(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024077418
(43)【公開日】2024-06-07
(54)【発明の名称】昇降機システムおよび昇降機作業管理方法
(51)【国際特許分類】
G06Q 10/20 20230101AFI20240531BHJP
【FI】
G06Q10/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022189506
(22)【出願日】2022-11-28
(71)【出願人】
【識別番号】000232955
【氏名又は名称】株式会社日立ビルシステム
(74)【代理人】
【識別番号】110002365
【氏名又は名称】弁理士法人サンネクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】東田 一夫
(72)【発明者】
【氏名】高橋 才明
(72)【発明者】
【氏名】三之宮 光太郎
(72)【発明者】
【氏名】國信 脩平
(72)【発明者】
【氏名】佐伯 崇
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049CC15
(57)【要約】
【課題】カメラの撮影の開始および終了を適切に制御し得る昇降機システムを提供する。
【解決手段】所定の作業を撮影可能なカメラと、所定の作業の前に行われる昇降機に対する第1の操作に応じて所定の作業が開始されることを検出し、所定の作業の後に行われる昇降機に対する第2の操作に応じて所定の作業が終了されることを検出する検出部と、所定の作業が開始されることが検出部により検出されたときに、カメラに対して撮影を開始する指示を通知し、所定の作業が終了されることが検出部により検出されたときに、カメラに対して撮影を終了する指示を通知する通知部と、を設けるようにした。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
昇降機に係る作業における所定の作業を管理可能な昇降機システムであって、
前記所定の作業を撮影可能なカメラと、
前記所定の作業の前に行われる前記昇降機に対する第1の操作に応じて前記所定の作業が開始されることを検出し、前記所定の作業の後に行われる前記昇降機に対する第2の操作に応じて前記所定の作業が終了されることを検出する検出部と、
前記所定の作業が開始されることが前記検出部により検出されたときに、前記カメラに対して撮影を開始する指示を通知し、前記所定の作業が終了されることが前記検出部により検出されたときに、前記カメラに対して撮影を終了する指示を通知する通知部と、
を備える昇降機システム。
【請求項2】
通常運転モードと保守運転モードとを切り替えるスイッチを備え、
前記検出部は、前記スイッチの操作に応じて、通常運転モードと保守運転モードとの切り替えを検出し、
前記通知部は、通常運転モードから保守運転モードに切り替えられたことが前記検出部により検出されたときに、前記カメラに対して撮影を開始する指示を通知し、保守運転モードから通常運転モードに切り替えられたことが前記検出部により検出されたときに、前記カメラに対して撮影を終了する指示を通知する、
請求項1に記載の昇降機システム。
【請求項3】
作業者の特定の動作を識別可能に学習されたニューラルネットワークを用いて、前記カメラにより撮影された動画から前記動作が行われた画像を抽出する抽出部と、
前記抽出部により抽出された画像を報告書フォーマットに貼り付けて出力する出力部と、
を備える請求項2に記載の昇降機システム。
【請求項4】
前記抽出部は、前記カメラにより撮影された動画から、前記動作が行われた画像を含む前記動画よりも短い時間の動画を抽出する、
請求項3に記載の昇降機システム。
【請求項5】
報告書に用いられる情報を入力するための入力部を備え、
前記所定の作業を行う作業者は、携帯端末を所持し、
前記入力部と前記出力部とは、前記携帯端末に設けられている、
請求項3に記載の昇降機システム。
【請求項6】
昇降機に係る作業における所定の作業を管理するための昇降機作業管理方法であって、
検出部が、前記所定の作業の前に行われる前記昇降機に対する第1の操作に応じて前記所定の作業が開始されることを検出し、前記所定の作業の後に行われる前記昇降機に対する第2の操作に応じて前記所定の作業が終了されることを検出することと、
通知部が、前記所定の作業が開始されることが前記検出部により検出されたときに、前記所定の作業を撮影可能なカメラに対して撮影を開始する指示を通知し、前記所定の作業が終了されることが前記検出部により検出されたときに、前記カメラに対して撮影を終了する指示を通知することと、
を含む昇降機作業管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、昇降機に係る作業を管理する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エレベーター等の昇降機の保全作業において、作業者が作業中の写真を撮影し、作業完了の報告書に当該写真を添付する必要がある場合、作業中に逐次作業の手を止めて撮影を行わなければならない。また、報告書の作成の際には、報告書に添付する写真を選択しなければならないため、撮影対象が複数ある場合は、撮影および選択ともに時間と手間とがかかっている。
【0003】
この点、作業者が自身の体等に動画撮影可能なカメラを装着し、自身が行った作業を撮影し、撮影した動画と、あらかじめデータベースに登録されている部品の名称または形状の情報とを比較し、当該部品に関する作業を行っている動画の頭出しができる技術が公開されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の技術では、作業状況を常に撮影し、その動画から報告書を作成するため、正確な報告が可能となる。しかしながら、例えば、作業時間外に誤って動画を撮影してしまう等して、動画の録画が長時間に及ぶような場合、当該動画の容量が膨大になったり、当該動画に顧客の情報が含まれたりしてしまう問題がある。
【0006】
本発明は、以上の点を考慮してなされたもので、カメラの撮影の開始および終了を適切に制御し得る昇降機システム等を提案しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる課題を解決するため本発明においては、昇降機に係る作業における所定の作業を管理可能な昇降機システムであって、前記所定の作業を撮影可能なカメラと、前記所定の作業の前に行われる前記昇降機に対する第1の操作に応じて前記所定の作業が開始されることを検出し、前記所定の作業の後に行われる前記昇降機に対する第2の操作に応じて前記所定の作業が終了されることを検出する検出部と、前記所定の作業が開始されることが前記検出部により検出されたときに、前記カメラに対して撮影を開始する指示を通知し、前記所定の作業が終了されることが前記検出部により検出されたときに、前記カメラに対して撮影を終了する指示を通知する通知部と、を設けるようにした。
【0008】
上記構成では、所定の作業の前に行われる昇降機に対する第1の操作に基づいて撮影が開始され、所定の作業の後に行われる昇降機に対する第2の操作に基づいて撮影が終了するので、所定の作業が行われているときの画像を確実に限定して取得することができる。上記構成によれば、例えば、動画の録画が長時間に及び、当該動画の容量が膨大になったり、当該動画に顧客の情報が含まれたりしてしまう事態を回避することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、利便性の高い昇降機システムを実現することができる。上記以外の課題、構成、および効果は、以下の実施の形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】第1の実施の形態による作業フローの一例を示す図である。
【
図2】第1の実施の形態によるエレベーターシステムに係る構成の一例を示す図である。
【
図3】第1の実施の形態による携帯端末の構成の一例を示す図である。
【
図4】第1の実施の形態によるニューラルネットワークの学習に用いられる画像の一例を示す図である。
【
図5】第1の実施の形態による作業フローの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(I)第1の実施の形態
以下、本発明の一実施の形態を詳述する。ただし、本発明は、実施の形態に限定されるものではない。
【0012】
本実施の形態は、エレベーター、エスカレーター等の昇降機に係る作業(保守作業、保全作業等)を管理する技術に関し、昇降機に係る作業において、特に、作業者が作業完了の際に顧客等へ提出する報告書を作成する技術に関する。
【0013】
本実施の形態に係る昇降機システムでは、昇降機の運転モードを通常運転モードから保守運転モードに切り替えた際に発せられる信号に基づいて動画の撮影を開始し、保守運転モードから通常運転モードに戻した際に発せられる信号に基づいて動画の撮影を終了する。上記構成によれば、撮影する動画(録画データ)を必要最小限とすることができる。
【0014】
ここで、昇降機に係る作業の作業完了の際に、作業者は、顧客、上長(管理者)等に提出するための報告書を作成する。しかしながら、作業者は、作業に注力するあまり、報告書に添付する作業中の写真をうっかり撮影し忘れることがある。また、作業内容に誤り、手抜き、作業忘れ等があったとしても、報告書に記載がない場合、発覚することがないため、のちのち大きな問題となるおそれがある。
【0015】
このようなことから、本昇降機システムは、撮影した動画から、あらかじめ決められた任意の画像を切り出し、電子帳票で設けられた任意の台紙に自動貼付けするように構成されてもよい。上記構成によれば、作業者の人力に依存することなく、最小限の時間で正確な作業状況の報告が可能となるため、報告書の作成を省力化することができる。
【0016】
本明細書等における「第1」、「第2」、「第3」等の表記は、構成要素を識別するために付するものであり、必ずしも、数または順序を限定するものではない。また、構成要素の識別のための番号は、文脈毎に用いられ、1つの文脈で用いた番号が、他の文脈で必ずしも同一の構成を示すとは限らない。また、ある番号で識別された構成要素が、他の番号で識別された構成要素の機能を兼ねることを妨げるものではない。
【0017】
次に、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。以下の記載および図面は、本発明を説明するための例示であって、説明の明確化のため、適宜、省略および簡略化がなされている。本発明は、他の種々の形態でも実施することが可能である。特に限定しない限り、各構成要素は、単数でも複数でも構わない。なお、以下の説明では、図面において同一要素については、同じ番号を付し、説明を適宜省略する。
【0018】
図1は、エレベーターに係る作業における従前の作業フローの一例を示す図である。なお、以下では、エレベーターに係る作業がエレベーターの制御盤内の部品交換作業であるケースを例に挙げて説明する。
【0019】
S101では、管理者は、各作業者の作業計画を立案する。S102では、管理サーバは、管理者による入力装置の操作に応じて、立案された作業計画を記憶(保管)する。S103では、保守端末は、作業者による入力装置の操作に応じて、作業計画を表示する。例えば、保守端末は、エレベーターの保守作業において作業者が常時携帯する端末であり、カメラを備える。
【0020】
S104では、例えば、作業の当日までに、作業者は、保守端末にて作業計画を確認する。S105では、作業者は、エレベーターの制御盤に設置されている既存の部品(以下、「旧部品」と記す)に対する交換用の部品(以下、「新部品」と記す)を用意する。
【0021】
S106では、例えば、作業の当日、作業者は、新部品を持参し、作業現場に移動する。作業現場は、エレベーターが設置されている建物である。なお、建物の1階にある管理人室には建物の管理人が在室している。S107では、作業者は、建物の管理人に保守作業を開始する旨を告げ、保守作業の許可を得る。
【0022】
S108では、作業者は、エレベーターの乗りかごに乗り込み、最上階に移動する。S109では、最上階に到着後、作業者は、乗りかご内の操作盤にある切替スイッチを操作し、エレベーターの運転モードを通常運転モードから保守運転モードに切り替える。この操作により、エレベーターの乗り場ボタンと乗りかご内の行先階ボタンとが無効になるので、一般の利用者がエレベーターを利用できなくなる。S110では、作業者は、操作した切替スイッチを自らの指で差しながら、「ヨシ」と発声する。以下では、作業者が確認の対象を自らの指で差して所定の声を発する動作を「指差呼称確認」と記すことがある。
【0023】
S111では、作業者は、徒歩で屋上階に移動し、屋上階にある機械室に入室する。S112では、作業者は、電源スイッチを操作して、エレベーターの電源を遮断して安全を確認する。S113では、作業者は、エレベーターの制御盤に設置されている旧部品を指差呼称確認する。S114では、作業者は、持参した新部品が旧部品と互換性がある部品であることを改めて確認した上で新部品を指差呼称確認する。
【0024】
S115では、作業者は、作業の手を一旦止めて保守端末を操作し、保守端末のカメラ機能を起動させる。S116では、作業者は、後に報告書に掲載するために、旧部品を撮影する。S117では、例えば、作業者は、撮影が終わった場合、作業を再開し、部品交換を実施する。S118は、作業者は、取り付けた状態の新部品を指差呼称確認する。
【0025】
S119では、作業者は、再び作業の手を止めて取り付け後の新部品を撮影する。なお、交換部品が複数ある場合、上記S113~S119と同様の手順で撮影と部品交換とを実施する。S120では、一通りの作業が完了した場合、作業者は、電源スイッチを操作して、エレベーターの制御盤の電源を投入し、エレベーターが使用できる状態に復旧させる。
【0026】
S121では、作業者は、屋上階にある機械室から退室して最上階に移動し、乗りかごに乗り込む。S122では、作業者は、乗りかご内の操作盤にある切替スイッチを操作し、エレベーターの運転モードを保守運転モードから通常運転モードに切り替える。
【0027】
以上で部品を交換する作業自体は完了であるが、実態としては、この後に、作業者は、建物の管理人、管理者等に提出するための報告書を作成する。より具体的には、S123では、保守端末は、作業者による入力装置の操作に応じて、搭載されている報告書作成アプリを起動する。報告書作成アプリは、電子帳票で設けられた所定の報告書用台紙(報告書フォーマット)により報告書を作成するアプリケーションである。
【0028】
S124では、作業者は、当日どのような作業を行ったか、交換した部品の種類が何であるか、といった必要事項を電子帳票に入力する。S125では、作業者は、交換した部品の写真(S116およびS118において撮像された画像)を電子帳票に貼り付けるといった作業を行う。なお、作業内容によっては上記の写真が複数あるため、画像を専用ビューワーで1つ1つ開いて見て確認する必要があり、大変手間がかかる。
【0029】
S126では、このような作業の後、作業者は、電子帳票を印刷する。S127は、作業者は、印刷した紙片の報告書を、建物の管理人に提出し、作業完了を報告する。S128では、作業者は、作業現場である建物を退館して勤務先に戻り、管理者にも電子帳票を提出し、作業完了を報告する。S129では、報告を受けた管理者は、電子帳票を承認する。S130では、管理サーバは、管理者が承認した作業完了の報告書として登録する。これにより、部品交換作業は完結となる。
【0030】
上記S123以降で示した報告書の作成は、部品交換を行う作業者にとっては間接業務の1つであり、作業中に一旦手を止めて撮影する等の手間がかかる作業である。しかしながら、報告書に載せる画像(写真データ)を誤ると虚偽報告となってしまうため、慎重に行う必要があり、作業者にとっては大きな負担となっている。
【0031】
報告書の作成をより簡易なものにする技術として、特許文献1に記載の技術の利用が考えられる。この技術によれば、画像の選択を誤るおそれが無いため、より正確な報告書を作成することが可能となる。しかしながら、例えば、作業者が作業時間外に誤って動画を撮影してしまう等して、動画の録画が長時間に及ぶような場合、当該動画の容量が膨大になったり、当該動画に顧客の情報が含まれたりしてしまう問題がある。また、上記技術では、膨大な部品の画像が登録されている大規模なデータベースが必須であるため、その管理コストが増加するという問題もある。
【0032】
この点、本実施の形態では、
図2に示すエレベーターシステム200により上記問題を解決することができる。
【0033】
図2は、エレベーターシステム200に係る構成の一例を示す図である。
【0034】
エレベーターシステム200は、昇降機システムの一例であり、エレベーターの乗りかご201、エレベーターの制御盤202、エレベーターの監視装置203、カメラ204、携帯端末205等を含んで構成される。
【0035】
ここで、例えば、カメラ204は、小型のカメラであり、作業者は、カメラ204が取り付けられたヘルメットを被って保守作業を行う。カメラ204は、作業者の視線の方向を撮影方向として、エレベーターの保守作業(作業状況)を作業者の視界とほぼ同じ範囲(広い画角)で録画すると共に、不図示のマイクにより、作業者の発声を録音する。そして、カメラ204は、保守作業に係る画像および音声を含む動画を生成する。また、カメラ204は、常に電源が投入されていて、所定の指示(信号)を受信した場合に、撮影を開始したり、撮影を終了したりする構造となっている。なお、カメラ204は、エレベーターの保守作業を撮影可能な位置に設置される構成であってもよい。
【0036】
より具体的には、エレベーターの運転モードが通常運転モードである際、作業者が、乗りかご201内の操作盤210にある切替スイッチ211を操作すると、制御盤202が切替スイッチ211からの信号を受信し、運転モードを通常運転モードから保守運転モードに切り替える。このとき、制御盤202の状態を常に監視している監視装置203の検出部231は、運転モードが切り替わったことを検出し、通知部232は、撮影を開始する旨の開始指示(保守運転モード切替検出信号)をカメラ204に発する。カメラ204は、開始指示を受け取ると、撮影を開始する。
【0037】
そして、作業者が、乗りかご201内の操作盤210にある切替スイッチ211を再度操作すると、制御盤202は、切替スイッチ211からの信号を受信し、運転モードを保守運転モードから通常運転モードに切り替える。このとき、監視装置203の検出部231は、運転モードが切り替わったことを検出し、通知部232は、撮影を終了する旨の終了指示(通常運転モード切替検出信号)を発する。カメラ204は、終了指示を受け取ると、撮影を終了する。
【0038】
カメラ204は、撮影を終了すると即時に、撮影した動画を携帯端末205に無線通信で転送する。作業者またはカメラ204からの指示により、携帯端末205に搭載されている報告書作成アプリ250が起動すると、報告書作成アプリ250の抽出部251は、受け取った動画を読み取り、動画から指差呼称確認の画像を静止画として抽出し、時系列順に保管する。
【0039】
また、報告書作成アプリ250の出力部252は、抽出された静止画を時系列順に、電子帳票に貼り付け、静止画を貼り付けた電子帳票を携帯端末205の画面上に報告書の編集画面として表示する。作業者は、編集画面に表示された電子帳票を見て、必要な静止画が全て貼り付けられていることを確認する。編集画面には、静止画削除機能、静止画順番入れ替え機能、テキスト入力機能等が搭載されている。例えば、作業者は、報告が不要な静止画が貼り付けられていた場合、削除することができ、報告したい順番に静止画の順序を入れ替えることができ、各静止画に対してコメント、キャプション等を追記することができる。
【0040】
また、報告書作成アプリ250の入力部253は、作業者による入力装置の操作に応じて、編集画面を介して報告書に用いられる情報を入力する。これにより、作業者は、報告書を容易に作成することが可能となる。
【0041】
図3は、携帯端末205の構成の一例を示す図である。
【0042】
携帯端末205は、プロセッサ301と、主記憶装置302と、補助記憶装置303と、入力装置304と、出力装置305と、通信装置306と、を備える。
【0043】
プロセッサ301は、演算処理を行う装置である。プロセッサ301は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、AI(Artificial Intelligence)チップ等である。
【0044】
主記憶装置302は、プログラム、データ等を記憶する装置である。主記憶装置302は、例えば、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等である。ROMは、SRAM(Static Random Access Memory)、NVRAM(Non Volatile RAM)、マスクROM(Mask Read Only Memory)、PROM(Programmable ROM)等である。RAMは、DRAM(Dynamic Random Access Memory)等である。
【0045】
補助記憶装置303は、ハードディスクドライブ(Hard Disk Drive)、フラッシュメモリ(Flash Memory)、SSD(Solid State Drive)、光学式記憶装置等である。光学式記憶装置は、CD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disc)等である。補助記憶装置303に格納されているプログラム、データ等は、主記憶装置302に随時読み込まれる。
【0046】
入力装置304は、ユーザから情報を受け付けるユーザインターフェースである。入力装置304は、例えば、キーボード、マウス、カードリーダ、タッチパネル等である。
【0047】
出力装置305は、各種の情報を出力(表示出力、音声出力、印字出力等)するユーザインターフェースである。出力装置305は、例えば、各種情報を可視化する表示装置、音声出力装置(スピーカ)、印字装置等である。表示装置は、LCD(Liquid Crystal Display)、グラフィックカード等でよい。
【0048】
通信装置306は、通信媒体を介して他の装置と通信する通信インターフェースである。通信装置306は、例えば、NIC(Network Interface Card)、無線通信モジュール、USB(Universal Serial Bus)モジュール、シリアル通信モジュール等である。通信装置306は、通信可能に接続する他の装置から情報を受信する入力装置として機能することもできる。また、通信装置306は、通信可能に接続する他の装置に情報を送信する出力装置として機能することもできる。
【0049】
携帯端末205の機能(抽出部251、出力部252、入力部253等)は、例えば、プロセッサ301が補助記憶装置303に格納されたプログラムを主記憶装置302に読み出して実行すること(ソフトウェア)により実現されてもよいし、専用の回路等のハードウェアにより実現されてもよいし、ソフトウェアとハードウェアとが組み合わされて実現されてもよい。なお、携帯端末205の1つの機能は、複数の機能に分けられていてもよいし、複数の機能は、1つの機能にまとめられていてもよい。また、携帯端末205の機能の一部は、別の機能として設けられてもよいし、他の機能に含められていてもよい。また、携帯端末205の機能の一部は、携帯端末205と通信可能な他のコンピュータにより実現されてもよい。
【0050】
例えば、抽出部251は、画像分析を行う。抽出部251は、AI(Artificial Intelligence)を搭載する。AIは、例えば、ニューラルネットワークであり、SSD(Single Shot Multibox Detector)、YOLO(You Only Look Once)等の深層学習により、指差呼称確認の画像を抽出可能に学習されている。ここで、ニューラルネットワークの学習に用いられる画像について
図4を用いて説明する。
【0051】
図4は、ニューラルネットワークの学習に用いられる画像の一例を示す図である。
【0052】
本実施の形態では、画像の背景は、現場ごとに変わるので、指の形および/または手の形が学習されている。より具体的には、背景を示す背景画像401と、背景が取り除かれた特定の動作を示す手が含まれる画像に対して手がある位置の注釈420がつけられた指差画像402とが様々なパターンで合成された合成画像403(データセット)が用いられてニューラルネットワークのパラメータ(重み、バイアス等)が学習されている。これにより、抽出部251は、背景によらずに、作業者が特定の動作を行うことで、作業者が所望する場面における画像を抽出できる。
【0053】
図5は、エレベーターシステム200を用いた場合の作業フローの一例を示す図である。なお、以下では、
図1を用いて説明した構成については、同じ符号を用いてその説明を適宜に省略する。
【0054】
S511では、制御盤202は、信号処理を行う。当該信号処理では、制御盤202は、切替スイッチ211からの信号を検出し、運転モードを通常運転モードから保守運転モードに切り替えたことを示す切替情報を監視装置203に通知する。
【0055】
S512では、監視装置203は、切替情報に基づいて開始処理を行う。開始処理では、監視装置203は、撮影を開始するように開始指示をカメラ204に通知する。
【0056】
S513では、カメラ204は、開始指示に基づいて撮影を開始する。なお、S113、S114等では、作業者は、視線を部品(旧部品または新部品)に向けて指差呼称確認する。このとき、カメラ204の撮影範囲には、作業者の指が部品を差している様子が映っている。
【0057】
S521では、制御盤202は、信号処理を行う。当該信号処理では、制御盤202は、切替スイッチ211からの信号を検出した場合、運転モードを保守運転モードから通常運転モードに切り替えたことを示す切替情報を監視装置203に通知する。
【0058】
S522では、監視装置203は、切替情報に基づいて終了処理を行う。終了処理では、監視装置203は、撮影を終了するように終了指示をカメラ204に通知する。
【0059】
S523では、カメラ204は、終了指示に基づいて撮影を終了し、報告書作成アプリ250を起動するように起動指示を携帯端末205に通知する。この際、カメラ204は、撮影した動画を携帯端末205に転送(配信)する。なお、動画の配信方法は、ストリーミング配信であってもよいし、ダウンロード配信であってもよいし、その他のタイミングで配信されてもよい。
【0060】
S524では、携帯端末205は、起動指示に基づいて報告書作成アプリ250を起動する。なお、報告書作成アプリ250の起動は、作業者による入力装置の操作に応じて行われてもよい。
【0061】
S525では、報告書作成アプリ250は、画像分析を行い、指差呼称確認の画像を動画から識別して抽出する。画像分析では、動画内に指差呼称確認の画像がある場合、当該画像を静止画として抽出し、時系列順に保管する処理が行われる。画像分析により抽出される画像は、「ヨシ」と発声されたときの静止画であってもよいし、当該静止画から所定時間前の画像および/または所定時間後の画像を含む短時間の動画であってもよい。例えば、報告書作成アプリ250は、指差呼称確認の画像の前後5秒間の動画を抽出し、10秒間の動画を取得してもよい。
【0062】
S526では、携帯端末205は、抽出した画像を電子帳票に貼り付ける。
【0063】
本実施の形態では、作業者は、部品交換作業中に逐次手を止めて撮影する必要がない。また、作業中に限定して撮影することができるので、動画が必要最小限となる。また、特段のデータベースのようなものを準備しなくても必要な画像を抽出することができるため、報告書作成を省力化することが可能となる。
【0064】
(II)付記
上述の実施の形態には、例えば、以下のような内容が含まれる。
【0065】
上述の実施の形態においては、本発明を昇降機システムに適用するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、この他種々のシステム、装置、方法、プログラムに広く適用することができる。
【0066】
上述の実施の形態では、エレベーターシステム200をカメラ204と携帯端末205とを備える構成としているが、特に使用機器を限定するものではない。例えば、カメラ204は、一般的に普及しているスマートフォン、タブレット等であってもよく、その場合は、スマートフォン、タブレット等に搭載されたカメラによる撮影でも問題ない。
【0067】
また、上述の実施の形態では、指差呼称確認の画像をあらかじめAIに学習させ、撮影動画から指差呼称確認の画像を抽出する構成としているが、特に指差呼称確認に限定するものではない。例えば、高所作業時に使用する命綱のフック部分の画像を学習させておき、撮影動画からフックの画像を抽出することで、安全に作業していることを証明する画像を報告書に載せることもできる。
【0068】
また、上述の実施の形態では、抽出した動画が複数ある場合は、編集して1本の動画にしたうえで、専用のサイトに自動アップロードされ、管理人および/または管理者に作業完了の旨が電子メール等で自動通知されてもよい。
【0069】
また、上述の実施の形態では、電子メール等により、管理人のメールアドレスおよび/または管理者のメールアドレスに電子帳票の内容(報告書)を送信してもよい。
【0070】
また、上述の実施の形態では、監視装置203は、例えば、サーバ装置であり、プロセッサと主記憶装置と補助記憶装置と入力装置と出力装置と通信装置とを備える。
【0071】
また、監視装置203の機能(検出部231、通知部232等)は、例えば、プロセッサが補助記憶装置に格納されたプログラムを主記憶装置に読み出して実行すること(ソフトウェア)により実現されてもよいし、専用の回路等のハードウェアにより実現されてもよいし、ソフトウェアとハードウェアとが組み合わされて実現されてもよい。なお、監視装置203の1つの機能は、複数の機能に分けられていてもよいし、複数の機能は、1つの機能にまとめられていてもよい。また、監視装置203の機能の一部は、別の機能として設けられてもよいし、他の機能に含められていてもよい。また、監視装置203の機能の一部は、監視装置203と通信可能な他のコンピュータにより実現されてもよい。
【0072】
また、上述の実施の形態においては、切替スイッチの操作に応じてカメラの撮影を制御する場合について述べたが、本発明はこれに限らない。
【0073】
例えば、電源スイッチの操作に応じてカメラの撮影を制御するようにしてもよい。この場合、S112において電源スイッチが操作されたときに、制御盤202は、切替情報を監視装置203に通知し、S120において電源スイッチが操作されたときに、制御盤202は、切替情報を監視装置203に通知する。
【0074】
また、例えば、乗りかごの運行を停止するための停止スイッチの操作に応じてカメラの撮影を制御するようにしてもよい。この場合、S109において停止スイッチが操作されたときに、制御盤202は、切替情報を監視装置203に通知し、S122において停止スイッチが操作されたときに、制御盤202は、切替情報を監視装置203に通知する。
【0075】
また、例えば、建物の入館に係る操作に応じてカメラの撮影を制御するようにしてもよい。この場合、S107において入館処理が行われたときに、監視装置203は、入館処理が行われたことを検出して開始指示をカメラ204に通知し、S122の後において退館処理が行われたときに、監視装置203は、退館処理が行われたことを検出して終了指示をカメラ204に通知する。
【0076】
また、上述の実施の形態においては、抽出部251は、取得された動画から指差呼称確認の画像を抽出する場合について述べたが、本発明はこれに限らない。例えば、抽出部251は、カメラ204からリアルタイムに動画を受け取り、指差呼称確認が行われたときの画像を抽出したときに撮影を指示するようにし、指差呼称確認の画像または指差呼称確認の画像を含む短時間の動画を取得してもよい。
【0077】
また、上述の実施の形態において、プログラムの一部またはすべては、プログラムソースから、携帯端末を実現するコンピュータのような装置にインストールされてもよい。プログラムソースは、例えば、ネットワークで接続されたプログラム配布サーバまたはコンピュータが読み取り可能な記録媒体(例えば非一時的な記録媒体)であってもよい。また、上述の説明において、2以上のプログラムが1つのプログラムとして実現されてもよいし、1つのプログラムが2以上のプログラムとして実現されてもよい。
【0078】
また、上述の実施の形態において、情報の出力は、ディスプレイへの表示に限るものではない。情報の出力は、スピーカによる音声出力であってもよいし、ファイルへの出力であってもよいし、印刷装置による紙媒体等への印刷であってもよいし、プロジェクタによるスクリーン等への投影であってもよいし、その他の態様であってもよい。
【0079】
また、上記の説明において、各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリや、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記憶装置、または、ICカード、SDカード、DVD等の記録媒体に置くことができる。
【0080】
上述した実施の形態は、例えば、以下の特徴的な構成を有する。
【0081】
(1)
昇降機に係る作業における所定の作業(保守作業、保全作業等であり、例えば、エレベーターを構成する機器の部品を交換する作業、当該機器の点検に係る作業、当該機器の故障修理に係る作業、当該機器の整備に係る作業、エレベーターの障害からの復旧に係る作業)を管理可能な昇降機システム(例えば、エレベーターシステム200)であって、上記所定の作業を撮影可能なカメラ(例えば、カメラ204)と、上記所定の作業の前に行われる上記昇降機に対する第1の操作(保守運転モードにする切替スイッチ211の操作、乗りかごの電源を遮断する電源スイッチの操作、乗りかごを停止させる停止スイッチの操作等)に応じて上記所定の作業が開始されることを検出し、上記所定の作業の後に行われる上記昇降機に対する第2の操作(通常運転モードにする切替スイッチ211の操作、乗りかごの電源を投入する電源スイッチの操作、乗りかごの停止を解除する停止スイッチの操作等)に応じて上記所定の作業が終了されることを検出する検出部(検出部231、監視装置203、制御盤202、回路等)と、上記所定の作業が開始されることが上記検出部により検出されたときに、上記カメラに対して撮影を開始する指示を通知し、上記所定の作業が終了されることが上記検出部により検出されたときに、上記カメラに対して撮影を終了する指示を通知する通知部(通知部232、監視装置203、制御盤202、回路等)と、を備える。
【0082】
上記構成では、所定の作業の前に行われる昇降機に対する第1の操作に基づいて撮影が開始され、所定の作業の後に行われる昇降機に対する第2の操作に基づいて撮影が終了するので、所定の作業が行われているときの画像を確実に限定して取得することができる。上記構成によれば、例えば、動画の録画が長時間に及び、当該動画の容量が膨大になったり、当該動画に顧客の情報が含まれたりしてしまう事態を回避することができる。
【0083】
(2)
上記昇降機システムは、通常運転モードと保守運転モードとを切り替えるスイッチ(例えば、切替スイッチ211)を備え、上記検出部は、上記スイッチの操作に応じて、通常運転モードと保守運転モードとの切り替えを検出し、上記通知部は、通常運転モードから保守運転モードに切り替えられたことが上記検出部により検出されたときに、上記カメラに対して撮影を開始する指示を通知し(例えば、S512参照)、保守運転モードから通常運転モードに切り替えられたことが上記検出部により検出されたときに、上記カメラに対して撮影を終了する指示を通知する(例えば、S522)。
【0084】
上記構成によれば、例えば、保守業務において必ず行われる運転モードの切り替えのためのスイッチの操作に応じてカメラによる撮影が制御されるので、報告書を作成するために作業の手を止めて撮影をしなければならない事態を回避することができる。
【0085】
(3)
上記昇降機システムは、作業者の特定の動作を識別可能に学習されたニューラルネットワークを用いて、上記カメラにより撮影された動画から上記動作が行われた画像を抽出する抽出部(抽出部251、携帯端末205、回路、スマートフォン、保守端末等)と、上記抽出部により抽出された画像を報告書フォーマットに貼り付けて出力する出力部(出力部252、携帯端末205、回路、スマートフォン、保守端末等)と、を備える。
【0086】
上記構成によれば、特定の動作が行われたときの画像が抽出されるので、例えば、部品の画像をデータベースに登録する必要がなく、現場の判断で必要な画像を抽出できるようになる。また、上記構成によれば、例えば、指差呼称確認が行われたときの画像が報告書フォーマットに貼り付けられるので、報告書の作成時間を短縮することができる。
【0087】
(4)
上記抽出部は、上記カメラにより撮影された動画から、上記動作が行われた画像を含む上記動画よりも短い時間の動画を抽出する。
【0088】
上記構成によれば、例えば、指差呼称確認の画像を含む短時間の動画が抽出されるので、一の保守業務において複数の作業があった場合でも、作業者、管理者等は、前後の内容から複数の作業の各々を容易に識別することができる。
【0089】
(5)
上記昇降機システムは、報告書に用いられる情報を入力するための入力部(入力部253、回路等)を備え、上記所定の作業を行う作業者は、携帯端末(携帯端末205、スマートフォン、保守端末等)を所持し、上記入力部と上記出力部とは、上記携帯端末に設けられている。
【0090】
上記構成によれば、例えば、作業者は、作業現場において報告書を作成することができる。
【0091】
また上述した構成については、本発明の要旨を超えない範囲において、適宜に、変更したり、組み替えたり、組み合わせたり、省略したりしてもよい。
【0092】
「A、B、およびCのうちの少なくとも1つ」という形式におけるリストに含まれる項目は、(A)、(B)、(C)、(AおよびB)、(AおよびC)、(BおよびC)または(A、B、およびC)を意味することができると理解されたい。同様に、「A、B、またはCのうちの少なくとも1つ」の形式においてリストされた項目は、(A)、(B)、(C)、(AおよびB)、(AおよびC)、(BおよびC)または(A、B、およびC)を意味することができる。
【符号の説明】
【0093】
204……カメラ、231……検出部、232……通知部。