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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024077540
(43)【公開日】2024-06-07
(54)【発明の名称】裁断機及び裁断刃の摩耗度合取得方法
(51)【国際特許分類】
   B26D 5/00 20060101AFI20240531BHJP
   B26D 7/12 20060101ALI20240531BHJP
   B24B 3/36 20060101ALI20240531BHJP
【FI】
B26D5/00 F
B26D7/12
B24B3/36 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022189682
(22)【出願日】2022-11-28
(71)【出願人】
【識別番号】000151221
【氏名又は名称】株式会社島精機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100162031
【弁理士】
【氏名又は名称】長田 豊彦
(74)【代理人】
【識別番号】100175721
【弁理士】
【氏名又は名称】高木 秀文
(72)【発明者】
【氏名】名出 隆二
【テーマコード(参考)】
3C024
3C158
【Fターム(参考)】
3C024AA03
3C024AA06
3C158AA05
3C158AA11
3C158AA16
3C158AB01
3C158AB04
3C158CA01
3C158CB05
3C158DB07
(57)【要約】
【課題】省スペース化が可能な裁断機を提供する。
【解決手段】裁断刃130によりシート材を裁断する裁断機において、待機位置から裁断刃130の刃先131に当接するまで揺動可能な研磨ベルト220と、研磨ベルト220の揺動角D220を測定する揺動角測定部260と、測定された揺動角D220に基づいて裁断刃130の摩耗度合を取得する制御部と、を具備し、研磨ベルト220は、裁断刃130の刃先131と直角に当接する。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
裁断刃によりシート材を裁断する裁断機において、
待機位置から前記裁断刃の刃先に当接するまで揺動可能な揺動部と、
前記揺動部の揺動角を測定する揺動角測定部と、
測定された前記揺動角に基づいて前記裁断刃の摩耗度合を取得する摩耗度合取得部と、
を具備する裁断機。
【請求項2】
前記揺動部は、
前記裁断刃を研磨する研磨装置を構成する、
請求項1に記載の裁断機。
【請求項3】
前記研磨装置は、
複数のプーリに巻き掛けられ、プーリ間において前記裁断刃に当接可能に構成される研磨ベルトと、
前記研磨ベルトのうち前記裁断刃が当接する部分の内側に設けられる撓み止め部材と、
を具備する、
請求項2に記載の裁断機。
【請求項4】
前記研磨装置は、
駆動源となるエアシリンダと、
当該研磨装置の揺動軸と同軸上に設けられる駆動ギアと、
前記揺動軸とは異なる軸上に設けられ、前記駆動ギアと噛み合う従動ギアと、
前記揺動角測定部に含まれ、前記従動ギアの回転角を測定するエンコーダと、
を具備する、
請求項2に記載の裁断機。
【請求項5】
前記揺動部は、
前記裁断刃の刃先と直角に当接する、
請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の裁断機。
【請求項6】
シート材を裁断する裁断機の裁断刃の摩耗度合取得方法であって、
待機位置から前記裁断刃の刃先と当接するまで揺動部を揺動させる揺動工程と、
前記揺動部の揺動角を測定する測定工程と、
測定された前記揺動角に基づいて前記裁断刃の摩耗度合を取得する摩耗度合取得工程と、
を具備する裁断刃の摩耗度合取得方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート材を裁断する裁断刃の摩耗度合を取得可能な裁断機及び裁断刃の摩耗度合取得方法の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、シート材を裁断する裁断刃の摩耗度合を取得可能な裁断機の技術が公知となっている。例えば、特許文献1に記載の如くである。
【0003】
特許文献1に記載の裁断機の裁断刃は、略円筒状の作動リング内に上方から挿通され、作動リングの軸心回りの回動に応じて刃先が所定方向を向くように構成される。作動リングには、裁断刃の刃先の正面側に、検出ピンが進退可能に設けられる。また作動リングの外側には、刃幅検出手段の作動ピンが進退可能に設けられる。
【0004】
裁断刃の摩耗度合を取得する場合、まず作動リングを回動させ、検出ピンを作動ピンと向かい合うように配置する。次にリニアステッピングモータにより作動ピン及び検出ピンを前進させ、検出ピンを裁断刃の刃先に当接させる。こうして、検出ピンを前進させるための駆動投入パルス数から刃先の位置を検出し、刃幅、ひいては裁断刃の摩耗度合を取得する。
【0005】
しかしながら、前記裁断機では、作動リングのように回動する部材の外側と内側とを跨ぐように配置された検出ピンを、作動リングの外側に設けられた作動ピンと共に移動させるなど、摩耗度合を取得するための構成が比較的複雑であるため、比較的大きな取り付けスペースが必要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7-60693号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、以上の如き状況を鑑みてなされたものであり、その解決しようとする課題は、省スペース化が可能な裁断機及び裁断刃の摩耗度合取得方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0009】
即ち、本発明に係る裁断機は、裁断刃によりシート材を裁断する裁断機において、待機位置から前記裁断刃の刃先に当接するまで揺動可能な揺動部と、前記揺動部の揺動角を測定する揺動角測定部と、測定された前記揺動角に基づいて前記裁断刃の摩耗度合を取得する摩耗度合取得部と、を具備するものである。
このように構成することにより、比較的簡易な構成により裁断刃の摩耗度合を測定でき、省スペース化が可能である。
【0010】
また、前記揺動部は、前記裁断刃を研磨する研磨装置を構成するようにしてもよい。
このように構成することにより、裁断刃を研磨する研磨装置を利用して裁断刃の摩耗度合を測定できるため、より省スペース化が可能である。
【0011】
また、前記研磨装置は、複数のプーリに巻き掛けられ、プーリ間において前記裁断刃に当接可能に構成される研磨ベルトと、前記研磨ベルトのうち前記裁断刃が当接する部分の内側に設けられる撓み止め部材と、を具備するようにしてもよい。
このように構成することにより、研磨ベルトの撓みを防止でき、摩耗度合の測定精度を向上できる。
【0012】
また、前記研磨装置は、駆動源となるエアシリンダと、当該研磨装置の揺動軸と同軸上に設けられる駆動ギアと、前記揺動軸とは異なる軸上に設けられ、前記駆動ギアと噛み合う従動ギアと、前記揺動角測定部に含まれ、前記従動ギアの回転角を測定するエンコーダと、を具備するようにしてもよい。
このように構成することにより、エンコーダを容易に設置できる。
【0013】
また、前記揺動部は、前記裁断刃の刃先と直角に当接するようにしてもよい。
このように構成することにより、裁断刃の摩耗度合を精度よく測定できる。
【0014】
また、本発明に係る裁断刃の摩耗度合取得方法は、シート材を裁断する裁断機の裁断刃の摩耗度合取得方法であって、待機位置から前記裁断刃の刃先と当接するまで揺動部を揺動させる揺動工程と、前記揺動部の揺動角を測定する測定工程と、測定された前記揺動角に基づいて前記裁断刃の摩耗度合を取得する摩耗度合取得工程と、を具備するものである。
このように構成することにより、比較的簡易な構成により裁断刃の摩耗度合を測定でき、省スペース化が可能である。
【発明の効果】
【0015】
本発明の効果として、省スペース化が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施形態に係る裁断機を模式的に示した側面図。
図2】裁断ヘッドの一部を模式的に示した背面図。
図3】裁断ヘッドの一部を模式的に示した側面図。
図4】裁断ヘッドの一部を模式的に示した平面図。
図5】研磨装置を模式的に示した平面図。
図6】(a)裁断刃が回転した状態を模式的に示した平面図。(b)裁断刃が研磨される状態を模式的に示した平面図。
図7】(a)裁断刃が回転した状態を模式的に示した平面図。(b)裁断刃の刃先に研磨ベルトが当接する状態を模式的に示した平面図。
図8】摩耗した裁断刃の刃先に研磨ベルトが当接する状態を模式的に示した平面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下では、図中の矢印U、矢印D、矢印F、矢印B、矢印L及び矢印Rで示した方向を、それぞれ上方向、下方向、前方向、後方向、左方向及び右方向と定義して説明を行う。また本実施形態に係る裁断機1は、後方から前方へ向けてシート材2を搬送するため、前後方向が搬送方向に対応する。
【0018】
まず、本発明の第一実施形態に係る裁断機1の全体的な構成について説明する。
【0019】
図1に示す裁断機1は、シート材2を所望の形状に裁断する。シート材2としては、例えば布帛やニット等の生地や、樹脂製のシート等、柔軟で通気性を有する素材が想定される。シート材2は、複数枚積層された状態で裁断される。なお、以下の図で示すシート材2は、積層された状態を模式的に示している。裁断機1は、主として裁断テーブル10、ビーム移動体20、操作部30及び制御部40を具備する。
【0020】
裁断テーブル10は、ベルトコンベヤ11aにより、シート材2を裁断エリア11へ搬送できる。裁断テーブル10の内部には、裁断エリア11上のシート材2を吸引する図示せぬ吸引装置が設けられている。
【0021】
ベルトコンベヤ11aの後方には、搬入前のシート材2が載置される反物載置部12が設けられている。また反物載置部12の前方には、シート材2に対して空気不透過性の被覆シート3を被せるための被覆シート敷設装置13が設けられている。またベルトコンベヤ11aの前方には、裁断後のシート材2の搬出先である図示せぬピックアップテーブルが設けられている。
【0022】
ビーム移動体20は、裁断エリア11の搬送方向に直交する方向の両外側に設けられる一対の基部21と、一対の基部21同士を連結するように搬送方向に直交する方向に延出するビーム22と、を具備する。基部21は、図示せぬ搬送方向移動機構により、搬送方向に移動可能に構成される。ビーム22は、後述する裁断ヘッド100を支持する。裁断ヘッド100は、図示せぬ移動機構により、ビーム22上を移動することができる。
【0023】
操作部30は、裁断機1を操作するためのものである。操作部30は、各種情報を入力可能なキーボード31及びマウス32と、各種情報を表示可能なディスプレイ33と、を具備する。
【0024】
制御部40は、裁断機1の動作を制御するためのものである。制御部40は、CPU等の演算処理部、RAMやROM等の記憶部等を具備する。制御部40の記憶部には、裁断機1の制御に用いられる種々の情報やプログラム等が記憶される。
【0025】
制御部40は、裁断テーブル10、ビーム移動体20及び操作部30の各部と接続されている。制御部40は、予め作成された裁断のためのプログラム等に基づいて、裁断機1の各部の動作を制御することができる。具体的には、制御部40は、ベルトコンベヤ11a及びビーム移動体20の動作を制御することで、シート材2の搬入出(生地送り)や裁断等を行うことができる。制御部40は、操作部30と通信することで、裁断に関する情報等をディスプレイ33に表示させることができる。
【0026】
以下では、図1から図5を用いて、裁断ヘッド100の構成について説明する。図1に示すように、裁断ヘッド100は、前記移動機構を有してビーム22に沿って移動可能なベース部110と、ベース部110に対して移動可能な可動部120と、を具備する。図2及び図3に示すように、可動部120は、裁断刃130、レシプロヘッド140、R軸ユニット150、シート押え160及び研磨装置170を具備する。
【0027】
裁断刃130は、長手方向を上下方向に向けて配置される。図3及び図4に示すように、裁断刃130は、刃先131、峰部132及び刃先側面133を具備する。刃先131は、裁断刃130の下端部から上下中途部までに亘って形成される。峰部132は、刃先131が向く方向において、刃先131とは反対側に形成される。本実施形態では、刃先131が向く方向において、刃先131から峰部132までの距離を「刃幅W130」と称する。
【0028】
刃先側面133は、刃先131から峰部132側に向けて延びる傾斜面である。刃先側面133は、一対形成される。一対の刃先側面133は、刃先131に向かうにつれて互いに接近するような先細り状に形成される。
【0029】
図2及び図3に示すレシプロヘッド140は、図示せぬ昇降機構によりベース部110に対して昇降可能に支持される。レシプロヘッド140には、裁断刃130が角変位可能かつ着脱可能に取り付けられる。こうして、レシプロヘッド140の昇降に応じて裁断刃130もベース部110に対して昇降できる。裁断刃130は、例えば後述するシート押え160に対して下方に突出する切断位置と、シート押え160よりも上方に位置する非切断位置と、に移動できる。レシプロヘッド140は、裁断時において図示せぬ駆動機構により裁断刃130を高速で往復動可能に構成される。
【0030】
R軸ユニット150は、レシプロヘッド140の下方に配置され、上方から裁断刃130が挿通される。R軸ユニット150は、ベース部110に対して昇降可能に支持されるユニット本体部151と、ユニット本体部151に対して相対回転可能に支持される回転体152と、を具備する。回転体152は、図示せぬモータ等の駆動源から動力が伝達されることにより、R軸A150回りに回転される。裁断刃130は、回転体152の回転に伴って、R軸A150回りに回転される。これによってR軸ユニット150は、刃先131の向きを変更することができる。またR軸ユニット150は、レシプロヘッド140に対して相対的に移動できる。
【0031】
シート押え160は、R軸ユニット150の下方に配置され、R軸ユニット150と接続される。シート押え160は、裁断刃130が上下方向に通過可能に形成される。
【0032】
裁断ヘッド100は、裁断刃130が切断位置に位置する状態で、裁断刃130を往復動させ、所定のプログラムに応じて刃先131の向きを変更しながら水平方向に移動することによって、シート材2を切断することができる。
【0033】
図2から図5に示す研磨装置170は、裁断刃130を研磨する。研磨装置170は、R軸ユニット150のユニット本体部151に設けられる。研磨装置170は、R軸ユニット150と一体的に昇降可能、かつ、回転体152の回転に伴って回転しないように構成される。研磨装置170は、回転軸180、第1部材190、第2部材200、複数のプーリ210、研磨ベルト220、撓み止め部材230、モータ240、揺動機構250及び揺動角測定部260を具備する。なお、図5から図7では、研磨装置170のうち、一部の部材の記載を省略している。
【0034】
図4及び図5に示す回転軸180は、後述する駆動プーリ211を回転させる。回転軸180は、軸心方向を上下方向に向けて配置される。回転軸180は、後述するモータ240を介してユニット本体部151に設けられ、R軸ユニット150に対して軸心回りに相対回転可能に構成される。回転軸180は、裁断刃130に対して水平方向に間隔をあけて配置される。
【0035】
第1部材190は、後述するモータ240を取り付けるための取付台241(図2及び図3参照)の下面に設けられる。図3に示すように、第1部材190は、第1板部191及び第2板部192を具備する。
【0036】
第1板部191は、上下一対設けられる。第1板部191には、図5に示す回転軸180が挿通される。第2板部192は、上下一対の第1板部191を連結するように形成される。第1部材190は、回転軸180の軸心回りに、回転軸180に対して揺動可能に構成される。
【0037】
図3及び図5に示す第2部材200は、後述する従動プーリ212を支持する。第2部材200は、第1部材190の第2板部192に固定され、第2板部192から後方に延出するように形成される。第2部材200は、上下一対設けられる。
【0038】
図5に示す複数のプーリ210は、後述する研磨ベルト220を周回させる。複数のプーリ210は、駆動プーリ211及び従動プーリ212を具備する。駆動プーリ211は、回転軸180に固定される。駆動プーリ211は、上下一対設けられる。従動プーリ212は、駆動プーリ211に対して後方に間隔をあけて配置される。従動プーリ212は、上下一対設けられる。上下一対の従動プーリ212は、上下一対の第2部材200に回転可能に支持される。
【0039】
図3及び図5に示す研磨ベルト220は、裁断刃130を研磨する。研磨ベルト220は、無端状に形成される。研磨ベルト220は、上下一対の駆動プーリ211及び上下一対の従動プーリ212に巻き掛けられることによって、上下一対設けられる。研磨ベルト220は、第1部材190の揺動に伴って回転軸180の軸心回りに揺動し、裁断刃130に対して近接又は離間することができる。本実施形態の研磨ベルト220は、裁断刃130に対して当接する研磨位置(図6(b)参照)、及び裁断刃130に対して離間する待機位置に揺動することができる。なお、図2から図5には、待機位置に位置する研磨ベルト220が示されている。
【0040】
撓み止め部材230は、研磨ベルト220の撓みを防止する。撓み止め部材230は、研磨ベルト220のうち、裁断刃130が当接する部分の内側に設けられる。本実施形態の撓み止め部材230は、従動プーリ212の近傍から研磨ベルト220の前後中途部まで亘って設けられる。撓み止め部材230により、研磨ベルト220と第2部材200との間の隙間が埋められる。
【0041】
図3及び図4に示すモータ240は、研磨ベルト220を周回させるための駆動源である。モータ240は、取付台241に取り付けられる。取付台241は、ユニット本体部151に支持される。モータ240の駆動軸は、回転軸180に連結される。回転軸180の回転に伴って駆動プーリ211が回転し、駆動プーリ211の回転が研磨ベルト220に伝達される。こうしてモータ240は、複数のプーリ210の間において、研磨ベルト220を周回させることができる。
【0042】
揺動機構250は、回転軸180の軸心回りに研磨ベルト220を揺動させる。揺動機構250は、連結部材251及びエアシリンダ252を具備する。
【0043】
図4及び図5に示す連結部材251は、第1部材190と後述するエアシリンダ252とを連結する。連結部材251は、連結軸251aを介して第1部材190の第1板部191に回転可能に支持される。
【0044】
図3及び図4に示すエアシリンダ252は、研磨ベルト220を揺動させるための駆動源である。エアシリンダ252は、本体部252a及びロッド252bを具備する。本体部252aは、待機位置において、長手方向の端部がそれぞれ前側及び後側を向いて配置される。本体部252aの後端部は、軸線方向を上下方向に向けたシリンダ回転軸A252回りに回転可能となるように、ユニット本体部151に支持される。本体部252aは、R軸ユニット150に対して相対回転することができる。ロッド252bは、本体部252aから前方に延出する。ロッド252bの先端部は、連結部材251の先端部に固定される。
【0045】
エアシリンダ252のロッド252bが伸縮されると、エアシリンダ252の後端部及び連結部材251が回転しながら、第1部材190が回転軸180の軸心回りに回転する。第1部材190の回転に伴って第2部材200、従動プーリ212及び研磨ベルト220が回転軸180の軸心回りに揺動する。このようにして、揺動機構250は、ロッド252bの伸縮によって研磨ベルト220を揺動させることができる。
【0046】
揺動角測定部260は、研磨ベルト220の揺動角D220(図7(b)参照)を測定する。図2図4及び図5に示すように、揺動角測定部260は、駆動ギア261、従動ギア262及びエンコーダ263を具備する。
【0047】
駆動ギア261は、第1部材190の揺動に伴って回転する。駆動ギア261は、平面視において扇状に形成されるギア部を具備する。駆動ギア261は、回転軸180と同軸上に設けられる。駆動ギア261は、第1板部191に固定される。駆動ギア261は、回転軸180及びR軸ユニット150に対して相対回転可能に構成される。
【0048】
従動ギア262は、駆動ギア261の回転に伴って回転する。従動ギア262は、駆動ギア261のギア部と噛み合う外歯車により構成され、回転軸180とは異なる軸上に設けられる。従動ギア262は、後述するエンコーダ263に支持される。
【0049】
なお、駆動ギア261及び従動ギア262は、互いに噛み合って、駆動ギア261の回転に伴って従動ギア262が回転する歯車を有するものであればよく、駆動ギア261及び従動ギア262の形状は本実施形態に限定されるものではない。
【0050】
エンコーダ263は、従動ギア262の回転角を測定するためのものである。エンコーダ263は、従動ギア262と水平方向における位置を合わせて配置される。エンコーダ263は、モータ240の取付台241に支持される。エンコーダ263は、軸部263aを具備する。軸部263aは、軸線方向を上下方向に向けて配置される。軸部263aには、従動ギア262が固定される。エンコーダ263は、軸部263aの回転に基づいて、従動ギア262の回転角を測定することができる。エンコーダ263は、図1に示す制御部40と電気的に接続され、従動ギア262の回転角に関する情報を制御部40に出力する。
【0051】
ここで、回転軸180の周囲には、上下一対の駆動プーリ211、モータ240等の部材が設けられるため、エンコーダ263を設置するのに十分なスペースを確保できないことが想定される。そこで本実施形態では、回転軸180とは異なる軸上にエンコーダ263を設けている。これによってエンコーダ263の設置スペースを容易に確保でき、エンコーダ263を容易に設置可能となる。
【0052】
図1に示す制御部40は、エンコーダ263からの信号に基づいて従動ギア262の回転角を取得可能に構成される。制御部40は、回転角の取得結果を用いた演算処理を行うことによって、研磨ベルト220の揺動角D220を算出することができる。また制御部40は、揺動角D220の算出結果に基づいて、裁断刃130の摩耗度合を取得可能に構成される。なお、摩耗度合とは、裁断刃130がどの程度摩耗しているのかを判断可能な情報である。摩耗度合には、裁断刃130の摩耗を具体的な数値で示す第一情報、及び、裁断刃130の摩耗を大まかに(例えば数段階に分けて)示す第二情報が含まれる。本実施形態では、制御部40は、第一情報の一例として、裁断刃130の摩耗量を取得する。
【0053】
裁断刃130の摩耗量とは、刃先131がどの程度後退した(峰部132側に接近した)のかを具体的な数値で示すものである。なお、制御部40が摩耗量を取得する手順については後述する。
【0054】
以下では、図6を用いて、研磨装置170によって裁断刃130を研磨する手順について説明する。
【0055】
まず、図6(a)に示すように、制御部40は、裁断刃130の刃先131が所定方向を向くように、R軸ユニット150を制御する。そして制御部40は、モータ240及びエアシリンダ252を駆動させる。この際エアシリンダ252は、ロッド252bが縮むように駆動される。
【0056】
これによって、図6(b)に示すように、研磨ベルト220は、駆動プーリ211と従動プーリ212との間を周回しながら裁断刃130に接近する。エアシリンダ252は、研磨ベルト220が裁断刃130に当接するまで駆動する。これによって刃先側面133の一方に、プーリ211,212を周回する研磨ベルト220が押し当てられる。制御部40は、この状態でレシプロヘッド140及び裁断刃130を、R軸ユニット150及び研磨装置170に対して昇降させる。これによって刃先側面133の一方が研磨される。
【0057】
刃先側面133の一方が研磨された後で、制御部40は、エアシリンダ252のロッド252bを伸張させる。研磨ベルト220は、ロッド252bの伸張に伴って、裁断刃130から離間される。その後制御部40は、研磨ベルト220に刃先側面133の他方が当接可能となるように、R軸ユニット150を制御して刃先131の向きを変更させる。
【0058】
刃先131の向きを変更後、制御部40は、刃先側面133の一方を研磨する場合と同様の制御を行うことで、刃先側面133の他方を研磨する。こうして裁断刃130の研磨が完了し、裁断刃130の切れ味を回復させることができる。
【0059】
ここで、裁断刃130が摩耗すると刃先131の位置が徐々に後退する。これに伴って裁断刃130によるシート材2の切断位置が、予め想定された位置よりも後退することになるため、裁断精度の低下が懸念される。そこで制御部40は、裁断刃130の摩耗量を取得し、当該摩耗量に基づいて裁断ヘッド100の動作を補正するように構成される。これによって裁断刃130の摩耗に起因する裁断精度の低下を防止することができる。また制御部40は、裁断刃130の摩耗量に基づいて裁断刃130の交換時期を検知可能に構成される。
【0060】
以下では、図7及び図8を用いて、裁断刃130の摩耗度合を取得する手順について説明する。なお、図8には、未使用の裁断刃130が二点鎖線で、摩耗した裁断刃130が実線で示される。
【0061】
まず、図7(a)に示すように、制御部40は、研磨ベルト220に刃先131が当接可能となるように、R軸ユニット150を制御して刃先131の向きを変更させる。この際制御部40は、予め設定された方向に刃先131が向いた初期位置から、予め設定された基準角度だけ裁断刃130を回転させる。
【0062】
図7(b)及び図8に示すように、制御部40は、初期位置から基準角度だけ裁断刃130を回転させた後で、エアシリンダ252を駆動させて研磨ベルト220を待機位置から裁断刃130に向けて揺動させる。この際、制御部40は、研磨ベルト220を周回させないように、モータ240を制御する。研磨ベルト220は、揺動によって裁断刃130の刃先131に当接される。本実施形態では、研磨ベルト220は、刃先131の上下中途部に当接される。なお、研磨ベルト220が刃先131に当接すると、それ以上の研磨ベルト220の揺動が規制される。このように、本実施形態の揺動角D220は、待機位置に位置する研磨ベルト220が、上述したような揺動が規制される位置まで揺動した角度を意味する。
【0063】
駆動ギア261は、研磨ベルト220の揺動に伴って回転する。従動ギア262は、駆動ギア261の回転に伴って回転する。エンコーダ263は、従動ギア262の回転角を測定し、測定結果に関する情報を制御部40に出力する。制御部40は、測定結果に関する情報に基づいて、研磨ベルト220の揺動角D220を算出する。
【0064】
ここで、本実施形態では、研磨ベルト220の内側に撓み止め部材230が設けられているため、刃先131に研磨ベルト220が当接した際に研磨ベルト220が撓むのを防止することができる。これによって研磨ベルト220の撓みに起因する揺動角D220の変化を防止することができ、揺動角D220を精度よく算出することができる。
【0065】
揺動角D220を算出すると、制御部40は、揺動角D220と基準揺動角との差異を算出する。なお、基準揺動角とは、待機位置から未使用の裁断刃130の刃先131に研磨ベルト220が当接するまでの研磨ベルト220の揺動角である。本実施形態の制御部40には、基準揺動角が予め記憶されている。
【0066】
揺動角D220と基準揺動角との差異を算出すると、制御部40は、当該差異の算出結果及び基準刃幅に基づいて、裁断刃130の摩耗量及び刃幅W130を算出する。なお、基準刃幅とは、未使用の裁断刃130の刃幅W130である。本実施形態の制御部40には、基準刃幅が予め記憶されている。
【0067】
本実施形態では、予め記憶された裁断刃130の基準角度と研磨ベルト220の基準揺動角とに基づいて、刃先131に対して研磨ベルト220を直角に当接させる。こうして、刃先131に対して研磨ベルト220が直角に当接すると、研磨ベルト220が直角に当接しない場合と比較して、裁断刃130の摩耗に応じた研磨ベルト220の揺動角D220の増加量を大きくすることができる。これにより、研磨ベルト220の揺動角D220に基づいて裁断刃130の摩耗量を精度よく算出することができる。
【0068】
裁断刃130の摩耗量を算出すると、制御部40は、摩耗量の算出結果に基づいて裁断ヘッド100の動作を補正する。これによって制御部40は、裁断刃130の摩耗度合に応じて適切に裁断ヘッド100を動作させることができるため、シート材2の裁断精度の低下を防止できる。
【0069】
また、制御部40は、裁断刃130の摩耗量を算出すると、摩耗量の算出結果を操作部30のディスプレイ33に表示させる。なお、制御部40は、刃幅W130の算出結果をディスプレイ33に表示させてもよい。
【0070】
本実施形態では、裁断刃130を研磨するための研磨装置170を利用して、裁断刃130の摩耗度合を取得することができる。これによって摩耗量の取得に要する機器の設置スペースを削減し、省スペース化を図ることができる。また、部品点数を削減し、コストの削減を図ることができる。
【0071】
ここで、図8に示すように、刃先131が後退した場合、研磨ベルト220の揺動時に刃先131が常に決まった位置に向いていると、裁断刃130の摩耗に伴って、刃先131に対して研磨ベルト220が徐々に直角に当接しなくなる。しかしながら、刃先131に対する研磨ベルト220の当接角度のずれは微小であるため、制御部40は、支障なく裁断刃130の摩耗量を算出することができる。
【0072】
これに対して、制御部40は、裁断刃130の摩耗量を算出した後で、摩耗量の算出結果に応じて、基準角度を更新してもよい。これによって制御部40は、裁断刃130の摩耗に伴う、刃先131に対する研磨ベルト220の当接角度のずれを補正することができる。これによって、当接角度のずれを補正しない場合と比べて、裁断刃130の摩耗量を精度よく算出することができる。
【0073】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の技術的思想の範囲内で適宜の変更が可能である。
【0074】
例えば、本実施形態の研磨装置170は、研磨ベルト220によって裁断刃130を研磨するものとしたが、裁断刃130を研磨する部材は、研磨ベルト220に限定されない。例えば研磨装置170は、円筒形で円筒の軸を中心として回転する砥石によって裁断刃130を研磨することも可能である。砥石によって裁断刃130を研磨する場合、研磨装置170は、砥石の回転軸の方向に応じて、砥石を適宜裁断刃130に押し付けることができる。例えば、砥石の回転軸を裁断刃130の長手方向と同一方向に向けることで、砥石の外周面を裁断刃130に押し付けることができる。また例えば、砥石の回転軸を裁断刃130の長手方向に対して垂直な方向に向けることで、砥石の側面(回転軸の軸心方向を向いた面)を裁断刃130に押し付けることができる。また刃先131が砥石の円筒の中心に向いている状態とすることにより、砥石の外周面を刃先131と直角に当接させることができる。
【0075】
また本実施形態では、エアシリンダ252によって研磨ベルト220を揺動させるものとしたが、研磨ベルト220を揺動させる駆動源は、特に限定されない。例えば研磨装置170は、回転軸180と同軸上に配置されるモータの駆動軸を駆動させることによって、研磨ベルト220を揺動させることも可能である。またエンコーダ263の代わりに、前記モータに付属されるエンコーダを用いることによって、研磨ベルト220の揺動角D220を測定することも可能である。またエンコーダ263の代わりに、前記モータに付属されるポテンショメータを用いることによって、研磨ベルト220の揺動角D220を測定することも可能である。なお前記ポテンショメータは、例えばエアシリンダ252のように、前記モータ以外の部材に設けられてもよい。
【0076】
また本実施形態では、刃先131に対して直角に研磨ベルト220を当接させるものとしたが、裁断刃130の摩耗度合を算出可能であれば、刃先131に対する研磨ベルト220の当接角度は特に限定されない。
【0077】
また本実施形態では、刃先131の上下中途部に研磨ベルト220を当接させるものとしたが、研磨ベルト220の刃先131に対する当接位置は、特に限定されるものではない。例えば刃先131の中で摩耗し易い箇所がある場合、当該箇所に研磨ベルト220を当接させてもよい。
【0078】
また本実施形態では、摩耗度合を取得するために研磨ベルト220を刃先131に当接させるものとしたが、刃先131に当接させる部材は、研磨ベルト220に限定されるものではなく、揺動によって刃先131に当接可能な種々の部材が含まれる。前記種々の部材としては、例えば上述した砥石が含まれる。また前記種々の部材としては、研磨ベルト220のような、裁断刃130を研磨する部材に限定されず、裁断刃130を研磨しない部材であってもよい。
【符号の説明】
【0079】
1 裁断機
2 シート材
40 制御部
130 裁断刃
131 刃先
220 研磨ベルト
260 揺動角測定部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8