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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024077414
(43)【公開日】2024-06-07
(54)【発明の名称】ドレス装置及び砥石の成形方法
(51)【国際特許分類】
   B24B 53/047 20060101AFI20240531BHJP
   B24B 53/12 20060101ALI20240531BHJP
   B24B 53/00 20060101ALI20240531BHJP
【FI】
B24B53/047
B24B53/12 Z
B24B53/00 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022189502
(22)【出願日】2022-11-28
(71)【出願人】
【識別番号】593007095
【氏名又は名称】有限会社中村鉄工
(74)【代理人】
【識別番号】100140671
【弁理士】
【氏名又は名称】大矢 正代
(72)【発明者】
【氏名】中村 宜史
(72)【発明者】
【氏名】中村 径仙
【テーマコード(参考)】
3C047
【Fターム(参考)】
3C047AA05
3C047AA15
3C047AA16
3C047AA31
3C047AA38
3C047BB04
3C047BB12
3C047BB14
3C047EE04
3C047EE11
3C047EE18
(57)【要約】
【課題】砥石の外周面を成形する際にその形状の再現性が高いと共に設備にかかるコストの増加を抑制することが可能なドレス装置及び砥石の成形方法を提供する。
【解決手段】ドレス装置1に、第一ベース10と、成形形状に対して凹凸が反転しているゲージ面11aを有する成形ゲージ11と、第一ベース10に前後方向へ移動可能に取付けられている第二ベース12と、第二ベース12に左右方向へ移動可能に取付けられている第三ベース13と、第三ベース13に取付けられており、ゲージ面11aに接触している倣いピン15と、第二ベース12を介して倣いピン15をゲージ面11aに押圧しており、第一ベース10に取付けられている押圧シリンダ16と、第三ベース13に取付けられており、砥石Gの外周面を成形するための工具17と、を具備させる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円盤状の砥石の外周面を、所望する成形形状に成形するためのドレス装置であり、
第一ベースと、
成形形状に対して凹凸が反転しているゲージ面を有し、該ゲージ面を成形対象の砥石の外周面と対面する方向である前方に向けて前記第一ベースに取付けられている成形ゲージと、
前記第一ベースに前後方向へ移動可能に取付けられている第二ベースと、
該第二ベースに左右方向へ移動可能に取付けられている第三ベースと、
前記第二ベースに取付けられており、前記第三ベースを左右方向へ移動させるためのアクチュエータと、
前記第三ベースに取付けられており、前記ゲージ面に接触している倣いピンと、
前記第二ベースを介して前記倣いピンを前記ゲージ面に押圧しており、前記第一ベースに取付けられている押圧シリンダと、
前記第三ベースに取付けられており、砥石の外周面を成形するための工具と
を具備していることを特徴とするドレス装置。
【請求項2】
前記倣いピンは、
前記ゲージ面に沿って転動するように回転自在に取付けられている
ことを特徴とする請求項1に記載のドレス装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のドレス装置を使用した砥石の成形方法であり、
成形対象である円盤状の砥石を回転させると共に、前記工具の先端を、前記砥石の外周面よりも前方、且つ、左右方向の外方に位置させ、前記倣いピンを前記押圧シリンダにより前記第二ベース及び前記第三ベースを介して前記ゲージ面に押圧させたままの状態で、前記アクチュエータにより前記第三ベースを介して前記工具を左右方向における前記砥石へ向かう方向へ移動させることにより、前記ゲージ面の形状における凹凸が反転した形状に、前記砥石の外周面を成形する
ことを特徴とする砥石の成形方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、砥石を成形するためのドレス装置、及び、該ドレス装置を使用した砥石の成形方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
円盤状砥石の外周面を所定の形状に成形する場合、例えばドレッサと言われる砥石を切削するための工具を、回転している円盤状砥石の外周面に手で押し付けて切削することにより所定の形状に成形している。或いは、NCマシンのような工作機械にドレッサを取付けて、NC制御することにより所定の形状に成形している。
【0003】
しかしながら、ドレッサを手で押し付けて砥石の成形を手作業でする場合、同一の形状を再現することは困難である。一方、ドレッサをNCマシンによりNC制御する場合、設備にかかるコストが増加する問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、本発明は、上記の実情に鑑み、砥石の外周面を成形する際にその形状の再現性が高いと共に設備にかかるコストの増加を抑制することが可能なドレス装置及び砥石の成形方法の提供を、課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するため、本発明にかかるドレス装置は、
「円盤状の砥石の外周面を、所望する成形形状に成形するためのドレス装置であり、
第一ベースと、
成形形状に対して凹凸が反転しているゲージ面を有し、該ゲージ面を成形対象の砥石の外周面と対面する方向である前方に向けて前記第一ベースに取付けられている成形ゲージと、
前記第一ベースに前後方向へ移動可能に取付けられている第二ベースと、
該第二ベースに左右方向へ移動可能に取付けられている第三ベースと、
前記第二ベースに取付けられており、前記第三ベースを左右方向へ移動させるためのアクチュエータと、
前記第三ベースに取付けられており、前記ゲージ面に接触している倣いピンと、
前記第二ベースを介して前記倣いピンを前記ゲージ面に押圧しており、前記第一ベースに取付けられている押圧シリンダと、
前記第三ベースに取付けられており、砥石の外周面を成形するための工具と
を具備している」ものである。
【0006】
アクチュエータとしては、モータ、エアシリンダや油圧シリンダのようなシリンダ、を例示することができる。
【0007】
「成形形状」は、砥石の外周面を成形しようとしている目的の形状を指している。工具としては、「先端にダイヤモンドが取付けられており回転しないダイヤモンドドレッサ」、「砥石の回転軸と平行な軸芯周りに回転するロータリドレッサ」、を例示することができる。
【0008】
本構成のドレス装置は、円盤状の砥石を回転させながら、その外周面を成形するためのものである。ここでは、成形対象の砥石Gの回転軸と平行な方向を「左右方向」と称し、左右方向と直交し砥石Gに離隔接近する方向を「前後方向」と称し、前後方向において砥石Gの外周面に近付く方向を「前方」と称する。従って、左右方向は砥石の回転軸と平行である。本構成では、第一ベースには、前後方向へ移動可能に第二ベースが取付けられていると共に、ゲージ面を前方へ向けた成形ゲージが取付けられている。第二ベースには、左右方向へ移動可能に第三ベースが取付けられていると共に、第三ベースを移動させるためのアクチュエータが取付けられている。そして、第三ベースには、ゲージ面に接触する倣いピンと砥石を切削するための工具とが取付けられている。
【0009】
本構成のドレス装置によれば、アクチュエータにより第三ベースを左右方向へ移動させると、倣いピンと工具とが一緒に左右方向へ移動する。この際に、第一ベースに取付けられている押圧シリンダにより、第二ベースを介して倣いピンが成形ゲージのゲージ面に押圧されているため、倣いピンが左右方向へ移動してもゲージ面から離れることはない。従って、第二ベース及び第三ベースは、倣いピンを介して、ゲージ面の形状における前後方向の凹凸に沿うように前後方向へ移動することとなる。これにより、アクチュエータによって第三ベースを左右方向へ移動させると、工具をゲージ面の形状に沿う(倣う)ように移動させることができるため、何回でも工具に同一の動きをさせることができる。
【0010】
従って、例えば、成形対象である円盤状の砥石を回転させると共に、工具の先端を、砥石の外周面よりも前方、且つ、左右方向の外方に位置させた状態にする。そして、倣いピンを押圧シリンダにより第二ベース及び第三ベースを介してゲージ面に押圧させたままの状態にする。この状態で、アクチュエータにより第三ベースを介して工具を左右方向における砥石へ向かう方向へ移動させると、工具が砥石に接触して切削が開始され、その後、工具が砥石における左右方向の反対側の外方まで移動すると、砥石の成形が完了する。この際に、工具がゲージ面の形状に倣って移動するため、砥石の外周面が、ゲージ面の形状における前後方向の凹凸が反転した形状、すなわち、所望の成形形状に成形することができる。これにより、砥石の外周面の成形においてその形状の再現性を高めることができ、多数の砥石を同一形状に成形することができる。
【0011】
また、本構成によれば、上述したように、成形ゲージのゲージ面の形状を倣いピンで倣うことにより成形形状の再現性を高めているため、成形形状を数値化してNCマシンによりNC制御する場合と比較して、ドレス装置を簡単な構成のものとすることが可能となり、設備にかかるコストの増加を抑制することができる。
【0012】
更に、本構成によれば、ゲージ面を成形形状に対して前後方向の凹凸を反転させて、その面を前方へ向けているため、ゲージ面には前方から倣いピンが接触することとなる。これにより、ドレス装置の後方からゲージ面と倣いピンとが接触している部位を見た時に、ゲージ面に倣いピンを後方から接触させた場合と比較して、倣いピンが邪魔になることはなく、ゲージ面と倣いピンとが接触している部位が見え易くなるため、倣いピンが接触していることを容易に確認することができる。
【0013】
本発明にかかるドレス装置は、上記構成に加え、
「前記倣いピンは、
前記ゲージ面に沿って転動するように回転自在に取付けられている」ものとすることができる。
【0014】
本構成によれば、倣いピンを回転可能に取付けているため、ゲージ面をスムーズに移動させることができ、倣いピンやゲージ面の摩耗を抑制することができる。
【0015】
本構成のドレス装置は、以下のドレス装置を使用した砥石の成形方法に使用することができる。すなわち、
「成形対象である円盤状の砥石を回転させると共に、前記工具の先端を、前記砥石の外周面よりも前方、且つ、左右方向の外方に位置させ、前記倣いピンを前記押圧シリンダにより前記第二ベース及び前記第三ベースを介して前記ゲージ面に押圧させたままの状態で、前記アクチュエータにより前記第三ベースを介して前記工具を左右方向における前記砥石へ向かう方向へ移動させることにより、前記ゲージ面の形状における凹凸が反転した形状に、前記砥石の外周面を成形する」砥石の成形方法である。
【0016】
本構成の砥石の成形方法によれば、上述したドレス装置と同様の作用効果を奏することができる。
【発明の効果】
【0017】
以上のように、本発明によれば、砥石の外周面を成形する際にその形状の再現性が高いと共に設備にかかるコストの増加を抑制することが可能なドレス装置及び砥石の成形方法を、提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施形態であるドレス装置を右前方から示す斜視図である。
図2図1のドレス装置を左前方から示す斜視図である。
図3図1のドレス装置の平面図である。
図4図1のドレス装置の動作を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一実施形態であるドレス装置1について、図1乃至図3を用いて説明する。本実施形態のドレス装置1は、円盤状の砥石Gを回転させながら、その外周面を成形するためのものである。以下では、成形対象の砥石Gの回転軸と平行な方向を「左右方向」と称し、左右方向と直交し砥石Gに離隔接近する方向を「前後方向」と称し、前後方向において砥石Gの外周面に近付く方向を「前方」と称する。
【0020】
ドレス装置1は、第一ベース10と、第一ベース10に前後方向へ移動可能に取付けられている第二ベース12と、第二ベース12に左右方向へ移動可能に取付けられている第三ベース13と、を具備している。
【0021】
第一ベース10には、ゲージ面11aを有する成形ゲージ11が付けられている。ゲージ面11aは、成形形状に対して凹凸が反転している面である。成形ゲージ11は、ゲージ面11aを前方に向けて、すなわち、ゲージ面11aが砥石Gの外周面と対面するように、第一ベース10に取り付けられている。
【0022】
第二ベース12には、第三ベース13を左右方向へ移動させるためのアクチュエータ14が取付けられている。第三ベース13には、倣いピン15と、砥石Gの外周面を成形するための工具17と、が取付けられている。第一ベース10と第二ベース12との間には、第二ベース12を前後方向に移動させると共に、倣いピン15をゲージ面11aに押圧する押圧シリンダ16が設けられている。
【0023】
また、ドレス装置1は、第一ベース10と第二ベース12とを相対的に前後方向へ移動可能に案内している第一リニアガイド18と、第二ベース12と第三ベース13とを相対的に左右方向へ移動可能に案内している第二リニアガイド19と、第一ベース10に設けられた取付け台20と、を具備している。
【0024】
更に、ドレス装置1は、左右方向に延出しており、アクチュエータ14により回転させられるボールネジ22と、ボールネジ22に螺合されているボールナット23と、第三ベース13に取付けられており、倣いピン15およびボールナット23が回転不能に取付けられているピンホルダ24と、第二ベース12に取付けられており、ボールネジ22を回転可能に支持していると共にアクチュエータ14が取付けられているブラケット25と、第二ベース12に取付けられており、ピンホルダ24の左右方向の移動を規制するストッパ26と、を具備している。
【0025】
第一ベース10は、平板状であり、架台27の上面に水平に取付けられている。
【0026】
成形ゲージ11は、平板状であり、第一ベース10に設けられた取付け台20の上面に載置されている。成形ゲージ11は、上方から押え板21によって押圧されることにより、取付け台20に固定される(詳細は後述)。この成形ゲージ11の前面(側面のうち前方を向いた面)が上記形状を有するゲージ面11aである。
【0027】
第二ベース12は、平板状であり、第一ベース10と成形ゲージ11との間の高さに水平に設けられている。第二ベース12は、第一ベース10よりも前後方向に長い四角形の本体部12aと、本体部12aの前端付近の右側面から右方へ突出している突出部12bと、本体部12aの後面から前方へ向かって切欠かれており上下方向に貫通している切欠部12cと、切欠部12cよりも前方において上下に貫通している二つの開口部12dと、を有している。第二ベース12では、本体部12aが第一ベース10の直上に配置されており、突出部12bが第一ベース10よりも右方へ突出している。二つの開口部12dは、本体部12aと突出部12bとにそれぞれ設けられている。
【0028】
第三ベース13は、左右方向へ長い角柱状であり、その長さは第二ベース12の左右方向の長さよりも長い。この第三ベース13は、第二ベース12よりも上方で、且つ、第二ベース12における突出部12bよりも前方に配置されている。
【0029】
アクチュエータ14は、本実施形態ではモータであり、出力軸(図面に表れていいない)を左方へ突出させた状態で、ブラケット25により第二ベース12よりも上方、且つ右方に取付けられている。
【0030】
倣いピン15は、成形ゲージ11の板厚よりも長い円柱状である。この倣いピン15は、軸方向が上下へ向けられており、ピンホルダ24の後端において、その軸周りに回転自在に取付けられている。
【0031】
押圧シリンダ16は、円筒状のシリンダ本体16aと、シリンダ本体16aから進退するピストンロッド16bと、を有している。押圧シリンダ16は、ピストンロッド16bが前方へ突出するようにシリンダ本体16aが取付け台20に取付けられていると共に(詳細は後述)、ピストンロッド16bの先端が第二ベース12に取付けられている。なお、図示は省略するが、押圧シリンダ16には、ハイリリーフレギュレータのようなシリンダ内の圧力を一定にすることが可能な圧力調整装置が取付けられている。本実施形態の押圧シリンダ16はエアシリンダである。
【0032】
工具17は、本実施形態では先端にダイヤモンドが取付けられている回転しないダイヤモンドドレッサである。この工具17は、先端を前方に向けると共に、先端が後端より下方となるように傾斜した状態で、第三ベース13の左端に取付けられている。
【0033】
第一リニアガイド18は、ブロック状の二つのガイド部18aと、二つのガイド部18aによって案内されている被ガイド部18bと、を有している。被ガイド部18aは、第二ベース12における本体部12aの前後方向の長さと同じ長さである。第一リニアガイド18は、左右方向に離隔して一対が設けられている。詳述すると、一対の第一リニアガイド18は、第一ベース10と第二ベース12との間で、第二ベース12の本体部12aにおける切欠部12cよりも左右方向外側に設けられている。それぞれの第一リニアガイド18は、二つのガイド部18aが前後方向へ離隔して第一ベース10の上面に取付けられており、被ガイド部18bが長手方向を前後方向へ向けて第二ベース12の下面に取付けられている。
【0034】
第二リニアガイド19は、ブロック状の二つのガイド部19aと、二つのガイド部19aによって案内されている被ガイド部19bと、を有している。被ガイド部19bは、第三ベース13の左右方向の長さよりもやや短い長さである。第二リニアガイド19は、第二ベース12と第三ベース13との間に設けられている。二つのガイド部19aは、第二ベース12の本体部12aの上面における前端において、左右方向へ間隔をあけて取付けられている。被ガイド部19bは、その長手方向を左右方向へ向けて第三ベース13の下面に取付けられている。
【0035】
取付け台20は、水平な平板状で、左右方向の長さが第二ベース12における切欠部12cの左右方向の幅よりも短い下板20aと、下板20aの上面から上方へ延出している平板状の立板20bと、立板20bの上面から下板20aと平行に延出している平板状の上板20cと、を有している。また、取付け台20は、上板20cの上面に成形ゲージ11を載置可能な載置部20dを更に有している。
【0036】
取付け台20の上板20cは、下板20aおよび立板20bを中央にして下板20aの左右方向の長さよりも長く左右に延びている。上板20cの左右方向の長さは、第二ベース12における切欠部12cの左右方向の幅よりも長く、本体部12aの左右方向の長さよりも短い。取付け台20は、第二ベース12の切欠部12cを通って上方へ突出するように第一ベース10の上面後部に取付けられている。この取付け台20は、ドレス装置1に組立てた状態では、上板20cが第三ベース13と同じ高さになるように形成されている。
【0037】
取付け台20の載置部20dは、上板20cにおいて前後方向の中央よりも前側で高さが低くなっている部分であり、上板20cの上面と載置部20dの上面との高さの差は、成形ゲージ11の板厚よりも大きい。従って、上板20cの上面と載置部20dとの間には、段部がある。この取付け台20には、立板20bを貫通してピストンロッド16bが前方へ突出するように、立板20bの後面に押圧シリンダ16のシリンダ本体16aが取付けられている。
【0038】
押え板21は、平面視において左右方向に長い長方形の平板状であり、前後方向の中央よりも前側が下方へ段状に突出している。この押え板21は、取付け台20における上板20cに対して、図示しないボルトにより上方から着脱可能に取付けられている。
【0039】
ボールネジ22は、その長さが第二ベース12の左右方向の長さよりも長い。ボールネジ22は、その軸方向を左右方向へ向けた状態で、第三ベース13と同じ高さで、成形ゲージ11と第三ベース13との間に配置されている。ボールネジ22の右端側は、ブラケット25により回転可能に支持されていると共に、アクチュエータ14としてのモータの出力軸に接続されている。このボールネジ22の左端側は、第一ベース10よりも左方へ突出している。本実施形態のボールネジ22は、ブラケット25を介して第二ベース12に片持ち支持されている。
【0040】
ボールナット23は、ボールネジ22におけるブラケット25よりも左側の部位に螺合しており、後述するピンホルダ24の貫通孔24aに一部が挿入された状態でピンホルダ24に回転不能に取付けられている。これにより、ボールネジ22を回転させると、ボールナット23と共にピンホルダ24が、ボールネジ22の軸方向(左右方向)に移動する。
【0041】
ピンホルダ24は、前後方向に長い直方体であり、左右方向に貫通している貫通孔24aと、後端から上下方向に間隔をあけて後方へ突出している一対の軸支片24bと、を有している。このピンホルダ24は、前端側が第三ベース13に取付けられている。また、ピンホルダ24の貫通孔24aには、右方からボールナット23の一部が挿入されており、ボールナット23を介してボールネジ22が貫通している。ピンホルダ24の一対の軸支片24bには、倣いピン15が貫通した状態で上下方向の軸周りに回転自在に取付けられている。なお、図示は省略するが、倣いピン15の両端のうち少なくとも上端側にはCリングやEリングのような抜け止め部材が取付けられている。
【0042】
ブラケット25は、上下方向に延びる平板状の板部25aと、板部25aの右側面上部から右方へ筒状に延出しているカバー部25bと、を有している。このブラケット25は、板部25aの下端が第二ベース12における突出部12bの右端に取付けられている。また、ブラケット25は、板部25aにおいてボールネジ22を貫通させた状態で回転可能に支持している。ブラケット25におけるカバー部25bの右端にはアクチュエータ14が取付けられている。このカバー部25bによって、アクチュエータ14の出力軸とボールネジ22との接続部位が覆われている。このブラケット25には、左方からピンホルダ24が当接可能であり、ピンホルダ24の右方への移動端を規制するストッパを兼ねている。
【0043】
ストッパ26は、上下方向に延びる帯板状であり、上端が右方に屈曲している。このストッパ26は、下端が第二ベース12の左端においてボールネジ22と成形ゲージ11との間の部位に取付けられており、上端がピンホルダ24よりも上方に突出している。ストッパ26には、右方からピンホルダ24が当接可能であり、ピンホルダ24の左方への移動端を規制している。このストッパ26の存在により、片持ち支持されているボールネジ22の回転に伴いピンホルダ24が過度に移動してボールナット23とボールネジ22との螺合が外れてしまうことが防止されている。
【0044】
続いて、上記構成のドレス装置1の動作及びドレス装置1を使用した砥石Gの成形方法について、図4を用いて説明する。まず、ピストンロッド16bが前方へ伸長するように押圧シリンダ16にエアを導入し、第一リニアガイド18により前後方向へ移動可能に案内されている第二ベース12を前方へ移動させる。これにより、第一ベース10に取付けられている取付け台20に対して、第二ベース12に取付けられているピンホルダ24が前方へ離隔した状態となる。
【0045】
この状態で、取付け台20の載置部20dに、ゲージ面11aを前方に向けた状態で成形ゲージ11を載置し、その後面を載置部20dの段部に当接させる。この状態で、取付け台20の上板20cに上方から押え板21を取付ける。このとき、載置部20dの段部における成形ゲージ11より上方の残余部分に押え板21の段部を当接させる。この状態で、上述のボルトにより押え板21を上板20cに取付けることにより、押え板21が成形ゲージ11を下方へ押圧して、取付け台20に成形ゲージ11が取付けられた状態となる。
【0046】
次に、アクチュエータ14によって左右方向へ延びているボールネジ22を回転させることにより、ボールネジ22に螺合されているボールナット23を介してピンホルダ24を左右方向へ移動させて、ピンホルダ24をゲージ面11aの右端前方に位置させる。この際に、ピンホルダ24は、第三ベース13を介して第二リニアガイド19の被ガイド部19bに取付けられているため、第二リニアガイド19によって左右方向へ案内されてスムーズに移動する。
【0047】
その後、ピストンロッド16bが後退するように押圧シリンダ16にエアを導入し、ピストンロッド16bの先端に取付けられている第二ベース12を後方へ移動させる。これにより、第二ベース12と一緒に第三ベース13やピンホルダ24などが後方へ移動し、ピンホルダ24の後端に取付けられている倣いピン15がゲージ面11aに接触すると後方への移動が停止する(図4(a)を参照)。この際に、押圧シリンダ16には、図示しないハイリリーフレギュレータ(圧力調整装置)を介してエアが導入されており、倣いピン15がゲージ面11aを一定の圧力で押圧している。
【0048】
この状態では、第三ベース13の左端に取付けられている工具17は、その先端が成形する砥石Gの外周面よりも前方(砥石Gの中心方向)に位置していると共に、砥石Gよりも右方に位置している。
【0049】
次に、この状態で砥石Gを所定方向(工具17と接する部位が下方へ移動する方向)へ回転させると共に、ピンホルダ24を介して倣いピン15が左方へ移動するようにアクチュエータ14によりボールネジ22を回転させる。上述したように、倣いピン15は、押圧シリンダ16によりゲージ面11aに一定の圧力で押圧されているため、ゲージ面11aから離れることはなく、ゲージ面11aの形状に沿って左方へ移動する。この際、倣いピン15は、ゲージ面11aとの摩擦により回転する。
【0050】
この倣いピン15の左方への移動に伴って、ピンホルダ24および第三ベース13を介して工具17が左方へ移動し、工具17が砥石Gに接触すると、砥石Gの外周面の切削(成形)が開始される。この際に、先端(前端)が低くなるように傾斜させた状態で工具17が取付けられていると共に、工具17と接する部位が下方へ移動する方向に砥石Gが回転している。これにより、工具17の先端が砥石Gに接触した時に、砥石Gから作用する下方への力が逃げ易くなるため、砥石Gや工具17に強い衝撃が作用することはなく、砥石Gや工具17などが破損し難い。
【0051】
成形ゲージ11のゲージ面11aに沿って転動している倣いピン15は、ゲージ面11aにおいて前方へ突出している部位では、第二ベース12を介して押圧シリンダ16により後方へ引っ張られつつ前方へ押されるため、その分だけ第二ベース12及び第三ベース13と一緒に前方へ移動する。また、倣いピン15は、ゲージ面11aにおいて後方へ凹んでいる部位では、押圧シリンダ16により一定の圧力で後方へ引っ張られているため、凹んでいる部位に沿うよう第二ベース12及び第三ベース13と一緒に後方へ移動する。つまり、倣いピン15がゲージ面11aに沿って左方へ移動すると、倣いピン15はゲージ面11aの形状における前後方向の凹凸に沿うように前後方向にも移動する。
【0052】
従って、倣いピン15が左方へ移動すると、ピンホルダ24及び第三ベース13を介して工具17も、左方へ移動しつつ、ゲージ面11aの形状における前後方向の凹凸に沿って(倣って)前後方向へ移動する(図4(b)を参照)。本実施形態では、倣いピン15が前方へ移動すると、工具17が砥石Gの回転軸に接近する方向へ移動するため、砥石Gの外周面が深く削られることとなる。これにより、砥石Gの外周面が、ゲージ面11aの形状における前後方向の凹凸に倣って、その凹凸が反転した形状に成形されることとなる。
【0053】
なお、倣いピン15は、所定の半径を有しているため、ゲージ面11aの形状に対して、ゲージ面11aに接触しながら転動する倣いピン15の中心(工具17の先端)の移動軌跡の形状が異なることとなる。従って、ゲージ面11aの形状は、砥石Gにおける所望の外周面の形状に対して、倣いピン15の半径を考慮した形状に形成しておく。
【0054】
そして、倣いピン15と一緒に左方へ移動している工具17が、砥石Gから左方へ離れた上で、倣いピン15がゲージ面11aの左端付近に到達したら、アクチュエータ14によるボールネジ22の回転を停止させて倣いピン15の左方への移動を停止させる(図4(c)を参照)。これにより、砥石Gの外周面が所望の成形形状に形成された状態となり、砥石Gの成形が完了する。
【0055】
なお、上記では、工具17を砥石Gに対して右から左へ移動させて砥石Gの外周面を成形することを説明したが、工具17を砥石Gに対して左から右へ移動させて成形するようにしても良い。
【0056】
また、砥石Gに対してドレス装置1を、左右方向および前後方向へ相対的に移動させることができるようにしても良い。これにより、砥石Gの直径や、成形する形状などに対する成形作業の自由度を高めることができる。また、砥石Gに対する一回の切削量が多い場合には、工具17における左右方向への一回の移動、又は、一往復の移動、ごとに、ドレス装置1を少しずつ前方へ移動させて、複数回の切削により所望の成形形状に砥石Gを成形するようにしても良く、工具17や砥石Gなどにかかる負荷を軽減させることができる。
【0057】
本実施形態のドレス装置1によれば、アクチュエータ14により第三ベース13を左右方向へ移動させると、倣いピン15と工具17とを一緒に左右方向へ移動することができる。この際に、第一ベース10の取付け台20に取付けられている押圧シリンダ16により、第二ベース12を介して倣いピン15が成形ゲージ11のゲージ面11aに押圧されているため、倣いピン15をゲージ面11aから離れることはなく左右方向へ移動させることができる。従って、第二ベース12及び第三ベース13は、倣いピン15を介して、ゲージ面11aの形状における前後方向の凹凸に沿うように前後方向へ移動する。これにより、アクチュエータ14によって第三ベース13を左右方向へ移動させると、工具17をゲージ面11aの形状に沿う(倣う)ように移動させることができるため、何回でも工具に同じ動きをさせることができる。従って、砥石Gの外周面の成形においてその形状の再現性を高めることができ、多数の砥石Gを同一形状に成形することができる。
【0058】
また、本実施形態のドレス装置1によれば、成形ゲージ11のゲージ面11aの形状を倣いピン15で倣うことにより成形形状の再現性を高めているため、成形形状を数値化してNCマシンによりNC制御する場合と比較して、ドレス装置を1簡単な構成のものとすることが可能となり、設備にかかるコストの増加を抑制することができる。
【0059】
更に、本実施形態のドレス装置1によれば、倣いピン15を回転自在に取付けているため、倣いピン15がゲージ面11aに沿って転動することでスムーズに移動することができ、倣いピン15やゲージ面11aの摩耗を抑制することができる。
【0060】
ところで、仮に、バネを使用して倣いピン15を後方のゲージ面11aに押圧するようにした場合、ゲージ面11aにおいて前方へ突出している凸部の部位ではバネが伸びて押圧力(付勢力)が強くなり、ゲージ面11aにおいて後方へ凹んでいる凹部の部位ではバネが縮んで押圧力(付勢力)が弱くなる。そのため、ゲージ面11aの凹部においてバネの付勢力が必要以上に弱いと、砥石Gの成形(切削)により工具17が前方へ引っ張られた時に、バネの付勢力に抗して倣いピン15がゲージ面11aから離れることで工具17が前方へ移動してしまい、砥石Gが余計に削れて不具合となる問題がある。この問題を回避しようとして、仮に、ゲージ面11aの凹部においてバネの付勢力を充分な強さにしておくと、ゲージ面11aの凸部では付勢力が強くなりすぎてしまい、倣いピン15がゲージ面11aをスムーズに移動することができなくなる恐れがある。これに対して、本実施形態では、押圧シリンダ16と、その圧力調整装置とを使用することで、ゲージ面11aにおける前後方向の凹凸に関わらず一定の圧力で倣いピン15をゲージ面11aに押圧するようにしているため、倣いピン15をスムーズに移動させることができると共に、倣いピン15がゲージ面11aから離れることはなく、ゲージ面11aの形状を正確に反映した形状に砥石Gの外周面を成形することができる。
【0061】
また、本実施形態のドレス装置1は、ゲージ面11aを成形形状に対して前後方向の凹凸を反転させて、その面を前方へ向けていると共に、ゲージ面11aに前方から倣いピン15を接触させている。これにより、ドレス装置1の後方からゲージ面11aと倣いピン15とが接触している部位を見た時に、ゲージ面11aに倣いピン15を後方から接触させた場合と比較して、倣いピン15が邪魔になることはなく、ゲージ面11aと倣いピン15とが接触している部位が見え易くなるため、倣いピン15が接触していることを容易に確認することができる。また、本実施形態によれば、ゲージ面11aに対して倣いピン15を前方から接触させていることから、倣いピン15と第三ベース13とを繋ぐピンホルダ24が成形ゲージ11を跨いでいないため、成形ゲージ11を着脱する際に、ピンホルダ24が邪魔になることはない。
【0062】
以上、本発明について好適な実施形態を挙げて説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、以下に示すように、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改良及び設計の変更が可能である。
【0063】
例えば、上記の実施形態では、アクチュエータ14をモータとしてボールネジ22を回転させることによりピンホルダ24を介して倣いピン15および工具17を左右方向へ移動させるものを示したが、これに限定するものではなく、アクチュエータ14をエアシリンダや油圧シリンダのようなシリンダとしても良い。この場合、シリンダの本体をブラケット25に取付けると共に、本体から突出しているピストンロッドの先端をピンホルダ24に取付けるようにする。
【0064】
また、上記の実施形態では、工具17として回転しないものを示したが、これに限定するものではなく、砥石Gの回転軸と平行な軸芯周りに回転し、成形する砥石の厚さよりも薄いロータリドレッサとしても良い。
【符号の説明】
【0065】
1 ドレス装置
10 第一ベース
11 成形ゲージ
11a ゲージ面
12 第二ベース
13 第三ベース
14 アクチュエータ
15 倣いピン
16 押圧シリンダ
17 工具
G 砥石
図1
図2
図3
図4