(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024077394
(43)【公開日】2024-06-07
(54)【発明の名称】液滴吐出装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/01 20060101AFI20240531BHJP
【FI】
B41J2/01 301
B41J2/01 129
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022189472
(22)【出願日】2022-11-28
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100186853
【弁理士】
【氏名又は名称】宗像 孝志
(72)【発明者】
【氏名】矢仲 厚志
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056HA44
2C056HA60
(57)【要約】
【課題】照射機の冷却効果向上、画質向上、及び、部品の障害を少なくする。
【解決手段】液滴吐出装置は、記録媒体に対して液滴を吐出する液滴吐出装置であって、前記液滴を吐出する吐出部と、前記液滴に対して、前記液滴を硬化させる光を照射する照射部と、前記照射部を構成する筐体内部に、前記照射部を冷却する気体を取り込む吸気部と、前記気体で前記照射部を冷却すると生じる排出気体を前記筐体内部から排出する排出部と、前記排出気体の流れる排出流路と、前記吐出部から吐出された前記液滴が前記記録媒体に着弾するまでの液滴経路とを遮断する遮断部とを備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体に対して液滴を吐出する液滴吐出装置であって、
前記液滴を吐出する吐出部と、
前記液滴に対して、前記液滴を硬化させる光を照射する照射部と、
前記照射部を構成する筐体内部に、前記照射部を冷却する気体を取り込む吸気部と、
前記気体で前記照射部を冷却すると生じる排出気体を前記筐体内部から排出する排出部と、
前記排出気体の流れる排出流路と、前記吐出部から吐出された前記液滴が前記記録媒体に着弾するまでの液滴経路とを遮断する遮断部と
を備える液滴吐出装置。
【請求項2】
前記照射部を囲う外装を備え、
前記外装は、
外気を前記吸気部に誘導し、かつ、前記排出気体が前記吸気部に入るのを遮断する誘導部を備える
請求項1に記載の液滴吐出装置。
【請求項3】
前記遮断部は、
前記吐出部が前記液滴を吐出する吐出面、及び、前記記録媒体を設置する空間に前記排出気体が流れるのを遮断する
請求項1又は2に記載の液滴吐出装置。
【請求項4】
前記吐出部と、前記吐出部を配置する固定材との間にある隙間を塞ぐ封止材を更に備える
請求項1又は2に記載の液滴吐出装置。
【請求項5】
前記照射部が熱源となり、
前記吸気部が取り込んだ前記気体は、前記熱源を冷却し、
前記排出部が高温となった前記排出気体を排出し、
前記吸気部が取り込んだ前記気体は、前記吸気部から前記筐体内部へ入り、前記排出部から前記排出気体となって排出され、
前記遮断部が板金であり、前記排出流路と前記液滴経路の間に位置する
請求項1又は2に記載の液滴吐出装置。
【請求項6】
画像形成部を更に備える
請求項1又は2に記載の液滴吐出装置。
【請求項7】
前記光は、
紫外線、赤外線、又は、電子線を含む
請求項1又は2に記載の液滴吐出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液滴吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクを吐出するヘッドから紫外線等の光を照射すると硬化するインクを吐出する液滴吐出装置が知られている。当該液滴吐出装置において、媒体に着弾後のインクに光を照射する照射装置を、ヘッドの両端に備える構成が知られている。
【0003】
ヘッドのノズルからインクが吐出すると、いわゆるインクミストが生じる場合がある。そして、インクミストが照射装置の光源に付着すると、汚れて照射効率が低下する。そこで、インクミストが照射装置の光源に付着しないように、冷却風が流れる構造とする。また、インクミストがノズル面に付着し、吐出不良を引き起こすと印刷画質の低下につながるため、インクミストの付着を減らして、印刷画質の低下を抑制する技術が知られている(例えば、特許文献1等である)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の技術では、吸気口と排気口が近傍に位置すると、排気口からの熱せられた空気を吸引口から取り入れてしまい、照射機の冷却効果が得られなくなる。また、機内に様々な気流が発生してしまうと、インクジェット方式ではヘッドから吐出するインクを狙った着弾位置に着弾させ画像形成を行うため、画像品質が低下する。さらに、機内にインクミストを巻き散らしてしまうため、機内に搭載の部品にインクミストが付着すると、インク自体にアタック性があると、部品にインクミストが堆積し、障害を引き起こす課題がある。
【0005】
本発明は、照射機の冷却効果向上、画質向上、及び、部品の障害を少なくするのを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、液滴吐出装置は、
記録媒体に対して液滴を吐出する液滴吐出装置であって、
前記液滴を吐出する吐出部と、
前記液滴に対して、前記液滴を硬化させる光を照射する照射部と、
前記照射部を構成する筐体内部に、前記照射部を冷却する気体を取り込む吸気部と、
前記気体で前記照射部を冷却すると生じる排出気体を前記筐体内部から排出する排出部と、
前記排出気体の流れる排出流路と、前記吐出部から吐出された前記液滴が前記記録媒体に着弾するまでの液滴経路とを遮断する遮断部と
を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、照射機の冷却効果向上、画質向上、及び、部品の障害を少なくできる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図4】第3構成例におけるL字板の例を示す図である。
【
図6】第4構成例における隙間の例を示す図(その1)である。
【
図7】第4構成例における隙間の例を示す図(その2)である。
【
図9】隙間を塞ぐ前のキャリッジ内を示す図である。
【
図11】封止材が無い場合の比較例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付する図面を参照し、具体例を説明する。なお、実施形態は、以下に説明する具体例に限られない。
【0010】
[液滴吐出装置の構成例]
以下、添付する図面を参照し、具体例を説明する。なお、実施形態は、以下に説明する具体例に限られない。
【0011】
[液滴吐出装置の構成例]
以下、
図1に示すインクジェット式の記録装置(以下「記録装置10」という。)を液滴吐出装置の例として説明する。また、液滴は、紫外線が当たると硬化する、いわゆるUltra Violet(UV)インク(以下単に「インク」という。)を例に説明する。ゆえに、以下の例におけるヘッドは、クリアインクヘッド(Clear ink(Cl)ヘッド、以下単に「ヘッド」という。)である。さらに、記録媒体を用紙とする例で説明する。
【0012】
なお、用いる光、及び、液滴の組み合わせは、紫外線、及び、UVインクの組み合わせに限られない。例えば、光は、赤外線、又は、電子線等を含んでもよい。そして、液滴は、用いる光が照射されると硬化する種類である。したがって、本構成は、赤外線照射、又は、EB(Electron Beam)照射等であってもよい。
【0013】
【0014】
以下、水平方向を「X方向」とする。また、以下の例ではX方向は、主走査方向でもある。
【0015】
X方向に対し、直交する方向を「Y方向」とする。また、以下の例ではY方向は、副走査方向でもある。
【0016】
したがって、X-Y平面は、ステージ13上に設置する用紙の面と一致する。
【0017】
X‐Y平面、すなわち、用紙の面に対し、垂直となる方向を「Z方向」とする。
【0018】
記録装置10は、キャリッジ12と、記録媒体を載置するステージ13とを備える。以下、ステージ13、及び、ステージ13上の用紙は、位置が固定であり、キャリッジ12が移動、及び、回転する機構の例で説明する。また、説明を簡略化するため、記録媒体の面は、ステージ13と同一であるとする。
【0019】
キャリッジ12は、複数のノズルが設けられたヘッドを有する。
【0020】
ヘッドは、ノズルからインクを吐出することによってドットを記録し、画像を形成する。また、インクは、紫外線が照射されると硬化する。
【0021】
ノズルは、ステージ13との対向する向きに設けられる。
【0022】
照射機33は、紫外線を照射する光源を備える。そして、照射機33は、ノズルから吐出されたインクを硬化させる波長の光を照射する。以下、照射機33は、キャリッジ12と一体であって、キャリッジ12の平行移動により、照射機33が記録ヘッドと一緒にX方向、Y方向、及び、Z方向に移動する構成とする。
【0023】
左側板18a、及び、右側板18bに、ガントリー19を架け渡たす構成である。
【0024】
キャリッジ12は、X方向、Y方向、及び、Z方向に移動する。したがって、記録装置10は、各軸に、アクチュエータ、又は、移動用の機構部品があってもよい。
【0025】
X方向の移動は、ガントリー19に設けられたガイドレールに沿ってキャリッジ12が移動して実現する。
【0026】
Y方向の移動は、ステージ13の左右に設けられたガイドレール29に沿ってキャリッジ12が移動して実現する。
【0027】
Z方向の移動は、キャリッジ12が昇降する機構によって実現する。
【0028】
なお、X方向、Y方向、及び、Z方向の移動は、上記以外の構成で実現されてもよい。したがって、平行移動を実現するアクチュエータ、及び、機構部品の種類は問わず、キャリッジ12がX方向、Y方向、及び、Z方向に移動できればよい。また、上記以外の自由度が更にあってもよい。
【0029】
なお、上記の例では、キャリッジ12が、X方向、Y方向、及び、Z方向に移動するが、いずれかの自由度について、ステージ13が移動、又は、用紙が移動し、用紙に対してキャリッジ12の位置が相対的に移動できればよい。
【0030】
[動作例]
図2は、動作例を示す図である。以下、ステージ13上に、用紙Wが位置する例で説明する。キャリッジ12は、X軸方向において、往路X1、及び、復路X2に移動する。
【0031】
キャリッジ12は、ヘッドユニット30を備える。ヘッドユニット30は、画像形成を行う画像形成部、及び、吐出部の例である。そして、ヘッドユニット30は、ヘッドを備え、インクを用紙Wに対して吐出する。
【0032】
照射機33は、例えば、ヘッドユニット30を挟むように、X軸方向に2つ配置する。なお、照射機33の数、及び、位置は、
図2以外であってもよい。照射機33は、紫外線31を照射する。
【0033】
紫外線31は、例えば、UV-A、UV-B、又は、UV-Cである。そして、照射機33は、例えば、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、無電極UVランプ、UVレーザー、キセノンランプ、LEDランプ、又は、殺菌ランプ等を光源として備える。
【0034】
LEDランプを用いると、低消費電力、又は、長寿命にできる。有電極ランプの365nmのピーク照度は、数W/cm2であるのに対し、395nm、又は、405nmの帯域を用いるLEDランプの光源であると、ピーク照度は、十数W/cm2となり、有電極ランプの数倍の強度になる。
【0035】
光源は、インクを組成する光重合開始剤に合わせて選択され、光重合開始剤の吸収特性に合わせたものが理想である。例えば、光重合開始剤の反応ピーク波長が365nmであれば、300nm乃至450nmの波長領域が強い光を照射する光源が望ましい。具体的には、光源は、メタルハライドランプ等が望ましい。また、光重合開始剤の反応ピーク波長が240nmであれば、光源は、高圧水銀ランプ等が望ましい。
【0036】
有電極ランプを用いると、広い波長域の発光が可能である。一方で、LEDランプを用いると、中心波長のまわりに狭い発光スペクトルの発光が可能である。
【0037】
また、発光波長の異なる2種以上の紫外線ランプと、各ランプの発光波長に反応する光重合開始剤を含むインクを用いた画像形成を行うことに加え、照射条件(例えば、発光波長、レベリング時間、及び、照射強度等である。)をコントロールすると、部分的に任意の画像品質をより高品質にできる。
【0038】
[第1構成例]
図3は、第1構成例を示す図である。以下、照射機33を中心にした周辺の構造を説明する。
【0039】
照射機33は、動作すると熱を発し、熱源となる。そのため、照射機33は、空気を当てて冷却されるのが望ましい。したがって、記録装置10は、照射機33を構成する筐体内部に、照射機33を冷却する気体を取り込む吸気部を備える。具体的には、吸気部は、吸引口101である。
【0040】
吸引口101から外気を取り込むと、筐体内部に空気を取り込み、照射機33を冷却できる。具体的には、吸引口101によって、外気が筐体内部に流れる流路(以下「吸引流路201」という。)を流れるように、空気が筐体内部に取り込まれる。吸引流路201で取り込まれた空気は、冷却に用いられると、取り込まれた時点より熱せられるため、高温な空気となる。
【0041】
記録装置10は、照射機33を構成する筐体内部から、高温となった気体を排出する排出部を備える。具体的には、排出部は、排出口102である。例えば、排出口102は、吸引口101より下の位置に形成される。排出口102によって、筐体内部の空気が排出されると、筐体内部から外部に向かって流れる流路(以下「排出流路202」という。)を流れるように、空気が筐体内部から排出される。
【0042】
筐体内部は、吸引流路201、及び、排出流路202等によって複雑な気流となる。
【0043】
記録装置10は、遮断部を備える。具体的には、遮断部は、L字形状の板金カバー(以下単に「L字板103」という。)である。
【0044】
L字板103は、例えば、
図2のように、排出流路202と、ヘッドから吐出されたインクが用紙Wに着弾するまでの経路(以下「液滴経路34」という。)とを遮断するような形状、及び、位置となるように設置する。
図2に示す構造では、液滴経路34は、図示するような空間であるが、この空間は、ヘッドの位置等によって異なる。
【0045】
排出流路202と液滴経路34が遮断されると、ヘッド、及び、ヘッドの周辺に風が当たるのを防ぐことができる。ヘッド、及び、ヘッドの周辺に風が当たると、気流が生じる。このような気流が生じてしまうと、インクミストが生じやすくなる。
【0046】
そこで、本構成のように、排出流路202と液滴経路34を遮断する構成にすると、ヘッド、及び、ヘッドの周辺に風が当たることで生じるインクミストを減らし、インクミストの発生量を少なくできる。
【0047】
ほかにも、排出流路202と液滴経路34が遮断されると、ヘッドから吐出された後、飛んでいるインクに風が当たるのを防ぐことができる。そのため、風によってインクが曲がって飛ぶのを防ぎ、インクを狙った位置に精度良く着弾させることができる。
【0048】
また、排出流路202と液滴経路34が遮断されると、インクがキャリッジ12に付着するのを防ぐことができる。
【0049】
上記の通り、遮断部は、排出流路202と液滴経路34の間に設置され、排出流路202を流れる排出気体が液滴経路に流れ込むのを防ぐ部材である。そのため、遮断部の大きさ、形状、材質、及び、設置位置は、排出流路202と液滴経路の関係によって様々な寸法、及び、種類となる。また、遮断部は、排出流路202に流れる高温の気体と液滴経路34が分岐できれば、大きさ、形状、材質、及び、設置位置等を問わない。
【0050】
[第2構成例]
記録装置10は、照射機33を囲う外装を備えるのが望ましい。以下、外装をカバー100とする例で説明する。カバー100は、例えば、
図3に示すような位置に設置する。
【0051】
カバー100は、誘導部を備える構成が望ましい。誘導部は、例えば、仕切板110である。
【0052】
仕切板110は、空間を仕切る機構部品である。なお、誘導部は、ファン等でもよい。ファンを用いると、より強力に外気を取り込むことができる。
【0053】
仕切板110を設置すると、外気を吸引口101に誘導できる。筐体内部は、高温になる。筐体内部は、複雑な気流となる。また、外気の方が筐体内部にある気体と比較して温度が低く、外気を吸引口101から吸引できると、照射機33を冷却できる。
【0054】
また、仕切板110を設置すると、高温となった排気される気体(以下「排出気体」という。)が吸引口101に入るのを遮断し、照射機33をより冷却できる。
【0055】
したがって、仕切板110は、排出流路202とは重ならない位置に設置されるのが望ましい。例えば、
図3に示すように、仕切板110は、上向きに開口であるのに対し、排出流路202は下向きである。このように、仕切板110は、排出流路202に流れる排出気体が入り込まない位置、及び、向きに設置されるのが望ましい。したがって、誘導部は、仕切板110のように、高温の気体と冷却に用いる気体が存在する空間を仕切る機構部品である。
【0056】
なお、誘導部は、吸引口101、及び、排出流路202の位置関係等によって、大きさ、形状、素材、構成する部品、及び、開口の向き等が定まる。
【0057】
このように、排出気体が吸引口101に入るのを遮断し、かつ、外気を吸引口101に誘導できる誘導部があると、照射機33を冷却する冷却効果を高めることができる。
【0058】
[第3構成例]
遮断部は、ヘッドがインクを吐出する吐出面、及び、用紙Wを設置する空間に排出気体が流れるのを遮断する構成が望ましい。具体的には、以下のような形状のL字板103が望ましい。
【0059】
図4は、第3構成例におけるL字板の例を示す図である。具体的には、L字板103は、
図3に示す構成例において、照射機33の底面に生じる隙間を封鎖する板材等である。なお、L字板103は、照射機33が姿勢を調整できる構成である場合には、照射機33の姿勢に合わせて隙間を封鎖できるように、スライド機構等があってもよい。
【0060】
図3に示す構成例では、吐出面60、及び、用紙Wを設置する空間(以下「設置面61」という。)は、照射機33よりZ軸において低い位置である。
【0061】
例えば、
図3に示す例では、隙間は、隙間位置62等に生じる。ただし、隙間位置62は、周辺の機構等によって生じる位置は異なる。したがって、L字板103は、吐出面60、及び、設置面61に排出気体が流れ込む経路を塞ぐ位置に設置する部材である。照射機33を構成する筐体に隙間があると、隙間から排出気体が流れて、排出気体が吐出面60、及び、設置面61に流れやすくなる。
【0062】
吐出面60、及び、設置面61に排出気体が流れ込むのを少なくできると、ヘッドが吐出したインクが排出気体で曲がるのを防ぐことができる。
【0063】
また、照射機33は、姿勢を変化させる自由度を備える場合がある。そのため、照射機33の姿勢が変化した場合には、L字板103は、姿勢に応じて、封鎖する領域が調整できる構成が望ましい。例えば、L字板103は、位置、又は、角度が固定でなく、ユーザの操作によって変更できる自由度を備えるのが望ましい。
【0064】
[第4構成例]
図5は、吐出面の例を示す図である。例えば、吐出面、すなわち、キャリッジ12の底面には、千鳥状に複数のヘッド41が配置される。以下、ヘッド41を固定する固定材をヘッドプレート40とする例で説明する。具体的には、ヘッドプレート40に対し、複数のヘッド41が配置される。
【0065】
以下、ヘッド41の位置は、固定とする。ヘッド41は、キャリッジがX軸、及び、Y軸上を走査すると、一緒に移動する。
【0066】
そして、ヘッド41の周辺には以下のように隙間が生じやすくなる。
【0067】
図6は、第4構成例における隙間の例を示す図(その1)である。
【0068】
図7は、第4構成例における隙間の例を示す図(その2)である。
【0069】
図6、及び、
図7は、
図5に示すヘッド41の周辺を別の視点で見ている図である。
【0070】
ヘッド41の周辺には隙間42が生じる。なお、隙間42の位置、大きさ、数、形状、及び、比率は、ヘッド41、ヘッド41の周辺に実装される部品、及び、ヘッドプレート40の種類等によって様々である。
【0071】
隙間42があると、隙間42を通って機体内にインクミストが侵入しやすい。そして、インクミストが機体内に侵入すると、インクが電気回路基板の表面に堆積する。このようなインクの堆積が生じると、故障の原因となる。したがって、隙間42を塞ぐ部材(以下「封止材」という。)が設置される構成が望ましい。
【0072】
封止材は、例えば、ブラケット、又は、フィルム等である。なお、封止材は、隙間42を塞ぐことができれば、大きさ、形状、及び、材質等を問わない。
【0073】
封止材が設置されると、以下のように、インクミストの侵入を防ぐことができる。
【0074】
【0075】
図9は、隙間を塞ぐ前のキャリッジ内を示す図である。
【0076】
【0077】
図8、及び、
図9は、封止材を設置する前の状態を示す図である。一方で、
図10は、封止材を設置した後の状態を示す図である。
【0078】
図8、及び、
図10は、
図6、及び、
図7で示すヘッド41の周辺において、気体の流れをシミュレーションした結果を示すコンター図である。
図9は、キャリッジ12内の気体の流れを示す図である。また、
図8乃至
図10は、いずれも断面図である。
【0079】
図8に示すように、隙間位置62に生じている隙間42が塞がれていないと、強い上昇気流(以下「第1気流50」という。)が生じる。具体的には、第1気流50は、流速が0.54m/sである。
【0080】
第1気流50があると、
図9に示すように、キャリッジ12内を流れる気流(以下「機内気流51」という。)が生じやすくなる。このような機内気流51が生じると、機内にインクが付着して汚れが生じやすくなる。
【0081】
一方で、隙間42を封止材で塞ぐと、
図10に示すように上昇気流が弱くなる。以下、弱くなった上昇気流を「第2気流52」という。第2気流52は、流速が0.34m/sである。したがって、隙間42を封止材で塞ぐと、第2気流52を第1気流50から風速を37%程度弱くできる。
【0082】
図9が示すように、隙間42からの上昇気流は、キャリッジ12内を流れる。この上昇気流には、インクミストが多く含まれる。そのため、キャリッジ12内に流れ込む上昇気流が強いと、よりインクミストがキャリッジ12内に侵入してキャリッジ12内を汚す原因となる。
【0083】
隙間42は、ヘッド41の自由度を確保するため、ヘッド41に近接する位置に生じやすい。例えば、隙間42は、ヘッド41と、コネクタ等のヘッドプレート40に実装する部品との間に生じる。その隙間42を封じるように封止材を設置すると、第1気流50を第2気流52のように、弱めることができる。このように、封止材を備えると、以下のように機体内の汚れを軽減できる。
【0084】
図9における第1実験箇所71、第2実験箇所72、第3実験箇所73、第4実験箇所74、及び、第5実験箇所75の5箇所に透明基材を設置して汚れ度合いを調べる実験結果を以下に説明する。
【0085】
図11は、封止材が無い場合の比較例を示す図である。
図11は、キャリッジ12内の板材を示す図である。第1比較材151が第1実験箇所71に設置した透明基材である。第2比較材152が第2実験箇所72に設置した透明基材である。第3比較材153が第3実験箇所73に設置した透明基材である。第4比較材154が第4実験箇所74に設置した透明基材である。第5比較材155が第5実験箇所75に設置した透明基材である。封止材が無いと、図示するように、付着部分111が生じ、インクの付着により汚れが多く生じる。
【0086】
図12は、封止材による効果例を示す図である。
図12は、
図11と同じ板材を示す。実験箇所は、比較例と同様に、
図9における第1実験箇所71、第2実験箇所72、第3実験箇所73、第4実験箇所74、及び、第5実験箇所75の5箇所である。第1実験材251が第1実験箇所71に設置した透明基材である。第2実験材252が第2実験箇所72に設置した透明基材である。第3実験材253が第3実験箇所73に設置した透明基材である。第4実験材254が第4実験箇所74に設置した透明基材である。第5実験材255が第5実験箇所75に設置した透明基材である。
図11と比較すると、封止材があると、付着部分111の色が薄くなっており、インクの付着が少ない結果となる。このように、封止材があると、インクの付着が減り、汚れが少なくなる。具体的には、封止材により、80%程度インクミストを減らすことができる。このように汚れが減らせると、装置内の汚染、及び、汚染による故障を少なくすることができる。
【0087】
[その他の実施形態]
液滴吐出装置は、画像形成を行う画像形成部を備えるのが望ましい。画像形成部は、上記に説明するヘッドで実現してもよいし、又は、画像形成を他に行う装置を更に備えて実現してもよい。
【0088】
装置の構成は、上記に説明する構成に限られない。例えば、各装置は、上記に説明する以外の部品を備えてもよい。
【0089】
記録媒体は、例えば、用紙(「普通紙」等ともいう。)である。ただし、記録媒体は、用紙以外のコート紙、ラベル紙等の他、オーバヘッドプロジェクタシート、フィルム、又は、可撓性を持つ薄板等でもよい。すなわち、記録媒体の素材は、インク滴が付着可能、一時的に付着可能、付着して固着、又は、付着して浸透する材質等であればよい。具体的には、記録媒体は、用紙、フィルム、若しくは、布等の被記録媒体、電子基板、圧電素子(「圧電部材」等ともいう。)等の電子部品、粉体層(「粉末層」等ともいう。)、臓器モデル、又は、検査用セル等である。また、3次元的な物体が形成されてもよい。このように、記録媒体の材質は、液滴が付着可能であって、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックス、又は、これらの組み合わせ等であればよい。また、液滴は、上記の用途に応じて、インク以外の種類である、記録液、定着処理液、又は、樹脂等が含まれてもよい。
【0090】
本発明の態様は、例えば、以下のとおりである。
【0091】
<1>記録媒体に対して液滴を吐出する液滴吐出装置であって、
前記液滴を吐出する吐出部と、
前記液滴に対して、前記液滴を硬化させる光を照射する照射部と、
前記照射部を構成する筐体内部に、前記照射部を冷却する気体を取り込む吸気部と、
前記気体で前記照射部を冷却すると生じる排出気体を前記筐体内部から排出する排出部と、
前記排出気体の流れる排出流路と、前記吐出部から吐出された前記液滴が前記記録媒体に着弾するまでの液滴経路とを遮断する遮断部と
を備える液滴吐出装置である。
【0092】
<2>前記照射部を囲う外装を備え、
前記外装は、
外気を前記吸気部に誘導し、かつ、前記排出気体が前記吸気部に入るのを遮断する誘導部を備える
上記<1>に記載の液滴吐出装置である。
【0093】
<3>前記遮断部は、
前記吐出部が前記液滴を吐出する吐出面、及び、前記記録媒体を設置する空間に前記排出気体が流れるのを遮断する
上記<1>又は上記<2>に記載の液滴吐出装置である。
【0094】
<4>前記吐出部と、前記吐出部を配置する固定材との間にある隙間を塞ぐ封止材を更に備える
上記<1>乃至上記<3>のいずれかに記載の液滴吐出装置である。
【0095】
<5>前記照射部が熱源となり、
前記吸気部が取り込んだ前記気体は、前記熱源を冷却し、
前記排出部が高温となった前記気体を排出し、
前記吸気部が取り込んだ前記気体は、前記吸気部から前記筐体内部へ入り、前記排出部から前記排出気体となって排出され、
前記遮断部が板金であり、前記排出流路と前記液滴経路の間に位置する
上記<1>乃至上記<4>のいずれかに記載の液滴吐出装置である。
【0096】
<6>画像形成部を更に備える
上記<1>乃至上記<5>のいずれかに記載の液滴吐出装置である。
【0097】
<7>前記光は、
紫外線、赤外線、又は、電子線を含む
上記<1>乃至上記<6>のいずれかに記載の液滴吐出装置である。
【0098】
なお、本発明は、上記に例示する各実施形態に限定されない。したがって、本発明は、技術的な要旨を逸脱しない範囲で、構成要素の追加、又は、変形が可能である。ゆえに、特許請求の範囲に記載された技術思想に含まれる技術的事項のすべてが本発明の対象となる。なお、上記に例示する実施形態は、実施において好適な具体例である。そして、当業者であれば、開示した内容から様々な変形例を実現で可能であって、このような変形例は、特許請求の範囲に記載された技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0099】
10 :記録装置
12 :キャリッジ
13 :ステージ
31 :紫外線
33 :照射機
40 :ヘッドプレート
41 :ヘッド
42 :隙間
50 :第1気流
51 :機内気流
52 :第2気流
100 :カバー
101 :吸引口
102 :排出口
103 :L字板
110 :仕切板
201 :吸引流路
202 :排出流路
W :用紙
【先行技術文献】
【特許文献】
【0100】