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特開2024-77529多層膜基板、弾性波デバイス、モジュールおよび多層膜基板の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024077529
(43)【公開日】2024-06-07
(54)【発明の名称】多層膜基板、弾性波デバイス、モジュールおよび多層膜基板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H03H 9/25 20060101AFI20240531BHJP
   H03H 3/08 20060101ALI20240531BHJP
【FI】
H03H9/25 C
H03H9/25 A
H03H3/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022189660
(22)【出願日】2022-11-28
(71)【出願人】
【識別番号】518453730
【氏名又は名称】三安ジャパンテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100171077
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 健
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼岡 良知
(72)【発明者】
【氏名】塩井 伸一
【テーマコード(参考)】
5J097
【Fターム(参考)】
5J097AA24
5J097BB02
5J097BB15
5J097DD28
5J097EE08
5J097EE09
5J097EE10
5J097FF04
5J097FF05
5J097GG03
5J097HA03
5J097HA04
5J097JJ04
5J097JJ09
5J097KK01
5J097KK09
5J097KK10
5J097LL01
5J097LL08
(57)【要約】
【課題】圧電基板と支持基板とのボンダビリティを向上することができる多層膜基板を提供する。
【解決手段】多層膜基板は、圧電基板と、前記圧電基板の上に形成された第1絶縁膜と、支持基板と、前記支持基板の上に形成された第2絶縁膜と、前記第1絶縁膜と前記第2絶縁膜との間に形成された接合層と、備えた。当該構成を備えることにより、圧電基板と支持基板は、第1絶縁膜と第2絶縁膜と接合層とを中間層として互いに接合される。このため、圧電基板と支持基板とのボンダビリティを向上することができる。
【選択図】図3

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電基板と、
前記圧電基板の上に形成された第1絶縁膜と、
支持基板と、
前記支持基板の上に形成された第2絶縁膜と、
前記第1絶縁膜と前記第2絶縁膜との間に形成された接合層と、
を備えた多層膜基板。
【請求項2】
前記接合層の厚みは、前記圧電基板の厚みの0.1%以上かつ5%以下の厚みである請求項1に記載の多層膜基板。
【請求項3】
前記第1絶縁膜と前記第2絶縁膜と前記接合層との厚みの合計は、前記圧電基板の厚みの半分以下である請求項1に記載の多層膜基板。
【請求項4】
前記第1絶縁膜と前記第2絶縁膜と前記接合層との厚みの合計は、弾性波の波長がλである場合に0.06λ以上かつ0.075λ以下である請求項1に記載の多層膜基板。
【請求項5】
前記支持基板と前記第2絶縁膜との接触面積は、前記圧電基板と前記第1絶縁膜との接触面積よりも大きい請求項1に記載の多層膜基板。
【請求項6】
前記第1絶縁膜は、前記第2絶縁膜よりも厚い請求項1に記載の多層膜基板。
【請求項7】
前記圧電基板は、タンタル酸リチウムで形成された請求項1に記載の多層膜基板。
【請求項8】
前記支持基板は、スピネルで形成された請求項1に記載の多層膜基板。
【請求項9】
前記請求項1から請求項8のいずれか一項に記載された多層膜基板と、
前記多層膜基板に形成された複数の弾性波素子と、
を備えた弾性波デバイス。
【請求項10】
請求項9に記載の弾性波デバイスを備えたモジュール。
【請求項11】
圧電基板の上に第1絶縁膜を形成する第1絶縁膜形成工程と、
支持基板の上に第2絶縁膜を形成する第2絶縁膜形成工程と、
前記第1絶縁膜の上に第1接合層を形成する第1接合層形成工程と、
前記第2絶縁膜の上に第2接合層を形成する第2接合層形成工程と、
前記第1接合層と前記第2接合層とを接合する接合層形成工程と、
を備えた多層膜基板の製造方法。
【請求項12】
前記第1接合層の表面を高速原子線照射処理する第1高速原子線照射処理工程と、
前記第2接合層の表面を高速原子線照射処理する第2高速原子線照射処理工程と、
を備え、
前記接合層形成工程は、前記第1高速原子線照射処理工程と前記第2高速原子線照射処理工程との後に行われる請求項11に記載の多層膜基板の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、多層膜基板、弾性波デバイス、モジュールおよび多層膜基板の製造方法に関連する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、弾性波デバイスを開示する。当該弾性波デバイスは、圧電基板と支持基板とを備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-028566号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
弾性波デバイスにおいては、圧電基板と支持基板との接合強度が要求される。このため、圧電基板と支持基板とのボンダビリティの向上が望まれる。
【0005】
本開示は、上述の課題を解決するためになされた。本開示の目的は、圧電基板と支持基板とのボンダビリティを向上することができる多層膜基板、弾性波デバイス、モジュールおよび多層膜基板の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る多層膜基板は、
圧電基板と、
前記圧電基板の上に形成された第1絶縁膜と、
支持基板と、
前記支持基板の上に形成された第2絶縁膜と、
前記第1絶縁膜と前記第2絶縁膜との間に形成された接合層と、
を備えた多層膜基板とした。
【0007】
前記接合層の厚みは、前記圧電基板の厚みの0.1%以上かつ5%以下の厚みであることが、本開示の一形態とされる。
【0008】
前記第1絶縁膜と前記第2絶縁膜と前記接合層との厚みの合計は、前記圧電基板の厚みの半分以下であることが、本開示の一形態とされる。
【0009】
前記第1絶縁膜と前記第2絶縁膜と前記接合層との厚みの合計は、弾性波の波長がλである場合に0.06λ以上かつ0.075λ以下であることが、本開示の一形態とされる。
【0010】
前記支持基板と前記第2絶縁膜との接触面積は、前記圧電基板と前記第1絶縁膜との接触面積よりも大きいことが、本発明の一形態とされる。
【0011】
前記第1絶縁膜は、前記第2絶縁膜よりも厚いことが、本発明の一形態とされる。
【0012】
前記圧電基板は、タンタル酸リチウムで形成されたことが、本発明の一形態とされる。
【0013】
前記支持基板は、スピネルで形成されたことが、本発明の一形態とされる。
【0014】
前記多層膜基板と、
前記多層膜基板に形成された複数の弾性波素子と、
を備えた弾性波デバイスが、本開示の一形態とされる。
【0015】
前記弾性波デバイスを備えたモジュールが、本開示の一形態とされる。
【0016】
本開示に係る多層膜基板の製造方法は、
圧電基板の上に第1絶縁膜を形成する第1絶縁膜形成工程と、
支持基板の上に第2絶縁膜を形成する第2絶縁膜形成工程と、
前記第1絶縁膜の上に第1接合層を形成する第1接合層形成工程と、
前記第2絶縁膜の上に第2接合層を形成する第2接合層形成工程と、
前記第1接合層と前記第2接合層とを接合する接合層形成工程と、
を備えた多層膜基板の製造方法とした。
【0017】
前記第1接合層の表面を高速原子線照射処理する第1高速原子線照射処理工程と、
前記第2接合層の表面を高速原子線照射処理する第2高速原子線照射処理工程と、
を備え、
前記接合層形成工程は、前記第1高速原子線照射処理工程と前記第2高速原子線照射処理工程との後に行われることが、本開示の一形態とされる。
【発明の効果】
【0018】
本開示によれば、圧電基板と支持基板とのボンダビリティを向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】実施の形態1における弾性波デバイスの縦断面図である。
図2】実施の形態1における弾性波デバイスの弾性波素子の例を示す図である。
図3】実施の形態1における弾性波デバイスの多層膜基板の縦断面図である。
図4】実施の形態1における弾性波デバイスの製造方法を説明するための図である。
図5】実施の形態1における弾性波デバイスの製造方法を説明するための図である。
図6】実施の形態1における弾性波デバイスの製造方法を説明するための図である。
図7】実施の形態1における弾性波デバイスの多層膜基板の圧電基板と中間層との厚みに対する共振周波数と反共振周波数との変動を示す図である。
図8】実施の形態1における弾性波デバイスの多層膜基板と比較例との共振周波数の変動を示す図である。
図9】実施の形態1における弾性波デバイスの多層膜基板と比較例との反共振周波数の変動を示す図である。
図10】実施の形態2における弾性波デバイスが適用されるモジュールの縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
実施の形態について添付の図面に従って説明する。なお、各図中、同一または相当する部分には同一の符号が付される。当該部分の重複説明は適宜に簡略化ないし省略される。
【0021】
実施の形態1.
図1は実施の形態1における弾性波デバイスの縦断面図である。
【0022】
図1は、弾性波デバイス1として、デュプレクサである弾性波デバイスの例を示す。
【0023】
図1に示されるように、弾性波デバイス1は、配線基板2と多層膜基板3と複数のバンプ4と封止部5とを備える。
【0024】
例えば、配線基板2は、樹脂からなる多層基板である。例えば、配線基板2は、複数の誘電体層からなる低温同時焼成セラミックス(Low Temperature Co-fired Ceramics:LTCC)多層基板である。
【0025】
多層膜基板3は、弾性波素子(図1においては図示されない)が形成される基板である。例えば、多層膜基板3の主面(図1においては下面)において、受信フィルタと送信フィルタとが形成される。
【0026】
受信フィルタは、所望の周波数帯域の電気信号が通過し得るように形成される。例えば、受信フィルタは、複数の直列共振器と複数の並列共振器からなるラダー型フィルタである。
【0027】
送信フィルタは、所望の周波数帯域の電気信号が通過し得るように形成される。例えば、送信フィルタは、複数の直列共振器と複数の並列共振器からなるラダー型フィルタである。
【0028】
複数のバンプ4は、配線基板2の主面(図1においては上面)に形成された配線と多層膜基板3の主面に形成された配線とに電気的に接続される。
【0029】
封止部5は、多層膜基板3を覆うように形成される。封止部5は、配線基板2とともに、多層膜基板3を封止する。例えば、封止部5は、合成樹脂等の絶縁体で形成される。例えば、封止部5は、金属で形成される。例えば、封止部5は、絶縁層と金属層とで形成される。
【0030】
封止部5が合成樹脂で形成される場合、当該合成樹脂は、エポキシ樹脂、ポリイミド等である。好ましくは、封止部5は、低温硬化プロセスを用いてエポキシ樹脂で形成される。
【0031】
次に、図2を用いて、弾性波素子の例を説明する。
図2は実施の形態1における弾性波デバイスの弾性波素子の例を示す図である。
【0032】
図2の例において、弾性波素子は、弾性表面波共振器である。図2に示されるように、弾性表面波共振器において、IDT(Interdigital Transducer)8Aと一対の反射器8Bとは、多層膜基板3の主面に形成される。IDT8Aと一対の反射器8Bとは、弾性表面波を励振し得るように設けられる。
【0033】
例えば、IDT8Aと一対の反射器8Bとは、アルミニウムと銅の合金で形成される。例えば、IDT8Aと一対の反射器8Bとは、チタン、パラジウム、銀などの適宜の金属もしくはこれらの合金で形成される。例えば、IDT8Aと一対の反射器8Bとは、複数の金属層が積層した積層金属膜で形成される。例えば、IDT8Aと一対の反射器8Bとの厚みは、150nmから400nmである。
【0034】
IDT8Aは、一対の櫛形電極8Cを備える。一対の櫛形電極8Cは、互いに対向する。櫛形電極8Cは、複数の電極指8Dとバスバー8Eとを備える。複数の電極指8Dは、長手方向を合わせて配置される。バスバー8Eは、複数の電極指8Dを接続する。
【0035】
一対の反射器8Bの一方は、IDT8Aの一側に隣接する。一対の反射器8Bの他方は、IDT8Aの他側に隣接する。
【0036】
次に、図3を用いて、多層膜基板3の構成を説明する。
図3は実施の形態1における弾性波デバイスの多層膜基板の縦断面図である。
【0037】
図3に示されるように、多層膜基板3は、圧電基板3Aと第1絶縁膜3Bと支持基板3Cと第2絶縁膜3Dと接合層3Eとを備える。
【0038】
例えば、圧電基板3Aは、タンタル酸リチウムで形成される。例えば、第1絶縁膜3Bは、二酸化ケイ素で形成される。第1絶縁膜3Bは、圧電基板3Aの上(図3においては圧電基板3Aの下面)に形成される。例えば、支持基板3Cは、スピネルで形成される。例えば、第2絶縁膜3Dは、二酸化ケイ素で形成される。第2絶縁膜3Dは、支持基板3Cの上(図3においては支持基板3Cの上面)に形成される。例えば、接合層3Eは、ケイ素で形成される。接合層3Eは、第1絶縁膜3Bと第2絶縁膜3Dとの間に形成される。図3においては、圧電基板3Aと支持基板3Cは、第1絶縁膜3Bと第2絶縁膜3Dと接合層3Eとを中間層として互いに接合される。
【0039】
本実施の形態において、圧電基板3Aは、1000nm程度の厚さとなるように設定される。接合層3Eの厚みは、圧電基板3Aの厚みの0.1%以上かつ5%以下の厚みとなるように設定される。例えば、接合層3Eの厚みは、8nm程度に設定される。第1絶縁膜3Bと第2絶縁膜3Dと接合層3Eとの厚みの合計は、圧電基板3Aの厚みの半分以下となるように設定される。第1絶縁膜3Bと第2絶縁膜3Dと接合層3Eとの厚みの合計は、弾性波の波長がλである場合に0.06λ以上かつ0.075λ以下となるように設定される。第1絶縁膜3Bは、第2絶縁膜3Dよりも厚くなるように設定される。
【0040】
次に、図4から図6を用いて、多層膜基板3の製造方法を説明する。
図4から図6は実施の形態1における弾性波デバイスの製造方法を説明するための図である。
【0041】
図4に示されるように、第1絶縁膜形成工程においては、第1絶縁膜3Bが熱酸化法等により圧電基板3Aの上(図4においては圧電基板3Aの上面)に形成される。この際、第1絶縁膜3Bは、50nmから200nmの間の厚さとなるように形成される。その後、第1研磨工程が行われる。第1研磨工程においては、第1絶縁膜3Bの表面(図4においては第1絶縁膜3Bの上面)が化学機械研磨により平滑化される。その後、第1接合層形成工程が行われる。第1接合層形成工程においては、第1接合層6Aとしてのケイ素が第1絶縁膜3Bの上(図4においては第1絶縁膜3Bの上面)に形成される。この際、第1接合層6Aは、4nm程度の厚さとなるように形成される。
【0042】
図5に示されるように、第2絶縁膜形成工程においては、第2絶縁膜3Dが熱酸化法等により支持基板3Cの上(図5においては支持基板3Cの上面)に形成される。この際、第2絶縁膜3Dは、50nmから200mmの厚さとなるように形成される。その後、第2研磨工程が行われる。第2研磨工程においては、第2絶縁膜3Dの表面(図5においては第2絶縁膜3Dの上面)が化学機械研磨により平滑化される。その後、第2接合層形成工程が行われる。第2接合層形成工程においては、第2接合層6Bとしてのケイ素が第2絶縁膜3Dの上(図5においては第2絶縁膜3Dの上面)に形成される。この際、第2接合層6Bは、4nm程度の厚さとなるように形成される。
【0043】
図6の工程は、図4図5との工程が行われた後に行われる。図6に示されるように、まず、第1高速原子線照射処理工程と第2高速原子線照射処理工程とが行われる。第1高速原子線照射処理工程においては、第1接合層6Aの表面(図6においては第1接合層6Aの下面)が高速原子線照射処理される。第2高速原子線照射処理工程においては、第2接合層6Bの表面(図6においては第2接合層6Bの上面)が高速原子線照射処理される。
【0044】
その後、接合層形成工程が行われる。接合層形成工程においては、第1接合層6Aと第2接合層6Bとが直接的に接合される。その結果、接合層3Eが形成される。
【0045】
次に、図7を用いて共振周波数と反共振周波数との変動の第1例を説明する。
図7は実施の形態1における弾性波デバイスの多層膜基板の圧電基板と中間層との厚みに対する共振周波数と反共振周波数との変動を示す図である。
【0046】
図7において、横軸は、弾性波の波長λで規格化された圧電基板3Aの厚みである。縦軸は、弾性波の波長λで規格化された中間層の厚みである。複数の実線は、共振周波数Frを示す。隣接した実線で囲まれた領域は、共振周波数Frの変動が3.5MHzの範囲に収まる領域である。複数の破線は、反共振周波数Faを示す。隣接した破線で囲まれた領域は、反共振周波数Faの変動が3.5MHzの範囲に収まる領域である。
【0047】
図7に示されるように、例えば、圧電基板3Aの厚みの設計値が0.7λである場合、中間層の厚みが0.06λ以上かつ0.075λ以下であれば、圧電基板3Aの実際の厚みにおいてばらつきがある場合でも、共振周波数Frと反共振周波数Faとは、ほとんど変動しない。例えば、圧電基板3Aの厚みの設計値が0.5λである場合、中間層の厚みが0.1λ程度であれば、圧電基板3Aの実際の厚みにおいてばらつきがある場合でも、共振周波数Frとは、ほとんど変動しない。
【0048】
次に、図8図9とを用いて共振周波数と反共振周波数との変動の第2例を説明する。
図8は実施の形態1における弾性波デバイスの多層膜基板と比較例との共振周波数の変動を示す図である。図9は実施の形態1における弾性波デバイスの多層膜基板と比較例との反共振周波数の変動を示す図である。
【0049】
図8図9とにおいて、横軸は、弾性波の波長λで規格化された圧電基板3Aの厚みである。縦軸は、周波数である。Rは、圧電基板3Aの厚さが0.58λ(2.7μm)から0.71λ(3.3μm)までの領域を示す。図8において、Aは、中間層が0.07λである場合の多層膜基板3における共振周波数を示す。Bは、圧電基板3Aと支持基板3Cとが直接的に接合された比較例における共振周波数を示す。図9において、Cは、中間層が0.07λである場合の多層膜基板3における反共振周波数の変動を示す。Dは、圧電基板3Aと支持基板3Cとが直接的に接合された比較例における反共振周波数の変動を示す。
【0050】
図8の領域Rにおいて、比較例の共振周波数Bの変動は、2.15MHzである。これに対し、多層膜基板3の共振周波数Aの変動は、0.13MHzである。このように、多層膜基板3の共振周波数Aの変動は、比較例の共振周波数Bの変動と比較してかなり小さい。
【0051】
図9の領域Rにおいて、比較例の反共振周波数Dの変動は、3.10MHzである。これに対し、多層膜基板3の反共振周波数Cの変動は、0.71MHzである。このように、多層膜基板3の反共振周波数Cの変動は、比較例の反共振周波数Dの変動と比較してかなり小さい。
【0052】
以上で説明された実施の形態1によれば、圧電基板3Aと支持基板3Cは、第1絶縁膜3Bと第2絶縁膜3Dと接合層3Eとを中間層として互いに接合される。このため、圧電基板3Aと支持基板3Cとのボンダビリティを向上することができる。
【0053】
また、接合層3Eの厚みは、圧電基板3Aの厚みの0.1%以上かつ5%以下の厚みである。接合層3Eの厚みが当該範囲内であれば、音響的に、フィルタ特性にほとんど影響しない。このため、弾性波デバイス1としての性能を維持しつつ、圧電基板3Aと支持基板3Cとのボンダビリティを向上することができる。
【0054】
例えば、Band8の場合、圧電基板3Aの厚みは、3.0μm程度に設定される。第1絶縁膜3Bと第2絶縁膜3Dとの厚みの合計は、300nm程度に設定される。例えば、Band3の場合、圧電基板3Aの厚みは、1.5μm程度に設定される。第1絶縁膜3Bと第2絶縁膜3Dとの厚みの合計は、150nm程度に設定される。これらの厚みに応じて、接合層3Eの厚みを適切に設定すれば、弾性波デバイス1としての性能を維持しつつ、圧電基板3Aと支持基板3Cとのボンダビリティを向上することができる。
【0055】
また、第1絶縁膜3Bと第2絶縁膜3Dと接合層3Eとの厚みの合計は、圧電基板3Aの厚みの半分以下である。このため、弾性波デバイス1としての性能を維持しつつ、圧電基板3Aと支持基板3Cとのボンダビリティを向上することができる。
【0056】
また、第1絶縁膜3Bと第2絶縁膜3Dと接合層3Eとの厚みの合計は、弾性波の波長がλである場合に0.06λ以上かつ0.075λ以下である。このため、圧電基板3Aの厚みにおいてばらつきがある場合でも、弾性波デバイス1の共振周波数の変動を抑制しつつ、圧電基板3Aと支持基板3Cとのボンダビリティを向上することができる。
【0057】
なお、支持基板3Cの表面は、圧電基板3Aと比較して粗い。このため、支持基板3Cと第2絶縁膜3Dとの接触面積は、圧電基板3Aと第1絶縁膜3Bとの接触面積よりも大きくなる。その結果、支持基板3Cと第2絶縁膜3Dとのボンダビリティを向上することができる。
【0058】
また、第1絶縁膜3Bは、第2絶縁膜3Dよりも厚い。このため、圧電基板3Aのアイソレーション特性を維持しつつ、圧電基板3Aと支持基板3Cとのボンダビリティを向上することができる。
【0059】
また、圧電基板3Aは、タンタル酸リチウムで形成される。支持基板3Cは、スピネルで形成される。このため、スピネルの表面が粗く、タンタル酸リチウムとの接合強度に懸念がある場合でも、タンタル酸リチウムとスピネルとのボンダビリティを向上することができる。
【0060】
また、接合層3Eは、高速原子線照射処理を用いて形成される。このため、接合層3Eを薄く形成することができる。
【0061】
実施の形態2.
図10は実施の形態2における弾性波デバイスが適用されるモジュールの縦断面図である。なお、実施の形態1の部分と同一又は相当部分には同一符号が付される。当該部分の説明は省略される。
【0062】
図10において、モジュール100は、配線基板101と集積回路部品102と弾性波デバイス1とインダクタ103と封止部104とを備える。
【0063】
配線基板101は、実施の形態1の配線基板2と同等である。
【0064】
図示されないが、集積回路部品102は、配線基板101の内部に実装される。集積回路部品102は、スイッチング回路とローノイズアンプとを含む。
【0065】
弾性波デバイス1は、配線基板101の主面に実装される。
【0066】
インダクタ103は、配線基板101の主面に実装される。インダクタ103は、インピーダンスマッチングのために実装される。例えば、インダクタ103は、Integrated Passive Device(IPD)である。
【0067】
封止部104は、弾性波デバイス1を含む複数の電子部品を封止する。
【0068】
以上で説明された実施の形態2によれば、モジュール100は、弾性波デバイス1を備える。このため、放熱性が高い弾性波デバイス1を備えたモジュール100を実現することができる。
【0069】
少なくとも一つの実施形態のいくつかの側面が説明されたが、様々な改変、修正および改善が当業者にとって容易に想起されることを理解されたい。かかる改変、修正および改善は、本開示の一部となることが意図され、かつ、本開示の範囲内にあることが意図される。
【0070】
理解するべきことだが、ここで述べられた方法および装置の実施形態は、上記説明に記載され又は添付図面に例示された構成要素の構造および配列の詳細への適用に限られない。方法および装置は、他の実施形態で実装し、様々な態様で実施又は実行することができる。
【0071】
特定の実装例は、例示のみを目的としてここに与えられ、限定されることを意図しない。
【0072】
本開示で使用される表現および用語は、説明目的であって、限定としてみなすべきではない。ここでの「含む」、「備える」、「有する」、「包含する」およびこれらの変形の使用は、以降に列挙される項目およびその均等物並びに付加項目の包括を意味する。
【0073】
「又は(若しくは)」の言及は、「又は(若しくは)」を使用して記載される任意の用語が、当該記載の用語の一つの、一つを超える、およびすべてのものを示すように解釈され得る。
【0074】
前後左右、頂底上下、横縦、表裏への言及は、いずれも、記載の便宜を意図する。当該言及は、本開示の構成要素がいずれか一つの位置的又は空間的配向に限られるものではない。したがって、上記説明および図面は、例示にすぎない。
【符号の説明】
【0075】
1 弾性波デバイス、 2 配線基板、3 多層膜基板、 3A 圧電基板、 3B 第1絶縁膜、 3C 支持基板、 3D 第2絶縁膜、 3E 接合層、 4 バンプ、 5 封止部、 6A 第1接合層、 6B 第2接合層、 8 弾性波素子、 8A IDT、 8B 反射器、 8C 櫛形電極、 8D 電極指、 8E バスバー 100 モジュール、 101 配線基板、 102 集積回路部品、 103 インダクタ、 104 封止部

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