(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024077536
(43)【公開日】2024-06-07
(54)【発明の名称】電子打楽器
(51)【国際特許分類】
G10H 1/00 20060101AFI20240531BHJP
【FI】
G10H1/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022189678
(22)【出願日】2022-11-28
(71)【出願人】
【識別番号】319004537
【氏名又は名称】株式会社エフノート
(74)【代理人】
【識別番号】100095614
【弁理士】
【氏名又は名称】越川 隆夫
(72)【発明者】
【氏名】小森 達也
(72)【発明者】
【氏名】森 良彰
【テーマコード(参考)】
5D478
【Fターム(参考)】
5D478LL00
(57)【要約】
【課題】叩打位置毎の振動特性を考慮した閾値を設定することができ、叩打位置を連打しても各叩打に応じた楽音を確実に発生させて出力することができる電子打楽器を提供する。
【解決手段】複数の叩打位置を有した電子打楽器であって、音源部10は、叩打検出部から出力された検出信号に基づいて叩打された叩打位置を特定する叩打位置特定部12と、叩打位置特定部12で特定された叩打位置に応じて閾値を設定する閾値設定部13と、閾値設定部13で設定された閾値を超えた検出信号に基づいて所定の楽音を発生させて出力する楽音発生部14とを有するとともに、閾値設定部13で設定される閾値は、時間経過に伴って漸減する漸減線を有して成り、漸減線は、叩打位置特定部12で特定された叩打位置毎に設定されるものである。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
演奏者による叩打が可能とされた複数の叩打位置を有する本体部と、
前記本体部に取り付けられ、前記叩打位置に対する叩打を検出して所定の検出信号を出力する叩打検出部と、
前記叩打検出部から出力された前記検出信号に基づいて所定の楽音を発生させて出力する音源部と、
を具備した電子打楽器であって、
前記音源部は、
前記叩打検出部から出力された前記検出信号に基づいて叩打された前記叩打位置を特定する叩打位置特定部と、
前記叩打位置特定部で特定された前記叩打位置に応じて閾値を設定する閾値設定部と、
前記閾値設定部で設定された前記閾値を超えた前記検出信号に基づいて所定の楽音を発生させて出力する楽音発生部と、
を有するとともに、前記閾値設定部で設定される閾値は、時間経過に伴って漸減する漸減線を有して成り、前記漸減線は、前記叩打位置特定部で特定された叩打位置毎に設定されることを特徴とする電子打楽器。
【請求項2】
前記音源部は、前記叩打検出部から出力された前記検出信号が最小の閾値を超えた後、所定期間が経過するまでの間において出力された最大の検出信号に対応した楽音を発生させることを特徴とする請求項1記載の電子打楽器。
【請求項3】
前記閾値設定部は、前記叩打位置特定部で特定された前記叩打位置に応じた係数を取得するとともに、前記最大の検出信号の値に前記係数を乗じて得られた一定の閾値を所定時間設定し、その一定の閾値に続いて前記漸減線が設定されることを特徴とする請求項2記載の電子打楽器。
【請求項4】
前記所定時間は、前記叩打位置特定部で特定された叩打位置毎に設定されることを特徴とする請求項3記載の電子打楽器。
【請求項5】
前記閾値設定部は、前記叩打位置特定部で特定された前記叩打位置に応じた漸減率を取得するとともに、前記漸減線は、前記最大の検出信号の値に前記係数を乗じた値に対し、前記漸減率を逐次乗じて設定されることを特徴とする請求項3記載の電子打楽器。
【請求項6】
前記閾値設定部は、前記叩打位置に対応した漸減線を予め複数記憶するとともに、前記叩打位置特定部で特定された叩打位置に応じて前記漸減線を選択して設定されることを特徴とする請求項2記載の電子打楽器。
【請求項7】
前記本体部は、前記叩打位置としてのボウ部とエッジ部又はカップ部とを有する電子シンバルから成ることを特徴とする請求項1記載の電子打楽器。
【請求項8】
前記本体部は、前記叩打位置としてのヘッドと第1リム又は第2リムとを有する電子ドラムから成ることを特徴とする請求項1記載の電子打楽器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、叩打により生じた検出信号に基づき所定の楽音を発生させて出力させる電子打楽器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子打楽器としての電子シンバルは、通常、演奏者による叩打が可能とされた打面を有する電子シンバル本体と、打面に対する叩打を検出可能な振動センサと、振動センサで検出された検出信号に基づいて所定の楽音を発生させて出力する音源部とを具備している。そして、演奏者がスティックによって電子シンバル本体の打面を叩打すると、振動センサが検出して音源部から外部に出力することができ、アコースティックのシンバルと同様の演奏が可能とされていた。
【0003】
しかるに、例えば特許文献1には、叩打による振動量のうち最大値を記憶し、その最大値に基づいて実際の振動の包絡線に似た仮想的な疑似包絡線に対応した基準値を発生するとともに、当該基準値と振動量を比較して楽音を発生する電子楽器が開示されている。この従来技術によれば、励振を判別するための基準を任意に設定することができるので、励振を確実に判別して適切な楽音を出力することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来技術においては、以下のような課題があった。
電子シンバル等の電子打楽器は、例えばボウ部、エッジ部及びカップ部といった複数の叩打位置が設定されており、叩打する叩打位置によって振動特性が異なるので、例えば演奏者がスティックでエッジ部を叩打した場合、緩やかな振動が比較的長時間続くのに対し、カップ部を叩打した場合、立ち上がりが強く、且つ、短い振動が発生する。また、エッジ部やカップ部は、通常、スティックのショルダ部(中腹)で叩打されるのに対し、ボウ部はスティックのチップ部(先端)で叩打されるので、叩打で生じる振動は比較的小さく短くなる。
【0006】
このように、叩打する叩打位置によって振動特性が異なるにも関わらず、従来の電子打楽器においては、振動特性の相違を考慮することなく一律的に誤発音防止処理のための閾値(特許文献1においては、仮想的な疑似包絡線に対応した基準値)を設定しているので、例えば複数の叩打位置を連打した際、楽音が発生しない場合があり、演奏に支障が生じる虞があった。なお、このような課題は、電子シンバルに限らず、複数の叩打位置を有する電子楽器一般に生じるものであり、本出願人は、かかる不具合の解消を鋭意検討するに至った。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、その目的は、叩打位置毎の振動特性を考慮した閾値を設定することができ、叩打位置を連打しても各叩打に応じた楽音を確実に発生させて出力することができる電子打楽器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1記載の発明は、演奏者による叩打が可能とされた複数の叩打位置を有する本体部と、前記本体部に取り付けられ、前記叩打位置に対する叩打を検出して所定の検出信号を出力する叩打検出部と、前記叩打検出部から出力された前記検出信号に基づいて所定の楽音を発生させて出力する音源部とを具備した電子打楽器であって、前記音源部は、前記叩打検出部から出力された前記検出信号に基づいて叩打された前記叩打位置を特定する叩打位置特定部と、前記叩打位置特定部で特定された前記叩打位置に応じて閾値を設定する閾値設定部と、前記閾値設定部で設定された前記閾値を超えた前記検出信号に基づいて所定の楽音を発生させて出力する楽音発生部とを有するとともに、前記閾値設定部で設定される閾値は、時間経過に伴って漸減する漸減線を有して成り、前記漸減線は、前記叩打位置特定部で特定された叩打位置毎に設定されることを特徴とする。
【0009】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の電子打楽器において、前記音源部は、前記叩打検出部から出力された前記検出信号が最小の閾値を超えた後、所定期間が経過するまでの間において出力された最大の検出信号に対応した楽音を発生させることを特徴とする。
【0010】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の電子打楽器において、前記閾値設定部は、前記叩打位置特定部で特定された前記叩打位置に応じた係数を取得するとともに、前記最大の検出信号の値に前記係数を乗じて得られた一定の閾値を所定時間設定し、その一定の閾値に続いて前記漸減線が設定されることを特徴とする。
【0011】
請求項4記載の発明は、請求項3記載の電子打楽器において、前記所定時間は、前記叩打位置特定部で特定された叩打位置毎に設定されることを特徴とする。
【0012】
請求項5記載の発明は、請求項3記載の電子打楽器において、前記閾値設定部は、前記叩打位置特定部で特定された前記叩打位置に応じた漸減率を取得するとともに、前記漸減線は、前記最大の検出信号の値に前記係数を乗じた値に対し、前記漸減率を逐次乗じて設定されることを特徴とする。
【0013】
請求項6記載の発明は、請求項2記載の電子打楽器において、前記閾値設定部は、前記叩打位置に対応した漸減線を予め複数記憶するとともに、前記叩打位置特定部で特定された叩打位置に応じて前記漸減線を選択して設定されることを特徴とする。
【0014】
請求項7記載の発明は、請求項1記載の電子打楽器において、前記本体部は、前記叩打位置としてのボウ部とエッジ部又はカップ部とを有する電子シンバルから成ることを特徴とする。
【0015】
請求項8記載の発明は、請求項1記載の電子打楽器において、前記本体部は、前記叩打位置としてのヘッドと第1リム又は第2リムとを有する電子ドラムから成ることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
請求項1の発明によれば、音源部は、叩打検出部から出力された検出信号に基づいて叩打された叩打位置を特定する叩打位置特定部と、叩打位置特定部で特定された叩打位置に応じて閾値を設定する閾値設定部と、閾値設定部で設定された閾値を超えた検出信号に基づいて所定の楽音を発生させて出力する楽音発生部とを有するとともに、閾値設定部で設定される閾値は、時間経過に伴って漸減する漸減線を有して成り、漸減線は、叩打位置特定部で特定された叩打位置毎に設定されるので、叩打位置毎の振動特性を考慮した閾値を設定することができ、叩打位置を連打しても各叩打に応じた楽音を確実に発生させて出力することができる。
【0017】
請求項2の発明によれば、音源部は、叩打検出部から出力された検出信号が最小の閾値を超えた後、所定期間が経過するまでの間において出力された最大の検出信号に対応した楽音を発生させるので、叩打の誤検出を抑制しつつ打撃力に応じた適切な楽音を出力させることができる。
【0018】
請求項3の発明によれば、閾値設定部は、叩打位置特定部で特定された叩打位置に応じた係数を取得するとともに、最大の検出信号の値に係数を乗じて得られた一定の閾値を所定時間設定し、その一定の閾値に続いて漸減線が設定されるので、漸減線が設定される前の所定時間において閾値を大きめに設定することができ、連打の検出に影響を与えることなく叩打の誤検出を確実に防止することができる。
【0019】
請求項4の発明によれば、所定時間は、叩打位置特定部で特定された叩打位置毎に設定されるので、漸減線が設定される前の所定時間において閾値を叩打位置に応じて適切に設定することができ、叩打の誤検出をより確実に防止することができる。
【0020】
請求項5の発明によれば、閾値設定部は、叩打位置特定部で特定された叩打位置に応じた漸減率を取得するとともに、漸減線は、最大の検出信号の値に係数を乗じた値に対し、漸減率を逐次乗じて設定されるので、最大の検出信号に応じた適切な漸減線を叩打毎に設定することができ、連打の検出性能を維持したまま叩打の誤検出を防止できる。
【0021】
請求項6の発明によれば、閾値設定部は、叩打位置に対応した漸減線を予め複数記憶するとともに、叩打位置特定部で特定された叩打位置に応じて漸減線を選択して設定されるので、漸減線を逐次算出するものに比べ、漸減線の設定をより円滑に行わせることができる。
【0022】
請求項7の発明によれば、本体部は、叩打位置としてのボウ部とエッジ部又はカップ部とを有する電子シンバルから成るので、電子シンバルにおける叩打位置毎の振動特性を考慮した閾値を設定することができる。
【0023】
請求項8の発明によれば、本体部は、叩打位置としてのヘッドと第1リム又は第2リムとを有する電子ドラムから成るので、電子ドラムにおける叩打位置毎の振動特性を考慮した閾値を設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る電子シンバルの外観全体を示す3面図
【
図4】同電子シンバルのカバー部材を取り外した状態を示す底面図
【
図5】同電子シンバル(第2実施形態と共通)における構成の概略を示すブロック図
【
図6】同電子シンバルのエッジ部を叩打した場合における叩打検出部で検出された振動波形(検出信号)及び閾値設定部で設定された漸減線を示すグラフ
【
図7】同電子シンバルのボウを叩打した場合における叩打検出部で検出された振動波形(検出信号)及び閾値設定部で設定された漸減線を示すグラフ
【
図8】同電子シンバルのエッジ部とボウを続けて叩打した場合における叩打検出部で検出された振動波形(検出信号)及び閾値設定部で設定された漸減線を示すグラフ
【
図9a】同電子シンバルの音源部における制御を示すフローチャート
【
図9b】同電子シンバルの音源部における制御を示すフローチャート
【
図9c】同電子シンバルの音源部における制御を示すフローチャート
【
図9d】同電子シンバルの音源部における制御を示すフローチャート
【
図9e】同電子シンバルの音源部における制御を示すフローチャート
【
図10a】同電子シンバルの他の形態の音源部における制御を示すフローチャート
【
図10b】同電子シンバルの他の形態の音源部における制御を示すフローチャート
【
図10c】同電子シンバルの他の形態の音源部における制御を示すフローチャート
【
図10d】同電子シンバルの他の形態の音源部における制御を示すフローチャート
【
図11】本発明の第2の実施形態に係る電子ドラムの外観全体を示す3面図
【
図14】(a)
図11におけるXIV-XIV線断面図(b)同電子ドラムの第2リムを示す分解斜視図
【
図15a】同電子ドラムの音源部における制御を示すフローチャート
【
図15b】同電子ドラムの音源部における制御を示すフローチャート
【
図15c】同電子ドラムの音源部における制御を示すフローチャート
【
図15d】同電子ドラムの音源部における制御を示すフローチャート
【
図15e】同電子ドラムの音源部における制御を示すフローチャート
【
図15f】同電子ドラムの音源部における制御を示すフローチャート
【
図15g】同電子ドラムの音源部における制御を示すフローチャート
【
図15h】同電子ドラムの音源部における制御を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら具体的に説明する。
第1の実施形態に係る電子シンバルは、叩打により生じた検出信号に基づき所定の楽音を発生させて出力させることにより、アコースティックのシンバルと同様の演奏が可能とされたものであり、
図1~5に示すように、本体部1と、振動センサ4(叩打検出部)と、音源部10とを具備して構成されている。
【0026】
本体部1は、
図1~4に示すように、演奏者による叩打が可能とされた打面Fを有するパッド部2、及びパッド部2の裏面側を支持するフレーム部3を有して構成されている。パッド部2は、スティックで叩打可能なゴム材又は軟質樹脂等(本実施形態においては、シリコンラバー)から成り、中央が開口した円板状部材から成る。また、パッド部2の上面に形成された打面Fは、パッド部2の中央で膨出して形成されたカップ部Fbと、パッド部2の周縁部に形成されたエッジ部Fcと、カップ部Fb及びエッジ部Fcの間の領域から成るボウ部Faとから成る複数(本実施形態においては3つ)の叩打位置を成して構成されている。
【0027】
フレーム部3は、硬質樹脂又は金属(本実施形態においては、ABS樹脂)から成り、その表面には、パッド部2が取り付けられて一体化することにより本体部1が形成されるよう構成されている。さらに、フレーム部3における中央裏面側には、
図4に示すように、振動センサ4(叩打検出部)が同心円状に複数(本実施形態においては3つ)取り付けられているとともに、出力端子9が突出形成されており、カバー部材7にて覆われている。なお、フレーム部3の中央位置には、軸スリーブ8が取り付けられており、支持スタンドを挿通させ得るようになっている。
【0028】
本実施形態に係るフレーム部3は、
図2に示すように、カップ部Fbに対応した位置(中央位置)にカップセンサ5が取り付けられるとともに、エッジ部Fcに対応した位置(周縁位置)にエッジセンサ6が取り付けられている。これらカップセンサ5及びエッジセンサ6は、叩打によりオン信号を発生して出力可能とされており、振動センサ4とともに本発明の叩打検出部を構成するものである。
【0029】
振動センサ4は、打面Fに対する叩打により発生した振動を電気信号に変換可能な圧電素子から成り、叩打位置に対する叩打を検出して所定の検出信号を出力するものである。すなわち、振動センサ4は、演奏者が打面Fを叩打することにより発生した振動が伝達されると、その振動により全体が撓み、その撓み量に応じた電圧が発生するようになっている。こうして電圧が発生すると、接続された配線を介して電流が流れるので、
図6~8に示すような出力波形(アナログ信号)として音源部10に出力されることとなる。
【0030】
音源部10は、叩打検出部である振動センサ4、カップセンサ5及びエッジセンサ6から出力された検出信号に基づいて所定の楽音を発生させて出力するもので、
図5に示すように、AD変換器11と、叩打位置特定部12と、閾値設定部13と、楽音発生部14とを具備している。AD変換器11は、配線L1~L3を介して本体部1の振動センサ4、カップセンサ5及びエッジセンサ6と電気的に接続されており、振動センサ4にて検出されたアナログ信号をデジタル信号に変換し得るよう構成されている。
【0031】
しかるに、本実施形態に係る音源部10は、
図6~8に示すように、振動センサ4(叩打検出部)から出力された検出信号が最小の閾値T(min)を超えた後、所定期間tが経過するまでの間において出力された最大の検出信号(出力最大値V(max))に対応した楽音を発生させるようになっている。なお、最小閾値T(min)及び所定期間tは、予め設定されており、音源部10が具備するストレージ(記憶媒体等)に記憶されている。例えば、本実施形態に係る所定期間tは、閾値を上回ってから約2ms(2/1000秒)間に設定されている。
【0032】
叩打位置特定部12は、本体部1及びAD変換器11と配線L1~L3を介して電気的に接続されたマイコン等から成り、叩打検出部(本実施形態におけるカップセンサ5及びエッジセンサ6)から出力された検出信号に基づいて叩打された叩打位置を特定するものである。具体的には、叩打位置特定部12は、カップセンサ5からのオン信号及びオフ信号と、エッジセンサ6からのオン信号及びオフ信号とが、接続されたAD変換器11を介して入力されるようになっている。
【0033】
そして、カップセンサ5からの信号がオン、且つ、エッジセンサ6からの信号がオフの場合、叩打位置がカップ部Fbであると特定され、カップセンサ5からの信号がオフ、且つ、エッジセンサ6からの信号がオンの場合、叩打位置がエッジ部Fcであると特定されることとなる。また、それ以外のすべての場合は、叩打位置がボウ部Faであると特定される。
【0034】
閾値設定部13は、叩打位置特定部12と同一のマイコン等又は接続された別個のマイコン等から成り、叩打位置特定部12で特定された叩打位置に応じて閾値を設定するものである。ここで、本実施形態に係る閾値設定部13で設定される閾値は、
図6~8に示すように、一定の閾値(T(Eα)、T(Bα))(
図6~8では図示されないT(Cα)含む)と、時間経過に伴って漸減する漸減線(T(Eβ)、T(Bβ))(
図6~8では図示されないT(Cβ)含む)とを有して成り、漸減線は、叩打位置特定部12で特定された叩打位置毎に設定されるよう構成されている。
【0035】
例えば、叩打位置特定部12により叩打位置がエッジ部Fcであると特定されると、閾値設定部13は、
図6、8に示すように、その特定されたエッジ部Fcに応じた係数α(E)を取得するとともに、最大の検出信号(出力最大値V(max))の値に係数α(E)を乗じて得られた一定の閾値T(Eα)を所定時間t(E)設定(
図6、8参照)し、かかる所定時間t(E)は、叩打位置特定部12で特定された叩打位置毎に設定される。
【0036】
その後、叩打位置特定部12で特定された叩打位置(エッジ部Fc)に応じた漸減率γ(E)を取得するとともに、最大の検出信号(出力最大値V(max))に予め取得した係数α(E)を乗じた値に対し、漸減率γ(E)を逐次乗じて(所定時間毎に乗じて)漸減線T(Eβ)が設定される。このように、叩打位置がエッジ部Fcであると特定された場合、閾値設定部13で設定される閾値は、一定の閾値T(Eα)とそれに続く漸減線T(Eβ)とにより構成されることとなる。
【0037】
さらに、例えば、叩打位置特定部12により叩打位置がボウ部Faであると特定されると、閾値設定部13は、
図7、8に示すように、その特定されたボウ部Faに応じた係数α(B)を取得するとともに、最大の検出信号(出力最大値V(max))の値に係数α(B)を乗じて得られた一定の閾値T(Bα)を所定時間t(B)設定(
図6、8参照)し、かかる所定時間t(B)は、叩打位置特定部12で特定された叩打位置毎に設定される。
【0038】
その後、叩打位置特定部12で特定された叩打位置(ボウ部Fa)に応じた漸減率γ(B)を取得するとともに、最大の検出信号(出力最大値V(max))に予め取得した係数α(B)を乗じた値に対し、漸減率γ(B)を逐次乗じて(所定時間毎に乗じて)漸減線T(Bβ)が設定される。このように、叩打位置がボウ部Faであると特定された場合、閾値設定部13で設定される閾値は、一定の閾値T(Bα)とそれに続く漸減線T(Bβ)とにより構成されることとなる。なお、叩打位置特定部12により叩打位置がカップ部Fcであると特定された場合も上記と同様である。
【0039】
なお、各叩打位置に適用される閾値の漸減率は、実際に各叩打位置打撃した際の振動センサ4の出力波形それぞれの漸減率を測定し、その結果に基づいて設定される。具体的には、各叩打位置に適用される閾値の漸減率は、各叩打位置を打撃した際の振動センサ4の出力波形の漸減率と比較して、同等か、あるいはわずかに小さい値(わずかに漸減しにくい値)が好適である。
【0040】
楽音発生部14は、閾値設定部13及び叩打位置特定部12と同一のマイコン等又は接続された別個のマイコン等から成り、閾値設定部13で設定された閾値を超えた検出信号に基づいて所定の楽音を発生させて出力するものである。例えば
図8に示すように、閾値設定部13で設定された閾値である漸減線T(Eβ)を振動センサ4で検出された検出信号が超えると、その時点から所定期間tが経過するまでの間において出力された最大の検出信号(出力最大値V(max))に対応した楽音(同図においては、ボウ部Faを強打した場合の楽音)を発生させるようになっている。
【0041】
また、楽音発生部14は、音源部10と接続された出力手段15に接続されており、発生した楽音を出力手段15に出力可能とされている。かかる出力手段15は、スピーカやヘッドホンなど出力された楽音を演奏者や聴衆が実際に聴くためのもので、楽音発生部14で発生した楽音を例えば電気配線や光配線或いは無線を介して受信し、出力可能とされている。
【0042】
次に、本実施形態に係る音源部10の制御について、
図9a~
図9eに基づいて説明する。
先ず、S1にて振動センサの出力V(検出信号)は最小閾値T(min)超えたか否か判定し、超えたと判定されると、S2にて所定期間中の振動センサ4の出力最大値V(max)を取得する。その後、S3にてエッジセンサ6がオンか否か判定され、エッジセンサ6がオンであると判定された場合、S4にて出力最大値V(max)に対応したシンバルエッジの楽音(エッジ部Fcを叩打したときの楽音)を出力手段15にて発音させる。
【0043】
そして、S5にて出力最大値V(max)に係数α(E)を乗じて閾値T(Eα)(一定の閾値)を設定した後、S6にて振動センサ4の出力Vが閾値T(Eα)(一定の閾値)を超えたか否か判定する。S6にて振動センサ4の出力Vが閾値T(Eα)(一定の閾値)を超えたと判定された場合、S2に戻って以降の制御を繰り返すとともに、振動センサ4の出力Vが閾値T(Eα)(一定の閾値)を超えないと判定された場合、S7にて所定時間t(E)を経過したか否か判定される。
【0044】
S7にて所定時間t(E)を経過しないと判定されると、S5に戻って以降の制御を繰り返すとともに、所定時間t(E)を経過したと判定されると、S8にて回数iを0に設定し、S9にて出力最大値V(max)に係数β(E)と漸減率γ(E)のi乗を乗じて閾値T(Eβ)(漸減線)を設定する。その後、S10にて閾値T(Eβ)(漸減線)が最小閾値T(min)を下回ったか否か判定され、最小閾値T(min)を下回ったと判定された場合、S1に戻って繰り返すとともに、最小閾値T(min)を下回っていないと判定された場合、S11にて振動センサ4の出力Vが閾値T(Eβ)(漸減線)を超えたか否か判定される。
【0045】
そして、S11にて振動センサ4の出力Vが閾値T(Eβ)(漸減線)を超えたと判定された場合、S2に戻って以降の制御を繰り返すとともに、振動センサ4の出力Vが閾値T(Eβ)(漸減線)を超えていないと判定された場合、S12にて所定期間経過後に回数iに1を加算した後、S9にて閾値T(Eβ)(漸減線)が再び設定され、以後、S10~S12が繰り返される。
【0046】
一方、S3にてエッジセンサ6がオンでないと判定された場合、S13にてカップセンサ5がオンか否か判定され、カップセンサ5がオンであると判定された場合、S14にて出力最大値V(max)に対応したシンバルカップの楽音(カップ部Fbを叩打したときの楽音)を出力手段15にて発音させる。
【0047】
そして、S15にて出力最大値V(max)に係数α(C)を乗じて閾値T(Cα)(一定の閾値)を設定した後、S16にて振動センサ4の出力Vが閾値T(Cα)(一定の閾値)を超えたか否か判定する。S16にて振動センサ4の出力Vが閾値T(Cα)(一定の閾値)を超えたと判定された場合、S2に戻って以降の制御を繰り返すとともに、振動センサ4の出力Vが閾値T(Cα)(一定の閾値)を超えないと判定された場合、S17にて所定時間t(C)を経過したか否か判定される。
【0048】
S17にて所定時間t(C)を経過しないと判定されると、S15に戻って以降の制御を繰り返すとともに、所定時間t(C)を経過したと判定されると、S18にて回数iを0に設定し、S19にて出力最大値V(max)に係数β(C)と漸減率γ(C)のi乗を乗じて閾値T(Cβ)(漸減線)を設定する。その後、S20にて閾値T(Cβ)(漸減線)が最小閾値T(min)を下回ったか否か判定され、最小閾値T(min)を下回ったと判定された場合、S1に戻って繰り返すとともに、最小閾値T(min)を下回っていないと判定された場合、S21にて振動センサ4の出力Vが閾値T(Cβ)(漸減線)を超えたか否か判定される。
【0049】
そして、S21にて振動センサ4の出力Vが閾値T(Cβ)(漸減線)を超えたと判定された場合、S2に戻って以降の制御を繰り返すとともに、振動センサ4の出力Vが閾値T(Eβ)(漸減線)を超えていないと判定された場合、S22にて所定期間経過後に回数iに1を加算した後、S19にて閾値T(Cβ)(漸減線)が再び設定され、以後、S20~S22が繰り返される。
【0050】
一方、S13にてカップセンサ5がオンでないと判定された場合、S23にて出力最大値V(max)に対応したシンバルボウの楽音(ボウ部Faを叩打したときの楽音)を出力手段15にて発音させる。そして、S24にて出力最大値V(max)に係数α(B)を乗じて閾値T(Bα)(一定の閾値)を設定した後、S25にて振動センサ4の出力Vが閾値T(Bα)(一定の閾値)を超えたか否か判定する。S25にて振動センサ4の出力Vが閾値T(Bα)(一定の閾値)を超えたと判定された場合、S2に戻って以降の制御を繰り返すとともに、振動センサ4の出力Vが閾値T(Bα)(一定の閾値)を超えないと判定された場合、S26にて所定時間t(B)を経過したか否か判定される。
【0051】
S26にて所定時間t(B)を経過しないと判定されると、S24に戻って以降の制御を繰り返すとともに、所定時間t(B)を経過したと判定されると、S27にて回数iを0に設定し、S28にて出力最大値V(max)に係数β(B)と漸減率γ(B)のi乗を乗じて閾値T(Bβ)(漸減線)を設定する。その後、S29にて閾値T(Bβ)(漸減線)が最小閾値T(min)を下回ったか否か判定され、最小閾値T(min)を下回ったと判定された場合、S1に戻って繰り返すとともに、最小閾値T(min)を下回っていないと判定された場合、S30にて振動センサ4の出力Vが閾値T(Bβ)(漸減線)を超えたか否か判定される。
【0052】
そして、S30にて振動センサ4の出力Vが閾値T(Bβ)(漸減線)を超えたと判定された場合、S2に戻って以降の制御を繰り返すとともに、振動センサ4の出力Vが閾値T(Bβ)(漸減線)を超えていないと判定された場合、S31にて所定期間経過後に回数iに1を加算した後、S28にて閾値T(Bβ)(漸減線)が再び設定され、以後、S29~S31が繰り返される。
【0053】
上記実施形態においては、閾値設定部13は、叩打位置特定部12で特定された叩打位置に応じた漸減率(γ(E)、γ(C)、γ(B))を取得するとともに、漸減線(T(Eβ)、T(Cβ)、T(Bβ))は、最大の検出信号の値(出力最大値V(max))に係数(β(E)、β(C)、β(B))を乗じた値に対し、漸減率(γ(E)、γ(C)、γ(B))を逐次乗じて設定されているが、叩打位置に対応した漸減線を予め複数記憶するとともに、叩打位置特定部12で特定された叩打位置に応じて漸減線を選択して設定されるものであってもよい。
【0054】
以下、叩打位置に対応した漸減線を予め複数記憶するとともに、叩打位置特定部12で特定された叩打位置に応じて漸減線を選択して設定される場合の音源部10の制御について、
図10a~
図10dに基づいて説明する。
先ず、S1にて振動センサの出力V(検出信号)は最小閾値T(min)超えたか否か判定し、超えたと判定されると、S2にて所定期間中の振動センサ4の出力最大値V(max)を取得する。その後、S3にてエッジセンサ6がオンか否か判定され、エッジセンサ6がオンであると判定された場合、S4にて出力最大値V(max)に対応したシンバルエッジの楽音(エッジ部Fcを叩打したときの楽音)を出力手段15にて発音させる。
【0055】
そして、S5にて順番nを0に設定した後、S6にて予めテーブルに記憶されたn番目の係数α(En)を読み出した後、S7にて出力最大値V(max)に係数α(En)を乗じて閾値T(En)(漸減線)を設定する。その後、S8にて閾値T(En)(漸減線)が最小閾値T(min)を下回ったか否か判定され、最小閾値T(min)を下回ったと判定された場合、S1に戻って繰り返すとともに、最小閾値T(min)を下回っていないと判定された場合、S9にて振動センサ4の出力Vが閾値T(En)(漸減線)を超えたか否か判定される。
【0056】
そして、S9にて振動センサ4の出力Vが閾値T(En)(漸減線)を超えたと判定された場合、S2に戻って以降の制御を繰り返すとともに、振動センサ4の出力Vが閾値T(Eβ)(漸減線)を超えていないと判定された場合、S10にて所定期間経過後に順番nに1を加算した後、S6にて予めテーブルに記憶されたn番目の係数α(En)を再び読み出し、以後、S7~S10が繰り返される。
【0057】
一方、S3にてエッジセンサ6がオンでないと判定された場合、S11にてカップセンサ5がオンか否か判定され、カップセンサ5がオンであると判定された場合、S12にて出力最大値V(max)に対応したシンバルカップの楽音(カップ部Fbを叩打したときの楽音)を出力手段15にて発音させる。
【0058】
そして、S13にて順番nを0に設定した後、S14にて予めテーブルに記憶されたn番目の係数α(Cn)を読み出した後、S15にて出力最大値V(max)に係数α(Cn)を乗じて閾値T(Cn)(漸減線)を設定する。その後、S16にて閾値T(Cn)(漸減線)が最小閾値T(min)を下回ったか否か判定され、最小閾値T(min)を下回ったと判定された場合、S1に戻って繰り返すとともに、最小閾値T(min)を下回っていないと判定された場合、S17にて振動センサ4の出力Vが閾値T(Cn)(漸減線)を超えたか否か判定される。
【0059】
S17にて振動センサ4の出力Vが閾値T(Cn)(漸減線)を超えたと判定された場合、S2に戻って以降の制御を繰り返すとともに、振動センサ4の出力Vが閾値T(Cβ)(漸減線)を超えていないと判定された場合、S18にて所定期間経過後に順番nに1を加算した後、S14にて予めテーブルに記憶されたn番目の係数α(Cn)を再び読み出し、以後、S15~S18が繰り返される。
【0060】
一方、S11にてカップセンサ5がオンでないと判定された場合、S19にて出力最大値V(max)に対応したシンバルボウの楽音(ボウ部Faを叩打したときの楽音)を出力手段15にて発音させる。そして、S20にて順番nを0に設定した後、S21にて予めテーブルに記憶されたn番目の係数α(Bn)を読み出した後、S22にて出力最大値V(max)に係数α(Bn)を乗じて閾値T(Bn)(漸減線)を設定する。
【0061】
その後、S23にて閾値T(Bn)(漸減線)が最小閾値T(min)を下回ったか否か判定され、最小閾値T(min)を下回ったと判定された場合、S1に戻って繰り返すとともに、最小閾値T(min)を下回っていないと判定された場合、S24にて振動センサ4の出力Vが閾値T(Bn)(漸減線)を超えたか否か判定される。
【0062】
S24にて振動センサ4の出力Vが閾値T(Bn)(漸減線)を超えたと判定された場合、S2に戻って以降の制御を繰り返すとともに、振動センサ4の出力Vが閾値T(Bβ)(漸減線)を超えていないと判定された場合、S25にて所定期間経過後に順番nに1を加算した後、S21にて予めテーブルに記憶されたn番目の係数α(Bn)を再び読み出し、以後、S22~S25が繰り返される。
【0063】
次に、本発明の第2の実施形態に係る電子ドラムについて説明する。
第2の実施形態に係る電子ドラムは、叩打により生じた検出信号に基づき所定の楽音を発生させて出力させることにより、アコースティックのドラムと同様の演奏が可能とされたものであり、
図11~14及び
図5に示すように、本体部16と、振動センサから成るヘッドセンサ25、第1リムセンサ26及び第2リムセンサ27(叩打検出部)と、音源部28とを具備して構成されている。
【0064】
本体部16は、
図11~13に示すように、演奏者による叩打が可能とされたヘッド17、第1リム18(リム)及び第2リム19(サイドリム)から成る複数(本実施形態においては3つ)の叩打位置と、ヘッドセンサ25が取り付けられた円環状のカバー20と、第1リムセンサ26が取り付けられた円筒状の筐体21と、第2リム19を筐体21に取り付けるための支持部材23とを有して構成されている。
【0065】
第1リム18は、金属にEPDMゴムやPVC等の弾性体を覆いかぶせた円環状部材から成り、内部にPETやナイロン等から成るヘッド17が取り付けられるとともに、テンションボルトDにより筐体21の外周面に突出形成されたラグEに締め上げて固定されている。筐体部21は、内周に沿って円環状のプレート22が取り付けられており、そのプレート22の周方向に亘って等間隔に第1リムセンサ26が4つ取り付けられている。
【0066】
また、筐体部21の内部には、円環状のカバー20が固定されており、そのカバー20の周方向に亘って等間隔に円錐状のヘッドセンサクッション24が4つ取り付けられている。ヘッドセンサクッション24は、
図13に示すように、その突端がヘッド17と当接して組付けられており、底面にヘッドセンサ25が取り付けられている。そして、ヘッド17を叩打すると、その振動をヘッドセンサクッション24を介してヘッドセンサ25が検出して所定の検出信号を出力するとともに、第1リム18を叩打すると、その振動を筐体21を介して第1リムセンサ26が検出して所定の検出信号を出力するようになっている。
【0067】
第2リム19は、本体部16の筐体21に対して弾性的に支持されて取り付けられ、演奏者による叩打が可能とされたもので、本実施形態においては、筐体21に対して弾性体23a、23bを介して離間して取り付けられるとともに、第2リムセンサ27が取り付けられている。そして、第2リム19を叩打すると、その振動を第2リムセンサ27が検出して所定の検出信号を出力するようになっている。
【0068】
支持部材23は、第2リム19を筐体21の側方において弾性支持するためのもので、
図14(a)(b)に示すように、ゴム材等から成る弾性体23a、23bと、円弧状の支持プレート23cと、支持ステー23dと、支持部材23eとを有して構成されている。支持部材23eは、コ字状に形成された金属製のステーから成り、第2リム19に固定されている。
【0069】
支持プレート23cは、筐体21の外周面の形状に沿って円弧状に延設されるとともに、その円弧形状に沿って長孔23caが形成されている。この長孔23caには、2つのボルトBが挿通されており、ボルトBにより支持ステー23dが締結されている。支持ステー23dは、L字状に形成された金属製部品から成り、ブロック状の弾性体23aが取り付けられている。弾性体23bは、支持ステー23dの両端部に固定されており、内部にテンションボルトDが挿通されるよう構成されている。
【0070】
しかるに、第2リム19の支持部材23eを支持ステー23dにネジ止めなどにて固定させて一体化させるとともに、弾性体23bにテンションボルトDを挿通して螺合することにより、第2リム19が筐体21の側方に取り付けられる。このとき、支持プレート23cは、弾性体23bを介してテンションボルトDにて組付けられるとともに、
図14(a)に示すように、弾性体23aが筐体21の側面に当接した状態とされており、第2リム19は、筐体21に対して弾性的に支持されている。
【0071】
また、ボルトBを緩めて長孔23caに沿って移動させることにより、支持ステー23dと共に第2リム19を筐体21の外周面に沿って移動可能とされている。そして、任意位置にてボルトBを締め上げることにより、第2リム19が所望の位置に固定されるようになっている。このように、本実施形態に係る第2リム19は、第1リム18の周縁に沿ってスライド可能とされているので、演奏者が演奏し易い位置に第2リム19を配置させることができ、良好な演奏を行わせることができる。
【0072】
音源部28は、叩打検出部であるヘッドセンサ25、第1リムセンサ26及び第2リムセンサ27から出力された検出信号に基づいて所定の楽音を発生させて出力するもので、
図5に示すように、AD変換器29と、叩打位置特定部30と、閾値設定部31と、楽音発生部32とを具備している。AD変換器29は、配線L1、L2、L3を介して本体部16のヘッドセンサ25、第1リムセンサ26及び第2リムセンサ27と電気的に接続されており、これらセンサにて検出されたアナログ信号をデジタル信号に変換し得るよう構成されている。
【0073】
しかるに、本実施形態に係る音源部28は、ヘッドセンサ25、第1リムセンサ26及び第2リムセンサ27(叩打検出部)から出力された検出信号が最小の閾値T(min)を超えた後、所定期間tが経過するまでの間において出力された最大の検出信号(出力最大値V(max))に対応した楽音を発生させるようになっている。なお、最小閾値T(min)及び所定期間tは、予め設定されており、音源部28が具備するストレージ(記憶媒体等)に記憶されている。
【0074】
叩打位置特定部30は、AD変換器29を介して本体部16と配線L1~L3を介して電気的に接続されたマイコン等から成り、叩打検出部(本実施形態におけるヘッドセンサ25、第1リムセンサ26及び第2リムセンサ27)から出力された検出信号に基づいて叩打された叩打位置を特定するものである。具体的には、ヘッドセンサ25、第1リムセンサ26及び第2リムセンサ27からの出力最大値V(Hmax)、V(R1max)、V(R2max)を比較し、出力最大値の割合が最も大きい叩打位置に対して叩打されたと特定するようになっている。
【0075】
閾値設定部31は、叩打位置特定部30と同一のマイコン等又は接続された別個のマイコン等から成り、叩打位置特定部30で特定された叩打位置に応じて閾値を設定するものである。ここで、本実施形態に係る閾値設定部31で設定される閾値は、一定の閾値(T(Hα)、T(R1α)、T(R2α)と、時間経過に伴って漸減する漸減線(T(Hβ)、T(R1β)、T(R2β))とを有して成り、漸減線は、叩打位置特定部30で特定された叩打位置毎に設定されるよう構成されている。
【0076】
例えば、叩打位置特定部30により叩打位置がヘッド17であると特定されると、閾値設定部31は、その特定されたヘッド17に応じた係数α(H)を取得するとともに、最大の検出信号(出力最大値V(Hmax))の値に係数α(H)を乗じて得られた一定の閾値T(Hα)を所定時間t(H)設定し、かかる所定時間t(H)は、叩打位置特定部30で特定された叩打位置毎に設定される。
【0077】
その後、叩打位置特定部30で特定された叩打位置(ヘッド17)に応じた漸減率γ(H)を取得するとともに、最大の検出信号(出力最大値V(Hmax))に予め取得した係数β(H)を乗じた値に対し、漸減率γ(H)を逐次乗じて(所定時間毎に乗じて)漸減線T(Hβ)が設定される。このように、叩打位置がヘッド17であると特定された場合、閾値設定部31で設定される閾値は、一定の閾値T(Hα)とそれに続く漸減線T(Hβ)とにより構成されることとなる。
【0078】
さらに、例えば、叩打位置特定部30により叩打位置が第2リム19であると特定されると、閾値設定部31は、その特定された第2リム19に応じた係数α(R2)を取得するとともに、最大の検出信号(出力最大値V(R2max))の値に係数α(R2)を乗じて得られた一定の閾値T(R2α)を所定時間t(R2)設定し、かかる所定時間t(R2)は、叩打位置特定部30で特定された叩打位置毎に設定される。
【0079】
その後、叩打位置特定部30で特定された叩打位置(第2リム19)に応じた漸減率γ(R2)を取得するとともに、最大の検出信号(出力最大値V(R2max))に予め取得した係数β(R2)を乗じた値に対し、漸減率γ(R2)を逐次乗じて(所定時間毎に乗じて)漸減線T(R2β)が設定される。このように、叩打位置が第2リム19であると特定された場合、閾値設定部31で設定される閾値は、一定の閾値T(R2α)とそれに続く漸減線T(R2β)とにより構成されることとなる。なお、叩打位置が第1リム18であると特定された場合、閾値設定部31で設定される閾値は、一定の閾値T(R1α)とそれに続く漸減線T(R1β)とにより構成されることとなる。
【0080】
楽音発生部32は、閾値設定部31及び叩打位置特定部30と同一のマイコン等又は接続された別個のマイコン等から成り、第1の実施形態における楽音発生部14と同様、閾値設定部31で設定された閾値を超えた検出信号に基づいて所定の楽音を発生させて出力するものである。また、楽音発生部32は、音源部28と接続された出力手段15に接続されており、発生した楽音を出力手段15に出力可能とされている。かかる出力手段15は、第1の実施形態と同様のものである。
【0081】
次に、本実施形態に係る音源部28の制御について、
図15a~
図15hに基づいて説明する。
先ず、S1にてヘッドセンサ25の出力V(H)(検出信号)は最小閾値T(Hmin)を超えたか否か判定し、超えたと判定されると、S2にて所定期間中のヘッドセンサ25の出力最大値V(Hmax)を取得する。その後、S3にて所定期間中の第1リムセンサ26の出力最大値V(R1max)を取得するとともに、S4にて所定期間中の第2リムセンサ27の出力最大値V(R2max)を取得する。
【0082】
その後、S5にて所定期間中の第1リムセンサ26の出力最大値V(R1max)はヘッドセンサ25の出力最大値V(Hmax)に比べて所定の割合以上か否か判定し、所定の割合以上であると判定されると、S6に進み、それぞれの出力最大値V(Hmax)、V(R1max)及びV(R2max)を所定比で合算して第1リム強度決定用出力値V(R1δ)を決定するとともに、所定の割合以上でないと判定されると、S22に進み、以降の制御を行う。
【0083】
そして、S7にて第1リム強度決定用出力値V(R1δ)に対応したドラム第1リムの楽音(第1リム18を叩打したときの楽音)を出力手段15にて発音させる。続いて、S8にてヘッド出力最大値V(Hmax)に係数α(R1)を乗じて閾値T(R1α)(一定の閾値)を設定した後、S9にてヘッドセンサ25の出力V(H)が閾値T(R1α)(一定の閾値)を超えたか否か判定する。
【0084】
S9にてヘッドセンサ25の出力V(H)が閾値T(R1α)(一定の閾値)を超えたと判定された場合、S2に戻って以降の制御を繰り返すとともに、ヘッドセンサ25の出力V(H)が閾値T(R1α)(一定の閾値)を超えないと判定された場合、S10にて所定係数を乗じた第2リムセンサ27の出力V(R2)が閾値T(R1α)を超えたか否か判定する。
【0085】
S10にて所定係数を乗じた第2リムセンサ27の出力V(R2)が閾値T(R1α)を超えたと判定されると、S19へ進み、以降の制御が行われるとともに、所定係数を乗じた第2リムセンサ27の出力V(R2)が閾値T(R1α)を超えないと判定されると、S11にて所定時間t(R1)を経過したか否か判定される。S11にて所定時間t(R1)を経過しないと判定されると、S9に戻って以降の制御を繰り返すとともに、所定時間t(R1)を経過したと判定されると、S12にて回数iを0に設定し、S13にて出力最大値V(Hmax)に係数β(R1)と漸減率γ(R1)のi乗を乗じて閾値T(R1β)(漸減線)を設定する。
【0086】
その後、S14にて閾値T(R1β)(漸減線)が最小閾値T(min)を下回ったか否か判定され、最小閾値T(min)を下回ったと判定された場合、S1に戻ってそれ以降の制御を繰り返すとともに、最小閾値T(min)を下回っていないと判定された場合、S15にてヘッドセンサ25の出力V(H)が閾値T(R1β)(漸減線)を超えたか否か判定される。
【0087】
そして、S15にてヘッドセンサ25の出力V(H)が閾値T(R1β)(漸減線)を超えたと判定された場合、S2へ戻ってそれ以降の制御を繰り返すとともに、ヘッドセンサ25の出力V(H)が閾値T(R1β)(漸減線)を超えないと判定された場合、S16にて所定係数を乗じた第2リムセンサ27の出力V(R2)が閾値T(R1β)(漸減線)を超えたか否か判定される。
【0088】
S16にて所定係数を乗じた第2リムセンサ27の出力V(R2)が閾値T(R1β)(漸減線)を超えたと判定されると、S19へ進み、以降の制御が行われるとともに、所定係数を乗じた第2リムセンサ27の出力V(R2)が閾値T(R1β)(漸減線)を超えないと判定されると、S17にて所定期間経過後に回数iに1を加算した後、S13にて閾値T(R1β)(漸減線)が再び設定され、以後、S14~S17が繰り返される。
【0089】
一方、S1にてヘッドセンサ25の出力V(H)(検出信号)は最小閾値T(min)を超えないと判定されると、S18にて第2リムセンサ27の出力V(R2)(検出信号)は最小閾値T(R2min)を超えたか否か判定し、超えたと判定されると、S19にて所定期間中のヘッドセンサ25の出力最大値V(Hmax)を取得する。なお、S18にて第2リムセンサ27の出力V(R2)(検出信号)が最小閾値T(min)を超えないと判定されると、S1に戻って以降の制御を繰り返す。
【0090】
また、S19が終了すると、S20にて所定期間中の第1リムセンサ26の出力最大値V(R1max)を取得するとともに、S21にて所定期間中の第2リムセンサ27の出力最大値V(R2max)を取得する。その後、S23に進み、それぞれの出力最大値V(Hmax)、V(R1max)及びV(R2max)を所定比で合算して第2リム強度決定用出力値V(R2δ)を決定する。
【0091】
その後、S24にて第2リム強度決定用出力値V(R2δ)に対応したドラム第2リムの楽音(第2リム19を叩打したときの楽音)を出力手段15にて発音させる。続いて、S25にてヘッド出力最大値V(Hmax)に係数α(R2)を乗じて閾値T(R2α)(一定の閾値)を設定した後、S26にてヘッドセンサ25の出力V(H)が閾値T(R2α)(一定の閾値)を超えたか否か判定する。
【0092】
S26にてヘッドセンサ25の出力V(H)が閾値T(R2α)(一定の閾値)を超えたと判定された場合、S2に戻って以降の制御を繰り返すとともに、ヘッドセンサ25の出力V(H)が閾値T(R2α)(一定の閾値)を超えないと判定された場合、S27にて所定係数を乗じた第2リムセンサ27の出力V(R2)が閾値T(R2α)を超えたか否か判定する。
【0093】
S27にて所定係数を乗じた第2リムセンサ27の出力V(R2)が閾値T(R2α)を超えたと判定されると、S19に戻って以降の制御が行われるとともに、所定係数を乗じた第2リムセンサ27の出力V(R2)が閾値T(R2α)を超えないと判定されると、S28にて所定時間t(R2)を経過したか否か判定される。S28にて所定時間t(R2)を経過しないと判定されると、S26に戻って以降の制御を繰り返すとともに、所定時間t(R2)を経過したと判定されると、S29にて回数iを0に設定し、S30にてヘッド出力最大値V(Hmax)に係数β(R2)と漸減率γ(R2)のi乗を乗じて閾値T(R2β)(漸減線)を設定する。
【0094】
その後、S31にて閾値T(R2β)(漸減線)が最小閾値T(min)を下回ったか否か判定され、最小閾値T(min)を下回ったと判定された場合、S1に戻ってそれ以降の制御を繰り返すとともに、最小閾値T(min)を下回っていないと判定された場合、S32にてヘッドセンサ25の出力V(H)が閾値T(R2β)(漸減線)を超えたか否か判定される。
【0095】
そして、S32にてヘッドセンサ25の出力V(H)が閾値T(R2β)(漸減線)を超えたと判定された場合、S2へ戻ってそれ以降の制御を繰り返すとともに、ヘッドセンサ25の出力V(H)が閾値T(R2β)(漸減線)を超えないと判定された場合、S33にて所定係数を乗じた第2リムセンサ27の出力V(R2)が閾値T(R2β)(漸減線)を超えたか否か判定される。
【0096】
S33にて所定係数を乗じた第2リムセンサ27の出力V(R2)が閾値T(R2β)(漸減線)を超えたと判定されると、S19へ進み、以降の制御が行われるとともに、所定係数を乗じた第2リムセンサ27の出力V(R2)が閾値T(R2β)(漸減線)を超えないと判定されると、S34にて所定期間経過後に回数iに1を加算した後、S30にて閾値T(R2β)(漸減線)が再び設定され、以後、S31~S34が繰り返される。
【0097】
一方、S22にて第2リムセンサ27の出力最大値V(R2max)がヘッドセンサ25の出力最大値V(Hmax)に比べて所定の割合以上でないと判定されると、S35に進み、それぞれの出力最大値V(Hmax)、V(R1max)及びV(R2max)を所定比で合算してヘッド強度決定用出力値V(Hδ)を決定する。
【0098】
その後、S36にてヘッド強度決定用出力値V(Hδ)に対応したドラムヘッドの楽音(ヘッド17を叩打したときの楽音)を出力手段15にて発音させる。続いて、S37にてヘッド出力最大値V(Hmax)に係数α(H)を乗じて閾値T(Hα)(一定の閾値)を設定した後、S38にてヘッドセンサ25の出力V(H)が閾値T(Hα)(一定の閾値)を超えたか否か判定する。
【0099】
S38にてヘッドセンサ25の出力V(H)が閾値T(Hα)(一定の閾値)を超えたと判定された場合、S2に戻って以降の制御を繰り返すとともに、ヘッドセンサ25の出力V(H)が閾値T(Hα)(一定の閾値)を超えないと判定された場合、S39にて所定係数を乗じた第2リムセンサ27の出力V(R2)が閾値T(Hα)を超えたか否か判定する。
【0100】
S39にて所定係数を乗じた第2リムセンサ27の出力V(R2)が閾値T(Hα)を超えたと判定されると、S19に戻って以降の制御が行われるとともに、所定係数を乗じた第2リムセンサ27の出力V(R2)が閾値T(Hα)を超えないと判定されると、S40にて所定時間t(H)を経過したか否か判定される。S40にて所定時間t(H)を経過しないと判定されると、S38に戻って以降の制御を繰り返すとともに、所定時間t(H)を経過したと判定されると、S41にて回数iを0に設定し、S42にて出力最大値V(Hmax)に係数β(H)と漸減率γ(H)のi乗を乗じて閾値T(Hβ)(漸減線)を設定する。
【0101】
その後、S43にて閾値T(Hβ)(漸減線)が最小閾値T(min)を下回ったか否か判定され、最小閾値T(min)を下回ったと判定された場合、S1に戻ってそれ以降の制御を繰り返すとともに、最小閾値T(min)を下回っていないと判定された場合、S44にてヘッドセンサ25の出力V(H)が閾値T(Hβ)(漸減線)を超えたか否か判定される。
【0102】
そして、S44にてヘッドセンサ25の出力V(H)が閾値T(Hβ)(漸減線)を超えたと判定された場合、S2へ戻ってそれ以降の制御を繰り返すとともに、ヘッドセンサ25の出力V(H)が閾値T(Hβ)(漸減線)を超えないと判定された場合、S45にて所定係数を乗じた第2リムセンサ27の出力V(R2)が閾値T(Hβ)(漸減線)を超えたか否か判定される。
【0103】
S45にて所定係数を乗じた第2リムセンサ27の出力V(R2)が閾値T(Hβ)(漸減線)を超えたと判定されると、S19へ進み、以降の制御が行われるとともに、所定係数を乗じた第2リムセンサ27の出力V(R2)が閾値T(Hβ)(漸減線)を超えないと判定されると、S46にて所定期間経過後に回数iに1を加算した後、S42にて閾値T(Hβ)(漸減線)が再び設定され、以後、S43~S46が繰り返される。
【0104】
本実施形態に係る電子打楽器(電子シンバル及び電子ドラム)によれば、音源部(10、28)は、叩打検出部から出力された検出信号に基づいて叩打された叩打位置を特定する叩打位置特定部(12、30)と、叩打位置特定部(12、30)で特定された叩打位置に応じて閾値を設定する閾値設定部(13、31)と、閾値設定部(13、31)で設定された閾値を超えた検出信号に基づいて所定の楽音を発生させて出力する楽音発生部(14、32)とを有するとともに、閾値設定部(13、31)で設定される閾値は、時間経過に伴って漸減する漸減線を有して成り、漸減線は、叩打位置特定部(12、30)で特定された叩打位置毎に設定されるので、叩打位置毎の振動特性を考慮した閾値を設定することができ、叩打位置を連打しても各叩打に応じた楽音を確実に発生させて出力することができる。
【0105】
また、本実施形態に係る音源部(10、28)は、叩打検出部から出力された検出信号が最小の閾値を超えた後、所定期間が経過するまでの間において出力された最大の検出信号に対応した楽音を発生させるので、叩打の誤検出を抑制しつつ打撃力に応じた適切な楽音を出力させることができる。
【0106】
さらに、本実施形態に係る閾値設定部(13、31)は、叩打位置特定部(12、30)で特定された叩打位置に応じた係数を取得するとともに、最大の検出信号の値に係数を乗じて得られた一定の閾値を所定時間設定し、その一定の閾値に続いて漸減線が設定されるので、漸減線が設定される前の所定時間において閾値を大きめに設定することができ、連打の検出に影響を与えることなく叩打の誤検出を確実に防止することができる。特に、所定時間は、叩打位置特定部(12、30)で特定された叩打位置毎に設定されるので、漸減線が設定される前の所定時間において閾値を叩打位置に応じて適切に設定することができ、叩打の誤検出をより確実に防止することができる。
【0107】
またさらに、本実施形態に係る閾値設定部(13、31)は、叩打位置特定部(12、30)で特定された叩打位置に応じた漸減率を取得するとともに、漸減線は、最大の検出信号の値に係数を乗じた値に対し、漸減率を逐次乗じて設定されるので、最大の検出信号に応じた適切な漸減線を叩打毎に設定することができ、連打の検出性能を維持したまま叩打の誤検出を防止できる。
【0108】
加えて、他の実施形態に係る閾値設定部(13、31)は、叩打位置に対応した漸減線を予め複数記憶するとともに、叩打位置特定部(12、30)で特定された叩打位置に応じて漸減線を選択して設定されるので、漸減線を逐次算出するものに比べ、漸減線の設定をより円滑に行わせることができる。
【0109】
しかるに、第1の実施形態によれば、本体部1は、叩打位置としてのボウ部Faとエッジ部Fc又はカップ部Fbとを有する電子シンバルから成るので、電子シンバルにおける叩打位置毎の振動特性を考慮した閾値を設定することができる。また、第2の実施形態によれば、本体部16は、叩打位置としてのヘッド17と第1リム18又は第2リム19とを有する電子ドラムから成るので、電子ドラムにおける叩打位置毎の振動特性を考慮した閾値を設定することができる。
【0110】
以上、本実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されず、例えば閾値設定部で設定される閾値は、時間経過に伴って漸減する漸減線を有して成り、漸減線は、叩打位置特定部で特定された叩打位置毎に設定されるものであれば、曲線状、直線状又は不連続のものであってもよい。本実施形態に係る閾値は、一定の閾値に続いて漸減線が設定されるが、漸減線のみ設定されるものであってもよい。
【0111】
また、叩打位置としてボウ部Fa及びエッジ部Fcのみ有する電子シンバル、又は叩打位置としてボウ部Fa及びカップ部Fbのみ有する電子シンバルであってもよく、さらに、叩打位置としてヘッド17及び第1リム18のみ有する電子ドラム、又は叩打位置としてヘッド17及び第2リム19のみ有する電子ドラムであってもよい。なお、本実施形態においては、電子シンバル及び電子ドラムに適用されているが、他の電子打楽器に適用するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0112】
閾値設定部で設定される閾値は、時間経過に伴って漸減する漸減線を有して成り、漸減線は、叩打位置特定部で特定された叩打位置毎に設定される電子打楽器であれば、外観形状が異なるもの或いは他の機能が付加されたもの等にも適用することができる。
【符号の説明】
【0113】
1 本体部
2 パッド部
3 フレーム部
4 振動センサ(叩打検出部)
5 カップセンサ(叩打検出部)
6 エッジセンサ(叩打検出部)
7 カバー部材
8 軸スリーブ
9 出力端子
10 音源部
11 AD変換器
12 叩打位置特定部
13 閾値設定部
14 楽音発生部
15 出力手段
16 本体部
17 ヘッド
18 第1リム
19 第2リム
20 カバー
21 筐体
22 プレート
23 支持部材
23a 弾性体
23b 弾性体
23c 支持プレート
23ca 長孔
23d 支持ステー
23e 支持部材
24 ヘッドセンサクッション
25 ヘッドセンサ(叩打検出部)
26 第1リムセンサ(叩打検出部)
27 第2リムセンサ(叩打検出部)
28 音源部
29 AD変換器
30 叩打位置特定部
31 閾値設定部
32 楽音発生部
F 打面
Fa ボウ部
Fb カップ部
Fc エッジ部
D テンションボルト