(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024007746
(43)【公開日】2024-01-19
(54)【発明の名称】液状マスターバッチ、樹脂成形材料、及び樹脂成形体
(51)【国際特許分類】
C08J 3/22 20060101AFI20240112BHJP
C08L 67/02 20060101ALI20240112BHJP
C08L 69/00 20060101ALI20240112BHJP
【FI】
C08J3/22 CFD
C08L67/02
C08L69/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022109037
(22)【出願日】2022-07-06
(71)【出願人】
【識別番号】000219912
【氏名又は名称】東京インキ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】林 克彦
(72)【発明者】
【氏名】宇賀神 修司
(72)【発明者】
【氏名】高井 淳生
【テーマコード(参考)】
4F070
4J002
【Fターム(参考)】
4F070AA47
4F070AA50
4F070AC15
4F070AC22
4F070AC43
4F070AC47
4F070AC55
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4J002AE052
4J002CF061
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4J002DJ048
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4J002EG047
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4J002EP027
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4J002FD079
4J002FD139
4J002FD189
4J002FD206
4J002FD208
4J002FD312
4J002FD317
(57)【要約】
【課題】長期保存において固体粒子が分離、沈降が抑制された保存安定性、および樹脂と混合し成形を行った際に、成形体表面に液泡が生じない成形性を備えた液状マスターバッチと、液状マスターバッチを用いた樹脂成形材料および成形体を提供する。
【解決手段】ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、またはポリカーボネート樹脂の成形に用いられる液状マスターバッチであって、常温で液状の脂肪酸エステルと、固体粒子と、界面活性剤を含み、前記脂肪酸エステルは、脂肪酸を有するジアセチルモノアシルグリセロール、および/または脂肪酸を有するジアセチルモノアシルグリセロール誘導体を含み、前記界面活性剤が、脂肪酸アミド系界面活性剤、金属石鹸、および硬化ヒマシ油の中から選択される少なくとも1つを含み、前記固体粒子(B)は、顔料および染料を除く、固体粒子であることを特徴とする、液状マスターバッチ。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、またはポリカーボネート樹脂の成形に用いられる液状マスターバッチであって、
前記液状マスターバッチは、常温で液状の脂肪酸エステル(A)と、固体粒子(B)と、界面活性剤(C)を含み、
前記脂肪酸エステル(A)は、脂肪酸を有するジアセチルモノアシルグリセロール、および/または脂肪酸を有するジアセチルモノアシルグリセロール誘導体を含み、前記界面活性剤(C)が、脂肪酸アミド系界面活性剤、金属石鹸、および硬化ヒマシ油の中から選択される少なくとも1つであり、
前記固体粒子(B)は、顔料および染料を除く、
平均粒径 0.5~800μm
、および真比重 1~7g/cm3
の樹脂改質剤の固体粒子であり、
前記界面活性剤(C)が、前記液状マスターバッチ100重量部に対して、0.2~15重量部含み、
前記固体粒子(B)が、液状マスターバッチ100重量部に対して0.5~85重量部含む、
ことを特徴とする、液状マスターバッチ。
【請求項2】
請求項1に記載の液状マスターバッチと、熱可塑性樹脂を含む樹脂成形材料。
【請求項3】
請求項1に記載の液状マスターバッチを含む樹脂成形体。
【請求項4】
請求項2に記載の樹脂成形材料を成形してなる樹脂成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は樹脂の液状マスターバッチ、樹脂成形材料、及び樹脂成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、熱可塑性樹脂を用いた樹脂成形体は、成形加工が容易なことから容器、電気・電子部品、自動車部品など幅広い分野で利用されている。これら樹脂成形体は、使用用途に応じて機能性を高めるために添加剤を樹脂に混合する。
【0003】
押出成形、射出成形、ブロー成形などの樹脂成形体の加工において樹脂改質を行う添加剤の混合や、顔料や染料による着色は、あらかじめ高い濃度の添加剤濃縮物や着色剤濃縮物を作成し、成形直前に樹脂ペレットや樹脂粉により希釈する方法がとられる。こうした添加剤濃縮物や着色剤濃縮物の形態としては、樹脂と添加剤または顔染料を混練してペレット状にしたマスターバッチ、樹脂ペレット表面に顔染料や添加剤を付着させたカラードペレット、金属石鹸と顔染料や添加剤を混合してペースト状としたドライカラー、および添加剤または顔染料を油に分散させた液状マスターバッチ等が挙げられる。
【0004】
なかでも、液状マスターバッチは、他の濃縮物と異なり、状態が液体であるため、樹脂ペレットや樹脂粉により希釈する際に、微量でも均一に混合され易く、混合が均一であることによる物性の向上や、透過色成形体の着色といった高度な分散が求められる用途に用いられてきた。
【0005】
しかし、液状マスターバッチは、状態が(低粘度の)液体であるため、長期保管により添加剤、顔料、染料が液体底面に分離、沈降し易く、再使用する際は、再撹拌処理をする必要があった。
【0006】
特許文献1は、顔料または染料と、脂肪族ジカルボン酸と二価アルコールを反応させて得られる液状ポリエステルを含むABS樹脂用液状着色剤が記載されており、高温下における成形品の熱変形や、表面へのブリードがない成形品が得られる、とある。
しかし、前記のように液体であるため、長期保管により顔料、染料が沈降する。この沈降を防止するために液状マスターバッチへ分散剤を配合すると、液状ポリエステル、分散剤、および樹脂の相溶性が悪く、複数ロット作製した成形品の表面に前記液状ポリエステル由来の液泡が発生することがあった。
【0007】
また、特許文献2は、金属酸化物粒子と、可塑剤と、分散剤を含み、特定の成形体とした時のヘイズ差をパラメータとした金属酸化物粒子分散液が記載されており、液体の可塑剤として多価カルボン酸と多価アルコールの反応によって得られる脂肪酸ポリエステル樹脂、ポリアルキレングリコール樹脂、ポリエーテルエステル樹脂、及びアセチルクエン酸トリブチルより選択し、分散剤をリン酸エステル化合物とすることで、ナノサイズの金属酸化物粒子を用いた場合にも、物性の低下なく高分散な透明性の成形体が得られ、安定した分散液を作製できる、とある。
【0008】
また、特許文献3は、樹脂と、ヨウ素価が90以上の植物油脂を含有する液状着色剤とを混練し、樹脂あるいは液状着色剤のいずれかにフェルト自然沈降法が特定の値を示す界面活性剤を添加した樹脂着色用マスターバッチの製造方法であり、顔料の分散性が良好であり、色ムラなく良好に着色された樹脂着色用マスターバッチが得られる、とある。
【0009】
しかし、特許文献2はナノ粒子特有の課題解決の発明であり、分散液の沈降も、成形体を複数ロット作製した際の成形体表面の状態についても記載されていない。また特許文献3は液体着色剤作製後に樹脂と混練しているため液体着色剤における沈降についての視点はなく、また実施例ではホットプレートで薄膜を作製しているように、成形体における問題点についても触れられていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開昭61-9453号公報
【特許文献2】特開2019-206655号公報
【特許文献3】特開2018-188577号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、長期保存において固体粒子の分離、沈降が抑制された保存安定性、および樹脂と混合し成形を行った際に、多数のロットの成形においても成形体表面に液泡が生じない成形性を備えた液状マスターバッチと、前記液状マスターバッチを用いた樹脂成形材料および成形体を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、またはポリカーボネート樹脂の成形に用いられる液状マスターバッチであって、
前記液状マスターバッチは、常温で液状の脂肪酸エステル(A)と、固体粒子(B)と、界面活性剤(C)を含み、前記脂肪酸エステル(A)は、脂肪酸を有するジアセチルモノアシルグリセロール、および/または脂肪酸を有するジアセチルモノアシルグリセロール誘導体を含み、前記界面活性剤(C)が、脂肪酸アミド系界面活性剤、金属石鹸、および硬化ヒマシ油の中から選択される少なくとも1つであり、前記固体粒子(B)は、顔料および染料を除く、平均粒径 0.5~800μm、および真比重1~7g/cm3の樹脂改質剤の固体粒子であることを特徴とする、液状マスターバッチであることにより、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
すなわち、本発明は、
(1)ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、またはポリカーボネート樹脂の成形に用いられる液状マスターバッチであって、
前記液状マスターバッチは、常温で液状の脂肪酸エステル(A)と、固体粒子(B)と、界面活性剤(C)を含み、
前記脂肪酸エステル(A)は、脂肪酸を有するジアセチルモノアシルグリセロール、および/または脂肪酸を有するジアセチルモノアシルグリセロール誘導体を含み、前記界面活性剤(C)が、脂肪酸アミド系界面活性剤、金属石鹸、および硬化ヒマシ油の中から選択される少なくとも1つであり、前記固体粒子(B)は、顔料および染料を除く、平均粒径 0.5~800μm、および真比重 1~7g/cm3の樹脂改質剤の固体粒子であり、前記界面活性剤(C)が、前記液状マスターバッチ100重量部に対して、0.2~15重量部含み、前記固体粒子(B)が、液状マスターバッチ100重量部に対して0.5~85重量部含む、ことを特徴とする、液状マスターバッチ、
(2)(1)に記載の液状マスターバッチと、熱可塑性樹脂を含む樹脂成形材料、
(3)(1)に記載の前記液状マスターバッチを含む樹脂成形体、
(4)(2)に記載の樹脂成形材料を成形してなる樹脂成形体、
である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、長期保存において固体粒子の分離、沈降が抑制された保存安定性、および樹脂と混合後に成形を行った際に、多数のロットの成形においても成形体表面に液泡が生じない成形性を備えた液状マスターバッチと、前記液状マスターバッチを用いた樹脂成形材料および成形体を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための形態を詳細に説明する。なお、本実施形態は、本発明を実施するための一形態に過ぎず、本発明は本実施形態によって限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更、実施の形態が可能である。また、本明細書中、数値範囲の説明における「a~b」との表記は、特に断らない限り、a以上b以下のことを表す。例えば、「1~5重量部」とは「1重量部以上5重量部以下」を意味する。
【0016】
本発明の液状マスターバッチは、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、またはポリカーボネート樹脂の成形に用いられる液状マスターバッチであって、前記液状マスターバッチは、常温で液状の脂肪酸エステル(A)と、固体粒子(B)と、界面活性剤(C)を含み、前記脂肪酸エステル(A)は、脂肪酸を有するジアセチルモノアシルグリセロール、および/または脂肪酸を有するジアセチルモノアシルグリセロール誘導体を含み、前記界面活性剤(C)が、脂肪酸アミド系界面活性剤、金属石鹸、および硬化ヒマシ油の中から選択される少なくとも1つであり、前記固体粒子(B)は、顔料および染料を除く、平均粒径 0.5~800μm、および真比重 1~7g/cm3の樹脂改質剤の固体粒子であることを特徴とする、液状マスターバッチである。
【0017】
前記液状マスターバッチは、前記脂肪酸エステル、および前記界面活性剤を併用することで構造粘性を発現し、長期保存において固体粒子の沈降が抑制された保存安定性を備え、樹脂と混合後に複数ロットを成形した際に、成形体表面に液泡が生じない成形性を備えた液状マスターバッチを提供できる。
前記液状マスターバッチは、沈降による固体粒子の偏りが生じることがないため、樹脂との混合時に分散性の優れた液状マスターバッチとしても利用することができる。
【0018】
以下に、液状マスターバッチに含まれる組成物について記載する。
【0019】
[脂肪酸エステル]
本発明において、脂肪酸エステルは常温で液状であり、溶媒として用いられる。前記脂肪酸エステルとしては、脂肪酸を有するジアセチルモノアシルグリセロール、および/または脂肪酸を有するジアセチルモノアシルグリセロール誘導体が用いられる。また、本発明において常温とは、25℃を意味する。
【0020】
前記ジアセチルモノアシルグリセロールは、1価のアシル基と、2つのアセチル基を有する。
前記ジアセチルモノアシルグリセロールは、(i)グリセロール、酢酸及びカルボキシル基を1つ有する脂肪酸とのエステル化反応、(ii)1つのエステル結合を有する脂肪酸アルキルエステルと、グリセロールまたは油脂等のトリグリセライドとをエステル交換反応したものを、アセチル化するなど公知の方法により得られるものであるが、その合成方法は特に限定されるものではない。
前記1価のアシル基の炭素数は、6~36であることが好ましく、8~24であることがより好ましい。
【0021】
前記ジアセチルモノアシルグリセロール誘導体は、2つのアセチル基、および脂肪酸の水酸基誘導体を有し、前記脂肪酸の水酸基誘導体は、水酸基を有する脂肪酸、若しくは水酸基を有する脂肪酸と1価のカルボキシル基を持つ脂肪酸とのエステルが挙げられる。前記水酸基を有する水酸基誘導体と、前記1価のカルボキシル基を持つ脂肪酸とのエステルを有する水酸基誘導体の、それぞれを有するジアセチルモノアシルグリセロール誘導体は、混合して用いることができる。
前記水酸基を有する脂肪酸の炭素数は、6~36であることが好ましく、8~24であることがより好ましい。
前記ジアセチルモノアシルグリセロール誘導体は、ヒマシ油と過剰のグリセロールを蒸留して得られたモノグリセリドを、酢酸とエステル化するなど、公知の方法により得られるものであるが、その合成方法は特に限定されるものではない。
【0022】
前記脂肪酸エステルは、液状マスターバッチの溶媒として使用することにより、液状マスターバッチの長期保存において固体粒子の沈降が抑制され、また樹脂と液状マスターバッチを成形した際に成形体表面に液泡が生じない成形体を得ることができるが、本発明の効果を損なわない範囲で、植物油、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、高級アルコール、流動パラフィン等の他の溶剤を加えてもよい。
【0023】
前記脂肪酸エステルは、液状マスターバッチ100重量部に対して、5~98.8重量部であることが好ましく、10~98.5重量部であることがより好ましい。
【0024】
本発明において用いられる界面活性剤は、脂肪酸アミド系界面活性剤、金属石鹸、および硬化ヒマシ油の中から選択される少なくとも1つが用いられる。前記界面活性剤を使用することで、液状マスターバッチの長期保存において固体粒子の沈降が抑制され、また樹脂と液状マスターバッチを成形した際に成形体表面に液泡が生じない成形体を得ることができる。
前記界面活性剤は、液状マスターバッチ100重量部に対して、0.2~15重量部であることが好ましく、0.5~10重量部であることがより好ましい。0.2重量部以上であることで、液状マスターバッチの長期保存時に固体粒子の沈降が抑制され、15重量部以下であることで、液泡の生じない優れた成形体を得られる。
【0025】
[脂肪酸アミド系界面活性剤]
前記脂肪酸アミド系界面活性剤は、ステアリン酸アマイド、オレイン酸アマイド、エルカ酸アマイド、エチレンビスステアリン酸アマイド、メチレンビスステアリン酸アマイド、エチレンビスオレイン酸アマイド、またはベヘニン酸アミドが好適であり、エチレンビスステアリン酸アマイドがより好ましい。
【0026】
[金属石鹸]
前記金属石鹸は、脂肪酸のアルカリ金属塩のうち、脂肪酸がラウリン酸、ミリスチン酸、モンタン酸、ベヘン酸、パルミチン酸であるもの、アルカリ金属がマグネシウム、カルシウム、ナトリウム、カリウム、亜鉛、バリウム、アルミニウムであるものが好適であり、特にステアリン酸マグネシウムがより好ましい。
【0027】
[硬化ヒマシ油]
前記硬化ヒマシ油は、ヒマシ油を水素添加反応によって完全硬化して得られる12-ヒドロキシステアリン酸のトリグリセリドであり、K-3ワックスやカワスターCR(いずれも川研ファインケミカル社製)等の市販品が入手可能である。
【0028】
本発明の液状マスターバッチは、本発明の効果を損なわず、また液状マスターバッチが膨潤しない範囲で、前記界面活性剤と併用してその他の界面活性剤を含むことができる。その他の界面界面活性剤としては、ソルビタン系界面活性剤、高級アルコール系界面活性剤またはアルキルフェノール系界面活性剤等のノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、または両イオン性界面活性剤が挙げられる。
【0029】
前記ソルビタン系界面活性剤としては、例えばソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル等を挙げることができ、具体例としてはソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンジステアレート、ソルビタントリステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタントリオレエート、ソルビタンセスキオレエート、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタントリステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート、ポリオキシエチレンソルビタントリイソステアレート、等を挙げることができる。
【0030】
[固体粒子]
本発明において用いられる固体粒子は、本発明の脂肪酸エステルに25℃の環境で固体状で分散し、樹脂改質剤として使用される固体粒子が含まれる。
【0031】
前記固体粒子は、平均粒径が0.5μm以上、800μm以下のものが好ましく、0.6μm以上、500μm以下のものがより好ましい。800μm以下であることで、ポンプにより安定した供給できる流動を維持できながら、長期保存時に固体粒子の沈降が抑制された液状マスターバッチが得られ、0.5μm以上であることで樹脂の改質に優れた液状マスターバッチを得ることができる。
なお、本明細書で記載する「粒径」とは、体積平均のメディアン径である。固体粒子の粒径は、例えば、レーザー回折法粒度測定装置を用いて、固体粒子を分散させた溶媒を測定、解析することで、算出することができる。
【0032】
前記固体粒子は、真比重が1g/cm3以上、7g/cm3以下のものが好ましく、1.02g/cm3以上、6g/cm3以下のものがより好ましい。
1g/cm3以上、7g/cm3以下であることで、長期保存時に固体粒子の沈降が抑制された長期間保管時の液状マスターバッチが得られる。
なお、真比重は、ピクノメーター法(液相置換法)や気相置換法を用いた測定により求めることができ、測定機として例えば、AntonPaar社のUltrapyc5000や、QUANTACHROME社のUltraPycnometer1000が挙げられる。
【0033】
前記固体粒子としては、樹脂改質剤として用いられる、造核剤、アンチブロッキング剤、紫外線吸収剤、光安定剤、難燃剤、抗菌剤、防カビ剤、消臭剤、酸化防止剤、遮熱剤、強度向上剤、表面改質剤、導電性向上剤、熱伝導性向上剤、光学特性制御剤、重合停止・中和剤などの、無機粒子および有機粒子が挙げられる。
【0034】
無機粒子の例としては、カオリン、ケイ酸アルミニウム、クレー、タルク、マイカ、シリカ、アルミナ、ケイ酸カルシウム、ベントナイト、カオリナイト、ワラストナイト、ゼオライト、ケイ酸マグネシウム、ホウ酸アルミニウム、ハイドロタルサイト、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸カルシウム、亜硫酸カルシウム、硫酸バリウム、硫酸アルミニウム、リン酸カルシウム、チタン酸カリウム、チタン酸バリウム、酸化マグネシウム、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、珪藻土、酸化亜鉛、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化鉄、、ジルコニア、ジルコニウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、アンチモンドープ酸化錫、黒鉛、ガラス繊維等、が挙げられ、前記無機粒子に表面処理を行ったものも使用できる。
【0035】
前記有機粒子としては以下のものが挙げられる。
造核剤として、安息香酸ナトリウム、4-第三ブチル安息香酸アルミニウム塩、アジピン酸ナトリウムおよび2ナトリウムビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2,3-ジカルボキシレート等のカルボン酸金属塩、ナトリウムビス(4-第三ブチルフェニル)ホスフェート、ナトリウム-2,2’-メチレンビス(4,6-ジ第三ブチルフェニル)ホスフェートおよびリチウム-2,2’-メチレンビス(4,6-ジ第三ブチルフェニル)ホスフェート等のリン酸エステル金属塩、ジベンジリデンソルビトール、ビス(メチルベンジリデン)ソルビトール、ビス(p-エチルベンジリデン)ソルビトール、およびビス(ジメチルベンジリデン)ソルビトール等の多価アルコール誘導体、N,N’,N”-トリス[2-メチルシクロヘキシル]-1,2,3-プロパントリカルボキサミド、N,N’,N”-トリシクロヘキシル-1,3,5-ベンゼントリカルボキミド、N,N’-ジシクロヘキシル-ナフタレンジカルボキサミド、1,3,5-トリ(ジメチルイソプロポイルアミノ)ベンゼン等のアミド化合物を挙げることができる。
【0036】
また、アンチブロッキング剤としては、ポリスチレン、ポリエーテル、ポリアクリル、ポリアミド、エポキシ樹脂、ポリフェニレンスルフィド、熱可塑性エラストマー等の有機微粒子などを挙げることができる。
【0037】
また、紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール系、トリアジン系、およびベンゾフェノン系の紫外線吸収剤が挙げられる。
前記ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤は、例えば、2-(2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-5-t-ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-3、5-ジメチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2-メチル-4-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-3-メチル-5-t-ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-t-アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-t-ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-3、5-ジメチルフェニル)-5-メトキシベンゾトリアゾール、2-(2-nオクタデシルオキシ-3、5-ジメチルフェニル)-5-メチルベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-5-メトキシフェニル)-5-メチルベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-3-t-ブチル-5-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-5-t-ブチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-5-フェニルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-3,5-ジクロロフェニルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)-5,6-ジクロロベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-t-ブチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-4,5-ジクロロフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)-5-ブトキシカルボニルベンゾトリアゾール、2-(2-アセトキシ-5-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-[2-ヒドロキシ-3,5-ビス(α,α-ジメチルベンジル)フェニル]-2Hベンゾトリアゾール、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-メチル-6-(3,4,5,6-テトラヒドロフタルイミジルメチル)フェノールなどを挙げることができる。
【0038】
また、前記トリアゾール系紫外線吸収剤は、例えば、2-(2-ヒドロキシ-4-メトキシフェニル)-4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジンなどを挙げることができる。
【0039】
前記光安定剤としては、ヒンダードアミン系光安定剤が挙げられ、例えば、2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジルステアレート、1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジルステアレート、2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジルベンゾエート、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート、テトラキス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)-1,2,3,4-ブタンテトラカルボキシレート、テトラキス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)-1,2,3,4-ブタンテトラカルボキシレート、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)・ジ(トリデシル)-1,2,3,4-ブタンテトラカルボキシレート、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)・ジ(トリデシル)-1,2,3,4-ブタンテトラカルボキシレート、ビス(1,2,2,4,4-ペンタメチル-4-ピペリジル)-2-ブチル-2-(3,5-ジ第三ブチル-4-ヒドロキシベンジル)マロネート、1-(2-ヒドロキシエチル)-2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジノ-ル/コハク酸ジエチル重縮合物、1,6-ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジルアミノ)ヘキサン/2,4-ジクロロ-6-モルホリノ-s-トリアジン重縮合物、1,6-ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジルアミノ)ヘキサン/2,4-ジクロロ-6-第三オクチルアミノ-s-トリアジン重縮合物、1,5,8,12-テトラキス〔2,4-ビス(N-ブチル-N-(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)アミノ)-s-トリアジン-6-イル〕-1,5,8,12-テトラアザドデカン、1,5,8,12-テトラキス〔2,4-ビス(N-ブチル-N-(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)アミノ)-s-トリアジン-6-イル〕-1,5,8-12-テトラアザドデカン、1,6,11-トリス〔2,4-ビス(N-ブチル-N-(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)アミノ)-s-トリアジン-6-イル〕アミノウンデカン、1,6,11-トリス〔2,4-ビス(N-ブチル-N-(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)アミノ)-s-トリアジン-6-イル〕アミノウンデカン、ビス{4-(1-オクチルオキシ-2,2,6,6-テトラメチル)ピペリジル}デカンジオナート、ビス{4-(2,2,6,6-テトラメチル-1-ウンデシルオキシ)ピペリジル)カーボナートなどが挙げられる。
【0040】
また、難燃剤としては、例えば、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、クレジル-2,6-キシレニルホスフェート及びレゾルシノールビス(ジフェニルホスフェート)等の芳香族リン酸エステル、フェニルホスホン酸ジビニル、フェニルホスホン酸ジアリル及びフェニルホスホン酸(1-ブテニル)等のホスホン酸エステル、ジフェニルホスフィン酸フェニル、ジフェニルホスフィン酸メチル、9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキシド誘導体等のホスフィン酸エステル、ビス(2-アリルフェノキシ)ホスファゼン、ジクレジルホスファゼン等のホスファゼン化合物、リン酸メラミン、ピロリン酸メラミン、ポリリン酸メラミン、ポリリン酸メラム、ポリリン酸アンモニウム、およびリン含有ビニルベンジル化合物等の有機リン系難燃剤、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、臭素化フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ヘキサブロモベンゼン、ペンタブロモトルエン、エチレンビス(ペンタブロモフェニル)、エチレンビステトラブロモフタルイミド、1,2-ジブロモ-4-(1,2-ジブロモエチル)シクロヘキサン、テトラブロモシクロオクタン、ヘキサブロモシクロドデカン、ビス(トリブロモフェノキシ)エタン、臭素化ポリフェニレンエーテル、臭素化ポリスチレン及び2,4,6-トリス(トリブロモフェノキシ)-1,3,5-トリアジン、トリブロモフェニルマレイミド、トリブロモフェニルアクリレート、トリブロモフェニルメタクリレート、テトラブロモビスフェノールA型ジメタクリレート、ペンタブロモベンジルアクリレート、及び、臭素化スチレン等の有機臭素系難燃剤などを挙げることができる。
【0041】
また、抗菌剤としては、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチル、ビス(2-ピリジルチオ-1-オキシド)亜鉛などが挙げられる。
【0042】
また、酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、または硫黄系酸化防止剤が挙げられる。
前記フェノール系酸化防止剤としては、例えば、2,2-メチレンビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)、4,4-メチレンビス(2,6-ジ-t-ブチルフェノール)、2,2-メチレンビス[6-(1-メチルシクロヘキシル)-p-クレゾール]、4,4-ブチリデンビス(6-t-ブチル-m-クレゾール)、2,2-エチリデンビス(4-sec-ブチル-6-t-ブチルフェノール)、2,2-エチリデンビス(4,6-ジ-t-ブチルフェノール)、1,3,5-トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-2,4,6-トリメチルベンゼン、2,6-ジフェニル-4-オクタデシロキシフェノール、4,4-チオビス(6-t-ブチル-m-クレゾール)、トコフェロールなどを挙げることができる。
【0043】
前記リン系酸化防止剤としては、例えば、トリス(2-t-ブチル-4-メチルフェニル)ホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(ジノニルフェニル)ホスファイト、トリス(シクロヘキシルフェニル)ホスファイト、2,2-メチレンビス(4,6-ジ-t-ブチルフェニル)オクチルホスファイト、9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキサイド、10-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキサイド、10-デシロキシ-9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレンなどのモノホスファイト系化合物、4,4’-ブチリデン-ビス(3-メチル-6-t-ブチルフェニル-ジ-トリデシルホスファイト)、4,4’-イソプロピリデン-ビス(フェニル-ジ-アルキル(C12~C15)ホスファイト)、4,4’-イソプロピリデン-ビス(ジフェニルモノアルキル(C12~C15)ホスファイト)、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ジ-トリデシルホスファイト-5-t-ブチルフェニル)ブタン、テトラキス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)-4,4’-ビフェニレンホスファイトなどのジホスファイト系化合物が挙げられる。
【0044】
前記硫黄系酸化防止剤としては、例えば、ラウリルステアリル-3,3’-チオジプロピオン酸エステル、ジオクタデシルサルファイド、ペンタエリストリール-テトラ(β-ラウリル-チオプロピオネート)エステルなどを挙げることができる。
【0045】
本発明において用いられる固体粒子は、液状マスターバッチ100重量部に対して、0.5~85重量部であることが好ましく、1~80重量部であることがより好ましい。0.5重量部未満であると、十分な物性向上を得られず、85重量部より大きいと、液状マスターバッチと樹脂との混合時に、液状マスターバッチの樹脂へのなじみが悪くなる。
【0046】
前記固体粒子は1種を単独で使用することができ、又は2種以上を併用することができる。固体粒子を2種以上を併用する場合、液状マスターバッチ100重量部に対する全固体粒子の重量部の合計値が、前記固体粒子の重量部の範囲となることが好ましい。
【0047】
本発明の液状マスターバッチは、増粘剤を含むことができる。増粘剤としては、例えば、リン酸エステルの塩、微粒子シリカ、硬化性の植物油、硬化性動物油脂などが挙げられ、これらは1種もしくは2種以上用いることができる。
【0048】
前記微粒子シリカは、親水性微粒子シリカと疎水性微粒子シリカがあり、親水性シリカの好ましい市販品としては、AEROSIL-300、AEROSIL-380(日本アエロジル社製)等が挙げられ、また、疎水性シリカの好ましい市販品としては、AEROSIL-974D、AEROSIL-972(日本アエロジル社製)、サイロホービック200、サイロホービック326(富士サイリシア社製)等が挙げられる。
【0049】
前記硬化性の植物油としては、融点が30度以上の硬化性の植物油や動物油が挙げられ、植物油としては、硬化菜種油、硬化大豆油、硬化パーム油、硬化ヤシ油、硬化米油、または硬化ホホバ油が挙げられ、硬化動物油脂としては、硬化牛脂、硬化豚脂、または硬化馬油が挙げられる。
【0050】
前記増粘剤は、液状マスターバッチ100重量部に対して、0.1~30重量部であることが好ましく、0.5~20重量部であることがより好ましい。
【0051】
[液状マスターバッチの製造方法]
本発明における液状マスターバッチの製造方法は、特に限定されるものではなく、例えば、液状の脂肪酸エステル(A)、固体粒子(B)と、界面活性剤(C)、更に必要に応じて各種添加剤とを加え、ヘンシェルミキサーやタンブラー、ディスパー等で混合し、ミキサー、ビーズミル、及びペイントシェーカーを用いて分散することで、液状マスターバッチを得ることができる。分散装置は、上記以外にもニーダー、ロールミル、ボールミル、サンドミル等、任意の装置を使用することができる。
【0052】
[樹脂成形材料]
本発明の樹脂成形材料は、前記液状マスターバッチと熱可塑性樹脂を含有する成形体を形成するための樹脂成形材料である。樹脂成形材料は、例えば、熱可塑性樹脂ペレットと液状マスターバッチの混合物、あるいはあらかじめ熱可塑性樹脂と液状マスターバッチを混練したペレット状、粉末状、顆粒状あるいはビーズ状等の混練物があげられる。
【0053】
前記樹脂成形材料は、液状マスターバッチと熱可塑性樹脂の混合物を、そのまま溶融混練させて樹脂成形材料とし、成形体を成形することができ、またあらかじめペレット状等とした樹脂成形材料をさらに熱可塑性樹脂と溶融混練して希釈し、成形体を成形することもできる。
【0054】
[熱可塑性樹脂]
本発明の樹脂成形材料または成形体に含有される熱可塑性樹脂は、液状マスターバッチが添加される成形体の主材となる樹脂であって、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、またはポリカーボネート樹脂が好適に使用される。
【0055】
[ポリエチレンテレフタレート樹脂]
前記ポリエチレンテレフタレートは、テレフタル酸とエチレングリコールを主成分とするものである。
前記ポリエチレンテレフタレートは、特性を損なわない範囲で、テレフタル酸以外の酸成分として、例えば、イソフタル酸、5-ナトリウムスルホイソフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、4,4’-ジフェニルジカルボン酸、ジフェニルスルホンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸;トリメリット酸、ピロメリット酸等の芳香族多価カルボン酸及びその酸無水物;シュウ酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、デカンジカルボン酸等の脂肪族ジカルボン酸が共重合されてもよい。
また、前記ポリエチレンテレフタレートは、特性を損なわない範囲で、エチレングリコール以外のアルコール成分として、例えば、プロピレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、ジエチレングリコール、1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール等の脂肪族ジオール;トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の脂肪族多価アルコール;1,4-シクロヘキサンジメタノール、1,4-シクロヘキサンジエタノール等の脂環族ジオール;ビスフェノールAやビスフェノールSのエチレンオキシド付加体等の芳香族ジオール;4-ヒドロキシ安息香酸、ε-カプロラクトン等のヒドロキシカルボン酸が共重合されてもよい。
【0056】
[ポリブチレンテレフタレート樹脂]
前記ポリブチレンテレフタレート樹脂は、テレフタル酸あるいはそのエステル形成性誘導体と1,4-ブタンジオールあるいはそのエステル形成性誘導体とを主成分とするものである。
前記ポリブチレンテレフタレート樹脂は、特性を損なわない範囲で、他の共重合成分を含んでもよい。これら重合体および共重合体の好ましい例としては、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレン(テレフタレート/イソフタレート)、ポリブチレン(テレフタレート/アジペート)、ポリブチレン(テレフタレート/セバケート)、ポリブチレン(テレフタレート/デカンジカルボキシレート)、ポリブチレン(テレフタレート/ナフタレート)、ポリ(ブチレン/エチレン)テレフタレート等が挙げられ、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0057】
[ポリカーボネート樹脂]
前記ポリカーボネート樹脂は、芳香族ジヒドロキシ化合物と、ホスゲン或いは炭酸ジエステル等のカーボネート前駆体とを反応させることにより容易に製造される。反応は公知の反応、例えば、ホスゲンを用いる場合は界面法により、また炭酸ジエステルを用いる場合は溶融状で反応させるエステル交換法により得ることができる。
【0058】
上記芳香族ジヒドロキシ化合物としては、例えば、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)、ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)オクタン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-t-ブチルフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-ブロモフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジブロモフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジクロロフェニル)プロパン等のビス(ヒドロキシアリール)アルカン類、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン等のビス(ヒドロキシアリール)シクロアルカン類4,4´-ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4´-ジヒドロキシ-3,3´-ジメチルジフェニルエーテル等のジヒドロキシジアリールエーテル類、4,4´-ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4´-ジヒドロキシ-3,3´-ジメチルジフェニルスルフィドのようなジヒドロキシジアリールスルフィド類、4,4´-ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4´-ジヒドロキシ-3,3´-ジメチルジフェニルスルホキシド等のジヒドロキシジアリールスルホキシド類、4,4´-ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4´-ジヒドロキシ-3,3´-ジメチルジフェニルスルホン等のジヒドロキシジアリールスルホン類等が挙げられる。これらは単独または2種以上混合して使用される。これらの他にピペラジン、ジピペリジルハイドロキノン、レゾルシン、4,4´-ジヒドロキシジフェニル類を混合して使用してもよい。更に、フロログルシン等の多官能性化合物を併用した分岐を有する芳香族ポリカーボネート樹脂を使用することも出来る。
【0059】
前記芳香族ジヒドロキシ化合物と反応させるカーボネート前駆体としては、例えば、ホスゲン、ジフェニルカーボネート、ジトリルカーボネート等のジアリールカーボネート類、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等のジアルキルカーボネート類等が挙げられる。
【0060】
前記樹脂成形材料における熱可塑性樹脂と液状マスターバッチの混合比は、熱可塑性樹脂100重量部に対して、液状マスターバッチ中の液状の脂肪酸エステルが0.05~10重量部となるよう混合することが好ましく、0.1~5重量部であることがより好ましい。10重量部より大きいと、脂肪酸エステルが成形した際に成形体表面に液泡が発生することがあり、また混合時に使用する混合機内で材料が空転するおそれがある。0.05重量部未満であると十分な物性向上を得られない。
【0061】
前記樹脂成形材料は、本発明の効果を損なわない範囲で、他の界面活性剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系耐候安定剤、帯電防止剤等各種安定剤、難燃剤、アンチブロッキング剤の添加剤を加えてもよい。また、前記添加剤は、あらかじめ熱可塑性樹脂に練り込んだマスターバッチとして添加してもよい。
【0062】
[成形体]
本発明の成形体は、前記液状マスターバッチと前記熱可塑性樹脂を含有する樹脂成形材料より形成してなる。
本発明の成形体は、前記液状マスターバッチと前記熱可塑性樹脂が含まれているものであればよく、その形成方法は具体的には、例えば、(a)液状マスターバッチと、熱可塑性樹脂のペレット等を混合の上、溶融混練して樹脂成形材料として、成形体を得る方法、(b)液状マスターバッチと熱可塑性樹脂をあらかじめ溶融混練してペレット状のマスターバッチとした樹脂成形材料を用い、さらに熱可塑性樹脂のペレット等と一緒に溶融混練して成形体を得る方法、(c)液状マスターバッチと、熱可塑性樹脂を溶融混練してペレット等にした樹脂成形材料を、そのまま溶融混練して成形体を得る方法、などが挙げられる。
【0063】
前記成形体に含まれる液状マスターバッチの含有量は、成形体100重量部に対して、液状マスターバッチ中の液状の脂肪酸エステルが0.05~10重量部となるよう混合することが好ましく、0.1~5重量部であることがより好ましい。10重量部より大きいと、液状マスターバッチの溶媒により白化が発生することがあり、また成形機の押出スクリュー内で材料が空転するおそれがある。0.05重量部未満であると十分な物性向上を得られない。
【0064】
液状マスターバッチを用いて成形体を得る成形方法は、特に限定されず、射出成形、ブロー成形、押出成形、フィルム成形、圧縮成形などの公知の方法を用いることができる。
【0065】
成形体は、熱可塑性樹脂と液状マスターバッチの混合物であればよく、成形の際に成形機のホッパーへ熱可塑性樹脂を投入し、既知のポンプ等を用いて液状マスターバッチを添加して混合の上、溶融混練して成形体を得てもよく、また、あらかじめペレット状、粉末状、顆粒状あるいはビーズ状とした樹脂成形材料を成形機に投入してもよい。
【実施例0066】
以下に実施例および比較例を示して本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例および比較例中の部は重量部を、%は重量%を表す。
【0067】
実施例と比較例に使用した各材料を表1に、また液状マスターバッチの組成を表2および表3に示す。
【0068】
【0069】
<液状マスターバッチの作製>
実施例1~20および比較例1~12について、表2および表3に記載の配合に従い材料を混合攪拌した後、ペイントシェーカーにて、2時間分散し、液状マスターバッチを作製した。なお、表2および表3の数値は重量%を示す。
【0070】
【0071】
【0072】
<樹脂成形材料および成形体の作製>
表2および表3に記載の熱可塑性樹脂のペレット100重量部に対し、得られた液状マスターバッチ0.2重量部を計量後に混合して樹脂成形材料を作製した。
熱可塑性樹脂は下記のものを使用した。
ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET): PIFG8(株式会社ベルポリエステルプロダクツ製)
ポリカーボネート樹脂(PC):ユーピロンS-1000(三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社製)
ポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT):ノバデュラン5020(三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社製)
実施例1~20および比較例1~12で使用した樹脂を、表2および表3に記載する。
【0073】
さらに、前記樹脂成形材料をインジェクションブロー成形機(日精エー・エス・ビー株式会社製、型番:ASB-12N、スクリュー径:44mm)のホッパーへ投入後、以下の成形温度、および金型温度15~20℃の条件によりボトル状の成形体を作製した。
・ポリエチレンテレフタレート樹脂:290℃
・ポリブチレンテレフタレート樹脂:260℃
・ポリカーボネート樹脂:290℃
作成した成形体は、高さ160mm、直径61mm、肉厚0.5mmであった。
【0074】
実施例1~20および比較例1~12の液状マスターバッチの沈降性評価と、成形体の液泡評価を行った。評価結果を、表4および表5に記載する。総合評価は、評価を行ったうち、すべての評価が○のものを良品とした。
【0075】
<沈降性評価>
前記液状マスターバッチを、作成後、ガラス瓶に保管し7日放置後の沈降状態を目視により確認して沈降性を評価した。沈降性について、○:沈降が見られない、×:沈降が見られる、の2段階で評価した。
【0076】
<液泡評価>
前記ボトル状の成形体を50ショット作成し、すべての成形体の表面を観察して、直径1mm以上の液泡の有無を評価した。液泡の評価は、○:すべての成形体で表面に液泡が見られない、×:1個以上の成形体で表面に液泡が見られる、の2段階で評価した。
【0077】
【0078】