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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024077605
(43)【公開日】2024-06-07
(54)【発明の名称】ノブの取り付け構造及び電子機器
(51)【国際特許分類】
   G05G 1/08 20060101AFI20240531BHJP
   F16B 21/04 20060101ALI20240531BHJP
   G05G 1/10 20060101ALI20240531BHJP
   H01H 3/08 20060101ALI20240531BHJP
【FI】
G05G1/08 D
F16B21/04 Z
G05G1/10 B
H01H3/08 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023192765
(22)【出願日】2023-11-13
(31)【優先権主張番号】P 2022189284
(32)【優先日】2022-11-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】308036402
【氏名又は名称】株式会社JVCケンウッド
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100170575
【弁理士】
【氏名又は名称】森 太士
(72)【発明者】
【氏名】小島 豊
【テーマコード(参考)】
3J037
3J070
【Fターム(参考)】
3J037BA02
3J037BB01
3J037BB07
3J037DB02
3J070AA14
3J070BA51
3J070BA66
3J070BA71
3J070BA81
3J070CA26
3J070CB01
3J070CB37
3J070CC71
3J070DA31
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ノブが回転式電子部品のシャフトから抜けにくく、ノブが押し込まれても回転式電子部品の取り付け部分に不具合が生じにくいノブの取り付け構造を提供する。
【解決手段】板状部材1aの貫通孔12aと、シャフト31が貫通孔12aから第1側に突出して板状部材1aの第1側とは反対側の第2側に取り付けられた回転式電子部品3と、板状部材1aに、シャフト31の軸線CL1を中心とする円弧状又は円環状に形成された爪用スリット12bと、爪用スリット12bの外側である外岸部22の第2側の面12e2に引っ掛かる突出部2b2を含んで板状部材1aに係合するよう形成された爪部2bを有するノブ2と、爪用スリット12bに対する内側の内島部21と外岸部22とを連結するアーチ部12dとを備える。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状部材と、
前記板状部材に設けられた貫通孔と、
シャフトを有し、前記シャフトが、前記貫通孔から前記板状部材の第1の側に突出するように前記板状部材の前記第1の側とは反対側の第2の側に取り付けられた回転式電子部品と、
前記板状部材に、前記シャフトの軸線を中心とする円弧状又は円環状に形成された爪用スリットと、
前記シャフトに対し前記第1の側から取り付けられ、前記爪用スリットに挿通する基部及び前記基部の先端において前記板状部材の前記爪用スリットの外側である外岸部における前記第2の側の面に引っ掛かる突出部を含んで前記板状部材に係合するよう形成された爪部を有するノブと、
前記爪用スリットに対する内側の内島部と、前記外岸部とを連結するアーチ部と、
を備えたノブの取り付け構造。
【請求項2】
前記爪用スリットにおいて、前記外岸部の内周壁から内方に突出する周リブ状の係合鍔部を有し、
前記爪部の前記突出部が、前記係合鍔部に引っ掛かって前記ノブの前記シャフトからの抜けが防止される請求項1記載のノブの取り付け構造。
【請求項3】
前記軸線の方向から見たときに、前記アーチ部が形成されている部分の前記係合鍔部は欠落しており、前記アーチ部の周方向の幅は前記突出部の幅よりも狭い請求項2記載のノブの取り付け構造。
【請求項4】
前記爪用スリットには、前記アーチ部が前記突出部の幅よりも大きい角度範囲で形成されてなく、かつ前記爪用スリットの幅が前記突出部を通過可能とされた基準開口部が設けられている請求項3記載のノブの取り付け構造。
【請求項5】
前記爪用スリットは前記円弧状に形成され、前記爪用スリットの形成範囲によって、前記ノブの回動可能範囲が規定されている請求項4記載のノブの取り付け構造。
【請求項6】
筐体と、
請求項1~5のいずれか1項に記載のノブの取り付け構造と、
を備え、
前記ノブの取り付け構造における板状部材が前記筐体であり、
前記爪用スリットが円弧状に形成されている場合に前記回転式電子部品はロータリーボリューム又はロータリースイッチであり、前記爪用スリットが円環状に形成されている場合に前記回転式電子部品はロータリーエンコーダである電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノブの取り付け構造及び電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に、ノブを、ロータリーボリュームなどの回転式電子部品のシャフトに取り付ける構造が記載されている。特許文献1に記載された構造は、ノブに、操作板の取り付け孔の反対面に係合する爪部を設けることでノブがシャフトから抜けるのを防止する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001-126589号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されているノブの取り付け構造は、回転式電子部品が、操作板の背後に配置された別の部材に取り付けられているため、奥行が大きくなる。
そこで、同様の構造をコンパクトに形成すべく、回転式電子部品を操作板に取り付けようとした場合、操作板における回転式電子部品の取り付け部分を囲むように、ノブの爪部の通り道となる円弧状のスリットを形成する必要がある。
【0005】
この構成において、ノブを回す角度が大きい場合には、スリットの形成角度が大きくなり、回転式電子部品の取り付け部分は、わずかな角度範囲でのみ母材と連結した状態になるため、曲げ剛性が低下してしまう。
そのため、ノブを押し込む外力の大きさによっては、回転式電子部品の取り付け部分が破損するなどの不具合が生じる虞がある。
【0006】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、コンパクトに形成でき、ノブが回転式電子部品のシャフトから抜けにくく、ノブが押し込まれても回転式電子部品の取り付け部分に不具合が生じにくいノブの取り付け構造及び電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明は次の1)、2)の構成を有する。
1) 板状部材と、
前記板状部材に設けられた貫通孔と、
シャフトを有し、前記シャフトが、前記貫通孔から前記板状部材の第1の側に突出するように前記板状部材の前記第1の側とは反対側の第2の側に取り付けられた回転式電子部品と、
前記板状部材に、前記シャフトの軸線を中心とする円弧状又は円環状に形成された爪用スリットと、
前記シャフトに対し前記第1の側から取り付けられ、前記爪用スリットに挿通する基部及び前記基部の先端において前記板状部材の前記爪用スリットの外側である外岸部における前記第2の側の面に引っ掛かる突出部を含んで前記板状部材に係合するよう形成された爪部を有するノブと、
前記爪用スリットに対する内側の内島部と、前記外岸部とを連結するアーチ部と、
を備えたノブの取り付け構造である。
2) 筐体と、
1)に記載のノブの取り付け構造と、
を備え、
前記ノブの取り付け構造における板状部材が前記筐体であり、
前記爪用スリットが円弧状に形成されている場合に前記回転式電子部品はロータリーボリューム又はロータリースイッチであり、前記爪用スリットが円環状に形成されている場合に前記回転式電子部品はロータリーエンコーダである電子機器である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様によれば、コンパクトに形成でき、ノブが回転式電子部品のシャフトから抜けにくく、ノブが押し込まれても回転式電子部品の取り付け部分に不具合が生じにくい、という効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本発明の実施形態の第1態様に係る電子機器91を示す斜視図である。
図2図2は、電子機器91のノブ2の近傍を示す部分前面図である。
図3A図3Aは、ノブ2の側面図である。
図3B図3Bは、図3Aにおける矢視Y1図である。
図4図4は、電子機器91の筐体1におけるノブ装着部12を前斜め右下方から見た斜視図である。
図5図5は、筐体1におけるノブ装着部12を後斜め左下方から見た斜視図である。
図6図6は、電子機器91の、図4におけるS6-S6位置に相当する位置での断面図である。
図7図7は、筐体1の、図6におけるS7-S7位置に相当する位置での断面図である。
図8図8は、本発明の実施形態の第2態様に係る電子機器91Aのノブ2Aの近傍を示す部分前面図である。
図9図9は、電子機器91Aの筐体1Aにおけるノブ装着部12Aの前面図である。
図10図10は、筐体1Aにおけるノブ装着部12Aの後面図である。
図11図11は、図9におけるS11-S11位置での断面図である。
図12図12は、図11におけるS12-S12位置での断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施形態の第1態様であるノブの取り付け構造TK及びそれを備えた電子機器91を、実施例1として図1図7を参照して説明する。また、第2態様であるノブの取り付け構造TKA及びそれを備えた電子機器91Aを、実施例2として図1及び図8図12を参照して説明する。以下の説明において、上下左右前後の各方向を図1に示される矢印の方向で規定する。
【0011】
(実施例1)
図1は、本発明の第1態様に係る電子機器91を示す斜視図である。図2は、電子機器91のノブ2の近傍を示す部分前面図である。図3Aは、ノブ2の側面図である。図3Bは、図3Aにおける矢視Y1図である。図4は、電子機器91の筐体1におけるノブ装着部12を前斜め右下方から見た斜視図である。図5は、筐体1におけるノブ装着部12を後斜め左下方から見た斜視図である。図6は、電子機器91の、図4におけるS6-S6位置に相当する位置での断面図である。図7は、筐体1の、図6におけるS7-S7位置に相当する位置での断面図である。
【0012】
図1に示される電子機器91は、例えば受信機である。電子機器91は、箱状の筐体1と、筐体1の前壁部1aにおいて前方に突出するように取り付けられたノブ2とを有する。ノブ2は、筐体1内に配置されたロータリーボリューム或いはロータリースイッチなどの回転式電子部品3(図6参照)のシャフト31を回すノブであり、前後方向に延びる軸線CL1まわりに回動可能とされている。筐体1及びノブ2は、例えば、樹脂の射出成形によって形成されている。
【0013】
図2及び図3Aに示されるように、ノブ2は、軸線CL2を中心とする円板状の天壁部2fと、天壁部2fの周囲から環状に立ち上げられた周壁部2aとを有して丸桶状に形成されている。
天壁部2fの表面には、周縁部近くの周方向の一か所に、視認可能なマーク2mが付与されている。周壁部2aの外周面には、わずかに凹んだ指掛かり凹部2cが等角度間隔で複数形成されている。
図6に示されるように、ノブ2の内側には、軸線CL2を中心とする有底孔のシャフト係合部2dを有する円筒状のシャフト受け部2eが形成されている。シャフト係合部2dの底となる部分には軸線CL2上に突出した突き当て部2d1が形成されている。
【0014】
図3A及び図3Bに示されるように、ノブ2は、マーク2mが形成された周方向位置において、周壁部2aの内側から下方に延びる爪部2bを備えている。
爪部2bは、基部2b1,突出部2b2,案内部2b3,及び傾斜部2b4を有する。
【0015】
基部2b1は、短冊状に形成され天壁部2fとは反対側に軸線CL2と並行に延出した部位である。突出部2b2は、基部2b1の先端において径方向の外方に突出した引っ掛かりのための部位である。案内部2b3は、突出部2b2における天壁部2fとは反対側の面において、先端側ほど肉厚が薄くなるように傾斜した傾斜部位である。傾斜部2b4は、突出部2b2における周方向の縁部に形成されたC面状の面取り部位である。
ノブ2は、次に説明する筐体1のノブ装着部12に、周壁部2aの先端側が入り込むように配置される。
【0016】
筐体1のノブ装着部12について、図2図4図7を参照して説明する。ノブ装着部12は、筐体1におけるロータリーボリューム3及びノブ2が取り付けられる部位である。
【0017】
図4及び図5に示されるように、ノブ装着部12は、シャフト用孔12a,環状リブ12h,爪用スリット12b,及び凹部1a1を有する。
シャフト用孔12aは、軸線CL1を中心とする円形の貫通孔であり、図6に示されるように、ロータリーボリューム3のシャフト31が、後方側(第2の側)から前方側(第1の側)に挿通される。
環状リブ12hは、シャフト用孔12aと同芯でシャフト用孔12aよりも大径で形成されて前方に突出する環状のリブである。
【0018】
爪用スリット12bは、軸線CL1を中心とする径方向が所定幅の円弧状のスリットである。爪用スリット12bが形成されている径方向の位置及びスリット幅は、少なくとも、シャフト31に装着されたノブ2を回動させたときに、爪部2bの基部2b1が干渉せずに通過可能に設定されている。
すなわち、爪用スリット12bは、シャフト31に装着されたノブ2の爪部2bの基部2b1が挿通し、ノブ2が回されたときに基部2b1の移動を許容する。
【0019】
爪用スリット12bは、周方向において少なくともノブ2の回動を許容する角度範囲に形成されている。
この例において、爪用スリット12bは、軸線CL1に対し下側の左右各60°を合わせた120°の範囲を除く240°の範囲に形成されている。
【0020】
図4及び図5に示されるように、ノブ装着部12には、爪用スリット12bによってその内側となる円盤状の内島部21が形成される。また、内島部21に対し、爪用スリット12bを挟んで外側となる部位は外岸部22である。内島部21と外岸部22とは、この例において下方の120°の範囲の連結基部23においてのみ、連結されている。
【0021】
図4及び図6に示されるように、外岸部22側の内周壁12cには、軸線CL1に向かって径方向内側に突出する周リブ状の係合鍔部12eが、周方向に断続的に複数形成されている。
係合鍔部12eが形成されている径方向位置は、シャフト31に装着されたノブ2における、爪部2bの基部2b1よりも外側であって、内縁となる先端縁部は、爪部2bの突出部2b2の位置に対応している。
また、ノブ装着部12は、爪用スリット12bが形成されている角度範囲において、内島部21と外岸部22とを連結するブリッジ部12BGを有する。
ブリッジ部12BGは、図6に示されるように、径方向の断面形状が、後方に突出するコ字状となるアーチ部12dを複数有する。
【0022】
図5及び図7に示されるように、ブリッジ部12BGは、内島部21に形成された円弧状の内縁リブ12gと、外岸部22に形成された円弧状の外縁リブ12fと、内縁リブ12gの先端と外縁リブ12fの先端と繋ぐ複数のアーチ部12dとを有する。複数のアーチ部12dは、この例において6つである。
【0023】
図7に示されるように、隣接するアーチ部12dは、軸線CL1まわりにそれぞれ角度θb1~θb5の間隔で放射状に形成されている。この例において、角度θb1~θb5は互いに等しく、例えば30°である。角度θb1~θb5は異なっていてもよい。
【0024】
複数のアーチ部12dのそれぞれの幅は、角度θc1~θc6の角度幅で形成されている。複数のアーチ部12dの幅は、爪部2bの突出部2b2幅よりも狭くなっている。
図4に示されるように、前後方向に金型が開閉する射出成形において、アーチ部12dの前面側を形成する金型を前方側から進入させるために、係合鍔部12eは、アーチ部12dの平面形状に対応した範囲で欠落している。
【0025】
爪用スリット12bは、図5の時計まわり方向の端部(左下端部)において、アーチ部12dは形成されてなく、この部分は、周方向長さがノブ2の爪部2bの幅よりも長い基準開口部12kとされている。爪用スリット12bは、少なくとも基準開口部12kにおいて、ノブ2の爪部2bが径方向の内方にたわんだ状態で突出部2b2が通過できる径方向の幅及び周方向の長さを有する。
【0026】
図4及び図6に示されるように、基準開口部12kにおける係合鍔部12eの前面には、内方に向かうに従って後方に傾斜するガイド部12e1が形成されている。ガイド部12e1は、基準開口部12kに前方側から進入する爪部2bの突出部2b2に当接し、爪部2bの内方へのたわみを促してその進入を容易にする。
【0027】
図2図4,及び図6に示されるように、板状部材として形成されている前壁部1aのノブ装着部12には、円形で後方に向け抉れた凹部1a1が形成されている。内島部21及び外岸部22は、凹部1a1の底壁に相当する。
凹部1a1の内径は、ノブ2の周壁部2aにおける開放側の外径よりもわずかに大きく、凹部1a1にはノブ2の開放側の端部が進入可能となっている。
【0028】
図2に示されるように、凹部1a1の周囲には、印刷或いは刻印などにより、角度θbを所定の角度間隔として複数のマーク1mが付されている。複数のマーク1mは、一つが基準開口部12kに対応して付されており、そのマーク1mを、基準マーク1m1とも称する。図2においてマーク1mは墨付き丸で、基準マーク1m1は、白ヌキ丸で記載されている。図2において、マーク1mは角度θaの範囲で9個付されている。
【0029】
図6に示されるように、前壁部1aである内島部21の後面(第2の側の面)には、ロータリーボリューム3が取り付けられる。具体的には、ロータリーボリューム3は、そのシャフト31を内島部21の後方側(第2の側)からシャフト用孔12aに挿通する。これによりシャフト31の根元のシャフト根元部32に形成された雄ねじ部32aが、シャフト用孔12aから前方側(第1の側)に突出する。前方に突出して露出した雄ねじ部32aに対して前方側からロックナット6を締め付けることで内島部21に固定される。
【0030】
シャフト31には、前方側からノブ2のシャフト受け部2eがはめ込まれる。ノブ2をシャフト31に対し一定量挿入すると、突き当て部2d1がシャフト31の先端面に当接してノブ2の前後方向の位置決めがなされる。
シャフト31は、いわゆるDカット形状とされており、シャフト受け部2eもシャフト31のDカット形状に対応した孔形状とされている。
【0031】
このように、ノブ2を、Dカット形状を合わせてシャフト31に取り付けると、ロータリーボリューム3の最小位置(絞り位置)において、図2に示されるように、ノブ2のマーク2mが、筐体1の基準マーク1m1に対応した回動位置となるように設定されている。ノブ2の、マーク2mが基準マーク1m1と対応する回動位置を、以下、装着位置と称する。
【0032】
ノブ2のノブ装着部12への具体的な装着手順は、次のとおりである。
まず、ノブ2のシャフト受け部2eを、シャフト31の先端にDカット形状を合わせて少し挿入し、その状態で、ノブ2を左回りいっぱいに回動させる。これにより、図2に示されるように、ノブ2の回動位置は装着位置となる。
【0033】
次いで、ノブ2を押し込む。ノブ2は、装着位置において爪部2bが基準開口部12kに対応した位置にある。そのため、ノブ2が押し込まれると、爪部2bの突出部2b2は、基準開口部12kにおける係合鍔部12eのガイド部12e1に当接する。そして、突出部2b2がガイド部12e1に案内されることで爪部2bは径方向内側にたわみ、突出部2b2が基準開口部12kを通過して係合鍔部12eの裏側(後方側)に抜け出ると、爪部2bはたわみが解消して元の形状に復帰する。
【0034】
ノブ2は、爪部2bが形状復帰した後にわずかに押されると、シャフト係合部2dの突き当て部2d1がシャフト31の先端に当接して移動が規制され、ノブ装着部12への装着が完了する。
ノブ2を通常の力でシャフト31から前方に抜こうとすると、突出部2b2が係合鍔部12eの後面12e2に当接して移動が規制されるので、ノブ2のシャフト31からの抜けが防止される。ノブ2を、意図した過剰な力を掛けて前方に抜こうとすると、爪部2bは強制的に径方向内側にたわみ、突出部2b2の係合鍔部12eとの係合が外れて抜くことができる。
【0035】
係合鍔部12eは、アーチ部12dが形成されている部分で欠落しているが、欠落した欠落部の周方向の幅は、ノブ2の突出部2b2の幅よりも狭く設定されている。そのため、係合鍔部12eの欠落部において爪部2bが前方に抜け出ることはない。
【0036】
ノブ装着部12に装着されたノブ2は、爪用スリット12bの形成範囲によって回動可能範囲が規定されており、ノブ2が取り付けられた回転式電子部品であるロータリーボリューム3は、ノブ2の回転角度に応じた電気的動作を実行する。
ノブ2の爪部2bには傾斜部2b4が形成されているので、係合鍔部12eが周方向に断続的に形成されていても、ノブ2を回したときに突出部2b2は常に係合鍔部12eに引っ掛かるように案内される。これにより、ノブ2の回動操作が滑らかになる。
【0037】
上述のように、本発明の第1態様の取り付け構造TKによれば、ノブ装着部12に装着されたノブ2は、爪部2bの突出部2b2が筐体1の外岸部22の係合鍔部12eに係合しているのでシャフト31から容易に抜けることはない。また、回転式電子部品であるロータリーボリューム3は、爪用スリット12bの内側の部分である内島部21に取り付けられている。内島部21は、爪用スリット12bを挟んで径方向外側に位置する外岸部22に対し複数のアーチ部12dで連結されているので、爪用スリット12bが形成されていても高い曲げ剛性を有する。従って、ノブ2が押し込まれても、回転式電子部品であるロータリーボリューム3の取り付け部分である内島部21は、破損したり曲がったりするという不具合が生じにくい。
また、取り付け構造TKは、爪部2bの突出部2b2が係合する板状部材である前壁部1aに回転式電子部品であるロータリーボリューム3が取り付けられているので、コンパクトである。
【0038】
(実施例2)
図1において、括弧付きの符号は、本発明の第2態様に係る電子機器91Aの部材の符号を示している。すなわち、電子機器91Aは、電子機器91における前壁部1aを有する筐体1及びノブ2の替わりに、前壁部1Aaを有する筐体1A及びノブ2Aを有する。また、軸線CL1Aは、ノブ2の軸線CL1に対応するノブ2Aの軸線である。
【0039】
電子機器91Aは、電子機器91における回転式電子部品が、所定の角度範囲で回動するシャフト31を有するロータリーボリューム3ではなく、シャフト31Aが無限回転するロータリーエンコーダ3Aとされている。ノブ2Aは、図8に示されるように、ノブ2に対し、マーク2mが付与されていない点が異なる以外同じである。すなわち、ノブ2Aは、図11に示されるように、ノブ2における天壁部2f,周壁部2a,爪部2b,シャフト係合部2d,シャフト受け部2eに対応した天壁部2Af,周壁部2Aa,爪部2Ab,シャフト係合部2Ad,及びシャフト受け部2Aeを有する。また、爪部2Abは、ノブ2における基部2b1,突出部2b2,案内部2b3,及び傾斜部2b4にそれぞれ対応する基部2Ab1,突出部2Ab2,案内部2Ab3,及び傾斜部2Ab4を有する。
【0040】
次に、電子機器91Aの筐体1Aにおけるノブ装着部12Aについて、図8図12を参照して説明する。ノブ装着部12Aは、筐体1のノブ装着部2に対応する部位であって、筐体1Aにおいてロータリーエンコーダ3A及びノブ2Aが取り付けられる部位である。
【0041】
ノブ装着部12Aは、シャフト用孔12Aa(図11参照),爪用環状スリット12Ab,及び凹部1Aa1を有する。シャフト用孔12Aaは、軸線CL1Aを中心とする円形の貫通孔であり、図11に示されるようにロータリーエンコーダ3Aのシャフト31Aが、後方側(第2の側)から前方側(第1の側)に挿通される。
【0042】
爪用環状スリット12Abは、軸線CL1Aを中心とする径方向が所定幅の円環状のスリット(開口部)である。爪用環状スリット12Abが形成されている径方向の位置及びスリット幅は、少なくともシャフト31Aに装着されたノブ2Aをシャフト31Aと共に回転させたときに、爪部2Abの基部2Ab1が干渉せずに通過可能に設定されている。すなわち、爪用環状スリット12Abは、シャフト31Aに装着されたノブ2Aの爪部2Abの基部2Ab1が挿通し、ノブ2Aが回転したときに基部2Ab1の移動を許容する。
【0043】
爪用環状スリット12Abの内側に形成される円盤状の内島部21Aは、爪用環状スリット12Abを挟んで外側となる部位の外岸部22Aとブリッジ部12ABGによって連結されている。ブリッジ部12ABGは、図11に示されるように、径方向の断面形状が後方に突出するコ字状となるアーチ部12Adを複数有する。
【0044】
図9図10図11に示されるように、外岸部22A側の内周壁12Acには、軸線CL1Aに向かって径方向内側に突出する周リブ状の係合鍔部12Aeが、周方向に断続的に複数形成されている。
係合鍔部12Aeが形成されている径方向位置は、シャフト31Aに装着されたノブ2Aにおける、爪部2Abの基部2Ab1よりも外側であって、内縁となる先端縁部は、爪部2Abの突出部2Ab2の位置に対応している。
【0045】
また、ノブ装着部12Aは、爪用環状スリット12Abを挟んで内側の内島部21Aと外側の外岸部22Aとを連結するブリッジ部12ABGを有する。
図10及び図11に示されるように、ブリッジ部12ABGは、内島部21Aに形成された環状の内縁リブ12Agと、外岸部22Aに形成された環状の外縁リブ12Afと、内縁リブ12Agの先端と外縁リブ12Afの先端とを繋ぐ複数のアーチ部12Adとを有する。複数のアーチ部12dは、この例において、周方向に互いに離隔して形成された12個である。
【0046】
図12に示されるように、周方向に隣接するアーチ部12Adは、軸線CL1Aまわりにそれぞれ角度θb1~θb12の間隔で放射状に形成されている。この例において、角度θb1~θb12は互いに等しく30°であるが、角度θb1~θb12は、一部又は全部が等しい角度でなくてもよい。
【0047】
複数のアーチ部12Adのそれぞれの幅は、角度θc1~θc12の角度幅で形成されている。複数のアーチ部12Adの幅は、爪部2Abの突出部2Ab2の幅よりも狭くなっている。図9に示されるように、前後方向に金型が開閉する射出成形において、アーチ部12Adの前面側を形成する金型を前方側から進入させるために、係合鍔部12Aeは、アーチ部12Adの平面形状に対応した範囲で欠落している。
【0048】
爪用環状スリット12Abは、図9図11に示されるように、12箇所あるアーチ部12Adの内の1箇所に対応した部位が基準開口部12Akとされている。爪用環状スリット12Abは、少なくとも基準開口部12Akにおいて、ノブ2Aの爪部2Abが径方向の内方にたわんだ状態で突出部2Ab2が通過できる径方向の幅及び周方向の長さを有する。
【0049】
図9及び図11に示されるように、基準開口部12Akにおける係合鍔部12Aeの前面には、内方に向かうに従って後方に傾斜するガイド部12Ae1が形成されている。ガイド部12Ae1には、基準開口部12Akに前方側から進入する爪部2Abの突出部2Ab2に当接し、爪部2Abの内方へのたわみを促してその進入を容易にする。基準開口部12Akにおける係合鍔部12Aeの先端縁12Ae3は、この例において径に直交する直線状に形成されている。もちろん、他の係合鍔部12Aeの先端縁と同様に円弧状に形成されていてもよい。先端縁12Ae3の形状は、ノブ2Aの爪部2Abにおける突出部2Ab2の先端形状を円弧状とするか直線状とするかと併せて設定するとよい。これにより、基準開口部12Akにおける爪部2Abのたわみ量を少なくしてノブ2Aの装着を容易にすると共に抜去しにくくすることができる。
【0050】
図11に示されるように、前壁部1Aaである内島部21Aの後面(第2の側の面)には、ロータリーボリューム3と同様にロータリーエンコーダ3Aが取り付けられる。
【0051】
ロータリーエンコーダ3Aのシャフト31Aは、Dカット形状となっている。ノブ2Aのシャフト受け部2Aeは、シャフト31AのDカット形状に対応したシャフト係合部2Adを有する。そこで、ノブ2Aをシャフト31AのDカット形状に対応した位置で少し挿入したら、爪部2Abが基準開口部12Akの位置に対応するように回転して位置決めし、押し込む。
これにより、爪部2Abは、ガイド部12Ae1に誘導されて径方向内側にたわみ、突出部2Ab2が基準開口部12Akを通過して係合鍔部12Aeの裏側(後方側)に抜け出ると、爪部2Abはたわみが解消して元の形状に復帰する。図11に示されるように、係合鍔部12Aeを通過した爪部2Abの先端は、アーチ部12Adよりも低く干渉しない。そのため、ノブ2Aは滑らかに時計回り及び反時計回りに無限回転させることができる(図8の矢印DR参照)。
【0052】
電子機器91Aは、電子機器91と同様に、ノブ2Aを通常の力でシャフト31Aから前方に抜こうとすると、突出部2Ab2が係合鍔部12Aeの後面12Ae2に当接して移動が規制されるので、ノブ2Aのシャフト31Aからの抜けが防止される。ノブ2Aを、意図した過剰な力を掛けて前方に抜こうとすると、爪部2bは強制的に径方向内側にたわみ、突出部2b2の係合鍔部12eとの係合が外れて抜くことができる。
【0053】
係合鍔部12Aeは、アーチ部12Adが形成されている部分で欠落しているが、欠落部の周方向の幅は、ノブ2Aの突出部2Ab2の幅よりも狭く設定されている。そのため、係合鍔部12Aeの欠落部において爪部2Abが前方に抜け出ることはない。
【0054】
爪用環状スリット12Abは、円形のスリットなので、ノブ2Aを無限回転可能である。その際、ノブ2Aの爪部2Abには傾斜部2Ab4が形成されているので、係合鍔部12Aeが周方向に断続的に形成されていても、ノブ2Aの回転時に突出部2Ab2は常に係合鍔部12Aeに引っ掛かるように案内される。これにより、ノブ2Aの無限回転操作は滑らかである。
【0055】
上述のように、本発明の第2態様の取り付け構造TKAによれば、ノブ装着部12Aに装着されたノブ2Aは、爪部2Abの突出部2Ab2が筐体1Aの外岸部22Aの係合鍔部12Aeに係合しているので、シャフト31Aから容易に抜けることはない。また、回転式電子部品であるロータリーエンコーダ3Aは、爪用環状スリット12Abの内側の部分である内島部21Aに取り付けられている。内島部21Aは、爪用環状スリット12Abを挟んで径方向外側に位置する外岸部22Aに対し複数のアーチ部12Adで連結されているので、爪用環状スリット12Abが形成されていても高い曲げ剛性を有する。従って、ノブ2Aが押し込まれても、回転式電子部品であるロータリーエンコーダ3Aの取り付け部分である内島部21Aは、破損したり曲がったりするという不具合が生じにくい。
また、取り付け構造TKAは、爪部2Abの突出部2Ab2が係合する板状部材である前壁部1Aaに回転式電子部品であるロータリーエンコーダ3Aが取り付けられているので、コンパクトである。
【0056】
以上詳述した実施例は、その構成に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において変形した変形例としてもよい。
【0057】
以下、実施例2の符号を実施例1の符号と併記する際に括弧付きで示すと、ブリッジ部12BG(12ABG)におけるアーチ部12d(12Ad)の配設位置及び配設数は限定されない。実施例1において、図5及び図7に示される、爪用スリット12bにおける基準開口部12kとは反対側の端部近傍は、筐体1内に収容される基板との干渉を避けるためにアーチ部12dは設けられていない。また、実施例2では、爪用環状スリット12Abの全周に亘って複数のアーチ部12Adが設けられている。これにより、内島部21(21A)は、角度θc1~θc6(θc1~θc12)それぞれに対応して形成された複数のアーチ部12d(12Ad)によって、外岸部22(22A)に対し十分な曲げ剛性で連結されている。そのため、ノブ2(2A)が押し込まれても、回転式電子部品であるロータリーボリューム3(ロータリーエンコーダ3A)の取り付け部分である内島部21(21A)に変形などの不具合は生じにくい。
【0058】
電子機器91(91A)は例示した受信機に限定されるものではなく、通信機器、車載装置、撮像装置、音響機器など、種々の機器及び装置であってよい。
【0059】
上述のように、回転式電子機器は、シャフトが、360°以上の無限角度で連続回転可能、及び360°未満の角度範囲で往復回動可能であるもの、のいずれをも含む。本発明の第1態様のノブの取り付け構造は、ノブ2を、回転式電子機器の仕様によらず、爪用スリット12bの形成角度範囲に応じて360°未満の所定の角度範囲で往復回動させる。また、本発明の第2態様のノブ取り付け構造は、ノブ2Aを無限回転させることができる。
回転式電子部品はロータリーボリューム、ロータリースイッチ、ロータリーエンコーダに限定されるものではなく、シャフトに取り付けられたノブを回動させることで電気的特性が変わるすべてのものを含む。
【符号の説明】
【0060】
1,1A 筐体
1a,1Aa 前壁部
1a1 凹部
1m マーク
1m1 基準マーク
12,12A ノブ装着部
12BG,12ABG ブリッジ部
12a,12Aa シャフト用孔
12b 爪用スリット
12Ab 爪用環状スリット
12c 内周壁
12d,12Ad アーチ部
12e,12Ae 係合鍔部
12e1,12Ae1 ガイド部
12e2,12Ae2 後面
12Ae3 先端縁
12f,12Af 外縁リブ
12g,12Ag 内縁リブ
12h 環状リブ
12k,12Ak 基準開口部
2,2A ノブ
2a,2Aa 周壁部
2b,2Ab 爪部
2b1,2Ab1 基部
2b2,2Ab2 突出部
2b3,2Ab3 案内部
2b4,2Ab4 傾斜部
2c 指掛かり凹部
2d,2Ad シャフト係合部
2d1 突き当て部
2e,2Ae シャフト受け部
2f,2Af 天壁部
2m マーク
21,21A 内島部
22,22A 外岸部
23 連結基部
3 ロータリーボリューム(回転式電子部品)
31,31A シャフト
32 シャフト根元部
32a 雄ねじ部
3A ロータリーエンコーダ
6 ロックナット
91,91A 電子機器
CL1,CL2,CL1A 軸線
TK,TKA 取り付け構造
θa,θb,θb1~θb12,θc1~θc12 角度
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7
図8
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図10
図11
図12