(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024077538
(43)【公開日】2024-06-07
(54)【発明の名称】裁断機
(51)【国際特許分類】
B26D 5/00 20060101AFI20240531BHJP
B26D 7/02 20060101ALI20240531BHJP
B26D 9/00 20060101ALI20240531BHJP
B26D 7/06 20060101ALI20240531BHJP
B65H 35/04 20060101ALI20240531BHJP
【FI】
B26D5/00 F
B26D7/02 A
B26D9/00
B26D7/06 Z
B65H35/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022189680
(22)【出願日】2022-11-28
(71)【出願人】
【識別番号】000151221
【氏名又は名称】株式会社島精機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100162031
【弁理士】
【氏名又は名称】長田 豊彦
(74)【代理人】
【識別番号】100175721
【弁理士】
【氏名又は名称】高木 秀文
(72)【発明者】
【氏名】和田 英之
(72)【発明者】
【氏名】名出 隆二
【テーマコード(参考)】
3C024
【Fターム(参考)】
3C024AA07
3C024AA08
(57)【要約】
【課題】裁断後のシート材を搬送する場合に、生地ズレを防止する裁断機を提供する。
【解決手段】裁断テーブル100に吸引されるシート材2を、第一のビーム移動体200に支持される裁断ヘッド230により裁断し、裁断後のシート材2を搬送する裁断機1において、第二のビーム移動体300に支持され、裁断後のシート材2に被せる密閉シート4が巻回されるシートローラ331が設けられる密閉シート敷設装置330と、シートローラ331を任意に回転駆動し、密閉シート4の繰り出しと巻取りとを行う第一の駆動機構332と、密閉シート4の反シートローラ331側部分を支持する支持部材400と、裁断後のシート材2を搬送する場合、第一の駆動機構332を制御し、シートローラ331の回転を停止させると共に、第二のビーム移動体300を制御し、シート材2の搬送に同期して密閉シート敷設装置330を移動させる制御部500と、を具備した。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送機能を有した裁断テーブルに吸引されるシート材を、所定の搬送方向に沿って移動可能な第一のビーム移動体に支持される裁断ヘッドにより裁断し、裁断後の前記シート材を当該裁断テーブルにより前記搬送方向に搬送する裁断機において、
前記第一のビーム移動体の前記搬送方向の下流側に位置して前記搬送方向に沿って移動可能な、前記第一のビーム移動体とは別の第二のビーム移動体に支持され、裁断後の前記シート材に被せる密閉シートが巻回されるローラが設けられる密閉シート敷設装置と、
前記ローラを任意に回転駆動し、前記密閉シートの繰り出しと巻取りとを行う第一の駆動機構と、
前記ローラよりも前記搬送方向の下流側に設けられ、前記ローラから繰り出された前記密閉シートの反ローラ側部分を支持する支持部材と、
裁断後の前記シート材を搬送する場合、前記第一の駆動機構を制御し、前記ローラの回転を停止させると共に、前記第二のビーム移動体を制御し、前記シート材の搬送に同期して前記密閉シート敷設装置を移動させる制御部と、
を具備する裁断機。
【請求項2】
前記密閉シート敷設装置に昇降可能に設けられ、前記ローラに巻回された前記密閉シートを前記シート材へ案内するガイド部と、
前記ガイド部に駆動力を付与する駆動源と、
前記裁断テーブルに配置される前記シート材の高さを検出する高さ検出手段と、
を具備し、
前記制御部は、
前記駆動源を制御し、前記高さ検出手段の検出結果に応じて前記ガイド部を昇降させる、
請求項1に記載の裁断機。
【請求項3】
前記支持部材は、
前記密閉シートの繰り出しと巻取りとを行う第二の駆動機構を有する、
請求項1に記載の裁断機。
【請求項4】
前記シート材の所定の目打ち位置に目打ちを行う目打ち装置を具備し、
前記目打ち装置は、
前記第二のビーム移動体に支持される、
請求項1に記載の裁断機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、裁断テーブルに吸引されるシート材を裁断ヘッドにより裁断する裁断機の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、裁断テーブルに吸引されるシート材を裁断ヘッドにより裁断する裁断機の技術は公知となっている。例えば、特許文献1に記載の如くである。
【0003】
特許文献1には、搬入後の積層されたシート材を、被覆シートと共に裁断テーブルに吸引固定した状態で、裁断ヘッドにより裁断する裁断機の技術が開示されている。ここで、裁断後の切り口から空気が流入した場合には、吸引圧の低下が生じる。吸引圧が低下すると、吸引固定した状態のシート材が膨らみ、裁断精度に影響が生じる。
【0004】
図7は、特許文献1に記載の裁断機を模式的に示したものである。なお、
図7では、本発明の実施形態の符号に対応するように、特許文献1の裁断機の符号を適宜変更している。上記裁断機においては、切り口からの空気の流入を防ぐため、シート材2及び被覆シート3の裁断済みの領域が、密閉シート4により覆われる(
図7(b)を参照)。密閉シート4は、裁断ヘッドが支持されるガイドブリッジ(第一のビーム移動体200)の駆動ローラ5に巻回されている。駆動ローラ5から引き出された密閉シート4の一端は、裁断エリア110の下流側に設けられた保持アーム(支持部材400)に固定されている。駆動ローラ5は、裁断テーブル側面の溝部121を覆うカバーベルト122を利用して、第一のビーム移動体200の移動と連動することで密閉シート4の繰り出し及び巻取りを行う(
図7(a)を参照)。
【0005】
ここで、上記裁断機においては、裁断の終了後に、シート材2を吸引しながら生地送りが行われる。この場合、密閉シート4が、被覆シート3及びシート材2と共に送り出されずに、裁断テーブルに対する位置を維持すると、当該密閉シート4と被覆シート3及びシート材2との間の抵抗が強いため、シート材2の積層が崩れて生地ズレが生じる。特に裁断エリア110を跨ぐような長尺パーツの裁断時や、生地送りしながらの裁断において、途中で生地ズレが生じることは問題である。
【0006】
しかしながら、下流側の支持部材400は固定式で動力を持たず、上流側の駆動ローラ5も第一のビーム移動体200の位置に依存して繰り出し及び巻取りを行うしくみのため、密閉シート4は裁断テーブルに対する位置が固定される。すなわち、密閉シート4を、裁断後のシート材2の生地送りに連動して駆動ローラ5から送り出すことはできない。
【0007】
そこで、上記裁断機においては、
図7(c)に示すように、生地送りの前に第一のビーム移動体200を下流側へと移動させて、密閉シート4を一旦巻取って、裁断面を露出させた状態で生地送りを行うことも考えられる。
【0008】
しかしながら、裁断面を露出させた状態では、シート材2が被覆シート3で覆われているものの、切れ目から空気が流入する状態のため、吸引圧が低下して生地が膨らんでしまい、特に長尺パーツの裁断などで生地ズレが生じ易くなる。この対策として吸引圧を高めることも考えられるが、一度生地が膨らんでしまうと、空気流入のある状況下では密閉シートを被せていた状態と同等に戻すことは困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は以上の如き状況に鑑みてなされたものであり、その解決しようとする課題は、裁断後のシート材を搬送する場合に、生地ズレを防止する裁断機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0012】
即ち、本発明に係る裁断機は、搬送機能を有した裁断テーブルに吸引されるシート材を、所定の搬送方向に沿って移動可能な第一のビーム移動体に支持される裁断ヘッドにより裁断し、裁断後の前記シート材を当該裁断テーブルにより前記搬送方向に搬送する裁断機において、前記第一のビーム移動体の前記搬送方向の下流側に位置して前記搬送方向に沿って移動可能な、前記第一のビーム移動体とは別の第二のビーム移動体に支持され、裁断後の前記シート材に被せる密閉シートが巻回されるローラが設けられる密閉シート敷設装置と、前記ローラを任意に回転駆動し、前記密閉シートの繰り出しと巻取りとを行う第一の駆動機構と、前記ローラよりも前記搬送方向の下流側に設けられ、前記ローラから繰り出された前記密閉シートの反ローラ側部分を支持する支持部材と、裁断後の前記シート材を搬送する場合、前記第一の駆動機構を制御し、前記ローラの回転を停止させると共に、前記第二のビーム移動体を制御し、前記シート材の搬送に同期して前記密閉シート敷設装置を移動させる制御部と、を具備するものである。
このように構成することにより、裁断後のシート材を搬送する場合に生地ズレを防止できる。
【0013】
また、裁断機は、前記密閉シート敷設装置に昇降可能に設けられ、前記ローラに巻回された前記密閉シートを前記シート材へ案内するガイド部と、前記ガイド部に駆動力を付与する駆動源と、前記裁断テーブルに配置される前記シート材の高さを検出する高さ検出手段と、を具備し、前記制御部は、前記駆動源を制御し、前記高さ検出手段の検出結果に応じて前記ガイド部を昇降させるようにしてもよい。
このように構成することにより、シート材の高さに応じてガイド部の高さを調整できるため、シート材に対して、できるだけ上流側にまで密閉シートを被せることができる。
【0014】
また、前記支持部材は、前記密閉シートの繰り出しと巻取りとを行う第二の駆動機構を有するようにしてもよい。
このように構成することにより、裁断テーブルの下流側において、生地と共に搬送した密閉シートがだぶつくのを防止できる。
【0015】
また、裁断機は、前記シート材の所定の目打ち位置に目打ちを行う目打ち装置を具備し、前記目打ち装置は、前記第二のビーム移動体に支持されるようにしてもよい。
このように構成することにより、裁断ヘッドによる裁断とは別に目打ちを行うことができ、裁断効率を向上できる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の効果として、裁断後のシート材を搬送する場合に、生地ズレを防止することができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の一実施形態に係る裁断機を模式的に示した側面図。
【
図3】第二のビーム移動体を模式的に示した側面断面図。
【
図4】第二のビーム移動体の基部の内部を模式的に示した側面断面図。
【
図5】(a)第一のビーム移動体を模式的に示した側面断面図。(b)裁断時の様子を模式的に示した側面断面図。(c)裁断後の生地送りの様子を模式的に示した側面断面図。
【
図6】(a)生地の厚さ寸法が比較的小さい場合の密閉シート敷設装置を模式的に示した側面断面図。(b)生地の厚さ寸法が比較的大きい場合の密閉シート敷設装置を模式的に示した側面断面図。
【
図7】(a)特許文献1の裁断機の第一のビーム移動体を模式的に示した側面断面図。(b)特許文献1の裁断機の裁断時の様子を模式的に示した側面断面図。(c)特許文献1の裁断機の裁断後の生地送りの様子を模式的に示した側面断面図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下では、図中の矢印U、矢印D、矢印F、矢印B、矢印L及び矢印Rで示した方向を、それぞれ上方向、下方向、前方向、後方向、左方向及び右方向と定義して説明を行う。また本実施形態に係る裁断機1は、前方から後方へ向けてシート材2を搬送するため、前後方向を搬送方向と称し、前側を搬送方向における上流側、後側を搬送方向における下流側と定義して説明を行う。また、各図においては、説明の便宜上、一部の部材の図示を適宜省略している場合がある。
【0019】
まず、本発明の一実施形態に係る裁断機1の全体的な構成について説明する。
【0020】
図1及び
図2に示す裁断機1は、シート材2を所望の形状に裁断する。シート材2としては、例えば布帛やニット等の生地や、樹脂製のシート等、柔軟で通気性を有する素材を採用可能である。シート材2は、複数枚積層された状態で裁断される。なお、以下の図で示すシート材2は、積層された状態を模式的に示している。また便宜的に、積層されたシート材2を、単に「シート材2」と称する場合がある。裁断機1は、主として裁断テーブル100、第一のビーム移動体200、第二のビーム移動体300、支持部材400及び制御部500を具備する。
【0021】
裁断テーブル100は、載置されたシート材2を上流側から下流側へ搬送する機能を有する。
図2に示すように、裁断テーブル100は、シート材2が載置されると共に裁断が行われる裁断エリア110と、裁断エリア110の左右両側に位置する外側エリア120と、を有する。
【0022】
裁断エリア110は、搬送機能を有するベルトコンベヤ111により形成されている。ベルトコンベヤ111の表面には、通気性を有するブラシにより形成されたブロックが設けられている。このため、裁断エリア110の上面は、ブラシの毛の先端により形成されている。ベルトコンベヤ111の下方には、ベルトコンベヤ111上のシート材2を吸引する吸引装置(不図示)が設けられている。
【0023】
図2に示す左右の外側エリア120には、後述する第一のビーム移動体200及び第二のビーム移動体300を移動させるための溝部121が形成されている。溝部121は、外側エリア120の上面に、開口するように形成されている。溝部121は、シート状のカバーベルト122により閉塞されている(
図4、
図5(a)を参照)。カバーベルト122の搬送方向両端部は、溝部121の上流側端部及び下流側端部に固定されている。
【0024】
裁断テーブル100のうちベルトコンベヤ111の上流側には、シート材2の延反を行う延反機(不図示)が設けられている。
【0025】
また、ベルトコンベヤ111の上流側には、シート材2に対して被覆シート3を被せるための被覆シート敷設装置130が設けられている。被覆シート3は、例えば合成樹脂フィルム等で形成された空気不透過性のシートである。被覆シート敷設装置130は、軸線を左右方向に向けたシートローラ131と、シートローラ131の左右方向両端部を回転自在に支持する支持部132と、を具備する。被覆シート敷設装置130は、シートローラ131に巻回された被覆シート3を、裁断エリア110に搬入されたシート材2に敷設可能に形成される。
【0026】
ベルトコンベヤ111の下流側には、裁断後のシート材2の搬出先であるピックアップテーブルが設けられている。ピックアップテーブルでは、裁断後のシート材2から切り出されたパーツが作業者により回収される。
【0027】
第一のビーム移動体200は、シート材2を裁断する裁断ヘッド230を、搬送方向及び左右方向に移動可能に支持するものである。裁断ヘッド230は、シート材2を裁断するための裁断刃を備えている。
図2に示すように、第一のビーム移動体200は、左右の外側エリア120に設けられる一対の基部210と、一対の基部210同士を連結するように左右方向に延出する第一のビーム220と、を具備する。一対の基部210の下端部は、溝部121を介して裁断テーブル100の内部に配置される。
【0028】
図5(a)に示すように、第一のビーム移動体200は、基部210の下部に設けられる搬送方向移動機構211により、溝部121に沿って搬送方向に移動可能である。基部210には、搬送方向移動機構211に対するカバーベルト122の干渉を防ぐために、カバーベルト122を持ち上げるように配置された4つのローラが設けられている。
【0029】
また、裁断ヘッド230は、左右移動機構(不図示)により、第一のビーム220に沿って左右方向に移動可能である。第一のビーム移動体200は、各移動機構により、裁断ヘッド230を搬送方向及び左右方向に移動させることができる。各移動機構としては、ラックアンドピニオンやエンドレスベルト等を用いた機構を採用可能である。
【0030】
図1から
図4までに示す第二のビーム移動体300は、裁断後のシート材2及び被覆シート3に密閉シート4を敷設する密閉シート敷設装置330を、搬送方向に移動可能に支持するものである。密閉シート4は、例えば合成樹脂フィルム等で形成された空気不透過性のシートである。
図1及び
図2に示すように、第二のビーム移動体300は、第一のビーム移動体200よりも下流側に配置される。第二のビーム移動体300は、基部310、第二のビーム320、密閉シート敷設装置330、目打ち装置340及び高さ検出手段350を具備する。
【0031】
基部310は、左右の外側エリア120にそれぞれ設けられる。基部310の下端部は、溝部121を介して裁断テーブル100の内部に配置される。基部310は、
図4に示す搬送方向移動機構311により、溝部121に沿って搬送方向に移動可能である。搬送方向移動機構311の機構の種類やカバーベルト122との干渉防止は、搬送方向移動機構211と同様である。
【0032】
図2及び
図3に示す第二のビーム320は、一対の基部310同士を連結するように左右方向に延出する。第二のビーム320としては、例えば角パイプ等を採用可能である。
【0033】
図3に示す密閉シート敷設装置330は、密閉シート4の繰り出し及び巻取りを行う。密閉シート敷設装置330は、基部310に設けられる。密閉シート敷設装置330は、シートローラ331、第一の駆動機構332、ガイド部333、昇降機構334及びテンション機構335を具備する。
【0034】
シートローラ331は、密閉シート4が巻回される。シートローラ331は、軸線を左右方向に向けた略円柱形状に形成される。シートローラ331は、一対の基部310に対して回転自在に支持される。
【0035】
図3に示す第一の駆動機構332は、シートローラ331を任意の回転方向に回転駆動する。第一の駆動機構332は、モータ等の駆動源332aと、駆動源332aの駆動力をシートローラ331に伝達するベルト等の伝達部332bと、を備える。図例では、第一の駆動機構332を基部310の上部に設けた例を示している。
【0036】
図3に示すガイド部333は、シートローラ331に巻回された密閉シート4を、シート材2側に案内する。ガイド部333は、軸線を左右方向に向けた略円柱形状に形成される。ガイド部333は、一対の基部310に回転可能に架設される。ガイド部333は、上下方向に移動可能に設けられている。
【0037】
図4に示す昇降機構334は、ガイド部333を昇降させる機構である。昇降機構334は、モータ等の駆動源334aと、駆動源334aに設けられたギヤ334bと、ギヤ334bに係合すると共に上下方向に延出するラック334cと、を備える。ラック334cは、上下方向に移動可能に基部310に設けられると共に、ガイド部333に連結されている。このため、駆動源334aを駆動させることで、ラック334cを介してガイド部333に駆動力を付与し、当該ガイド部333を昇降させることができる。
【0038】
図3に示すテンション機構335は、シートローラ331に巻回された密閉シート4に、テンションを付与する。テンション機構335は、例えばコイルばね等の付勢部材の付勢力を利用して、密閉シート4にテンションを付与する。テンション機構335は、シートローラ331と、ガイド部333と、の間に配置される。
【0039】
密閉シート敷設装置330は、第一の駆動機構332を駆動させることで、シートローラ331に巻回された密閉シート4の繰り出し及び巻取りを行うことができる。
【0040】
図1及び
図2に示す目打ち装置340は、シート材2に針を貫通させることで、シート材2の所定の目打ち位置に目打ちを行う。目打ち装置340は、左右移動機構(不図示)により、第二のビーム320に沿って左右方向に移動可能に支持される。左右移動機構としては、ラックアンドピニオンやエンドレスベルト等を用いた機構を採用可能である。
図2に示すように、第一のビーム移動体200及び第二のビーム移動体300を近接させた状態では、目打ち装置340の一部と、裁断ヘッド230の一部と、が左右方向に見て重複する。
【0041】
高さ検出手段350は、裁断エリア110に載置されたシート材2及び被覆シート3の高さを検出する。高さ検出手段350としては、赤外線センサ等の非接触のセンサを採用可能である。高さ検出手段350は、例えば基部310に設けられる。なお、高さ検出手段350の設置箇所としては、基部310に限定されず、第二のビーム320や目打ち装置340等の種々の箇所を採用可能である。
【0042】
図1及び
図2に示す支持部材400は、シートローラ331に巻回された密閉シート4の、反シートローラ331側の端部を支持する。支持部材400は、ベルトコンベヤ111の下流側に設けられる。支持部材400は、軸線を左右方向に向けた支持側シートローラ410と、支持側シートローラ410の左右方向両端部を支持する支持部420と、を具備する。
【0043】
図1に示す制御部500は、裁断機1の動作を制御するためのものである。制御部500は、CPU等の演算処理部、RAMやROM等の記憶部等を具備する。制御部500の記憶部には、裁断機1の制御に用いられる種々の情報やプログラム等が記憶される。
【0044】
制御部500は、裁断テーブル100、第一のビーム移動体200及び第二のビーム移動体300の各部と接続されている。制御部500は、予め作成された裁断のためのプログラム等に基づいて、裁断機1の各部の動作を制御することができる。具体的には、制御部500は、ベルトコンベヤ111、第一のビーム移動体200及び第二のビーム移動体300の動作を制御することで、シート材2の搬入出や裁断、目打ち、密閉シート4の敷設等を行うことができる。
【0045】
以下では、
図1、
図5及び
図6を用いて、裁断機1の動作について説明する。
【0046】
図1に示すように、裁断エリア110には、延反機(不図示)で積層されたシート材2が搬入される。また、積層されたシート材2には、被覆シート敷設装置130からの被覆シート3が敷設される。制御部500は、ベルトコンベヤ111を作動させることで、積層されたシート材2及び被覆シート3の搬送を行う。また、制御部500は、シート材2及び被覆シート3の全体が裁断エリア110の所定の位置に搬送された場合、ベルトコンベヤ111を停止させる。
【0047】
制御部500は、この状態で吸引装置を作動させることで、積層されたシート材2を被覆シート3と共に吸引することができる。これにより、積層されたシート材2を裁断エリア110上に吸引固定することができる。吸引された状態のシート材2は、下方へ圧縮され、吸引されていない状態と比べて高さが低くなる。なお吸引固定されたシート材2は、ベルトコンベヤ11により、吸引固定された状態のまま搬送可能である(
図5(b)を参照)。
【0048】
次に、制御部500は、第一のビーム移動体200の裁断ヘッド230を作動させることで、吸引固定されたシート材2を、被覆シート3と共に予め設定された形状に裁断する。裁断ヘッド230による裁断は、概ね下流側から上流側に向かって順番に各パーツを切り出すように行われる。
図5(b)及び(c)では、シート材2のうち、一点鎖線で示す境界線Lよりも下流側の領域は裁断後の部分、前記境界線Lよりも上流側の領域は裁断前の部分を示している。また、制御部500は、第二のビーム移動体300の目打ち装置340を作動させることで、シート材2の所定の目打ち位置に目打ちを行う。
【0049】
裁断ヘッド230により裁断が行われると、シート材2及び被覆シート3には切り口が形成される。切り口から裁断テーブル100の内部に空気が流入した場合には、前記吸引装置による吸引圧が低下することで、吸引固定されたシート材2が膨らみ、裁断精度に影響が出るおそれがある。
【0050】
本実施形態では、制御部500は、シート材2及び被覆シート3の裁断済みの領域を、密閉シート4で上から覆うことで、切り口からの空気の流入を防止し、吸引圧を維持することができる。具体的には、
図5(b)に示すように、制御部500は、第二のビーム移動体300を、第一のビーム移動体200の近傍に位置するように、第一のビーム移動体200の搬送方向の移動に追従して移動させる。この際には、制御部500は、第一の駆動機構332を駆動させることで、シートローラ331に巻回された密閉シート4の繰り出し又は巻取りを行う。これにより、シート材2及び被覆シート3の裁断後の領域に対して、密閉シート4を敷設することができる。また、敷設された密閉シート4は、覆った部分のシート材2及び被覆シート3と共に、裁断テーブル100上に吸引固定されることとなる。
【0051】
図5(c)に示すように、所定の裁断箇所の裁断が終了した場合、制御部500は、ベルトコンベヤ111を作動させて、シート材2及び被覆シート3を下流側へ搬送する生地送りを行う。この際、制御部500は、第一の駆動機構332を制御し、シートローラ331の回転を停止させ、密閉シート4の繰り出し及び巻取りを行わない。また、制御部500は、第二のビーム移動体300を制御し、シート材2の搬送に同期して密閉シート敷設装置330を移動させる。すなわち、制御部500は、ベルトコンベヤ111及び密閉シート敷設装置330が、概ね同一のタイミングかつ同一の速さで移動するように、ベルトコンベヤ111及び第二のビーム移動体300の搬送方向移動機構311の動作を同期させる。これにより、シート材2、被覆シート3及び密閉シート4は、互いに一体的に、すなわち吸引固定された状態のまま下流側へ搬送される。
【0052】
裁断済みのシート材2は、ベルトコンベヤ111よりも下流側のピックアップテーブル等に搬送される。ここで、ベルトコンベヤ111から外れた場所では、前記吸引装置による吸引力が発生しない。このため、シート材2、被覆シート3及び密閉シート4は、ピックアップテーブルへ搬送されると、吸引固定された状態が解除される。こうして、密閉シート4は、ベルトコンベヤ111の下流側端部に位置するように留まる。制御部500は、裁断済みのシート材2がベルトコンベヤ111により搬出された後、第一の駆動機構332を駆動させて、密閉シート4の巻取りを行う。
【0053】
本実施形態に係る裁断機1は、生地送りの前に密閉シート4を一旦巻取る必要がある特許文献1の裁断機(
図7(b)及び(c)を参照)とは異なり、裁断後のシート材2の生地送りと共に、密閉シート4を移動させることができる(
図5(b)及び(c)を参照)。これによれば、密閉シート4と被覆シート3及びシート材2との間に抵抗が生じるのを防ぐことができるため、シート材2の積層が崩れて生地ズレが生じるのを防ぐことができる。また裁断機1では、特許文献1の裁断機のように密閉シート4を一旦巻取る必要がないため、裁断面が露出して膨らんだシート材2に対して再度密閉シート4を被せることがない。すなわち、シート材2の積層された状態を崩すことなく、裁断を継続することができる。
【0054】
また、
図6に示すように、本実施形態に係る裁断機1によれば、シート材2の高さに応じてガイド部333の高さを調整することができる。具体的には、制御部500は、昇降機構334の駆動源334aを制御し、高さ検出手段350の検出結果に応じてガイド部333を昇降させることができる(
図3及び
図4を参照)。制御部500は、例えば、ガイド部333とシート材2の上面との間の距離が、予め設定された比較的近い値になるように、昇降機構334の制御を行うことができる。
【0055】
図6(a)では、シート材2の高さが比較的低い例を示している。この場合は、制御部500は、ガイド部333が比較的低い位置に位置するように、昇降機構334の制御を行う。また、
図6(b)では、シート材2の高さが比較的高い例を示している。この場合は、制御部500は、ガイド部333が比較的高い位置に位置するように、昇降機構334の制御を行う。
【0056】
図6(b)では、
図6(a)で示したシート材2の高さを二点鎖線で示している。仮にガイド部333が昇降不能である場合、ガイド部333は、シート材2の高さが高い場合を考慮して比較的高い位置に設置する必要がある。しかしながら、ガイド部333とシート材2との高さ位置が離れすぎると、シート材2に空気が流入し易くなる可能性がある。具体的には、仮に
図6(b)で示す高さのガイド部333に、
図6(a)で示すシート材2を適用した場合には、シート材2に対して密閉シート4が敷設された部分のうち上流側端部の位置が、ガイド部333から離れた比較的下流側になる(
図6(b)で破線で示す仮想線を参照)。このような場合、裁断後の切り口に対して密閉シート4が覆われていない部分が比較的大きくなる可能性があり、シート材2に空気が流入し易くなる。
【0057】
これに対して、本実施形態に係る裁断機1によれば、シート材2の高さに応じてガイド部333の高さを調整することで、ガイド部333とシート材2との互いの高さ位置を近づけることができる(
図6(a)を参照)。これにより、シート材2に対して密閉シート4が敷設された部分のうち上流側端部の位置を、ガイド部333に近付いた比較的上流側にすることができる。これにより、裁断後の切り口からシート材2に空気が流入することを防止し、シート材2が膨らむことを防ぐことができ、ひいては裁断精度の向上を図ることができる。
【0058】
また、本実施形態では、裁断ヘッド230を第一のビーム移動体200に設け、目打ち装置340を第二のビーム移動体300に設けているので、裁断ヘッド230及び目打ち装置340を互いに独立して動作させることができる。これにより、裁断ヘッド230による裁断とは別に、目打ち装置340による目打ちを行うことができ、裁断効率を向上できる。
【0059】
すなわち、裁断ヘッド230は、搬送方向に往復する動作が比較的頻繁に行われる一方、目打ち装置340は、搬送方向に往復する動作が少なく、主に下流側から上流側へ徐々に移動する。このように、動作の態様が異なる各装置を互いに独立して動作させることで、裁断効率を向上することができる。
【0060】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は本実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の技術的思想の範囲内で適宜の変更が可能である。
【0061】
例えば、本実施形態においては、密閉シート4の繰り出し及び巻取りを密閉シート敷設装置330のみで行う例を示したが、本発明はこれに限るものではない。例えば、支持部材400側に、支持側シートローラ410を任意の回転方向に回転駆動する第二の駆動機構(不図示)を設けるようにして、支持部材400側でも密閉シート4の繰り出し及び巻取りを実行可能な構成を採用してもよい。上記構成によれば、裁断テーブル100の下流側において、シート材2と共に搬送した密閉シート4がだぶつくのを防ぐことができる。
【符号の説明】
【0062】
1 裁断機
100 裁断テーブル
200 第一のビーム移動体
300 第二のビーム移動体
400 支持部材
500 制御部