(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024077395
(43)【公開日】2024-06-07
(54)【発明の名称】文化財展示システム、文化財展示方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G06T 19/00 20110101AFI20240531BHJP
G06F 3/04815 20220101ALI20240531BHJP
【FI】
G06T19/00 300A
G06F3/04815
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022189473
(22)【出願日】2022-11-28
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100139686
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 史朗
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(72)【発明者】
【氏名】荒木田 芽
(72)【発明者】
【氏名】二俣 宏歌
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 志津子
【テーマコード(参考)】
5B050
5E555
【Fターム(参考)】
5B050BA09
5B050BA12
5B050BA13
5B050CA07
5B050CA08
5B050EA07
5B050EA12
5B050EA19
5E555AA27
5E555AA76
5E555BA02
5E555BA05
5E555BA06
5E555BA74
5E555BB02
5E555BB05
5E555BB06
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5E555BE17
5E555CA12
5E555CB16
5E555CB31
5E555CC26
5E555DB31
5E555DB32
5E555DC19
5E555FA00
(57)【要約】
【課題】仮想空間において鑑賞者にとって有用な態様で文化財の展示が行われるようにする。
【解決手段】1の文化財を構成する構成要素を3次元でオブジェクト化したものであり、前記1の文化財の内容に基づいて設定した3次元の仮想空間内の正規位置を対応付けた文化財要素オブジェクトを前記仮想空間に配置するにあたり、所定の移動対象の文化財要素オブジェクトについては、アバターにより移動可能に配置し、移動対象ではない文化財要素オブジェクトについては、対応の正規位置にて移動不可に配置するオブジェクト配置部を備えて文化財展示システムを構成する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1の文化財を構成する構成要素を3次元でオブジェクト化したものであり、前記1の文化財の内容に基づいて設定した3次元の仮想空間内の正規位置を対応付けた文化財要素オブジェクトを前記仮想空間に配置するにあたり、所定の移動対象の文化財要素オブジェクトについては、アバターにより移動可能に配置し、移動対象ではない文化財要素オブジェクトについては、対応の正規位置にて移動不可に配置するオブジェクト配置部
を備える文化財展示システム。
【請求項2】
アバターにより移動された前記移動対象の文化財要素オブジェクトが対応の正規位置であるか否かを判定する位置判定部と、
前記位置判定部により正規位置であると判定されたことに応じて、前記文化財に関連する所定のコンテンツを前記仮想空間にて再生するコンテンツ再生部とをさらに備える
請求項1に記載の文化財展示システム。
【請求項3】
前記コンテンツは、前記1の文化財としての絵画を再現した映像である
請求項2に記載の文化財展示システム。
【請求項4】
前記1の文化財は絵画であり、前記文化財要素オブジェクトは、前記絵画にて描かれている物体である
請求項1から3のいずれか一項に記載の文化財展示システム。
【請求項5】
前記文化財要素オブジェクトの正規位置は、前記絵画において描写される対応の物体の横方向における位置と奥行き方向の位置とに基づいて設定される
請求項4に記載の文化財展示システム。
【請求項6】
前記文化財要素オブジェクトは、前記絵画において描写される対応の物体の奥行き方向の位置に応じたものとして表現される濃淡が反映される
請求項4に記載の文化財展示システム。
【請求項7】
文化財展示システムにおける文化財展示方法であって、
オブジェクト配置部が、1の文化財を構成する構成要素を3次元でオブジェクト化したものであり、前記1の文化財の内容に基づいて設定した3次元の仮想空間内の正規位置を対応付けた文化財要素オブジェクトを前記仮想空間に配置するにあたり、所定の移動対象の文化財要素オブジェクトについては、アバターにより移動可能に配置し、移動対象ではない文化財要素オブジェクトについては、対応の正規位置にて移動不可に配置するオブジェクト配置ステップ
を含む文化財展示方法。
【請求項8】
文化財展示システムとしてのコンピュータを、
1の文化財を構成する構成要素を3次元でオブジェクト化したものであり、前記1の文化財の内容に基づいて設定した3次元の仮想空間内の正規位置を対応付けた文化財要素オブジェクトを前記仮想空間に配置するにあたり、所定の移動対象の文化財要素オブジェクトについては、アバターにより移動可能に配置し、移動対象ではない文化財要素オブジェクトについては、対応の正規位置にて移動不可に配置するオブジェクト配置部
として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、文化財展示システム、文化財展示方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
美術館、南海の孤島、宇宙空間、下町ギャラリーなどとして構築されたギャラリーに美術品のオブジェクトを配置してユーザに提示するようにされた技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば博物館等としての仮想空間において文化財を展示するにあたり、現実では実現が難しいのであるが、鑑賞者にとって文化財に対する理解が深まるようにされた有用な態様で展示が行われるようにすることが求められる。
【0005】
本発明は、仮想空間において鑑賞者にとって有用な態様で文化財の展示が行われるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決する本発明の一態様は、1の文化財を構成する構成要素を3次元でオブジェクト化したものであり、前記1の文化財の内容に基づいて設定した3次元の仮想空間内の正規位置を対応付けた文化財要素オブジェクトを前記仮想空間に配置するにあたり、所定の移動対象の文化財要素オブジェクトについては、アバターにより移動可能に配置し、移動対象ではない文化財要素オブジェクトについては、対応の正規位置にて移動不可に配置するオブジェクト配置部を備える文化財展示システムである。
【0007】
本発明の一態様は、文化財展示システムにおける文化財展示方法であって、オブジェクト配置部が、1の文化財を構成する構成要素を3次元でオブジェクト化したものであり、前記1の文化財の内容に基づいて設定した3次元の仮想空間内の正規位置を対応付けた文化財要素オブジェクトを前記仮想空間に配置するにあたり、所定の移動対象の文化財要素オブジェクトについては、アバターにより移動可能に配置し、移動対象ではない文化財要素オブジェクトについては、対応の正規位置にて移動不可に配置するオブジェクト配置ステップを含む文化財展示方法である。
【0008】
本発明の一態様は、文化財展示システムとしてのコンピュータを、1の文化財を構成する構成要素を3次元でオブジェクト化したものであり、前記1の文化財の内容に基づいて設定した3次元の仮想空間内の正規位置を対応付けた文化財要素オブジェクトを前記仮想空間に配置するにあたり、所定の移動対象の文化財要素オブジェクトについては、アバターにより移動可能に配置し、移動対象ではない文化財要素オブジェクトについては、対応の正規位置にて移動不可に配置するオブジェクト配置部として機能させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、仮想空間において鑑賞者にとって有用な態様で文化財の展示が行われるようになるとの効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本実施形態に係る文化財展示システムの構成例を示す図である。
【
図2】本実施形態に係る仮想空間における文化財の展示の態様例を示す図である。
【
図3】本実施形態に係る文化財展示装置の構成例を示す図である。
【
図4】本実施形態に係る文化財情報の構造例を示す図である。
【
図5】本実施形態に係る文化財情報におけるオブジェクトデータセットの構造例を示す図である。
【
図6】本実施形態に係るユーザ端末の構成例を示す図である。
【
図7】本実施形態に係る文化財展示装置が実行する処理手順例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<実施形態>
図1は、本実施形態の文化財展示システムの全体的な構成例を示している。本実施形態の文化財展示システムは、文化財展示装置100と1以上のユーザ端末200とを備える。文化財展示装置100とユーザ端末200とはネットワーク経由で接続される。
【0012】
文化財展示装置100は、文化財を再現したオブジェクトを配置した3次元の仮想空間(メタバース)を構築し、構築した仮想空間をユーザ端末200に表示させることで、仮想空間に存在するアバターに向けて文化財を展示する。文化財のオブジェクトが配置される仮想空間は、例えば、現実あるいは架空の博物館を再現したものであってもよいし、博物館以外の環境を再現したものであってよい。
【0013】
文化財展示装置100は、ネットワーク上に存在する単一のサーバ等の装置として設けられてもよいし、ネットワーク上において複数に分散されて各々が所定の機能を有するサーバ等の装置間で連携して処理を実行することにより実現されてもよい。
【0014】
ユーザ端末200は、文化財展示装置100が構築した仮想空間に存在させたアバターに対応するユーザが利用する端末である。ユーザは、ユーザ端末200を操作して、ユーザ端末200を文化財展示装置100にアクセスさせる。文化財展示装置100にアクセスしたユーザ端末200は、文化財展示装置100が構築した仮想空間を表示する。また、ユーザの操作に応じて、ユーザ端末200は、ユーザに対応するアバターを仮想空間に存在させ、仮想空間にて存在するアバターをユーザの分身として行動させることができる。
ユーザは、ユーザ端末200にて表示されている仮想空間において自己の分身であるアバターに向けて文化財が展示されている様子を観察することができる。これにより、ユーザ自身が、自己のアバターを通じて、仮想空間において展示される文化財を鑑賞することができる。
【0015】
ユーザ端末200は、スマートフォン、タブレット端末、パーソナルコンピュータ、ウェアラブルVR端末等であってよい。
【0016】
図2は、文化財展示装置100により構築された仮想空間VSにおける文化財の展示の態様例を示している。同図の仮想空間VSについては、手前側と奥側とが定められている。
同図の仮想空間VSは、水墨画(絵画の一例)により複数の樹木が植生している林を描写した屏風としての文化財を展示する空間となる。仮想空間VSに入場したアバターAVTは、まずは、仮想空間VSの手前側のショーケースSCの手前に位置するようにされる。ショーケースSCには、展示対象の屏風が手前に位置するアバターAVTに向けて展示されるように収められている。
【0017】
仮想空間VSのショーケースSCの奥側には、屏風に描かれている複数の樹木のそれぞれを3次元により再現した複数の樹木オブジェクトTOB(文化財要素オブジェクトの一例)が配置されている。
屏風に描かれている水墨画は、描写した空間における樹木の奥行き方向の位置を、墨の濃淡により表現している。つまり、水墨画において樹木は、位置が手前側となるのに応じて濃くなり、奥側となるのに応じて淡くなるように描写される。樹木オブジェクトTOBのそれぞれは、水墨画における対応の樹木を描写している濃淡が反映されるようにして生成されている。
そのうえで、樹木オブジェクトTOBは、水墨画における構図が反映されるようにして仮想空間VSに配置される。つまり、樹木オブジェクトTOBは、水墨画において表現されている横方向の位置と奥行き方向の位置とが反映されるようにして仮想空間VSに配置される。
このように樹木オブジェクトTOBが配置されることで、仮想空間VSの手前側から奥側に向けたアバターAVTの視点では、屏風の水墨画に描写されている樹木が、水墨画の描写を反映しつつ、3次元的に展開されている様子を観察することができる。このような様子を、自分のアバターAVTを操作するユーザもユーザ端末200により観察できる。
【0018】
このような仮想空間VSの背景は、実物の水墨画の背景を反映させた色合いが設定されてよい。また、仮想空間VSにおいては、例えば風により樹木オブジェクトTOBの枝葉を揺らしたり、雨や雪を降らせたりしてよい。また、風の音、雨や雪が降る音なども再現されてよい。さらに、屏風に関連するような音楽が流れるようにされてもよい。
【0019】
そのうえで、樹木オブジェクトTOBのうち1以上の所定の樹木オブジェクトTOBについては、仮想空間VSにおいて、意図的に正規位置ではない誤った位置にて配置されるようにする。この際、樹木オブジェクトTOB自体に付されている水墨画の濃淡の度合いは、奥行きの位置の変化にかかわらず変更されなくともよい。
誤った位置にて配置される樹木オブジェクトTOBは、ユーザの操作に応じてアバターAVTが仮想空間VSにて移動させることが可能とされる。このようにアバターAVTにより移動可能な樹木オブジェクトTOBは、仮想空間VSにおいて移動可能であることが明示されていてよい。明示の態様としては、例えば輪郭の強調や移動可能であることを示す標示の付与であったりしてよい。
【0020】
仮想空間VSにおいては、アバターAVTに対して、誤った位置に配置されている移動可能な樹木オブジェクトTOBを、正規位置にまで移動して配置させることが、ミッションとして与えられる。
そこで、ユーザは、アバターAVTを操作して、移動可能な樹木オブジェクトTOBを、正規位置に移動させるようにする。正規位置は明示されていてもよいし、明示されていなくともよい。正規位置が明示されていない場合、ユーザは、ショーケースSCに収められている屏風に描かれている画を参照したり、移動可能な樹木オブジェクトTOBに付されている濃淡の度合いが奥行き方向においてどのあたりの位置に対応するのかを推測しながら、正規位置を探るようにされる。
【0021】
移動可能な樹木オブジェクトTOBがアバターAVTにより正規位置に移動されたときには、当該樹木オブジェクトTOBが正規位置に配置された状態となったことの通知が所定の態様により行われてよい。このような通知は、例えば正規位置に配置されたタイミングで対応の樹木オブジェクトTOBを光らせたりするなどの映像効果を与えることにより行われてよい。
【0022】
ユーザは、アバターAVTを操作して、移動可能な樹木オブジェクトTOBを、1本ずつ、それぞれの正規位置に移動させていくようにする。
例えば、移動可能な樹木オブジェクトTOBが正規位置に配置されていない仮想空間VSの状態は、ショーケースSC内の屏風に描かれている本来の水墨画における樹木の配置と異なっていることから、例えば構図や遠近感の表現などに違和感が生じている。これまで正規位置に配置されていなかった移動可能な樹木オブジェクトTOBが正規位置に配置されることで、上記の違和感が解消されていくことになる。即ち、ユーザは、アバターAVTを操作して移動可能な樹木オブジェクトTOBを正規位置に配置していくことで、屏風に描かれた樹木の配置による構図や遠近感の表現の素晴らしさを体感できることになる。
【0023】
そして、全ての移動可能な樹木オブジェクトTOBが正規位置に配置されてミッションが完了すると、ミッション完了に対する報酬として、図示は省略するが、仮想空間VSにおいて対象の文化財である屏風のVR(Virtual Reality)映像コンテンツが再生される。ユーザは、再生される屏風のVR映像コンテンツをユーザ端末200により視聴することで、あたかも自分の間近にあるようにして存在する屏風を詳細に鑑賞することができる。
【0024】
なお、1のアバターAVTが移動可能な樹木オブジェクトTOBを移動させている様子の仮想空間VSは、対応のアバターAVTのユーザのユーザ端末200だけでなく、例えば同じ仮想空間VSに存在している他のアバターAVTに対応するユーザのユーザ端末200でも共有されるように表示されてよい。また、ミッションの完了に応じて再生されるVR映像コンテンツも、同じ仮想空間VSに存在している他のアバターAVTに対応するユーザのユーザ端末200にて共有されるように表示されてよい。
このように同じ様子の仮想空間VSが複数のユーザ間で共有される場合、当該複数のユーザがそれぞれのアバターAVTを操作して、移動可能な樹木オブジェクトTOBの移動を協力して行うことで、相互にコミュニケーションを図ることもできる。
【0025】
図3は、文化財展示装置100の構成例を示している。同図に示される文化財展示装置100としての機能は、文化財展示装置100としてのハードウェアにおいて備えられるCPUがプログラムを実行することにより実現される。同図の文化財展示装置100は、通信部101、制御部102、及び記憶部103を備える。
【0026】
通信部101は、ネットワーク経由でユーザ端末200等と通信を行う。
【0027】
制御部102は、文化財展示装置100における各種の制御を実行する。制御部102は、仮想空間提供部121、アバター制御部122、オブジェクト配置部123、位置判定部124、及びコンテンツ再生部125を備える。
【0028】
仮想空間提供部121は、ユーザに仮想空間VSの環境を提供する。具体的に、仮想空間提供部121は、仮想空間VSを構築(生成)する。仮想空間提供部121は、文化財展示装置100にアクセスしているユーザ端末200にて構築した仮想空間VSが表示されるように制御する。
【0029】
アバター制御部122は、仮想空間内に存在させたアバターAVTが行動できるように制御する。ここでのアバターの行動には、アバターAVTが移動すること、アバターAVTがジェスチャーなどにより身体部分を動かすこと、アバターAVTが発言することなどが含まれてよい。アバター制御部122は、文化財展示装置100にアクセスしているユーザ端末200にユーザが行った操作に応じてアバターAVTを行動させる。また、アバター制御部122は、ユーザ端末200に対する操作によらず、所定の条件に応じてアバターAVTを行動させてもよい。
【0030】
オブジェクト配置部123は、仮想空間提供部121により構築された仮想空間VSにオブジェクトを配置する。オブジェクト配置部123は、文化財情報記憶部131が記憶するオブジェクトデータに格納されるオブジェクトデータを利用してオブジェクトを生成し、生成したオブジェクトを仮想空間VSに配置する。
【0031】
位置判定部124は、仮想空間VSにおいて移動可能な樹木オブジェクトTOBが正規位置に配置されている状態か否かを判定する。
【0032】
コンテンツ再生部125は、全ての移動可能な樹木オブジェクトTOBが正規位置に配置されたことに応じて、対象の文化財である屏風のVR映像コンテンツを再生する。
【0033】
記憶部103は、文化財展示装置100に対応する各種の情報を記憶する。記憶部103は、文化財情報記憶部131を備える。
【0034】
文化財情報記憶部131は、文化財情報を記憶する。文化財情報は、仮想空間VSにて再現する文化財としての屏風を再現するのに用いられる情報である。
図4は、文化財情報記憶部131が記憶する文化財情報の構造例を示している。文化財情報は、文化財ID、文化財解説情報、オブジェクトデータセット、及びコンテンツデータの領域を含む。
【0035】
文化財IDの領域は、仮想空間VSが対応する博物館において展示される文化財のうち、対応の屏風としての文化財を示す文化財IDを格納する。
【0036】
文化財解説情報の領域は、対応の文化財についての文化財解説情報を格納する。文化財解説情報は、対応の文化財を解説するテキストや画像(制止画、動画)、音声、音楽を含んでよい。
【0037】
オブジェクトデータセットの領域は、仮想空間VSでの対応の文化財の展示に用いられ文化財を構成する要素となるオブジェクト(文化財要素オブジェクト)の生成に用いられるオブジェクトデータを格納する。オブジェクトデータセットにおけるオブジェクトデータには、樹木オブジェクトTOBごとに対応するオブジェクトデータ、ショーケースSCとショーケースSCに収められる屏風とに対応するオブジェクトデータ等が含まれる。
【0038】
図5は、本実施形態の屏風としての文化財に対応するオブジェクトデータセットの内容例を示している。
同図における1行(1レコード)が1つの文化財要素オブジェクトに対応するオブジェクトデータである。1つの文化財要素オブジェクトに対応するオブジェクトデータは、オブジェクトID、オブジェクトデータ、正規位置、移動可能フラグ、及び初期位置の各領域を含む。
【0039】
オブジェクトIDの領域は、対応の文化財要素オブジェクトを一意に示すオブジェクトIDを格納する。
【0040】
オブジェクトデータの領域は、対応の文化財要素オブジェクトの生成に利用されるオブジェクトデータを格納する。
【0041】
正規位置の領域は、対応の文化財要素オブジェクトが仮想空間VSにて配置される正規位置(正規位置)を格納する。同図においては、正規位置がxyz三軸の座標によって表現された例を示している。
【0042】
移動可能フラグの領域は、対応の文化財要素オブジェクトが仮想空間VS内で移動可能であるか否かを示す移動可能フラグを格納する。移動可能フラグが移動可能であることを示す文化財要素オブジェクトが移動可能な樹木オブジェクトTOBである。
【0043】
初期位置の領域は、移動可能フラグが移動可能であることを示す文化財要素オブジェクトが仮想空間VSにて初期的に配置される位置(初期位置)を格納する。同図においては、初期位置がxyz三軸の座標によって表現された例を示している。
【0044】
説明を
図4に戻す。コンテンツデータの領域は、コンテンツ再生部125が再生対象とするコンテンツのデータ(コンテンツデータ)を格納する。本実施形態において、コンテンツデータの領域に格納されるコンテンツデータは、屏風のVR映像コンテンツデータである。
【0045】
図6は、ユーザ端末200の構成例を示している。同図に示されるユーザ端末200としての機能は、ユーザ端末200としてのハードウェアにおいて備えられるCPUがプログラムを実行することにより実現される。同図のユーザ端末200は、通信部201、ユーザインターフェース部202、制御部203、及び記憶部204を備える。
【0046】
通信部201は、ネットワーク経由で文化財展示装置100と通信可能に接続する。
ユーザインターフェース部202は、ユーザインターフェースを構成する部位である。具体的に、ユーザインターフェース部202は、ユーザの操作を受け付ける入力デバイスと、画像や音声を出力する表示部、音声出力部等を備える。また、入力デバイスには、音声入力に対応するものや、表示面部に対する操作が可能なタッチパネルなども含まれてよい。
制御部203は、ユーザ端末200における各種の制御を実行する。
記憶部204は、ユーザ端末200に対応する各種の情報を記憶する。
【0047】
図7のフローチャートを参照して、本実施形態の文化財展示装置100が実行する処理手順例について説明する。
ステップS100:1のユーザのユーザ端末200が文化財展示装置100にアクセスし、ログインが成立したことに応じて、文化財展示装置100の仮想空間提供部121は、初期状態の仮想空間VSをユーザ端末200に提供する。この際、仮想空間提供部121は、仮想空間VSを形成し、オブジェクト配置部123は、文化財情報記憶部131が記憶する文化財情報を利用して、
図2に例示したように、仮想空間VS内にショーケースSCや樹木オブジェクトTOB等の文化財要素オブジェクトを配置する。この際、オブジェクト配置部123は、移動可能な樹木オブジェクトTOBについて、対応のオブジェクトデータが格納する初期位置が示す座標に配置する。
また、アバター制御部122は、ログイン元のユーザに対応するアバターAVTを仮想空間VSにおける所定の初期位置に位置させるようにして存在させる。
仮想空間提供部121は、上記のように文化財要素オブジェクトとアバターAVTとが配置された仮想空間VSがアクセス元のユーザ端末200にて表示されるように、仮想空間VSのウェブサイトのデータをユーザ端末200に送信する。これにより仮想空間VSがユーザ端末200にて表示されるようにして提供が行われる。
【0048】
ステップS102:ユーザは、自分のアバターAVTに与えられたミッションを遂行させるために、アバターAVTに移動可能な樹木オブジェクトTOBを対応の正規位置に配置するよう移動させる操作を行うことができる。
アバター制御部122は、移動可能な樹木オブジェクトTOBをアバターAVTに移動させる操作が行われるのを待機する。
【0049】
ステップS104:移動可能な樹木オブジェクトTOBをアバターAVTに移動させる操作が行われたことが判定された場合、オブジェクト配置部123は、移動対象とされた樹木オブジェクトTOBを、操作に応じて指定される仮想空間VS内の位置に移動させる制御を行う。
【0050】
ステップS106:位置判定部124は、ステップS104により移動された後の樹木オブジェクトTOBの位置を取得する。
【0051】
ステップS108:位置判定部124は、ステップS106により取得した位置が、移動対象とされた樹木オブジェクトTOBの正規位置であるか否かを判定する。この際、位置判定部124は、ステップS106により取得した位置が正規位置を基準する一定の距離範囲に含まれていれば、正規位置であると判定してもよい。正規位置ではないと判定された場合には、ステップS102に処理が戻されてよい。
【0052】
ステップS110:ステップS108にて正規位置であると判定された場合、コンテンツ再生部125は、樹木オブジェクトTOBの移動のミッションが完了したか否かを判定する。つまり、コンテンツ再生部125は、現時点において全ての移動可能な樹木オブジェクトTOBの正規位置への移動が完了したか否かを判定する。全ての移動可能な樹木オブジェクトTOBの正規位置への移動が完了していない場合には、ステップS102に処理が戻される。
【0053】
ステップS112:ステップS110により全ての移動可能な樹木オブジェクトTOBの正規位置への移動が完了したと判定された場合、コンテンツ再生部125は、文化財情報のコンテンツデータの領域に格納されている映像VRコンテンツデータを再生し、仮想空間VSにて映像VRコンテンツを表示させる。
【0054】
なお、本実施形態において仮想空間VSにて展示対象となる文化財は適宜変更されてよい。展示対象となる文化財が有する物体に応じて、仮想空間VSとしての3次元空間にて配置される文化財要素オブジェクトは異なってよい。
【0055】
なお、上記実施形態では、移動可能な樹木オブジェクトTOBについては、オブジェクトデータにより正規位置と異なる初期位置が設定されており、仮想空間VSにおいては、最初に初期位置にて配置されるものとしている。
しかしながら、移動可能な樹木オブジェクトTOBが最初に配置される際には、ランダムに決定された位置に配置されてもよい。
また、移動可能な樹木オブジェクトTOBは、最初に仮想空間VSに配置される際に、移動不可の樹木オブジェクトTOBと同様に、正規位置に配置されてもよい。この場合、ユーザは、自身のアバターAVTを操作して、移動可能な樹木オブジェクトTOBを敢えて正規位置から異なる位置に移動させてみることで、配置バランスや構図の変化を体験することができる。
【0056】
なお、上記実施形態では、実物が絵画としての2次元的なものとしての文化財を、仮想空間VSにて3次元的に展開することで、絵画としての文化財の世界観をリアルに体験できるようにしているのであるが、展示の対象となる文化財は、建築物、工芸品等の立体的なものであってもよい。
【0057】
なお、上述の文化財展示装置100またはユーザ端末200等の機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより上述の文化財展示装置100またはユーザ端末200等としての処理を行ってもよい。ここで、「記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行する」とは、コンピュータシステムにプログラムをインストールすることを含む。ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータシステム」は、インターネットやWAN、LAN、専用回線等の通信回線を含むネットワークを介して接続された複数のコンピュータ装置を含んでもよい。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記憶装置のことをいう。このように、プログラムを記憶した記録媒体は、CD-ROM等の非一過性の記録媒体であってもよい。また、記録媒体には、当該プログラムを配信するために配信サーバからアクセス可能な内部または外部に設けられた記録媒体も含まれる。配信サーバの記録媒体に記憶されるプログラムのコードは、端末装置で実行可能な形式のプログラムのコードと異なるものでもよい。すなわち、配信サーバからダウンロードされて端末装置で実行可能な形でインストールができるものであれば、配信サーバで記憶される形式は問わない。なお、プログラムを複数に分割し、それぞれ異なるタイミングでダウンロードした後に端末装置で合体される構成や、分割されたプログラムのそれぞれを配信する配信サーバが異なっていてもよい。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、ネットワークを介してプログラムが送信された場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリ(RAM)のように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。また、上記プログラムは、上述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。さらに、上述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。
【0058】
<付記>
(1)本実施形態の一態様は、1の文化財を構成する構成要素を3次元でオブジェクト化したものであり、前記1の文化財の内容に基づいて設定した3次元の仮想空間内の正規位置を対応付けた文化財要素オブジェクトを前記仮想空間に配置するにあたり、所定の移動対象の文化財要素オブジェクトについては、アバターにより移動可能に配置し、移動対象ではない文化財要素オブジェクトについては、対応の正規位置にて移動不可に配置するオブジェクト配置部を備える文化財展示システムである。
【0059】
(2)本実施形態の一態様は、(1)に記載の文化財展示システムであって、アバターにより移動された前記移動対象の文化財要素オブジェクトが対応の正規位置であるか否かを判定する位置判定部と、前記位置判定部により正規位置であると判定されたことに応じて、前記文化財に関連する所定のコンテンツを前記仮想空間にて再生するコンテンツ再生部とをさらに備えてよい。
【0060】
(3)本実施形態の一態様は、(2)に記載の文化財展示システムであって、前記コンテンツは、前記1の文化財としての絵画を再現した映像であってよい。
【0061】
(4)本実施形態の一態様は、(1)から(3)のいずれか1つに記載の文化財展示システムであって、前記1の文化財は絵画であり、前記文化財要素オブジェクトは、前記絵画にて描かれている物体であってよい。
【0062】
(5)本実施形態の一態様は、(4)に記載の文化財展示システムであって、前記文化財要素オブジェクトの正規位置は、前記絵画において描写される対応の物体の横方向における位置と奥行き方向の位置とに基づいて設定されてよい。
【0063】
(6)本実施形態の一態様は、(4)または(5)に記載の文化財展示システムであって、前記文化財要素オブジェクトは、前記絵画において描写される対応の物体の奥行き方向の位置に応じたものとして表現される濃淡が反映されてよい。
【0064】
(7)本実施形態の一態様は、文化財展示システムにおける文化財展示方法であって、オブジェクト配置部が、1の文化財を構成する構成要素を3次元でオブジェクト化したものであり、前記1の文化財の内容に基づいて設定した3次元の仮想空間内の正規位置を対応付けた文化財要素オブジェクトを前記仮想空間に配置するにあたり、所定の移動対象の文化財要素オブジェクトについては、アバターにより移動可能に配置し、移動対象ではない文化財要素オブジェクトについては、対応の正規位置にて移動不可に配置するオブジェクト配置ステップを含む文化財展示方法である。
【0065】
(8)本実施形態の一態様は、文化財展示システムとしてのコンピュータを、1の文化財を構成する構成要素を3次元でオブジェクト化したものであり、前記1の文化財の内容に基づいて設定した3次元の仮想空間内の正規位置を対応付けた文化財要素オブジェクトを前記仮想空間に配置するにあたり、所定の移動対象の文化財要素オブジェクトについては、アバターにより移動可能に配置し、移動対象ではない文化財要素オブジェクトについては、対応の正規位置にて移動不可に配置するオブジェクト配置部として機能させるためのプログラムである。
【符号の説明】
【0066】
100 文化財展示装置、101 通信部、102 制御部、103 記憶部、121 仮想空間提供部、122 アバター制御部、123 オブジェクト配置部、124 位置判定部、125 コンテンツ再生部、131 文化財情報記憶部、200 ユーザ端末、201 通信部、202 ユーザインターフェース部、203 制御部、204 記憶部、AVT アバター、SC ショーケース、TOB 樹木オブジェクト、VR 映像、VS 仮想空間