(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024077579
(43)【公開日】2024-06-07
(54)【発明の名称】鉛フリーはんだ合金およびはんだジョイント
(51)【国際特許分類】
B23K 35/26 20060101AFI20240531BHJP
C22C 13/00 20060101ALI20240531BHJP
C22C 13/02 20060101ALI20240531BHJP
【FI】
B23K35/26 310A
C22C13/00
C22C13/02
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023121985
(22)【出願日】2023-07-26
(31)【優先権主張番号】111145346
(32)【優先日】2022-11-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(71)【出願人】
【識別番号】517252808
【氏名又は名称】昇貿科技股▲ふん▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110002837
【氏名又は名称】弁理士法人アスフィ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】張 峻瑜
(72)【発明者】
【氏名】李 志祥
(72)【発明者】
【氏名】李 文和
(72)【発明者】
【氏名】林 國書
(57)【要約】
【課題】本発明は、既存技術の欠点を解決し、既存の鉛フリー錫合金の銅腐食過多の問題を効果的に改善できる鉛フリーはんだ合金およびはんだジョイントを提供する。
【解決手段】前記はんだジョイントは、前記鉛フリーはんだ合金から形成されてもよいし、前記鉛フリーはんだ合金が含まれてもよい。前記鉛フリーはんだ合金の総重量100wt%を基準として、前記鉛フリーはんだ合金は、0.01wt%から3wt%の銀、1wt%から5wt%のビスマス、1wt%から1.5wt%の銅、0.005wt%から0.1wt%のニッケル、0.005wt%から0.02wt%のゲルマニウム、および残りの部分の錫を含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
全重量100wt%を基準として、0.01wt%から3wt%の銀、1wt%から5wt%のビスマス、1wt%から1.5wt%の銅、0.005wt%から0.1wt%のニッケル、0.005wt%から0.02wt%のゲルマニウム、および錫の残部を含む、
ことを特徴とする鉛フリーはんだ合金。
【請求項2】
前記鉛フリーはんだ合金は、前記鉛フリーはんだ合金の総重量100wt%を基準として1wt%~2.5wt%の銀を含む、請求項1に記載の鉛フリーはんだ合金。
【請求項3】
前記鉛フリーはんだ合金は、前記鉛フリーはんだ合金の総重量100wt%を基準として2wt%~4.5wt%のビスマスを含む、請求項1に記載の鉛フリーはんだ合金。
【請求項4】
前記鉛フリーはんだ合金は、前記鉛フリーはんだ合金の総重量100wt%を基準として1.1wt%~1.3wt%の銅を含む、請求項1に記載の鉛フリーはんだ合金。
【請求項5】
前記鉛フリーはんだ合金は、前記鉛フリーはんだ合金の総重量100wt%を基準として0.05wt%~0.1wt%のニッケルを含む、請求項1に記載の鉛フリーはんだ合金。
【請求項6】
前記鉛フリーはんだ合金は、前記鉛フリーはんだ合金の総重量100wt%を基準として0.007wt%~0.02wt%のゲルマニウムを含む、請求項1に記載の鉛フリーはんだ合金。
【請求項7】
前記鉛フリーはんだ合金は、ボール形成後の推力値が5N以上である、請求項1に記載の鉛フリーはんだ合金。
【請求項8】
前記鉛フリーはんだ合金は、6mm/分の延伸速度で前記鉛フリーはんだ合金を延伸した後、20%を超える延伸率を有する、請求項1に記載の鉛フリーはんだ合金。
【請求項9】
前記鉛フリーはんだ合金は、ボール形成し、175℃の温度で300時間保管した後、銅パッド上の銅エッチング深さが8ミクロン未満である、請求項1に記載の鉛フリーはんだ合金。
【請求項10】
総重量100wt%を基準として、0.01wt%から3wt%の銀、1wt%から5wt%のビスマス、1wt%から1.5wt%の銅、0.005wt%から0.1wt%のニッケル、0.005wt%から0.02wt%のゲルマニウム、および錫の残部を含む鉛フリーはんだ合金、を有することを特徴とする、はんだジョイント。
【請求項11】
前記鉛フリーはんだ合金は、前記鉛フリーはんだ合金の総重量100wt%を基準として1wt%~2.5wt%の銀を含む、請求項10に記載のはんだジョイント。
【請求項12】
前記鉛フリーはんだ合金は、前記鉛フリーはんだ合金の総重量100wt%を基準として2wt%~4.5wt%のビスマスを含む、請求項10に記載のはんだジョイント。
【請求項13】
前記鉛フリーはんだ合金は、前記鉛フリーはんだ合金の総重量100wt%を基準として1.1wt%~1.3wt%の銅を含む、請求項10に記載のはんだジョイント。
【請求項14】
前記鉛フリーはんだ合金は、前記鉛フリーはんだ合金の総重量100wt%を基準として0.05wt%~0.1wt%のニッケルを含む、請求項10に記載のはんだジョイント。
【請求項15】
前記鉛フリーはんだ合金は、前記鉛フリーはんだ合金の総重量100wt%を基準として、0.007wt%~0.02wt%のゲルマニウムを含む、請求項10に記載のはんだジョイント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、はんだ合金およびはんだジョイントに関し、特に鉛を含まないはんだ合金およびはんだジョイントに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、高信頼性Pb-Snはんだ合金の配合では、はんだ付け後のはんだジョイントが優れた冷熱サイクル信頼性と機械的衝撃信頼性を持たせるために、主に合金が優れた抗疲労性と抗衝撃性などの機械的性質を持つように追求してきた。
【0003】
しかし、IC部品が小型化される傾向にある現在、多くのIC部品は銅トレースをより小さく設計し、銅トレースの厚みを減らしている。この設計の結果、銅腐食の低減が鉛フリーはんだ合金の主要な目標特性となっている。はんだ合金が十分な低銅食われ性を持たない場合、はんだ付けプロセス中やはんだ付け後にはんだパッドの銅含有量が過剰に消費され、その後の熱影響による銅回路の故障のリスクが高まる。
【0004】
したがって、上記の欠点を克服するために、既存の鉛フリー錫合金の組成を改善することが、この事業における最も重要な課題の一つとなっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする技術的課題は、既存技術の欠点を解決し、既存の鉛フリー錫合金の銅腐食過多の問題を効果的に改善できる鉛フリーはんだ合金およびはんだジョイントを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記技術的課題を解決するために、本発明において採用される技術的解決手段の一つは、下記のような鉛フリーはんだ合金を提供することである。前記鉛フリーはんだ合金の総重量100wt%を基準として、前記鉛フリーはんだ合金が、0.01wt%~3wt%の銀、1wt%~5wt%のビスマス、1wt%~1.5wt%の銅、0.005wt%~0.1wt%のニッケル、0.005wt%~0.02wt%のゲルマニウムおよび残部の錫を含む。
【0007】
好ましくは、前記鉛フリーはんだ合金の総重量100wt%に基づいて、前記鉛フリーはんだ合金は1wt%から2.5wt%の銀を含む。
【0008】
好ましくは、前記鉛フリーはんだ合金の総重量100wt%に基づいて、前記鉛フリーはんだ合金は2wt%から4.5wt%のビスマスを含む。
【0009】
好ましくは、前記鉛フリーはんだ合金の総重量100wt%に基づいて、前記鉛フリーはんだ合金は1.1wt%から1.3wt%の銅を含む。
【0010】
好ましくは、前記鉛フリーはんだ合金の総重量100wt%に基づいて、前記鉛フリーはんだ合金は0.05wt%から0.1wt%のニッケルを含む。
【0011】
好ましくは、前記鉛フリーはんだ合金の総重量100wt%に基づいて、前記鉛フリーはんだ合金は0.007wt%~0.02wt%のゲルマニウムを含む。
【0012】
好ましくは、前記鉛フリーはんだ合金がボール形成後に測定された推力値が5N(ニュートン)以上である。
【0013】
好ましくは、6mm/分の引張速度で該鉛フリーはんだ合金を引張した後、該鉛フリーはんだ合金は20%以上の伸長率を有する。
【0014】
より好ましくは、鉛フリーはんだ合金はボール形成を経て、175℃の温度下で300時間保存した後、銅はんだパッドへの銅の侵食深さは8ミクロン未満である。
【0015】
上記技術的課題を解決するために、本発明において採用される別の技術的解決手段は、下記のような鉛フリーはんだ合金を含むはんだジョイントを提供することである。前記鉛フリーはんだ合金の総重量100wt%を基準として、0.01wt%~3wt%の銀、1wt%~5wt%のビスマス、1wt%~1.5wt%の銅、0.005wt%~0.1wt%のニッケル、0.005wt%~0.02wt%のゲルマニウムおよび残部の錫を含む。
【0016】
好ましくは、前記鉛フリーはんだ合金の総重量100wt%に基づいて、前記鉛フリーはんだ合金は1wt%から2.5wt%の銀を含む。
【0017】
好ましくは、前記鉛フリーはんだ合金の総重量100wt%に基づいて、前記鉛フリーはんだ合金は2wt%から4.5wt%のビスマスを含む。
【0018】
好ましくは、前記鉛フリーはんだ合金の総重量100wt%に基づいて、前記鉛フリーはんだ合金は1.1wt%から1.3wt%の銅を含む。
【0019】
好ましくは、前記鉛フリーはんだ合金の総重量100wt%に基づいて、前記鉛フリーはんだ合金は0.05wt%から0.1wt%のニッケルを含む。
【0020】
好ましくは、前記鉛フリーはんだ合金の総重量100wt%に基づいて、前記鉛フリーはんだ合金は0.007wt%~0.02wt%のゲルマニウムを含む。
【発明の効果】
【0021】
本発明の有益な効果の一つは、本発明により提供される鉛フリーはんだ合金及びはんだジョイントが、「前記鉛フリーはんだ合金の総重量100wt%を基準として、前記鉛フリーはんだ合金が、0.01wt%~3wt%の銀、1wt%~5wt%のビスマス、1wt%~1.5wt%の銅、0.005wt%~0.1wt%のニッケル、0.005wt%~0.02wt%のゲルマニウム及び残部の錫を含有する」という技術的解決手段により、既存の鉛フリー錫合金における銅の過度の腐食を効果的に改善できることである。
【0022】
本発明の特徴および技術的側面をよりよく理解するために、以下の発明の詳細な説明を参照されたい。
【発明を実施するための形態】
【0023】
下記より、本願による「鉛フリーはんだ合金およびはんだジョイント」にかかる具体的な実施例で本発明が開示する実施形態を説明する。当業者は本明細書の公開内容により本発明のメリット及び効果を理解し得る。本発明は他の異なる実施形態により実行又は応用できる。本明細書における各細節も様々な観点又は応用に基づいて、本発明の精神を逸脱しない限りに、均等の変形と変更を行うことができる。また、本発明の図面は簡単で模式的に説明するためのものであり、実際的な寸法を示すものではない。以下の実施形態において、さらに本発明に係る技術事項を説明するが、公開された内容は本発明を限定するものではない。また、本明細書に用いられる「又は」という用語は、実際の状況に応じて、関連する項目中の何れか一つ又は複数の組合せを含み得る。
【0024】
本発明の実施形態は、鉛フリーはんだ合金およびはんだジョイントを提供する。前記はんだジョイントは、前記鉛フリーはんだ合金から形成されるか、または前記鉛フリーはんだ合金が含まれ得るが、本発明はこれに限定されない。前記鉛フリーはんだ合金および前記はんだジョイントは、優れたはんだ付け性、延性、耐酸化性、耐銅腐食性、耐熱疲労性および耐衝撃性を有することができる。
【0025】
前記鉛フリーはんだ合金は、銀、ビスマス、銅、ニッケル、ゲルマニウムおよび錫を含む。前記鉛フリーはんだ合金の総重量100wt%(重量%)を基準として、前記鉛フリーはんだ合金は、0.01wt%から3wt%の銀、1wt%から5wt%のビスマス、1wt%から1.5wt%の銅、0.005wt%から0.1wt%のニッケル、0.005wt%から0.02wt%のゲルマニウム、および残部の錫を含む。
【0026】
本発明の一実施形態では、前記鉛フリーはんだ合金の総重量100wt%を基準として、前記鉛フリーはんだ合金は、2wt%~3wt%の銀、4wt%~5wt%のビスマス、1.2wt%~1.5wt%の銅、0.07wt%~0.1wt%のニッケル、0.01wt%~0.02wt%のゲルマニウム、および残りの部分の錫を含む。
【0027】
本発明の一実施形態では、前記鉛フリーはんだ合金の総重量100wt%を基準として、前記鉛フリーはんだ合金は、0.01wt%~2wt%の銀、1wt%~4wt%のビスマス、1wt%~1.2wt%の銅、0.005wt%~0.07wt%のニッケル、0.005wt%~0.01wt%のゲルマニウム、および残りの部分の錫を含む。
【0028】
本発明の一実施形態では、前記鉛フリーはんだ合金の総重量100wt%を基準として、前記鉛フリーはんだ合金は、1wt%から2.5wt%の銀、2wt%から4.5wt%のビスマス、1.1wt%から1.3wt%の銅、0.05wt%から0.1wt%のニッケル、0.007wt%から0.02wt%のゲルマニウム、および残りの部分の錫を含む。錫の残部。
【0029】
好ましくは、前記鉛フリーはんだ合金の総重量100wt%を基準として、銀2wt%、ビスマス4wt%、銅1.2wt%、ニッケル0.07wt%、ゲルマニウム0.01wt%および錫の残部を含む。
【0030】
[実験データ]
【0031】
以下、実施例1~11および比較例1~10を参照して本発明を詳細に説明する。ただし、以下の実施例は本発明の理解を助けるためのものであり、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0032】
実施例1:前記鉛フリーはんだ合金の総重量100wt%を基準として、銀2wt%、ビスマス4wt%、銅1.2wt%、ニッケル0.07wt%、ゲルマニウム0.01wt%、及び錫の残部を含む。
【0033】
実施例2:前記鉛フリーはんだ合金の全重量100wt%を基準として、0.01wt%の銀、4wt%のビスマス、1.2wt%の銅、0.07wt%のニッケル、0.01wt%のゲルマニウム、および錫の残部を含む。
【0034】
実施例3:前記鉛フリーはんだ合金の総重量100wt%を基準として、銀3wt%、ビスマス4wt%、銅1.2wt%、ニッケル0.07wt%、ゲルマニウム0.01wt%、および錫の残部を含む。
【0035】
実施例4:前記鉛フリーはんだ合金の総重量100wt%を基準として、前記鉛フリーはんだ合金は、銀2wt%、ビスマス1wt%、銅1.2wt%、ニッケル0.07wt%、ゲルマニウム0.01wt%および錫の残部を含む。
【0036】
実施例5:前記鉛フリーはんだ合金の総重量100wt%を基準として、銀2wt%、ビスマス5wt%、銅1.2wt%、ニッケル0.07wt%、ゲルマニウム0.01wt%、および錫の残部を含む。
【0037】
実施例6:前記鉛フリーはんだ合金の総重量100wt%を基準として、銀2wt%、ビスマス4wt%、銅1wt%、ニッケル0.07wt%、ゲルマニウム0.01wt%、および錫の残部を含む。
【0038】
実施例7:前記鉛フリーはんだ合金の総重量100wt%を基準として、前記鉛フリーはんだ合金は、銀2wt%、ビスマス4wt%、銅1.5wt%、ニッケル0.07wt%、ゲルマニウム0.01wt%および錫の残部を含む。
【0039】
実施例8:前記鉛フリーはんだ合金の総重量100wt%を基準として、前記鉛フリーはんだ合金は、銀2wt%、ビスマス4wt%、銅1.2wt%、ニッケル0.005wt%、ゲルマニウム0.01wt%および錫の残部を含む。
【0040】
実施例9:前記鉛フリーはんだ合金の総重量100wt%を基準として、前記鉛フリーはんだ合金は、銀2wt%、ビスマス4wt%、銅1.2wt%、ニッケル0.1wt%、ゲルマニウム0.01wt%および錫の残部を含む。
【0041】
実施例10:前記鉛フリーはんだ合金の総重量100wt%を基準として、銀2wt%、ビスマス4wt%、銅1.2wt%、ニッケル0.07wt%、ゲルマニウム0.005wt%、および錫の残部を含む。
【0042】
実施例11:前記鉛フリーはんだ合金の総重量100wt%を基準として、銀2wt%、ビスマス4wt%、銅1.2wt%、ニッケル0.07wt%、ゲルマニウム0.02wt%、および錫の残部を含む。
【0043】
比較例1:前記鉛フリーはんだ合金の全重量100wt%を基準として、銀0wt%、ビスマス4wt%、銅1.2wt%、ニッケル0.07wt%、ゲルマニウム0.01wt%、および錫の残部を含む。
【0044】
比較例2:前記鉛フリーはんだ合金の総重量100wt%を基準として、銀4wt%、ビスマス4wt%、銅1.2wt%、ニッケル0.07wt%、ゲルマニウム0.01wt%、及び錫の残部を含む。
【0045】
比較例3:前記鉛フリーはんだ合金の全重量100wt%を基準として、銀2wt%、ビスマス0wt%、銅1.2wt%、ニッケル0.07wt%、ゲルマニウム0.01wt%、及び錫の残部を含む。
【0046】
比較例4:前記鉛フリーはんだ合金の全重量100wt%を基準として、銀2wt%、ビスマス6wt%、銅1.2wt%、ニッケル0.07wt%、ゲルマニウム0.01wt%、及び錫の残部を含む。
【0047】
比較例5:前記鉛フリーはんだ合金の全重量100wt%を基準として、銀2wt%、ビスマス4wt%、銅0.5wt%、ニッケル0.07wt%、ゲルマニウム0.01wt%、及び錫の残部を含む。
【0048】
比較例6:前記鉛フリーはんだ合金の全重量100wt%を基準として、銀2wt%、ビスマス4wt%、銅2wt%、ニッケル0.07wt%、ゲルマニウム0.01wt%、および錫の残部を含む。
【0049】
比較例7:前記鉛フリーはんだ合金の総重量100wt%を基準として、前記鉛フリーはんだ合金は、銀2wt%、ビスマス4wt%、銅1.2wt%、ニッケル0wt%、ゲルマニウム0.01wt%、および錫の残部を含む。
【0050】
比較例8:前記鉛フリーはんだ合金の総重量100wt%を基準として、前記鉛フリーはんだ合金は、銀2wt%、ビスマス4wt%、銅1.2wt%、ニッケル0.2wt%、ゲルマニウム0.01wt%および錫の残部を含む。
【0051】
比較例9:前記鉛フリーはんだ合金の総重量100wt%を基準として、前記鉛フリーはんだ合金は、銀2wt%、ビスマス4wt%、銅1.2wt%、ニッケル0.07wt%、ゲルマニウム0wt%および錫の残部を含む。
【0052】
比較例10:前記鉛フリーはんだ合金の全重量100wt%を基準として、銀2wt%、ビスマス4wt%、銅1.2wt%、ニッケル0.07wt%、ゲルマニウム0.05wt%、及び錫の残部を含む。
【0053】
実施例1~11および比較例1~10に記載した鉛フリーはんだ合金の組成比配合、推力テスト結果、引張テスト結果、高温テスト結果、ステップはんだテスト結果、熱冷サイクルテスト結果、機械的衝撃テスト結果および総合評価結果を下記表1に示すとともに、関連するテスト方法について以下に説明する。
【0054】
推力テスト:直径0.26mmの実施例または比較例の鉛フリーはんだ合金のはんだボールを使用してBGA部品にボール形成を行い、部品の寸法は6.4mm×6.4mm、ボール形成リフロープロファイルのピーク温度は240℃である。ボール形成後、プッシュプルテスターを使用してはんだボールバンプの推力テストを行い、押刀の移動速度は100μm/sである。
各合金BGAサンプルからはんだボールバンプを15個押し出して推力強度を記録し、15個のはんだボールバンプの推力強度の平均値を実験結果として取り、結果の判断基準は平均推力強度が5Nを超える場合はボール形成のはんだ接合性が良好で「○」を示し、平均推力強度が3~5Nの間である場合はボール形成のはんだ接合性が許容範囲で「△」を示し、平均推力強度が3N未満の場合はボール形成のはんだ接合性が不足して「×」を示す。
【0055】
引張テスト:鉛フリーはんだ合金の引張テストを実施例または比較例として行った。ASTM E8に従って引張試料を作製し、6mm/分の速度でテストした。平均伸びが20%以上の合金は延性が良好と判断され「○」、平均伸びが15~20%(20%未満)の合金は延性が許容範囲と判断され「△」、平均伸びが15%未満の合金は延性が不十分と判断され「×」と表示される。
【0056】
高温保存テスト:直径0.26mmの実施例または比較例の鉛フリーはんだ合金のはんだボールを使用してBGA部品にボール形成を行い、部品の寸法は6.4mm×6.4mm、ボール形成リフロープロファイルのピーク温度は240℃。ボール形成後、サンプルに高温保存テストを行う。高温保存テストの条件は、保存温度175℃、保存時間は300時間である。その後、高温保存実験を完了したサンプルをスライス解析する。スライス解析の方法は、サンプルを外側の最初のロウのはんだジョイントの中央に研磨ポリッシュしてスライスし、はんだジョイントの縦断面を顕微鏡観察し、銅の腐食深度を測定する。
銅の腐食深度測定法は、はんだパッド外の銅線路面とはんだジョイント位置のはんだとはんだパッド間の銅界面の高さ差を測定する。各鉛フリーはんだ合金のボール形成高温保存サンプルからはんだジョイント5個の銅腐食深度を測定し、5個のはんだジョイントの銅腐食深度の結果の平均を取って平均銅腐食深度を得る。このテストの目的は、実施例または比較例の鉛フリーはんだ合金のはんだボールがはんだ接合反応と長時間の熱効果下で銅はんだパッドに対する銅腐食性をテストすることである。
合金が高い銅腐食性を持つ場合、はんだボールは長時間の熱効果下で銅はんだパッドを多く消費し、これにより大きな銅腐食深度が生じる。このテストでは、高温保存後のサンプルをスライス解析して銅腐食深度を測定し、判断基準は銅腐食深度が8μm未満の場合は銅腐食効果の低下が良好で「○」を示し、銅腐食深度が8~12μmの場合は銅腐食効果の低下が許容範囲で「△」を示し、銅腐食深度が12μmを超える場合は銅腐食効果の低下が不足して「×」を示す。
【0057】
基板レベルのはんだ付けテスト:直径0.63mmの実施例または比較例の鉛フリーはんだ合金のはんだボールを使用してBGA部品にボール形成を行い、部品の寸法は35mm×35mmである。ボール形成が完了したBGA部品は、高温高湿の85℃/85%RHで240時間放置した後、対応する回路板サンプルとリフローはんだ付けを行う。このテストの目的は、実施例または比較例の鉛フリーはんだ合金のはんだボールがボール形成後に形成した突起が基板レベルのプロセスでの抗酸化能力をテストすることである。
高温高湿のプロセスは、部品上のはんだボール突起の酸化反応を加速するために使用される。合金の抗酸化能力は、はんだボール突起が回路板とはんだ付けされる際のはんだ付け性に影響する。合金の抗酸化能力が不足していて、はんだボール突起が回路板とはんだ付けされる際のはんだ付け性が悪いと、基板レベルのプロセス後にダブルボール不良が発生する確率が増える。
このテストでは、基板レベル後のサンプルに対してX-ray分析を行い、ダブルボール発生比率を判断する。判断基準は、ダブルボール発生比率が10%未満の場合は基板レベルのはんだ付け性が良好であり、「○」を示し、ダブルボール発生比率が10~20%の場合は基板レベルのはんだ付け性が許容範囲であり、「△」を示し、ダブルボール発生比率が20%を超える場合は基板レベルのはんだ付け性が失敗し、「×」を示す。
【0058】
冷熱サイクル試験:直径0.26mmの実施例または比較例の鉛フリーはんだ合金のボールを用いて、球格子配列(BGA)部品にボール形成を行う(部品の寸法は6.4mm×6.4mmであり、リフローソルダリングのピーク温度は250℃)である。ボール形成が完了したら、BGA部品を対応する回路板サンプルとリフローはんだ付けを行う(リフローはんだ付けのピーク温度は245℃)。その後、はんだ付けが完了したサンプルに対して熱サイクル試験を行う(試験条件は-40~125℃、昇温・降温速度は15℃/min、保温時間は10分、サイクル数は600)。
次に、熱サイクルを完了したサンプルを赤インク分析にかける。赤インク分析の方法は、サンプルを赤インクに浸漬し、インクが乾燥した後で部品を取り外し、最後に取り外したはんだ部分の断面を顕微鏡で観察する。各サンプルについて、全体の部品の256箇所のはんだ部分を観察する。各実施例または比較例の鉛フリーはんだ合金のボールをそれぞれ一つのBGA部品のはんだ付けサンプルを作成し、赤インク試験を行い、256箇所のはんだ部分について断面観察を行う。
このテストの目的は、実施例または比較例の鉛フリーはんだ合金のボールのはんだ部分およびはんだ部分と銅基板との接合構造の熱疲労耐性を試験することである。合金のはんだ部分自体および銅基板との接合構造の熱疲労耐性が不足していると、反復する熱サイクルのストレスによりはんだ部分または接合構造に熱疲労破壊が発生し、はんだ部分の信頼性が影響を受ける。
このテストでは、熱サイクル後のサンプルに対して赤インク分析を行い、熱サイクル試験の過程ではんだ部分に欠陥や破壊が発生した場合、赤インク試験後のはんだ部分の断面に染色現象が生じる。はんだ部分の断面が染色される程度と数は、はんだ部分と接合構造の破壊の程度と数を示し、異なるサンプルのはんだ部分の染色状況を比較することで、はんだ部分と接合構造の熱疲労耐性を評価することができる。断面面積の50%未満が染色されるすべてのはんだ部分は、合金のはんだ部分および接合構造の熱疲労耐性が良好であり、「○」を示す。染色面積が50%以上のはんだ部分の数が10未満の場合は、合金のはんだ部分および接合構造の熱疲労耐性が許容範囲であり、「△」を示す。染色面積が50%以上のはんだ部分の数が10以上の場合は、合金のはんだ部分および接合構造の熱疲労耐性が不足していると判断され、「×」を示す。
【0059】
機械的衝撃テスト:球格子配列(BGA)部品を、直径0.26mmまたは比較例の鉛フリーはんだ合金から作られた錫ボールでボール形成(部品サイズ6.4mm×6.4mm、はんだピークプロファイル温度250℃)した。フロック加工後、BGA部品を対応する基板サンプルにはんだ付けし(はんだピーク曲線温度245℃)、はんだ付けしたサンプルを機械的衝撃テスト(テスト条件加速度1500g、衝撃滞留時間0.5ms、合計100回の衝撃)である。
機械的衝撃テストの後、サンプルを赤インク分析にかけた。朱肉分析は、サンプルを朱肉に浸し、朱肉が乾燥した後に部品を取り出し、最後に取り出したはんだジョイントを顕微鏡で観察することで行った。各実施例または比較例の鉛フリーはんだ合金ボールを用いて、赤インクテスト用のBGA部品のはんだサンプルを作成し、各サンプルにおいて256個のはんだジョイントを観察した。
このテストの目的は、実施例又は比較例の鉛フリーはんだ合金ボールにより形成されたはんだバンプのボール形成後の機械的衝撃に対する耐性及び銅基板に対する耐性をテストすることである。合金ジョイント自体や銅基板との接合構造の機械的衝撃に対する耐性が不十分であると、機械的衝撃に耐えられずにジョイントや接合構造が破損し、ジョイントの信頼性に影響を及ぼす可能性がある。機械的衝撃テスト中にジョイントに欠陥や破断が発生すると、朱肉テスト後にジョイントに朱肉が染みます。継手部のインク染みの程度と量は、継手と継手構造の損傷の程度と量を表すので、異なるサンプルのインク染みを比較することにより、機械的衝撃に対する継手と継手構造の耐性を評価することができる。
その基準は、インキ染みの面積の50%以上のジョイントの数が2個未満の場合は、合金ジョイントおよび接合構造部の機械的衝撃に対する耐性が良好と判断して「○」と表示し、インキ染みの面積の50%以上のジョイントの数が2個以上5個未満の場合は、合金ジョイントおよび接合構造部の機械的衝撃に対する耐性が許容範囲と判断して「△」と表示し、インキ染みの面積の50%以上のジョイントの数が5個以上の場合は、合金ジョイントおよび接合構造体の機械的衝撃性が不良と判定し、「×」と表示した。
【0060】
【0061】
〔テスト結果の考察〕
実施例1の鉛フリーはんだ合金は、各種テスト後に良好なテスト結果を示した。実施例1~3、5、6、8および10の鉛フリーはんだ合金は、ボーリング後の推力値が5ニュートン以上であった。実施例1、2、4および6から11の鉛フリーはんだ合金は、6mm/分の速度で延伸した後、20%を超える延伸率を示した。
【0062】
比較例1は銀含有量が低すぎるため、冷熱サイクルテストの結果が良くない。比較例2は銀の含有量が高すぎるため、引張テストの結果と機械的衝撃テストの結果が良くない。
【0063】
比較例3のビスマス含有量は低すぎるため、冷熱サイクルテスト結果が良くない。比較例4のビスマス含有量は高すぎるため、引張テスト結果および機械的衝撃テスト結果が悪い。
【0064】
比較例5では、銅の含有量が少なすぎるため、高温保存テスト結果が悪い。比較例6では、銅の含有量が高すぎるため、推力テストの結果が良くない。
【0065】
比較例7では、ニッケル含有量が低すぎるため、熱間および冷間サイクルテストの結果が良くない。比較例8では、ニッケル含有量が高すぎるため、機械的衝撃テストの結果が良くない。
【0066】
比較例9では、ゲルマニウム含有量が少なすぎるため、高温保存テストの結果が良くない。比較例10では、ゲルマニウム含有量が多すぎるため、推力テストの結果が良くない。
【0067】
[本発明の実施形態による有益な効果]
本発明の有益な効果の一つは、本発明により提供される鉛フリーはんだ合金及びはんだジョイントが、「前記鉛フリーはんだ合金の総重量100wt%を基準として、前記鉛フリーはんだ合金が、0.01wt%~3wt%の銀、1wt%~5wt%のビスマス、1wt%~1.5wt%の銅、0.005wt%~0.1wt%のニッケル、0.005wt%~0.02wt%のゲルマニウム及び残部の錫を含有する」という技術的解決手段により、既存の鉛フリー錫合金における銅の過度の腐食を効果的に改善できることである。
【0068】
上記の開示は、本発明の好ましい実施形態および実現可能な実施形態の例示に過ぎず、本発明の特許出願の範囲を限定することを意図するものではない。したがって、本発明の明細書の内容を用いた同等の技術的変形は、すべて本発明の特許出願の範囲に含まれる。