変数を説明変数89に設定してもよい。
【0139】
前者の場合、前記f番目の第1因子dfの値が、そのままf番目のサンプルにおける説明変数89となる。後者の場合、f番目の第1因子dfに対して数学的処理又は画像的処理を施すことで、f番目のサンプルにおける説明変数89が得られる。
【0140】
なお、ここでいう「数学的処理」とは、第1因子dから第2因子eへの変換のように、所定の変換式を通じて数値データを数学的に変換する処理をいう。f番目のサンプルにおける説明変数89に、f番目の第1因子dfに対応した第2因子efの一部又は全成分を用いてもよい。
【0141】
一方、前記「画像的処理」とは、例えば、連続体を構成する各部位の位置座標にf番目の第1因子dfを採用したときに、その第1因子dfに対応して生成される連続体の画像(例えば、部品P1の断面形状を示す画像)から、f番目のサンプルに相当する数値データを得る処理をいう。この場合の数値データには、例えば、連続体の画像を構成する各画素の画素値を並べたものが含まれる。
【0142】
例えば、
図7に示すように、
図6の点群データ79を採用することで、各サンプルに対応したn枚の画像88が得られたものとする。この場合、各画像88を構成する画素88aの画素値が、そのサンプルにおける説明変数89を構成することになる。例えば、各画像88が仮に128×128ピクセルであったとすると、各サンプルにおける説明変数89は、128×128次元の数値データとなる。
【0143】
目的変数99とされる指標には、前記製品の性能が含まれる。ここで、製品の性能には、当該製品の衝突性能が含まれる。ここでいう衝突性能には、衝突時における製品の変形度合いに加え、衝突時に人に与える影響の度合いも含まれる。製品の衝突性能に関連した指標には、例えば、製品に対する頭部の衝突位置及び衝突角度に加え、頭部障害の程度を表す指数であるHIC(Head Injury Criterion:頭部損傷基準値)等、人に与えるダメージの大きさを特徴付ける指標が含まれる。
【0144】
その他、製品の変形し易さを特徴付けているという意味で、その製品における特定の部位の変形度合い(例えば、衝突時の変位量)を、製品の衝突性能に関連した指標に用いてもよい。
【0145】
また、目的変数99の具体的な数値としては、点群データ79の値を用いたCAE解析等から得られる値を用いてもよいし、第2因子eのように、点群データ79の値を変換することで得られる値を用いてもよいし、いわゆる教師データ等、点群データ79の値を直に参照せず、その値と間接的に関連し得る値を用いてもよい。
【0146】
CPU3は、前述のように定義される説明変数89及び目的変数99に基づいて、機械学習を用いて最適解を探索する。最適解の探索に際しては、説明変数89及び目的変数99の設定に対応した任意の手法を用いることができる。
【0147】
例えば、
図7に示すように説明変数89に画素値を用いるとともに、目的変数99に、衝突性能の一例であるHICを用いることで、
図10の囲み部Rcに示すように、そのHICを最小化するような部品P1の断面形状(つまり、HICを参照化するようなサンプル番号)を探索するケースを考える。
【0148】
このケースの場合、最適解の探索に際し、各画素値の係数の一部を0に落とし込むようなスパースモデリングを適用することができる。この場合、係数の値が0に落とし込まれた画素値については、その画素を黒塗り等で表示させることで、係数の値が非ゼロとなった他の画素との間で、ディスプレイ11上の表示態様を明確に区別させることが可能になる。これにより、単に最適解を探索するばかりでなく、その最適解においてHICの最小化に寄与した部位の視認性を向上させることができる。
【0149】
(因子選択の均質化について)
図8は、従来の因子選択手法(サンプリング手法)を説明するための図である。
図9は、本開示に係るサンプリング手法を説明するための図である。
【0150】
従来、製品の断面形状等を示した連続体においては、その連続体を有限要素としたときの各節点の位置座標等、連続体を構成する各部位の位置座標を均質に選択する(例えば、各位置座標を等間隔でシフトさせる)ことで、説明変数89をサンプリングすることが考えられてきた。
【0151】
例えば、
図4に示した部品P1の場合、
図8の(a)に破線で示したように、節点Caをはじめとする各節点の位置座標が、設計空間上では等間隔でシフトしていくことになる。
【0152】
一方、連続体の構造分析においては、前述のように定義される位置座標(第1因子d)よりはむしろ、連続体における各部位間の長さl、相対的な角度θ、θ”など、各位置座標に対応して算出される因子(第2因子e)こそが、本質的な役割を果たす可能性がある。
【0153】
そのため、従来知られたように、設計空間上で第1因子dを均質に選択した場合、第1因子dと第2因子eとの関係次第では、第2因子eの値に偏りが生じてしまい、均質な選択とはならない可能性がある。その場合、最終的に得られた説明変数89を最適化問題に適用したときに、最適解の探索に不都合を来すおそれがある。
【0154】
例えば、
図4に示した部品P1の場合、
図8の(b)に破線で示したように、長さrと余弦cosθで表される第2因子eの値は、構造力学的空間では、非等間隔でシフトしていく(非均質的に選択される)ことになる。この場合、第2因子eの選択が偏って非均質なものとなってしまい、2点鎖線で示した領域R等、第2因子eの選択に漏れが生じるおそれがある。
【0155】
可能な限り均質な抽出とするためには、第2因子eの値を直に等間隔でシフトさせることが考えられる。しかしながら、既存のCAE環境を流用したり、構造分析における他の工程への影響を最小限に抑えたりするためには、第1因子dに立脚した解析を行わざるを得ない。
【0156】
また、実際の構造分析においては、例えば節点の位置座標を直にシフトさせることで、製品の断面形状・設計図面等がどのように変化するかを対話的に理解しながら分析を進める場合がある。
【0157】
この場合、第2因子eの値を直にシフトさせては不都合となる。すなわち、長さr等の因子を直にシフトさせると、断面の輪郭線が交差したり、重複したり、はみ出したりする等、位置座標をシフトさせる場合には起こり得ない構造が出現し得る。そうした構造は、サンプリングに用いることはできず、無駄なサンプルとなってしまう。無駄なサンプルの出現は、計算時間を抑制する上で不都合である。
【0158】
そこで、第2因子eの値を直にシフトさせずとも結果的に均質な選択になるように、サンプリング数を可能な限り増やすことも考えられる。しかしながら、サンプリング数の増大は、計算時間の増大を招くため不都合である。
【0159】
こうした問題に対して、本願発明者らは、相関係数が0に近い場合、0から遠い場合と比べて、より均質(無作為)な選択であるとみなすことができるという事実に着目した。
【0160】
そこで、前記実施形態によると、位置座標を含んだ第1因子dこそデータ選択ステップにおける選択対象とされるものの、その選択が均質か否かの判定には、
図3のステップS3及びステップS5並びに
図5等に例示したように、各位置座標に対応して算出される第2因子e間の相関係数が用いられるようになっている。これにより、第2因子eの値を直に等間隔でシフトさせずとも、この第2因子eに関し、因子選択の均質化を実現することができる。
【0161】
これにより、
図9の(c)に破線で示したように、設計空間上では第1因子dが非均質的に選択されるものの、同図の(d)に破線で示したように、構造力学的空間上では、長さrと余弦cosθで表される第2因子eの値が、等間隔でシフトしていく(均質的に選択される)ことになる。この場合、第2因子eの選択が、偏りなく均質なものとなる。
【0162】
また、前記実施形態に係る方法は、サンプリング数を増加させることには依拠しない手法にあたるため、計算時間の抑制と、因子選択の均質化とを両立することが可能になる。
【0163】
また、前記実施形態によると、最終的に得られる点群データ79は、2点間の長さ等、連続体の構造を特徴付ける第2因子eではなく、あくまでも各部位の位置座標に基づいた第1因子dから選択されることになる。これにより、点群データ79を用いた構造分析に際し、前者の第2因子eではなく、位置座標を直にシフトさせることができる。そのことで、無駄なサンプルの出現を抑制しつつ、製品の断面形状・設計図面等がどのように変化するかを対話的に理解しながら分析を進めることが可能になる。
【0164】
また、
図3のステップS5及びステップS6に例示したように、第2因子eについて因子選択の均質化が実現されたことで、それに続く工程における最適解の探索を、より適切かつより効率的に行うことが可能になる。この構成は、前述した計算時間の抑制と相まって、計算コストの節約に有利となる。
【0165】
また、
図9の(d)に例示したように、第2因子eについて因子選択の均質化が実現されたことで、連続体における部位間の相対的な位置関係を、サンプル間でより均質に変化させることができる。これにより、説明変数89を用いた構造分析を、より適切かつより効率的に行うことが可能になる。
【0166】
また、
図9の(d)に例示したように、第2因子eについて因子選択の均質化が実現されたことで、2つの節点Ca,Cbを結んだ直線の長さrを、サンプル間でより均質に変化させることができる。これにより、説明変数89を用いた構造分析を、より適切かつより効率的に行うことが可能になる。
【0167】
さらに、第2因子eについて因子選択の均質化が実現されたことで、部品P1および衝突物P2の間の相対的な衝突角度θ”さえも、サンプル間でより均質に変化させることができる。相対的な衝突角度θ”を均質に変化させることで、衝突時に本質的な寄与を果たすような衝突角度の大きさを、取りこぼしなく確実に導き出すことができる。これにより、説明変数89を用いた構造分析を、より適切かつより効率的に行うことが可能になる。
【0168】
また、例えばN通りの製品における初期形状を比較検討する際に、各初期形状における第2因子eの値を、製品間で均質に変化させることができるようになる。これにより、初期形状の比較検討を、より適切かつより効率的に行うことが可能になる。
【0169】
また、
図3のステップS2、ステップS3及びステップS4等を用いて説明したように、遺伝的アルゴリズムに基づいて第1因子dの組み合わせを更新することで、データ選択ステップの処理が繰り返される度に、相関係数の絶対値を、段階的にゼロに近接させていくことができる。これにより、データ選択ステップの繰り返し回数を抑制することができ、計算時間を抑制する上で有利になる。
【0170】
また、
図5のステップS36等を用いて説明したように、相関係数の絶対値の最大値を目的変数(更新用目的変数C)とし、これをゼロに近接させていくことで、非最大値を用いる場合に比べて、第2因子eに係る因子選択の均質化を、より確実に実現することができる。
【0171】
(第1因子の変形例)
前記実施形態では、N通りの第1因子dは、時系列方向における同時刻、又は、周波数方向における同周波数で設定された、N通りの連続体の構造を示していたが、本開示は、そうした構成には限定されない。
【0172】
N通りの第1因子dは、時系列方向又は周波数方向にN分割された、同一の連続体の構造を示していてもよい。このように構成することで、例えば一の製品における形状の経時変化を分析する際に、各時刻における第2因子eの値を、タイムステップ間で均質に変化させることができるようになる。これにより、形状の経時変化の分析を、より適切かつより効率的に行うことが可能になる。
【0173】
その他、N通りの第1因子dは、時系列方向又は周波数方向にG分割された、J通りの連続体の構造を示していてもよい。ここで、G及びJは、それぞれ2以上の自然数であって、N=G×Jの関係を満たすように選択される。このように構成することで、初期形状の比較検討及びその経時変化の分析を、より適切かつより効率的に行うことが可能になる。
【0174】
(他の実施形態)
前記実施形態では、一のコンピュータ1によって実施される構成を例示したが、本開示は、そうした構成には限定されない。本開示に係る情報処理方法及び情報処理プログラム29は、複数のコンピュータ1を用いて実行してもよい。また、本開示におけるコンピュータ1には、スーパーコンピュータ、PCクラスタ等の並列計算機も含まれる。
【0175】
なお、
図3のステップ間でコンピュータ1を変更することで、データ選択ステップ、相関判定ステップ及びデータ決定ステップを実行するCPU3と、探索ステップを実行するCPU3と、を異ならせてもよい。すなわち、本開示は、単一のCPU3によって全ステップが実行される構成には限定されない。
【符号の説明】
【0176】
1 コンピュータ(情報処理装置)
3 CPU(演算部)
7 RAM(記憶部)
9 SSD(記憶部)
18 記憶媒体
29 情報処理プログラム
49 第1因子群(N通りの第1因子)
59 第2因子群(n通りの第2因子)
69 特定第1因子群
S2 データ選択ステップ
S3 相関判定ステップ
S5 データ決定ステップ
S6 探索ステップ