(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024077549
(43)【公開日】2024-06-07
(54)【発明の名称】猫背や首落ち姿勢を予防するパッド
(51)【国際特許分類】
A61F 5/01 20060101AFI20240531BHJP
A47B 21/013 20060101ALI20240531BHJP
【FI】
A61F5/01 E
A47B21/013
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022189696
(22)【出願日】2022-11-28
(71)【出願人】
【識別番号】501138116
【氏名又は名称】有限会社ユーカリ
(71)【出願人】
【識別番号】508141542
【氏名又は名称】株式会社足裏バランス研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100092107
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 達也
(72)【発明者】
【氏名】笠原 巖
【テーマコード(参考)】
4C098
【Fターム(参考)】
4C098AA02
4C098BB01
4C098BC30
4C098BC37
4C098BC41
4C098BC42
4C098BD13
(57)【要約】 (修正有)
【課題】猫背や首落ち姿勢を予防するパッドを提供する。
【解決手段】テーブル類における天板の手前側端部に天板に向いた人の胸部や腹部を支え得る胸当てパット2と腕用パット1を有し、腕用パットを天板の手前側上面部に載置できるもので、腕用パット本体の略中央部の一部だけに胸当てパットが連結されていて、腕用パットと胸当てパットには、通気性のあるクッション性反発素材を収納袋に挿入したもので、腕用パット1の底面にはすべり止めの加工や吸盤を設けた猫背や首落ち姿勢を予防するパッド
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
テーブル類における天板の手前側端部に天板に向いた人の胸部や腹部を支え得る胸当てパットと腕用パットを有し、該腕用パットを天板の手前側上面部に載置できるもので、腕用パット本体の略中央部の一部だけに胸当てパットが連結されていて、腕用パットと胸当てパットには、通気性のあるクッション性反発素材を収納袋に挿入したもので、腕用パットの底面にはすべり止めの加工や吸盤を設けたことを特徴とする猫背や首落ち姿勢を予防するパッド
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、時代の変化、ライフスタイルの変化に伴って、子供から老人まで、パソコンを使用する時間等、テーブル類に向かって作業する時間が長くなっている。例えば、長時間のパソコン操作を行うに際して、本人も気付かない内に、前のめり姿勢になってしまう。この前のめり姿勢でのパソコン操作は、背骨となる胸椎全体が丸くなり、それに伴って、その上に乗る頸椎や頭部も必然的に前方に下がって、「猫背や首落ち」姿勢になってしまう。この姿勢は、背部や頚部に余分に重力の負担を掛け続けることになり、背部、頚部の筋肉を著しく疲労させてしまう。この問題点を解決するために発明された猫背や首落ち姿勢を予防するパッドに関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、人が椅子に腰掛けて机上において、パソコンの操作(キーボードやマウスの操作)作業を行う場合、作業を長時間続けると、身体に大きな負担が掛かる。特に、上半身を前傾気味にして、腰を椅子の背もたれから離すと、頚椎や頭部も必然的に前方に下がって、背部や頚部に余分な重力の負担を掛け続けることになる。
そこで、これを解決したものとして、従来、テーブル類における天板の端部に取り付くベース体と、前記天板に向いた人の胸又は腹若しくは両方を支え得るボディサポートと、前記ボディサポートを挟んだ左右両側に配置された肘当てとを備えており、前記ベース体はボディサポートの左右両側にはみ出るように横長に形成されており、このベース体に前記ボディサポートと肘当てとを取付けているテーブル類用身体支持具(特許文献1参照)が存在している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008-183338号公報(特許請求の範囲、発明の詳細な説明、及び
図1~
図8を参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来技術は、人がテーブル(机)を使用して、パソコン操作等の各種作業を行う際において、常に前のめり姿勢を採っていると、前記技術分野の項でも説明したように、猫背、首落ちの姿勢は重力とのバランスを保つため、疲労が蓄積されていく。この疲労の蓄積は、時間経過に伴い、その損傷度も増し、筋肉ばかりでなく、骨格を形成する胸椎や頚椎の骨をも磨り減らしたり、摩耗させ、結果的に骨の変形や骨損傷まで進化し、悪化させてしまう恐れがある。また、猫背は内臓下垂、内臓圧迫を起こす他、猫背の左右差が加わることで、背骨が横に曲がる「側弯症」になり、最終的に猫背も側弯症も頚椎への負荷が増し、これを蓄積させてしまう。また、首落ちも頚椎への負荷が蓄積され、頚椎の生理的湾曲の消失、ストレートネックに伴う頚椎症の隠れた原因になっている。
結果として、首凝り、肩凝り、頭痛、めまい、不眠、胃腸障害、冷え等の不調となる自律神経失調症を発症してしまう。
しかも、この猫背、首落ち姿勢は、負傷の瞬間を特定できないし、背部痛や頚部痛を起こしたり、自律神経失調症まで引き起こす。このことにより、労働意欲や集中力を奪うことになり、生産性をも損なってしまうという問題点がある
以上のことから、腕の重さを防ぐパットと、胸当てパットで前かがみを防ぎ、猫背、首落ち姿勢を予防、または改善させる必要がある。
先行技術である特許文献1は、机の天板に手前側から嵌まる側面視コ字状のクランプ部の下方から押さえボルトを介して挟持して取り付けることになるため、着脱の作業が面倒であるという問題点がある。
また、加えて両肘用の2個の肘当てを、ボルトを緩めておいて左右移動させて使用者の一番良い間隔にして使用しなければならず、これも極めて大変であるという問題点がある。
この他、もう一つの知られざる課題がある。
それは、40歳以降の女性に多く見られる手の第1関節が太く変形する「ヘバーデン結節」である。特に60歳代では、5人に1人の割合で見られる。従来ヘバーデン結節は、手だけの「変形性関節痛」と思い込まれているが、実際は全身性と言われている。これが背部に発症して「ひどい猫背」やひどい側弯症になるという事実と、また頚部に発症することで「ひどい頚椎症」になるという事実を見落としてはならない。
ヘバーデン結節は全身性であり、重力とのバランスの悪い(歪み、ズレ)のある関節に発症し易いという特徴があることを突き止めた結果、猫背、首落ち姿勢は、重力負担(負荷重)を強く受け続けると、骨の滑り減り、摩耗、変形、疲労骨折を起こす。
さらに、これに変形性関節症のひとつとなるヘバーデン結節が発症し、重症化させてしまう。そもそも変形性関節症が手の第1関節だけに発症するという誤った先入観によって判断されている節がある。変形性関節症は全身性であり、バランスの悪い胸椎や頚椎にも発症しているものである。
現在、この問題が解決されていないため、ひどい猫背、ひどい側弯症、ひどい頚椎症となり、多くの人が健康障害、不利益を知らない内に受けているという問題点がある。
40歳以降の女性では、猫背、首落ち姿勢にヘバーデン結節が加わることで、重症化させている場合が殆どである。
なお、ヘバーデン結節(変形性関節症)は、手より先に、バランスの悪い背部や頚部から始まる場合が多いことも統計的に裏付けられている。
この人達の改善法、悪化を防ぐ方法こそ、本発明の目指す猫背、首落ちを予防するパットである。
このパットを活用することにより、重力の負担(負荷重)を軽減させ、自然治癒力を最大限に発揮させることができる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は上記問題点を解決することを目的とし、テーブル類における天板の手前側端部に天板に向いた人の胸部や腹部を支え得る胸当てパットと腕用パットを有し、該腕用パットを天板の手前側上面部に載置できるもので、腕用パット本体の略中央部の一部だけに胸当てパットが連結されていて、腕用パットと胸当てパットには、通気性のあるクッション性反発素材を収納袋に挿入したもので、腕用パットの底面にはすべり止めの加工や吸盤を設けた猫背や首落ち姿勢を予防するパッドである。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、上記構成を採用することで、以下の効果を得ることができる。
(1)パソコンの操作時、手首及び胸当てパットの中心部に厚い通気性のあるクッション性反発素材からなる胸当てパットを設けることにより、前のめりからくる頚部の負荷重を軽減することができ、反発力も加わり、疲れも軽減できるものである。
(2)手首及び腕当てパットの厚みと反発力のある胸当てパットを使用することによりパソコン操作時の前のめりの姿勢を防ぐため、頚部の疲労を防ぐことができる。
その結果として、パソコン操作の動作を楽にサポートし、作業を効率化することができる。
(3)手首、腕、胸部に支えのパットを当てることにより、体にとって良い姿勢が保てるため、重力の負荷重も軽減し、一般的に言われているパソコン病を防ぐことができる。
(4)廉価に、極めて簡易に製作することができ、しかも単に机の天板の手前側上部に載置するだけで使用でき、腕用パットの底面には、滑り止め加工が施されているので、作業が終了して、立ち上がって席を離れても本発明のパッドが落下することはないものである。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の一実施例を示す胸当てパット側のやや斜め正面から見た概略斜視図である。
【
図2】本発明の一実施例を示す胸当てパット側のやや斜め上方から見た概略斜視図である。
【
図3】本発明の一実施例を示す腕用パット側のやや斜め底面から見た概略斜視図である。
【
図4】本発明の猫背や首落ち姿勢を予防するパッドを机の天板手前側に載置した使用前の状態を示す概略斜視図である。
【
図5】本発明の猫背や首落ち姿勢を予防するパッドを使用している状態を示す概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
先ず、従来技術として、前記した特開2008-183338号公報に示されているテーブル類用身体支持具は、構造が複雑で、製作するには特殊な技術が必要であり、製作費も高価であり、テーブルの天板に取り付ける際にも時間を要するものである。また、すでに猫背になってしまった人を対象に、両肩をベルトで背部に引っ張ることによって姿勢を矯正する姿勢矯正ベルトが存在しているが、これではパソコン操作時に、ベルト部分が両肩に食い込み皮膚を傷め苦痛であり、両腕をベルトに通して着用し、そのベルト素材においても厚みがあり、もう一枚服を着用するという違和感があった。
また、服の上から着用するので、パソコン作業をするには、ファッション的にも、見た目にも抵抗感がある。
姿勢矯正ベルトは、パソコン作業以外、立っている時や、日常生活の中で1~2時間位の短時間使用には向いているが、椅子に長時間座らなければならないパソコン作業時における座位の姿勢や、また立ち姿勢でのパソコン作業時には向いていない。
このことを踏まえて、パソコン作業時に胸当てパットを用いて、「猫背、首落ち」を予防したり、猫背、首落ちに関連して起きる内臓下垂や、内臓圧迫による障害を予防する装具はなかった。
また、首に対する従来技術としては、首の痛みや頚椎症に対しては、頚椎コルセット、頚椎カラー、首楽々サポータ等が存在している。
負傷の瞬間を特定できない首の痛みや頚椎症は、首だけが単独で異常を起こすのではなく、その土台となる胸椎の変異(猫背、側弯症)が隠れた原因となっている。
従って、首より先に胸椎のバランスを整えておくことが重要であり、優先されなければならない。
パソコン作業による猫背、首落ち姿勢は、胸椎、頚椎の本来人間に備わっている生理的湾曲を消失させてしまう恐れがある。これを予防したり、改善させるため、手首と腕の支えと共に、胸部にパットを当て、背部と頚部のバランスを整えることが必要である。
宇宙飛行士が地球に帰還した時の言葉で、宇宙から青い地球を見るのは素晴らしかった。しかし、もっと感動したことは地球に帰還した時に感じた「重力の威力の凄さ」、もう一つ「健康は重力の強弱で決まる」である。前かがみの姿勢は、重力の負担(負荷重)をより強く受けてしまう態勢である。1回の負荷重は弱いものであっても、1年から2年と蓄積されると強力な負荷重となり負傷の瞬間を特定できない骨の変形や疲労骨折などの損傷を起こしてしまう。
一方、重力とのバランスが保たれた良い姿勢は、「重力の威力の凄さ」を吸収することができる。結果として、猫背、首落ち姿勢を防ぎ、身体の不調やパソコン痛と言われる自律神経失調症をも予防することができる。
【0009】
次に、本発明の実施の形態を図示した実施例に基づいて詳細に説明する。
先ず、本発明の概要を説明する。
本発明は、腕の重さを防ぐパットと、前かがみを防ぐ胸当てパットの両方を一体化した猫背、首落ち姿勢を予防する装具である。
腕の重さは、普段自覚することはないが、体重の約10%位となっている。腕を浮かせた姿勢でのパソコン作業は、時間経過と共に背部、頚部に多大な負荷重が加わり続けることになり、疲労に伴う損傷が蓄積されていく。
これが猫背、首落ち姿勢に陥る隠れた原因であり、パソコン痛、頚肩腕症候群を発症させてしまう。
【0010】
ここで、本発明について詳細に説明する。
図1~
図5に示すように、腕用パット1は、一定の横幅を有し、手首を支える位置で、テーブル(机)の上に簡単に乗せられるものである。この腕用パット1本体に胸当てパット2が連結されている。胸当てパット2との連結は、胸当てパット2の横中心部3だけで連結されているため、胸に当たる胸当てパット2の角度が自在で、無理なく利用者の身体に合わせて当てることができる。
前記胸当てパット2の形状は、厚みが自在にできるように胸当てパット本体部4(ファスナー等で開閉自在な部分を有する袋状にしたもの)に机と胸部との隙間を埋めるように選択することができる。
さらに、胸当てパット2は机の縁(胸と当たる部分)に動かない固定力になり、身体の支えになるため、パソコン作業時の姿勢が前かがみにならない安定した姿勢を保つことができる。
また、腕用パットの底面5には、滑り止めの加工が施されている。それは滑り難い部材を採用するか、吸盤を設ける等して、机からずれたり、落下しないように設置することができ、そのままの状態を保持することができ、使用する度に設置し直しすることなく、毎日続けて使用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0011】
少しの時間作業を休む際等には、クッション性があり机でパットに寄り掛かって休める等、有効に症状に合わせて利用することができる。
【符号の説明】
【0012】
1・・・・腕用パット
2・・・・胸当てパット
3・・・・横中心部
4・・・・胸当てパット本体部
5・・・・腕用パットの底面