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特開2024-77570バンドブレーキの放熱構造、及び、バンドブレーキ装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024077570
(43)【公開日】2024-06-07
(54)【発明の名称】バンドブレーキの放熱構造、及び、バンドブレーキ装置
(51)【国際特許分類】
   F16D 65/807 20060101AFI20240531BHJP
   F16D 49/08 20060101ALI20240531BHJP
   F16D 65/56 20060101ALI20240531BHJP
   F16D 65/00 20060101ALI20240531BHJP
【FI】
F16D65/807
F16D49/08
F16D65/56 W
F16D65/00 A
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023081544
(22)【出願日】2023-05-17
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-10-11
(31)【優先権主張番号】202223162791.7
(32)【優先日】2022-11-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】522219641
【氏名又は名称】アライ制動器材株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003535
【氏名又は名称】スプリング弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】▲帥▼立正
【テーマコード(参考)】
3J058
【Fターム(参考)】
3J058AA03
3J058AA06
3J058AA13
3J058AA18
3J058AA23
3J058AA30
3J058AA37
3J058BA26
3J058BA37
3J058BA57
3J058BA70
3J058CB02
3J058CC06
3J058CC66
3J058DA01
3J058DD11
3J058DD20
3J058DE05
3J058DE08
3J058EA02
3J058FA09
(57)【要約】
【課題】 シンプルな構成でありながら放熱性の改良、容易且つ正確なブレーキ隙間調整作業、低価格の維持といった3つの課題を満足することができるバンドブレーキの放熱構造の提供
【解決手段】 バンドブレーキの放熱構造であって、バンドブレーキと、前記バンドブレーキの片側に設けられた取り外し可能な放熱板と、を備え、前記放熱板は略円板状の外輪と、前記外輪の中心に、前記外輪の円板面の向く方向に隆起した内輪とを備え、前記外輪は、前記円板面において、前記円板面の向く方向に隆起した少なくとも1つの放熱突起と、一対の貫通観察窓とを備え、前記内輪は、前記バンドブレーキに固定される、バンドブレーキの放熱構造。
【選択図】 図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バンドブレーキの放熱構造であって、
バンドブレーキと、
前記バンドブレーキの片側に設けられた取り外し可能な放熱板と、を備え、前記放熱板は略円板状の外輪と、前記外輪の中心に、前記外輪の円板面の向く方向に隆起した内輪とを備え、
前記外輪は、前記円板面において、前記円板面の向く方向に隆起した少なくとも1つの放熱突起と、一対の貫通観察窓とを備え、
前記内輪は、前記バンドブレーキに固定される、バンドブレーキの放熱構造。
【請求項2】
前記バンドブレーキは、
車輪と共に回転するハブに固定され、前記ハブと一体的に回転すると共に円筒状の外周面を有するドラムと、
車両に固定され、前記ドラムの外周面の外側に円状空間部を有して前記ドラムを囲繞する円筒碗状の囲繞部分を有するハウジングと、
前記ハウジングに設けられ、前記円状空間部に前記ドラムの前記外周面を囲うように配設された円弧状の帯状バンドと、を備え、
前記放熱板は、前記外輪の少なくとも一部が前記ドラムの外側円周方向に延出するよう、前記ドラムに固定される、請求項1に記載のバンドブレーキの放熱構造。
【請求項3】
前記貫通観察窓は、前記円状空間部に対応するエリアに形成され、
前記ドラムの前記外周面と前記帯状バンドとの隙間距離を調整する際の覗き窓とされる、請求項2に記載のバンドブレーキの放熱構造。
【請求項4】
前記ハウジングに設けられ、前記帯状バンドの外面を前記ドラムの側に押すことによって前記ドラムの前記外周面と前記帯状バンドとの隙間距離を調整する調整ボルトを備える、請求項3に記載のバンドブレーキの放熱構造。
【請求項5】
前記貫通観察窓、及び、前記調整ボルトは同じ数だけ複数形成されると共に、複数の前記調整ボルトの延長線上に複数の前記貫通観察窓がそれぞれ位置する位置関係に形成されている、請求項4に記載のバンドブレーキの放熱構造。
【請求項6】
前記貫通観察窓は、前記ドラムの前記外周面と同心円上に円弧状長孔として形成されている請求項5に記載のバンドブレーキの放熱構造。
【請求項7】
前記貫通観察窓は、前記円弧状長孔の幅方向の下側円弧線が前記ドラムの前記外周面に一致すると共に前記円弧状長孔の幅方向中央部に前記調整ボルトで前記隙間距離を適切に調整した適切調整位置がくるように形成されている請求項6に記載のバンドブレーキの放熱構造。
【請求項8】
前記貫通観察窓には、透明板が設けられていると共に前記透明板には前記適切調整位置であることを示すマーキング線が施されている請求項7に記載のバンドブレーキの放熱構造。
【請求項9】
前記放熱突起が三角形である請求項1に記載のバンドブレーキの放熱構造。
【請求項10】
前記外輪の外周面には、少なくとも1か所の凹んだ風向面が設けられている、請求項1に記載のバンドブレーキの放熱構造。
【請求項11】
前記内輪の前記円板面には一対の取外し外孔が設けられている、請求項1に記載のバンドブレーキの放熱構造。
【請求項12】
前記放熱板は金属を一体プレスしたものである、請求項1に記載のバンドブレーキの放熱構造。
【請求項13】
車輪と共に回転するハブに固定され、前記ハブと一体的に回転すると共に円筒状の外周面を有するドラム、及び、前記ドラムの外側円周方向に延設された放熱板を備える、放熱板付きドラムと、
車両に固定され、前記ドラムの外周面の外側に円状空間部を有して前記ドラムを囲繞する円筒碗状の囲繞部分を有するハウジングと、
前記ハウジングに設けられ、前記円状空間部に前記ドラムの前記外周面を囲うように配設された円弧状の帯状バンドと、を備えるバンドブレーキ装置であって、
前記放熱板は、略円板状の外輪と、前記外輪の中心に、前記外輪の円板面の向く方向に隆起した内輪とを備え、
前記外輪は、前記円板面において、前記円板面の向く方向に隆起した少なくとも1つの放熱突起と、一対の貫通観察窓とを備え、
前記内輪において、前記ドラムと一体として接続される、バンドブレーキ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はブレーキ構造に関し、より正確には、バンドブレーキの放熱構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ママチャリやシティサイクルなどの日常生活で使用される軽快車といわれている自転車の後輪用のブレーキとして、バンドブレーキ装置が使用されていることが多い。バンドブレーキ装置としては、例えば特許文献1がある。
【0003】
バンドブレーキは一般的なブレーキ構造であり、図6に示すように、バンドブレーキ1はハウジング11を含み、ハウジング11内に円形のドラム13が設けられ、ドラム13の外周に帯状バンド12(ブレーキ帯)が設けられ、帯状バンド12の端にクランク14が設けられている。クランク14が引かれると、帯状バンド12はドラム13を締め付けて抱きこみ、ドラム13は制動される。
【0004】
頻繁にブレーキをかけると、帯状バンド12とドラム13との間に大量の熱が発生し、帯状バンド12が過熱し、ブレーキ効果に深刻な影響を与え、安全に影響を与える。
【0005】
図7は、バンドブレーキ装置の構造の、より簡素化した説明図である。バンドブレーキ1は、後輪と共に回転するハブに固定されたドラム13と、自転車のフレーム26に固定され、ドラム13の外周面13Aの外側に円状空間部を有してドラム13を囲繞する囲繞部分を有するハウジング11と、ハウジング11内の円状空間部にドラム13の外周面13Aを囲うように配設された帯状バンド12とを有している。
【0006】
そして、ブレーキワイヤ(図示せず)を介してブレーキ把手(図示せず)に連結されたブレーキレバー112をA方向に作動することによって回動中心114の右側部分が持ち上がり(回動中心114の左側部分は、右側部分とは接合しておらずフレームに固定されているので、回動中心114の右側部分が持ち上がっても不動である。)帯状バンド12でドラム13の外周面13Aを圧接する。これにより、帯状バンド12とドラム13の外周面13Aとの間に摩擦を発生させてハブの回転にブレーキをかけるようにしている。
【0007】
この場合、帯状バンド12とドラム13の外周面13Aとの隙間距離が均等ではない状態でブレーキレバー112を作動させて帯状バンド12でドラム13の外周面13Aを圧接すると、ブレーキの片当たり現象によってブレーキが上手くかからないことがある。また、帯状バンド12とドラム13の外周面13Aとの隙間距離が無い接触した状態では、ブレーキが常にかかっているブレーキの引きずり現象が生じる。
【0008】
したがって、一般的に自転車の出荷時に、作業者が上記の円状空間部の側方の開放口からドラム13の外周面13Aと帯状バンド12との間隔を目視しながら、調整ボルト116で帯状バンド12とドラム13の外周面13Aとの隙間距離を適切に調整して適正なブレーキ隙間になるようにブレーキ隙間調整作業をしている。
【0009】
ところで、日本自転車協会は、自転車に乗る人の安心・安全で環境に優しい自転車の供給を目的として、「自転車安全基準」を自主基準として制定しており、これに合格した自転車はBAAマークを貼付することができる。この「自転車安全基準」の項目にはブレーキの制動性能に関する検査もあり、晴天時だけでなく雨天時でも安全円滑に自転車を停止できるようにブレーキ制動力を検査する。このように、自転車の安全基準の観点からも、ブレーキ隙間調整作業を行ってブレーキの片当たり現象やブレーキの引きずり現象を無くすことが重要である。
【0010】
また、バンドブレーキは車輪に取り付けた後、帯状バンドの締付け度を調整する必要がある。既存の調整方式は基本的に非目視調整であり、調整の難しさが増している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】実開昭61-22937号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、特許文献1に示された従来のバンドブレーキ装置は、帯状バンドでドラムの外周面を圧接することによって摩擦を発生させる際に発生する摩擦熱がドラム内にこもり易く、放熱性が悪い。これにより、ブレーキ性能が不安定になるという問題がある。例えば長い坂道等を下る場合のようにブレーキをかけ続ける必要がある場合、ブレーキが熱を持ちブレーキのききが悪くなる等の問題があり、「自転車安全基準」に合格しない恐れがある。また、放熱性が悪いとバンドブレーキ装置自体の耐久性も悪くなるという問題がある。
【0013】
このことから、バンドブレーキ装置の放熱性の改良が望ましいが、バンドブレーキ装置は低価格なブレーキ装置として軽快車等に採用されており、放熱性の改良のために大きな価格アップを行うことはできない。
【0014】
また、上記したように、自転車の出荷時に、適正なブレーキ隙間になるようにブレーキ隙間調整作業をしてから出荷しなくてはならず、ブレーキ隙間調整作業を容易且つ正確に行うことを満足した上で放熱性の改良を行う必要がある。
【0015】
したがって、バンドブレーキ装置には、課題として、放熱性の改良、容易且つ正確なブレーキ隙間調整作業、低価格の維持といった3つの課題を満足することが必要になる。
このような背景から、発明者は、従来有りそうで無かった上記3つの課題を満足したバンドブレーキ装置の発明を行ったものである。
【0016】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、シンプルな構成でありながら放熱性の改良、容易且つ正確なブレーキ隙間調整作業、低価格の維持といった3つの課題を満足することができるバンドブレーキ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、以下の構成により上記課題を解決することができることを見出した。
【0018】
[1] バンドブレーキの放熱構造であって、バンドブレーキと、上記バンドブレーキの片側に設けられた取り外し可能な放熱板と、を備え、上記放熱板は略円板状の外輪と、上記外輪の中心に、上記外輪の円板面の向く方向に隆起した内輪とを備え、上記外輪は、上記円板面において、上記円板面の向く方向に隆起した少なくとも1つの放熱突起と、一対の貫通観察窓とを備え、上記内輪は、上記バンドブレーキに固定される、バンドブレーキの放熱構造。
[2] 上記バンドブレーキは、車輪と共に回転するハブに固定され、上記ハブと一体的に回転すると共に円筒状の外周面を有するドラムと、車両に固定され、上記ドラムの外周面の外側に円状空間部を有して上記ドラムを囲繞する円筒碗状の囲繞部分を有するハウジングと、上記ハウジングに設けられ、上記円状空間部に上記ドラムの上記外周面を囲うように配設された円弧状の帯状バンドと、を備え、上記放熱板は、上記外輪の少なくとも一部が上記ドラムの外側円周方向に延出するよう、上記ドラムに固定される、[1]に記載のバンドブレーキの放熱構造。
[3] 上記貫通観察窓は、上記円状空間部に対応するエリアに形成され、上記ドラムの上記外周面と上記帯状バンドとの隙間距離を調整する際の覗き窓とされる、[2]に記載のバンドブレーキの放熱構造。
[4] 上記ハウジングに設けられ、上記帯状バンドの外面を上記ドラムの側に押すことによって上記ドラムの上記外周面と上記帯状バンドとの隙間距離を調整する調整ボルトを備える、[3]に記載のバンドブレーキの放熱構造。
[5] 上記貫通観察窓、及び、上記調整ボルトは同じ数だけ複数形成されると共に、複数の上記調整ボルトの延長線上に複数の上記貫通観察窓がそれぞれ位置する位置関係に形成されている、[4]に記載のバンドブレーキの放熱構造。
[6] 上記貫通観察窓は、上記ドラムの上記外周面と同心円上に円弧状長孔として形成されている[5]に記載のバンドブレーキの放熱構造。
[7] 上記貫通観察窓は、上記円弧状長孔の幅方向の下側円弧線が上記ドラムの上記外周面に一致すると共に上記円弧状長孔の幅方向中央部に上記調整ボルトで上記隙間距離を適切に調整した適切調整位置がくるように形成されている[6]に記載のバンドブレーキの放熱構造。
[8] 上記貫通観察窓には、透明板が設けられていると共に上記透明板には上記適切調整位置であることを示すマーキング線が施されている[7]に記載のバンドブレーキの放熱構造。
[9] 上記放熱突起が三角形である[1]に記載のバンドブレーキの放熱構造。
[10] 上記外輪の外周面には、少なくとも1か所の凹んだ風向面が設けられている、[1]に記載のバンドブレーキの放熱構造。
[11] 上記内輪の円板面には一対の取外し外孔が設けられている、[1]に記載のバンドブレーキの放熱構造。
[12] 上記放熱板は金属を一体プレスしたものである、[1]に記載のバンドブレーキの放熱構造。
[13] 車輪と共に回転するハブに固定され、上記ハブと一体的に回転すると共に円筒状の外周面を有するドラム、及び、上記ドラムの外側円周方向に延設された放熱板を備える、放熱板付きドラムと、車両に固定され、上記ドラムの外周面の外側に円状空間部を有して上記ドラムを囲繞する円筒碗状の囲繞部分を有するハウジングと、上記ハウジングに設けられ、上記円状空間部に上記ドラムの上記外周面を囲うように配設された円弧状の帯状バンドと、を備えるバンドブレーキ装置であって、上記放熱板は、略円板状の外輪と、上記外輪の中心に、上記外輪の円板面の向く方向に隆起した内輪とを備え、上記外輪は、上記円板面において、上記円板面の向く方向に隆起した少なくとも1つの放熱突起と、一対の貫通観察窓とを備え、上記内輪において、上記ドラムと一体として接続される、バンドブレーキ装置。
【0019】
上記課題を解決するバンドブレーキ装置の構成は以下のとおりである。
【0020】
(1) 車輪と共に回転するハブに固定され、上記ハブと一体的に回転すると共に円筒状の外周面を有するドラムと、車両に固定され、上記ドラムの外周面の外側に円状空間部を有して上記ドラムを囲繞する円筒碗状の囲繞部分を有するハウジングと、上記ハウジングに設けられ、上記円状空間部に上記ドラムの上記外周面を囲うように配設された円弧状の帯状バンドと、上記ハウジングに設けられ、上記帯状バンドの外面を上記ドラムの側に押すことによって上記ドラムの上記外周面と上記帯状バンドとの隙間距離を調整する調整ボルトと、を備え、上記帯状バンドが上記ドラムの上記外周面を圧接して摩擦を発生させて上記ハブ体の回転にブレーキをかけるバンドブレーキ装置において、上記ドラムに設けられ、上記外周面の外側円周方向に延設された略円板状の放熱板と、上記放熱板の上記円状空間部に対応するエリアに形成され、上記調整ボルトによって上記ドラムの上記外周面と上記帯状バンドとの隙間距離を調整する際の覗き孔(貫通観察窓)と、を有することを特徴とするバンドブレーキ装置。
【0021】
上記バンドブレーキ装置によれば、ドラムの外周面の外側円周方向に略円板状の放熱板をドラムに延設するようにしたので、ブレーキをかけた際の帯状バンドとドラムの外周面の間で発生する摩擦熱の放熱性を顕著に高めることができる。
しかしながら、ドラムの外周面の外側円周方向に放熱板を延設することによって、帯状バンドが配設されたハウジングの円状空間部が放熱板によって遮蔽されてしまうため、ブレーキ隙間調整作業を容易且つ正確に行えないという問題が生じる。そこで、上記バンドブレーキ装置では、ドラムに単に放熱板を設けるのではなく、調整ボルトによってブレーキ隙間調整作業を行う際の覗き孔(貫通観察窓)を、ハウジングの円状空間部に対応するエリアに形成することで問題を解決した。
このように、本発明のバンドブレーキ装置は、放熱性の改良、容易且つ正確なブレーキ隙間調整作業、低価格の維持といった3つの課題をシンプルな構成で解決することに成功した。
【0022】
(2) 上記放熱板に形成された覗き孔(貫通観察窓)及び上記ハウジングに設けられた上記調整ボルトは同じ数だけ複数形成されると共に、上記複数の調整ボルトの延長線上に上記複数の覗き孔がそれぞれ位置する位置関係に形成されている(1)に記載のバンドブレーキ装置。
【0023】
覗き孔(貫通観察窓)及び調整ボルトの数はそれぞれ1つでもよいが、同じ数だけ複数形成することが好ましい。覗き孔及び調整ボルトを複数形成した場合、複数の調整ボルトの延長線上に複数の覗き孔がそれぞれ位置する位置関係に形成されていることが好ましい。このように、複数の覗き孔は複数の調整ボルトの延長線上にそれぞれ形成したので、それぞれの調整ボルトが帯状バンドをドラム側に押す様子をそれぞれの覗き孔から見ながらブレーキ隙間調整作業を行うことができる。これによって、ブレーキ隙間調整作業の作業効率が向上するだけでなく、作業を正確に行うことができる。
なお、本実施の形態のように、覗き孔及び調整ボルトの数を同じ数だけ複数形成することが好ましいが、同じ数に限定するものではなく、異なる数であっていてもよい。
【0024】
(3) 上記放熱板に形成された上記覗き孔(貫通観察窓)は、上記ドラムの上記外周面と同心円上に円弧状長孔として形成されている(1)又は(2)に記載のバンドブレーキ装置。
【0025】
このように、覗き孔(貫通観察窓)をドラムの外周面と同心円上に円弧状長孔として形成することによって、帯状バンドの円弧状態に偏りがないことを目視で確認し易いので、ブレーキ隙間調整作業も容易且つ正確に行うことができる。
【0026】
(4) 上記放熱板に形成された上記覗き孔(貫通観察窓)は、上記円弧状長孔の幅方向の下側円弧線が上記ドラムの上記外周面に一致すると共に上記円弧状長孔の幅方向中央部に上記調整ボルトで上記隙間距離を適切に調整した適切調整位置がくるように形成されている(3)に記載のバンドブレーキ装置。
【0027】
このように、覗き孔(貫通観察窓)をドラムの外周面と同心円上に円弧状長孔として形成することによって、帯状バンドの円弧状態に偏りがないことを目視で確認し易いので、ブレーキ隙間調整作業も容易且つ正確に行うことができる。
【0028】
(5) 上記放熱板に形成された上記覗き孔には、透明板が設けられていると共に上記透明板には上記適切調整位置であることを示すマーキング線が施されている(4)に記載のバンドブレーキ装置。
【0029】
これにより、ブレーキ隙間調整作業を一層容易且つ正確に行うことができるだけでなく、作業の効率性も一層向上すると共に、ブレーキ隙間調整作業を行うための覗き孔の大きさをできる限り小さくすることができるので、覗き孔の形成によって放熱板の放熱性が低下する問題を更に最小限に抑え易くなる。また、透明板によって覗き孔が塞がれるので、覗き孔から雨水等が侵入してブレーキの利きが悪くなることもない。
【発明の効果】
【0030】
本発明のバンドブレーキの放熱構造によれば、シンプルな構成でありながら、放熱性の改良、容易且つ正確なブレーキ制動調整作業、低価格の維持といった3つの課題を満足することができる。
【0031】
また、バンドブレーキの放熱構造は、以下の利点を有する。
制動中に熱は放熱板に伝達される。放熱板の回転により、熱を空気気流に急速に伝導し、効果的にバンドブレーキの温度を下げる。外向きに隆起した放熱突起は放熱板と空気の接触面積を高め、渦気流を形成し、放熱効果を高めるのに役立つ。同時に、凹んだ風向面は放熱板の縁に乱流を形成することができ、放熱効果をさらに高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】本発明のバンドブレーキ放熱構造の斜視概略図である。
図2】本発明のバンドブレーキ放熱構造の斜視概略図の別の視点である。
図3図1の放熱構造の斜視分解図である。
図4】放熱板の斜視概略図である。
図5】放熱板の側面図である。
図6】従来技術におけるバンドブレーキの斜視分解図である。
図7】従来技術における(放熱板を備えない)バンドブレーキの構造説明図である。
図8】放熱板が設けられたドラムを、ドラムの内面側(放熱板の反対面側)から見た平面図である。
図9】放熱板が設けられたドラムを外側面(放熱板の側)から見た平面図である。
図10】放熱板が設けられたドラムの側面図である。
図11】帯状バンド、調整ボルト、及び、クランクが設けられたハウジングを、ハウジングの内側面(帯状バンドが配設される側)から見た平面図である。
図12】帯状バンド、調整ボルト、及び、クランクが設けられたハウジングを、ハウジングの外側面から見た平面図である。
図13】ドラムを自転車のハブに固定すると共にハウジングをフレームに固定して、ドラムとハウジングとを自転車に取り付けるようにドラムとハウジングとを組み合わせたバンドブレーキ装置の組み立て完成図である。
図14】放熱板の部分拡大図である。
図15】第2実施例に係る放熱板とドラムとが一体とされた放熱板付きドラムの平面図である。
図16】放熱板付きドラムの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施形態に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施形態に制限されるものではない。
なお、本明細書において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
【0034】
また、以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化した一例であって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、及び、配置等を下記の実施形態に特定するものではない。また、図面は模式的なものである。そのため、厚みと平面寸法との関係、比率等は現実のものとは異なる場合があり、また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なることがある。
【0035】
図1は、バンドブレーキの放熱構造の斜視概略図である。また、図2は、別方向(図1とは反対側)からのバンドブレーキの放熱構造の斜視概略図である。また、図3は、分解斜視図である。
バンドブレーキ放熱構造はバンドブレーキ1を含み、バンドブレーキ1の片側には取り外し可能な放熱板2が設けられる。
【0036】
また、図4は、放熱板2の斜視図であり、図5は側面図である。
放熱板2は略円板状(環状)の外輪21と、この外輪21の中心に、外輪21の円板面223の向く方向(図4の紙面手前側)に隆起した内輪22とを備える。なお、円板面223は、放熱板2が取り付けられた状態では、車両の進行方向に対して側面側となる。
【0037】
この外輪21の円板面223(回転方向に対する側面)において、円板面223の向く方向(内輪22の隆起方向と同一方向)に隆起した8つの放熱突起211と、一対の貫通観察窓212が設けられる。これらの放熱突起211は略三角形をなしている。外輪21の外周面(の側壁)には、8つの凹んだ風向面213が設けられている。
【0038】
内輪22の円板面224には、同心円状の配置で、6つの接続孔221が設けられ、接続孔221は接合具3(リベット)を介してバンドブレーキ1のドラム接続孔131と接続される。
【0039】
この放熱板2は金属一体プレスされたものである。
【0040】
ブレーキ帯(帯状バンド12)調整を行う際、図3に示すように、観察者の視線は方向Fに沿って貫通観察窓212を透過し、バンドブレーキ1内の帯状バンド12(図6)の締まり度を容易に見ることができ、この場合、観察者はバンドブレーキ1を調整することができる。
【0041】
ドラム13には、一対の位置決め孔132が設けられ、この位置決め孔132は内輪22上の取外し外孔222に嵌合して放熱板2の取外しを容易にしている。
【0042】
ブレーキ制動時、使用者はブレーキケーブルを引いて、それによって、バンドブレーキ1のブレーキ帯(帯状バンド12)はドラム13を抱き込み、バンドブレーキ1は制動を得る。制動の過程で、熱は放熱板2に伝達される。放熱板2の回転により、熱は急速に空気気流中に伝導し、ブレーキの温度を効果的に下げる。
【0043】
外向きに隆起した放熱突起211は、放熱板2と空気との接触面積を高め、渦気流を形成し、放熱効果を高めるのに役立つ。同時に、凹んだ風向面213は放熱板2の縁に乱流を形成することができ、放熱効果をさらに高めることができる。
【0044】
バンドブレーキの放熱構造を構成するバンドブレーキ装置10について、さらに詳しく説明する。
バンドブレーキ装置10は、主として、ドラム13と、ハウジング11と、帯状バンド12と、調整ボルト116と、放熱板2と、放熱板2に形成された貫通観察窓212(覗き孔)とで構成される。
そして、帯状バンド12が例えば車輪(図示せず)と共に回転するハブ15(図13参照)と一体的に回転するドラム13の外周面13Aを圧接することによって摩擦を発生させてハブ15の回転にブレーキをかけるようにしている。なお、ハブ15は車輪と共に回転する。
【0045】
本発明の実施の形態のバンドブレーキ装置10は、自転車の後輪用のブレーキとして使用されていることが多いが、他の車両、例えば車椅子や乳母車等のブレーキとして使用することもでき、自転車に限定するものではない。但し、以下の説明では、バンドブレーキ装置10を取り付ける車両として自転車(図示せず)の例で説明し、自転車の後輪のハブ15に本発明のバンドブレーキ装置10を取り付けた例で説明する。また、車両本体部として自転車のフレーム26(図13参照)の場合で説明する。
なお、図13の符号24は回転しない車軸を示し、ハブ15は車軸24上にベアリング(図示せず)を介して回転自在に支持される。
【0046】
帯状バンド12がドラム13の外周面13Aを圧接するための機構については、本発明の本質ではないので、詳しい説明はしないが、例えば従来技術で説明したレバー機構及びブレーキ把手(図示せず)に連結されたブレーキワイヤを使用することができる。なお、本実施の形態では、レバー機構としてクランク14を使用する例で説明する。
【0047】
図8は放熱板2が設けられたドラム13を、ドラム13の内面側(放熱板2の反対面側)から見た平面図であり、図9は外側面(放熱板2の側)から見た平面図であり、図10は側面図である。図11は帯状バンド12、調整ボルト116及びクランク14が設けられたハウジング11を、ハウジング11の内側面(帯状バンド12が配設される側)から見た平面図であり、図12は外側面から見た平面図である。図13は、ドラム13を自転車のハブ15に固定すると共にハウジング11をフレーム26に固定して、ドラム13とハウジング11とを自転車に取り付けるようにドラム13とハウジング11とを組み合わせたバンドブレーキ装置10の組み立て完成図である。
【0048】
なお、図8図9及び図10のドラム13の径と、図11及び図12のハウジング11の囲繞部分11Cの径は、対比可能には描いていない。以下にバンドブレーキ装置10の各部材の詳細な説明を行う。
【0049】
(ドラム)
図8図10に示されるように、ドラム13は円筒状の外周面13Aを有する円筒状外周枠13Bと円板状のドラム側板13Cとからなる略円筒碗状に形成される。即ち、ドラム13の円筒状外周枠13Bは図8の場合には(紙面)表面側に突起しており、図9の場合には裏面側に突起している。略円筒碗状に形成されたドラム13の円筒状外周枠13Bの幅Dは、帯状バンド12の幅よりも僅かに大きい程度の小幅に形成されている。
【0050】
そして、ドラム13のドラム側板13Cの中心部には、ハブ15(図13参照)に固定するための固定用孔13Dが形成され、固定用孔13Dには雌ネジが刻設されている。これにより、ドラム13はハブ15に設けられた雄ネジ部材(図示せず)に螺合することにより固定され、ハブ15と一体的に回転する。
【0051】
(ハウジング)
図11及び図12に示すように、ハウジング11は、円弧状外周枠11Aとハウジング側板11Bとによって、略円筒碗状に形成された囲繞部分11Cと、囲繞部分11Cから略U字板状に延設された支持部分11Dとで構成されている。即ち、ハウジング11の円弧状外周枠11Aは図11の場合には表面側に突起しており、図12の場合には裏面側に突起している。囲繞部分11Cは円弧状外周枠11Aとハウジング側板11Bの円板板状部分で構成され、支持部分11Dはハウジング側板11Bの略U字板状部分で構成される。
【0052】
ハウジング11の囲繞部分11Cのハウジング側板11Bの中心部には車軸24に貫通する貫通孔11Eが形成されている。また、支持部分11Dには、自転車のフレーム26(図13参照)に固定するための固定孔11Fが形成されている。なお、フレーム26とハウジング11の支持部分11Dとは、固定部材30(図13参照)を介して固定される。本実施の形態では、フレーム26とハウジング11の支持部分11Dとは、固定部材30を介して固定するようにしたが、ハウジング11を車軸24に固定することも可能である。この場合、車軸24はフレーム26の構成要素として含まれる。
【0053】
ハウジング11の囲繞部分11Cを形成する円弧状外周枠11Aは、ドラム13の円筒状外周枠13Bよりも大径に形成されている。そして、ドラム13とハウジング11とを自転車に取り付けてドラム13とハウジング11とが組み合わされたときに、ハウジング11はドラム13の外周面13Aの外側に円状空間部11Gを有してドラム13を囲繞する。この場合、略円筒碗状のドラム13と、略円筒碗状のハウジング11の囲繞部分11Cとが対面する向きで合わされる。また、ハウジング11の支持部分11Dには、クランク14の揺動中心である支点部14Aに設けられた揺動軸32を介して揺動自在に支持される。
【0054】
(帯状バンド)
図11に示すように、帯状バンド12は、ハウジング11の円弧状外周枠11Aの内面側に円弧状に配設される。これにより、ドラム13とハウジング11とを自転車に取り付けてドラム13とハウジング11とが組み立てられたときに、帯状バンド12はドラム13の外周面13Aを囲うように円弧状に配設される。そして、帯状バンド12の一方端が円弧状外周枠11Aの一端部に固定ピン34で固定され、帯状バンド12の他方端がクランク14の作用点部14Bに設けられた連結ピン36に連結される。また、クランク14の力点部14Cには、ブレーキワイヤ(図示せず)の一端を連結する連結ボルト38が設けられる。
【0055】
帯状バンド12は板バネ材料で形成された帯状金属板12Aと、帯状金属板12Aの内面側(ドラム13の外周面13Aの側)に貼設された帯状摩擦部材12B(例えば帯状ゴム板)とで構成される。
【0056】
これにより、帯状バンド12は、ハウジング11の円弧状外周枠11Aの内面側に沿って円弧状に湾曲することによって、外側(ドラム13の外周面13Aから離間する方向)に付勢力が働いている。
【0057】
したがって、自転車にブレーキをかけていない通常時には、帯状バンド12とドラム13の外周面13Aとの間には隙間が形成されている。これにより、ハブ15(図13参照)と共に回転するドラム13の回転を帯状バンド12が阻害することはない。そして、自転車にブレーキをかけてクランク14の力点部14Cをブレーキワイヤ(図示せず)で図11のX方向に引っ張ることによって、クランク14が揺動軸32(支点部14A)を揺動中心として揺動して、クランク14の作用点部14Bは図11の矢印Yに揺動する。
【0058】
これにより、帯状バンド12の湾曲が縮小する方向に帯状バンド12が引っ張られるので、帯状バンド12の帯状摩擦部材12Bがドラム13の外周面13Aを圧接する。その結果、帯状バンド12と回転するドラム13との間に摩擦が発生し、自転車にブレーキがかかる。
【0059】
(調整ボルト)
図11及び図12に示すように、調整ボルト116はハウジング11の円弧状外周枠11Aに複数個設けられる。本実施の形態では、調整ボルト116を2本設けた例で説明する。2本の調整ボルト116は、円弧状外周枠11Aの円弧中央部近傍に所定間隔を置いて形成された雌ネジ孔に螺合した状態で支持される。
【0060】
即ち、2本の調整ボルト116は、調整ボルト116を回して円弧状外周枠11Aからドラム13の方向への出没量を調整することによって、調整ボルト16の先端が帯状バンド12の外面に当接して押し付ける。また、調整ボルト116は、その先端が車軸24の中心軸に向くように円弧状外周枠11Aに螺合されている。
【0061】
2本の調整ボルト116のハウジング11の円弧状外周枠11Aへの設置位置及び所定間隔は、2本の調整ボルト116で帯状バンド12の外側を押し付けたときに、ドラム13の外周面13Aに対する帯状バンド12全体の隙間距離が略均等になる設置位置及び所定間隔とすることが好ましい。
【0062】
これにより、2本の調整ボルト116で帯状バンド12の外面の2箇所をドラム13の側に押すことによって、帯状バンド12の帯状摩擦部材12Bとドラム13の外周面13Aとの隙間距離を均等に調整することができる。
【0063】
(放熱板)
図8図10に示すように、放熱板2は、ドラム13の外周面13Aの外側円周方向に延設された略円板状に形成され、中心部にはドラム13がハブ15に固定される固定用孔13Dと同径の中心孔2Bが形成されている。
【0064】
そして、ドラム13の固定用孔13Dと放熱板2の中心孔2Bを一致させた状態で、放熱板2はドラム13のドラム側板13Cに接合具3(ネジ)によって固定される。放熱板2としては、熱伝導性の良い金属で比較的安価なアルミニウム等を使用することができる。
【0065】
なお、本実施の形態では、ドラム13と放熱板2とを別々の部材として形成し、接合具3によって放熱板2をドラム13に固定するようにしたが、ドラム13と放熱板2とを一体成形することもできる。
【0066】
放熱板2におけるドラム13の外周面13Aよりも外側の外周面部には、複数の襞状の窪み部211が形成されており、これにより放熱板2の表面積を大きくしている。また、放熱板2におけるドラム13の外周面13Aと固定用孔13Dとの間の内周面部には、複数個の孔222が形成されている。孔222は無くてもよいが、ドラム13をハブ15から着脱する際に工具を引っ掛ける孔として利用すると便利である。
【0067】
(覗き孔)
図8図10に示すように、放熱板2の外周面部におけるドラム13の外周面13Aに近い部分には、調整ボルト116によってドラム13の外周面13Aと帯状バンド12との隙間距離を調整する際の貫通観察窓212(覗き孔212)が形成されている。これにより、ドラム13とハウジング11とを自転車に取り付けるようにドラム13とハウジング11とを組み立てたときに、ハウジング11の円状空間部11Gに対応するエリアに貫通観察窓212(覗き孔212)が形成されことになる。放熱板2に形成される貫通観察窓212(覗き孔212)は、丸形状や四角形状でもよいが、ドラム13の外周面13Aと同心円上に円弧状長孔として形成されることが好ましい。
【0068】
貫通観察窓212(覗き孔212)及び調整ボルト116の数はそれぞれ1つでもよいが、同じ数だけ複数形成することが好ましい。
図は、2個の貫通観察窓212(覗き孔212)と2本の調整ボルト116を形成した場合である。貫通観察窓212(覗き孔212)及び調整ボルト116を複数形成した場合、複数の調整ボルト116の長手方向の延長線M上に複数の貫通観察窓212(覗き孔212)がそれぞれ位置する位置関係に形成されていることが好ましい。このように、複数の貫通観察窓212(覗き孔212)は複数の調整ボルト116の延長線M上にそれぞれ形成したので、それぞれの調整ボルト116が帯状バンド12をドラム13側に押す様子をそれぞれの貫通観察窓212(覗き孔212)から見ながらブレーキ隙間調整作業を行うことができる。これによって、ブレーキ隙間調整作業の作業効率が向上するだけでなく、作業を正確に行うことができる。
なお、本実施の形態のように、貫通観察窓212(覗き孔212)及び調整ボルト116の数を同じ数だけ複数形成することが好ましいが、同じ数に限定するものではなく、異なる数であっていてもよい。
【0069】
また、図13では、2本の調整ボルト116の数に合わせて2個の貫通観察窓212(覗き孔212)を形成したが、2個の貫通観察窓212(覗き孔212)を繋げた1個の長い貫通観察窓212(覗き孔212)にすることも可能である。
【0070】
貫通観察窓212(覗き孔212)及び調整ボルト116の数を同じ2個とする場合、2本の調整ボルト116の延長線M上に2個の貫通観察窓212(覗き孔212)のそれぞれの中心が位置することが一層好ましい。即ち、放熱板2を設けたドラム13を自転車(図示せず)のハブ15に固定し、帯状バンド12、調整ボルト116及びクランク14を設けたハウジング11を自転車(図示せず)のフレーム26に取り付けて本発明のバンドブレーキ装置10を完成させたときに、2本の調整ボルト116の延長線M上に2個の貫通観察窓212(覗き孔212)のそれぞれの中心が位置するように、ドラム13に固定された放熱板2に形成する貫通観察窓212(覗き孔212)の位置と、ハウジング11に設ける2本の調整ボルト116の位置とを設計する。
ここでは、2本の調整ボルト116の例で説明するので、2個の貫通観察窓212(覗き孔212)が形成されているが、3本以上の調整ボルト116の場合にも同様である。
【0071】
また、図13に示すように、放熱板2に形成された貫通観察窓212(覗き孔212)は、円弧状長孔における幅方向の下側円弧線212Aがドラム13の外周面13Aに一致すると共に円弧状長孔の幅方向中央部分に調整ボルト116で隙間距離を適切に調整した適切調整位置がくるように貫通観察窓212(覗き孔212)の幅Wを設計することが好ましい。
【0072】
また、貫通観察窓212(覗き孔212)の円弧長さLとしては、ドラム13の外周面13Aを囲うように円弧状に配設された帯状バンド12の円弧状態に偏りがないかを2個の貫通観察窓212(覗き孔212)で確認できる最小限の長さがあればよい。例えば、2個の貫通観察窓212(覗き孔212)の円弧長さLの合計(2L)が帯状バンド12の全長の1/4~1/3に入るように設計することが好ましい。
【0073】
更に、放熱板の部分拡大図である図14に示すように、放熱板2に形成された貫通観察窓212(覗き孔212)には、透明板42が設けられていると共に透明板42には適切調整位置であることを示すマーキング線Pが施されていることが好ましい。透明板42としては透明であればどのような材質でもよいが、プラスチック製のものが低価格で好ましい。透明板42は貫通観察窓212(覗き孔212)に隙間なく嵌め込まれ、貫通観察窓212(覗き孔212)から雨水等の水が外部から入らないようにする。
【0074】
[バンドブレーキ装置の作用]
次に、図13を使用して、上記の如く構成された本発明の実施の形態のバンドブレーキ装置10の作用について説明する。なお、図13では、帯状バンド12を破線で図示すると図が混雑するので、帯状バンド12は図示していない。
【0075】
バンドブレーキ装置10は、帯状バンド12でドラム13の外周面13Aを圧接することによってハブ15と一体的に回転するドラム13にブレーキがかかるが、帯状バンド12とドラム13とが摩擦することで摩擦熱が発生する。この場合、ブレーキ制動面であるドラム13の外周面13Aに摩擦熱が最も蓄積され易い。
【0076】
そこで、上記の如く構成した本発明のバンドブレーキ装置10によれば、ドラム13の外周面13Aの外側円周方向に略円板状の放熱板2を延設するようにしたので、摩擦熱は放熱板2を伝って効率的に外部に放熱され易くなる。これにより、ドラム13に発生した摩擦熱の放熱性を顕著に高めることができるので、シンプルな構成でありながら、放熱性に優れたバンドブレーキ装置10を提供できる。
【0077】
しかしながら、ドラム13の外周面13Aの外側円周方向に放熱板2を延設することによって、ドラム13の外周面13Aの外側に形成されているハウジング11の円状空間部11G、即ち帯状バンド12が配設された円状空間部11Gが放熱板2によって遮蔽されてしまう。これにより、帯状バンド12が見えなくなるので、例えば自転車の出荷時に、調整ボルト116によって、帯状バンド12とドラム13の外周面13Aとの隙間距離を調整する作業者はブレーキ隙間調整作業を容易且つ正確に行えないという問題が生じる。
【0078】
そこで、本発明の実施の形態のバンドブレーキ装置10では、ドラム13に単に放熱板2を設けるのではなく、ハウジング11の円状空間部11G、即ち帯状バンド12が配設される円状空間部11Gに、帯状バンド12とドラム13の外周面13Aとの隙間距離を調整する際の貫通観察窓212(覗き孔212)を形成することで問題を解決した。
【0079】
また、本発明の実施の形態では、ブレーキ隙間調整作業を容易且つ正確に行うために以下の工夫を行った。
【0080】
即ち、本発明の実施の形態のバンドブレーキ装置10では、貫通観察窓212(覗き孔212)を、ドラム13の外周面13Aと同心円上に円弧状長孔として形成すると共に2本の調整ボルト116の延長線M上に2個の貫通観察窓212(覗き孔212)を形成するようにした。
【0081】
このように、貫通観察窓212(覗き孔212)をドラム13の外周面と同心円上に円弧状長孔として形成することによって、帯状バンド12の円弧状態に偏りがないことを確認し易いので、ブレーキ隙間調整作業も容易且つ正確に行うことができる。
【0082】
そして、貫通観察窓212(覗き孔212)の適切な円弧長さLについては、ドラム13の外周面13Aを囲うように円弧状に配設された帯状バンド12の円弧状態に偏りがないかを2個の貫通観察窓212(覗き孔212)で確認できる最小限の長さにした。
【0083】
即ち、車軸24の方向に向かって配設された調整ボルト116の延長線Mが貫通観察窓212(覗き孔212)の長さLの方向の中央位置に一致するように調整ボルト116と貫通観察窓212(覗き孔212)との位置関係になるように設計することで、貫通観察窓212(覗き孔212)の円弧長さLを、ブレーキ隙間調整作業も容易且つ正確に行うための最小限の長さにした。
【0084】
また、貫通観察窓212(覗き孔212)の適切な幅Wについては、円弧状長孔における幅方向の下側円弧線212Aがドラム13の外周面13Aに一致すると共に円弧状長孔の幅方向中央部分に調整ボルト116で隙間距離を適切に調整した適切調整位置がくるように貫通観察窓212(覗き孔212)の幅Wを設計することで、貫通観察窓212(覗き孔212)の幅Wを最小限の幅とした。
【0085】
このように、本発明の実施の形態のバンドブレーキ装置10では、貫通観察窓212(覗き孔212)の円弧長さL及び幅Wを、ブレーキ隙間調整作業を容易且つ正確に行うことができる最小限の円弧長さL及び幅Wにすることができるので、貫通観察窓212(覗き孔212)の形成によって放熱板2の放熱性が低下する問題を最小限におさえることができる。
【0086】
また、本発明の本実施の形態のバンドブレーキ装置10では、貫通観察窓212(覗き孔212)には、透明板42を設けると共に透明板42に適切調整位置であることを示すマーキング線Pを施すようにした。これにより、ブレーキ隙間調整作業を容易且つ正確に行うことができるだけでなく、貫通観察窓212(覗き孔212)からハウジング11の円状空間部11G即ち帯状バンド12が設けられている円状空間部11Gに、水(例えば雨水)が侵入してブレーキの利きを悪くする等の弊害をなくすことができる。
【0087】
この場合、透明板42が、凸レンズとしての機能を有するようにすれば、透明板42の拡大機能によって貫通観察窓212(覗き孔212)の内部の帯状バンド12を拡大することができるので、ブレーキ隙間調整作業を一層容易且つ正確に行うことができる。
【0088】
更には、透明板42にマーキング線Pを施したり、透明板42に凸レンズとしての機能をもたせたりすることで、ブレーキ隙間調整作業を行うための覗き孔の大きさをできる限り小さくすることができるので、貫通観察窓212(覗き孔212)の形成によって放熱板2の放熱性が低下する問題を更に最小限におおさえ易くなる。
【0089】
このように、本発明の実施の形態のバンドブレーキ装置10は、ドラム13に設けた放熱板2に貫通観察窓212(覗き孔212)を形成すると共にブレーキ隙間調整作業が容易且つ正確にできるように貫通観察窓212(覗き孔212)の形状や調整ボルト116との位置関係、更には貫通観察窓212(覗き孔212)に透明板42を設けただけのシンプルな構成なので、従来のバンドブレーキ装置と比較しても価格のアップを極力抑えることができる。
【0090】
したがって、本発明の実施の形態のバンドブレーキ装置10は、放熱性の改良、容易且つ正確なブレーキ隙間調整作業、低価格の維持といった3つの課題を解決することができる。
【0091】
(第2実施例)
本発明のバンドブレーキの放熱構造の第2実施例においては、放熱板2とドラム13とが一体成形されたものである点を除いて、第1実施例と同様である。
図15は、第2実施例に係る放熱板2とドラム13とが一体とされた放熱板付きドラム200の平面図であり、図16は、放熱板付きドラム200の側面図である。放熱板2とドラム13とが一体成形とされることで、部品点数が減り、バンドブレーキ装置10の組み付けがより容易となる。
【符号の説明】
【0092】
1 バンドブレーキ
2 放熱板
3 接合具
10 バンドブレーキ装置
11 ハウジング
12 帯状バンド
13 ドラム
14 クランク
15 ハブ
21 外輪
22 内輪
24 車軸
26 フレーム
30 固定部材
32 揺動軸
34 固定ピン
36 連結ピン
38 連結ボルト
42 透明板
112 ブレーキレバー
114 回動中心
116 調整ボルト
131 ドラム接続孔
200 ドラム
211 放熱突起
212 貫通観察窓
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16