(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024077534
(43)【公開日】2024-06-07
(54)【発明の名称】吸収体の製造方法及び吸収体
(51)【国際特許分類】
A61F 13/15 20060101AFI20240531BHJP
A61F 13/53 20060101ALI20240531BHJP
A61F 13/531 20060101ALI20240531BHJP
【FI】
A61F13/15 329
A61F13/15 321
A61F13/15 355B
A61F13/53 300
A61F13/531
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022189674
(22)【出願日】2022-11-28
(71)【出願人】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002631
【氏名又は名称】弁理士法人イイダアンドパートナーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100076439
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 敏三
(74)【代理人】
【識別番号】100161469
【弁理士】
【氏名又は名称】赤羽 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100164345
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 隆
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 淳
(72)【発明者】
【氏名】後藤 実
【テーマコード(参考)】
3B200
【Fターム(参考)】
3B200BA01
3B200BA02
3B200BA03
3B200BA13
3B200BB03
3B200BB04
3B200BB05
3B200BB16
3B200BB17
3B200DB01
3B200DB02
3B200DB11
3B200DB16
3B200DB18
3B200DB19
3B200EA01
3B200EA05
3B200EA24
3B200EA27
(57)【要約】
【課題】液吸収前は薄くされながら、液吸収時でも液吸収量を低下させることなく、シート強度を担保した吸収体の製造方法及び吸収体を提供する。
【解決手段】熱融着性繊維を含む繊維及び吸収性ポリマー材を混合積繊させて積繊物を得る積繊工程、前記積繊物に、前記熱融着性繊維の融点以上の温度で熱処理を施し、熱融着積繊物を得る熱処理工程、及び前記熱融着積繊物に水を含ませ、含水積繊物を得る加水工程、をこの順で行ったあと、前記含水積繊物に対し、加圧を施す加圧工程と、前記熱融着性繊維の融点未満の温度の熱処理を施して乾燥させる乾燥工程とを同時に又は別個に行う、吸収体の製造方法。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱融着性繊維を含む繊維及び吸収性ポリマー材を混合積繊させて積繊物を得る積繊工程、
前記積繊物に、前記熱融着性繊維の融点以上の温度で熱処理を施し、熱融着積繊物を得る熱処理工程、及び
前記熱融着積繊物に水を含ませ、含水積繊物を得る加水工程、をこの順で行ったあと、
前記含水積繊物に対し、加圧を施す加圧工程と、前記熱融着性繊維の融点未満の温度の熱処理を施して乾燥させる乾燥工程とを同時に又は別個に行う、
吸収体の製造方法。
【請求項2】
前記繊維はセルロース繊維を含む、請求項1記載の吸収体の製造方法。
【請求項3】
前記熱処理工程は熱風によって行う、請求項1又は2記載の吸収体の製造方法。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の吸収体の製造方法で得られた吸収体。
【請求項5】
繊維及び吸収性ポリマー材を含む吸収体であって、
前記繊維は熱融着性繊維を含み、前記熱融着性繊維同士は交差部に融着点を有し、
液吸収前の前記吸収体の質量に対し、前記熱融着性繊維を4質量%以上30質量%以下含み、
前記融着点は、前記吸収体の表面から観察した1mm×1mmの平方視野範囲内に、2個以上14個以下含み、
前記繊維が前記吸収性ポリマー材内に取り込まれた複合部を有する、吸収体。
【請求項6】
前記繊維はセルロース繊維を含む、請求項4又は5記載の吸収体。
【請求項7】
前記融着点は、前記吸収体の表面から観察した1.5mm×1.5mmの平方視野範囲内に、5個以上32個以下含む、請求項5~6のいずれか1項に記載の吸収体。
【請求項8】
前記複合部は、前記吸収体の表面から観察した1.5mm×1.5mmの平方視野範囲内に、20箇所以上45箇所以下配されている、請求項5~7のいずれか1項に記載の吸収体。
【請求項9】
請求項4~8のいずれか1項に記載の吸収体を含む吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、おむつや生理用ナプキン等の吸収性物品に用いられる吸収体の製造方法及び吸収体に関する。
【背景技術】
【0002】
吸収性物品内に配置される吸収体は、吸収性能を高める吸収性ポリマー材(いわゆるSAP(superbsorbent polmer)と称される表面架橋された高分子材料)を含むことが多い。このような吸収体について、吸収性向上の観点からいくつかの技術が提案されてきた。
例えば、特許文献1には、高吸水性ポリマー粒子が、その表面に付着した結合材を介して繊維状支持基材と固定された吸収性構造物が記載されている。前記繊維状支持基材と前記結合材とは、高吸水性ポリマー粒子が吸水膨潤しても容易に解離することがない強結合と、吸水膨潤すると容易に解離する弱結合とによって結合されている。高吸水性ポリマー粒子の吸水膨潤時、その表面の前記弱結合が解離して繊維同士の間隔が拡大する。これにより、吸水阻害となるポリマー粒子間のゲルブロッキングが生じにくくなるとしている。
特許文献2には、繊維集合体及び繊維ウエブからなり、前記繊維ウエブ中に高吸収性ポリマーを分散させた吸収性シートが記載されている。吸収性シート製造時の湿式抄紙工程において、前記高吸収性ポリマーは、湿潤状態の繊維ウエブに散布されると粘着性を帯び、繊維間に固定化される。
特許文献3には、熱融着性繊維と非熱融着性繊維とを含む不織布に高吸収性ポリマーが保持された吸収体が記載されている。該吸収体の製造時に、不織布上に高吸収性ポリマーの粒子を散布して繊維にて囲むようにして保持させる。吸液時に、高吸収性ポリマーを囲む非熱融着性繊維が移動して繊維間距離が変化し、高吸収性ポリマーの膨潤阻害が防止されるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001-46434号公報
【特許文献2】特開平8-229070号公報
【特許文献3】特開2002-159533号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
吸収性ポリマー材を含む吸収体において、該吸収体を含む吸収性物品の使用時の装着性等の観点から、シート形状に薄型化することが行われる。
しかし、一般にシート形状の吸収体では、吸収性ポリマー材の吸液膨潤に伴いシート形状を維持することが難しい。これにより吸収体の型崩れを生ずる可能性もある。型崩れは液吸収量の低下を引き起こす可能性もある。そのため、従来のシート形状の吸収体には液吸収量及びシート強度の点で改善の余地があった。
【0005】
本発明は、上記の点に鑑み、液吸収前は薄くされながら、液吸収時でも液吸収量を低下させることなく、シート強度を担保した吸収体の製造方法及び吸収体に関する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、熱融着性繊維を含む繊維及び吸収性ポリマー材を混合積繊させて積繊物を得る積繊工程、前記積繊物に、前記熱融着性繊維の融点以上の温度で熱処理を施し、熱融着積繊物を得る熱処理工程、及び前記熱融着積繊物に水を含ませ、含水積繊物を得る加水工程、をこの順で行ったあと、前記含水積繊物に対し、加圧を施す加圧工程と、前記熱融着性繊維の融点未満の温度の熱処理を施して乾燥させる乾燥工程とを同時に又は別個に行う、吸収体の製造方法を提供する。
【0007】
また、本発明は、繊維及び吸収性ポリマー材を含む吸収体であって、前記繊維は熱融着性繊維を含み、前記熱融着性繊維同士は交差部に融着点を有し、液吸収前の前記吸収体の質量に対し、前記熱融着性繊維を4質量%以上30質量%以下含み、前記融着点は、前記吸収体の表面から観察した1mm×1mmの平方視野範囲内に、2個以上14個以下含み、前記繊維が前記吸収性ポリマー材内に取り込まれた複合部を有する、吸収体を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の吸収体の製造方法によれば、液吸収前は薄いながら、液吸収時でも液吸収量を低下させることなく、シート強度を担保した吸収体を好適に製造することができる。
本発明の吸収体は、液吸収前は薄いながら、液吸収時でも液吸収量を低下させることなく、シート強度を担保したものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】(A)~(E)は、本発明に係る吸収体の製造方法の好ましい実施形態に含まれる各工程を模式的に示す説明図である。
【
図2】繊維が吸収性ポリマー材内に取り込まれた複合部の一例を模式的に示す平面図である。
【
図3】本実施形態の吸収体の表面から観察した、融着部を含む1mm×1mmの平方視野範囲の一例を示す、図面代用SEM写真である。
【
図4】本実施形態の吸収体の表面から観察した、融着部を含む1.5mm×1.5mmの平方視野範囲の一例を示す、図面代用SEM写真である。
【
図5】本実施形態の吸収体の表面から観察した、複合部を含む1.5mm×1.5mmの平方視野範囲の一例を示す、図面代用SEM写真である。
【
図6】(A)~(F)は、実施例及び比較例1~5それぞれの吸収体試料を撮像した画像を示す図面代用SEM写真である。
【
図7】
図6(A)及び
図6(D)の撮像画像を拡大して示す図面代用SEM写真である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の吸収体の製造方法の好ましい実施形態について、図面を参照しながら説明する。
本実施形態の吸収体の製造方法は、
図1(A)~(E)に示すように下記(I)~(V)の工程(以下、工程(I)~(V)とそれぞれいう)を有する。該製造方法においては、工程(I)~(III)をこの順で行った後、工程(IV)及び(V)を同時に又は別個に行う。別個に行う際、工程(IV)と工程(V)とはこの順で行うことが好ましい。
(I)熱融着性繊維を含む繊維及び吸収性ポリマー材を混合積繊させて積繊物を得る積繊工程。
(II)前記積繊物に、前記熱融着性繊維の融点以上の温度で熱処理を施し、熱融着積繊物を得る熱処理工程。
(III)記熱融着積繊物に水を含ませ、含水積繊物を得る加水工程。
(IV)前記含水積繊物に対し、加圧を施す加圧工程。
(V)前記熱融着性繊維の融点未満の温度の熱処理を施して乾燥させる乾燥工程。
【0011】
工程(I)の積繊工程において、
図1(A)に示すように、熱融着性繊維1Aを含む繊維1及び吸収性ポリマー材2を混合積繊させて積繊物3を得る。この混合積繊の処理は、吸収体の製造において通常用いられる種々の方法によって行うことができる。例えば、所定の積繊領域へと吸引されるエアー内に繊維1と吸収性ポリマー材2とを投入して混合しながら、前記積繊領域にて堆積させることができる。例えば、特開2017-047212号公報や特開2019-088415号公報に記載の、ダクトと積繊凹部をロール周面に複数備えた回転ドラムとを含む装置などを用いて行うことができる。
【0012】
工程(I)の積繊工程において、熱融着性繊維1A同士は融着しておらず、移動が自由にされている。得られた積繊物3において、繊維1と吸収性ポリマー材2とは前述の通りエアー等で混合積繊された状態であり、圧縮のための加圧は加えられていない。そのため、積繊物3は、繊維1及び吸収性ポリマー材2の自重による圧力があっても、繊維間距離が比較的広い状態が維持されて嵩高い状態にある。この状態で、繊維間に吸収性ポリマー材2が挟持される。
【0013】
熱融着性繊維1Aとしては、この種の物品において通常用いられる種々の素材のものを含むことができる。
例えば、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、アクリロニトリル系樹脂、ビニル系樹脂、ビニリデン系樹脂などから選ばれる1又は2以上を含む繊維が挙げられる。
ポリオレフィン系樹脂としてはポリエチレン(以下、PEともいう)、ポリプロピレン、ポリブデン等から選ばれる1又は2以上を含むことができる。
ポリエステル系樹脂としてはポリエチレンテレフタレート(以下、PETともいう)、ポリブチレンテレフタレート等から選ばれる1又は2以上を含むことができる。
ポリアミド系樹脂としてはナイロン等から選ばれる1又は2以上を含むことができる。
ビニル系樹脂としてはポリ塩化ビニル等から選ばれる1又は2以上を含むことができる。
ビニリデン系樹脂としてはポリ塩化ビニリデン等から選ばれる1又は2以上を含むことができる。
これら各種樹脂の変成物を用いることもできる。
【0014】
熱融着性繊維1Aは、単一の樹脂成分からなる単繊維を含んでいてもよく、複数の樹脂成分を含む複合繊維を含んでいてもよい。複合繊維としてサイドバイサイド繊維、芯鞘繊維、偏芯したクリンプを有する芯鞘繊維、分割繊維などから選ばれた1又は2以上を含むことができる。
熱融着性繊維1Aが複合繊維である場合、シート強度を担保する観点から、芯鞘繊維を含むことが好ましい。
熱融着性繊維1Aが単繊維である場合、シート強度を担保する観点から、繊維長は3mm以上が好ましく、5mm以上がより好ましく、10mm以上が更に好ましい。
また、熱融着性繊維1Aが単繊維である場合、シートを柔らかくする観点から、繊維長は60mm以下が好ましく、50mm以下がより好ましく、40mm以下が更に好ましい。
【0015】
繊維1としては、熱融着性繊維1A以外に通常吸収体の構成材料として用いられる種々のものを含むことができる。中でも、セルロース繊維1Bを含むことが好ましい。セルロース繊維1Bを含むことで、後述するように、工程(III)の加水工程から工程(V)の乾燥工程においてセルロース繊維の水素結合が生じて繊維間距離をより短く縮めることが可能となり、得られる吸収体の薄型化をより促進することができる。加えて、吸収体の使用時の液吸収によって、前記水素結合が解除されて厚み回復がなされ、吸収性ポリマー材2の膨潤空間を拡げることができる。これにより、吸収体において、液吸収時の吸収量を低下させることなく高く保持することができる。なお、本明細書において「液吸収」とは、加水工程における吸収のことでは無く、吸収体が製造された後に尿や血液などの対象物を吸収することを意味する。
【0016】
セルロース繊維1Bとしては、この種の物品において通常用いられる種々の素材のものを含むことができる。例えば、木材パルプ、木材パルプ以外の天然繊維、変性パルプ、再生繊維等から選ばれた1又は2以上を含むことができる。
木材パルプとしては、針葉樹晒クラフトパルプ(以下、NBKPともいう)、広葉樹晒クラフトパルプ、針葉樹晒サルファイトパルプ、サーモメカニカルパルプ等から選ばれた1又は2以上を含むことができる。
木材パルプ以外の天然繊維としては、綿パルプや麻パルプ等から選ばれた1又は2以上を含むことができる。
変性パルプとしては、カチオン化パルプ、マーセル化パルプ等から選ばれた1又は2以上を含むことができる。
再生繊維としては、キュプラ、レーヨン等から選ばれた1又は2以上を含むことができる。
【0017】
吸収性ポリマー材2は、典型的にはSAPである。この吸収性ポリマー材2は、架橋表面の内側に液を取り込んで膨潤し、ゲル状になって前記液を内部に保持する性質を有する。例えば、自重の20倍以上の液を吸収・保持できゲル化し得るものが好ましい。
吸収性ポリマー材2としては、吸収体に用いられるものを特に制限なく種々含むことができる。例えば、アクリル酸又はアクリル酸塩を主成分とし、場合によって架橋剤を添加してなる水溶性のエチレン性不飽和モノマーを重合させて得られるヒドロゲル材料を含むことができる。また、ポリエチレンオキサイド、ポリビニルピロリドン、スルホン化ポリスチレン及びポリビニルピリジンの架橋物、デンプン-ポリ(メタ)アクリロニトリルグラフト共重合物のケン化物、デンプン-ポリ(メタ)アクリル酸グラフト共重合物、デンプン-ポリ(メタ)アクリルエステルグラフト共重合物の加水分解物などから選ばれた1又は2以上を含むことができる。
吸収性ポリマー材2の形状は、吸収体に用いられる種々ものを特に制限なく用いることができる。例えば、球状、粒状、繊維状、俵状、塊状などが挙げられる。
【0018】
次に、工程(II)の熱処理工程において、
図1(B)に示すように、積繊物3に、熱融着性繊維1Aの融点以上の温度で熱処理を施す。これにより、熱融着積繊物4を得る。なお、前記「熱融着性繊維1Aの融点」は、熱融着性繊維1Aが複合繊維である場合、融点が低い方の樹脂の融点とする。
【0019】
熱融着積繊物4は、前記熱処理により、熱融着性繊維1A同士の交差部に融着点8を備えたものとなる。融着点8は、工程(II)において、積繊物3の繊維間距離が比較的広い状態のまま、嵩高い繊維網目構造を形成する。そのため、熱融着積繊物4では、融着点8が適度な数で形成され、前記繊維網目構造において繊維間距離の比較的広い状態(嵩高な状態)が固定化される(以下、この融着を「第1結合」という)。なお、熱融着積繊物4には、熱融着性繊維1A同士の交差部における融着点8の他、熱融着性繊維1Aとその他の構成材料や吸収性ポリマー材2との融着部分が生じていてもよい。
ここで言う「熱融着性繊維1A同士の交差部」とは、2本以上の熱融着性繊維1Aにおいて、一方の熱融着性繊維1Aが他方の熱融着性繊維1Aの繊維長に対して横断するようにして交わる部位を意味する。このような交差部に融着点8があることで、網目をできるだけ大きくとることができる。この観点から、各熱融着性繊維1A同士が互いの繊維長に沿って重なる長さが短いことが好ましい。具体的には、繊維長に沿って重なる長さが0.5mm以下であることが好ましい。なお、ここで言う「融着点8」には、後述の複合部6は含まない。
【0020】
工程(II)において、熱融着積繊物4を嵩高な状態で形成する観点から、積繊物3に与える圧力を50Pa以下に抑えることが好ましく、40Pa以下とすることがより好ましく、30Pa以下とすることが更に好ましい。
現実的には、0(ゼロ)Pa以上である。
【0021】
工程(II)において、前記圧力を上記の範囲に好適に抑制する観点から、前記熱処理を熱風によって行うことが好ましい。
前記熱処理を熱風にて行う場合、該熱風の風速は、前記圧力を好適に抑える観点から、2m/秒以下が好ましく、1.4m/秒以下がより好ましく、1m/秒以下が更に好ましい。
また、前記熱風の風速は、現実的には、0m/秒以上である。
【0022】
上記の「熱融着性繊維1Aの融点以上の温度」での熱処理について、熱融着性繊維1Aの融点(T1)と熱処理の温度(T2)との差(T2-T1)は、融着点8をより良好に形成する観点から、10℃以上が好ましく、20℃以上がより好ましく、30℃以上が更に好ましい。
また、前記差(T2-T1)は、繊維の固化防止や熱融着物4の風合いの維持の観点から、80℃以下が好ましく、70℃以下がより好ましく、60℃以下が更に好ましい。
【0023】
工程(III)の加水工程において、
図1(C)に示すように、熱融着積繊物4に水を含ませ、含水積繊物5を得る。この工程では、熱融着積繊物4に対してできるだけ均等に水を含ませる種々の方法を用いることができ、例えば、スプレーを用いて水を吹き付ける方法が挙げられる。この工程で用いる水の温度は、0~100℃が好ましい。
これにより、熱融着積繊物4に含まれる吸収性ポリマー材2が液吸収し、膨潤して粘着性が生じる。また、繊維1としてセルロース繊維1Bが含まれている場合、セルロース繊維1Bも液吸収する。
【0024】
工程(III)において、熱融着積繊物4に含ませる水の量は、吸収性ポリマー材と水を効率よく接触させたり、その後の加圧工程により吸収体を効率よく薄型化させたりする観点から、熱融着積繊物4の質量の100%以上が好ましく、130%以上がより好ましく、160%以上が更に好ましい。
また、熱融着積繊物4に含ませる水の量は、吸収体の固化防止、並びにその後の乾燥工程の負荷を低減する観点から、熱融着積繊物4の質量の500%以下が好ましく、400%以下がより好ましく、300%以下が更に好ましい。
【0025】
工程(IV)の加圧工程において、
図1(D)に示すように、含水積繊物5に対し加圧を施す。これにより、熱融着性繊維1Aからなる繊維網目構造の網目空間(繊維間距離)が圧縮されて、含水積繊物5の厚みが圧縮される。更にこれと同時に、膨潤して粘性流動性を備えた吸収性ポリマー材2の内部に繊維1が取り込まれる。これにより、繊維1と吸収性ポリマー材2とが一体化されるとともに、前述の網目空間が更に押し縮められる。
なお、繊維1に熱融着性繊維1Aが含まれる場合、膨潤した吸収性ポリマー材2の内部には、熱融着性繊維1Aが取り込まれて、網目空間の圧縮効果が高い。繊維1に熱融着性繊維1Aとセルロース繊維1Bとが含まれる場合、これら両者が膨潤した吸収性ポリマー材2の内部に取り込まれる。これにより、熱融着性繊維1Aとセルロース繊維1Bの絡まり部分でも圧縮が生じ、前述の網目空間が更に押し縮められる。そればかりか、セルロール繊維1Bは含水積繊物5の中で液吸収して湿潤状態となり、上記の加圧で水素結合を形成することとなる。
【0026】
工程(IV)の加圧工程における圧力は、吸収性ポリマー材2の内部への繊維1の取り込みをより効果的に行う観点から、16kPa以上が好ましく、80kPa以上がより好ましく、160kPa以上が更に好ましい。
また、前記圧力は、吸収体の固化防止、並びに柔軟性の維持の観点から、500kPa以下が好ましく、400kPa以下がより好ましく、300kPa以下が更に好ましい。
工程(IV)の加圧工程は、工程(V)の乾燥工程と別個に行う場合、意図して熱を加えることはせず、室温環境で行うことが好ましい。熱を加える場合でも、熱融着性繊維1Aの融点未満の温度下であることが好ましい。
【0027】
工程(V)の乾燥工程において、
図1(E)に示すように、前述の加圧した含水積繊物5に対して、熱融着性繊維1Aの融点未満の温度の熱処理を施して乾燥させる。その際、膨潤した吸収性ポリマー材2は、繊維1(熱融着性繊維1A、又は、熱融着性繊維1A及びセルロース繊維1B)を内部に取り込んだまま脱水縮小して複合部6を形成する。例えば、
図2に示すように、繊維1の繊維長の一部1M(点線部分)が吸収性ポリマー材2の内部に閉じ込められ、前記繊維長の残りの部分1N(実線部分)が吸収性ポリマー材2の外に延出した状態で固定される。なお、
図2においては、繊維1として熱融着性繊維1Aのみを示したが、これに限らず、繊維1として熱融着性繊維1Aとセルロース繊維1Bの両方を含んでもよい。後者の場合、複合部6としては、熱融着性繊維1Aが吸収性ポリマー材2の内部に取り込まれたものと、セルロース繊維1Bが吸収性ポリマー材2の内部に取り込まれたものの両方を含んでもよい。
【0028】
上記の吸収性ポリマー材2の脱水縮小により、繊維1と吸収性ポリマー材2との間にアンカー効果が生じ、該アンカー効果によって含水積繊物5の潰された状態が固定化されて(以下、これを「第2結合」という)、薄型のシート状の吸収体7となる。また、繊維1にセルロース繊維1Bが含まれる場合、前述の加圧によるセルロース繊維1Bの水素結合が生じる。具体的には、セルロース繊維1B、1B同士の水素結合、複合部6におけるセルロース繊維1Bと吸収性ポリマー材2との水素結合が生じる。この水素結合の作用により、吸収体7の薄型状態がより強固に固定化される。
【0029】
工程(V)において、熱処理は乾燥処理として通常用いられる種々の方法によって行うことができる。例えば、電気乾燥炉などを用いることができる。
工程(V)において、熱処理の時間は、上記の乾燥をより良好に行う観点から、300秒以上が好ましく、600秒以上がより好ましく、900秒以上が更に好ましい。
また、熱処理の時間は、現実的には、1500秒以下である。
【0030】
工程(V)における「熱融着性繊維1Aの融点未満の温度の熱処理」について、熱融着性繊維1Aの融点(T1)と熱処理の温度(T3)との差(T1-T3)は、上記の乾燥をより良好に行う観点から、5℃以上が好ましく、10℃以上がより好ましく、20℃以上が更に好ましい。
また、前記差(T1-T3)は、製造時に必要とされる熱エネルギを削減したり、吸収性ポリマー材2やその他の構成成分への熱影響を低減したりする観点から、200℃以下が好ましく、150℃以下がより好ましく、100℃以下が更に好ましい。
【0031】
前述の工程(I)~(V)の工程を経て得られる吸収体7は、液吸収前は安定的に薄型化されている。一方、液吸収時には、吸収性ポリマー材2の吸液及び膨潤に伴い、吸収体7における前述のアンカー効果や水素結合が解除されて、嵩高い繊維網目構造(前述の第1結合の状態)が復活し、繊維間距離が広がる。すなわち、吸収体6の厚みが前述の熱融着積繊物4の厚み又はそれ以上の厚みまで復活する。これにより、吸収体7内に吸収性ポリマー材2の膨潤する空間が液吸収に応じて自動的に確保され、吸収性ポリマー材2のゲルブロッキングによる吸収阻害の発生が効果的に抑制され得る。その結果、吸収体6は、液吸収時でも液吸収量を低下させることなく十分に吸収性能を発揮することができる(このため、吸収性ポリマー材2の膨潤で、吸収体7は前記第1結合の状態よりも厚みが増す場合がある)。同時に、熱融着性繊維1A同士が熱融着した繊維網目構造は、液吸収時の液体によって解除されることなく保持されやすい。この熱融着による繊維網目構造が、液吸収時でも吸収体7のシート強度を担保するように作用する。その結果、吸収性ポリマー材2の液吸収時の膨潤圧力があっても、液吸収時の吸収体7のシート形状が保持され得る。
【0032】
以上のとおり、本実施形態の吸収体の製造方法によれば、液吸収前は薄くされながら、液吸収時でも液吸収量を低下させることなく、シート強度を担保した吸収体7を好適に製造することができる。
【0033】
本実施形態の吸収体の製造方法において、前述の繊維網目構造をより良好に形成する観点から、工程(I)にて得られる積繊物3の質量に対して、熱融着性繊維1Aは、4質量%以上含ませることが好ましく、6質量%以上含ませることがより好ましく、8質量%以上含ませることが更に好ましい。
また、吸収体の固化防止の観点から、積繊物3の質量に対して、熱融着性繊維1Aは、30質量%以下含ませることが好ましく、25質量%以下含ませることがより好ましく、20質量%以下含ませることが更に好ましい。
【0034】
繊維1が熱融着性繊維1Aとセルロース繊維1Bとを含む場合、積繊物3の繊維の総質量(M1)に占める熱融着性繊維1Aの含有質量(M2)の割合(M2/M1)は、熱融着性繊維1Aによる繊維網目構造の形成と同時に、吸収体7の液吸収性を高め、かつ、セルロース繊維1Bの水素結合による吸収体7の薄型化を高める観点から、25質量%以上が好ましく、35質量%以上がより好ましく、45質量%以上が更に好ましい。
また、前記比(M2/M1)は、熱融着性繊維1Aによる繊維網目構造をより良好に形成する観点から、75質量%以下が好ましく、60質量%以下がより好ましく、50質量%以下が更に好ましい。
【0035】
本実施形態の吸収体の製造方法において、工程(II)にて得られる熱融着積繊物4の362.8Pa下における厚みは、工程(V)にて得られる吸収体7の362.8Pa下における厚みの110%以上であることが好ましく、120%以上であることがより好ましく、130以上であることが更に好ましい。これにより、吸液後の厚み回復が期待できる。
また、熱融着積繊物4の362.8Pa下における厚みは、吸収体7の362.8Pa下における厚みの400%以下であることが好ましく、300%以下であることがより好ましく、200%以下であることが更に好ましい。これにより、吸収体7の薄型化が期待できる。
なお、前記「362.8Pa」の荷重は、株式会社テクロック製「定圧厚み測定器 型式PG-11」を用いた測定を想定したもので、JIS K6732に基づいている。
【0036】
本実施形態の吸収体の製造方法において、工程(II)にて得られる熱融着積繊物4に含まれる繊維1全体の密度は、10kg/m3以上が好ましく、15kg/m3以上がより好ましく、20kg/m3以上が更に好ましい。これにより、吸液後もシート形状を維持しやすい。
また、前記密度は、70kg/m3以下が好ましく、55kg/m3以下がより好ましく、40kg/m3以下が更に好ましい。これにより、吸収体7の更なる薄型化が期待できる。
前記密度は、熱融着積繊物4に含まれる繊維1全体の坪量を積繊物3の362.8Pa下における厚みで除して算出される。
【0037】
次に、本発明の吸収体の好ましい実施形態について、以下に説明する。
本実施形態の吸収体7は、前述の各工程を経て得られるものとして、下記の構造を有する。
すなわち、本実施形態の吸収体7は、繊維1及び吸収性ポリマー材2を含む。繊維1は熱融着性繊維1Aを含み、熱融着性繊維1A、1A同士は交差部に融着点8を有する。ここで言う交差部は、前述の定義の通りである。
更に、本実施形態の吸収体7は、液吸収前の吸収体7の質量に対し、熱融着性繊維1Aを4質量%以上30質量%以下含み、融着点8は、吸収体7の表面から観察した1mm×1mmの平方視野範囲内に、2個以上14個以下含む。
加えて、本実施形態の吸収体7は、繊維1が吸収性ポリマー材2内に取り込まれた複合部6を有する。
なお、ここで言う「液吸収前」とは吸収体7の使用前の状態ことを言いい、吸収体7がシート状に圧縮された状態(繊維網目構造の圧縮された状態)のことを意味する。また、後述の[吸液手段]を実施する前の状態を意味する(以下、同様)。
【0038】
本実施形態の吸収体7において、繊維1は、更にセルロース繊維1Bを含むことが、液吸収前の薄型化、液吸収時の液吸収量の向上及びシート強度をより高める観点から好ましい。
前述の水素結合をより高める観点から、液吸収前の吸収体7の質量に対し、セルロース繊維1Bを2質量%以上含むことが好ましく、3.5質量%以上含むことがより好ましく、5質量%以上含むことが更に好ましい。
また、生じる水素結合を制御して柔らかさを維持する観点から、液吸収前の吸収体7の質量に対し、セルロース繊維1Bを30質量%以下含むことが好ましく、25質量%以下含むことがより好ましく、20質量%以下含むことが更に好ましい。
【0039】
本実施形態の吸収体7は、前述の製造方法において示したとおり、熱融着性繊維1A及びその融着点8並びに複合部6を含むことにより、液吸収前は薄くされながら、液吸収時でも液吸収量を低下させることなく、シート強度を担保したものとなる。
特に、熱融着性繊維1Aの含有割合を上記の下限以上とすることにより、液吸収時に吸収体7がへたり難くシート強度が高められ、融着点8をより多く含むことができる。
また、熱融着性繊維1Aの融着点8の個数を上記の下限値以上とすることにより、融着点8による繊維網目構造がより確かなものとなって液吸収時の復元性を高める。
加えて、熱融着性繊維1Aの含有割合を上記の上限以下とすることにより、かさばらずに、液吸収前の吸収体7が硬くなりすぎるのを抑制し、柔軟性を維持することができる。
また、熱融着性繊維1Aの融着点8の個数を上記の上限値以下とすることにより、液吸収時に復元される繊維1の網目空間(繊維間距離)を大きくすることができる。すなわち、液吸収時の吸収体7の厚み増加性を高めることができる。
更に、複合部6を含むことにより、液吸収前の繊維間距離を縮小した状態を固定化して吸収体7の薄型化をより確実にする。液吸収時には、吸収性ポリマー材2が膨潤し始めるタイミングで複合部6における繊維1の吸収性ポリマー材2内への入り込みが解除され、繊維網目構造の嵩高な網目空間が迅速に復元される(これに伴い吸収体7の厚みが増加する)。また、吸収性ポリマー材2の液吸収による膨潤圧力が上記の復元を更に促進して、上記の網目空間をより拡げやすい。これにより、吸収性ポリマー材2が液吸収し膨潤するための空間が確保されて、吸収性ポリマー材2の吸収性能が効果的に発揮されやすくなる。
加えて、吸収体7は繊維1として熱融着性繊維1Aと共にセルロース繊維1Bを含むと、液吸収前にはセルロース繊維1Bの水素結合が生じて繊維間距離が更に縮小され、吸収体7の薄型化がより確かのものとなる。液吸収時には、前記水素結結合が複合部6と共に解除されて、繊維間距離の拡大がより迅速に生じ、吸収性ポリマー材2の吸収性能がより効果的に発揮されやすくなる。
【0040】
(吸収体7における融着点8の個数の測定方法;1mm×1mmの平方視野範囲の場合)
吸収体7における融着点8の個数は、具体的には下記の方法により測定することができる。
すなわち、吸収体7の一方の面の表面において、1mm×1mmのエリアでかつ、熱融着性繊維1Aの融着が確認できる範囲で撮像を行う。なお、熱可塑性繊維1Aが融着しているか否かは、走査電子顕微鏡(SEM)により撮像し、その撮像画像により判別することができる。
得た撮像画像に対し1mm×1mmの平行視野範囲を特定する枠を付し、融着部を確認しやすい倍率適宜拡大する。
これにより、交差部における熱可塑性繊維1Aが融着している点を目視にてカウントする。例えば
図3に示すように、撮像画像上に付した1mm×1mmの平方視野の枠K1内において、前述に定義した交差部における熱融着性繊維1Aの融着点8(例えば
図3において円にて示さされる部分)を目視にてカウントする。
【0041】
吸収体7は、高いシート強度を有するものとして、次の引張強度を有することが好ましい。
すなわち、吸収体7に対して下記[試料準備手順]及び[吸液手順]を実施し、下記[測定手段I]によって測定される引張強度が1.0N/25mm以上10.0N/25mm以下であることが好ましく、1.5N/25mm以上がより好ましく、2.0N/25mm以上が更に好ましく、また、8.0N/25mm以下がより好ましく、5.0N/25mm以下が更に好ましい。引張強度が前記下限以上であることで吸収体7のシート強度がより強固なものとなり、引張強度が前記上限以下であることで吸収体7の柔らかさをより維持しやすくする。
【0042】
[試料準備手順]
吸収性物品から、評価対象となる吸収体を採取する。ここで吸収体は、繊維及び吸収性ポリマー材を含む部材を意味する。一般的に、吸収性物品において吸収体は、紙や不織布等のシート材料で覆われていることが多い。本明細書において吸収体とは、これらのシート材料は含まない。ここでは吸収体のみを採取する。シート材料がホットメルト接着剤で吸収体に接合されている場合には、コールドスプレーでホットメルト接着剤を固化させた後、吸収体をシート材料から丁寧に剥がす。以下、採取した吸収体を評価サンプルと呼ぶ。
[吸液手順]
(1)評価サンプルが十分に格納できる容器に、脱イオン水を評価サンプルが十分に浸漬できる量注入する。
(2)脱イオン水を注入した容器に、前記評価サンプルを浸漬させる。その際、評価サンプルが吸収し過ぎて脱イオン水がなくならないか注意し、なくなるようであれば脱イオン水を追加する。
(3)10分浸漬後に、評価サンプルを回収する。
【0043】
[測定手段I]
(1)吸液させた評価サンプルを25mm幅で、引張試験機のチャック間40mmに設置できるようにカットする。
(2)株式会社島津製作所製「二軸引張試験システム AG-Xplus」(商品名)を用いて、20mm/分の速度で、評価サンプルの破断する最大荷重値を測定し、その値を引張強度とする。
【0044】
吸収体7の吸液前後の厚み変化について、吸収体7の362.8Pa荷重時の厚みの、前記[吸液手順]を実施する前後の差が8mm以上30mm以下であることが好ましい。
吸収体7の吸液前後での厚みの増大が好適に生じることで、繊維間距離の拡大に伴う吸収性ポリマー材2の吸液膨潤のための空間をより大きくして吸収量をより大きく保持することができる。すなわち、液吸収過程での液吸収量の低下をより効果的に抑制することができる。この観点から、吸収体7の362.8Pa荷重時の厚みの、前記[吸液手順]を実施する前後の差は、10mm以上がより好ましく、15mm以上が更に好ましい。
また、上記の吸収体7の362.8Pa荷重時の厚みの、前記[吸液手順]を実施する前後の差は、25mm以下がより好ましく、20mm以下が更に好ましい。これにより、吸収性物品として着用した場合において、吸収体部分の違和感が少ない。
【0045】
液吸収前の吸収体7の厚みは、シート状に薄型化されたものとして、0.3mm以上2.5mm以下が好ましく、2.0mm以下がより好ましく、1.5mm以下が更に好ましい。
【0046】
(吸収体7の吸液前後の厚みの差の測定方法)
(1)株式会社テクロック製「定圧厚み測定器 型式PG-11」を用いて、前記[試料準備手順]の手順により採取した吸液前の評価サンプルの、362.8Pa荷重時の厚みを測定する。この時の厚みをH1とする。
(2)前記[吸液手順]により、評価サンプルに吸液させる。
(3)前記(1)の方法にて、吸液後の評価サンプルの362.8Pa荷重時の厚みを測定する。この時の厚みをH2とする。
(4)吸液前後の厚み差をH2-H1とする。
【0047】
吸収体7において、液吸収時のシート強度を高め、熱融着性繊維1Aの融着点8による繊維網目構造をより強固にする観点から、液吸収前の吸収体7の質量に対し、熱融着性繊維1Aを6質量%以上含むことがより好ましく、8質量%以上含むことが更に好ましい。
また、液吸収前の繊維網目空間の圧縮状態をより良好に形成する観点から、液吸収前の吸収体7の質量に対し、熱融着性繊維1Aを25質量%以下含むことがより好ましく、20質量%以下含むことが更に好ましい。
【0048】
吸収体7の繊維の総質量に占める熱融着性繊維1Aの含有質量の割合は、積繊物3の繊維の総質量(M1)に占める熱融着性繊維1Aの含有質量(M2)の割合(M2/M1)と同様であることが好ましい。
【0049】
(液吸収前の吸収体7の質量に対する熱融着性繊維1A及びセルロース繊維1Bそれぞれの質量割合、熱融着性繊維1Aの含有質量に対するセルロース繊維1Bの含有質量の比の測定方法)
(1)吸収体を、吸収体成分を溶解しない有機溶媒、もしくは吸収性ポリマー材が吸水膨張を抑制することができる高濃度塩溶液、もしくはpHが2.5以下の酸性溶液中で粉砕・分解する。
(2)吸収性ポリマー材の比重差により分離する。もしくは大量の水と混合し、吸水性ポリマーを膨潤させて、濾過分離により熱融着性繊維とセルロースを分離する。
(3)分離した熱融着性繊維とセルロースの乾燥質量を求める。
(4)セルロース繊維を溶解できるイオン液体、銅アンモニア液体、二硫化炭素と水酸化ナトリウムの混合液体等から、熱融着性繊維を溶解しない液体を選択し、セルロースを溶解除去する。
(5)残留した熱融着性繊維を洗浄・乾燥し、乾燥質量を測定し、前記(3)の質量と比較・計算することで、M2/M1を算出する。
【0050】
吸収体7に含まれる熱融着性繊維1Aは前述のとおり複合繊維であってもよく、単繊維であってもよい。熱融着性繊維1Aが複合繊維である場合、前述の通り、芯鞘繊維であることが好ましい。熱融着性繊維1Aが単繊維である場合、繊維長が前述の範囲にあることが好ましい。
【0051】
吸収体7において、融着点8は、吸収体7の表面から観察した1mm×1mmの平方視野範囲に、2個以上含むことが好ましく、4個以上含むことがより好ましく、6個以上含むことが更に好ましい。これにより、融着点8による繊維網目構造がより確かなものとなり、液吸収時のシート強度をより高く保つことができる。
また、融着点8は、吸収体7の表面から観察した1mm×1mmの平方視野範囲内に、14個以下含むことが好ましく、12個以下含むことがより好ましく、10個以下含むことが更に好ましい。これにより、液吸収時に復元される繊維網目空間(繊維間距離)をより大きくすることができる。すなわち、液吸収時の吸収体7の厚みの増加性をより高めることができる。
なお、上記個数は、前述の(吸収体7における融着点8の個数の測定方法;1mm×1mmの平方視野範囲の場合)に基づき測定される。
【0052】
更に、融着点8の個数について、吸収体7の表面から観察した1.5mm×1.5mmの平方視野範囲内において下記の範囲にあることが好ましい。「1.5mm×1.5mmの平方視野範囲」における「1.5mm×1.5mm」の大きさは、より大きな範囲で確実により平均的な融着点の数を数えることができることを意味する。該「1.5mm×1.5mmの平方視野範囲」を前述の「1mm×1mmの平方視野範囲」と共に観察することにより、融着点の数をより精確に把握することができる。なお、この個数は、前述の(吸収体7における融着点8の個数の測定方法;1mm×1mmの平方視野範囲の場合)を準用して測定することができる。例えば
図4に示すように、撮像画像上に付した1.5mm×1.5mmの平方視野の枠K2内において、前述に定義した交差部における熱融着性繊維1Aの融着点8(例えば
図4において円にて示さされる部分)を目視にてカウントする。
【0053】
融着点8は、吸収体7の表面から観察した1.5mm×1.5mmの平方視野範囲内に、5個以上含むことが好ましく、9個以上含むことがより好ましく、13個以上含むことが更に好ましい。これにより、融着点8による繊維網目構造がより確かなものとなり、液吸収時のシート強度をより高く保つことができる。
また、融着点8は、吸収体7の表面から観察した1.5mm×1.5mmの平方視野範囲内に、32個以下含むことが好ましく、27個以下含むことがより好ましく、23個以下含むことが更に好ましい。これにより、液吸収時に復元される繊維網目空間(繊維間距離)をより大きくすることができる。すなわち、液吸収時の吸収体7の厚みの増加性をより高めることができる。
【0054】
加えて、複合部6は、吸収体7の表面から観察した1.5mm×1.5mmの平方視野範囲内に、20箇所以上配されていることが望ましく、22箇所以上配されていることがより好ましく、24箇所以上配されていることが更に好ましい。これにより、液吸収前の繊維間距離の縮小による吸収体7の薄型化と、液吸収時の繊維網目構造の迅速な復元とをより確実により良好に発現させることができる。
また、複合部6は、吸収体7の表面から観察した1.5mm×1.5mmの平方視野範囲内に、45箇所以下配されていることが好ましく、40箇所以下配されていることがより好ましく、35箇所以下配されていることが更に好ましい。これにより、吸収体の柔らかさをより維持しやすくする。
【0055】
(複合部6の配される個所の測定方法)
複合部6の配される個所は、具体的には下記の方法により測定することができる。
すなわち、吸収体7の一方の面の表面において、1.5mm×1.5mmのエリアでかつ、複数個の吸収性ポリマー材2が収まるようにSEMにより撮像を行う。
得た撮像画像に対し1.5mm×1.5mmの平行視野範囲を特定する枠K2を付し、複合部を確認しやすい倍率に適宜拡大する。
これにより、繊維1が吸収性ポリマー材2内に取り込まれた複合材6を目視にてカウントする。複合部6であるか否かは、吸収性ポリマー材2と繊維1との界面において繊維1の端部が吸収性ポリマー材に取り込まれていることが観察されることにより判別することができる。また、1個の吸収性ポリマー材2内に複数本の繊維1が取り込まれている場合、複数個所としてカウントする。
【0056】
吸収体7の吸収性能をより高め、かつ、前述の複合部6の個数をより多くする観点から、液吸収前の吸収体7の質量に対し、吸収性ポリマー材2を50質量%以上含むことが好ましく、60質量%以上含むことがより好ましく、70質量%以上含むことが更に好ましい。
また、吸収性ポリマー材2の脱落を防止する観点から、液吸収前の吸収体7の質量に対し、吸収性ポリマー材2を95質量%以下含むことが好ましい。
【0057】
液吸収前の吸収体7を下記[測定手段II]によって測定して得られる、吸収性ポリマー材2の脱落率が0%以上2%以下であることが好ましく、1%以下であることがより好ましく、0.5%以下であることが更に好ましい。これにより、液吸収前の、すなわち使用前の吸収体7において、吸収性ポリマー材2の脱落を抑えて、使用時の予定された吸収性能を十分に発揮させることができる。
【0058】
[測定手段II]
(1)[試料準備手順]に基づいて評価サンプルを得る。
(2)評価サンプルを、幅50mm×長さ60mmにカットする。評価サンプルに含まれる吸収性ポリマーは湿気を吸うことにより、質量の増加がしやすい。精確に脱落率を測定するために、評価サンプル採取後は、株式会社生産日本社製ユニパック(商品名)にいれて管理する。
(3)下記の手順により、吸収性ポリマー材の脱落率を測定する。
(i)評価サンプルをユニパックから取り出し、質量を測定する。この時の質量をW1とする。
(ii)評価サンプルを再びユニパックに入れて、ヴァーダー・サイエンティフィック株式会社製「ふるい振とう機AS200」に、評価サンプルが入ったユニパックを固定して、振幅1mm、1分間振とうを行う。
(iii)振とう終了後、再び評価サンプルをユニパックから取り出し、質量を測定する。この時の重量をW2とする。
(iv)(W1-W2)/W1×100で計算された値を吸収性ポリマー材の脱落率とする。
【0059】
本発明の吸収体は、種々の分野に適用できる。例えば生理用ナプキン、パンティライナー、使い捨ておむつ、失禁パッドなどの身体から排出される液の吸収に用いられる吸収性物品の液保持部として好適に用いられる。
【0060】
本発明の吸収体を含む吸収性物品は、典型的には、前記吸収体を肌側の表面シートと非肌側の裏面シートとで挟持して構成される。吸収性物品の構成部材には、当該技術分野において通常用いられている材料を特に制限無く用いることができる。例えば、表面シートとしては、液透過性のある肌触りの柔らかいものを用いることができ、例えば、エアースルー不織布等の各種の不織布などが挙げられる。また、表面シートは、複数の不織布からなるものでもよく、不織布と他の素材との組み合わせからなるものであってもよい。裏面シートとしては、熱可塑性樹脂のフィルムや、該フィルムと不織布とのラミネート等の液不透過性ないし撥水性のシートを用いることができる。裏面シートは水蒸気透過性を有していてもよい。吸収性物品は更に、該吸収性物品の具体的な用途に応じた各種部材を具備していてもよい。例えば吸収性物品を使い捨ておむつや生理用ナプキンに適用する場合には、表面シート上の左右両側部に一対又は二対以上の立体ガードを配置することができる。
【0061】
上述した実施形態に関し、本発明はさらに以下の吸収体の製造方法、吸収体及び該吸収体を含む吸収性物品を開示する。
【0062】
<1>
熱融着性繊維を含む繊維及び吸収性ポリマー材を混合積繊させて積繊物を得る積繊工程、
前記積繊物に、前記熱融着性繊維の融点以上の温度で熱処理を施し、熱融着積繊物を得る熱処理工程、及び
前記熱融着積繊物に水を含ませ、含水積繊物を得る加水工程、をこの順で行ったあと、
前記含水積繊物に対し、加圧を施す加圧工程と、前記熱融着性繊維の融点未満の温度の熱処理を施して乾燥させる乾燥工程とを同時に又は別個に行う、
吸収体の製造方法。
【0063】
<2>
前記繊維はセルロース繊維を含む、前記<1>に記載の吸収体の製造方法。
<3>
前記熱処理工程は熱風によって行う、前記<1>又は<2>に記載の吸収体の製造方法。
【0064】
<4>
前記熱処理工程において、前記積繊物に与える圧力を0(ゼロ)Pa以上50Pa以下とする、前記<1>~<3>のいずれか1に記載の吸収体の製造方法。
<5>
前記積繊物の質量に対し、前記熱融着性繊維を4質量%以上30質量%以下含ませ、好ましくは6質量%以上25質量%以下、より好ましくは8質量%以上20質量%以下含ませる、前記<1>~<4>のいずれか1に記載の吸収体の製造方法。
<6>
前記加水工程において前記熱融着積繊物に含ませる水の量は、前記熱融着積繊物の質量の100%以上500%以下であり、好ましくは130%以上400%以下、より好ましくは160%以上300%以下である、前記<1>~<5>のいずれか1に記載の吸収体の製造方法。
<7>
前記熱融着積繊物の362.8Pa下における厚みは、前記吸収体の362.8Pa下における厚みの110%以上400%以下であり、好ましくは120%以上300%以下、より好ましくは130以上200%以下である、前記<1>~<6>のいずれか1に記載の吸収体の製造方法。
<8>
前記加圧工程における圧力は16kPa以上500kPa以下、好ましくは80kPa以上400kPa以下、より好ましくは160kPa以上300kPa以下とする、前記<1>~<7>のいずれか1に記載の吸収体の製造方法。
<9>
前記熱融着積繊物に含まれる前記繊維全体の密度は、10kg/m3以上70kg/m3以下、好ましくは15kg/m3以上55kg/m3以下、より好ましくは20kg/m3以上40kg/m3以下とする、前記<1>~<8>のいずれか1に記載の吸収体の製造方法。
【0065】
<10>
前記<1>~<9>のいずれか1に記載の吸収体の製造方法で得られた吸収体。
【0066】
<11>
繊維及び吸収性ポリマー材を含む吸収体であって、
前記繊維は熱融着性繊維を含み、前記熱融着性繊維同士は交差部に融着点を有し、
液吸収前の前記吸収体の質量に対し、前記熱融着性繊維を4質量%以上30質量%以下含み、
前記融着点は、前記吸収体の表面から観察した1mm×1mmの平方視野範囲内に、2個以上14個以下含み、
前記繊維が前記吸収性ポリマー材内に取り込まれた複合部を有する、吸収体。
【0067】
<12>
前記吸収体に対して下記[試料準備手順]及び[吸液手順]を実施し、下記[測定手段I]によって測定した引張強度が1.0N/25mm以上10.0N/25mm以下であり、好ましくは1.5N/25mm以上8.0N/25mm以下、より好ましくは2.0N/25mm以上5.0N/25mm以下である、前記<10>又は<11>に記載の吸収体。
[試料準備手順]
吸収性物品から、評価対象となる吸収体を採取する。シート材料がホットメルト接着剤で吸収体に接合されている場合には、コールドスプレーでホットメルト接着剤を固化させた後、吸収体をシート材料から丁寧に剥がす。以下、採取した吸収体を評価サンプルと呼ぶ。
[吸液手順]
(1)評価サンプルが十分に格納できる容器に、脱イオン水を評価サンプルが十分に浸漬できる量注入する。
(2)脱イオン水を注入した容器に、前記評価サンプルを10分浸漬させる。その際、評価サンプルが吸収し過ぎて脱イオン水がなくならないか注意し、なくなるようであれば脱イオン水を追加する。
(3)10分浸漬後に、評価サンプルを回収する。
[測定手段I]
(1)吸液させた評価サンプルを25mm幅で、引張試験機のチャック間40mmに設置できるようにカットする。
(2)株式会社島津製作所製「二軸引張試験システム AG-Xplus」(商品名)を用いて、20mm/分の速度で、評価サンプルの破断する最大荷重値を測定し、その値を引張強度とする。
<13>
前記吸収体の362.8Pa荷重時の厚みの、前記[吸液手順]を実施する前後の差が8mm以上30mm以下である、前記<10>~<12>のいずれか1に記載の吸収体。
【0068】
<14>
前記繊維はセルロース繊維を含む、前記<10>~<13>のいずれか1に記載の吸収体。
【0069】
<15>
液吸収前の前記吸収体の質量に対し、前記セルロース繊維を2質量%以上、好ましくは3.5質量%以上、より好ましくは5質量%以上含む、前記<14>に記載の吸収体。
<16>
液吸収前の前記吸収体の質量に対し、前記セルロース繊維を30質量%以下、好ましくは25質量%以下、より好ましくは20質量%以下含む、前記<14>又は<15>に記載の吸収体。
<17>
液吸収前の前記吸収体の質量に対し、前記熱融着性繊維を4質量%以上、好ましくは6質量%以上、より好ましくは8質量%以上含む、前記<10>~<16>のいずれか1に記載の吸収体。
<18>
液吸収前の前記吸収体の質量に対し、前記熱融着性繊維を30質量%以下、好ましくは25質量%以下、より好ましくは20質量%以下含む、前記<10>~<17>のいずれか1に記載の吸収体。
<19>
前記熱融着性繊維が複合繊維であり、好ましくは芯鞘繊維である、前記<10>~<18>のいずれか1に記載の吸収体。
<20>
前記熱融着性繊維が単繊維であり、好ましくは繊維長が3mm以上60mm以下である、前記<10>~<19>のいずれか1に記載の吸収体。
<21>
前記融着点は、前記吸収体の表面から観察した1mm×1mmの平方視野範囲内に、2個以上、好ましくは4個以上、より好ましくは6個以上含む、前記<11>~<20>のいずれか1に記載の吸収体。
<22>
前記融着点は、前記吸収体の表面から観察した1mm×1mmの平方視野範囲内に、14個以下、好ましくは12個以下、より好ましくは10個以下含む、前記<11>~<21>のいずれか1に記載の吸収体。
【0070】
<23>
前記融着点は、前記吸収体の表面から観察した1.5mm×1.5mmの平方視野範囲内に、5個以上32個以下含む、前記<11>~<22>のいずれか1に記載の吸収体。
【0071】
<24>
前記融着点は、前記吸収体の表面から観察した1.5mm×1.5mmの平方視野範囲内に、9個以上、好ましくは13個以上含む、前記<23>に記載の吸収体。
<25>
前記融着点は、前記吸収体の表面から観察した1.5mm×1.5mmの平方視野範囲内に、27個以下、好ましくは23個以下含む、前記<23>又は<24>に記載の吸収体。
【0072】
<26>
前記複合部は、前記吸収体の表面から観察した1.5mm×1.5mmの平方視野範囲内に、20箇所以上45箇所以下配されている、前記<11>~<25>のいずれか1に記載の吸収体。
【0073】
<27>
前記複合部は、前記吸収体の表面から観察した1.5mm×1.5mmの平方視野範囲内に、22箇所以上、好ましくは24箇所以上配されている、前記<26>に記載の吸収体。
<28>
前記複合部は、前記吸収体の表面から観察した1.5mm×1.5mmの平方視野範囲内に、40箇所以下、好ましくは35箇所以下配されている、前記<26>又は<27>に記載の吸収体。
<29>
液吸収前の前記吸収体の質量に対し、前記吸収性ポリマー材を50質量%以上95質量%以下、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上含む、前記<10>~<28>のいずれか1に記載の吸収体。
<30>
液吸収前の前記吸収体を下記[測定手段II]によって測定した、前記吸収性ポリマー材の脱落率が0%以上2%以下、好ましくは1%以下、より好ましくは0.5%以下である、前記<10>~<29>のいずれか1に記載の吸収体。
[測定手段II]
(1)[試料準備手順]に基づいて評価サンプルを得る。
(2)評価サンプルを、幅50mm×長さ60mmにカットする。評価サンプルに含まれる吸収性ポリマーは湿気を吸うことにより、質量の増加がしやすい。精確に脱落率を測定するために、評価サンプル採取後は、株式会社生産日本社製ユニパック(商品名)にいれて管理する。
(3)下記の手順により、吸収性ポリマー材の脱落率を測定する。
(i)評価サンプルをユニパックから取り出し、質量を測定する。この時の質量をW1とする。
(ii)評価サンプルを再びユニパックに入れて、ヴァーダー・サイエンティフィック株式会社製「ふるい振とう機AS200」に、評価サンプルが入ったユニパックを固定して、振幅1mm、1分間振とうを行う。
(iii)振とう終了後、再び評価サンプルをユニパックから取り出し、質量を測定する。この時の重量をW2とする。
(iv)(W1-W2)/W1×100で計算された値を吸収性ポリマー材の脱落率とする。
【0074】
<31>
前記<10>~<30>のいずれか1に記載の吸収体を含む吸収性物品。
【実施例0075】
以下、本発明を実施例に基づきさらに詳しく説明するが、本発明はこれにより限定して解釈されるものではない。なお、本実施例において「部」および「%」は、特に断らない限りいずれも質量基準である。「←」は左側の欄と同じ内容であることを意味し、「↑」は上側の欄と同じ内容であることを意味する。
【0076】
(実施例)
(1)材料
繊維1:
セルロース繊維1BとしてNBKP、熱融着性繊維1Aとして芯鞘構造の複合繊維(芯:PET、鞘:PE)を準備し、両者の質量比を50:50とした。繊維1全体の坪量を40g/m2とした。
吸収性ポリマー材2:
坪量200g/m2で準備した。
【0077】
(2)製造方法
上記材料を用いて、表1に示すように積繊工程、熱処理工程、加水工程、加圧工程、乾燥工程をこの順で行い、実施例の吸収体試料を作製した。
熱処理工程は熱風によって行い、前記熱風の温度は熱融着性繊維1Aの融点(PE樹脂成分の融点)以上の132℃とした。また、熱処理工程における積繊物に与える圧力は0Pa以下に制御した。
加水工程において、熱融着積繊物にスプレーを用いて含ませる水の量は、繊維の質量の1016%とした。
加圧工程は室温(25℃)にて行い、圧力は2.07MPaとした。
乾燥工程は、熱融着性繊維1Aの融点(PE樹脂成分の融点)未満の105℃で行った。
(2)吸収体試料
上記にて得られた実施例の吸収体試料は、吸収体試料の繊維の総質量に対し、熱融着性繊維1Aを50質量%含んでいた。融着点の個数及び複合部の有無は、表2に示すとおりであった。すなわち、吸収体試料の質量に対し、熱可塑性繊維1Aを8.3質量%含んでいた。
なお、融着点の個数は、前述の(吸収体7における融着点8の個数の測定方法;1mm×1mmの平方視野範囲の場合)に基づいて測定した。複合部6の有無は、前述の(吸収体7における複合部6の配される個所の測定方法)に基づいて確認した。
【0078】
(比較例1)
表1に示す材料を用いて、抄紙工程により、前述の特許文献2(特開平8-229070号公報)の
図9に記載の吸収性シート(繊維ウエブに吸収性ポリマーを担持させ、繊維集合体を積層したもの)を作製した。すなわち、実施例での積繊工程、熱処理工程及び加水工程を行わなかった。次いで、加圧工程と乾燥工程とを行って、比較例1の吸収体試料を作製した。各工程は表1に示す条件にて行った。
【0079】
(比較例2)
用いる材料を実施例と同様のものとした以外は、比較例1と同様の方法にて比較例2の吸収体試料の作製を行った。
【0080】
(比較例3)
実施例と同様の材料を用いる一方で、実施例での加水工程及び乾燥工程を行わず、積繊工程、熱処理工程及び加圧工程を実施して、比較例3の吸収体試料の作製を行った。各工程は表1に示す条件にて行った。
その際、加圧工程では、株式会社東洋精機製作所製のMini Test Press-10(商品名)を用いて、熱融着性繊維1Aの融点(PE樹脂成分の融点)以上の200℃の熱プレス(圧力0.207MPa)を行った。
作製した比較例3の吸収体試料では、繊維が吸収性ポリマー材の表面に張り付いているだけで、複合部は形成されていなかった。
【0081】
(比較例4)
実施例と同様の材料を用いて積繊工程及び熱処理工程を行った後、加圧工程、加水工程、乾燥工程をこの順で実施して、比較例4の吸収体試料の作製を行った。各工程は表1に示す条件にて行った。
その際、加圧工程では、比較例3と同様の熱プレスを行った。乾燥工程では、熱融着性繊維1Aの融点(PE樹脂成分の融点)以下の115℃の熱プレスを行った。
【0082】
(比較例5)
実施例と同様の材料を用いて積繊工程、熱処理工程及び加水工程を行った後、加圧工程と乾燥工程とを同時に実施して(加圧乾燥融着)、比較例5の吸収体試料の作製を行った。各工程は表1に示す条件にて行った。
加圧工程と乾燥工程の同時実施は、比較例3と同様の熱プレスによって行った。
【0083】
(試験)
1.液吸収前
(1)厚み
前述の(吸収体7の吸液前後の厚みの差の側手方法)に基づいて測定した。
(2)引張強度
前述の[測定手段I]に基づいて測定した。
【0084】
2.液吸収時
(1)厚み
前述の[試料準備手順]及び[吸液手順]の後、前述の(吸収体7の吸液前後の厚みの差の側手方法)に基づいて測定した。
(2)引張強度
前述の[試料準備手順]及び[吸液手順]の後、前述の[測定手段I]に基づいて測定した。
(3)飽和吸収量
前述の[試料準備手順]にサンプルを採取後、サンプル重量を測定、その後[吸液手順]実施後に、吸液したサンプルの重量を測定した。
【0085】
上記の各試験の結果は下記表3に示す通りであった。
【0086】
【0087】
【0088】
【0089】
上記表2及び3、
図6(A)~(F)、
図7(A)及び(B)に示す通り、実施例において作製した吸収体試料は、熱融着性繊維1Aをセルロース繊維1Bと同等比率で比較的多く含んでいるにも関わらず、融着点の個数が過剰にならず適度に配され、かつ、複合部を含むものであった。そのため、液吸収後の厚みの回復がしやすく、飽和吸収量が大きくなった。しかも、液吸収前後において、吸収体の引張強度の低下率が抑えられ、一定水準を確保していた。すなわち、実施例において作製した吸収体試料は、液吸収前は薄くされながら、液吸収時でも液吸収量を低下させることなく、シート強度を担保したものとなっていた。これは、適度な数の融着点によってなる熱融着性繊維の繊維網目構造の圧縮状態と吸収性ポリマー材に配された複合部の結合状態とが液吸収によって解除されて、網目空間が大きく拡大し、吸収性ポリマー材の膨潤空間を迅速に確保したことによると考えられる。また、熱融着性繊維の繊維網目構造が適度な数の融着部を起点としてなるものであるため、液吸収後でもへたり難く、シート強度を担保していた。