(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024077601
(43)【公開日】2024-06-07
(54)【発明の名称】加工位置割付方法及び板金加工方法
(51)【国際特許分類】
B21D 28/36 20060101AFI20240531BHJP
B21D 28/10 20060101ALI20240531BHJP
B21D 28/00 20060101ALI20240531BHJP
B23K 26/38 20140101ALN20240531BHJP
【FI】
B21D28/36 B
B21D28/10 Z
B21D28/00 A
B21D28/00 Z
B21D28/36 A
B23K26/38 A
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023185717
(22)【出願日】2023-10-30
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-01-25
(31)【優先権主張番号】P 2022189495
(32)【優先日】2022-11-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2023076773
(32)【優先日】2023-05-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】390014672
【氏名又は名称】株式会社アマダ
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100170575
【弁理士】
【氏名又は名称】森 太士
(72)【発明者】
【氏名】岸 敦也
(72)【発明者】
【氏名】武田 知里
(72)【発明者】
【氏名】岡本 拓也
【テーマコード(参考)】
4E048
4E168
【Fターム(参考)】
4E048EA04
4E168AD07
4E168CB03
4E168CB07
4E168GA01
4E168GA02
4E168GA06
4E168JA02
(57)【要約】
【課題】突起部形成金型の加工位置の割り付けが容易な、加工位置割付方法を提供する。
【解決手段】加工位置割付方法は、コンピュータ(7)が、板金(W)から切り出す製品(WP)が板金(W)の残材(WS)に載るように残材に形成する支持突起部(We)の加工位置を割り付けるときに、板金(W)に予め割り付けた製品(WP)の輪郭線(T)に囲まれた部分(WR)を、第1の方向に延びる等分布荷重の両端単純支持梁とみなしてその部分(WR)のたわみ量(δ)を求め、得られたたわみ量(δ)が第1の所定値(δa)を越えない等分布荷重の両端単純支持梁の最大許容長さ(Lga)に基づいて、支持突起部(We)の加工位置の割り付け間隔を設定する。
【選択図】
図22A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータが、
板金から切り出す製品が前記板金の残材に載るように前記残材に形成する支持突起部の加工位置を割り付けるときに、
前記板金に予め割り付けた前記製品の輪郭線に囲まれた部分を、第1の方向に延びる等分布荷重の両端単純支持梁とみなして前記部分のたわみ量を求め、
得られた前記たわみ量が第1の所定値を越えない等分布荷重の両端単純支持梁の最大許容長さに基づいて、前記支持突起部の加工位置の割り付け間隔を設定する加工位置割付方法。
【請求項2】
前記製品に前記第1の方向と直交する第2の方向に延びる延出部があるときに、前記延出部を等分布荷重の片持ち梁とみなして前記延出部の第1たわみ量を求め、
得られた前記延出部の第1たわみ量が第2の所定値を越えない等分布荷重の片持ち梁の最大許容長さに基づいて、前記延出部の先端部分に前記支持突起部の加工位置を割り付けるか否かを判定する請求項1記載の加工位置割付方法。
【請求項3】
前記延出部の先端部分に前記支持突起部の加工位置を割り付けると判定したときに、前記延出部を前記第2の方向に延びる等分布荷重の両端単純支持梁とみなして前記延出部の第2たわみ量を求め、
得られた前記延出部の第2たわみ量が第3の所定値を越えない等分布荷重の両端単純支持梁の最大許容長さに基づいて、前記延出部の側縁部分に前記支持突起部を割り付けるか否かを判定する請求項2記載の加工位置割付方法。
【請求項4】
前記製品に前記第1の方向と直交する第2の方向に切り込まれた切込み部があるときに、前記切込み部に対応する前記残材の延出部である残材延出部を等分布荷重の片持ち梁とみなして前記残材延出部の第1たわみ量を求め、
得られた前記残材延出部の第1たわみ量が第2の所定値を越えない等分布荷重の片持ち梁の最大許容長さに基づいて、前記残材延出部の先端部分に前記支持突起部の加工位置を割り付けるか否かを判定する請求項1記載の加工位置割付方法。
【請求項5】
前記残材延出部の先端部分に前記支持突起部の加工位置を割り付けると判定したときに、前記残材延出部を前記第2の方向に延びる等分布荷重の両端単純支持梁とみなして前記残材延出部の第2たわみ量を求め、
得られた前記残材延出部の第2たわみ量が第3の所定値を越えない等分布荷重の両端単純支持梁の最大許容長さに基づいて、前記切込み部の側縁部分に前記支持突起部を割り付けるか否かを判定する請求項4記載の加工位置割付方法。
【請求項6】
前記支持突起部を形成する支持突起部形成金型の形状に応じて、前記支持突起部の形成において前記板金の平坦部分に対応させるべき金型ガイド領域を設定し、
前記輪郭線に囲まれた領域に厚さ方向に突出する突出成形部がある場合に、前記突出成形部と、割り付けた前記加工位置における前記金型ガイド領域との干渉の有無を判定し、
干渉有と判定したときに、前記加工位置の割り付け位置を干渉しない位置にずらす補正を実行する請求項1~5のいずれか1項に記載の加工位置割付方法。
【請求項7】
前記支持突起部を形成する支持突起部形成金型の形状に応じて、前記板金の非開口部分に対応させるべきバウンディングボックスを設定し、
前記輪郭線に囲まれた領域に開口する孔がある場合に、前記孔と、割り付けられた前記加工位置における前記バウンディングボックスとの干渉の有無を判定し、
干渉有と判定したときに、前記加工位置の割り付け位置を干渉しない位置にずらす補正を実行する請求項1~5のいずれか1項に記載の加工位置割付方法。
【請求項8】
前記支持突起部を形成する支持突起部形成金型の形状に応じて、前記板金の非開口部分に対応させるべきバウンディングボックスを設定し、
前記輪郭線に囲まれた領域に、前記第1の方向に延びる第2延出部がある場合に、前記第2延出部と、割り付けられた前記加工位置における前記バウンディングボックスとの干渉の有無を判定し、
干渉有と判定したときに、前記加工位置の割り付け位置を干渉しない位置にずらす補正を実行する請求項1~5のいずれか1項に記載の加工位置割付方法。
【請求項9】
コンピュータが、
板金から切り出す製品の輪郭線を前記板金に割り付けた後、
前記切り出す製品が前記板金の残材に載るように前記残材に形成する支持突起部の加工位置の割り付けを、前記輪郭線に囲まれた部分を、第1の方向に延びる等分布荷重の両端単純支持梁とみなして前記部分のたわみ量を求め、得られた前記たわみ量が第1の所定値を越えない等分布荷重の両端単純支持梁の最大許容長さに基づいて、前記支持突起部の加工位置の割り付け間隔を設定することで行い、
加工機が、
前記輪郭線における、前記第1の方向の両端部側に予め設定した一対の残存輪郭線以外の部分を切断し、
前記割り付けた加工位置に前記支持突起部を形成した後、前記一対の残存輪郭線を切断して前記製品を前記板金から切り出す板金加工方法。
【請求項10】
前記残材の、前記輪郭線における前記第1の方向の両端部それぞれに対応する部位に、前記切り出す製品の前記第1の方向の移動を規制する第1移動規制突起部の加工位置を割り付けると共に、
前記残材の、前記輪郭線における前記第1の方向に直交する第2の方向の両端部それぞれに対応する部位に、前記切り出す製品の前記第2の方向の移動を規制する第2移動規制突起部の加工位置を割り付ける、請求項1記載の加工位置割付方法。
【請求項11】
前記輪郭線の形状が前記第1の方向を長手とする矩形の場合に、前記第1の方向の両端部それぞれにおいて、前記第1移動規制突起部の加工位置と前記第2移動規制突起部の加工位置とを、前記矩形の四頂点のうちの同じ頂点に近くなる位置に割り付ける、請求項10記載の加工位置割付方法。
【請求項12】
コンピュータが、
板金から切り出す製品が前記板金の残材に載るように前記残材に形成する支持突起部と、前記支持突起部に載った製品が前記残材に沿って移動するのを規制するように前記残材に形成する移動規制突起部との加工位置を割り付けるときに、
前記支持突起部と前記移動規制突起部とを、近接位置に一回の加工動作で形成する金型を用いて形成するものとし、
前記板金に予め割り付けた前記製品の輪郭線に囲まれた部分を、第1の方向に延びる等分布荷重の両端単純支持梁とみなして前記部分のたわみ量を求め、
得られた前記たわみ量が第1の所定値を越えない等分布荷重の両端単純支持梁の最大許容長さに基づいて、前記支持突起部及び前記移動規制突起部の加工位置の割り付け間隔を設定する加工位置割付方法。
【請求項13】
前記金型を、前記一回の加工動作におけるパンチの下降ストロークを短くすることで前記移動規制突起部のみを形成できるものとし、
前記残材の、前記製品の輪郭線における前記第1の方向の両端部それぞれに対応する部位に、前記切り出す製品の前記第1の方向の移動を規制する、前記金型の下降ストロークを短くして形成する移動規制突起部の加工位置を割り付ける請求項12記載の加工位置割付方法。
【請求項14】
前記輪郭線の形状が前記第1の方向を長手とする矩形の場合に、前記残材に、前記矩形の頂点を起点として前記第1の方向に直交する前記輪郭線から離れる方向に延びる拡張スリットを形成し、前記拡張スリットと前記輪郭線との間の部位である移動規制部が載るように前記移動規制部の外側の前記残材に前記支持突起部の加工位置を割り付ける請求項1記載の加工位置割付方法。
【請求項15】
前記輪郭線の形状が前記第1の方向を長手とする矩形の場合に、前記残材に、前記矩形の頂点を起点として前記第1の方向に直交する前記輪郭線から離れる方向に延びる拡張スリットを形成し、前記拡張スリットと前記輪郭線との間の部位である移動規制部が載り、かつ前記移動規制部が前記第1の方向に変形して移動するのを規制するように前記移動規制部の外側の前記残材に前記支持突起部及び前記移動規制突起部の加工位置の割り付け間隔を設定する請求項12記載の加工位置割付方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加工位置割付方法及び板金加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
板金に対しパンチ加工とレーザ加工との両方の加工を行う複合加工機が知られている。この複合加工機を用い、板金に対して切り出す製品の一部が残材の下側に潜り込むことを防止する形状を形成する金型、及びその金型を用いて板金を加工する板金加工方法が特許文献1に記載されている。特許文献1に記載された金型は、製品の輪郭における所定位置の縁部を板厚以上に持ち上げる押上部と、その所定位置に対応した残材の縁部に、持ち上げた製品の縁部の下側に潜り込んで製品を支持する突起(以下、支持突起)をコイニング加工で形成するコイニング部とを有する。
【0003】
この支持突起を形成する加工を、製品の輪郭に沿って複数箇所行うことで、製品は支持突起の上に乗った状態で安定維持され、残材の下側に潜り込むことが防止される。これにより、切り出した製品を、搬送装置によって吸着して持ち上げて次工程へ搬送する作業を確実に実行できる。このように、残材に対し製品の下側に突出し切り出す製品を支持するための支持突起を形成する金型を、以下、支持突起部形成金型と称する。また、特許文献1(
図15参照)には、切り出した製品の、残材に対する水平方向の移動を規制するために残材に上方に向けて突出するブリッジ状の突起(以下、移動規制突起)を形成することが記載されている。特許文献2には、そのブリッジ状の移動規制突起と製品の下側を支持する支持突起とを併せ持つ突起を形成する金型が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-075289号公報
【特許文献2】特開2021-146341号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
切り出す製品を支持するための支持突起を形成する位置、すなわち支持突起部形成金型による加工位置は、従来、作業者が製品の形状及び板厚などに基づいてワークに割り付けていた。例えば、製品の、支持突起で支持されない非支持部分は、板厚が薄いほど、また、片持ち梁に見立てたときの梁長が長いほど、自重による下方へのたわみが大きくなって残材の下側に潜り込み易い。従って、作業者は、非支持部分のたわみができるだけ小さく、かつ支持突起部形成金型による加工回数をできるだけ少なくして生産性を向上させるように加工位置の割り付けを行う必要がある。
【0006】
そのため、支持突起部形成金型の加工位置の割り付けは、難易度が高く経験に大きく左右され、作業者毎のばらつきも生じ易く、作業者の負担は大きい。そのため、支持突起部形成金型の加工位置の割り付けが容易な、加工位置割付方法及び板金加工方法が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
1又はそれ以上の実施形態の第1の態様は、コンピュータが、板金から切り出す製品が前記板金の残材に載るように形成する支持突起部の加工位置を割り付けるときに、前記板金に予め割り付けた前記製品の輪郭線に囲まれた部分を、第1の方向に延びる等分布荷重の両端単純支持梁とみなして前記部分のたわみ量を求め、得られた前記たわみ量が第1の所定値を越えない等分布荷重の両端単純支持梁の最大長さに基づいて、前記支持突起部の加工位置の割り付け間隔を設定する加工位置割付方法である。
1又はそれ以上の実施形態の第2の態様は、コンピュータが、板金から切り出す製品の輪郭線を前記板金に割り付けた後、前記切り出す製品が載るよう前記板金の残材に形成する支持突起部の加工位置の割り付けを、前記輪郭線に囲まれた部分を、第1の方向に延びる等分布荷重の両端単純支持梁とみなして前記部分のたわみ量を求め、得られた前記たわみ量が第1の所定値を越えない等分布荷重の両端単純支持梁の最大長さに基づいて、前記支持突起部の加工位置の割り付け間隔を設定することで行い、加工機が、前記輪郭線における、前記第1の方向の両端部側に予め設定した一対の残存輪郭線以外の部分を切断し、前記割り付けた加工位置に前記支持突起部を形成した後、前記一対の残存輪郭線を切断して前記製品を前記板金から切り出す板金加工方法である。
1又はそれ以上の実施形態の第3の態様は、コンピュータが、板金から切り出す製品が前記板金の残材に載るように前記残材に形成する支持突起部と、前記支持突起部に載った製品が前記残材に沿って移動するのを規制するように前記残材に形成する移動規制突起部との加工位置を割り付けるときに、前記支持突起部と前記移動規制突起部とを、近接位置に一回の加工動作で形成する金型を用いて形成するものとし、前記板金に予め割り付けた前記製品の輪郭線に囲まれた部分を、第1の方向に延びる等分布荷重の両端単純支持梁とみなして前記部分のたわみ量を求め、得られた前記たわみ量が第1の所定値を越えない等分布荷重の両端単純支持梁の最大許容長さに基づいて、前記支持突起部の加工位置の割り付け間隔を設定する加工位置割付方法である。
【発明の効果】
【0008】
1又はそれ以上の実施形態の加工位置割付方法によれば、支持突起部形成金型の加工位置の割り付けが容易になる、という効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1A】
図1Aは、本発明の実施の形態に係る板金加工方法を実行する板金加工システムSTを示す図である。
【
図1B】
図1Bは、板金加工システムSTが備える制御装置2のブロック図である。
【
図2A】
図2Aは、板金加工システムSTのパンチ加工部12が備える支持突起部形成金型K56の動作を説明するための第1の図である。
【
図2D】
図2D(a)は、支持突起部形成金型K56による加工で得られた支持突起形成部Pを示す平面図であり、
図2D(b)は、
図2D(a)におけるS1Db-S1Db位置での断面図である。
【
図3】
図3は、ワークW及びワークWから切り出す製品の輪郭線Tを示す平面図である。
【
図4A】
図4Aは、輪郭線Tにおける、残存輪郭線Tzを除く範囲をレーザビームLSで切断して製品中間体WRを形成した状態を示す平面図である。
【
図4B】
図4Bは、製品中間体WRを、等分布荷重での両端単純支持梁とみなした概念図である。
【
図5】
図5は、製品中間体WRを等分布荷重での両端単純支持梁とみなした場合の、板厚tと長さLgとの組み合わせと、たわみ量δとの関係を示した表1である。
【
図6】
図6は、板厚tと距離Laとの関係を示した表2である。
【
図7】
図7は、板厚tと最大ピッチLbとの関係を示した表3である。
【
図8】
図8は、ワークWに形成した支持突起形成部P1~P3によって製品中間体WRを支持した状態を示す平面図である。
【
図9】
図9は、ワークWA及びワークWAから切り出す製品の輪郭線TAを示す平面図である。
【
図10B】
図10Bは、延出部TAcを等分布荷重での片持ち梁とみなした概念図である。
【
図10D】
図10Dは、切込み部TAdを等分布荷重での片持ち梁とみなした概念図である。
【
図11】
図11は、板厚tと延出部TAcの長さLcとの組み合わせと、たわみ量δ2との関係を示した表4である。
【
図12】
図12は、板厚tと支持が不要な延出部TAcの最大の長さLcとの関係を示した表5である。
【
図13】
図13は、板厚tと割付不要最大長さLcaとの関係を示した表6である。
【
図14】
図14は、製品中間体WRAに対する支持突起形成部P1~P6の割り付け状態を示す平面図である。
【
図15】
図15は、孔WPa,WPbを輪郭近傍に有する製品中間体WRBに対する支持突起形成部P1~P3の割り付け状態を示す平面図である。
【
図16A】
図16Aは、支持突起部形成金型K56Aの動作を説明するための第1の図である。
【
図16D】
図16D(a)は、支持突起部形成金型K56Aによる加工で得られる支持突起形成部Pを示す平面図であり、
図16D(b)は、
図16D(a)におけるS16Db-S16Db位置での断面図である。
【
図17】
図17は、支持突起部形成金型K56Aの形状に基づいて設定するバウンディングボックスARB及び金型ガイド領域ARGを示す平面図である。
【
図18】
図18は、製品WPの突出成形部WPcに対する支持突起形成加工位置の補正方法を説明する図であり、
図18(a)は補正前の平面図、
図18(b)は
図18(a)におけるS18b-S18b位置での断面図、
図18(c)は補正後の支持突起形成加工位置を示す平面図である。
【
図19】
図19は、製品WPの孔WPdに対する支持突起形成加工位置の補正方法を説明する図であり、
図19(a)は補正前の平面図、
図19(b)は補正後の平面図である。
【
図20】
図20は、製品WPのX方向延出部WPeに対する支持突起形成加工位置の補正方法を説明する図であり、
図20(a)は補正前の平面図、
図20(b)は補正後の平面図である。
【
図21】
図21は、最終前切断線Tbの設定方法を説明するための図である。
【
図22A】
図22Aは、支持突起形成加工位置の割り付け方法を示すフロー図である。
【
図23A】
図23Aは、統括割付部7が実行する加工位置割付動作の第1手順を示す図である。
【
図25】
図25は、製品中間体WR2に対する支持突起形成部PB1,PB2及び移動規制突起形成部P21~P24の割り付け状態を示す平面図である。
【
図26】
図26は、製品中間体WR3に対する支持突起形成部PB3,PB4及び移動規制突起形成部P27の割り付け状態を示す平面図である。
【
図27】
図27は、製品中間体WR4に対する支持突起形成部PB5,PB6及び移動規制突起形成部P28~P31の割り付け状態を示す平面図である。
【
図28D】
図28Dは、複合突起部Wgを形成する複合突起部形成金型KWを説明するための断面図である。
【
図28E】
図28Eは、複合突起部形成金型KWによって形成する移動規制突起部Wfbを示す断面図である。
【
図28F】
図28Fは、移動規制突起部Wfbが形成された移動規制突起形成部PCの平面図である。
【
図28G】
図28Gは、移動規制突起形成部PCを示す記号を説明するための図である。
【
図29】
図29は、製品中間体WR5に対する複合突起形成部PW1~PW5及び移動規制突起形成部PC1,PC2の割り付け状態を示す平面図である。
【
図30A】
図30Aは、ワークWC6に、スリットWm及び拡張スリットWm6a,Wm6bによって製品中間体WR6形成した状態を示す平面図である。
【
図30B】
図30Bは、製品中間体WR6を形成したワークWC6に、支持突起形成部PB7~PB10及び移動規制突起形成部P32,P33を形成した状態を示す平面図である。
【
図30C】
図30Cは、ワークWC6において製品WP6を切り出した状態を示す平面図である。
【
図30D】
図30Bの支持突起形成部PB7~PB10及び移動規制突起形成部P32,P33の替わりに複合突起形成部PW8~PW11を形成した状態を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施の形態に係る加工位置割付方法及び板金加工方法について、板金加工システムSTが実行する加工位置割付動作及び板金加工により説明する。
以下の説明において、残材に対し、切り出した製品の下側を支持するための支持突起のみを形成するモードAを、実施例1として説明する。また、残材に対し、支持突起部に加えて、切り出した製品の水平方向の移動を規制するために上方に向け突出するブリッジ状の移動規制突起部も併せて形成するモードBを、実施例2として説明する。また、残材に対し、特許文献2に記載された、切り出した製品の支持と移動規制との両方の機能を併せ持つ移動規制突起部(以下、複合突起部と称する)を形成するモードCを、実施例3として説明する。すなわち、
実施例1:支持突起部のみの場合(モードA)
実施例2:支持突起部+移動規制突起部の場合(モードB)
実施例3:複合突起部の場合(モードC)
である。
【0011】
(実施例1)
図1Aは、本発明の実施の形態に係る板金加工方法を実行する板金加工システムSTを示す図である。
図1Bは、板金加工システムSTが備える制御装置2のブロック図である。まず、
図1Aを参照して板金加工システムSTの全体構成について説明する。説明の便宜上、上下左右の各方向を
図1Aに示された矢印の方向で規定する。前後方向は紙面表裏方向であり、前方が紙面手前、後方が紙面奥方向となる。また、左右方向をX方向、前後方向Y方向、上下方向をZ方向と称する。
【0012】
板金加工システムSTは、複合加工機1,制御装置2,及び搬送装置3を備えている。複合加工機1は、ワークテーブル11,パンチ加工部12,及びレーザ加工部13を有する。ワークテーブル11の上部には、板金であるワークWが載置される。ワークWはクランパ(不図示)によって掴まれX方向に移送される(矢印DR1参照)。ワークWは
図1Aに示される位置から左方に移送されてパンチ加工部12に供給される。
【0013】
パンチ加工部12は、下部タレット121及び上部タレット122を有する。
下部タレット121には、ダイ金型KDが装着され、上部タレット122にはダイ金型KDと組を成すパンチ金型KPが装着される。また、下部タレット121には、支持突起形成ダイ5も装着され、上部タレット122には支持突起形成パンチ6も装着される。ダイ金型KD及びパンチ金型KPの金型の組は、下部タレット121と上部タレット122との間に供給されたワークWに対し、パンチ駆動部(不図示)の動作によって協働して打ち抜き加工を行う。
【0014】
支持突起形成ダイ5及び支持突起形成パンチ6は、金型の組である支持突起部形成金型K56を構成する。支持突起部形成金型K56は、下部タレット121と上部タレット122との間に供給されたワークWに対し、パンチ駆動部(不図示)の動作によって後述する支持突起形成加工を行う。
【0015】
パンチ加工部12での加工時には、ワークWはX方向とY方向の両方に移動し、選択された金型の組によってワークWの任意の位置に打ち抜きなどの加工が行われる。
【0016】
レーザ加工部13は、ワークテーブル11の上方に配置され、Y方向に移動可能なレーザ加工ヘッド131を有する。レーザ加工ヘッド131は、下端部からワークテーブル11に向けてレーザビームLSを射出する。ワークWがワークテーブル11上でX方向に移動し、レーザ加工ヘッド131がY方向に移動することで、ワークWの任意の位置にレーザ加工が行われる。
【0017】
搬送装置3は、ワークテーブル11に対し、パンチ加工部12及びレーザ加工部13とは反対側に設置されている。この例において、ワークテーブル11に対し、パンチ加工部12及びレーザ加工部13は左側に設置され、搬送装置3は右側に設置されている。
【0018】
搬送装置3は、アーム31及び吸着部32を有する。アーム31はX方向(矢印DR2参照)及びZ方向(矢印DR3)に移動する。吸着部32はアーム31の下方先端に取り付けられており、水平方向の2次元状に並設されて下方を指向する複数の吸盤部321を有する。搬送装置3は、吸盤部321の先端から空気を吸引する吸引装置(不図示)を備えている。
【0019】
搬送装置3は、ワークテーブル11上のワークWを複数の吸盤部321によって吸引保持し、アーム31の昇降及び水平移動によってワークWを所定の位置に搬出する。また、同様の動作で、加工に供するワークWを外部から搬入し、ワークテーブル11上に載置する。
【0020】
図1Bに示されるように、制御装置2は、制御部21,統括割付部7,入力部73,及び出力部74を有する。制御部21は、板金加工システムSTの全体の動作を制御する。統括割付部7は、ワークWに対し、切り出す製品WPの輪郭及び支持突起部形成金型K56などによる金型加工位置の割り付けなどを統括して行う。入力部73は、外部機器との通信を行う通信部と、作業者による直接入力をする入力端末を有する。出力部74は、ディスプレイなどの出力機器を備え、板金加工システムSTの動作状況、設定情報、などを出力する。
【0021】
統括割付部7は、中央処理装置71〔以下、CPU(Central Processing Unit)71〕及び記憶部72を有するコンピュータである。CPU71は、割付部711,割付個数取得部712,及び干渉領域検索部713を有する。割付個数取得部712は、たわみ量算出部712a,個数算出部712b,及び条件取得部712cを有する。記憶部は、たわみ量データ格納部720,距離Laデータ格納部721,最大ピッチLbデータ格納部722,材料物性データ格納部723,金型データ格納部724,金型ガイド情報格納部725,バウンディングボックス情報格納部726,及び製品情報格納部727を有する。
【0022】
次に、支持突起部形成金型K56の構成及び動作を、
図2A~
図2Dを参照して説明する。支持突起部形成金型K56は、既述のように、支持突起形成ダイ5と支持突起形成パンチ6との組である。
【0023】
図2Aに示されるように、支持突起形成ダイ5は、ダイケース51とダイエジェクタ52とを有する。ダイケース51は円柱状に形成されている。ダイケース51の上面には、上下方向に延びる軸線CL5に沿って上方に突出するコイニングピン51aが形成されている。コイニングピン51aは、上面視が前後方向(紙面表裏方向)に長い長方形形状となる四角柱状に形成されている。コイニングピン51aの上端は、
図2Aに示される横断面形状において幅方向の中央位置が頂点の上方に尖った三角形状となるように形成されている。
【0024】
ダイエジェクタ52は、軸線CL5と同軸であって、ダイケース51と同じ外径φKD(
図2C参照)の円盤状に形成されており、軸線CL5上において、前後方向(紙面表裏方向)に長く上面視で長方形の貫通孔52bを有する。ダイエジェクタ52の上面52aは水平の平坦面である。上面52aには、開口する貫通孔52bの長辺の一方の縁部に沿って上方に突出する土手状の押上部52cが形成されている。押上部52cの突出高さは、この支持突起部形成金型K56を適用可能なワークWの板厚以上である。
【0025】
ダイエジェクタ52は、不図示の昇降ガイドに支持されてダイケース51に対し離接するように上下動可能とされている。また、不図示のばねによって常時上方に付勢され、上下動範囲の上端位置で、
図2Aに示されるようにコイニングピン51aの上先端がダイエジェクタ52の上面52aから突出しないように設定されている。
【0026】
図2A及び
図2Dに示されるように、上面視において、コイニングピン51aの幅方向及び長手方向(
図2Aの紙面表裏方向)の中心位置を、支持突起加工中心Psとする。この例において、支持突起加工中心Psは、軸線CL5上に位置する。
【0027】
支持突起部の形成工程では、まず、
図2Aに示されるように、上下方向に離隔した支持突起形成ダイ5と支持突起形成パンチ6との間にワークWが挿入されて位置決めされる。支持突起部形成金型K56での加工に供給されるワークWは、別工程において、製品WPとなる部分の輪郭線の大部分がレーザ加工部13で切断され、スリットWmが形成されている。
図2Aでは、スリットWmの右側が製品WPとなる部分であり、左側が残材(スケルトン)WSとなる部分である。
図2Aの左右方向において、ワークWは、スリットWmが支持突起加工中心Psと押上部52cとの間に位置するように位置決めされる。
【0028】
次いで、
図2Bに示されるように、パンチ駆動部(不図示)の動作により支持突起形成パンチ6が下降する(矢印DR4)。これにより、残材WS側の部位は、ダイエジェクタ52の上面52aと支持突起形成パンチ6との間に挟持される。一方、製品WP側のスリットWm近傍の部位は、押上部52cによって上方に板厚以上押し上げられる(矢印DR5)。
【0029】
さらに、支持突起形成パンチ6が、ダイエジェクタ52の上方への付勢力に抗して下降すると、
図2Cに示されるように、ダイエジェクタ52がダイケース51に接近するよう下降し、相対的にコイニングピン51aが貫通孔52bを上昇して残材WSの下面にくい込む。これにより、残材WSの下面には、コイニングピン51aの先端形状に対応した、断面が三角形状、上面視で長方形の圧痕Wdが形成される(
図2Dも参照)。この圧痕Wdの形成に伴い、残材WSの塑性流動が生じて押し上げられた製品WPの下に潜り込む支持突起部Weが形成される。
【0030】
以上のように支持突起部Weが形成された後、支持突起形成パンチ6が上昇して残材WSから離隔し、押上部52cが下降して製品WPから離隔しても、製品WPは、支持突起部Weの上に乗って支持されている。そのため、残材WSの下側に潜り込むことはない。
【0031】
制御装置2の統括割付部7は、モードAとして、上述の支持突起部Weを形成するための支持突起部形成金型K56の配置位置の設定、すなわち、支持突起加工中心Psの割り付けを、ワークWの仕様及び製品WPの輪郭などに基づいて予め決められた手順に沿って実行する。次に、統括割付部7による基本的な割付手順について、製品WPが長方形の場合を例として
図3~
図8を参照して説明する。作業者は、統括割付部7に対し、入力部73を介して、支持突起部Weのみ割り付け可能なモードAで割り付けを実行するよう予め指定できる設定にしておいてもよい。
【0032】
図3は、ワークW及びワークWから切り出す製品の輪郭線Tを示す平面図である。
図4Aは、輪郭線Tにおける、残存輪郭線Tzを除く範囲をレーザビームLSで切断して製品中間体WRを形成した状態を示す平面図であり、
図4Bは、製品中間体WRを、等分布荷重での両端単純支持梁とみなした概念図である。
図5は、製品中間体WRを等分布荷重での両端単純支持梁とみなした場合の、板厚tと製品の長さLgとの組み合わせと、たわみ量δとの関係を示した表1である。
図6は、板厚tと距離Laとの関係を示した表2である。
図7は、板厚tと最大ピッチLbとの関係を示した表3である。
図8は、ワークWに形成した支持突起形成部P1~P3によって製品中間体WRを支持した状態を示す平面図である。
【0033】
説明する割付手順は、制御装置2の統括割付部7が、ワークWから製品WPを切り出す加工において、製品WPが残材WSの下側に潜り込まないようにするための支持突起部Weの形成位置を割り付ける、モードAの動作の手順例を示すものである。
【0034】
図3に示されるように、ワークWは左右方向に長い長方形の板金である。ワークWに対し、切り出して製品WPとする部分の外形となる輪郭線T(一点鎖線)を予め設定しておく。
図4Aに示されるように、輪郭線Tのうち、一対の長辺はレーザ加工部13によってレーザ切断し、スリットWmを形成する。各図におけるスリットWmの幅は、誇張して広く描かれている。
【0035】
輪郭線TにおけるX方向の両端部側の一対の短辺は、支持突起部Weを形成するまで切断せずに残しておき、左側の短辺を、最後にレーザ切断する最終切断線Taとし、右側の短辺を、最後から一つ前にレーザ切断する最終前切断線Tbとする。最終切断線Ta及び最終前切断線Tbは、支持突起部Weを形成するまで切断せずに残存させておく部位を示す線であり、それぞれ残存輪郭線Tzとも称する。
【0036】
図4Aに示されるように、一対のスリットWmと左右の最終切断線Ta及び最終前切断線Tbとで囲まれた幅Lw、長さLgの長方形の領域は、製品中間体WRである。この製品中間体WRは、左右方向(第1の方向とする)に延びる等分布荷重の両端単純支持梁とみなすことができる。そこで、製品中間体WRの自重による最大のたわみ量δmmは、等分布荷重の両端単純支持梁に適用される次の(式1)で算出できる。
δ=(5×w×Lg4)/(384×E×I) ・・・ (式1)
ただし、
w:単位長さあたりの荷重 (N/mm)
Lg:梁の長さ (mm)
E:ヤング率 (MPa)
I:断面二次モーメント (mm4)である。
【0037】
(式1)を用い、次の条件で製品中間体WRの最大のたわみ量δmmを求めた。
ワークWは鉄板とし、比重7.8g/cm3、ヤング率Eは20000MPaとした。ワークWの板厚tは、標準板厚から選択した、0.6mm,0.8mm,1.0mm,1.2mm,1.6mm,2.3mm,3.2mmの7種類とした。
製品中間体WRは、幅Lwを40mmとし、長さLgを100mmから50mm毎に最大800mmまでの15種類とした。ワークWの板厚t(7種類)と製品中間体WRの長さLg(15種類)との組み合わせの105組について、(式1)を用いてたわみ量δmmを求め、
図5の表1に示される結果を得た。
【0038】
ここで、製品中間体WRの、自重によるたわみ量δの許容上限値を第1の所定値として設定する。たわみ量δの第1の所定値である許容上限値δaは、製品WPの切り出しに支障が生じ得る値、すなわち、製品中間体WRの自重によるたわみ量δが超えてはいけない値を、経験値を基に安全率を乗算して設定する。詳しくは、許容上限値δaは、材質が同じであれば板厚tに依存することは明らかであり、ここでは板厚tの10%として設定する。すなわち、板厚t1.0のワークWにおける許容上限値δaは、0.1mmである。この考え方に基づいて、統括割付部7による割付は、製品中間体WRの自重によるたわみ量δが許容上限値δaの0.1mmを越えないように、製品WPを支持する支持突起部Weを割り付けることを基本手順としている。
【0039】
図5の表1において、太線で囲った領域のたわみ量は、板厚tの10%を超える値となっている。例えば、板厚0.8mmでは、製品中間体WRの長さLgが250mm以上で、板厚の10%である0.08mmを越えるたわみ量になることがわかる。すなわち、表1に示される50mm毎に設定した長さLgにおいて、ワークWが板厚0.8mmの鉄板の場合、長さLgが200mm以下の範囲で、たわみ量δが許容上限値δa以下となる。
【0040】
製品中間体WRの板厚tと長さLgとの組み合わせが、表1の太線で囲った領域に含まれる場合、統括割付部7は、支持突起部形成金型K56によって製品中間体WRの長手の辺に対応して、支持突起部Weを、後述する手順で求めた位置及び数で形成する。すなわち、支持突起形成部Pを割り付ける。
【0041】
表1の太線で囲った領域外において、板厚tそれぞれの、たわみ量δが許容上限値δa以下となる長さLgのうちの最大長さを、最大許容長さLgaとする。例えば、板厚0.8mmの場合、たわみ量δが0.036となる200mmが、板厚0.8mmにおける最大許容長さLgaとなる。同様に、表1において、板厚1.2mmの最大許容長さLgaは300mmであり、板厚2.3mmの最大許容長さLgaは500mmである。
【0042】
次に、
図4Aに示される、製品中間体WRにおける残存輪郭線TzからのX方向の距離Laを設定する。この距離Laは、支持突起部Weを形成しない範囲を示す距離である。具体的には、距離Laは、最終切断線Taを基準とする右方側と、最終前切断線Tbを基準とする左方側とに、同じ距離で板厚t毎に設定される。
【0043】
支持突起部形成金型K56を用いて支持突起部Weを形成する際には、既述のようにダイエジェクタ52の押上部52cによって製品WP側の縁部を板厚以上に持ち上げる。この持ち上げる部位の位置、換言するならば支持突起形成部Pの位置が、残存輪郭線Tzである左縁部の最終切断線Ta及び最終前切断線Tbに近すぎると、製品中間体WRが弾性変形しにくくなって良好に持ち上がらず、支持突起形成加工に不具合が生じる場合がある。
【0044】
そこで、発明者は、支持突起部Weの形成において、製品中間体WRが押上部52cによって良好に持ち上がる範囲を、実験によって求めた。この範囲は、ワークWの材質及び板厚に依存することは明らかである。その結果、支持突起部Weを形成しない範囲を示す残存輪郭線Tzからの距離Laは、ワークWが鉄板の場合、
図6の表2に示される数値になることが明らかになった。
【0045】
このようにして、製品中間体WRを支持する支持突起部Weは、左右両端の残存輪郭線TzからX方向の距離Laの範囲には形成しない、すなわち、支持突起形成部Pを割り付けないことにした。
【0046】
表2に示される板厚tと距離Laとの関係は、ワークWに用いられる材質それぞれについて同様に求め、記憶部72の距離Laデータ格納部721に予め格納しておく。
【0047】
距離Laを用い、X方向に複数の支持突起部Weを設ける場合の、隣接する支持突起部We間の間隔を設定する際に用いる最大ピッチLbを求める。具体的には、表1から求めた板厚t毎の最大許容長さLgaから距離Laの2倍の値を減算して最大ピッチLbとする。すなわち、
最大ピッチLb=最大許容長さLga - 距離La×2 ・・・ (式2)である。
【0048】
最大ピッチLbは、ある板厚tについて、製品中間体WRの最大のたわみ量δを許容上限値δa以下に抑え、かつ支持突起部Weを良好に形成させるための、X方向に隣接する支持突起部We間の最大の距離である。
図7に示される表3は、最大ピッチLbを板厚t毎に求めた結果である。例えば、板厚が1.0mmでは、表1から最大許容長さLgaは250mmであり、距離Laは、表2から40mmである。従って、(式2)から、板厚1.0mmにおける最大ピッチLbは、
250mm-40mm×2=170mmとして得られる(
図7の表3参照)。他に板厚についても同様である。得られた板厚tと最大ピッチLbとの関係は、統括割付部7の最大ピッチLbデータ格納部722に格納しておく。
【0049】
次に、任意長さの製品中間体WRにおける、支持突起形成部Pを割付可能な範囲(長さLg1)を求める。すなわち、
図4Aに示されるように、長さLgの製品中間体WRに対し、左右一対の残存輪郭線Tzからの距離Laを設定する。これにより、製品中間体WRの長さLgから2箇所の距離Laを除いた部分のX方向の長さが長さLg1となる。すなわち、
長さLg1=長さLg-(距離La×2) ・・・ (式3)である。製品中間体WRに対し、支持突起部Weを形成する場合、長さLg1の範囲が支持突起部Weを形成する範囲となる。
【0050】
次に、長さLg1の範囲に支持突起部Weを形成する場合の、形成数Qは、次の(式5)によって求める。(式5)では、除算において余りを切り捨て整数化するINT関数を用いる。すなわち、
形成数Q=INT〔(長さLg-距離La×2)/最大ピッチLb〕+2
・・・(式4)
であり、これに(式3)を代入して、
形成数Q=INT(長さLg1/最大ピッチLb)+2 ・・・ (式5)となる。
【0051】
(式5)は、支持突起部Weの形成数Qは、長さLg1の両端を除く範囲に形成する数に、長さLg1の両端部に形成する1対(2個)を加えて求めることを意味する。例えば、製品中間体WRが、板厚tが1.2mmで長さLgが500mmの場合、表1においてこの製品中間体WRが太線枠内にあることから支持突起部Weを形成する対象である、と判断される。また、板厚tが1.2mmであるから、表2から距離Laは50mmである。また、表1から、最大許容長さLgaは、板厚tが1.2mmのときは300mmであるから、最大ピッチLbは、(式2)を用いて、
最大ピッチLb=300-50×2=200mmとなる。
【0052】
一方、(式3)から、長さLg1は、500-50×2=400mmとなる。従って、(式5)から、形成数Qは、
形成数Q=INT(400/200)+2=2+2=4である。
得られた形成数Qが3以上の場合、形成数Qから2を減算した個数Qaに対し(Qa+1)で等分割した位置に支持突起部Weが形成されるように割り付ける。例えば、形成数Qが4の場合、長さLg1の両端と、長さLg1の範囲を3等分した際の2箇所の分割位置と、に支持突起部Weを形成する。
【0053】
図8は、形成数Qが3の場合の支持突起形成部Pの割付位置を示す平面図である。
図8に示されるように、支持突起形成部Pを形成可能とする長さLg1は、製品中間体WRのX方向の両端位置である位置A及び位置Bからそれぞれ内側に距離Laだけ入った位置A1と位置B1との間の距離として規定される。形成数Qの3のうちの2つ分として、長さLg1の両端である位置A1と位置B1に、それぞれ支持突起形成部P1と支持突起形成部P2とを設定する。個数Qaは1となるので、長さLg1の範囲を(Qa+1)に基づき2等分しその分割位置である位置Cに支持突起形成部P3を設定する。すなわち、位置A1と位置Cとの間の距離と、位置B1と位置Cとの間の距離とは、距離Lb1で等しい。支持突起形成部P1~P3は、製品中間体WRの前後方向に対向する一対の長手縁部に対しX方向の同じ位置に割り付けられる。
【0054】
次に、製品WPが単なる長方形ではなく、X方向(第1の方向)に直交するY方向(第2の方向)に延び出る、或いはY方向に切り込まれた部位を有する形状の場合の支持突起形成部Pの割り付け手順について
図9~
図14を参照して説明する。
【0055】
図9は、ワークWA及びワークWAから切り出す製品の輪郭線TAを示す平面図である。
図10Aは、輪郭線TAにおける延出部TAcの拡大図であり、
図10Bは、延出部TAcを等分布荷重での片持ち梁とみなした概念図である。
図10Cは、輪郭線TAにおける切込み部TAdの拡大図であり、
図10Dは、切込み部TAdを等分布荷重での片持ち梁とみなした概念図である。
図11は、板厚tと延出部TAcの長さLcとの組み合わせと、たわみ量δ2との関係を示した表4である。
図12は、板厚tと支持が不要な延出部TAcの最大の長さLcとの関係を示した表5である。
図13は、板厚tと割付不要最大長さLcaとの関係を示した表6である。
図14は、製品中間体WRAに対する支持突起形成部P1~P6の割り付け状態を示す平面図である。
【0056】
図9に示されるように、板金のワークWAに割り付けられた、製品の輪郭線TAは、X方向に延びる後辺から、さらに長方形領域としてY方向の後方に延出した延出部TAcと、Y方向の前方に向け長方形領域として切り込まれた切込み部TAdとを有する。輪郭線TAに囲まれた領域は、製品WPAとして切り出される領域である。
【0057】
延出部TAcの拡大図である
図10Aに示されるように、延出部TAcは、長手とするY方向に長さLcでX方向に幅Xaを有する長方形形状である。延出部TAcは、
図10Bに示されるように、根元位置Cを固定端とし先端位置Dを自由端とする等分布荷重の片持ち梁とみなすことができる。
【0058】
切込み部TAdの拡大図である
図10Cに示されるように、切込み部TAdは、長手とするY方向に長さLdでX方向に幅Xbを有する長方形形状である。この切込み部TAdに対応する残材WS側の部位は延出部(以下、残材延出部WSd)となる。そのため、残材延出部WSd及びその近傍部位が製品WPAの切込み部TAdの縁部に乗り上げてしまう可能性がある。そこで、残材延出部WSdを、
図10Dに示されるように、根元位置Eを固定端とし先端位置Fを自由端とする等分布荷重の片持ち梁とみなし、延出部TAcと同様にたわみ量の評価を行う。
【0059】
延出部TAcの自重による最大のたわみ量δ2mm(第1たわみ量δ2mm)は、等分布荷重の片持ち梁におけるたわみ量を算出する次の(式6)によって得られる。
δ2=(w×Lg4)/(8×E×I) ・・・ (式6)
ただし、
w:単位長さあたりの荷重 (N/mm)
Lg:梁の長さ (mm)
E:ヤング率 (MPa)
I:断面二次モーメント (mm4)である。
【0060】
(式6)を用いて延出部TAcの最大のたわみ量δ2mmを求めた。ワークWは鉄板として、比重7.8g/cm3、ヤング率Eは20000MPaを用いた。ワークWの板厚tは、標準板厚から選択した、0.6mm,0.8mm,1.0mm,1.2mm,1.6mmの5種類とした。延出部TAcは、幅Xaを10mmとし、長さLgを30mmから10mm毎に最大170mmまでの15種とした。ワークWの板厚t(5種類)と延出部TAcの長さLg(15種類)との組み合わせの75組について、(式6)を用いてたわみ量δ2mmを求め、
図11の表4に示される結果を得た。
【0061】
ここで、延出部TAcの自重によるたわみ量δ2の許容上限値を設定する。たわみ量δ2の許容上限値δ2aは、製品WPにおける延出部TAcの部分の切り出しに支障が生じ得る値、すなわち、延出部TAcの自重によるたわみ量δ2が超えてはいけない値(第2の所定値)を、経験を基に安全率を乗算して設定する。ここでは、製品中間体WRにおける許容上限値δaと同じ考え方により板厚tの10%の値とする。
図11の表4において、太線で囲った領域に含まれる板厚tと長さLcとの組み合わせが、許容上限値δ2aを越える組み合わせである。延出部TAcが、この太線で囲った領域に含まれる組み合わせである場合、支持突起部形成金型K56によって、支持突起形成部Pを延出部TAcの先端部分である先端縁部TAc1に形成する。すなわち、
図14に示されるように、先端縁部TAc1に支持突起形成部P4を割り付ける。
【0062】
上述のように求めた
図11の表4における太線で囲った領域において、ある板厚tでの最大の長さLcは、先端縁部TAc1に支持突起形成部Pを割り付ける必要がない延出部TAcの最大長となる。このように求めた板厚t毎の最大長は、
図12の表5に示される。例えば、板厚tが0.8mmでは、表4から、先端縁部TAc1の支持突起形成部Pが不要な最大の長さLgは90mmであり、板厚tが1.2mmでは130mmである。表5は、切込み部TAdにも適用される。
【0063】
上述のように先端縁部TAc1に支持突起形成部P(
図14におけるP4)を割り付けることで、延出部TAcは、Y方向に延びる等分布荷重の両端単純支持梁とみなすことができる。そこで、延出部TAcの長手の側縁部分である側縁部TAc2,TAc3を支持突起形成部Pで支持する必要があるかないかを、表1の結果を、板厚tと延出部TAcの長さLcとの組に置き換えて判定する。具体的には、表1の長さLgを延出部TAcの長さLcに置き換える。その結果が
図13の表6に示される。
【0064】
表1において、板厚tが例えば1.2mmの場合、延出部TAcの長さLc(長さLgに相当)が300mmを越えなければ、延出部TAcの側縁部TAc2,TAc3に対する支持突起形成部Pの割り付けは不要である。支持突起形成部Pの割り付けが不要になる最大の長さLcを割付不要最大長さLcaとする。
【0065】
延出部TAcの長さLcが割付不要最大長さLcaを越える場合は、次の(式7)を用いて、側縁部TAc2,TAc3それぞれに割り付ける支持突起形成部Pの形成数Q2を算出する。
形成数Q2=INT(長さLc/割付不要最大長さLca) ・・・ (式7)
【0066】
図14は、
図9に示されるワークWAに対し、輪郭線TAにおける長手の部分にスリットWmを形成することで得られた製品中間体WRAと、上述の方法による支持突起形成部P(P1~P6)の割付例とが示されている。
図14において、支持突起形成部Pは理解容易のため三角形状で示してある。また、
図14のX方向とY方向とは異なる比率で描かれている。
【0067】
この例において、製品中間体WRAは、厚さtが0.8mm、長さLgが300mmとする。表2(
図6)から、距離Laは30mmであるから、長さLg1は240mmとなる。一方、表3(
図7)から、最大ピッチLbは140mmであるから、(式5)から、形成数Qは3となる。すなわち、製品中間体WRAの全体形状において、
図14における位置A1及び位置B1にそれぞれ支持突起形成部P1及び支持突起形成部P2を割り付け、位置A1と位置B1との間の中点位置に、支持突起形成部P3を割り付ける。
【0068】
次に、延出部TAcについて検討する。延出部TAcは長さLcが230mmとする。表5(
図12)から、延出部TAcには先端縁部の支持が必要と判断されるので、
図14に示されるように、製品中間体WRにおける延出部TAcに対応する中間体延出部WRcの先端縁に支持突起形成部P4を割り付ける。
【0069】
支持突起形成部P4を割り付けたことで両端単純支持梁とみなせる中間体延出部WRcは、そのたわみ量(第2たわみ量)から、表1によって第3の所定値である割付不要最大長さLcaが200mmとして得られる。従って、表6(
図13)に示されるように、その長さLc(230mm)が板厚t(0.8mm)における割付不要最大長さLca(200mm)よりも長い。そのため、中間体延出部WRcは、側縁部TAc2,TAc3に対応したY方向に延びる側縁部に支持突起形成部Pの割り付けが必要と判断される。割り付ける形成数Q2は、(式7)から1と算出される。これを受け、
図14において白ヌキ三角形で示される支持突起形成部P6を、側縁部それぞれに割り付ける。
【0070】
次に、切込み部TAdと、残材WSにおいて切込み部TAdに対応した残材延出部WSdとについて検討する。表6(
図13)は、切込み部TAdについても同様に適用する。
【0071】
残材延出部WSdのY方向の長さは切込み部TAdの長さLdに対応しており、長さLdを130mmとする。表5(
図12)から、残材延出部WSdには先端縁部の支持が必要と判断されるので、
図14に示されるように、支持突起形成部P5を割り付ける。
【0072】
次いで、支持突起形成部P5を割り付けたことによって、残材延出部WSdは両端単純支持梁とみなされる。そこで表6(
図13)を参照すると、残材延出部WSdの長さLd(130mm)は、板厚t(0.8mm)における割付不要最大長さLca(200mm)よりも短い。そのため、側縁部TAd2,TAd3に対応したY方向に延びる側縁部に支持突起形成部Pの割り付けは不要と判定される。
【0073】
以上の考え方で、製品中間体WRAに対し、支持突起形成部P1~P6が割り付けられる。表1~表6のデータは、予め求めて記憶部72に格納しておく。そのうちの表1及び表4のデータはたわみ量データ格納部720に、表2のデータは距離Laデータ格納部721に、表3のデータは最大ピッチLbデータ格納部722に格納しておく。
【0074】
製品中間体WRが、予め別工程で形成された貫通孔或いは厚み方向に突出する成形部を有するとき、これらの部位が上述のように割り付けた支持突起形成部Pの近傍にあると支持突起形成加工で不具合が生じる場合がある。そのため、統括割付部7は、このような場合には支持突起形成部Pの割付位置をずらす補正を行う。この位置補正について、
図15~
図20を参照して説明する。
【0075】
図15は、孔WPa,WPbを輪郭近傍に有する製品中間体WRBに対する支持突起形成部P1~P3の割り付け状態を示す平面図である。
図16Aは、支持突起部形成金型K56Aの動作を説明するための第1の図であり、
図16Bは、
図16Aに次ぐ動作を説明するための第2の図であり、
図16Cは、
図16Bに次ぐ動作を説明するための第3の図である。
図16D(a)は、支持突起部形成金型K56Aによる加工で得られる支持突起形成部Pを示す平面図であり、
図16D(b)は、
図16D(a)におけるS16Db-S16Db位置での断面図である。
図17は、支持突起部形成金型K56Aの形状に基づいて設定するバウンディングボックスARB及び金型ガイド領域ARGを示す平面図である。
図18は、製品WPの突出成形部WPcに対する支持突起形成加工位置の補正方法を説明する図であり、
図18(a)は補正前の平面図、
図18(b)は
図18(a)におけるS18b-S18b位置での断面図、
図18(c)は補正後の支持突起形成加工位置を示す平面図である。
図19は、製品WPの孔WPdに対する支持突起形成加工位置の補正方法を説明する図であり、
図19(a)は補正前の平面図、
図19(b)は補正後の平面図である。
図20は、製品WPのX方向延出部WPeに対する支持突起形成加工位置の補正方法を説明する図であり、
図20(a)は補正前の平面図、
図20(b)は補正後の平面図である。
【0076】
まず、
図15を参照して位置補正の概要を説明する。
図15は、貫通する孔WPa,WPbを有する製品中間体WRBにおいて、割り付けられた前側の支持突起形成部P1及び後側の中央部の支持突起形成部P3が、それぞれ孔WPa,WPbに対し比較的近い位置にある場合を示している。この場合に、統括割付部7は、該当する支持突起形成部P1及び支持突起形成部P3の割付位置を、それぞれ右方に距離mL1及び左方に距離mL2だけずらした位置に補正する。
【0077】
この位置補正は、貫通孔に対しては、バウンディングボックスARBとの干渉がある場合に実行し、成形部に対しては、金型ガイド領域ARGとの干渉がある場合に実行する。バウンディングボックスARB及び金型ガイド領域ARGは、支持突起部形成金型(例えば既述の支持突起部形成金型K56)の形状に依存する。
【0078】
そこで、バウンディングボックスARB及び金型ガイド領域ARGについて、支持突起部形成金型K56Aを例に説明する。支持突起部形成金型K56Aは、既述の支持突起部形成金型K56の変形構造を有する。
【0079】
支持突起部形成金型K56Aは、支持突起形成ダイ5Aと支持突起形成パンチ6Aとの組である。
図16Aに示されるように、支持突起形成ダイ5Aは、ダイケース5A1と押上ピン5A2とを有する。
【0080】
ダイケース5A1は円柱状に形成されている。押上ピン5A2は、ダイケース5A1の軸線CL5Aに対し一方側(
図16Aの右側)に偏った位置において上下動してダイケース5A1の上面から上方に出没する。ダイケース5A1の上面5A1aは水平の平坦面である。押上ピン5A2の突出高さは、この支持突起部形成金型K56Aが適用されるワークWの板厚以上である。
【0081】
支持突起形成パンチ6Aは、円柱状に形成され、軸線が軸線CL5Aと同芯となるように配置されている。支持突起形成パンチ6Aは、軸線CL5Aに対し、押上ピン5A2とは反対側(
図16Aの左側)に偏った位置に、下方に突出する押さえ突起6Aaを有する。支持突起形成パンチ6Aは、常態で下方に突出し、さらに下方に向け上下動するコイニングピン6A1を有する。
【0082】
コイニングピン6A1は、下方視が前後方向(紙面表裏方向)に長い長方形状となる四角柱状に形成されている。コイニングピン6A1の下端は、
図16Aに示される横断面形状において幅方向の中央位置が頂点となる下方に尖った三角形状となるように形成されている。
【0083】
図16Dにも示されるように、上面視で、コイニングピン6A1の幅方向及び長手方向(紙面表裏方向)の中心位置を支持突起加工中心Psとする。すなわち、この例において支持突起加工中心Psは、軸線CL5A上に位置する。
【0084】
支持突起部の形成工程では、まず、
図16Aに示されるように上下方向に離隔した支持突起形成ダイ5Aと支持突起形成パンチ6Aとの間にワークWが挿入され位置決めされる。
支持突起部形成金型K56Aでの加工に供給されるワークWは、予め別工程で製品WPとなる部分の輪郭線の大部分がレーザ加工部13によって切断されて形成されたスリットWmを有する。
図16Aでは、スリットWmの右側が製品WPとなる部分であり、左側が残材WSとなる部分である。
図16Aの左右方向において、ワークWは、スリットWmが支持突起加工中心Psと押上ピン5A2との間に位置するように位置決めされる。
【0085】
次いで、
図16Bに示されるように、パンチ駆動部(不図示)の動作により支持突起形成パンチ6Aが下降し(矢印DR4A参照)、残材WS側の部位は、ダイケース5A1の上面5A1aと支持突起形成パンチ6Aの押さえ突起6Aaとの間に挟持される。そして、
図16Cに示されるように、製品WP側のスリットWm近傍の部位は、押上ピン5A2によって上方に板厚以上押し上げられる(矢印DR5A参照)。
【0086】
次いで、コイニングピン6A1が下降し(矢印DR6A参照)、残材WSの上面にくい込んでコイニングピン6A1の先端形状に対応した、横断面形状が三角形で上面視が長方形の圧痕Wd(
図16D参照)を形成する。圧痕Wdの形成に伴って残材WSの塑性流動が生じ、押上られた製品WPの下に入り込む支持突起部Weが形成される。
【0087】
支持突起部Weが形成された後、支持突起形成パンチ6Aが上昇して残材WSから離隔し、押上ピン5A2が下降してダイケース5A1が製品WPから離隔しても、製品WPは、支持突起部Weに乗っているので、残材WSの下側に入り込むことはない。
【0088】
支持突起部形成金型K56Aに対し、
図17に示されるように、2次元領域として、バウンディングボックスARB(破線)及び金型ガイド領域ARG(一点鎖線)を設定する。
【0089】
バウンディングボックスARBは、製品WPの押上げ動作、及び残材WSへのコイニング動作に支障が生じるか否かの観点で、製品側の貫通孔との干渉有無を判定する領域として設定する。すなわち、支持突起部Weを形成する支持突起部形成金型K56Aなどの形状に応じて、板金であるワークWの非開口部分に対応させるべき領域として設定する。具体的には、支持突起部形成金型K56Aにおいては、上面視において、コイニングピン6A1の占有領域はもとより、押さえ突起6Aa及び押上ピン5A2の領域を内包するように囲む矩形領域として設定する。内包における余裕分は
図17に示されるように0(ゼロ)~距離d(0.2mm程度)をとる。
【0090】
金型ガイド領域ARGは、支持突起部形成金型K56AによるワークWの挟持に支障が生じるか否かの観点で、製品側の成形部(凸部)との干渉有無を判定する領域として設定する。すなわち、金型ガイド領域ARGは、支持突起部Weを形成する支持突起部形成金型K56Aなどの形状に応じて、支持突起部Weの形成において板金であるワークWの平坦部分に対応させるべき領域として設定する。具体的には、支持突起部形成金型K56Aにおいては、ダイケース5A1及び支持突起形成パンチ6Aの外径のうちの大きい径で設定する。この例では、ダイケース5A1と支持突起形成パンチ6Aとで外径は同じφKD(
図16C参照)であるから、金型ガイド領域ARGはφKDの円形領域として設定する。
【0091】
支持突起形成部Pの割付位置の簡略記載である既述の三角マークは、
図17に示されるように、頂点が支持突起加工中心Psの位置となり、向きは三角の底辺が押さえ突起6Aa側となるようにする。
【0092】
支持突起部形成金型K56Aの各部材寸法などの情報は、予め記憶部72の金型データ格納部724に格納しておく。また、金型ガイド領域ARGの情報及びバウンディングボックスARBの情報は、それぞれ記憶部72の金型ガイド情報格納部725及びバウンディングボックス情報格納部726に格納しておく。
【0093】
次に、金型ガイド領域ARGの情報及びバウンディングボックスARBに基づく位置補正について詳述する。製品WPとなる製品中間体WRに、
図18(a),(b)に示されるような突出成形部WPcが形成されている場合、統括割付部7の干渉領域検索部713は、既述の手順で割り付けた支持突起形成部Pに対応する金型ガイド領域ARGと、突出成形部WPcとが、上面視において干渉しているか否かを判定する。
図18(a)に示されるように干渉している場合、干渉領域検索部713は、
図18(c)に示されるように、支持突起形成部Pの位置を、金型ガイド領域ARGと突出成形部WPcとが干渉しない位置にずらして(補正して)あらたに割り付ける(矢印DR7参照)。
【0094】
製品WPとなる製品中間体WRに、
図19A(a)に示されるような貫通孔である孔WPdが形成されている場合、統括割付部7の干渉領域検索部713は、既述の手順で割り付けた支持突起形成部Pに対応するバウンディングボックスARBと、孔WPdとが、上面視において干渉しているか否かを判定する。
図19(a)に示されるように干渉している場合、干渉領域検索部713は、
図19(b)に示されるように、支持突起形成部Pの位置を、バウンディングボックスARBと孔WPdとが干渉しない位置にずらして(補正して)あらたに割り付ける(矢印DR8参照)。
【0095】
さらに、製品WPとなる製品中間体WRに、
図20(a)に示されるようなX方向に細く延びる部位であるX方向延出部WPe(第2延出部)があるときも、支持突起形成部Pの割り付け位置を補正する場合がある。すなわち、統括割付部7の干渉領域検索部713は、既述の手順で割り付けた支持突起形成部Pに対応したバウンディングボックスARBと、X方向延出部WPeとが上面視において干渉しているか否かを判定する。
図20(a)に示されるように干渉している場合、干渉領域検索部713は、
図20(b)に示されるように、支持突起形成部Pの位置を、バウンディングボックスARBとX方向延出部WPeとが干渉しない位置にずらして(補正して)あらたに割り付ける(矢印DR9参照)。
【0096】
以上詳述した支持突起形成部Pの基本的な割り付け方法に基づいて、統括割付部7は、製品WPが残材WSの下に潜り込まないように支持突起形成部Pを割り付ける。その割付手順例を、
図21~
図23Dを参照して説明する。
【0097】
図21は、最終前切断線Tbの設定方法を説明するための図である。
図22Aは、支持突起形成加工位置の割り付け方法を示すフロー図であり、
図22Bは、サブルーチンのフロー図である。
図23Aは、統括割付部7が実行する加工位置割付動作の第1手順を示す図であり、
図23Bは、加工位置割付動作の第2手順を示す図であり、
図23Cは、加工位置割付動作の第3手順を示す図であり、
図23Dは、加工位置割付動作の第4手順を示す図である。
【0098】
以下に説明するのは、ワークWBから製品WPBを切り出す例である。製品WPBは輪郭線TB(
図23A参照)で示される外形を有する。輪郭線TBの形状などの情報は、記憶部72の製品情報格納部727に予め記憶させておく。また、ワークWの材質、物性などの情報も、予め記憶部72の材料物性データ格納部723に記憶させておく。
【0099】
フロー図である
図22Aに示されるように、統括割付部7の割付部711は、製品形状がこれから実行する割付の条件に適合するか否かの判定をする(S1)。この判定は、輪郭線TBがX方向を長手とする概ね矩形形状とみなせて支持突起形成部Pが割付可能か否かなど、予め定めた条件に基づいて行う。
【0100】
割付部711が(S1)でNOと判定したら割付動作は終了する。YESと判定したら、支持突起形成部Pを作成するために支持突起部形成金型を選定し、
図17を参照して説明したように、選定した金型に応じた金型ガイド領域ARGの設定(S2)とバウンディングボックスの設定(S3)を行う。設定した金型ガイド領域ARG及びバウンディングボックスARBの情報は、それぞれ金型ガイド情報格納部725及びバウンディングボックス情報格納部726へ記憶させる。選定する支持突起部形成金型は、既述の支持突起部形成金型K56,K56A、及び他の同種のものである。
【0101】
割付部711は、輪郭線TBに対し、輪郭線TBのうちのレーザ切断で最後に切断する最終切断線TBa(最終の切断軌跡)の割り付け(S5)及びその一つ前に切断する最終前切断線TBb(右側分割軌跡)の割り付け(S4)を行う。(S4)及び(S5)の実行順は限定されず逆でもよい。
【0102】
最終切断線TBaは、その切断中に搬送装置3のアーム31がワークWBの上方に進入できるようにするため、
図23Aに示されるように、輪郭線TBにおける搬送装置3の設置側とは反対側(この例で左側)の縁部のY方向に延びる輪郭線が選択される。従って、最終前切断線TBbは、搬送装置3の設置側(この例で右側)の縁部のY方向に延びる輪郭線が選択される。
【0103】
輪郭線TBの両端部の形状が単純な一本線ではなく、
図23Aに示されるようにX方向に出入りしている場合は、予め設定した条件に従って割り付ける。例えば、
図21に示される輪郭線TCのように、輪郭線TCのX方向右端部の最右の位置Prにある輪郭線TCb3と、位置Prからの距離がLx2,Lx1となる輪郭線TCb2,TCb1との、Y方向に延びる3つの輪郭線がある場合を想定する。輪郭線TCb1~Tcb3のY方向の長さは、TCb1>TCb2>TCb3とする。
【0104】
この場合、位置PrからのX方向の距離を検索範囲SCXとして設定し、検索範囲内におけるY方向の長さが最大となる輪郭線を、最終前切断線とする。例えば、
図21に示されるように、検索範囲を決める検索範囲SCXを距離Lx1よりも大きく設定した場合、割付部711は、輪郭線TCb1を最終前切断線として設定する(割り付ける)。検索範囲SCXを距離Lx1未満、距離Lx2以上と設定した場合は、輪郭線TCb2を最終前切断線として設定する。
【0105】
最終前切断線のY方向の長さには、最終前切断線の条件として最小値を設定しておく。検索範囲SCXは、例えば、最終前切断線となり得る最小値以上の長さを有する輪郭線が、検索範囲に必ず含まれるように設定するとよい。最終切断線の割り付けにおいても同様である。(S1)の割付条件には、最終切断線及び最終前切断線として設定可能な輪郭線が検索され得るか否か、を含めておくとよい。
【0106】
上述の手順により、ここでは、
図23Aに示される輪郭線TBに対し、割付部711が、左縁に太線で示される最終切断線TBaを設定し、右縁に太線で示される最終前切断線TBbを設定したとする。また、輪郭線TBを有する製品中間体WRBは、後方に延びる延出部TBcと、輪郭線TBに近接する位置に別工程で形成された貫通する孔WPf及び紙面手前に突出する突出成形部WPgを有するものとする。
【0107】
統括割付部7の割付個数取得部712は、支持突起形成部Pの形成数Q(割り付け個数)を算出する(S6)。(S6)の手順は、(式1)~(式5)を用い、例えばサブルーチンとして
図22Bのフロー図で示される。
【0108】
図22Bにおいて、割付個数取得部712の条件取得部712cは、(式1)~(式5)で用いる条件を、記憶部72を参照して取得する(S61)。例えば、(式1)については、条件取得部712cは、梁の長さLg及び板厚tなどの製品に関する情報を製品情報格納部727から取得し、ヤング率Eなどの材料に関する条件を材料物性データ格納部723から取得する。また、条件取得部712cは、記憶部72の距離Laデータ格納部721を参照して、板厚tに対応した距離Laを取得する(S62)。
【0109】
条件取得部712cが取得した条件に基づいて、たわみ量算出部712aは、(式1)によりたわみ量δを算出する(S63)。さらに、たわみ量算出部712aは、算出したたわみ量δなどを用いて、又はすでに最大ピッチLbデータ格納部722に記憶された情報に基づいて最大ピッチLbを取得する(S64)。個数算出部712bは、取得した距離La及び最大ピッチLbを(式5)に適用して形成数Qを求め(S65)、その後(S6)に戻る。
【0110】
割付部711は、個数算出部712bが求めた形成数Qに基づいて、支持突起形成部Pの割付位置を検索する(S7)。ここでは、形成数Qが4と算出された場合を説明する。まず、
図23Bに示されるように、形成数Qの4のうちの2つ分を設定する。すなわち、最終切断線TBaから右方に距離Laだけ寄った位置に支持突起形成部P7を設定する。この位置は、輪郭線TBにおいて4箇所存在するので、それぞれに支持突起形成部P7を設定する。また、最終前切断線TBbから左方に距離Laだけ寄った位置も輪郭線TBにおいて4箇所存在するので、それぞれに支持突起形成部P8を設定する。
【0111】
次いで、
図23Cに示されるように、割付部711は、形成数Qの残り2に対応する支持突起形成部P9、P10を割り付ける。具体的には、支持突起形成部P7と支持突起形成部P8との間の区間を距離Lb1で3等分し、境界位置それぞれに支持突起形成部P9と支持突起形成部P10とを設定する。二つの分割境界位置は輪郭線TBにおいて2箇所あるので、それぞれに支持突起形成部P9及び支持突起形成部P10を設定する。
【0112】
また、割付部711は、輪郭線TBにおける延出部及び切り込み部の有無が検索される。その結果、いずれか一つがある場合、割付個数取得部712は、延出部及び切込み部に対する支持突起形成部Pの割付要否と要の場合の形成数とを(式6)及び(式7)などを用いる既述の手順で求める。
【0113】
図23Cに示される輪郭線TBでは、延出部TBcが検索対象となる。この例において、割付個数取得部712は、
図23Dに示されるように、延出部TBcに対し延出部TBcの先端縁部TBc1に支持突起形成部P11を割り付け、側縁部TBc2,TBc3にそれぞれ支持突起形成部P12,P12を割り付けている。
【0114】
次いで、干渉領域検索部713は、輪郭線TBについて、割り付けた支持突起形成部P1~P12と、孔,突出成形部,及びX方向延出部との干渉の有無を判定する。干渉領域検索部713は、突出成形部WPgと、その近傍に割り付けられた支持突起形成部P10を形成する際の金型ガイド領域ARGとの干渉有無を判定する(S8)。(S8)で有(Yes)と判定したら、干渉領域検索部713は、突出成形部WPg近傍の支持突起形成部P10を、
図23Dに示されるように非干渉位置にずらす補正を行う(S81)。(S8)で無(No)と判定したら、次手順(S9)へ進む。
【0115】
干渉領域検索部713は、孔WPfと、その近傍に割り付けられた支持突起形成部P9を形成する際のバウンディングボックスARBとの干渉有無を判定する(S9)。(S9)で有(Yes)と判定したら、干渉領域検索部713は、突出成形部WPg近傍の支持突起形成部P9を、
図23Dに示されるように非干渉位置にずらす補正を行う(S91)。(S9)で無(No)と判定したら、次手順(S10)へ進む。
【0116】
干渉領域検索部713は、(S81)及び(S91)でのずらし方向を、左右のうち、非干渉とするためのずらし量が少なくなる方で選択する。
【0117】
干渉領域検索部713は、
図23Cに示される輪郭線TBにおける左縁部の2箇所及び右縁部の2箇所のX方向延出部について、支持突起形成部P7,P8のバウンディングボックスARBとの干渉有無を判定する。この例においては、干渉はなしと判定されて支持突起形成部P7,P8の位置補正は実行しない。
【0118】
割付部711は、上述のように割り付けた支持突起形成部P7~P12の位置及び補正をした場合は補正後の位置を確定する(S10)。以上により、統括割付部7による割付動作を終了する。
【0119】
割付動作終了後、制御装置2は、ワークWをレーザ加工部13に供給し、レーザ加工ヘッド131によって残存輪郭線以外の部分にスリットWmを形成することで製品中間体WRを得る。そして、制御装置2は、スリットWmを形成したワークWをパンチ加工部12に供給し、支持突起形成部Pとして割り付けた加工位置に対し支持突起部形成金型K56,K56Aなどによって支持突起部Weを形成し、製品中間体WRが支持突起部Weに載った状態にする。次いで、残存輪郭線Tzをレーザ加工ヘッド131によって切断し、製品WPを得る。
【0120】
以上詳述したように、統括割付部7が実行する支持突起形成部Pの加工位置を割り付ける方法は、製品WPの形状が所定条件を満たしている場合に、ワークWに対し支持突起形成部Pを自動で割り付けることができる。これにより、支持突起部形成金型K56,K56Aによる加工位置の割り付けが容易である。詳しくは、製品WPを残材WSの下側に潜り込ませないという支持突起形成部Pを自動で割り付ける効果は、作業者の経験によらず、ばらつきなく常に有効で、作業者の負担は軽減される。
【0121】
(実施例2)
実施例2は、実施例1と同じ板金加工システムSTを用い、支持突起部Weと移動規制突起部Wfとを形成するモードBの板金加工方法である。支持突起部Weは、モードAの実施例1の手順によって形成する。
【0122】
まず、移動規制突起部Wfについて、
図24A~
図24Dを参照して説明する。
図24Aは、移動規制突起部Wfの平面図である。
図24Bは、
図24AにおけるS24B-S24B位置から見た移動規制突起部Wfの前面図である。
図24Cは、
図24AにおけるS24C-S24C位置での断面図である。
図24Dは、移動規制突起部Wfの記号を説明する図である。前後左右の各方向は、
図24Aに矢印で規定する。上方は紙面手前方であり、下方は紙面奥方である。
【0123】
図24A~
図24Cに示されるように、移動規制突起部Wfは、一般的なハーフシャー加工によって、残材WSのスリットWmに面する縁部に沿って、上方に向け板厚未満の高さでブリッジ状に突出形成される。ハーフシャー加工に用いる金型は、予めパンチ加工部12の下部タレット121及び上部タレット122にセットしておく。
【0124】
図24Cに示されるように、製品WPは、実施例1の方法で形成された支持突起部We(不図示)によってその板厚分だけ上方に持ち上げられている。そのため、製品WPが後方へ移動しようとした場合に(矢印DR10参照)、製品WPの端面WPtが移動規制突起部Wfに当接してその後方への移動が規制される。すなわち、移動規制突起部Wfは、製品WPがスリットWmを越えて水平移動することを規制する。換言するならば、移動規制突起部Wfは、製品WPがその移動規制突起部Wfに向かう水平移動を当接によって規制する。
【0125】
従って、移動規制突起部Wfは、製品WPの、水平方向の第1の方向における第1の向きと第1の向きとは反対の第2の向きとの移動を規制する一対、及び第1の方向に水平交差する第2の方向の一方の向きである第3の向きと、第3の向きとは反対の第4の向きとの移動を規制する一対の二対形成するとよい。これにより、支持突起部Weによって板厚分上方に持ち上げられた位置で支持された製品WPの水平方向の移動を規制できる。
【0126】
図25以降の図において、
図24D(a)に示される移動規制突起部Wfは、描画容易と理解容易の観点で、
図24(b)の記号P21によって示すことにする。
【0127】
作業者は、板金加工システムSTに対し、モードBでの割り付けを実行させる場合、パンチ加工部12の下部タレット121及び上部タレット122に、移動規制突起部Wfを形成するハーフシャー加工に供される金型をセットし、統括割付部7に対し、入力部73を介してモードBで割り付けを実行するよう予め指定しておく。
【0128】
モードBの設定は、統括割付部7が、パンチ加工部12に移動規制突起部Wfを形成するハーフシャー加工に供される金型がセットされているか否かを判定し、セットされていない場合はモードAを実行し、セットされている場合はモードBを実行するよう自動化しておいてもよい。
【0129】
モードBにおいて、統括割付部7は、製品WPの輪郭とその残存輪郭線Tzとの位置などから、移動規制突起部Wfを形成する移動規制突起形成部を上記の第1の向きと第2の向きの一対、及び、第3の向きと第4の向きとの一対の合計二対で割付可能であるか否かを判定する。そして、統括割付部7は、否の場合にモードAに切り換えて支持突起形成部のみの割付を実行する、或いは、割り付け可能な向きにのみ、移動規制突起部Wfを形成する移動規制突起形成部の割り付けを実行する。
【0130】
移動規制突起部Wfは、残材WSに対し、輪郭に沿って形成され、切り出した製品WPが、形成された移動規制突起部Wfに向かう水平移動を規制するものである。従って、統括割付部7は、製品中間体WRの輪郭が、切り出された製品WPの水平方向の直交する又は斜交する2軸方向の移動を規制するように移動規制突起部Wfを形成できる輪郭であるか否かを判定する。
【0131】
図25は、水平方向の移動を規制する二対の移動規制突起部Wfを形成できる例であるワークWC2を示している。すなわち、
図25は、製品中間体WR2に対する支持突起形成部PB1,PB2及び移動規制突起形成部P21~P24の割り付け状態を示す平面図であって、最終前切断線T2b及び最終切断線T2aを切断する直前のスリットWmによって製品中間体WR2が形成されたワークWC2を示す平面図である。製品中間体WR2は最終前切断線T2b及び最終切断線T2aが切断されて製品WP2となる。
【0132】
製品中間体WR2は、4つの角となる部位に、直交する2辺の入隅となる内向角部WR2a~WR2dを有する。具体的には、左後方,右後方の角となる部位にはそれぞれ内向角部WR2a,WR2bが形成され、左前方,右前方の隅部にはそれぞれ内向角部WR2c,WR2dが形成されている。
この例において、内向角部WR2a~WR2dの入隅を構成する、直交する2辺は、左右方向と上下方向の2辺である。
【0133】
統括割付部7は、製品中間体WR2の残材WSに対し、実施例1と同じ手順で支持突起形成部PB1,PB2を割り付ける。また、統括割付部7は、内向角部WR2a~WR2dのうちの、対角位置にある二つを選定し、残材WSに対し、それぞれの直交する2辺に対応して移動規制突起部Wfを形成する移動規制突起形成部P21,P22を割り付ける。
【0134】
割り付けられた移動規制突起形成部P21は、左右方向に延びる輪郭に沿って形成され製品WP2の後方への移動を規制する移動規制突起形成部P21aと、前後方向に延びる輪郭に沿って形成され製品WP2の左方への移動を規制する移動規制突起形成部P21bとを含む。
【0135】
割り付けられた移動規制突起形成部P22は、左右方向に延びる輪郭に沿って形成され製品WP2の前方への移動を規制する移動規制突起形成部P22aと、前後方向に延びる輪郭に沿って形成され製品WP2の右方への移動を規制する移動規制突起形成部P22bとを含む。
【0136】
以上のように割り付けられた支持突起形成部PB1,PB2において、形成された支持突起部Weにより、製品WP2は板厚分持ち上げられる。そして、持ち上げられた製品WP2は、移動規制突起形成部P21a,P21bの移動規制突起部Wfによって、それぞれ後方,左方への移動が規制され、移動規制突起形成部P22a,P22bの移動規制突起部Wfによって、それぞれ前方,右方への移動が規制される。移動規制突起形成部P21b,22bにおいて形成され、製品WPの左方,右方への移動を規制する移動規制突起部Wfを移動規制突起部Wf1として必要な場合に区別する。また、移動規制突起形成部P21a,P22aにおいて形成され、製品WPの後方,前方への移動を規制する移動規制突起部Wfを、移動規制突起部Wf2として必要な場合に区別する。
【0137】
従って、移動規制突起形成部P21,P22を割り付けることで、残材WSに対して切り出され支持突起形成部PB1,PB2において板厚分持ち上げられた製品WP2が水平方向に移動することはない。そのため、モードBで移動規制突起形成部P21,P22が割り付けられた製品WP2は、残材WSと共に複合加工機1とは別の場所にある仕分け装置に移送し、その仕分け装置に付帯設置された搬送装置によって所定の場所に仕分け搬送することができる。これにより、製品WP2の搬送中も複合加工機1によってレーザ加工などの加工を行うことができ、板金加工システムSTの稼働率が向上する。
【0138】
製品中間体WR2の形状が左右方向に比較的長い、などの場合、対角位置にある左後部及び右前部の2箇所での移動規制突起形成部P21,P22の割り付けでは、製品WP2の、上下軸を中心とする回転移動量が無視できなくなる場合がある。
この場合、後方向及び前方向の移動を規制する移動規制突起形成部P23b,P23aを割り付けてもよい。
例えば、移動規制突起形成部P21aに対する前方の対向位置に移動規制突起形成部P23aを割り付け、移動規制突起形成部P22aに対する後方の対向位置に移動規制突起形成部P23bを割り付ける。
【0139】
これにより、製品WP2の回転移動をより小さくすることができ、製品WP2の搬送作業をより確実に実行できる。
【0140】
一方、製品WP2の質量が、形状が大きい或いは板厚が厚いために大きい(重い)場合、仮に予期せぬ外力によって製品WP2が水平移動しようとすると、移動方向にある移動規制突起部Wfに過大な力が加わって変形し移動規制に支障が生じる虞がある。そこで、統括割付部7は、製品WPの質量が所定値を超えて大きい場合に、
図25に示されるように、追加し得る輪郭部位に移動規制突起形成部P24を割り付けてもよい。そのため、製品WPの水平移動で移動規制突起部Wfに加わる力が分散され、その変形が防止される。
図25に示される例において、統括割付部7は、左右方向に長く延びる後側の輪郭部位に移動規制突起形成部P24aを割り付け、前側の輪郭部位に移動規制突起形成部P24bを割り付けている。
【0141】
これにより、製品WP2の質量が大きくても、水平方向の移動をより確実に不具合なく規制できる。
【0142】
図26は、輪郭が
図25に示されるような内向角部WR2a~WR2dを有していない製品WP3となる製品中間体WR3に対し、モードBを適用して移動規制突起部Wfを形成する例であるワークWC3を示す図である。すなわち、
図26は、製品中間体WR3に対する支持突起形成部PB3,PB4及び移動規制突起形成部P25~P27の割り付け状態を示す平面図である。
【0143】
製品中間体WR3は、平面視でX方向を長手とする長方形であって、輪郭は
図4Aに示される製品中間体WRと同じである。しかしながら、ワークWC3は、モードBとして移動規制突起部Wfを形成するために、最終前切断線Tb及び最終切断線Taそれぞれの一部にも、左右方向に延びるスリットWmに連接するスリットを形成した最終前切断線T3b及び最終切断線T3aを設定している。具体的には、後側のスリットWmの左端に連接して前方に延びる延長スリットWm3aと、前側のスリットWmの右端に連接して後方に延びる延長スリットWm3bとを形成している。これにより、最終前切断線T3bを切断するためのレーザビームを誘導する経路である誘導切断線Tb1と、最終切断線Ta3を切断するためのレーザビームを誘導する経路である誘導切断線Ta1を、最終前切断線T3b及び最終切断線T3aに斜交して接続するように設定している。
【0144】
統括割付部7は、製品中間体WR3の残材WSに対し、実施例1と同じ手順で支持突起形成部PB3,PB4を割り付ける。
【0145】
延長スリットWm3a,Wm3bを形成することで、製品中間体WR3は、左後の角部及び右前の角部に、左右方向に延びる輪郭部位及び前後方向に延びる輪郭部位が得られる。そこで、統括割付部7は、左後の角部に移動規制突起形成部P25を割り付け、右前の角部に移動規制突起形成部P26を割り付ける。
【0146】
割り付けられた移動規制突起形成部P25は、左後側の角部に形成され製品WP3の後方への移動を規制する移動規制突起形成部P25aと、延長スリットWm3aによって生じる前後方向に延びる輪郭部位に沿って形成され、製品WP3の左方への移動を規制する移動規制突起形成部P25bとを含む。
【0147】
割り付けられた移動規制突起形成部P26は、右前側の角部に形成され製品WP3の前方への移動を規制する移動規制突起形成部P26aと、延長スリットWm3bによって生じる前後方向に延びる輪郭部位に沿って形成され、製品WP3の右方への移動を規制する移動規制突起形成部P26bとを含む。
【0148】
以上のように割り付けられた支持突起形成部PB3,PB4において、形成された支持突起部Weによって製品WP3は板厚分持ち上げられる。また、移動規制突起形成部P25a,P25bの移動規制突起部Wfによって、それぞれ後方,左方への移動が規制される。さらに、移動規制突起形成部P26a,P26bの移動規制突起部Wfによって、それぞれ前方,右方への移動が規制される。
【0149】
従って、延長スリットWm3a,Wm3bを形成し、移動規制突起形成部P25,P26を割り付けることで、残材WSに対して切り出され支持突起形成部PB3,PB4において板厚分持ち上げられた製品WP3は、水平方向に移動することはない。そのため、モードBで移動規制突起形成部P25,P26が割り付けられた製品WP3は、残材WSと共に複合加工機1とは別の場所にある、仕分け装置に移送し、その仕分け装置に付帯する搬送装置によって所定の場所に仕分け搬送することができる。これにより、製品WP3の搬送中も複合加工機1によってレーザ加工などの加工を行うことができ、板金加工システムSTの稼働率が向上する。
【0150】
製品中間体WR3の形状が左右方向に比較的長い、などの場合、左後部及び右前部の対角となる2箇所での移動規制突起形成部P25,P26の割り付けでは、製品WP3の回転移動量が無視できなくなる場合がある。
そのため、後方向及び前方向の移動を規制する移動規制突起形成部P27a,P27bを割り付けてもよい。
例えば、移動規制突起形成部P25aに対する前方の対向位置に移動規制突起形成部P27aを割り付け、移動規制突起形成部P26aに対する後方の対向位置に移動規制突起形成部P27bを割り付ける。
【0151】
これにより、製品WP3の回転移動をより小さくすることができ、製品WP3の搬送作業をより確実に実行できる。
【0152】
図27は、輪郭が左後側及び右後側の角部に内向角部WR4a,WR4bを有している製品WP4となる製品中間体WR4に対し、モードBを適用して移動規制突起部Wfを形成する例であるワークWC4を示す図である。すなわち、
図27は、製品中間体WR4に対する支持突起形成部PB5,PB6及び移動規制突起形成部P28~P31の割り付け状態を示す平面図である。
【0153】
統括割付部7は、製品中間体WR4の残材WSに対し、実施例1と同じ手順で支持突起形成部PB5,PB6を割り付ける。また、統括割付部7は、内向角部WR4a,WR4bにおいて、残材WSに対し、それぞれの直交する2辺に対応して移動規制突起部Wfを形成する移動規制突起形成部P28,P29を割り付ける。
【0154】
割り付けられた移動規制突起形成部P28は、左右方向に延びる後方側のスリットWmに面する残材WSの縁部に形成されて製品WPの後方への移動を規制する移動規制突起形成部P28aと、内向角部WR4aにおける前後方向に延びるスリットに面する残材WSの縁部に形成されて製品WPの左方への移動を規制する移動規制突起形成部P28bとを含む。
【0155】
割り付けられた移動規制突起形成部P29は、左右方向に延びる後方側のスリットWmに面する残材WSの縁部に形成されて製品WPの後方への移動を規制する移動規制突起形成部P29aと、内向角部WR4bにおける前後方向に延びるスリットに面する残材WSの縁部に形成されて製品WPの右方への移動を規制する移動規制突起形成部P29bとを含む。
【0156】
移動規制突起形成部P28,P29に加え、製品WP4の前方への移動を規制するために、統括割付部7は、移動規制突起形成部P28a,P29aに対応する前方のスリットWmに面する残材WSの縁部に、それぞれ移動規制突起形成部P30,P31を割り付ける。
【0157】
以上のように割り付けられた支持突起形成部PB5,PB6において、形成された支持突起部Weによって製品WP4は板厚分持ち上げられ、移動規制突起形成部P28a,P29aの移動規制突起部Wfによって、後方への移動が規制され、移動規制突起形成部P28b,P29bの移動規制突起部Wfによって、それぞれ左方,右方への移動が規制される。さらに、移動規制突起形成部P30,P31の移動規制突起部Wfによって、前方への移動が規制される。
【0158】
従って、ワークWC4において、移動規制突起形成部P28~P31を割り付けることで、残材WSに対して切り出され支持突起形成部PB5,PB6において板厚分持ち上げられた製品WP4が水平方向に移動することはない。そのため、モードBで移動規制突起形成部P28~P31が割り付けられた製品WP4は、残材WSと共に複合加工機1とは別の場所にある仕分け装置に移送し、その仕分け装置に付帯する搬送装置によって所定の場所に仕分け搬送することができる。これにより、製品WP4の搬送中も複合加工機1によってレーザ加工などの加工を行うことができ、板金加工システムSTの稼働率が向上する。
【0159】
(実施例3)
実施例3は、実施例1と同じ板金加工システムSTを用い、モードAの実施例1に対し、支持突起部Weと移動規制突起部Wfとの両方を備える複合突起部Wgを形成する複合突起形成部PWを割り付けるモードCの板金加工方法である。複合突起部Wgは、ダイとパンチとからなる一組の金型による1回の成形で形成される。複合突起形成部PWにおいて形成される複合突起部Wgは、特許文献2に記載された技術によって形成されるものであって、その形状は、
図28A~
図28Cに示される。
【0160】
図28Aは、複合突起形成部PWに関する図であり、
図28A(a)は平面図、
図28A(b)は複合突起形成部PWの記号を説明するための図である。
図28Bは、複合突起形成部PWの前面図である。
図28Cは、
図28AにおけるS28C-S28C位置での断面図である。
【0161】
また、複合突起部Wgを形成する複合突起部形成金型KWの概略は
図28Dに示される。
図28Dは、複合突起形成部PWを形成する複合突起部形成金型KWを説明するための断面図である。説明の便宜上、上下左右前後の各方向を各図に示された矢印で規定する。
【0162】
図28A~
図28Cに示されるように、複合突起部Wgは、残材WSのスリットWmに面する縁部に沿って、ブリッジ状に板厚を越えて上方に突き出された移動規制突起部Wfaと、移動規制突起部Wfaの左右の根元近傍にコイニングによって前方に突出するよう形成された支持突起部We1,We2とを有する。移動規制突起部Wfaの上端部には、コイニングによって前方に突出する突出部Wfa1が形成されている。
【0163】
図28Dに示されるように、移動規制突起部Wfaを形成する複合突起部形成金型KWは、パンチ加工部12の上部タレット122に装着されるブリッジ形成パンチ82と、下部タレット121に装着されるブリッジ形成ダイ81との組である。複合突起部形成金型KWは、以下、単に金型KWと称する場合もある。
【0164】
ブリッジ形成パンチ82は、最下平面となる裾部823から上方に抉れた凹部として、凹頂部821及び凹頂部821の左右それぞれに形成された傾斜部822を有する。傾斜部822は、形成する移動規制突起部Wfaの外面(上面)の一対の傾斜した脚部に対応する部位であり、凹頂部821は最も深く抉られた凹部の底に該当する部位である。凹頂部821の左右方向中央には、成形時の下降ストロークの最終段で下方に突出し、移動規制突起部Wfaの上面を押圧してコイニングを行うコイニングピン824が設けられている。
【0165】
ブリッジ形成ダイ81は、凸部の最高部の平面である頂部811及び頂部811の左右それぞれに形成された傾斜部812と、傾斜部812の左右それぞれの外側に位置する水平面のコイニング肩部813とを有する。
頂部811及び傾斜部812は、形成する移動規制突起部Wfaの内面形状に対応する形状に形成されている。
【0166】
複合突起部形成金型KWは、残材WSに対し、上方側からブリッジ形成パンチ82が下降すると、残材WSの下側に配置されたブリッジ形成ダイ81との間に残材WSを挟み込んで持ち上げる動作を実行する。これにより、ブリッジ状の移動規制突起部Wfaが形成される。2箇所のコイニング肩部813は、ブリッジ形成パンチ82の下降動作の最終段で、残材WSの下面よりも上側に位置するように形成されている。そのため、ブリッジ形成パンチ82の下降動作の最終段において、コイニング肩部813は残材WSにくい込んで圧痕We1a,We2aを形成し、これに伴う金属の塑性流動で支持突起部We1,We2が形成される(
図28A参照)。また、ブリッジ形成パンチ82の下降動作の最終段において、コイニングピン824が凹頂部821よりも下方に突出するようになっており、これにより、コイニングピン824は移動規制突起部Wfaの上面に圧痕Wfa2を形成し、これに伴う金属の塑性流動で突出部Wfa1が形成される(
図28A参照)。
【0167】
このように、複合突起部形成金型KWは、ブリッジ形成パンチ82の最下位置までのフルストロークの下降動作で、ブリッジ形成ダイ81との協働により残材WSに移動規制突起部Wfaと支持突起部We1,We2との両方の突起部を有する複合突起部Wgを形成する。以下の説明において参照する図において、複合突起形成部PWは、
図28A(b)に示される記号PWを用いる。
【0168】
上述のように、複合突起部形成金型KWは、下降動作の最終段で支持突起部We1,We2を形成するので、ブリッジ形成パンチ82を最下位置まで下降させず、下降ストロークを短くして下降を途中で止めることで、
図28E~
図28Fに示されるように移動規制突起部Wfbのみを形成することができる。
図28Fには、理解容易のため、フルストロークの場合に形成される支持突起部We1,We2及び突出部Wfa1に相当する外形線を2点鎖線で併記してある。この場合、形成される移動規制突起部Wfbの高さは、フルストロークで形成される移動規制突起部Wfaよりは低いが、板厚分だけ持ち上げられた製品WP5の水平移動を規制するには充分である。
【0169】
このように、複合突起部形成金型KWを用い、下降ストロークを短くすることによって突出量が小さい移動規制突起部Wfbを有する突起形成部を、統括割付部7は移動規制突起形成部PCとして割り付ける。
【0170】
移動規制突起部Wfbを示す記号は、移動規制突起部Wfaと区別するために
図28Gに示される記号PCを用いる。
【0171】
上述の複合突起部形成金型KWを用いるモードCでの割り付け例を、
図29に示されるワークWC5により説明する。作業者は、板金加工システムSTに対しモードCの割り付けを実行させる場合、パンチ加工部12の下部タレット121及び上部タレット122に、それぞれブリッジ形成ダイ81及びブリッジ形成パンチ82をセットし、統括割付部7に対し、入力部73を介してモードCで割り付けを実行するよう予め指定しておく。
【0172】
モードCの設定は、統括割付部7が、パンチ加工部12に、複合突起部Wgを形成する複合突起部形成金型KWがセットされているか否かを判定し、セットされていない場合はモードA又はモードBを実行し、セットされている場合はモードCを実行するよう自動化しておいてもよい。
【0173】
図29に示されるワークWC5において、製品中間体WR5は、左右方向を長手とする細長形状を呈する。製品中間体WR5において、左端部となる最終切断線T5aから右方へ所定の距離L5a隔てた位置、及び右端部となる最終前切断線T5bから左方へ所定の距離L5b隔てた位置には、それぞれ割付可能な長さを有し前後方向に延びる前後スリットWm5a,Wm5bが形成されている。
【0174】
図29に示されるように、モードCにおいて、統括割付部7は、モードAである実施例1と同じ手順で、ワークWC5の残材となるWSに対し、複合突起形成部PWとして複合突起形成部PW1~PW5を割り付ける。
【0175】
また、統括割付部7は、残材WSの、前後スリットWm5a,Wm5bに面する縁部に、距離L5a及び距離L5bが予め設定した閾値未満の場合には複合突起形成部ではなく移動規制突起形成部PC1,PC2を割り付ける。また、統括割付部7は、距離L5a及び距離L5bが閾値である距離Laを越える場合には、複合突起形成部PW6,PW7を割り付ける(
図29に括弧付きで記載)。
図29では、移動規制突起形成部PC1,PC2を割り付けた例が示されている。
【0176】
距離L5a及び距離L5bの設定方法の考え方は、実施例1で説明した距離Laの設定方法の考え方と同様である。すなわち、最終切断線T5a及び最終前切断線T5bから閾値となる距離La以下の距離にある前後スリットに対応して複合突起部Wgを形成すると、最終切断線T5a及び最終前切断線T5bが切断前であることから製品中間体WR5を無理に変形させて持ち上げることになる。その結果、得られる製品に塑性変形が残存して後工程の加工不良が生じる虞があることによる。従って、ワークWC5の材質及び形状などに基づく曲げ剛性に応じて、閾値とする距離Laを予め設定しておく。この距離Laは、実施例1において
図4Aに関連する
図6で示され説明した表2の値が適用できる。表2において、距離Laは残存輪郭線Tzからの距離、と記載されているが、このモードCにおいては、最終切断線T5a及び最終前切断線T5bからの距離Laと読み替える。
【0177】
距離Laは、実施例1及び上述において、製品中間体WRの左右方向の距離として説明したが、曲げ剛性に関連する数値であるから、製品中間体の形状によっては、例えば前後方向に設定することができる。具体的には、実施例2(モードB)で説明した
図26に示されるワークWC3に対し、モードCを適用する場合がある。
図26に示されるように、最終切断線T3aから延長スリットWm3aに対応して割り付ける位置までの前後方向距離を距離L3aとする。
この距離L3aが、閾値である距離Laを越えるように割付設定できない場合、すなわち、距離La以下でしか割り付けられない場合に、移動規制突起部Wfbを形成し、距離Laを越えて割り付けできる場合に複合突起部Wgを形成してもよい。
【0178】
すなわち、
図29において、割り付け位置の最終切断線T5aの端部及び最終前切断線T5bの端部からの左右方向の距離L5a及びL5bが閾値となる距離La以下の場合には、複合突起形成部PW6及びPW7ではなく、それぞれ移動規制突起形成部PC1及びPC2を割り付ける。また、距離Laを越える場合には、それぞれ複合突起形成部PW1及びPW2を割り付ける。もちろん距離Laを越える場合にそれぞれ移動規制突起形成部PC1及びPC2を割り付けてもよい。
【0179】
図26に示されるワークWC3へのモードCの適用においては、割り付け位置の例えば最終切断線T3aの端部からの前後方向の距離L3aが、閾値となる距離La以下の場合には、複合突起形成部PWではなく、移制規制突起形成部PCを割り付ける。また、距離Laを越える場合には、複合突起形成部PWを割り付ける。もちろん距離Laを越える場合に移動規制突起形成部PCを割り付けてもよい。
【0180】
以上のように割り付けられた複合突起形成部PW1~PW5において、形成された支持突起部We1,We2によって製品WP5は板厚分持ち上げられ、移動規制突起部Wfaによって、前後方向への移動が規制される。そして、移動規制突起形成部PC1,PC2の移動規制突起部Wfbによって、製品WP5はそれぞれ左方,右方への移動が規制される。また、移動規制突起形成部PC1,PC2の替わりに複合突起形成部PW6,PW7を割り付けた場合は、複合突起形成部PW6,PW7の複合突起部Wgにより、製品WP5は、板厚分だけ用いられると共にそれぞれ左方,右方への移動が規制される。
【0181】
従って、複合突起形成部PW1~PW7、或いは、複合突起形成部PW1~PW5及び移動規制突起形成部PC1,PC2を割り付けることで、残材WSに対して板厚分持ち上げられた製品WP5が水平方向に移動することはない。そのため、モードCで割り付けられた製品WP5は、残材WSと共に複合加工機1とは別の場所にある、搬送装置を有する仕分け装置に移送し、その仕分け装置に付帯した搬送装置によって所定の場所に仕分け搬送することができる。これにより、製品WP5の搬送中も複合加工機1によってレーザ加工などの加工を行うことができ、板金加工システムSTの稼働率が向上する。
【0182】
ところで、
図26を参照して説明したようなX方向を長手とする矩形のワークWC3から製品WP3を得る加工方法において、最終切断線T3aの切断は、予め形成した延長スリットWm3aに接続するように行う。この場合、製品WP3の短辺の一部となる延長スリットWm3aと、短辺の残りとなる最終切断線T3aで切断した部位との境界位置に、X方向のわずかな段差が生じる可能性がある。この段差は、程度によっては製品WP3の品位及び外形寸法に影響を及ぼし不具合となる。この段差は、製品WP3の他方の短辺における延長スリットWm3bと最終前切断線T3bで切断した部位との境界位置にも生じ得る。
【0183】
そこで、この段差が生じない加工方法について、
図30A~
図30D,
図31,及び
図32を参照して説明する。
図30Aは、矩形の輪郭線Tを有する製品WP6となる製品中間体WR6を、一対のスリットWm及び拡張スリットWm6a,Wm6bをレーザ加工によって形成して得た状態を示している。スリットWmは、輪郭線Tに沿うように左右方向に延び前後方向に平行に離隔して一対形成する。拡張スリットWm6aは、前側のスリットWmの、輪郭線Tの左端となる頂点Tp1を起点として斜め左後方に直線状に延びるよう形成する。拡張スリットWm6bは、後側のスリットWmの、輪郭線Tの右端となる頂点Tp2を起点として斜め右前方に直線状に延びるよう形成する。これらのスリットを形成するレーザ加工、及び以下に説明する割付加工は、統括割付部7の制御の下で実行される。
【0184】
拡張スリットWm6aの、長さLWa及び最終切断線T6aとなす角度θaは、限定されない。残材WSにおける、拡張スリットWm6aと輪郭線Tでもある最終切断線T6aとで囲まれハッチングが付与された概ね三角形の移動規制領域AR6aは、
図30C及び
図31を参照して後述するように、支持突起形成部PB9によって持ち上げられる移動規制部WSeとなる部位である。従って、長さLWa及び角度θaは、ワークWC6の材質及び製品WP6のレイアウトなどに応じ、支持突起形成部PB9によって移動規制領域AR6aが良好に持ち上げられるように設定するとよい。例えば、角度θaを30~60°、長さLWaは最終切断線T6aの半分以上に設定できる。
【0185】
拡張スリットWm6bの、長さLWb及び最終前切断線T6bとなす角度θbは、限定されず、拡張スリットWm6aとは別に独立して設定してよい。残材WSにおける、拡張スリットWm6bと輪郭線Tでもある最終前切断線T6bとで囲まれハッチングが付与された概ね三角形の移動規制領域AR6bは、
図30C及び
図31を参照して後述するように、支持突起形成部PB10によって持ち上げられる移動規制部WSfとなる部位である。従って、長さLWb及び角度θbは、ワークWC6の材質及び製品WP6のレイアウトなどに応じ、支持突起形成部PB10によって移動規制領域AR6bが良好に持ち上げられるように設定するとよい。例えば、角度θbを30~60°、長さLWbは最終前切断線T6bの半分以上に設定できる。
【0186】
図30Aに示されるように製品中間体WR6を形成したら、
図30Bに示されるように、製品中間体WR6に対し支持突起形成部PB7,PB8及び移動規制突起形成部P32,P33を、割り付けて形成する。支持突起形成部PB7は、製品中間体WR6の前縁と後縁との左右方向の同じ位置に前後一対形成される。同様に支持突起形成部PB8は、支持突起形成部PB7の右方に離隔し、製品中間体WR6の前縁と後縁との左右方向の同じ位置に前後一対形成される。移動規制突起形成部P32は、製品中間体WR6の前縁と後縁との左右方向の同じ位置に支持突起形成部PB7に近接して一対形成される。同様に移動規制突起形成部P33は、支持突起形成部PB8に近接して、製品中間体WR6の前縁と後縁との左右方向の同じ位置に一対形成される。
【0187】
また、拡張スリットWm6aに対しても、移動規制領域AR6aを持ち上げるための支持突起形成部PB9を形成する。拡張スリットWm6bに対しても、移動規制領域AR6bを持ち上げるための支持突起形成部PB10を形成する。支持突起形成部PB7~PB10が形成されることで、少なくともそれらの位置において製品中間体WR6は残材WSよりも概ね板厚分だけ持ち上げられる。
【0188】
次いで、最終前切断線T6b及び最終切断線T6aを、この順にレーザビームで切断し、
図30Cに示されるように、ワークWC6から輪郭線Tで切り取られた製品WP6を得る。製品WP6は、支持突起形成部PB7,PB8によって概ね板厚分だけ持ち上げられた状態である。また、製品WP6は、前方への移動が前縁に対応して形成された移動規制突起形成部P32,P33によって規制され、後方への移動が後縁に対応して形成された移動規制突起形成部P32,P33によって規制される。
【0189】
一方、拡張スリットWm6aについては、
図31にも示されるように、移動規制領域AR6aに対応した部分が、最終切断線T6aの切断によって移動規制部WSeとなり、支持突起形成部PB9によって持ち上げられて製品WP6の左端面と対向する位置にある。そのため、製品WP6は、左方への移動が移動規制部WSeによって規制される。また、拡張スリットWm6bについては
図31に不図示であるが、同様に、移動規制領域AR6bに対応した部分が、最終前切断線T6bの切断によって移動規制部WSfとなり、支持突起形成部PB10によって持ち上げられて製品WP6の右端面と対向する位置にある。そのため、製品WP6は、右方への移動が移動規制部WSfによって規制される。
【0190】
上述のように、製品WP6は、前後左右方向の移動が規制されるので水平方向に移動することはない。そのため、製品WP6は、残材WSと共に複合加工機1とは別の場所にある、搬送装置を有する仕分け装置に移送し、その仕分け装置に付帯した搬送装置によって所定の場所に仕分け搬送することができる。これにより、製品WP6の搬送中も複合加工機1によってレーザ加工などの加工を行うことができ、板金加工システムSTの稼働率が向上する。
【0191】
また、この加工方法では、製品WP6を切り出す際に、製品WP6の輪郭線Tの一部とはならない別の拡張スリットWm6a,Wm6bを形成する。そのため、最終前切断線T6b及び最終切断線T6aは、それぞれがレーザビームによって一回で連続して切断できるので、製品WP6の短辺となる左右の端面に段差が形成されることはなく、段差による不具合は生じない。
【0192】
製品WP6は、
図30Bに示される支持突起形成部PB7~PB10及び移動規制突起形成部P32,P33の替わりに、複合突起形成部PWによって水平移動を規制してもよい。
図30Dは、製品中間体WR6に対して、複合突起形成部PW8及びPW9をそれぞれ前後一対ずつ形成すると共に、拡張スリットWm6aに対しては複合突起形成部PW10を形成し、拡張スリットWm6bに対しては複合突起形成部PW11を形成した例を示している。
【0193】
この場合も、
図30Dに示される最終前切断線T6b及び最終切断線T6aをレーザビームによって切断することで、製品WP6が切り出される。そして、製品WP6は、前方への移動が前縁の複合突起形成部PW8,PW9によって規制され、後方への移動が後縁の複合突起形成部PW8,PW9によって規制される。
【0194】
また、複合突起形成部PW10によって、移動規制領域AR6aに対応する部位として移動規制部WSeが持ち上げられ、この持ち上げられた移動規制部WSeによって製品WP6は左方への移動が規制される。また、複合突起形成部PW11によって、移動規制領域AR6bに対応した部位として移動規制部WSfが持ち上げられ、この持ち上げられた移動規制部WSfによって製品WP6は右方への移動が規制される。
【0195】
このように、製品WP6は、前後左右方向の移動が規制されるので水平方向に移動することはない。そのため、製品WP6は、残材WSと共に複合加工機1とは別の場所にある、搬送装置を有する仕分け装置に移送し、その仕分け装置に付帯した搬送装置によって所定の場所に仕分け搬送することができる。これにより、製品WP6の搬送中も複合加工機1によってレーザ加工などの加工を行うことができ、板金加工システムSTの稼働率が向上する。
【0196】
拡張スリットWm6a,Wm6bそれぞれの角度θa,θbが小さい場合、移動規制部WSe,WSfの幅が小さく、製品WP6が左右に移動した際に押されてそれぞれ左方及び右方に変形してしまう虞がある。これに対しては、
図30Dに示されるように、複合突起形成部PW10,PW11を形成することで、移動規制部WSe,WSfの持ち上げのみならず、左方及び右方への変形移動を規制でき、確実に製品WP6の水平移動を規制することができる。このように、複合突起形成部PW10,PW11を形成することにより、拡張スリットWm6a,Wm6bによって形成される移動規制部WSe,WSfの占有面積を少なくすることができ、製品WPの割り付け効率を向上できる。
【0197】
複合突起形成部PW10,PW11は、
図28Dからも明らかなように、形成された移動規制突起部Wfaが、持ち上げた製品WP6よりも上方に突出する。そのため、例えば、拡張スリットWm6aに対して形成する複合突起形成部PW10の割り付け位置は、形成後に施す最終切断線T6aの切断で移動するレーザ加工ヘッドのノズル132の先端部132aと干渉しないよう余裕をもって設定される。
【0198】
具体的には、
図32に示されるように、ノズル132の先端部132aの半径を半径Rnとすると、最終切断線T6aと複合突起形成部PW10との間の左右方向の距離LWcを、半径Rnよりも余裕をもって大きく設定する。
【0199】
拡張スリットWm6a,Wm6bは、直線状のものに限定されない。直線状の部分と曲線状の部分とが混在したもの、或いは曲線状の部分のみで形成されたものであってもよい。
【0200】
本発明の実施例は、上述した構成に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において変形例としてもよい。
【0201】
板金の材質は鉄に限定されず、アルミニウムなど他の材質であってもよい。
板金の形状として、矩形としてみなせる例を説明したが、板金の形状は限定されない。モードAでは、いずれの形状においても、板金に第1の方向を設定して輪郭線を割り付ける。次いで、輪郭線の第1の方向の両端部を最終切断線とし、輪郭線に囲まれた部分である製品中間体を、等分布荷重の両支持単純梁としてたわみ量を求める。次いで、得られたたわみ量に基づいて支持突起部Weを形成する位置を割り付ける、という手順であればよい。これにより、製品が複雑な形状を有していても、支持突起部を形成する位置の割付を自動で実行できる。
【0202】
統括割付部7に、パンチ加工部12へのハーフシャー加工用金型及び複合突起部形成金型KWのセット有無,製品WPの形状(輪郭),及び切り出した製品WPの水平移動を規制する必要の有無、などに応じてモードA~Cのいずれを選択させるかは、加工の度に作業者が指示してもよいし、予め記憶部72に手順を記憶させておいてもよい。
【0203】
上述のように、本発明の第1の一態様は、コンピュータが、板金Wから切り出す製品WPが載るよう板金Wの残材WSに形成する支持突起部Weの加工位置を割り付けるときに、板金Wに予め割り付けた製品WPの輪郭線Tに囲まれた部分を、第1の方向に延びる等分布荷重の両端単純支持梁とみなしてその部分のたわみ量δを求め、得られたたわみ量δが第1の所定値δaを越えない等分布荷重の両端単純支持梁の最大許容長さLgaに基づいて、支持突起部Weの加工位置の割り付け間隔を設定する加工位置割付方法である。
【0204】
これにより、支持突起部形成金型の加工位置の割り付けが容易になる、という効果が得られる。
【0205】
上記第1の一態様を、製品WPに第1の方向と直交する第2の方向に延びる延出部TAcがあるときに、延出部TAcを等分布荷重の片持ち梁とみなして延出部TAcの第1たわみ量δ2を求め、得られた延出部TAcの第1たわみ量δ2が第2の所定値を越えない等分布荷重の片持ち梁の最大許容長さに基づいて、延出部TAcの先端縁部TAc1に支持突起部Weの加工位置を割り付けるか否かを判定するようにしてもよい。
【0206】
これにより、製品WPがY方向に延びる延出部を有していても、支持突起部形成金型の加工位置の割り付けが容易である、という効果が得られる。
【0207】
さらに、延出部TAcの先端縁部TAc1に支持突起部Weの加工位置を割り付けると判定したときに、延出部TAcを第2の方向に延びる等分布荷重の両端単純支持梁とみなして延出部TAcの第2たわみ量を求め、得られた延出部TAcの第2たわみ量が第3の所定値を越えない等分布荷重の両端単純支持梁の最大許容長さに基づいて、延出部TAcの側縁部TAc2,TAc3に支持突起部Weを割り付けるか否かを判定するようにしてもよい。
【0208】
これにより、延出部TAcが長い場合にも、切り出す製品WPが残材WSの下に潜り込むことを防止できる、という効果が得られる。
【0209】
上記第1の一態様を、製品WPに第1の方向と直交する第2の方向に切り込まれた切込み部Tadがあるときに、切込み部TAdに対応する残材WSの延出部である残材延出部WSdを等分布荷重の片持ち梁とみなして残材延出部WSdの第1たわみ量δ2を求め、得られた残材延出部WSdの第1たわみ量δ2が第2の所定値を越えない等分布荷重の片持ち梁の最大許容長さに基づいて、残材延出部WSdの先端部分に支持突起部Weの加工位置を割り付けるか否かを判定するようにしてもよい。
【0210】
これにより、製品WPがY方向に切り込まれた切込み部を有していても、支持突起部形成金型の加工位置の割り付けが容易である、という効果が得られる。
【0211】
さらに、残材延出部WSdの先端部分に支持突起部Weの加工位置を割り付けると判定したときに、残材延出部WSdを第2の方向に延びる等分布荷重の両端単純支持梁とみなして残材延出部WSdの第2たわみ量を求め、得られた残材延出部WSdの第2たわみ量が第3の所定値を越えない等分布荷重の両端単純支持梁の最大許容長さに基づいて、切込み部TAdの側縁部TAd2,TAd3に支持突起部Weを割り付けるか否かを判定するようにしてもよい。
【0212】
これにより、残材延出部WSdが長い場合にも、切り出す製品WPが残材WSの下に潜り込むことを防止できる、という効果が得られる。
【0213】
また、上記第1の一態様を、支持突起部Weを形成する支持突起部形成金型K56Aの形状に応じて、支持突起部Weの形成において板金Wの平坦部分に対応させるべき金型ガイド領域ARGを設定し、輪郭線Tに囲まれた領域に厚さ方向に突出する突出成形部WPcがある場合に、突出成形部WPcと、割り付けた加工位置における金型ガイド領域ARGとの干渉の有無を判定し、干渉有と判定したときに、加工位置の割り付け位置を干渉しない位置にずらす補正を実行するようにしてもよい。
【0214】
これにより、製品WPに厚さ方向に突出する突出成形部WPcがあっても、支持突起部形成金型の加工位置の割り付けが容易である、という効果が得られる。
【0215】
また、上記第1の一態様を、支持突起部Weを形成する支持突起部形成金型K56Aの形状に応じて、板金Wの非開口部分に対応させるべきバウンディングボックスARBを設定し、輪郭線Tに囲まれた領域に開口する孔WPdがある場合に、孔WPdと、割り付けられた加工位置におけるバウンディングボックスARBとの干渉の有無を判定し、干渉有と判定したときに、加工位置の割り付け位置を干渉しない位置にずらす補正を実行するようにしてもよい。
【0216】
これにより、製品WPに貫通孔である孔WPdがあっても、支持突起部形成金型の加工位置の割り付けが容易である、という効果が得られる。
【0217】
また、上記第1の一態様を、支持突起部Weを形成する支持突起部形成金型K56Aの形状に応じて、板金Wの非開口部分に対応させるべきバウンディングボックスARBを設定し、輪郭線Tに囲まれた領域に、第1の方向に延びる第2延出部WPeがある場合に、第2延出部WPeと、割り付けられた加工位置におけるバウンディングボックスARBとの干渉の有無を判定し、干渉有と判定したときに、加工位置の割り付け位置を干渉しない位置にずらす補正を実行するようにしてもよい。
【0218】
これにより、製品WPに第1の方向に延びる第2延出部であるX方向延出部WPeがあっても、支持突起部形成金型の加工位置の割り付けが容易である、という効果が得られる。
【0219】
また、本発明の第2の一態様は、コンピュータ7が、板金Wから切り出す製品WPの輪郭線Tを板金Wに割り付けた後、切り出す製品WPが載るよう板金Wの残材WSに形成する支持突起部Weの加工位置の割り付けを、輪郭線Tに囲まれた部分を、第1の方向に延びる等分布荷重の両端単純支持梁とみなしてその部分のたわみ量δを求め、得られたたわみ量δが第1の所定値δaを越えない等分布荷重の両端単純支持梁の最大許容長さLgaに基づいて、支持突起部Weの加工位置の割り付け間隔を設定することで行い、加工機1が、輪郭線Tにおける、第1の方向の両端部側に予め設定した一対の残存輪郭線Tz以外の部分を切断し、割り付けた加工位置に支持突起部Weを形成した後、一対の残存輪郭線Tzを切断して製品WPを板金Wから切り出す板金加工方法である。
【0220】
これにより、板金加工において支持突起部形成金型の加工位置の割り付けが容易になる、という効果が得られる。
【0221】
また、上記第1の一態様を、残材WSの、輪郭線Tにおける第1の方向の両端部それぞれに対応する部位に、切り出す製品WPの第1の方向の移動を規制する第1移動規制突起部Wf1の加工位置を割り付けると共に、残材WSの、輪郭線Tにおける第1の方向に直交する第2の方向の両端部それぞれに対応する部位に、切り出す製品WPの第2の方向の移動を規制する第2移動規制突起部Wf2の加工位置を割り付けるようにしてもよい。
【0222】
これにより、切り出した製品WPが残材WSに沿って移動しないので、製品WPの残材WSを伴う搬送が確実に実行できる。
【0223】
さらに、輪郭線Tの形状が第1の方向を長手とする矩形の場合に、第1の方向の両端部それぞれにおいて、第1移動規制突起部Wf1の加工位置と第2移動規制突起部Wf2の加工位置とを、矩形の四頂点のうちの同じ頂点に近くなる位置に割り付けるようにしてもよい。
【0224】
これにより、切り出した製品WPの残材WSに沿う移動を良好の防止できる。
【0225】
また、本発明の第3の一態様は、コンピュータが、板金Wから切り出す製品WPが板金Wの残材WSに載るように残材WSに形成する支持突起部Weと、支持突起部Weに載った製品WPが残材WSに沿って移動するのを規制するように残材WSに形成する移動規制突起部Wfとの加工位置を割り付けるときに、支持突起部Weと移動規制突起部Wfとを、近接位置に一回の加工動作で形成する金型KWを用いて形成するものとし、板金Wに予め割り付けた製品WPの輪郭線Tに囲まれた部分を、第1の方向に延びる等分布荷重の両端単純支持梁とみなして前記部分のたわみ量δを求め、得られたたわみ量δが第1の所定値δaを越えない等分布荷重の両端単純支持梁の最大許容長さLgaに基づいて、支持突起部We及び移動規制突起部Wfの加工位置の割り付け間隔を設定する加工位置割付方法である。
【0226】
これにより、支持突起部We及び移動規制突起部Wfを形成する複合突起部形成金型KWの加工位置の割り付けが容易になる、という効果が得られる。
【0227】
また、上記第3の一態様を、金型KWを、一回の加工動作におけるパンチの下降ストロークを短くすることで移動規制突起部Wfaのみを形成できるものとし、残材WSの、製品WPの輪郭線Tにおける第1の方向の両端部それぞれに対応する部位に、切り出す製品WPの第1の方向の移動を規制する、金型KWの下降ストロークを短くして形成する移動規制突起部Wfaの加工位置を割り付けるようにしてもよい。
【0228】
これにより、製品WPを第1方向の端部で無理に持ち上げることがないため、製品WPに変形が生じにくく、後加工での不具合発生が防止できる。
【0229】
また、上記第1の一態様を、輪郭線Tの形状が第1の方向を長手とする矩形の場合に、残材WSに、矩形の頂点を起点として第1の方向に直交する輪郭線Tから離れる方向に延びる拡張スリットWm6aを形成し、拡張スリットWm6aと輪郭線Tとの間の部位である移動規制部WSeが載るように移動規制部WSeの外側の残材WSに支持突起部Weの加工位置を割り付けるようにしてもよい。
【0230】
これにより、製品WPの第1の方向への移動を、支持突起部Weで持ち上げられた移動規制部WSeによって規制できるので、製品WPの短辺を一回のレーザ加工で切り出すことができ、短辺の端面に段差が生じない。
【0231】
また、上記第3の一態様を、輪郭線Tの形状が第1の方向を長手とする矩形の場合に、残材WSに、矩形の頂点Tp1を起点として前記第1の方向に直交する輪郭線Tから離れる方向に延びる拡張スリットWm6aを形成し、拡張スリットWm6aと輪郭線Tとの間の部位である移動規制部WSeが載り、かつ移動規制部WSeが第1の方向に変形して移動するのを規制するように移動規制部WSeの外側の残材WSに支持突起部We及び移動規制突起部Wfの加工位置の割り付け間隔を設定する請求項12記載の加工位置割付方法。
【0232】
これにより、製品WPの第1の方向への移動を、支持突起部Weで持ち上げられた移動規制部WSeによって規制でき、製品WPの短辺を一回のレーザ加工で切り出すことができ、短辺の端面に段差が生じない。また、支持突起部Weの幅が狭い場合にも支持突起部Weの第1の方向への変形移動を規制できるので、拡張スリットWm6aで形成される移動規制部WSeの占有面積を少なくすることができ、製品WPの割り付け効率を向上できる。
【符号の説明】
【0233】
1 複合加工機
11 ワークテーブル
12 パンチ加工部
121 下部タレット
122 上部タレット
13 レーザ加工部
131 レーザ加工ヘッド
132 ノズル
132a 先端部
2 制御装置
21 制御部
3 搬送装置
31 アーム
32 吸着部
321 吸盤部
5,5A 支持突起形成ダイ
51,5A1 ダイケース
51a コイニングピン
5A2 押上ピン
52 ダイエジェクタ
52a,5A1a 上面
52b 貫通孔
52c 押上部
6,6A 支持突起形成パンチ
6Aa 押さえ突起
6A1 コイニングピン
7 統括割付部(コンピュータ)
71 中央処理装置(CPU)
711 割付部
712 割付個数取得部
712a たわみ量算出部
712b 個数算出部
712c 条件取得部
713 干渉領域検索部
72 記憶部
720 たわみ量データ格納部
721 距離Laデータ格納部
722 最大ピッチLbデータ格納部
723 材料物性データ格納部
724 金型データ格納部
725 金型ガイド情報格納部
726 バウンディングボックス情報格納部
727 製品情報格納部
73 入力部
74 出力部
81 ブリッジ形成ダイ
811 頂部
812 傾斜部
813 コイニング肩部
82 ブリッジ形成パンチ
821 凹頂部
822 傾斜部
823 裾部
824 コイニングピン
ARB バウンディングボックス
ARG 金型ガイド領域
AR6a,AR6b 移動規制領域
CL5,CL5A 軸線
KD ダイ金型
KP パンチ金型
K56,K56A 支持突起部形成金型
KW 複合突起部形成金型
mL1,mL2,La,Lb1,d,L5a,L5b,L3a 距離
Lb 最大ピッチ
Lc,Ld 長さ
Lca 割付不要最大長さ
LS レーザビーム
Lg,Lg1 長さ
Lga 最大許容長さ
Lx1~Lx3 距離
Lw 幅
LWa,LWb 長さ
LWc 距離
P,P1~P12,PB1~PB10 支持突起形成部
P21~P33,P21a~P29a,P21b~P29b,PC,PC1,PC2 移動規制突起形成部
PW,PW1~PW11 複合突起形成部
Pr 位置
Ps 支持突起加工中心
Q,Q2 形成数
Qa 個数
Rn 半径
SCX 検索範囲
ST 板金加工システム
T,TA,TB,TC,TCb1~TCb3 輪郭線
Ta,TBa,T2a,T3a,T5a,T6a 最終切断線
Ta1 誘導切断線
Tb,TBb,T2b,T3b,T5b,T6b 最終前切断線
Tb1 誘導切断線
TAc 延出部
TAc1 先端縁部
TAc2,TAc3 側縁部
TAd 切込み部
Tp1,Tp2 頂点
Tz 残存輪郭線
t 板厚
W,WB,WC2,WC3~WC6 ワーク(板金)
Wd 圧痕
We,We1,We2 支持突起部
We1a,We2a 圧痕
Wf,Wfa,Wfb 移動規制突起部
Wf1 第1移動規制突起部
Wf2 第2移動規制突起部
Wfa1 突出部
Wfa2 圧痕
WT6a,WT6b
Wg 複合突起部
Wm スリット
Wm3a,Wm3b 延長スリット
Wm5a,Wm5b 前後スリット
Wm6a,Wm6b 拡張スリット
WT6a 最終切断部
WT6b 最終前切断部
WP,WPA,WP2~WP6 製品
WPa,WPb,WPd,WPf 孔
WPc,WPg 突出成形部
WPe X方向延出部(第2延出部)
WPt 端面
WR,WRA,WRB,WR2~WR6 製品中間体
WRc 中間体延出部
WR2a~WR2d,WR4a,WR4b 内向角部
WS 残材(スケルトン)
WSd 残材延出部
WSe,WSf 移動規制部
X 製品長さ
Xa,Xb 幅
δ たわみ量
δ2 たわみ量(第1たわみ量)
δa,δ2a 許容上限値
φKD 外径
θa,θb 角度