(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024007745
(43)【公開日】2024-01-19
(54)【発明の名称】燃料電池車
(51)【国際特許分類】
B60K 1/04 20190101AFI20240112BHJP
H01M 8/00 20160101ALI20240112BHJP
H01M 8/04 20160101ALI20240112BHJP
H01M 8/10 20160101ALN20240112BHJP
【FI】
B60K1/04
H01M8/00 Z
H01M8/04 Z
H01M8/10 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022109036
(22)【出願日】2022-07-06
(71)【出願人】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110000419
【氏名又は名称】弁理士法人太田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平脇 愛子
【テーマコード(参考)】
3D235
5H126
5H127
【Fターム(参考)】
3D235AA02
3D235BB07
3D235CC12
3D235CC22
3D235DD12
3D235DD17
3D235DD33
3D235FF03
3D235FF06
3D235FF07
5H126BB06
5H127AA06
5H127AB04
5H127AB29
5H127BA02
5H127BA22
5H127EE04
5H127FF12
(57)【要約】
【課題】車両前方のスペース内に燃料電池モジュールのみならず駆動装置や電動モータが配置される場合における衝突対策が施された燃料電池車を提供する。
【解決手段】本開示の一形態における燃料電池車は、燃料電池と、前記燃料電池の電力によって駆動される駆動用モータと、前記駆動用モータからの駆動力を伝達する駆動装置と、を車両の前部空間に備え、前記燃料電池は、ボディにつながる第1フレームでマウントされてなり、前記駆動用モータ及び前記駆動装置は、前記ボディにつながり且つ前記第1フレームとは異なる第2フレームでマウントされてなる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池と、
前記燃料電池の電力によって駆動される駆動用モータと、
前記駆動用モータからの駆動力を伝達する駆動装置と、を車両の前部空間に備え、
前記燃料電池は、ボディにつながる第1フレームでマウントされてなり、
前記駆動用モータ及び前記駆動装置は、前記ボディにつながり且つ前記第1フレームとは異なる第2フレームでマウントされてなる、
燃料電池車。
【請求項2】
前記燃料電池、前記駆動装置および前記駆動用モータは、車両前方から後方へこの順で配列され、
前記第1フレームは、前方衝突時に後方ブラケットが破損して車両の長さ方向に関して縮小変形可能に配置され、
前記第2フレームは、前記前方衝突時に車両後方側の前記ボディとの接続部位が破損して車両前方の前記ボディとの接続部位を基点に旋回するように配置されてなる、
請求項1に記載の燃料電池車。
【請求項3】
前記第2フレーム上に固定手段を介して固定されるとともに、前記駆動用モータを駆動する高電圧部品が搭載される第3フレームをさらに備える、
請求項1に記載の燃料電池車。
【請求項4】
前記第1フレームのうち前記燃料電池の下方側には補機類が搭載され、
前記補機類のうち電気系補機は、車幅方向における設置位置が前記駆動装置の前記車幅方向における設置位置と車長方向に関して重ならないようにずれて配置されている、
請求項1に記載の燃料電池車。
【請求項5】
前記第2フレームは、前記ボディのうちフロアトンネル下において傾斜のついた状態で配置されてなる、
請求項1~4のいずれか一項に記載の燃料電池車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、燃料電池を搭載する燃料電池車に関する。
【背景技術】
【0002】
現代社会において移動手段として自動車はもはや不可欠であり、日常において様々な車両が路上を移動している。近年、環境負荷が比較的小さい燃料電池を搭載する燃料電池車の開発が進められている。
【0003】
かような燃料電池車には、水素タンクと、この水素タンクから水素の供給を受けて発電する燃料電池モジュールなどが搭載される。例えば特許文献1に例示されるように、車両長さ方向に荷重が加えられた場合に、燃料電池モジュールと水素タンクとの衝突が回避可能な衝突対策が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した各特許文献に限らず現在の技術では市場のニーズを適切に満たしているとは言えず以下に述べる課題が存在する。
すなわち燃料電池車には、上記した水素タンクや燃料電池モジュールの他に、この燃料電池の電力によって駆動される電動モータや、この電動モータの駆動力を車輪に伝達するギアボックスなどの駆動装置なども搭載される。
【0006】
特許文献1で提案された配置形態では電動モータが車両後方に配置される後輪駆動を前提とした構造であるが、例えば前輪駆動又は4輪駆動を想定した場合には必ずしも最適な配置を提案するものではない。このように前輪駆動又は4輪駆動を想定した燃料電池車においては、燃料電池モジュールに加えて電動モータや駆動装置まで含めた配置形態に関する改善の余地は未だに大きい。
【0007】
本開示は、上記した課題を一例に鑑みて為されたものであり、車両前方のスペース内に燃料電池モジュールのみならず駆動装置や電動モータが配置される場合における衝突対策が施された燃料電池車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本開示の一実施形態における燃料電池車は、燃料電池と、前記燃料電池の電力によって駆動される駆動用モータと、前記駆動用モータからの駆動力を伝達する駆動装置と、を車両の前部空間に備え、前記燃料電池は、ボディにつながる第1フレームでマウントされてなり、前記駆動用モータ及び前記駆動装置は、前記ボディにつながり且つ前記第1フレームとは異なる第2フレームでマウントされてなる。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、車両長さ方向に荷重が加えられた場合にも、車両前方にそれぞれ配置された燃料電池モジュール、電動モータおよび駆動装置への損傷を最小限に抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施形態の燃料電池車におけるボディ前部と保持機構の斜視図である。
【
図2】実施形態の燃料電池車におけるボディ前部と保持機構を側面から見た模式図である。
【
図3】実施形態に係る保持機構を上方から模式的に示した上面図である。
【
図4】前方衝突時における保持構造の状態遷移を示す模式図(その1)である。
【
図5】前方衝突時における保持構造の状態遷移を示す模式図(その2)である。
【
図6】前方衝突時における保持構造の状態遷移を示す模式図(その3)である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に本開示を実施するための好適な実施形態について説明する。なお、以下の説明では、それぞれ便宜的に燃料電池車の車高方向をZ方向、車長方向をX方向、これらZ方向及びX方向と直交する車幅方向をY方向として定義して説明する。しかしながら本開示は上述した方向の規定に左右されるものではなく、特許請求の範囲を不当に減縮するものでないことは言うまでもない。また、以下で詳述する以外の構成については、上記した特許文献を含む公知の燃料電池車に関するフレーム構造及び車載装備並びにその要素技術を適宜補完してもよい。
【0012】
[燃料電池車100]
実施形態の燃料電池車100の構成について、
図1~
図3を参照しながら説明する。
図1に示すように、燃料電池車100は、ボディ10のうち車両前方のボンネット(不図示)内に配置された前部空間FSを有して構成されている。かような前部空間FS内には、燃料電池20、駆動用モータ30、駆動装置40、高電圧部品50および補機類60などが、ボディ10に連結されたそれぞれのフレーム部材(後述)を介して搭載されている。
【0013】
なお燃料電池車100は、上記の他にも、例えば燃料電池20に燃料ガスを供給する公知の水素タンク(不図示)や、燃料電池20などで発生した電力を必要に応じて貯蔵する公知の車載バッテリー(不図示)など種々の装備が搭載される。
以下では、本実施形態の燃料電池車100として駆動装置40から前輪に駆動力が伝達される前輪駆動車が例示される。しかしながら燃料電池車100は、上記した前輪駆動車に限られず、後輪に駆動力が伝達される後輪駆動車や、車両前後にそれぞれ駆動装置が設けられる4輪駆動車であってもよい。
【0014】
燃料電池20は、例えば公知のPEFC(固体高分子形燃料電池)の単セルが複数積層された燃料電池スタック及びその冷却回路などが配備された公知の燃料電池モジュールとして構成されてもよい。かような燃料電池20は、
図1及び
図2などに示すように、車両のボディ10につながる第1フレーム11でマウントされている。第1フレーム11は、同図から理解されるとおり、公知の固定手段を介してボディ10の両サイドに端部がつながるクロスメンバとして構成されている。
【0015】
<第1フレーム11の詳細構造>
図2及び
図6などに示すように、燃料電池20は、第1フレーム11のうち車長方向に関して前方に配置された第1クロスメンバ11Aと、この第1クロスメンバ11Aよりも後方に配置された第2クロスメンバ11Bと、によって支持されている。より具体的に
図6から理解されるとおり、燃料電池20のうちフロント側は、第1クロスメンバ11Aのフロントマウント11Am上に設けられた前方ブラケット11Abを介して固定されると共に、第2クロスメンバ11Bのリアマウント11Bm上に設けられた後方ブラケット11Bbを介して固定されていてもよい。
【0016】
なお本実施形態のフロントマウント11Amやリアマウント11Bmの構造や材質は、燃料電池20を搭載可能である限りにおいて特に制限はなく、上記した特許文献にも例示されるごとき公知のマウント機構を適用してもよい。
【0017】
一方で
図6に示すように、本実施形態では、燃料電池20を固定する前方ブラケット11Ab及び後方ブラケット11Bbは、燃料電池20を固定する強さが互いに異なるように構成されていてもよい。すなわち前方衝突時などで第1フレーム11が衝撃を受けたとき、前方ブラケット11Abが燃料電池20の固定を維持しつつ後方ブラケット11Bbによる燃料電池20の固定が優先して解除されるように、前方ブラケット11Ab及び後方ブラケット11Bbが燃料電池20を固定していてもよい。
【0018】
かような後方ブラケット11Bbの優先破断を実現する一例として、例えば前方ブラケット11Abにおいては鉛直方向にボルトを締結して燃料電池20を固定する一方で、後方ブラケット11Bbにおいては上記衝撃の時にボルトが抜けるように車長方向に沿ってボルト締めを行ってもよい。あるいは、上記優先破断を実現する他の一例として、後方ブラケット11Bbで用いるボルトの強度や剛性を、前方ブラケット11Abよりも低く設定してもよい。これにより、前方衝突時などで第1フレーム11が衝撃を受けたとき後方ブラケット11Bbが前方ブラケット11Abに優先して破断することが可能となる。
【0019】
また、
図6に示すように、互いに車幅方向に沿って平行に延びる第1クロスメンバ11Aと第2クロスメンバ11Bは、その間に介在する連結片11Cによって接続されている。なお、連結片11Cは、第1クロスメンバ11A及び第2クロスメンバ11Bに対して、例えば溶接や締結など公知の固定手段で連結されてもよい。
【0020】
第1クロスメンバ11A及び第2クロスメンバ11Bは、公知の鋼材で構成されていてもよい。一方で本実施形態における連結片11Cの剛性は、上記した第1クロスメンバ11A及び第2クロスメンバ11Bの剛性よりも低くなるように設定されていてもよい。あるいは上記に代えて、本実施形態の連結片11Cは、車長方向に対して交差するように折れ曲がる変曲領域を有していてもよい。これにより、後述するように、前方衝突時などで第1フレーム11が衝撃を受けたときに、後方ブラケット11Bbが破損して車両の長さ方向に関して第1フレーム11が全体として縮小変形することが可能となっている。
【0021】
燃料電池の電力によって駆動される駆動用モータ30と、この駆動用モータ30からの駆動力を伝達する駆動装置40は、
図1及び
図2などに示すように、前部空間FSにおいて燃料電池20よりも車長方向に関して後方に配置されている。より具体的に本実施形態の駆動用モータ30及び駆動装置40は、前記した車両のボディ10につながり且つ第1フレーム11とは異なる第2フレーム12でマウントされていてもよい。
【0022】
<第2フレーム12の詳細構造>
この第2フレーム12は、
図1~
図3などから理解されるとおり、車長方向において第1フレーム11よりも後方に配置されて、公知の固定手段を介してボディ10の両サイドに端部がつながるクロスメンバを含んで構成されている。
【0023】
より具体的に第2フレーム12は、車幅方向に延びてボディ10の両サイドに端部がつながる第3クロスメンバ12Aおよび第4クロスメンバ12Bと、この第3クロスメンバ12Aおよび第4クロスメンバ12Bと両端がそれぞれ接続されて車長方向に延びる第1サイドメンバ12C及び第2サイドメンバ12Dと、を有して構成されていてもよい。
【0024】
このうち第3クロスメンバ12Aは、
図2に示されるように、第4クロスメンバ12Bに対して車長方向に関してフロント側に配置され且つ鉛直方向に関して上側となるように配置されていてもよい。換言すれば、同図から理解されるように、第1サイドメンバ12C及び第2サイドメンバ12Dは前方側が鉛直上方に位置するように斜めに傾斜して配置されていてもよい。すなわち前部空間FSの後方は車室のフロア(床下)と区分けされているが、
図2などに示すように、本実施形態の第2フレーム12は、上記したフロアのうち中央に位置するフロアトンネル14下において傾斜のついた状態で配置されていてもよい。
【0025】
かような第1サイドメンバ12Cと第2サイドメンバ12Dの間には、上記した駆動用モータ30及び駆動装置40が介在するようにそれぞれ固定されている。なお上記したサイドメンバに対する駆動用モータ30及び駆動装置40の固定手法としては、特に制限されず、例えばボルトを介した締結手段や溶接あるいは接着剤を介した固着手段を適用してもよい。
【0026】
図1などから理解されるとおり、後述する衝突時退避動作を実現するため、本実施形態における燃料電池20、駆動装置40及び駆動用モータ30は、車両前方から後方へこの順で配列されている。
【0027】
なお、上記した駆動用モータ30の具体例としては、特に制限されず、燃料電池車に搭載される公知の種々の電動モータを適用してもよい。また、上記した駆動装置40の具体例としては、車輪に上記駆動用モータ30からの駆動力を伝達するギアボックスなど公知の駆動力伝達機構が例示できる。
【0028】
<第3フレーム13の詳細構造>
図1及び
図2などに示すように、本実施形態の燃料電池車100は、前記した第2フレーム12上に固定手段Fxを介して固定される第3フレーム13をさらに含んで構成されていてもよい。第3フレーム13は、前記した駆動用モータ30を駆動する高電圧部品50を搭載する。本実施形態の高電圧部品50としては、公知のインバータが例示できるが、燃料電池車に必要な他の公知の高電圧部品を適用してもよい。なお本実施形態では高電圧部品50はインバータであることから、この第3フレーム13はインバータ専用フレームとも言える。
【0029】
固定手段Fxの具体例としては、例えば締結用ボルトなど公知の留め具が例示できる。第2フレーム12に対する第3フレーム13の固定態様としては、
図3に示すように、第1サイドメンバ12C及び第2サイドメンバ12Dに上記した締結用ボルトを挿入可能な固定孔FHが設け、上記した固定手段Fxを介して第3フレームの底面を第1サイドメンバ12C及び第2サイドメンバ12Dに固定してもよい。
【0030】
なお、第1サイドメンバ12Cの上面側及び第2サイドメンバ12Dの上面側に設けられる固定孔FHは、車長方向に対して長軸が並行となる楕円状もしくは長穴状であってもよい。これにより、後述する衝突時において燃料電池20に追突された第3フレーム13が固定孔FH内をスライド移動することが可能となっている。
【0031】
<補機類60の配置形態>
図1及び
図2などに示すように、燃料電池20の駆動に必要な補機類60は、上記した第1フレーム11の下方に公知のマウント機構を介して固定されていてもよい。かような補機類60は、コンバータや電動ポンプなど衝突時に保護が必要な電気系補機60Aと、インタークーラなど衝突時に保護が必ずしも必要でない非電気系補機60Bが含まれる。
【0032】
そして
図4から理解されるとおり、本実施形態の補機類60においては、衝突時に保護が必要な電気系補機60Aは、車長方向に関して上記した駆動装置40に重ならないように第1フレーム11の車幅方向における左右側に配置されていてもよい。一方で上記した非電気系補機60Bは、車長方向に関して上記した駆動装置40に重なるように第1フレーム11の車幅方向における中央側に配置されていてもよい。
【0033】
このように本実施形態の燃料電池車100では、第1フレーム11のうち燃料電池20の下方側には補機類60が搭載されて、この補機類のうち電気系補機は、車幅方向における設置位置が駆動装置40の車幅方向における設置位置と車長方向に関して重ならないようにずれて配置されていてもよい。これにより、例えば後述する衝突時において燃料電池20と同様に第1フレーム11を介して補機類60が後方にスライドするように移動するが、電気系補機60Aと駆動装置40とが車長方向で重ならず衝突が回避できる。
【0034】
<車長方向の衝撃を受けたときの燃料電池車100における状態遷移>
次に
図4~
図6も参照しつつ、本実施形態の燃料電池車100が車長方向の衝撃を受けたときの状態遷移について説明する。なお以下では「車長方向の衝撃」として、燃料電池車100が前方に存在する何らかの障害物に追突する前方衝突を例にして説明する。しかしながら本実施形態は、この例に限られず、車長方向の衝撃には燃料電池車100が後方側の障害物と衝突する後方衝突も含んでもよい。
【0035】
すなわち燃料電池車100が前方衝突した場合には、その衝撃がボディ10を介して第1フレーム11に伝達されると共に、この衝撃に基づく慣性力が燃料電池20にも作用する。上述したとおり、本実施形態では、衝撃時に前方ブラケット11Abが燃料電池20の固定を維持しつつ後方ブラケット11Bbによる燃料電池20の固定が優先して破断する。また、連結片11Cの剛性は、上記した第1クロスメンバ11A及び第2クロスメンバ11Bの剛性よりも低くなるように設定されている。
【0036】
すると
図6に示すように、まず燃料電池20を支持する後方ブラケット11Bbによる燃料電池20の固定が優先して破断する。次いで、上記慣性力の作用で燃料電池20が車両後方側へ移動すると共に第1フレーム11の一部(本例では連結片11C)が車長方向に関して縮小変形する。これにより、まず前方衝突時における燃料電池20への損傷や変形を抑制することが可能となっている。
【0037】
このとき
図4に示すように、本実施形態の電気系補機60Aは、車長方向に関して駆動装置40に重ならないように第1フレーム11の車幅方向における左右側に配置されている。また同図に示すように、第3フレーム13に搭載された高電圧部品50は、鉛直方向に関して補機類60よりも上方側に配置されていてもよい。これにより、衝突時における高電圧部品50と補機類60との接触も可能な限り抑制することが可能となっている。
【0038】
車長方向の衝撃に連動して燃料電池20が車両後方側へ移動すると、
図5に示すように、高電圧部品50を搭載する第3フレーム13に燃料電池20が接触する。このように本実施形態の第3フレーム13は、燃料電池20と高電圧部品50との間に介在する前面板13Hを備えて構成されてもよい。これにより衝突時における燃料電池20と高電圧部品50とが直接接触することが避けられて、上記衝突時において過大な損傷が誘発されることも抑制できる。
【0039】
そして第3フレーム13に燃料電池20が接触すると、高電圧部品50を搭載する第3フレーム13の固定手段Fxが破損することで第3フレーム13が車両後方側へ移動する。すると、同図に示すように、車両後方側へ移動した第3フレーム13が駆動用モータ30に接触し、この第3フレーム13の接触による衝撃などに起因して第2フレーム12のうち第4クロスメンバ12Bのボディ10に対する接続部位12fxbが破断する。これにより第2フレーム12は、前方衝突時に車両後方側のボディ10との接続部位12fxbが破損し、車両前方のボディ10との接続部位12fxaを基点に旋回可能となる。
【0040】
このように本実施形態では、駆動用モータ30及び駆動装置40は、駆動装置40、駆動用モータ30の順で車長方向における前方から順に配置される。また駆動用モータ30及び駆動装置40は、前部空間FSの後方に存する車両のフロアトンネル下に傾斜がついた状態で少なくとも一部が配置されていてもよい。
【0041】
燃料電池20、駆動用モータ30及び駆動装置40は、それぞれボディ10につながる専用フレーム(本例では第1フレーム11と第2フレーム12)にそれぞれマウント機構を介して固定されていてもよい。さらに本実施形態では駆動装置40の上方には、専用の第3フレーム13に固定された高電圧部品50(インバータ)が配置されていてもよい。この第3フレーム13は、第2フレーム12に設けられた車長方向に沿った固定孔FH(長穴など)に固定手段Fxを介して固定されていてもよい。
【0042】
そして前方衝突などによって車長方向の衝撃を受けた際、第3フレーム13は、後方に移動してきた燃料電池20に押し出されて、第2フレーム12の傾斜に沿ってフロアトンネル下に少なくとも一部が潜り込むように移動が許容される。そして第3フレーム13が駆動装置40に接触するほど後退する場合には、第3フレーム13から駆動装置40に衝突荷重が加わることで第2フレーム12のうち車両前方のボディ10との接続部位12fxbが破損する。
【0043】
すると駆動用モータ30は、車両前方のボディ10との接続部位12fxaを基点とした片持ち状態となり、この接続部位12fxaを起点に車両後方側が自重で下方に落ちる(接続部位12fxaを起点に旋回する)。これにより駆動用モータ30とフロアトンネル14の間には所定の隙間が形成されて、この隙間へ高電圧部品50が潜り込む形で燃料電池20との衝突を避けることが可能となる。
【0044】
以上、添付図面を参照しながら本開示の好適な実施形態について詳細に説明したが、本開示はかかる例に限定されない。本開示の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、上述した実施形態に対して更なる修正を試みることは明らかであり、これらについても当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0045】
10 ボディ
20 燃料電池
30 駆動用モータ
40 駆動装置
50 高電圧部品
60 補機類
100 燃料電池車