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特開2024-7755画像検査システム、及び画像検査プログラム
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  • 特開-画像検査システム、及び画像検査プログラム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024007755
(43)【公開日】2024-01-19
(54)【発明の名称】画像検査システム、及び画像検査プログラム
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/88 20060101AFI20240112BHJP
   G06T 7/00 20170101ALI20240112BHJP
   G01N 21/952 20060101ALN20240112BHJP
【FI】
G01N21/88 J
G06T7/00 610Z
G01N21/952
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022109049
(22)【出願日】2022-07-06
(71)【出願人】
【識別番号】000003768
【氏名又は名称】東洋製罐グループホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100154184
【弁理士】
【氏名又は名称】生富 成一
(74)【代理人】
【識別番号】100105795
【弁理士】
【氏名又は名称】名塚 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100187377
【弁理士】
【氏名又は名称】芳野 理之
(72)【発明者】
【氏名】柏原 賢
(72)【発明者】
【氏名】中村 圭亨
(72)【発明者】
【氏名】原 萌子
(72)【発明者】
【氏名】猪爪 誠太
【テーマコード(参考)】
2G051
5L096
【Fターム(参考)】
2G051AA90
2G051AB08
2G051CA04
2G051CC09
2G051EB05
5L096BA03
5L096CA02
5L096KA04
(57)【要約】
【課題】 特殊光学系のレンズを用いて検査対象物を撮影し、得られた画像に対して安定した画像検査を行うことの可能な画像検査システムを提供する。
【解決手段】 撮影した画像を検査する画像検査システムであって、特殊光学系のレンズ10と、特殊光学系のレンズ10によって、検査対象物の上面部と側面部の画像群を含む撮影画像を取得するカメラ20と、撮影画像を包括して検査する機械学習モデルを作成する学習部54と、学習済みモデル記憶部55を備える画像検査システム。また、学習済みモデル記憶部55が、学習部54により作成された学習済み機械学習モデルを記憶する。さらに、特殊光学系のレンズ10が、ペリセントリックレンズ又はカタディオプトリックレンズであることが好ましい。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮影した画像を検査する画像検査システムであって、
特殊光学系のレンズと、
前記特殊光学系のレンズによって、検査対象物の上面部と側面部の画像群を含む撮影画像を取得するカメラと、
前記撮影画像を包括して検査する機械学習モデルを作成する学習部と、
学習済みモデル記憶部と、を備える
ことを特徴とする画像検査システム。
【請求項2】
前記学習済みモデル記憶部が、前記学習部により作成された学習済み機械学習モデルを記憶する
ことを特徴とする請求項1記載の画像検査システム。
【請求項3】
前記学習済み機械学習モデルにより、前記カメラから新たに入力された検査対象物の上面部と側面部の画像群を含む検査画像に対する処理を行う推論部をさらに備える
ことを特徴とする請求項2記載の画像検査システム。
【請求項4】
前記特殊光学系のレンズが、ペリセントリックレンズ又はカタディオプトリックレンズであることを特徴とする請求項1又は2記載の画像検査システム。
【請求項5】
前記撮影画像及び前記検査画像が、1枚の画像内において、検査対象物の上面部の画像と、この上面部の画像を囲むように、検査対象物の側面部の画像が配置されていることを特徴とする請求項3記載の画像検査システム。
【請求項6】
前記学習部が、外乱光のリファレンスとする物体の画像を前記カメラから入力して、当該物体の画像との比較にもとづき前記撮影画像の全領域を包括して検査する機械学習モデルを作成し、
前記学習済み機械学習モデルが、前記物体の画像における外乱光の影響に応じて出力結果が調整されるように学習されている
ことを特徴とする請求項2記載の画像検査システム。
【請求項7】
前記学習部が、ニューラルネットワーク、遺伝的アルゴリズム、遺伝的プログラミング、遺伝的ネットワーク、サポートベクターマシン、又は混合ガウス分布から選択される1つ又は複数によって、前記機械学習モデルを作成することを特徴とする請求項1又は2記載の画像検査システム。
【請求項8】
撮影した画像を検査する画像処理プログラムであって、
コンピュータを、
特殊光学系のレンズにより検査対象物の上面部と側面部の画像群を含む撮影画像を取得するカメラから入力された前記撮影画像を包括して検査する機械学習モデルを作成する学習部、及び、
前記学習部により作成された学習済み機械学習モデルを記憶する学習済みモデル記憶部として機能させる
ことを特徴とする画像処理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検査対象物を撮影した画像にもとづき検査する画像検査システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、製品の品質検査などにおいて、検査対象物をカメラで撮影して得られた画像に対し、所定のルールにもとづき良品であるか否かの判定を行う画像検査システムが用いられている。
例えば、蓋付容器などの検査対象物を検査する場合、一般的に検査対象物の上方向に1台のカメラを配置すると共に側面の周囲に4台のカメラを配置して、検査対象物を撮影して画像を取得し、得られた撮影画像にもとづいて画像検査システムにより製品の外観における異常の有無を判定することが行われている。
【0003】
しかしながら、このような画像検査システムでは、比較的多くのカメラを用いる必要があるためにコストが大きくなり、またセッティングが煩雑であるという問題があった。
また、上方側の画像と側方側の画像について、それぞれ判定を行う必要があるため、複数の判定ルールを構築しなければならないという問題もあった。
【0004】
さらに、このように多くのカメラを用いる場合には、偽陽性率が増大するという問題もあった。例えば、1台のカメラの偽陽性率が1%であったとしても、5台のカメラを用いる画像検査システムの偽陽性率は、約5%( = 100×(1 - 0.9905))となるため、全てのカメラの性能を高めなければ偽陽性が多く発生することになる。
したがって、偽陽性判定を防止する観点から、画像検査システムにおいては、使用するカメラの台数が少ない方が望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第7016835号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明者は、特殊光学系レンズを用いることによって、1台のカメラで検査対象物における検査対象とする全ての表面の画像を1枚の画像として撮影し、得られた画像の全領域に対して良品であるか否かの判定を行うことを試みた。
例えば、検査対象物の上面部と側面部を併せて撮影して画像を得ることができるペリセントリックレンズ又はカタディオプトリックレンズを用いたカメラによって、検査対象物の画像を取得することとした。
【0007】
しかしながら、このようなレンズを用いて撮影された画像(以下、特殊レンズ画像と称する場合がある。)は、1枚の画像内において上面部の画像と共に、上面部の画像を囲むように側面部の画像が配置される構成となる。
すなわち、上面部の画像が通常の平面画像であるのに対して、側面部の画像はリング状に引き延ばされた画像となっているため、1枚の画像内において位置により異なる表現方法にもとづく領域が存在している。
このため、このようなレンズを用いて撮影された画像を使用する場合、検査対象物が良品であるか否かの判定アルゴリズムを作成することが難しいという問題があった。
【0008】
また、検査対象物を撮影するにあたり、レンズに対する検査対象物の位置が変化すると、画像内における異なる表現方法にもとづく領域の位置がずれてしまうため、一定の品質を保った検査画像を得ることが難しいという問題もあった。
例えば、検査対象物が蓋付容器である場合には、蓋や容器の形状精度が悪ければ、レンズに対する検査対象物の中心位置がずれて適切に検査を行うことができなくなるという問題があった。
【0009】
そこで、本発明者は鋭意研究して、特殊光学系レンズを用いて検査対象物を撮影し、得られた画像に対して機械学習を用いて判定アルゴリズムを構築することにより、特殊レンズ画像に対して安定した画像検査を行うことを可能とした。
【0010】
ここで、特許文献1には、光学系を用いて撮像された撮像画像から、光学系に起因するぼけを鮮鋭化または整形する画像処理方法が開示されており、カタディオプトリックレンズなどの瞳遮蔽によるリング状のぼけが整形の対象として挙げられている。
しかしながら、この文献には、1台のカメラで特殊光学系レンズにより検査対象物における検査対象とする全ての表面の画像を1枚の画像として撮影し、得られた画像の全領域に対して良品であるか否かの判定を行うことについては記載されていない。
【0011】
このため、特殊光学系レンズを用いて撮影された画像を使用する場合において、検査対象物が良品であるか否かの判定アルゴリズムを作成することが難しいことや、レンズに対する検査対象物の位置が変化すると、画像内における異なる表現方法にもとづく領域の位置がずれてしまうために一定の品質を保った検査画像を得ることが難しいという問題を解消可能なものではなかった。
【0012】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、特殊光学系のレンズを用いて検査対象物を撮影し、得られた画像に対して安定した画像検査を行うことの可能な画像検査システム、及び画像検査プログラムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するため、本発明の画像検査システムは、撮影した画像を検査する画像検査システムであって、特殊光学系のレンズと、前記特殊光学系のレンズによって、検査対象物の上面部と側面部の画像群を含む撮影画像を取得するカメラと、前記撮影画像を包括して検査する機械学習モデルを作成する学習部と、学習済みモデル記憶部とを備える構成としてある。
【0014】
また、本実施形態の画像検査システムを、前記学習済みモデル記憶部が、前記学習部により作成された学習済み機械学習モデルを記憶する構成とすることが好ましい。
また、本実施形態の画像検査システムを、前記学習済み機械学習モデルにより、前記カメラから新たに入力された検査対象物の上面部と側面部の画像群を含む検査画像に対する処理を行う推論部をさらに備える構成とすることが好ましい。
【0015】
また、本実施形態の画像検査システムを、前記特殊光学系のレンズが、ペリセントリックレンズ又はカタディオプトリックレンズである構成とすることが好ましい。
また、本実施形態の画像検査システムを、前記撮影画像及び前記検査画像が、1枚の画像内において、検査対象物の上面部の画像と、この上面部の画像を囲むように、検査対象物の側面部の画像が配置されている構成とすることも好ましい。
【0016】
また、本実施形態の画像検査システムを、前記学習部が、外乱光のリファレンスとする物体の画像を前記カメラから入力して、当該物体の画像との比較にもとづき前記撮影画像の全領域を包括して検査する機械学習モデルを作成し、前記学習済み機械学習モデルが、前記物体の画像における外乱光の影響に応じて出力結果が調整されるように学習されている構成とすることが好ましい。
【0017】
また、本実施形態の画像検査システムを、前記学習部が、ニューラルネットワーク、遺伝的アルゴリズム、遺伝的プログラミング、遺伝的ネットワーク、サポートベクターマシン、又は混合ガウス分布から選択される1つ又は複数によって、前記機械学習モデルを作成する構成とすることが好ましい。
さらに、本実施形態の画像検査システムを、上記の画像検査システムにおける各構成を様々に組み合わせたものとすることも好ましい。
【0018】
また、本実施形態の画像検査プログラムは、撮影した画像を検査する画像処理プログラムであって、コンピュータを、特殊光学系のレンズにより検査対象物の上面部と側面部の画像群を含む撮影画像を取得するカメラから入力された前記撮影画像を包括して検査する機械学習モデルを作成する学習部、及び、前記学習部により作成された学習済み機械学習モデルを記憶する学習済みモデル記憶部として機能させる構成としてある。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、特殊光学系のレンズを用いて検査対象物を撮影し、得られた画像に対して安定した画像検査を行うことの可能な画像検査システム、及び画像検査プログラムの提供が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の実施形態に係る画像検査システムの構成を示す図である。
図2】本発明の実施形態に係る画像検査システムにおける検査対象物(A)及び特殊光学系レンズにより撮影された検査対象物の画像(B)を示す説明図である。
図3】本発明の実施形態に係る画像検査システムにおける学習用データセットを作成する処理手順を示すフローチャートである。
図4】本発明の実施形態に係る画像検査システムにおける学習の処理手順を示すフローチャートである。
図5】本発明の実施形態に係る画像検査システムにおける推論の処理手順を示すフローチャートである。
図6】従来の画像検査システムにおける検査対象物を撮影する様子を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の画像検査システム、及び画像検査プログラムの実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。ただし、本発明は、以下の実施形態の具体的な内容に限定されるものではない。
【0022】
本実施形態の画像検査システムは、撮影した画像を検査する画像検査システムである。
図1に示すように、本実施形態の画像検査システムは、レンズ10と、レンズ10により検査対象物40を撮影して画像を取得するカメラ20と、画像検査装置50を備えている。また、検査対象物40を照らす照明30を備えることが好ましい。
【0023】
レンズ10は、特殊光学系レンズであり、ペリセントリックレンズ又はカタディオプトリックレンズを好適に用いることができる。なお、フィッシュアイレンズ(魚眼レンズ)を用いてもよい。
【0024】
ペリセントリックレンズは、検査対象物の上面部と側面部に同時にピントを合わせることができるレンズであり、このレンズによって撮影される画像は、上面部の周囲を側面部が取り囲んだ状態を表す画像として得られる。
カタディオプトリックレンズは、光学系レンズと補正レンズを組合せたものであり、このレンズによって撮影される画像は、ペリセントリックレンズと同様に、上面部の周囲を側面部が取り囲んだ状態を表す画像として得られる。
なお、上面部と側面部には、平面や曲面、及びその他の形状の部分が含まれる。
【0025】
これらの特殊光学系レンズにより得られる画像について、図2を参照して説明する。
図2(A)は、蓋付容器Tを示しており、この容器は、蓋上面領域m1と蓋側面領域m2と容器側面領域m3を備えている。図2(B)は、この蓋付容器Tをレンズ10を備えたカメラ20により撮影された画像Gを示している。
この画像Gに示されるように、1枚の画像内において蓋上面領域m1とこれを囲むように蓋側面領域m2が撮影され、さらにこれらを囲むように容器側面領域m3が撮影されている。
【0026】
このように、ペリセントリックレンズ又はカタディオプトリックレンズによれば、検査対象物の上面部の画像と共に、検査対象物の側面部の360°の画像を1枚の画像で取得できるようになっている。
すなわち、本実施形態の画像検査システムにおける特殊レンズ画像は、1枚の画像内において、検査対象物の上面部の画像と、この上面部の画像の周囲に側面部の画像が配置されたものとなっており、1枚の画像内において位置により異なる表現方法にもとづく領域が存在している。
【0027】
一方、従来の一般的なレンズを備えたカメラを使用する場合は、図6に示すように、蓋付容器Tの蓋上面領域m1と蓋側面領域m2と容器側面領域m3の画像を得るためには、通常、蓋付容器Tの上方向に配置されたカメラE0と、蓋付容器Tの側面の周囲4方向に配置されたカメラE1~E4を使用して、合計5枚の画像を撮影し、これら5枚の画像にもとづき外観検査の判定を行うことが必要であった。
【0028】
したがって、比較的多くのカメラが用いられるためにコストが大きく、またセッティングが煩雑であるという問題があった。また、上方側の画像と側方側の画像について、それぞれ判定を行う必要があるため、複数の判定ルールを構築しなければならないという問題もあった。さらに、このように多くのカメラを用いる場合には、上述したように、偽陽性率が増大するという問題もあった。
【0029】
これに対して、ペリセントリックレンズ又はカタディオプトリックレンズを用いれば、1つのカメラを用いることにより、検査対象物の上面部と側面部の画像を1枚の画像で取得でき、1枚の画像にもとづき外観検査の判定を行うことが可能である。
【0030】
ところで、上述したように、このようなレンズを用いて撮影された画像は、1枚の画像内において上面部の画像と共に、上面部の画像を囲むように側面部の画像が配置される構成であり、画像内において位置により異なる表現方法にもとづく領域が存在しているため、検査対象物が良品であるか否かの判定アルゴリズムを作成することが難しいという問題があった。
また、検査対象物を撮影するにあたり、レンズに対する検査対象物の位置が変化すると、画像内における異なる表現方法にもとづく領域の位置がずれてしまうため、一定の品質を保った検査画像を得ることが難しいという問題もあった。
【0031】
そこで、本実施形態の画像検査システムでは、検査対象物の上面部と側面部の画像が1枚の画像に含まれた特殊レンズ画像に対して機械学習を行うことにより、外観検査の判定アルゴリズムを生成する学習済みモデルを作成している。
すなわち、図1に示すように、本実施形態の画像検査システムにおける画像検査装置50は、画像入力部51、画像記憶部52、教師画像作成部53、学習部54、学習済みモデル記憶部55、推論部56、推論結果記憶部57、及び不良品排出部58を備えている。
【0032】
画像入力部51は、レンズ10を用いて撮影された検査対象物40の上面部と側面部の画像を含む画像をカメラ20から入力して、画像記憶部52に記憶させる。
この画像としては、機械学習に用いるための学習用画像と検証用画像の撮影画像、及び検査に用いるための検査画像を挙げることができる。
【0033】
画像記憶部52は、入力された撮影画像と検査画像を記憶する。
撮影画像と検査画像は、1枚の画像内において、検査対象物の上面部の画像と、この上面部の画像を囲むように、検査対象物の側面部の画像が配置されることを特徴とする。
【0034】
教師画像作成部53は、画像記憶部52に記憶された学習用画像と検証用画像に対応する教師画像を生成して、画像記憶部52に記憶させる。
また、画像記憶部52は、教師画像作成部53により生成された教師画像を学習用画像と検証用画像に対応付けて記憶する。
【0035】
学習部54は、カメラ20から入力される検査対象物40の上面部と側面部の画像を含む撮影画像の全領域を包括して検査する機械学習モデルを作成する。すなわち、画像記憶部52に記憶された画像に対して学習処理を実行し、当該画像の全領域を検査する機械学習モデルを構築する。そして、得られた学習済み機械学習モデルを学習済みモデル記憶部55に記憶させる。
【0036】
学習部54は、ニューラルネットワーク、遺伝的アルゴリズム、遺伝的プログラミング、遺伝的ネットワーク、サポートベクターマシン、又は混合ガウス分布から選択される1つ又は複数によって、機械学習モデルを作成する。
なお、学習部54は、教師有りの学習に限定されるものではなく、例えば多くの良品データにもとづき外れを不良品と判定するなどの方法により、機械学習モデルを作成することもできる。
学習済みモデル記憶部55は、学習部54により作成された学習済み機械学習モデルを記憶する。
【0037】
また、この学習部54が、外乱光のリファレンスとする物体の画像をカメラ20から入力して、物体の画像との比較にもとづき撮影画像の全領域を包括して検査する機械学習モデルを構築することも好ましい。
これによって、学習済みモデル記憶部される学習済み機械学習モデルは、物体の画像における外乱光の影響に応じて出力結果が調整されるように学習されたものとすることができる。
【0038】
具体的には、検査対象物40以外に色調が変わらない物体もしくは色差計にて色調が管理された物体を設置して一緒に撮影することで、外乱光による変化を画像内に情報として取り込むことが可能になる。この情報を含んだ画像により機械学習を実施することで、物体の画像における外乱光の影響に応じて出力結果が調整されるように学習される。
【0039】
本実施形態の画像検査システムをこのような構成にすれば、例えば、周囲の照度をコントロールする必要が無くなり、外乱光の影響を排除するために撮影部を覆うようなカバーを設置することも不要となる。更には、照明を長期継続して使用した場合、照明の光量が低下することによる照明の調整が不要になるという効果を得ることも可能である。
【0040】
推論部56は、学習済み機械学習モデルにより、カメラ20から新たに入力された検査対象物40の上面部と側面部の画像を含む検査画像に対する処理を行う。
すなわち、推論部56は、画像記憶部52から新たに検査対象物40の上面部と側面部の画像を含む検査画像を入力し、学習済みモデル記憶部55に記憶された学習済み機械学習モデルを用いて、検査画像に対して推論処理を実行する。そして、得られた推論結果を推論結果記憶部57に記憶させる。
【0041】
具体的には、推論処理として、例えば検査対象物内の欠点を検査する物体検知と分類を行う場合、推論処理により検査画像に写る欠点の位置、種類、数等を検出することができる。そして、検出した欠点の位置、種類、数等を推論結果記憶部57に記憶させることができる。
【0042】
本実施形態の画像検査システムをこのような構成にすれば、検出対象物が良品であるかの判断の他に、不良品となった理由(欠点の種類や、数、大きさ等)を記憶させることができ、品質の改善活動に検査データを用いることができるという効果等を得ることが可能である。
【0043】
次に、図3図5を参照して、本実施形態の画像検査システムの処理手順について詳細に説明する。図3は、本実施形態の画像検査システムにおける学習用データセットを作成する処理手順を示すフローチャートであり、図4は、同学習の処理手順を示すフローチャートであり、図5は、同推論の処理手順を示すフローチャートである。
【0044】
まず、学習用データセットの作成処理手順において、レンズ10を用いたカメラ20により検査対象物のサンプルの画像を撮影して学習用画像又は検証用画像として用いるための撮影画像を取得し(ステップ10)、これらを画像入力部51により画像検査装置50に入力して、画像記憶部52に記憶させる(ステップ11)。これらの処理をサンプル数分繰り返し行う(ステップ12)。
【0045】
次に、教師画像作成部53が、画像記憶部52に記憶されている撮影画像にそれぞれ対応する教師画像を生成し、これらを画像記憶部52に記憶させる(ステップ13)。これらの処理を撮影画像枚数分繰り返し行う(ステップ14)。
そして、教師画像作成部53が、撮影画像を学習用画像と検証用画像に振り分ける処理を行う(ステップ15)。例えば、撮影画像の80%を学習用画像に、残りの20%を検証用画像にランダムに振り分ける処理を実行する。
【0046】
次に、学習処理手順において、学習部54が、画像記憶部52から学習用画像と検証用画像の読み込みを行う(ステップ20)。また、学習部54が、画像記憶部52から学習用画像と検証用画像にそれぞれ対応する教師画像の読み込みを行う(ステップ21)。
そして、学習部54が、学習用画像を用いて学習処理を実行し、学習済みモデルを作成する(ステップ22)。
【0047】
次に、学習部54が、検証用画像を用いて学習済みモデルの検証処理を実行する(ステップ23)。
また、学習部54が、学習済みモデルの一次保存を学習済みモデル記憶部55に行う(ステップ24)。このとき、例えば、検証結果が一番良い学習済みモデルのみを保存し、それ以外を破棄することができる。学習部54によるこれらの処理を学習回数の設定値分繰り返し行う(ステップ25)。
【0048】
そして、学習部54は、以上の学習によって得られた最終的な学習済みモデルを学習済みモデル記憶部55に保存する(ステップ26)。このとき、例えば、設定した学習回数の最後の学習済みモデルを保存するか、あるいは検証結果が一番良い学習済みモデルを保存することができる。
【0049】
次に、推論処理手順において、推論部56が、学習済みモデル記憶部55から学習済みモデルの読み込みを行う(ステップ30)。
また、レンズ10を用いたカメラ20により検査対象物の画像を撮影して検査画像を取得し(ステップ31)、これを画像入力部51により画像検査装置50に入力して、画像記憶部52に記憶させる(ステップ32)。
【0050】
次に、推論部56が、画像記憶部52に記憶された検査画像に対して、学習済みモデルによる推論処理を実行して(ステップ33)、推論結果を推論結果記憶部57に記憶させる(ステップ34)。
また、不良品排出部58が、不良品の排出処理を実行する(ステップ35)。例えば、画像記憶部52に記憶されている該当する検査画像に対して、不良品であることを示すラベルを付加して記憶させることができる。さらに、不良品排出部58に、不良品となった理由を推論結果記憶部57に記録させることも好ましい。
そして、検査を継続する場合は、検査画像の撮影処理から繰り返し実行し、検査を終了する場合は、推論部56による処理を終了させる(ステップ36)。
【0051】
上記の実施形態の画像検査システムは、本発明の画像検査プログラムに制御されたコンピュータを用いて実現することができる。コンピュータのCPUは、画像検査プログラムにもとづいてコンピュータの各構成要素に指令を送り、画像検査装置50の動作に必要となる所定の処理、例えば、学習用データセットの作成処理、学習処理、推論処理等を行わせる。このように、本発明の画像検査装置における各処理、動作は、プログラムとコンピュータとが協働した具体的手段により実現できるものである。
【0052】
プログラムは予めROM,RAM等の記録媒体に格納され、コンピュータに実装された記録媒体から当該コンピュータにプログラムを読み込ませて実行されるが、例えば通信回線を介してコンピュータに読み込ませることもできる。
また、プログラムを格納する記録媒体は、例えば半導体メモリ、磁気ディスク、光ディスク、その他任意のコンピュータで読取り可能な任意の記録手段により構成できる。
【0053】
以上説明したように、本実施形態の画像検査システム及び画像検査プログラムによれば、特殊光学系のレンズを用いて検査対象物を撮影し、得られた画像に対して安定した画像検査を行うことが可能である。
すなわち、本実施形態によれば、特殊光学系レンズを用いて撮影された画像を使用する場合において、得られた画像に対して機械学習を用いて判定アルゴリズムを構築することにより、検査対象物が良品であるか否かの判定アルゴリズムを作成することが難しいという問題や、レンズに対する検査対象物の位置が変化すると、画像内における異なる表現方法にもとづく領域の位置がずれてしまうために一定の品質を保った検査画像を得ることが難しいという問題を解消することが可能である。
【0054】
本発明は、以上の実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内において、種々の変更実施が可能であることは言うまでもない。例えば、画像検査装置において、その他の処理を行うための構成を追加して設けるなど適宜変更することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明は、製品の外観検査において、コストの低減やカメラにもとづく偽陽性判定を低減させたい場合などに好適に利用することが可能である。
【符号の説明】
【0056】
10 レンズ
20,E0~E4 カメラ
30 照明
40 検査対象物
50 画像検査装置
51 画像入力部
52 画像記憶部
53 教師画像作成部
54 学習部
55 学習済みモデル記憶部
56 推論部
57 推論結果記憶部
58 不良品排出部
T 蓋付容器
m1 蓋上面領域
m2 蓋側面領域
m3 容器側面領域
G 検査対象物の画像
図1
図2
図3
図4
図5
図6