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  • 特開-保護シート 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024007757
(43)【公開日】2024-01-19
(54)【発明の名称】保護シート
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/02 20060101AFI20240112BHJP
   H01L 21/301 20060101ALI20240112BHJP
   H01L 21/683 20060101ALI20240112BHJP
   C09J 7/30 20180101ALI20240112BHJP
   C09J 201/00 20060101ALI20240112BHJP
   C09J 7/40 20180101ALI20240112BHJP
   C09J 7/38 20180101ALI20240112BHJP
【FI】
H01L21/02 C
H01L21/78 M
H01L21/68 N
C09J7/30
C09J201/00
C09J7/40
C09J7/38
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022109059
(22)【出願日】2022-07-06
(71)【出願人】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 慧
(72)【発明者】
【氏名】宍戸 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】高本 尚英
【テーマコード(参考)】
4J004
4J040
5F063
5F131
【Fターム(参考)】
4J004AA08
4J004AB01
4J004DB03
4J004FA08
4J040DD021
4J040JA09
4J040JB09
4J040LA06
4J040NA20
5F063AA15
5F063DF12
5F063DG23
5F131AA02
5F131AA04
5F131BA53
5F131EB11
5F131EB81
5F131EC32
5F131EC62
5F131EC64
5F131EC68
5F131EC72
(57)【要約】
【課題】本発明は、保護層の両面にはく離シートを備えており、一方のはく離シートをはく離させるときに他方のはく離シートから前記保護層の浮きが生じることを抑制することと、前記保護層が泣き別れしてしまうことを抑制することとを十分に両立させることができる保護シートを提供する。
【解決手段】本発明に係る保護シートは、保護層と、該保護層の一表面に配される第1はく離ライナーと、前記保護層の他表面に配される第2はく離ライナーと、を備え、前記保護層は、水溶性高分子化合物を含み、前記保護層に対する前記第1はく離ライナーの剥離力をPとし、前記保護層に対する前記第2はく離ライナーの剥離力をPとしたときに、剥離力P、及び、剥離力Pが以下の関係式を満たす。
<P
≦2000mN/25mm
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
保護層と、
該保護層の一表面に配される第1はく離ライナーと、
前記保護層の他表面に配される第2はく離ライナーと、を備え、
前記保護層は、水溶性高分子化合物を含み、
前記保護層に対する前記第1はく離ライナーの剥離力をPとし、前記保護層に対する第2はく離ライナーの剥離力をPとしたときに、
剥離力P、及び、剥離力Pが、以下の関係式を満たす
保護シート。
<P
≦2000mN/25mm
【請求項2】
前記第1はく離ライナーの厚みをTとし、前記第2はく離ライナーの厚みをTとしたときに、
厚みT及び厚みTは以下の関係式を満たす
請求項1に記載の保護シート。
<T
35μm<T<80μm
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保護シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体チップなどの半導体素子や液晶表示装置などの電子部品の製造において、前記電子部品に異物が付着することなどを防止するために、粘着性を有する保護シートを用いることが知られている(例えば、下記特許文献1)。
下記特許文献1には、前記保護シートとして、オキシアルキレン基含有ポリビニルアルコール系樹脂を含む樹脂組成物によって形成された保護層と、該保護層の両面に配される2枚のはく離シートとを備えるものが開示されている。
【0003】
また、上記の電子部品の製造うち、半導体チップの製造は、通常、一の半導体ウェハを分割(割断)することにより実施される(例えば、下記特許文献2)。
例えば、下記特許文献2には、以下のようにして半導体チップの製造を実施することが開示されている。

(1)シリコンウェハの一表面側に、格子状をなすように複数の分割予定ラインを形成する。
(2)前記複数の分割予定ラインによって格子状に区画された領域(以下、格子状区画領域ともいう)のそれぞれに、回路パターンを形成するとともに電極部を配する。これにより、半導体チップを得るための半導体ウェハを作製する。
(3)該半導体ウェハを前記複数の分割予定ラインに沿って分割(割断)して、換言すれば、前記半導体ウェハの前記格子状区画領域ごとに分割(割断)して、複数の半導体チップを得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-161735号公報
【特許文献2】特開2012-119670号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上のように、半導体ウェハを分割(割断)して複数の半導体チップを得るに際しては、分割部(割断部)付近の半導体ウェハの一部が粉状化されるなどして微細な異物が発生することがある。
そして、このような微細な異物が前記半導体チップの一表面側(回路パターンが形成された側)に付着すると、一表面側に形成された回路パターンに含まれる回路の動作信頼性が低下する虞があることから好ましくない。
そのため、半導体チップの製造は、前記半導体ウェハの一表面側(回路パターンが形成された側)に前記保護シートの前記保護層を貼り合わせて実施されることが多い。
【0006】
上記のような、オキシアルキレン基含有ポリビニルアルコール系樹脂といった水溶性高分子化合物を含む保護層と、該保護層の両面に配される2枚のはく離シートとを備える保護シートを用いて、前記半導体ウェハの一表面側に前記保護層を貼り合わせるに際しては、前記保護シートから2枚のはく離シートのうちの一方のはく離シートをはく離させて、前記保護層を表面露出させる必要がある。
【0007】
前記一方のはく離シートは、該一方のはく離シートの外側(保護層が配されていない側)から吸引力などの外力が加えられて前記保護層からはく離されるものの、前記一方のはく離シートを前記保護層からはく離させるときに、2枚のはく離シートのうちの他方のはく離シートから前記保護層が浮いてしまうことがある。
また、前記一方のはく離シートから前記保護層をはく離させるときに、前記他方のシートからの前記保護層の浮きは認められないものの、前記保護層の一部が付着した状態で前記一方のはく離シートがはく離されてしまうことがある。すなわち、前記保護層が泣き別れしてしまうことがある(前記保護層に凝集破壊などが生じてしまうことがある)。
【0008】
しかしながら、保護層の両面にはく離シートを備える保護シートにおいて、一方のはく離シートをはく離させるときに他方のはく離シートから前記保護層の浮きが生じることを抑制することと、前記保護層が泣き別れしてしまうことを抑制することとを十分に両立させることについて、未だ十分な検討がなされているとは言い難い。
【0009】
そこで、本発明は、保護層の両面にはく離シートを備えており、一方のはく離シートをはく離させるときに他方のはく離シートから前記保護層の浮きが生じることを抑制することと、前記保護層が泣き別れしてしまうことを抑制することとを十分に両立させることができる保護シートを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る保護シートは、
保護層と、
該保護層の一表面に配される第1はく離ライナーと、
前記保護層の他表面に配される第2はく離ライナーと、を備え、
前記保護層は、水溶性高分子化合物を含み、
前記保護層に対する前記第1はく離ライナーの剥離力をPとし、前記保護層に対する第2はく離ライナーの剥離力をPとしたときに、
剥離力P、及び、剥離力Pが、以下の関係式を満たす
保護シート。
<P
≦2000mN/25mm
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、保護層の両面にはく離シートを備えており、一方のはく離シートをはく離させるときに他方のはく離シートから前記保護層の浮きが生じることを抑制することと、前記保護層が泣き別れしてしまうことを抑制することとを十分に両立させることができる保護シートを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態に係る保護シートの構成を示す模式断面図。
図2】保護シートの保護層を半導体ウェハなどの電子部品の保護対象面に貼り合わせるマウント装置の構成を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態について説明する。
【0014】
[保護シート]
本発明の一実施形態に係る保護シート10は、図1に示したように、保護層1と、保護層1の一表面に配される第1はく離ライナー2と、保護層1の他表面に配される第2はく離ライナー3と、を備えている。
なお、以下では、本発明の一実施形態を、単に、本実施形態と称する。
本実施形態に係る保護シート10においては、保護層1は、水溶性高分子化合物を含む。
即ち、保護層1は、水溶性を有する。
一方で、第1はく離ライナー2及び第2はく離ライナー3は、非水溶性である。
【0015】
図1に示したように、本実施形態に係る保護シート10では、保護層1、第1はく離ライナー2、及び、第2はく離ライナー3は、平面視において略同一寸法を有している。
詳しくは、一実施形態に係る保護シート10においては、第1はく離ライナー2の内表面(保護層の一表面と対向する面)と保護層1の一表面とは、端縁どうしを合わせた形で略全域が重ね合され、第2はく離ライナー3の内表面(保護層1の他表面と対向する面)と保護層1の他表面とは、端縁どうしを合わせた形で略全域が重ね合わされている。
【0016】
本実施形態に係る保護シート10では、保護層1は、被着体に貼着させることができる程度の接着性を有する。
本実施形態に係る保護シート10では、保護層1は、タック性(感圧接着性)を有することが好ましい。
本実施形態の保護シート10は、保護層1を被着体(例えば、半導体ウェハなどの電子部品)に貼着させることで被着体に対する各種の処理を施す間、当該被着体の表面に異物が付着することを防止すべく用いられる。
【0017】
本実施形態に係る保護シート10では、保護層1(より具体的には、保護層1の露出面)は、例えば、図2に示したようなマウント装置200を用いて、半導体ウェハなどの電子部品の保護対象面に貼着される。
マウント装置200は、図2に示したように、チャンバ201と、チャンバ201の底部に配される静電チャックテーブル202と、静電チャックテーブル202よりも上方でチャンバ201内に配されるヘッド部203と、チャンバ201の内部を減圧するためのポンプPと、を備えている。
なお、マウント装置200においては、静電チャックテーブル202に半導体ウェハなどの電子部品が取り付けられ、ヘッド部203に保護シート10が取り付けられる。
また、マウント装置200においては、保護シート10及び半導体ウェハなどの電子部品は、保護層1の露出面と前記保護対象面とが対向するような形で、ヘッド部203及び静電チャックテーブル202にそれぞれ取り付けられる。
さらに、図2に示したように、ヘッド部203に保持テーブル101を取り付けた状態とした上で、保持テーブル101に保護シート10が取り付けられてもよい。
【0018】
上下方向(鉛直方向)をZ軸方向とし、静電チャックテーブル202及びヘッド部203をZ軸に平行する平面で切断した際の切断面に沿った水平方向(図2における紙面に沿った水平方向)をX軸方向とし、Z軸及びX軸の両方と直交する方向(図2における紙面と直交する方向)をY軸方向としたときに、ヘッド部203をX軸方向及びY軸方向の少なくとも一方に移動させた上で、さらにZ軸方向に移動させることにより、ヘッド部203に取り付けられた保護層1の露出面を静電チャックテーブル202に取り付けられた半導体ウェハなどの電子部品の保護対象面に貼着させることができる。
【0019】
ヘッド部203に保持テーブル101が取り付けられていない場合において、保護層1の露出面を前記保護対象面に貼着させるに際しては、静電チャックテーブル202を加温状態にしておいてもよい。
また、ヘッド部203に保持テーブル101が取り付けられた場合において、保護層1の露出面を前記保護対象面に貼着させるに際しては、保持テーブル101及び静電チャックテーブル202の少なくとも一方を加温状態にしておいてもよい。
【0020】
前記第1はく離ライナー2と前記第2はく離ライナー3とのそれぞれは、被着体に貼着する前の保護層1に異物が付着するのを防止すべく保護層1に貼合されている。
前記第1はく離ライナー2と前記第2はく離ライナー3とのそれぞれは、前記保護層1に対向する内表面と、該内表面とは反対面となる外表面とを備える。
【0021】
本実施形態に係る保護シート10は、第1はく離ライナー2を剥がして保護層1の一表面を露出させて、該一表面を被着体の保護対象面に貼着させるようにして用いられる。
本実施形態に係る保護シート10は、保護層1の一表面を被着体の保護対象面に貼着させた後、保護層1の他表面から第2はく離ライナー3を剥がして保護層1の他表面を露出させるようにして用いられてもよい。
すなわち、本実施形態に係る保護シート10は、第1はく離ライナー2を剥がして保護層1の一表面を露出させて、該一表面を被着体の保護対象面に貼着させた後、保護層1の他表面を第2はく離ライナー3で覆った状態で使用されてもよいし、保護層1の他表面から第2はく離ライナー3を剥がして、保護層1の他表面を露出させた状態で使用されてもよい。
【0022】
本実施形態に係る保護シート10において、保護層1の一表面を被着体の保護対象面に貼着させるに際しては、少なくとも保護層1が、被着体の平面寸法と略同寸法を有するようにカットなどされる。
【0023】
本実施形態に係る保護シート10では、保護層1に対する第1はく離ライナー2の剥離力をPとし、保護層1に対する第2はく離ライナー3の剥離力をPとしたときに、剥離力P、及び、剥離力Pが以下の関係式を満たすことが重要である。

<P
≦2000mN/25mm
【0024】
剥離力Pが2000mN/25mm以下であることにより、保護層1に対して第2はく離ライナー3が過度に被着されるようになることを抑制することができる。
これにより、第1はく離ライナー2を剥がして保護層1の一表面を露出させて、該一表面を被着体たる半導体ウェハの保護対象面に被着させた後に、保護層1の他表面から第2はく離ライナー3をはく離するときに、保護層1の一部が付着した状態で第2はく離ライナー3がはく離されることを抑制できる。
すなわち、第2はく離ライナー3を剥がすときに、保護層1が泣き別れしてしまうことを抑制できる。
また、剥離力P及び剥離力Pが、P<Pの関係を満たしていることにより、第1はく離ライナー2を剥がして保護層1の一表面を露出させるときに、保護層1の他表面側において第2はく離ライナー3が浮き上がってしまうことを抑制することができる。
なお、保護層1に対する第1はく離ライナー2の被着力及び保護層1に対する第2はく離ライナー3の被着力を適切にバランスさせる観点から、剥離力Pに対する剥離力Pの比(P/P)であるRは、1.1以上であることが好ましく、1.2以上であることがより好ましい。
また、前記Rは、2.0以上であることがより好ましく、3.0以上であることがより好ましく、4.0以上であることがより好ましく、5.0以上であることがより好ましい。前記Rの上限は、通常、100である。
前記Rが2.0以上であることにより、剥離力Pの値と剥離力Pの値との差を十分に大きくすることができるので、第1はく離ライナー2を保護層1から剥離しているときに、保護層1が第2はく離ライナー3から浮き上がることを十分に抑制することができる。
【0025】
本実施形態に係る保護シート10を上記関係式、すなわち、P<P、かつ、P≦2000mN/25mmを満たすものとするためには、保護層1の一表面に対する第1はく離ライナー2の内表面の被着力が適切となるように、第1はく離ライナー2の内表面に表面処理を施した上で、保護層1の他表面に対する第2はく離ライナー3の内表面の被着力が適切となるように、第2はく離ライナー3の内表面に表面処理を施す必要がある。
【0026】
本実施形態に係る保護シート10においては、剥離力Pは、5mN/25mm以上であることが好ましく、10mN/25mm以上であることがより好ましく、15mN以上であることがさらに好ましい。
また、本実施形態に係る保護シート10においては、剥離力Pは、1000mN/25mm以下であることが好ましく、500mN/25mm以下であることがより好ましく、300mN/25mm以下であることがさらに好ましく、200mN/25mm以下であることがよりさらに好ましい。
【0027】
本実施形態に係る保護シート10においては、剥離力Pは、70mN/25mm以上であることが好ましく、80mN/25mm以上であることが好ましい。
また、本実施形態に係る保護シート10においては、剥離力Pは、1500mN/25mm以下であることが好ましく、1000mN/25mm以下であることがさらに好ましい。
【0028】
剥離力P及び剥離力Pは、引張試験機(商品名「オートグラフAG-IS」、株式会社島津製作所社製)を用いて測定することができる。
前記引張試験機を用いた剥離力Pについては、保護シート10から、長さ150mm、幅100mmの大きさのサンプルを切り出した後、該サンプルにおいて、第2はく離ライナー3を剥離させたものを供試体(以下、第1供試体という)とする。
また、前記引張り試験機を用いた剥離力Pについては、保護シート10から、長さ150mm、幅100mmの大きさのサンプルを切り出した後、該サンプルにおいて、第1はく離ライナー2を剥離させたものを供試体(以下、第2供試体という)とする。
なお、剥離力P及び剥離力Pの「mN/25mm」という単位は、幅100mmで測定した値を幅25mmに換算したものである。
【0029】
剥離力Pの測定は、両面テープ(例えば、日東電工社製の商品名「No.500」)を介在させた状態で第1供試体における保護層の露出面をベアウェハの表面に貼り合わせた状態とし、引張試験機(例えば、島津製作所社製の商品名「オートグラフAG-IS」)を用いた180°ピール試験にて実施することができる。
なお、前記180°ピール試験は、温度23±2℃、相対湿度55±5%RH、及び、剥離速度300mm/minの条件で、長さ方向に第1はく離ライナー2を引っ張ることにより実施することができる。
また、剥離力Pの測定は、第1供試体を第2供試体に代え、長さ方向に引っ張る対象を第2はく離ライナー3に代えた以外は、剥離力Pの測定と同様に実施することができる。
また、剥離力P及び剥離力Pは、測定開始から30mmを始点、120mmを終点とする範囲の値の平均値とする。
【0030】
前記表面処理としては、例えば、剥離剤を用いて、第1はく離ライナー2の内表面及び第2はく離ライナー3の内表面を離型処理することが挙げられる。
前記剥離剤としては、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な剥離剤を用いることができる。
このような剥離剤としては、例えば、エチレン-ビニルアルコール共重合体、脂肪酸アミド系添加剤、低分子量ポリオレフィンワックス、長鎖アルキル系添加剤、ポリメチルペンテン、フッ素系剥離剤、シリコーン系剥離剤などが挙げられる。
【0031】
前記エチレン-ビニルアルコール共重合体としては、例えば、エチレンと、酢酸ビニル、ギ酸ビニル、及び、プロピオン酸ビニルからなる群から選ばれる少なくとも1種との共重合体をケン化することによって得られるエチレン・ビニルアルコール共重合体などを用いることができる。
【0032】
前記脂肪酸アミド系添加剤としては、例えば、メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミド、N,N-ジオレイルアジピン酸アミド、N-ステアリル-N’-ステアリル酸アミド(例えば、N-ステアリル-N’-ステアリル尿素など)などが挙げられる。
これらの脂肪酸アミド系添加剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0033】
前記低分子量ポリオレフィンワックスとしては、例えば、ポリエチレンワックスの低分子品、ポリプロピレンワックスの低分子品などが挙げられる。
【0034】
前記長鎖アルキル系添加剤としては、例えば、長鎖アルキルペンダントポリマーを含むものが挙げられる。
このような長鎖アルキル系添加剤の市販品としては、ピーロイル(登録商標)1010(一方社油脂工業社製)、ピーロイル(登録商標)1010S(一方社油脂工業社製)などが挙げられる。
【0035】
前記ポリメチルペンテンとしては、4-メチル-1-ペンテンをベースとするオレフィンコポリマーなどが挙げられる。
このようなポリメチルペンテンの市販品としては、TPX(登録商標)MX001(三井化学社製)、TPX(登録商標)0004(三井化学社製)などが挙げられる。
【0036】
前記フッ素系剥離剤は、フッ素系樹脂を含む。
前記フッ素系樹脂としては、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)、PCTFE(ポリクロロトリフルオロエチレン)、PVF(ポリフッ化ビニル)、PFA(テトラフルオロエチレンとパーフルオロアルコキシエチレンとの共重合体)、FEP(テトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレンとの共重合体)、ETFE(テトラフルオロエチレンとエチレンとの共重合体)、ECTFE(クロロトリフルオロエチレンとエチレンとの共重合体)、テトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレンとフッ化ビニリデンとの3元共重合体、フッ素ゴムなどが挙げられる。
これら各種のフッ素系樹脂は単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0037】
前記シリコーン系剥離剤としては、例えば、オイル型、焼付型、及び、エマルジョン型の剥離剤が挙げられる。
【0038】
オイル型シリコーン剥離剤としては、ポリアルキルシロキサン、変性ポリアルキルシロキサン、及び、ポリアルキルシロキサンで変性した樹脂などの液状のシリコーン化合物を用いることができる。
【0039】
前記ポリアルキルシロキサンとしては、側鎖及び末端の全てがメチル基であるジメチルシリコーン、側鎖の一部がフェニル基であるメチルフェニルシリコーン、側鎖の一部が水素であるメチルハイドロジェンシリコーンなどが挙げられる。
なお、ジメチルシリコーン、メチルフェニルシリコーン、及び、メチルハイドロジェンシリコーンは、いずれも、珪素(Si)どうしが酸素(O)を介して直鎖状に結合されたストレートシリコーンと呼ばれるものである。
【0040】
前記変性ポリアルキルシロキサンとしては、前記ポリシロキサンの側鎖の一部に有機基を導入したものが挙げられる。
前記有機基としては、モノアミン基、ジアミン基、アミノ基、エポキシ基、カルビノール基、メルカプト基、カルボキシル基、ポリエーテル基、アラルキル基、フロロアルキル基などが挙げられる。
なお、前記変性ポリアルキルシロキサンのうち、モノアミン基、ジアミン基、アミノ基、エポキシ基、カルビノール基、メルカプト基、カルボキシル基といった反応性を有する有機基を有するものは、反応性シリコーンと呼ばれ、前記変性ポリアルキルシロキサンのうち、ポリエーテル基、アラルキル基、フロロアラルキル基といった反応性を有さない有機基を有するものでは、非反応性シリコーンと呼ばれる。
【0041】
焼付型シリコーン剥離剤としては、上で説明した、前記ポリアルキルシロキサン、前記変性ポリアルキルシロキサン、及び、ポリアルキルシロキサンで変性した樹脂などの液状のシリコーン化合物に、パーオキサイドまたはパーオキサイド含有シリコーン化合物等の架橋剤を配合したものが挙げられる。
【0042】
エマルジョン型シリコーン剥離剤は、水系媒体にシリコーン化合物が分散されたシリコーン化合物の水分散体である。
前記エマルジョン型シリコーン剥離剤は、シリコーン系の水分散性樹脂とも呼ばれる。
前記シリコーン化合物としては、上で説明した、ポリアルキルシロキサン、変性ポリアルキルシロキサン、及び、ポリアルキルシロキサンで変性した樹脂などの液状のシリコーン化合物が挙げられる。
【0043】
前記ポリアルキルシロキサンなどのシリコーン化合物は、熱架橋性を有している。
そして、このようなシリコーン化合物では、熱架橋の程度を調整することにより、剥離力の程度を容易に調整することができる。
そのため、上記を考慮すると、上記した各種剥離剤の中でも、シリコーン系剥離剤を用いることが好ましい。
【0044】
なお、剥離剤は、通常、液状であり、剥離性を高めたい対象物に塗布するような形で用いられる。
前記剥離剤の塗布方法としては、各種公知の塗布方法を採用することができる。
各種公知の塗布方法としては、例えば、グラビアコート法やリバースコート法などのロールコート法、マイヤーバーなどのバーコード法、スプレーコート法、エアーナイフコート法などが挙げられる。
なお、上記剥離剤は、有機溶剤(例えば、エチルメチルケトン)などで希釈された上で前記対象物に塗布されてもよい。
また、前記剥離剤は、乾燥後の厚さが、0.05μm以上1μm以下の範囲となるように塗布されることが好ましい。
【0045】
前記剥離剤を用いて、第1はく離ライナー2の内表面及び第2はく離ライナー3の内表面を離型処理する場合には、第1はく離ライナー2の内表面に塗布する剥離剤の種類と第2はく離ライナー3の内表面に塗布する剥離剤の種類とを異ならせれば、保護層1に対する第1はく離ライナー2の内表面の剥離力Pと、保護層1に対する第2はく離ライナー3の内表面の剥離力Pとを異ならせることができる。
また、第1はく離ライナー2の内表面に塗布する剥離剤及び第2はく離ライナー3の内表面に塗布する剥離剤として、共に、シリコーン系剥離剤と用いる場合には、上で説明したように、第1はく離ライナー2の内表面に塗布された前記シリコーン系剥離剤の熱架橋の程度と、第2はく離ライナー3の内表面に塗布された前記シリコーン系剥離剤の熱架橋の程度と異ならせれば、保護層1に対する第1はく離ライナー2の内表面の剥離力Pと保護層1に対する第2はく離ライナー3の内表面の剥離力Pとを異ならせることができる。
なお、熱架橋の程度は、加熱温度を異ならせたり、加熱時間を異ならせたりすることにより調整することができる。
さらに、第1はく離ライナー2の内表面に塗布する剥離剤、及び、及び第2はく離ライナー3の内表面に塗布する剥離剤を同一種のものとする場合には、有機溶剤などでの希釈倍率を変えた剥離剤を用いて、第1はく離ライナー2の内表面及び第2はく離ライナー3の内表面のそれぞれを塗布してもよい。このような形で塗布処理を行った場合においても、保護層1に対する第1はく離ライナー2の内表面の剥離力Pと保護層1に対する第2はく離ライナー3の内表面の剥離力Pとを異ならせることができる。
【0046】
また、前記表面処理としては、例えば、マット加工やエンボス加工などによって、第1はく離ライナー2の内表面(保護層1が配される面)及び第2はく離ライナー3の内表面に凹凸を設けることが挙げられる。
第1はく離ライナー2の内表面及び第2はく離ライナー3の内表面に凹凸を設ける場合においては、第1はく離ライナー2の内表面の算術平均粗さRaは、0.1μm以上であることが好ましく、0.5μm以上であることがより好ましく、1.0μm以上であることがさらに好ましい。
また、第1はく離ライナー2の内表面の算術平均粗さRaは、50μm以下であることが好ましく、30μm以下であることがより好ましく、10μm以下であることがさらに好ましい。
さらに、第2はく離ライナー3の内表面の算術平均粗さRaは、0.050μm以上であることが好ましく、0.075μm以上であることがより好ましく、0.100μm以上であることがさらに好ましい。
【0047】
第1はく離ライナー2の内表面の算術平均粗さRa及び第2はく離ライナー3の内表面の算術平均粗さRaは、コンフォーカルレーザー顕微鏡(例えば、商品名「OPTELICS H300」、レーザーテック社製)を用いて測定することができる。
【0048】
算術平均粗さRaの値が大きいほど、第1はく離ライナー2の内表面及び第2はく離ライナー3の内表面と、保護層1の表面との接触面積は小さくなる。
そのため、算術平均粗さRaの値が大きいほど、保護層1に対する第1はく離ライナー2の内表面の剥離力P、及び、保護層1に対する第2はく離ライナー3の内表面の剥離力Pは小さくなる(軽剥離できるようになる)。
したがって、第1はく離ライナー2の内表面の算術平均粗さRaの値を第2はく離ライナー3の内表面の算術平均粗さRaの値よりも大きくすることにより、剥離力P<剥離力Pの関係が満たされるようになる。
また、第1はく離ライナー2の内表面の算術平均粗さRaが上記数値範囲内にあり、第2はく離ライナー3の内表面の算術平均粗さRaが上記数値範囲内にあることにより、本実施形態に係る保護シート10を、上記各関係式を満たすものとし易くなる。
【0049】
保護層1は、上で説明したように、被着体の保護対象面に貼り合わせて用いられる。
前記被着体としては、電子部品が挙げられ、前記電子部品としては、例えば、半導体ウェハなどが挙げられる。
前記半導体ウェハとしては、一表面側に格子状に区画された領域(以下、格子状区画領域ともいう)が形成された半導体ウェハであって、前記格子状区画領域のそれぞれに回路パターンが形成されているとともに電極部が配されている半導体ウェハが挙げられる。
前記電子部品が上記のごとき半導体ウェハである場合、保護層1は、前記半導体ウェハの一表面に貼り合わせて用いられる。
このように、保護層1が前記半導体ウェハの一表面に貼り合わされることにより、前記半導体ウェハを分割(割断)して複数の半導体チップを得るときに分割部(割断部)付近の前記半導体ウェハの一部が粉状化されるなどして発生する微細な異物が、前記一表面に形成された各回路パターン(前記格子状区画領域ごとに形成された回路パターン)、及び、前記一表面に配される各電極部(前記格子状区画領域ごとに配される電極部)に付着することを抑制することができる。
【0050】
前記第2はく離ライナー3は、長手方向と短手方向とを備えた長尺の帯状であってもよい。
保護シート10は、一つの帯状の第2はく離ライナー3と、保護対象面と同一形状を有する複数の保護層1とを備え、該複数の保護層1が第2はく離ライナー3の長手方向に並んで配置されたものであってもよく、該長手方向において隣り合う保護層1の間に一定の間隔が設けられたものであってもよい。
また、その場合、第1はく離ライナー2は、第2はく離ライナー3と同様に帯状であってもよい。
【0051】
前記第2はく離ライナー3は、長手方向のみならず短手方向においても保護層1より寸法が大きくてもよい。
即ち、保護シート10は、保護層1の外周縁よりも外側に第2はく離ライナー3がはみ出し、且つ、第2はく離ライナー3のはみ出しが保護層1の全周において生じているものであってもよい。
【0052】
保護シート10は、例えば、以下のようにして作製することができる。

(1)アプリケータなどを用いて、水溶性高分子化合物とともに余剰な液分を含む水溶性樹脂組成物を第2はく離ライナー3上に所定厚み(例えば、5μm~30μm)で塗布する。
(2)塗布後の水溶性樹脂組成物を所定温度で所定時間(例えば、110℃で2分間)乾燥する。これにより、第2はく離ライナー3上に水溶性高分子化合物を含む保護層1を形成する。
(3)保護層1において、第2はく離ライナー3が配されている面の反対面(保護層1の露出面)に、所定の温度(例えば、70℃)で第1はく離ライナー2を貼り合わせる。
【0053】
本実施形態に係る保護シート10においては、保護層1は、水溶性高分子化合物とともに余剰な液分を含む水溶性樹脂組成として、水に前記水溶性高分子化合物を分散させたもの(以下、保護層形成組成物という)を用いて作製されることが好ましい。
前記保護層形成組成物では、水100質量部に対して、前記水溶性高分子化合物が5質量部以上80質量部以下含まれていることが好ましく、10質量部以上70質量部以下含まれていることがより好ましく、15質量部以上60質量部以下含まれていることがさらに好ましい。
また、前記保護層形成組成物では、水に前記水溶性高分子化合物が溶解した状態となっていることが好ましい。
なお、前記保護層形成組成物では、前記水溶性高分子化合物は、20~90℃の温度で処理されることにより水に溶解した状態とすることができる。
さらに、前記保護層形成組成物は、25℃における粘度が0.03Pa・s以上であることが好ましく、0.05Pa・s以上であることがより好ましく、0.1Pa・s以上であることがさらに好ましい。
25℃における粘度が上記した下限値以上であることにより、前記保護層形成組成物を第1はく離ライナー2上に塗布して該第1はく離ライナー2上に保護層1を形成したときに、保護層1の厚みが変動し易くなることを抑制することができる。
また、前記保護層形成組成物は、25℃における粘度が15Pa・s以下であることが好ましく、10Pa・s以下であることがより好ましく、5Pa・s以下であることがさらに好ましい。
25℃における粘度が上記した上限値以下であることにより、前記保護層形成組成物を第1はく離ライナー2上に塗布するときの塗布性を向上させることができる。
なお、25℃における前記保護層形成組成物の粘度は、測定装置として、英弘精機社製のデジタル粘度計(製品名「DV-I Prime」)を用いた上で、LV-3スピンドルを用いて、回転数50rpmという条件を採用することにより測定することができる。
【0054】
前記水溶性高分子化合物としては、例えば、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、水溶性ポリエステル(PES)、ポリエチレンオキシド(PEO)などが挙げられる。
前記水溶性高分子化合物は、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、水溶性ポリエステル、ポリエチレンオキシドなどを単独で用いてもよいし、これらの2種以上を組み合わせて用いてもよい。
前記水溶性高分子化合物としては、ポリビニルアルコール、水溶性ポリエステル、及び、ポリエチレンオキシドからなる群から選択される少なくとも1種を用いることが好ましく、ポリビニルアルコールを用いることがより好ましい。
【0055】
前記ポリビニルアルコールは、けん化度が50以上98以下であることが好ましく、60以上90以下であることがより好ましい。
けん化度が上記数値範囲内であることにより、前記ポリビニルアルコールは、十分な水溶性を示すことができることに加えて、前記ポリビニルアルコールを前記保護層形成組成物に含ませた場合においては、第1はく離ライナー2上への前記保護層形成組成物の塗布を作業性良く実施することができる。
前記ポリビニルアルコールのけん化度は、プロトン磁気共鳴分光法(H-NMR測定法)によって測定することができる。
なお、測定試料中に添加剤が含まれており、該添加剤由来のピークがけん化度の算出に用いるピークに重なる場合には、前記測定試料にメタノール抽出などを施して前記添加剤を分離した後に、前記ポリビニルアルコールのけん化度を測定する。
前記ポリビニルアルコールのけん化度は、以下のような条件で測定することができる。

<測定条件>
・分析装置 FT-NMR : Bruker Biospin , AVANCE III-400
・観測周波数 400MHz(1H)
・測定溶媒 重水、または、重ジメチルスルホキシド(重DMSO)
・測定温度 80℃
・化学シフト基準 外部標準TSP-d4(0.00ppm)(重水測定時)
測定溶媒(2.50ppm)(重DMSO測定時)

なお、前記ポリビニルアルコールのけん化度は、ビニルアルコールユニット(VOH)のメチレン基由来のピーク(重水;2.0~1.0ppm、重DMSO;1.9~1.0ppm)と、酢酸ビニルユニット(VAc)のアセチル基由来のピーク(重水;2.1ppm付近、重DMSO;2.0ppm付近)とを用いて、以下の式に基づいて算出する。
以下の式において、[VOH(-CH2)-]は、ビニルアルコールユニット中の-CH2-由来のピークの強度を意味し、[VAc(CH3CO-)]は、酢酸ビニルユニット中のCH3CO-由来のピーク強度を意味する。
【0056】
【数1】
【0057】
前記ポリビニルアルコールは、平均重合度が100以上1000以下であることが好ましく、100以上800以下であることがより好ましい。
平均重合度が上記数値範囲内であることにより、前記ポリビニルアルコールは、十分な水溶性を示すことができることに加えて、前記ポリビニルアルコールを前記保護層形成組成物に含ませた場合においては、第1はく離ライナー2上への前記保護層形成組成物の塗布を作業性良く実施することができる。
前記ポリビニルアルコールの平均重合度は、水系GPCによって測定することができる。
前記ポリビニルアルコールの平均重合度は、以下のような条件で測定することができる。

<測定条件>
・分析装置 Agilent, 1260Infinity
・カラム TSKgel G6000PWXL(東ソー社製)及びTSKgel G3000PWXL(東ソー社製)
上記2本のカラムは直列接続する。
・カラム温度 40℃
・溶離液 0.2Mの硝酸ナトリウム水溶液
・注入量 100μL
・検出器 示差屈折計(RI)
・標準試料 PEG標準試料及びPVA標準試料

具体的な測定は、以下のようにして行う。

(1)PEG標準試料を用いたGPC測定によって、被測定試料(PVA)及びPVA標準試料の質量平均分子量Mwをそれぞれ算出する。なお、PVA標準試料は、平均重合度が既知のものである。
(2)PVA標準試料の平均重合度、及び、算出したPVA標準試料の質量平均分子量Mwを用いて検量線を作成する。
(3)作成した検量線を用いて、被測定試料(PVA)の質量平均分子量Mwから被測定試料(PVA)の平均重合度を求める。
【0058】
また、前記水溶性高分子として、前記ポリビニルアルコールを用いる場合には、けん化度が異なる複数のポリビニルアルコールを組み合わせて用いてもよいし、平均重合度が異なる複数のポリビニルアルコールを組み合わせて用いてもよい。
【0059】
前記水溶性ポリエステルは、多価カルボン酸の残基とポリオールの残基とを有する。
前記水溶性ポリエステルは、例えば、多価カルボン酸成分とポリオール成分とを含むモノマー成分の重合生成物である。
なお、前記水溶性ポリエステルが水溶性を有することは、技術常識に基づいて判断することができる。
【0060】
前記水溶性ポリエステルは、以下の(1)~(4)のうちの少なくとも1つを満たすことが好ましい。
(1)前記水溶性ポリエステルで形成された厚み20μmの薄膜の表面全体に常温(23±2℃)の水を0.005MPaの噴霧圧で20分間噴霧すると、この薄膜が全て水に溶解する。
(2)前記水溶性ポリエステルで形成された厚み20μmの薄膜の表面全体に50℃の水を0.005MPaの噴霧圧で10分間噴霧すると、この薄膜が全て水に溶解する。
(3)前記水溶性ポリエステルと常温の水とを、水溶性ポリエステル:常温の水=1:5の質量比で混合して混合液を得て、該混合液に超音波を20分間照射すると、前記水溶性ポリエステルが水に全て溶解する。
(4)前記水溶性ポリエステルと50℃の水とを、水溶性ポリエステル:50℃の水=1:5の質量比で混合して混合液を得て、該混合液に超音波を10分間照射すると、前記水溶性ポリエステルが水に全て溶解する。
【0061】
保護層1の厚みは、2μm以上70μm以下であることが好ましく、3μm以上50μm以下であることがより好ましく、5μm以上40μm以下であることがさらに好ましい。
保護層1の厚みは、例えば、ダイアルゲージ(PEACOCK社製、型式R-205)を用いて、ランダムに選んだ任意の5点の厚みを測定し、これらの厚みを算術平均することにより求めることができる。
【0062】
第1はく離ライナー2としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)などの樹脂を用いて作製された樹脂シートが挙げられる。
第1はく離ライナー2が上記のごとき樹脂シートで構成されている場合、前記樹脂シートでは、少なくとも保護層1に貼り合わされる面に、保護層1との被着力を適切に調整すべく、上で説明したような表面処理が施され得る。
また、第2はく離ライナー3としては、第1はく離ライナー2と同様に、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)などの樹脂を用いて作製された樹脂シートが挙げられる。
第2はく離ライナー3が上記のごとき樹脂シートで構成されている場合、前記樹脂シートでは、少なくとも保護層1に貼り合わされる面に、保護層1との被着力を適切に調整すべく、上で説明したような表面処理が施され得る。
【0063】
第1はく離ライナー2の厚みをTとし、第2はく離ライナー3の厚みをTとしたときに、厚みT及び厚みTは、以下の関係式を満たしていることが好ましい。

<T
35μm<T<80μm
【0064】
はく離ライナーは、通常、厚みが厚くなるほど、腰強度(曲げ剛性)が高くなる。
そして、はく離ライナーは、腰強度が高くなればなるほど厚み方向に撓み難くなる。
ここで、上で説明したように、半導体ウェハなどの被着体の保護対象面には、第1はく離ライナー2を剥がすことにより露出した保護層1の一表面が貼り合わされる。
そして、第1はく離ライナー2は、外側(保護層1が配されていない側)から吸引力などの外力が加えられて、保護層1の一表面から剥がされる。
上記のような場合、第1はく離ライナー2には吸引などによって撓みが生じ、その撓みが生じることが原因となって、第1はく離ライナー2の一部が保護層1の一表面から浮き上がるようになる。
そして、その浮き上がり部分を基点として、第1はく離ライナー2は、保護層1の一表面から剥がされるようになる。
上記のように、第1はく離ライナー2を保護層1の一表面から剥がしているときに、第2はく離ライナー3にも内側(保護層1が配されている側)に向かって撓みが生じ易くなって、第2はく離ライナー3が保護層1の他表面から浮き上がることは好ましくない。
そのため、第1はく離ライナー2の厚みTと第2はく離ライナー3の厚みTとは、上記のように、T<Tの関係式を満たしていることが好ましい。
また、前記保護対象面に保護層1の一表面を貼り合わせた後においては、第2はく離ライナー3は、通常、保護層1の他表面から剥がされる。
そのため、前記保護対象面に保護層1の一表面を貼り合わせた後に、第2はく離ライナー3を剥がし易くする観点から、第2はく離ライナー3の厚みTは、上記のように、35μm<T<80μmの関係式を満たしていることが好ましい。
これにより、第2はく離ライナー3を適切な腰強度を有するものとすることができるので、第2はく離ライナー3を保護層1の他表面からはく離するときに、保護層1の一部が付着した状態で第2はく離ライナー3が剥がされること、すなわち、泣き別れが生じることを抑制することができる。
【0065】
また、第1はく離ライナー2の厚みTと第2はく離ライナー3の厚みTとを異ならせることにより、側方から保護シート10を視認したときに、第1はく離ライナー2及び第2はく離ライナー3を識別し易くなる。
【0066】
第1はく離ライナー2の厚みTは、15μm以上であってもよいし、20μm以上であってもよいし、25μm以下であってもよい。
また、第1はく離ライナー2の厚みTは、40μm未満であってもよいし、35μm以下であってもよい。
さらに、第2はく離ライナー3の厚みTは、40μm以上であってもよいし、45μm以上であってもよいし、50μm以上であってもよいし、60μm以上であってもよい。
また、第2はく離ライナー3の厚みTは、75μm以下であってもよいし、70μm以下であってもよい。
第1はく離ライナー2及び第2はく離ライナー3の厚みは、保護層1の厚みと同様にして求めることができる。
【0067】
第1はく離ライナー2及び第2はく離ライナー3を視覚によって識別し易くする観点から、第1はく離ライナー2と第2はく離ライナー3とを異なる色を有するものとしてもよい。
例えば、第1はく離ライナー2を黒色に着色し、第2はく離ライナー3を白色に着色するなどのように、第1はく離ライナー2及び第2はく離ライナー3の両方を着色して、第1はく離ライナー2と第2はく離ライナー3との視覚による識別性を向上させてもよい。
また、第1はく離ライナー2及び第2はく離ライナー3の両方が無色透明である場合には、第1はく離ライナー2または第2はく離ライナー3の一方を着色して、第1はく離ライナー2と第2はく離ライナー3との識別性を向上させてもよい。
第1はく離ライナー2及び第2はく離ライナー3を着色するための着色剤としては、各種公知の着色剤を用いることができる。
前記着色剤としては、染料や顔料などが挙げられる。
なお、なお、染料とは、水や有機溶剤などに溶解する性質を有する着色剤を意味し、顔料とは、水や有機溶剤などに溶解しない性質を有する着色剤を意味する。
【0068】
本明細書によって開示される事項は、以下のものを含む。
【0069】
(1)
保護層と、
該保護層の一表面に配される第1はく離ライナーと、
前記保護層の他表面に配される第2はく離ライナーと、を備え、
前記保護層は、水溶性高分子化合物を含み、
前記保護層に対する前記第1はく離ライナーの剥離力をPとし、前記保護層に対する前記第2はく離ライナーの剥離力をPとしたときに、
剥離力P、及び、剥離力Pが、以下の関係式を満たす
保護シート。
<P
≦2000N/25mm
【0070】
斯かる構成によれば、一方のはく離シートをはく離させるときに他方のはく離シートから前記保護層の浮きが生じることを抑制することと、前記保護層が泣き別れしてしまうことを抑制することとを十分に両立させることができる。
【0071】
(2)
前記第1はく離ライナーの厚みをTとし、前記第2はく離ライナーの厚みをTとしたときに、
厚みT及び厚みTは以下の関係式を満たす
請求項1に記載の保護シート。
<T
35μm<T<80μm
【0072】
斯かる構成によれば、一方のはく離シートをはく離させるときに他方のはく離シートから前記保護層の浮きが生じることを抑制することと、前記保護層が泣き別れしてしまうことを抑制することとをより一層十分に両立させることができる。
また、一方のはく離シートと他方のはく離シートとを、視覚的に容易に識別し易くなる。
【0073】
なお、本発明に係る保護シートは、前記実施形態に限定されるものではない。また、本発明に係る保護シートは、前記した作用効果によって限定されるものでもない。本発明に係る保護シートは、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【実施例0074】
次に、実施例を挙げて本発明についてさらに具体的に説明する。以下の実施例は本発明をさらに詳しく説明するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。
【0075】
[実施例1]
容器内において、水にポリビニルアルコール(けん価度65、平均重合度240)を分散させた水分散溶液を作成した。
なお、以下では、ポリビニルアルコールのことをPVAとも称する。
次に、該水分散溶液を含む容器を90℃の水浴中に入れ、該水分散容器を撹拌することによってPVAを水に溶解させて、PVA溶解組成物を得た。
次に、シリコーン離型処理が施された面(以下、シリコーン離型処理面ともいう)を有する第2はく離ライナー(三菱ケミカル社製の商品名「ダイアホイルMRV75」、厚み75μm)の離型処理面上に、アプリケータを用いて前記PVA溶解組成物を厚み5μmで塗布した。
次に、前記PVA溶解組成物を塗布した第2はく離ライナーを110℃で2分間乾燥することにより、前記第2はく離ライナー上に保護層を形成した。
次に、前記保護層上に、シリコーン離型処理面を有する第1はく離ライナー(三菱ケミカル社製の商品名「ダイアホイルMRA25」、厚み25μm)を重ね合せて、前記第2はく離ライナー、前記保護層、及び、前記第1はく離ライナーがこの順に積層された積層体を得た後、該積層体を70℃で加熱処理した。
なお、前記第1はく離ライナーは、シリコーン離型処理面を前記保護層の露出面に重ね合せた。
これにより、実施例1に係る保護シートを得た。
また、以下では、ダイアホイルMRV75は単に「MRV75」と記載し、ダイアホイルMRA25は単に「MRA25」と記載している。
【0076】
前記ポリビニルアルコールのけん価度及び平均重合度は、上記の実施形態の項で説明した方法に準じて測定した。
【0077】
[実施例2]
前記第2はく離ライナーとして、東洋紡社製の商品名「クリスパーCN500-50」を用い、前記第1はく離ライナーとして、三菱ケミカル社製の商品名「ダイアホイルMRA38」を用い、前記保護層の厚みを10μmとした以外は、実施例1と同様にして、実施例2に係る保護シートを得た。
なお、前記第2はく離ライナーたるクリスパーCN500-50は、シリコーン化合物を含まない非シリコーン系の剥離剤で離型処理が施された面(以下、非シリコーン離型処理面ともいう)を有するものであり、厚みは50μmであった。
また、前記第1はく離ライナーたるダイアホイルMRA38は、前記MRV75及び前記MRA25と同様に、シリコーン離型処理面を有するものであり、厚みは38μmであった。
さらに、前記保護層の一表面には前記第1はく離ライナーのシリコーン離型処理面を貼り合わせ、前記保護層の他表面には前記第2はく離ライナーの非シリコーン離型処理面を貼り合わせた。
また、以下では、クリスパーCN500-50は単に「CN500-50」と記載し、ダイアホイルMRA38は単に「MRA38」と記載している。
【0078】
[実施例3]
前記第1はく離ライナーとして、東洋紡社製の商品名「クリスパーCN100-38」を用い、前記保護層の厚みを30μmとした以外は、実施例2と同様にして、実施例3に係る保護シートを得た。
なお、前記第1はく離ライナーたるクリスパーCN100-38は、クリスパーCN500-50と同様に、非シリコーン離型処理面を有するものであり、厚みは38μmであった。
また、以下では、クリスパーCN100-38は単に「CN100-38」と記載している。
【0079】
[実施例4]
前記第2はく離ライナーとして、東洋紡社製の商品名「クリスパーCN100-38」を用い、前記保護層の厚みを5μmとした以外は、実施例3と同様にして、実施例4に係る保護シートを得た。
【0080】
[比較例1]
前記第1はく離ライナーとして、東レ社製の商品名「ルミラー(登録商標)#38-S10」を用い、前記第2はく離ライナーとしても、東レ社製の商品名「ルミラー(登録商標)#50-S10」を用い、保護層の厚みを10μmとした以外は、実施例1と同様にして、比較例1に係る保護シートを得た。
なお、前記第1はく離ライナーたるルミラー(登録商標)#38-S10は、離型処理が何ら施されていないものであり、厚みは38μmであった。
また、前記第2はく離ライナーたるルミラー(登録商標)#50-S10も、離型処理が何ら施されていないものであり、厚みは50μmであった。
さらに、以下では、ルミラー(登録商標)#38-S10は単に「#38-S10」と記載し、ルミラー(登録商標)#50-S10は単に「#50-S10」と記載している。
なお、「#38-S10」及び「#50-S10」は、共に、ポリエステルフィルムである。
【0081】
[比較例2]
前記第2はく離ライナーとして、三菱ケミカル社製の商品名「ダイアホイルMRA50」を用いた以外は、実施例2と同様にして、比較例2に係る保護シートを得た。
なお、前記第2はく離ライナーたるダイアホイルMRA50は、前記MRV75、前記MRA25、及び、前記MRA38と同様に、シリコーン離型処理面を有するものであり、厚みは、50μmであった。
また、以下では、ダイアホイルMRA50は単に「MRA50」と記載している。
【0082】
<剥離力>
各例に係る保護シートについて、前記保護層に対する前記第1はく離ライナーの剥離力P、及び、前記保護層に対する前記第2はく離ライナーの剥離力Pを測定した。
剥離力P及び剥離力Pは、上の実施形態の項で説明した方法にしたがって実施した。
以下の表1に、各例に係る保護シートについて、剥離力P及び剥離力Pを測定した結果を示した。
また、以下の表1に、各例に係る保護シートについて、剥離力Pに対する剥離力Pの比であるRについても示した。
【0083】
<保護層の泣き別れ>
剥離力の測定において前記保護層から剥離したはく離ライナーの表面を目視観察することにより、以下の基準にしたがって、保護層の泣き別れを評価した。

優:はく離ライナーの表面に保護層が目視で確認されない。
不可:はく離ライナーの表面に保護層の一部が目視で確認される。

以下の表1に、保護層の泣き別れを評価した結果を示した。
【0084】
<保護層の浮き>
温度23±2℃、かつ、相対湿度55±5%RHの環境下に各例に係る保護シートを24時間放置した後、各はく離ライナー(第1はく離ライナー及び第2はく離ライナー)からの保護層の浮きが認められるか否かを目視観察した。
そして、以下の基準にしたがって、保護層の浮きを評価した。

優:第1はく離ライナー及び第2はく離ライナーのいずれからも、保護層の浮きが目視で全く確認されない。また、上の環境(温度23±2℃、かつ、相対湿度55±5%RH)下に保護シートを24時間曝した後に、手で第1はく離ライナーを保護層から剥離させても、第2はく離ライナーからの保護層の浮き上がりが目視で全く確認されない。
良:第1はく離ライナー及び第2はく離ライナーのいずれからも、保護層の浮きが目視で全く確認されない。一方で、上の環境下に保護シートを24時間曝した後に、手で第1はく離ライナーを保護層から剥離させると、第2はく離ライナーからの保護層の浮き上がりが目視で僅かに確認される。
不可:第1はく離ライナー及び第2はく離ライナーの少なくとも一方から、保護層の浮きが目視で確認される。

以下の表1に、保護層の浮きを評価した結果を示した。
【0085】
【表1】
【0086】
表1から、各実施例の保護シートのように、保護層に対する第1はく離ライナーの剥離力P、及び、保護層に対する第2はく離ライナーの剥離力Pについて、P<P、かつ、P≦2000mN/25mmの関係式が満たされているものは、保護層の泣き別れの抑制と保護層の浮きの抑制とを両立できることが分かる。
これに対し、各比較例の保護シートのように、上記関係式が満たされていないものは、保護層の泣き別れの抑制と保護層の浮きの抑制と両立できないことが分かる。
また、比Rが2.0以上である実施例1~3の保護シートの保護層の浮きの評価結果と、比Rが2.0未満である各比較例の保護シートの保護層の浮きの評価結果とを比べると、実施例1~3に係る保護シートでは特に良好な結果が得られることが分かる。
なお、比較例1の保護シートでは、剥離力Pの値及び剥離力Pの値が高すぎたため、保護層の浮きの評価を実施することができなかった。
そのため、比較例1の保護シートについては、表1中において保護層の浮きの評価を「評価不可」と記載している。
【符号の説明】
【0087】
1 保護層、2 第1はく離ライナー、3 第2はく離ライナー、10 保護シート。
図1
図2