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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024077458
(43)【公開日】2024-06-07
(54)【発明の名称】水性化粧料
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/35 20060101AFI20240531BHJP
   A61K 8/86 20060101ALI20240531BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20240531BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20240531BHJP
【FI】
A61K8/35
A61K8/86
A61K8/34
A61Q19/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022189571
(22)【出願日】2022-11-28
(71)【出願人】
【識別番号】000004341
【氏名又は名称】日油株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100136629
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 光宜
(74)【代理人】
【識別番号】100080791
【弁理士】
【氏名又は名称】高島 一
(74)【代理人】
【識別番号】100125070
【弁理士】
【氏名又は名称】土井 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100121212
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 弥栄子
(74)【代理人】
【識別番号】100174296
【弁理士】
【氏名又は名称】當麻 博文
(74)【代理人】
【識別番号】100137729
【弁理士】
【氏名又は名称】赤井 厚子
(74)【代理人】
【識別番号】100151301
【弁理士】
【氏名又は名称】戸崎 富哉
(74)【代理人】
【識別番号】100152308
【弁理士】
【氏名又は名称】中 正道
(74)【代理人】
【識別番号】100201558
【弁理士】
【氏名又は名称】亀井 恵二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100158724
【弁理士】
【氏名又は名称】竹井 増美
(72)【発明者】
【氏名】原 優介
(72)【発明者】
【氏名】関口 孝治
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AC111
4C083AC122
4C083AC181
4C083AC182
4C083AC471
4C083AC472
4C083BB48
4C083CC04
4C083DD23
4C083DD27
4C083EE01
4C083EE06
4C083EE07
(57)【要約】      (修正有)
【課題】良好な保湿性と十分な防腐効果を有し、さらに塗布時の滑らかさに優れ、塗布後乾燥間際の止まり感や塗布後の被膜感が生じにくく、温度変化による外観の変化が少ない水性化粧料の提供。
【解決手段】(a)式(1)で表されるアセトフェノン、その誘導体、及びそれらの塩からなる群より選択される1種以上を0.1質量%~5質量%、(b)式(2)で示されるアルキレンオキシド誘導体を0.1質量%~5質量%、(c)炭素数が2~6の多価アルコールを10質量%~40質量%、並びに(d)水を含有し、成分(b)の成分(a)に対する含有量比[(b)/(a)]が質量比で1/2~40/1であり、成分(b)の成分(c)に対する含有量比[(b)/(c)]が質量比で1/40~1/5である、水性化粧料。(式中、R~Rは独立して、H、OHまたはOMe基、EOはオキシエチレン基、POはオキシプロピレン基、AOはオキシアルキレン基)


【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)下記式(1)で表されるアセトフェノン、その誘導体、およびそれらの塩からなる群より選択される1種以上を0.1質量%~5質量%、(b)下記式(2)で示されるアルキレンオキシド誘導体を0.1質量%~5質量%、(c)炭素数が2~6の多価アルコールを10質量%~40質量%、ならびに(d)水を含有し、成分(b)の成分(a)に対する含有量比[(b)/(a)] が質量比にて1/2~40/1であり、成分(b)の成分(c)に対する含有量比[(b)/(c)]が質量比にて1/40~1/5である、水性化粧料。
【化1】
[式(1)中、R、RおよびRはそれぞれ独立して、水素、ヒドロキシ基またはメトキシ基を表す。]
【化2】
[式(2)中、Zは炭素数1~12のヒドロキシ化合物からp個のヒドロキシ基を除いた残基を示し、pは、1~9の整数を示す。EOは、オキシエチレン基を示し、POは、オキシプロピレン基を示し、AOは、炭素数3~4のオキシアルキレン基を示し、l、mおよびnは、オキシエチレン基、オキシプロピレン基およびオキシアルキレン基の各平均付加モル数を示し、1≦p×l≦50、1≦p×m≦50、0≦p×n≦10である。]
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、良好な保湿効果と防腐効果を有し、かつ、塗布時の滑らかさに優れ、塗布後乾燥間際の止まり感や、塗布後の被膜感を生じにくく、温度変化による外観の変化が少ない水性化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
化粧料において、保湿効果の高さと感触のよさの両立は長年の課題であり、これまで多くの検討がなされてきた。保湿効果を高めるためには、様々な種類の多価アルコールを配合することが有効であるが、多価アルコールは、高濃度を配合すると、塗布時にべたつきといった感触面の悪化を招くおそれがある。
それゆえ、これまでべたつき等の感触の悪化を抑える両親媒性の成分として、アルキレンオキシド誘導体等が開発されており、かかるアルキレンオキシド誘導体を含有し、優れた感触と保湿性の双方を有する化粧料用基剤、ならびに、前記化粧料用基剤および水溶性多価アルコールを含有する化粧料が提案されている(特許文献1)。
【0003】
また化粧料は、開封後長期間にわたって使用されるため、微生物の生育や繁殖を抑制すべく、防腐効果を有することが不可欠である。それゆえ、化粧料には、パラオキシ安息香酸エステル、フェノキシエタノール、イソプロピルメチルフェノール等の防腐剤が配合されるのが一般的であり、これら防腐剤に起因する刺激感が緩和された化粧料組成物として、特定の構成単位を有するアクリル系共重合体を含有する組成物が提案されている(特許文献2)。
しかしながら、上記した感触と保湿性の双方を両立させた化粧料において、防腐効果を向上させるために、上述したような防腐剤と上記アルキレンオキシド誘導体を併用すると、過酷な温度変化が繰り返される場合に外観の変化が生じてしまうことがあった。
また、上述の防腐剤と上記アルキレンオキシド誘導体を併用した化粧料を、高温、高湿度下で塗布すると、乾燥間際の止まり感や被膜感といった感触の悪化が生じてしまうことがあった。
すなわち、従来は、優れた感触と保湿性の双方を有し、さらに十分な防腐効果を有する化粧料を得ることは困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2006/038724号
【特許文献2】特開2015-113298号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
それゆえ、本発明の課題は、良好な保湿性と十分な防腐効果を有し、さらに塗布時の滑らかさに優れ、塗布後乾燥間際の止まり感や塗布後の被膜感が生じにくく、温度変化による外観の変化が少ない水性化粧料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明者らは鋭意検討した結果、アセトフェノンまたはその誘導体あるいはそれらの塩、特定のアルキレンオキシド誘導体、および水溶性多価アルコールを、特定の含有量および含有量比で含有する水性化粧料において、塗布時の感触が良好であり、塗布後乾燥間際の止まり感や塗布後の被膜感等、塗布後の感触の悪化が改善され、同時に温度変化による外観の変化が改善されることを見出し、さらに検討して、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち本発明は、以下に関する。
[1](a)下記式(1)で表されるアセトフェノン、その誘導体、およびそれらの塩からなる群より選択される1種以上を0.1質量%~5質量%、(b)下記式(2)で示されるアルキレンオキシド誘導体を0.1質量%~5質量%、(c)炭素数が2~6の多価アルコールを10質量%~40質量%、ならびに(d)水を含有し、成分(b)の成分(a)に対する含有量比[(b)/(a)] が質量比にて1/2~40/1であり、成分(b)の成分(c)に対する含有量比[(b)/(c)]が質量比にて1/40~1/5である、水性化粧料。
【0008】
【化1】
【0009】
[式(1)中、R、RおよびRはそれぞれ独立して、水素、ヒドロキシ基またはメトキシ基を表す。]
【0010】
【化2】
【0011】
[式(2)中、Zは炭素数1~12のヒドロキシ化合物からp個のヒドロキシ基を除いた残基を示し、pは、1~9の整数を示す。EOは、オキシエチレン基を示し、POは、オキシプロピレン基を示し、AOは、炭素数3~4のオキシアルキレン基を示し、l、mおよびnは、オキシエチレン基、オキシプロピレン基およびオキシアルキレン基の各平均付加モル数を示し、1≦p×l≦50、1≦p×m≦50、0≦p×n≦10である。]
【発明の効果】
【0012】
本発明により、良好な保湿効果および防腐効果を有し、塗布時の滑らかさに優れ、塗布後乾燥間際の止まり感や、塗布後の被膜感が生じにくく、温度変化による外観の変化が少ない水性化粧料を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0014】
本発明は、水性化粧料を提供する。本明細書において、「水性化粧料」とは、水を含有し、主として水溶性成分や親水性成分を含有する化粧料をいう。
本発明の水性化粧料は、(a)アセトフェノン、その誘導体、およびそれらの塩からなる群より選択される1種以上、(b)アルキレンオキシド誘導体、(c)炭素数が2~6の多価アルコール、ならびに(d)水を含有する。
【0015】
[成分(a)]
本発明の化粧料に、成分(a)として含有されるアセトフェノンまたはその誘導体は、下記式(1)で表される化合物である。
【0016】
【化3】
【0017】
[式(1)中、R、RおよびRはそれぞれ独立して、水素、ヒドロキシ基またはメトキシ基を表す。]
【0018】
上記アセトフェノンまたはその誘導体としては、化粧料に通常配合される化合物であれば特に限定されないが、本発明においては、以下に挙げる化合物が好ましい例として挙げられる。
【0019】
アセトフェノン(1-(フェニル)エタノン)(下記式(3))
【0020】
【化4】
【0021】
2’-ヒドロキシアセトフェノン(1-(2-ヒドロキシフェニル)エタノン)(下記式(4))
【0022】
【化5】
【0023】
3’-ヒドロキシアセトフェノン(1-(3-ヒドロキシフェニル)エタノン)(下記式(5))
【0024】
【化6】
【0025】
4’-ヒドロキシアセトフェノン(1-(4-ヒドロキシフェニル)エタノン)(下記式(6))
【0026】
【化7】
【0027】
なかでも、本発明においては、4’-ヒドロキシアセトフェノンが特に好ましく用いられる。
【0028】
上記式(1)で表される化合物の塩としては、化粧料用として許容可能な塩または薬学的に許容可能な塩であれば特に限定されず、たとえばナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、アンモニウム塩等が挙げられる。
【0029】
本発明の水性化粧料には、成分(a)として、上記式(1)で表されるアセトフェノンおよびその誘導体ならびにそれらの塩からなる群より1種を選択して単独で用いてもよく、2種以上を選択し、組み合わせて用いてもよい。
上記式(1)で表されるアセトフェノンおよびその誘導体ならびにそれらの塩は、それぞれ自体公知の製造方法により製造して用いることもできるが、各社より化粧料用として提供されている市販の製品を利用することができる。
【0030】
本発明の水性化粧料における成分(a)の含有量は、0.1質量%~5質量%である。
成分(a)の含有量が0.1質量%未満である場合、塗布時の滑らかさが十分ではないことがある。水性化粧料の塗布時の滑らかさの観点からは、成分(a)の含有量は0.2質量%以上であることが好ましく、0.5質量%以上であることがより好ましい。
また、成分(a)の含有量が5質量%を超える場合は、塗布後乾燥間際の止まり感が生じ、また塗布後に被膜感が生じることがある。かかる使用感の悪化を防ぐ観点からは、成分(a)の含有量は4質量%以下であることが好ましく、3質量%以下であることがより好ましい。
【0031】
[成分(b)]
本発明の水性化粧料に、成分(b)として含有されるアルキレンオキシド誘導体は、下記式(2)で表される。
【0032】
【化8】
【0033】
[式(2)中、Zは炭素数1~12のヒドロキシ化合物からp個のヒドロキシ基を除いた残基を示し、pは、1~9の整数を示す。EOはオキシエチレン基を示し、POはオキシプロピレン基を示し、AOは炭素数3~4のオキシアルキレン基を示し、l、mおよびnは、オキシエチレン基、オキシプロピレン基およびオキシアルキレン基の各平均付加モル数を示し、1≦p×l≦50、1≦p×m≦50、0≦p×n≦10である。]
【0034】
式(2)中、Zは、炭素数1~12のヒドロキシ化合物(Z(OH))からすべての水酸基を除いた残基であり、pはヒドロキシ化合物の水酸基数を示し、1~9である。
上記ヒドロキシ化合物(Z(OH))の炭素数が12を超えると、塗布後乾燥間際の止まり感が生じてしまうことがある。かかる塗布後乾燥間際の止まり感の観点からは、ヒドロキシ化合物(Z(OH))の炭素数は好ましくは8以下であり、より好ましくは6以下である。
また、上記ヒドロキシ化合物(Z(OH))が炭素を含有しない無機化合物である場合には、塗布時の滑らかさが低下してしまう。塗布時の滑らかさの観点からは、ヒドロキシ化合物(Z(OH))の炭素数は2以上であることが好ましく、3以上であることがより好ましい。
上記ヒドロキシ化合物(Z(OH))としては、具体的にはメタノール、エタノール、プロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、エリスリトール、ペンタエリスリトール、ソルビタン、炭素数が1~6のアルキル基を有するアルキルグルコシド、ジグリセリン、キシリトール、ジペンタエリスリトール、ソルビトール、イノシトール、ショ糖、トレハロース、マルチトール等が挙げられ、式(2)で示されるアルキレンオキシド誘導体の調製には、これらヒドロキシ化合物は1種を用いてもよく、2種以上の混合物を用いてもよい。
【0035】
式(2)中、EOで示されるオキシエチレン基は、エチレンオキシドに由来し、式(2)中、lは、上記アルキレンオキシド誘導体の一水酸基あたりのオキシエチレン基の平均付加モル数である。ゆえに、上記アルキレンオキシド誘導体におけるオキシエチレン基の平均付加モル数はp×lとなる。
アルキレンオキシド誘導体におけるオキシエチレン基の平均付加モル数p×lは、1以上50以下である。
アルキレンオキシド誘導体におけるオキシエチレン基の平均付加モル数p×lが50を超える場合には、塗布後乾燥間際の止まり感が生じることがある。塗布後乾燥間際の止まり感の観点からは、前記オキシエチレン基の平均付加モル数p×lは、20以下であることが好ましく、10以下であることがより好ましい。
また、アルキレンオキシド誘導体におけるオキシエチレン基の平均付加モル数p×lが1未満である場合には、塗布時の滑らかさが悪化することがある。塗布時の滑らかさの観点からは、前記オキシエチレン基の平均付加モル数p×1は、2以上であることが好ましく、5以上であることがより好ましい。
【0036】
式(2)中、POで示されるオキシプロピレン基は、1,2-プロピレンオキシドに由来するオキシプロピレン基であり、mは前記アルキレンオキシド誘導体の一水酸基あたりのオキシプロピレン基の平均付加モル数である。ゆえに、前記アルキレンオキシド誘導体におけるオキシプロピレン基の平均付加モル数はp×mとなる。
アルキレンオキシド誘導体におけるオキシプロピレン基の平均付加モル数p×mは、1以上50以下である。
アルキレンオキシド誘導体におけるオキシプロピレン基の平均付加モル数p×mが50を超えると、塗布時の滑らかさが悪化することがある。塗布時の滑らかさの観点からは、前記オキシプロピレン基の平均付加モル数p×mは、20以下であることが好ましく、10以下であることがより好ましい。
また、アルキレンオキシド誘導体におけるオキシプロピレン基の平均付加モル数p×mが1未満であると、外観変化の防止効果に劣ることがある。外観変化の防止効果の観点からは、前記オキシプロピレン基の平均付加モル数p×mは、2以上であることが好ましく、4以上であることがより好ましい。
【0037】
式(2)中、AOで示される炭素数3~4のオキシアルキレン基としては、具体的には1,2-プロピレンオキシドに由来するオキシプロピレン基、オキシトリメチレン基、1,2-ブチレンオキシドに由来するオキシブチレン基、オキシイソブチレン基、オキシテトラメチレン基等が挙げられ、好ましくは1,2-ブチレンオキシドに由来するオキシブチレン基である。
式(2)中、nは、前記アルキレンオキシド誘導体の一水酸基あたりの前記オキシアルキレン基の平均付加モル数であり、アルキレンオキシド誘導体における前記オキシアルキレン基の平均付加モル数はp×nとなる。
アルキレンオキシド誘導体におけるオキシアルキレン基の平均付加モル数p×nは、0以上10以下である。
アルキレンオキシド誘導体におけるオキシアルキレン基の平均付加モル数p×nは0でもよいが、塗布時の滑らかさの観点からは0より大きいことが好ましく、より好ましくは1以上である。
また、アルキレンオキシド誘導体におけるオキシアルキレン基の平均付加モル数p×nが10を超えると、外観変化の防止効果に劣ることがある。外観変化の防止効果の観点からは、前記オキシアルキレン基の平均付加モル数p×nは、5以下であることが好ましく、3以下であることがより好ましい。
【0038】
本発明の水性化粧料に成分(b)として含有されるアルキレンオキシド誘導体においては、オキシエチレン基、オキシプロピレン基およびオキシアルキレン基の付加する順序は特に指定されず、また、これらはそれぞれブロック状に付加していてもランダム状に付加していてもよい。すなわち、オキシエチレン基、オキシプロピレン基およびオキシアルキレン基がすべてランダム状に付加していてもよく、また、オキシエチレン基、オキシプロピレン基およびオキシアルキレン基の1種または2種以上がブロック状に付加していてもよい。さらにまた、ブロック状に付加している部分とランダム状に付加している部分が混在していてもよい。
本発明の特に好適な実施形態においては、オキシアルキレン基がブロック状に付加している。また、本発明の特に好適な実施形態においては、オキシエチレン基とオキシプロピレン基とがランダム状に付加している。
式(2)で示されるアルキレンオキシド誘導体においては、オキシエチレン基、オキシプロピレン基、およびオキシアルキレン基のいずれが末端水素原子に結合していてもよいが、オキシアルキレン基が末端水素原子に結合していることが好ましい。
【0039】
式(2)で示されるアルキレンオキシド誘導体は、公知の方法で製造することができる。
すなわち、ヒドロキシ化合物(Z(OH))に対して、エチレンオキシド、プロピレンオキシド(1,2-プロピレンオキシド等)、炭素数3~4のアルキレンオキシド(1,2-ブチレンオキシド等)を適宜付加重合させる。付加重合時の各モノマーの添加順序は、目的とする構造によって決定することができる。
好ましくは、ヒドロキシ化合物にエチレンオキシドおよびプロピレンオキシドを付加重合させ、次いでアルキレンオキシドを付加重合させることによって、末端水素原子に結合したオキシアルキレンブロックを生成させることができる。なお、エチレンオキシドおよびプロピレンオキシドを付加重合させる際には、エチレンオキシドおよびプロピレンオキシドをランダム重合させてもよく、また、プロピレンオキシドまたはエチレンオキシドをブロック重合させてもよい。
【0040】
本発明の水性化粧料における成分(b)の含有量は、0.1質量%~5質量%である。
成分(b)の含有量が0.1質量%未満である場合、塗布時の滑らかさが十分でなく、塗布後乾燥間際の止まり感が生じ、外観変化の防止効果に劣ることがある。塗布時の滑らかさ等の観点からは、成分(b)の含有量は0.5質量%以上であることが好ましく、1質量%以上であることがより好ましく、2質量%以上であることがさらに好ましい。
また、成分(b)の含有量が5質量%を超えるとべたつきが長時間生じることがある。使用時のべたつきを抑制する観点からは、成分(b)の含有量は4.5質量%以下であることが好ましく、3質量%以下であることがより好ましい。
【0041】
[成分(c)]
本発明の水性化粧料に、成分(c)として含有される炭素数が2~6の多価アルコールとは、分子内に水酸基を二個以上有する炭素数が2~6の水溶性の化合物であり、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ペンタンジオール、イソプレングリコール(3-メチル-1,3-ブタンジオール)、ヘキサンジオール等の炭素数が2~6の二価アルコール;グリセリン、ジグリセリン等の炭素数が3の三価アルコールおよびその二量体;エリトリトール、トレイトール、アラビニトール、キシリトール、リビトール、イジトール、ガラクチトール、ソルビトール、マンニトール等の炭素数が4~6の糖アルコール等が挙げられる。好ましくは、炭素数が2~6の二価または三価のアルコールであり、具体的にはグリセリン、1,3-ブチレングリコール、ジプロピレングリコールが特に好ましい。
【0042】
本発明の水性化粧料における成分(c)の含有量は、10質量%~40質量%である。
成分(c)の含有量が10質量%未満である場合、塗布後乾燥間際の止まり感が生じ、塗布後に被膜感が生じることがある。かかる塗布後の使用感の悪化を防ぐ観点からは、成分(c)の含有量は、好ましくは12質量%以上であり、より好ましくは15質量%以上である。
また、成分(c)の含有量が40質量%を超える場合は、塗布時の滑らかさに劣ることがある。塗布時の滑らかさの観点からは、成分(c)の含有量は30質量%以下であることが好ましく、25質量%以下であることがより好ましい。
【0043】
[成分(d)]
本発明の水性化粧料は、成分(d)として水を含有する。水としては、化粧料や医薬品等の製造に適する水を使用することができ、例えば、イオン交換水や精製水等を使用することができる。
本発明の水性化粧料における成分(d)の含有量は、上記した成分(a)、成分(b)および成分(c)、ならびに、必要に応じて添加される後述する化粧料用添加剤を含有する水性化粧料の全量を、100質量%とする量として算出される。
【0044】
[成分(a)、(b)、(c)の含有量比]
本発明の水性化粧料における成分(b)の成分(a)に対する含有量比[(b)/(a)] は、質量比にて1/2~40/1である。
[(b)/(a)]が1/2未満である場合、外観の変化に対する防止効果に劣ることがある。外観の変化に対する防止効果の観点からは、[(b)/(a)]は1/1以上であることが好ましく、3/1以上であることがより好ましい。
また[(b)/(a)]が40/1を超える場合、塗布後に被膜感が生じることがある。塗布後の被膜感を抑制する観点からは、[(b)/(a)]は好ましくは10/1以下であり、より好ましくは6/1以下である。
成分(b)の成分(c)に対する含有量比[(b)/(c)]は、質量比にて1/40~1/5である。
[(b)/(c)]が1/40未満であると、塗布時の滑らかさに劣ることがある。塗布時の滑らかさの観点からは、[(b)/(c)]は、好ましくは1/20以上であり、より好ましく1/10以上である。
また、[(b)/(c)]が1/5を超えると、塗布後乾燥間際の止まり感が生じることがある。塗布後乾燥間際の止まり感を抑制する観点からは、[(b)/(c)]は1/6以下であることが好ましく、1/6.7以下であることがより好ましい。
【0045】
本発明の水性化粧料には、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて、上記成分(a)、成分(b)および成分(c)以外に、一般的な化粧料用添加剤を添加することができる。かかる添加剤としては、一価の低級アルコール、油剤、糖類、多糖類、アミノ酸、各種界面活性剤、有機塩、無機塩、pH調整剤、キレート剤、抗酸化剤、殺菌剤、血流促進剤、抗炎症剤、収斂剤、美白剤、細胞賦活剤、紫外線吸収剤、紫外線散乱剤、ビタミン、色素、香料等を挙げることができ、これらは各配合目的に応じて、通常用いられる量を適宜配合することができる。
【0046】
本発明の水性化粧料は、化粧水、美容液、乳液、クリーム等の皮膚化粧料;クレンジングローション、クレンジングクリーム等の洗浄化粧料;下地ローション、下地クリーム、乳液状ファンデーション等のメイクアップ化粧料;ボディローション、ボディクリーム等の身体用化粧料等として提供することができ、化粧水、美容液、乳液等の皮膚化粧料として、より好適に提供することができる。
【0047】
本発明の水性化粧料は、その形態に応じて採用される通常の製剤化手段に準じて製造することができ、たとえば、化粧水や美容液であれば、成分(a)、成分(b)および成分(c)を混合して均一に溶解し、その他の化粧料用添加剤とともに成分(d)に加えて混合し、均一として製造することができる。
【0048】
本発明の水性化粧料は、良好な保湿効果および防腐効果を有し、塗布時の滑らかさに優れ、塗布後乾燥間際の止まり感や、塗布後の被膜感が生じにくく、温度変化による外観の変化が少ない。
【実施例0049】
以下、実施例および比較例により本発明をより詳細に説明するが、本発明はそれらに限定されるものではない。
【0050】
[合成例b1~b3、b’1~b’4]アルキレンオキシド誘導体
まず、成分(b)の合成例を下記に示した。
表1に示すヒドロキシ化合物1モルと、触媒として水酸化カリウムを、アルキレンオキシド誘導体の最終量に対して0.1質量%となる量をオートクレーブ中に仕込み、オートクレーブ中の空気を乾燥窒素で置換した後、攪拌しながら110℃で触媒を完全に溶解した。次に滴下装置から、エチレンオキシドp×lモルおよび1,2-プロピレンオキシドp×mモルの混合液を滴下した。滴下終了後110℃で3時間反応させた。その後、滴下装置より1,2-ブチレンオキシドp×nモルをオートクレーブ内に滴下した。滴下終了後110℃で2時間反応させた。その後オートクレーブより反応生成物を取り出し、塩酸で中和してpHを6~7とし、反応生成物に含まれる水分を除去するために、50mmHg、100℃で1時間脱水した。さらに、脱水により生成した中和塩を除去するためろ過を行い、アルキレンオキシド誘導体として、合成例b1、b2およびb3、ならびにb’1、b’2、b’3およびb’4の化合物を得た。
【0051】
[合成例b4]アルキレンオキシド誘導体
ヒドロキシ化合物としてグリセリン1モルと、触媒として水酸化カリウムを、アルキレンオキシド誘導体の最終量に対して0.1質量%となる量をオートクレーブ中に仕込み、オートクレーブ中の空気を乾燥窒素で置換した後、攪拌しながら110℃で触媒を完全に溶解した。次に、滴下装置からエチレンオキシド20モルおよび1,2-プロピレンオキシド10モルの混合液を滴下した。滴下終了後110℃で3時間反応させた。その後オートクレーブより反応生成物を取り出し、塩酸で中和してpHを6~7とし、反応生成物に含まれる水分を除去するために、50mmHg、100℃ で1時間脱水した。さらに、脱水により生成した中和塩を除去するためろ過を行い、アルキレンオキシド誘導体として、合成例b4の化合物を得た。
【0052】
[合成例b5]アルキレンオキシド誘導体
ヒドロキシ化合物としてショ糖1モルと、触媒として水酸化カリウムを、アルキレンオキシド誘導体の最終量に対して0.1質量%となる量をオートクレーブ中に仕込み、オートクレーブ中の空気を乾燥窒素で置換した後、攪拌しながら110℃で触媒を完全に溶解した。次に、滴下装置から1,2-プロピレンオキシド48モルを滴下し、滴下終了後110℃で2時間反応させた。その後、滴下装置よりエチレンオキシド10モルを滴下し、滴下終了後110℃で1時間反応させた。その後、滴下装置より1,2-ブチレンオキシド8モルを滴下し、滴下終了後110℃で2時間反応させた。次いでオートクレーブより反応生成物を取り出し、塩酸で中和してpHを6~7とし、反応生成物に含まれる水分を除去するために、50mmHg、100℃ で1時間脱水した。さらに、脱水により生成した中和塩を除去するためろ過を行い、アルキレンオキシド誘導体として、合成例b5の化合物を得た。
【0053】
【表1】
【0054】
[実施例1~7、比較例1~9]水性化粧料
表2に示す処方に従い、成分(a)、(b)および(c)を混合して均一に溶解し、次いで成分(d)に加えて混合攪拌し、均一として、実施例1~7の水性化粧料を調製した。なお、成分(b)としては、上記合成例b1~b5を用いた。
また、表3に示す処方に従い、成分(a)または(a’)、成分(b)または(b’)、および成分(c)を混合して均一に溶解し、次いで成分(d)に加えて混合攪拌し、均一として、比較例1~9の水性化粧料を調製した。なお、成分(b)としては、上記合成例b2を用い、成分(b’)としては、上記合成例b’1~b’4を用いた。
上記実施例および比較例の水性化粧料の調製において、成分(a)、(a’)および(c)としては、化粧料用として市販されている製品を用いた。
【0055】
実施例1~7および比較例1~9の各水性化粧料について、下記の通り使用試験を行い、温度変化による外観の変化を観察し、評価した。
【0056】
1.使用試験
女性パネリスト20名(25才~50才)により、使用試験を行った。すなわち、25℃、相対湿度75%の室内にて、実施例および比較例の各水性化粧料0.2gを手に取らせ、前腕内側部に塗付させて、(1)塗付時の滑らかさ、(2)塗布した水性化粧料の水分が乾燥する直前の止まり感、(3)塗布後の被膜感について、各パネリストに下記絶対評価基準により0点~3点の4段階にて評価させた。そして、20名の評点の合計により、下記基準に基づいて「AA」~「D」の5段階にて評価し、「AA」 、「A」および「B」の評価を得た場合を合格とした。
<20名の評点の合計による評価基準>
AA: 評点の合計が50点~60点である
A: 評点の合計が40点~49点である
B: 評点の合計が30点~39点である
C: 評点の合計が20点~29点である
D: 評点の合計が20点未満である
【0057】
(1)塗付時の滑らかさ
実施例および比較例の各水性化粧料を前腕内側部に塗付した直後に感じる滑らかさについて、下記絶対評価基準により官能評価を行わせた。
<絶対評価基準>
3点:塗布時の滑らかさが極めて良好である
2点:塗布時の滑らかさが良好である
1点:塗布時の滑らかさがあまり感じられない
0点:塗布時の滑らかさが全く感じられない
【0058】
(2)塗布した水性化粧料の水分が乾燥する直前の止まり感
実施例および比較例の各水性化粧料を前腕内側部に塗付した後、指で塗り伸ばし、水分が乾燥する直前に感じる止まり感について、下記絶対評価基準により官能評価を行わせた。
<絶対評価基準>
3点:止まり感を全く感じない
2点:止まり感をほとんど感じない
1点:止まり感を多少感じる
0点:止まり感を明確に感じる
【0059】
(3)塗布後の被膜感
実施例および比較例の各水性化粧料を前腕内側部に塗付した後、指で塗り伸ばし、乾燥した後に感じる被膜感について、下記絶対評価基準により官能評価を行わせた。
<絶対評価基準>
3点:被膜感を全く感じない
2点:被膜感をほとんど感じない
1点:被膜感を多少感じる
0点:被膜感を明確に感じる
【0060】
2.温度変化による外観の変化
実施例および比較例の各水性化粧料を、-5℃~60℃の6時間サイクル試験槽に3ヶ月間静置し、3ヶ月経過後の状態を目視にて観察し、下記の評価基準により評価した。
<評価基準>
○:透明で均一である
×:含有成分の分離もしくは析出が観察される
【0061】
上記使用試験および温度変化による外観の変化についての評価の結果を、表2、3に併せて示した。
【0062】
【表2】
【0063】
表2に示されるように、実施例1~7の水性化粧料については、塗布時の滑らかさ、塗布後乾燥間際の止まり感、塗布後の被膜感のいずれの評価項目においても、「B」以上の評価が得られ、温度変化による外観の変化も見られなかった。
特に、グリセリンにアルキレンオキシドを付加した誘導体であって、オキシエチレン基の平均付加モル数(p×l)が8、オキシプロピレン基の平均付加モル数(p×m)が5、オキシアルキレン基がオキシブチレン基であり、その平均付加モル数(p×n)が3である合成例b2のアルキレンオキシド誘導体を3.0質量%含有し、成分(b)の成分(a)に対する含有量比[(b)/(a)]が質量比にて6/1で、成分(b)の成分(c)に対する含有量比[(b)/(c)]が質量比にて1/6.7である実施例2の水性化粧料においては、使用試験のすべての項目において「AA」の評価が得られた。
【0064】
【表3】
【0065】
一方比較例1~9の水性化粧料では、塗布時の滑らかさ、塗布後乾燥間際の止まり感、塗布後の被膜感のすべての評価項目において合格であると評価されたものはなく、比較例1および3の水性化粧料を除き、温度変化による外観の変化も認められた。
すなわち、表3に示されるように、成分(a)を含有しない比較例1の水性化粧料では、塗布時の滑らかさにやや劣り、塗布後乾燥間際の止まり感および塗布後の被膜感が生じると評価された。
成分(a)の代わりに、成分(a’)としてパラオキシ安息香酸メチルを用いた比較例2の水性化粧料では、塗布時の滑らかさに劣り、塗布後の被膜感がやや感じられると評価され、温度変化による外観の変化も認められた。
成分(a)の代わりに、成分(a’)としてパラオキシ安息香酸メチルを用い、(b)/(c)値が1/5を超える比較例3の水性化粧料では、塗布時の滑らかさに劣り、塗布後乾燥間際の止まり感および塗布後の被膜感が生じると評価された。
成分(a)の代わりに、成分(a’)としてイソプロピルメチルフェノールを用いた比較例4の水性化粧料では、塗布時の滑らかさに劣り、塗布後乾燥間際の止まり感および塗布後の被膜感が若干生じると評価され、温度変化による外観の変化も認められた。
オキシエチレン基の平均付加モル数(p×l)およびオキシプロピレン基の平均付加モル数(p×m)が50を超える合成例b’1のアルキレンオキシド誘導体を含有する比較例5の水性化粧料、オキシアルキレン基の平均付加モル数(p×n)が10を超える合成例b’2のアルキレンオキシド誘導体を含有する比較例6の水性化粧料、オキシエチレン基の平均付加モル数(p×l)が50を超える合成例b’3のアルキレンオキシド誘導体を含有する比較例7の水性化粧料、オキシプロピレン基の平均付加モル数(p×m)が50を超える合成例b’4のアルキレンオキシド誘導体を含有する比較例8の水性化粧料では、使用試験のいずれの項目においても「合格」との評価は得られず、温度変化による外観の変化も認められた。
成分(a)としてヒドロキシアセトフェノン、成分(b)として合成例b2のアルキレンオキシド誘導体を含有するものの、成分(a)および(b)の各含有量が5質量%を超え、成分(c)の含有量が40質量%を超える比較例9の水性化粧料では、塗布時の滑らかさに劣ると評価され、温度変化による外観の変化も認められた。
【産業上の利用可能性】
【0066】
以上、詳述したように、本発明により、良好な保湿効果および防腐効果を有し、塗布時の滑らかさに優れ、塗布後乾燥間際の止まり感や、塗布後の被膜感が生じにくく、温度変化による外観の変化が少ない水性化粧料を提供することができる。