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特開2024-77629負極活物質、その製造方法、及びこれを含むリチウム二次電池
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  • 特開-負極活物質、その製造方法、及びこれを含むリチウム二次電池 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024077629
(43)【公開日】2024-06-07
(54)【発明の名称】負極活物質、その製造方法、及びこれを含むリチウム二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/38 20060101AFI20240531BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20240531BHJP
【FI】
H01M4/38 Z
H01M4/36 C
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023200529
(22)【出願日】2023-11-28
(31)【優先権主張番号】10-2022-0161487
(32)【優先日】2022-11-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
(71)【出願人】
【識別番号】519350498
【氏名又は名称】ハンソル ケミカル カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】HANSOL CHEMICAL CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】7-8F, 513, Teheran-ro, Gangnam-gu, Seoul 06169, Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】リー, ジョンフン
(72)【発明者】
【氏名】シム, ヒョンウー
(72)【発明者】
【氏名】チェ, ウーヨン
(72)【発明者】
【氏名】リー, ジョンハ
(72)【発明者】
【氏名】クウォン, セマン
【テーマコード(参考)】
5H050
【Fターム(参考)】
5H050AA07
5H050BA16
5H050CA08
5H050CB02
5H050CB11
5H050CB12
5H050CB29
5H050FA17
5H050FA18
5H050FA19
5H050FA20
5H050GA02
5H050GA06
5H050GA10
5H050HA01
5H050HA04
5H050HA05
5H050HA08
5H050HA14
5H050HA20
(57)【要約】
【課題】高容量及び高エネルギー密度を有しながらも、長い期間使用した後にも安定的な充電/放電挙動が可能な長い寿命特性の二次電池のための負極活物質を提供する。
【解決手段】本発明は、金属粒子を含むコア及び前記コアの外部に形成されたシェル層を含み、前記シェル層は金属炭化物粒子及び炭素系物質を含み、前記金属炭化物粒子の前記シェル層内の数密度(number density)(個数/μm)が50以上100以下であることを特徴とするリチウム二次電池用負極活物質及びその製造方法と、これを含むリチウム二次電池に関する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属粒子を含むコアと、
前記コアの外部に形成されたシェル層と、
を含み、
前記シェル層は、金属炭化物粒子及び炭素系物質を含み、
前記金属炭化物粒子の前記シェル層内の数密度(個数/μm)が50以上100以下であることを特徴とする、負極活物質。
【請求項2】
前記金属粒子は、Si、Al、Zn、Ca、Mg、Fe、Mn、Co、Ni及びGeからなる群より選択された1つ以上を含む、請求項1に記載の負極活物質。
【請求項3】
前記コアに含まれる金属粒子はシリコンナノ粒子であり、
前記シェル層に含まれる金属炭化物粒子は、炭化ケイ素(SiC)粒子であることを特徴とする、請求項1に記載の負極活物質。
【請求項4】
前記シリコンナノ粒子の平均粒度は、D50基準80nm~130nmである、請求項3に記載の負極活物質。
【請求項5】
前記炭化ケイ素の大きさは50nm~200nmである、請求項3に記載の負極活物質。
【請求項6】
前記炭素系物質は、結晶質及び非晶質炭素のうちの1つ以上を含む、請求項1に記載の負極活物質。
【請求項7】
前記結晶質炭素は黒鉛系炭素を含む、請求項6に記載の負極活物質。
【請求項8】
前記非晶質炭素は、スクロース(sucrose)、フェノール(phenol)樹脂、ナフタレン(naphthalene)樹脂、ポリビニルアルコール(polyvinyl alcohol)樹脂、フルフリルアルコール(furfuryl alcohol)樹脂、フラン(furan)樹脂、セルロース(cellulose)樹脂、スチレン(styrene)樹脂、ポリイミド(polyimide)樹脂、エポキシ(epoxy)樹脂、又は塩化ビニル(vinyl chloride)樹脂、石炭系ピッチ、石油系ピッチ、ポリ塩化ビニル、メソフェーズピッチ、タール、ブロック共重合体(block-copolymer)、ポリオール、及び低分子量中質油からなる群より選択される1つ以上で製造されたものでる、請求項6に記載の負極活物質。
【請求項9】
コア-シェル構造の平均粒度(D50)は3μm~10μmであり、
前記シェル層の厚さが100nm~3μmである、請求項1に記載の負極活物質。
【請求項10】
前記コアが結晶質炭素及び非晶質炭素のうちの1つ以上を追加的に含む、請求項1に記載の負極活物質。
【請求項11】
金属ナノ粒子を溶媒に分散させるステップ(S1)と、
前記分散した溶液を噴霧乾燥して球状の金属前駆体粉末を製造するステップ(S2)と、
前記球状の金属前駆体粉末を非晶質炭素前駆体及び結晶質炭素と混合して複合化するステップ(S3)と、
1100℃~1400℃で3時間~8時間の間に熱処理するステップ(S4)と、
を含む、負極活物質製造方法。
【請求項12】
前記金属ナノ粒子はシリコンナノ粒子であり、
前記溶媒は、メタノール、エタノール、プロパノール、及びブタノールからなる群より選択された1つ以上を含む溶媒である、請求項11に記載の負極活物質製造方法。
【請求項13】
前記結晶質炭素は黒鉛系炭素を含み、
前記非晶質炭素は、スクロース(sucrose)、フェノール(phenol)樹脂、ナフタレン(naphthalene)樹脂、ポリビニルアルコール(polyvinyl alcohol)樹脂、フルフリルアルコール(furfuryl alcohol)樹脂、フラン(furan)樹脂、セルロース(cellulose)樹脂、スチレン(styrene)樹脂、ポリイミド(polyimide)樹脂、エポキシ(epoxy)樹脂、又は、塩化ビニル(vinyl chloride)樹脂、石炭系ピッチ、石油系ピッチ、ポリ塩化ビニル、メソフェーズピッチ、タール、ブロック共重合体(block-copolymer)、ポリオール、及び低分子量中質油からなる群より選択される1つ以上で形成される、請求項11に記載の負極活物質製造方法。
【請求項14】
前記ステップ(S3)における球状の金属前駆体粉末及び非晶質炭素前駆体の混合重量比は40:20~40:35である、請求項11に記載の負極活物質製造方法。
【請求項15】
請求項1~10のいずれか一項に記載の負極活物質を含む、リチウム二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、負極活物質、その製造方法、及びこれを含むリチウム二次電池に関し、具体的には炭化ケイ素(SiC)粒子を特定の密度でシェル層に導入し、長期的に充電/放電を行っても安定した挙動が可能であり、電池寿命を向上させる負極活物質、その製造方法、及びこれを含むリチウム二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン電池(Lithium Ion Battery、LIB)は高いエネルギー密度を有し、設計が容易でモバイル電子機器の主な電力供給源として採択されて使用されており、今後、電気自動車あるいは新再生エネルギーの電力格納装置などでその応用範囲がより広くなっている。
【0003】
新しい応用分野に適用するためには、より高いエネルギー密度、長い寿命などの特性を有するLIB素材に対する研究が持続的に求められる。特に、負極素材の場合、炭素をはじめとしてシリコン、スズ、ゲルマニウムなどの様々な物質に対して研究が行われてきた。
【0004】
そのうち、シリコン系の負極素材は、現在に商用化されている黒鉛負極素材に比べて極めて高い理論的な容量を有しており、多くの関心を集めてきた。しかし、シリコン系の負極素材は、シリコン表面と電解質の副反応により不安定なSEI(Solid Electrolyte Interphase)層が形成されることで電気化学的な特性が低下したり、充電/放電時に発生する急激な体積膨張による内部応力により電極材料の粉砕が生じるなどの問題を有している。
【0005】
それを解決するためにシリコン系負極素材のナノ構造化、表面改質、異種物質複合化などの研究が行われてきた。特に、炭素素材を表面コーティングしたり複合化する方法は、産業界を中心に幅広く研究されている。炭素素材を活用した様々な表面処理は複雑で高いコストの工程が必要であり、炭素素材を活用した表面処理を介してシリコン系負極素材の一部の寿命特性は改善されるものの、シリコン系負極素材の充電/放電時に発生する大きい体積変化に対応するためには、根本的な素材設計の概念の修正が求められている。
【0006】
従って、依然としてシリコン系負極素材の体積膨張を抑制すると共にシリコン系負極素材の不安定な寿命特性を改善するために、高容量シリコン系の負極活物質の構造的な改質に関する技術開発が求められている実状である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記のような問題を解決しようと案出されたもので、高容量及び高エネルギー密度を有しながらも、長い期間使用した後にも安定的な充電/放電挙動が可能な長い寿命特性の二次電池のための負極活物質を提供することにその目的がある。
【0008】
また、前記負極活物質製造方法及び前記負極活物質を含むリチウム二次電池を提供することも本発明の目的に該当すると見ることができる。
【0009】
しかし、本発明が解決しようとする課題は、以上で言及した課題に制限されず、言及されない他の課題は下記の記載によって当技術分野の通常の知識を有する者明確に理解できるものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一実施形態によれば、金属粒子を含むコア及び前記コアの外部に形成されたシェル層を含み、前記シェル層は、金属炭化物粒子及び炭素系物質を含み、前記金属炭化物粒子の前記シェル層内の数密度(number density)(個数/μm)が50以上100以下であることを特徴とする負極活物質が提供される。
【0011】
本発明の一実施形態によれば、金属ナノ粒子を溶媒に分散させるステップ(S1)、前記分散した溶液を噴霧乾燥して球状の金属前駆体粉末を製造するステップ(S2)、前記球状の金属前駆体粉末を非晶質炭素前駆体及び結晶質炭素と混合して複合化するステップ(S3)、及び1100℃~1400℃で3時間~8時間の間に熱処理するステップ(S4)を含む負極活物質製造方法が提供される。
【0012】
本発明の一実施形態によれば前記負極活物質を含む、リチウム二次電池が提供される。
【発明の効果】
【0013】
本発明の一実施形態に係る負極活物質は、シリコン粒子を含むコア部と、それを取り囲んでいる炭化ケイ素粒子及び炭素系物質を含むシェル部で構成されている。本発明において、シリコン粒子は、高容量負極活物質として複合素材のエネルギー密度を向上させ、内部の孔隙は、シリコン粒子の充電時に体積膨張を効率よく収容して複合体の構造的な破壊を防止することができる。
【0014】
また、前記炭素系物質は、シェル部の最外郭で電解質溶媒との安定的な電気化学反応を介して負極活物質の寿命特性を改善させることができる。
【0015】
さらに、シリコンカーバイド(SiC)粒子は、シェル部の機械的な強度を強化することで、コア部の膨張時に発生する応力によるシェル部の破壊を効率よく防止でき、安定的な寿命特性を発現することに寄与することができる。
【0016】
本発明の効果は、前記効果に限定されるものではなく、本発明の詳細な説明又は請求範囲に記載された発明の構成から推論可能な全ての効果を含むものとして理解しなければならない。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態に係る負極活物質の模式図を示す図である。
図2】本発明に係る実施形態1~3と比較例1~6の寿命特性評価を示す図である。
図3】本発明に係る実施形態1~3と比較例1~6の出力特性評価を示す図である。
図4】本発明の実施形態1による負極活物質FIB-SEMイメージの拡大図である。
図5】本発明の比較例5による負極活物質FIB-SEMイメージの拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付する図面を参照しながら実施形態を詳細に説明する。しかし、実施形態には様々な変更が加えられてもよく、特許出願の権利範囲がこのような実施形態によって制限されたり限定されることはない。実施形態に対する全ての変更、均等物ないし代替物が権利範囲に含まれるものとして理解しなければならない。
【0019】
実施形態で用いられる用語は、単に、説明を目的として使用されたものであり、限定しようとする意図として解釈されることはない。単数の表現は、文脈上、明白に異なる意味をもたない限り複数の表現を含む。本明細書において、「含む」又は「有する」等の用語は明細書上に記載した特徴、数字、ステップ、動作、構成要素、部品又はこれらを組み合わせたものが存在することを示すものであって、1つ又はそれ以上の他の特徴や数字、ステップ、動作、構成要素、部品、又はこれを組み合わせたものなどの存在又は付加の可能性を予め排除しないものとして理解しなければならない。
【0020】
異なるように定義さがれない限り、技術的であるか又は科学的な用語を含むここで用いる全ての用語は、本実施形態が属する技術分野で通常の知識を有する者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。一般的に用いられる予め定義された用語は、関連技術の文脈上で有する意味と一致する意味を有するものと解釈すべきであって、本明細書で明白に定義しない限り、理想的又は過度に形式的な意味として解釈されることはない。
【0021】
また、添付図面を参照して説明することにおいて、図面符号に関係なく同じ構成要素は同じ参照符号を付与し、これに対する重複する説明は省略することにする。実施形態の説明において、関連する公知技術についての具体的な説明が実施形態の要旨を不要に曖昧にするものと判断される場合には、その詳細な説明を省略する。
【0022】
本発明の一態様によれば、金属粒子を含むコアと、前記コアの外部に形成されたシェル層とを含み、前記シェル層は金属炭化物粒子及び炭素系物質を含み、前記金属炭化物粒子の前記シェル層内の数密度(number density)(個数/μm)が50以上100以下であることを特徴とする負極活物質を提供する。
【0023】
前記負極活物質コアに含まれる金属粒子は、Si、Al、Zn、Ca、Mg、Fe、Mn、Co、Ni及びGeからなる群より選択された1つ以上を含み、エネルギー密度及び容量改善のための目的として、好ましくは、シリコン(Si)粒子を含んでもよい。
【0024】
一方、前記シリコン粒子は、より具体的に、シリコンナノ粒子、シリコン酸化物ナノ粒子、シリコン炭化物ナノ粒子及び/又はシリコン合金ナノ粒子の形態をしてもよく、前記シリコン粒子の形状として、例えば、鱗片状の構造を有してもよい。また、シリコン粒子の好ましい大きさとして1000nm以下のナノサイズに該当し、前記シリコンナノ粒子を含むことにより、充電/放電によるシリコンの体積変化を抑制することが容易である。
【0025】
より好ましくは、前記シリコンナノ粒子の平均粒度はD50基準50nm~200nmであってもよく、より好ましくは、80nm~130nmであってもよい。
【0026】
前記シリコンナノ粒子の平均粒度(D50)が50nm未満である場合、製造コストが高まり、電池容量及び効率が低下し、平均粒度の大きさが130nmを超過する場合は、体積変化の抑制の効果及び電池寿命の側面において好ましくない。
【0027】
このように、本発明の一実施形態に係る負極活物質は、ナノサイズのシリコン粒子を複数含んで形成されるコアを含むものとして、シリコン単一の粒子で構成されるコアに比べて、寿命特性や出力特性がより優れている効果があり、これは詳細に後述する実施形態1~3及び比較例1~3の比較に通じても確認できる。
【0028】
一方、前記コアには、上記で詳述したシリコンナノ粒子などの金属粒子の他にも炭素系物質を含んでもよく、前記炭素系物質は、具体的に結晶質炭素及び非晶質炭素のうちの1つ以上を含んでもよい。
【0029】
前記結晶質炭素の種類として黒鉛系炭素を含むことができる。より詳しくは、天然黒鉛、人造黒鉛、膨張黒鉛などを含んでもよい。
【0030】
前記天然黒鉛は天然的に算出される黒鉛として、鱗片状(flake)黒鉛、高結晶質(high crystalline)黒鉛などが挙げられ、前記人造黒鉛は人工的に合成された黒鉛として、無定形炭素を高温で加熱して製造され、一次(primary)黒鉛、電気黒鉛(electrographite)、二次(secondary)黒鉛、黒鉛繊維(graphite fiber)などが例として挙げられる。
【0031】
それと共に、膨張黒鉛は、黒鉛の層間に酸又はアルカリなどの化学品を挿入し加熱し、分子構造の垂直層を膨らせるものである。
【0032】
一方、前記非晶質炭素の種類は大きく制限されないが、スクロース(sucrose)、フェノール(phenol)樹脂、ナフタレン(naphthalene)樹脂、ポリビニルアルコール(polyvinyl alcohol)樹脂、フルフリルアルコール(furfuryl alcohol)樹脂、フラン(furan)樹脂、セルロース(cellulose)樹脂、スチレン(styrene)樹脂、ポリイミド(polyimide)樹脂、エポキシ(epoxy)樹脂、又は塩化ビニル(vinyl chloride)樹脂、石炭系ピッチ、石油系ピッチ、ポリ塩化ビニル、メソフェーズピッチ、タール、ブロック共重合体(block-copolymer)、ポリオール、及び低分子量中質油からなる群より選択される1つ以上に形成されたものであってもよく、より詳しくは、石炭系ピッチ、石油系ピッチ、アクリル樹脂から形成されたものであってもよい。
【0033】
一方、本発明の一実施形態に係る負極活物質は、上記で詳述したコアの外部に、金属炭化物粒子及び炭素系物質を含むシェル層が形成される。
【0034】
このようなシェル層を含むことにより、コアの内部に存在するシリコンナノ粒子などの金属粒子と電解質溶媒との接触を効率よく防止し、前記金属粒子の安定的かつ可逆的な電気化学的な反応を可能にする。
【0035】
また、金属炭化物粒子は、シェル層の機械的な強度を強化させることで、コア部の膨張時に発生する応力によるシェル層の破壊を効率よく防止でき、前記金属炭化物粒子と共に含まれる炭素系物質により、シェル層の最外郭で電解質溶媒との安定的な電気化学反応を介して負極活物質の寿命特性を改善させることができる。
【0036】
さらに、前記炭素系物質は、上記で詳述した炭素系物質と実質的に同一/類似であってもよい。
【0037】
一方、前記シェル層に含まれる金属炭化物粒子は、前記シェル層内で均質に分布し、50~100の数密度(単位:個数/μm)に含まれてもよい。前記数密度は、負極活物質の粉末粒子の断面を観察し、シェル層内に、単位面積(μm)当たり存在する金属炭化物粒子の個数として判断して導き出されたものである。
【0038】
シェル層内の金属炭化物粒子の数密度が前記上限を超過する場合、リチウムイオンの伝導度が減少し、出力特性及び電池の効率が減少するという問題が生じ、前記下限未満である場合は、シェル層の機械的な強度が充分でないため、コアの体積変化によるシェル層の破壊防止の役割を効率よく行うことができない。従って、シェル層内の金属炭化物粒子の数密度は50~100であることが適切であり、これは後述する実施形態1~3及び比較例4~5の比較においても、寿命特性及び出力特性など面で差があることが確認される。
【0039】
さらに、前記シェル層内に含まれる金属炭化物粒子は、好ましくは、炭化ケイ素(SiC)粒子であってもよく、その大きさは50nm~200nmであることが好ましい。炭化ケイ素の粒子が前記下限未満である大きさを有する場合、シェル層の強度改善の効果が発現されず、前記上限を超過した大きさを有する場合には、電気化学反応を阻害したりシェル層の形成を妨害するという問題が生じる恐れがある。
【0040】
さらに、前記シェル層の厚さは100nm~3μmであってもよく、前記シェル層の厚さが100nm未満である場合、シリコンの体積変化によって破損されて寿命特性に悪影響を与える恐れがあり、前記厚さが3μmを超過する場合、炭素量が増加することにより複合体の容量が減少するだけでなく、イオン伝導性が減少して出力特性が低下する恐れがある。
【0041】
また、本発明の一実施形態に係る負極活物質は、前記上述したコア及びシェル層を含む構造として、その大きさは平均粒度(D50)基準3μm~10μmであってもよく、より好ましくは、5μm~8μmであってもよい。
【0042】
前記コア-シェル構造複合体の平均粒度(D50)が3μm未満である場合、微粉によって電極製造工程で分散性が低下する問題が発生する可能性があり、10μmを超過する場合には、複合体の体積膨張による電極膨張が深化して、寿命及び安全性の問題が発生するお恐れがある。
【0043】
本発明の一態様によれば、金属ナノ粒子を溶媒に分散させるステップ(S1)、前記分散した溶液を噴霧乾燥して球状の金属前駆体粉末を製造するステップ(S2)、前記球状の金属前駆体粉末を非晶質炭素前駆体及び結晶質炭素と混合して複合化するステップ(S3)、及び1100℃~1400℃で3時間~8時間の間に熱処理するステップ(S4)を含む負極活物質製造方法を提供する。
【0044】
前記ステップ(S1)は、すでに製造された金属ナノ粒子を用いて溶媒に分散させるものであってもよく、前記ステップ(S1)以前に金属粒子の粉砕過程を経て金属ナノ粒子を製造するステップを追加的に含んでもよい。
【0045】
前記粉砕過程を追加的に含む場合、ミーリング(milling)などを介して金属粒子を特定の大きさ(例えば、80nm~130nm)のナノサイズの大きさで粉砕し、ここで使用される金属粒子の種類として、上記で詳述した金属粒子の種類と実質的に同一であると見ることができる。
【0046】
その一例として、前記金属粒子は、シリコンナノ粒子、シリコン酸化物ナノ粒子、シリコン炭化物ナノ粒子、及びシリコン合金ナノ粒子からなる群より選択された1つ以上のシリコン含有ナノ粒子であってもよく、より好ましくは、シリコンナノ粒子であってもよい。
【0047】
また、前記溶媒は、メタノール、エタノール、プロパノール、及びブタノールからなる群より選択された1つ以上を含む溶媒であってもよく、好ましくは、イソプロピルアルコール(IPA)を含む溶媒であってもよい。
【0048】
また、前記ステップ(S2)を介して形成された球状の金属前駆体粉末を、非晶質炭素前駆体及び結晶質炭素前駆体を混合してハンソルケミカルで自体製造した複合化器などを介して、大気又は不活性の雰囲気の条件下で、1分~24時間の間、40℃~250℃の反応温度で複合化を実施し(ステップ(S3))、前記ステップ(S3)を介して、コア-シェル構造複合体の構造を製造することができる。前記球状の金属前駆体粉末と混合されている結晶質炭素及び非晶質炭素の種類として、上記で詳述した結晶質炭素及び非晶質炭素と実質的に同一であると見ることができる。
【0049】
さらに、前記ステップ(S3)において、球状の金属前駆体粉末と非晶質炭素前駆体の混合重量比を40:20~40:35の範囲内に調節することで、炭化ケイ素(SiC)などの金属炭化物粒子が負極活物質シェル層に50以上100以下の数密度を有するように製造でき、前記範囲未満(40:20未満、例えば、40:10など)である場合には、製造される負極活物質シェル層における数密度が50未満であってもよく、前記範囲を超過(40:35超過、例えば、40:40等)する場合には、前記数密度が100を超過することになる。
【0050】
このような場合には、前述したように、寿命特性及び出力特性などの面で劣位した結果をもたらす。
【0051】
さらに、前記ステップ(S4)の熱処理過程は、1100℃~1400℃で3時間~8時間の間に実施されるもので、前記温度範囲よりも低いか、熱処理時間がそれよりも少ない場合、炭化ケイ素(SiC)などのシリコン炭化物粒子がシェル層に充分に形成されないことがある。
【0052】
このような過程を介して形成された複合粉末は、最終的に325メッシュなどのふるい(sieve)工程を経て本発明の一実施形態に係る負極活物質として使用することができる。
【0053】
一方、本発明は、上記で詳述した負極活物質を含むリチウム二次電池も提供することができる。
【0054】
本発明の一実施形態に係る前記リチウム二次電池は、負極、正極、電解質、及び分離膜を構成要素として含み、前記負極は、前述した負極活物質の他に、当技術分野でリチウム電池の負極活物質として通常に使用される負極活物質材料を追加的に含んでもよい。前記通常に使用される負極活物質材料として、例えば、リチウム金属、リチウムと合金可能な金属、遷移金属酸化物、非遷移金属酸化物、及び炭素系材料からなる群より選択された1つ以上を含んでもよい。
【0055】
また、前記正極は正極活物質を含んでもよく、前記正極活物質の種類として、リチウム含有の金属酸化物に該当し、当技術分野で通常に使用されるものであれば本発明のリチウム二次電池に適用可能である。
【0056】
さらに、前記電解質は、リチウム塩含有の非水系電解質を含んでもよく、具体的に、非水電解液、固体電解質、無機固体電解質などを用いてもよい。
【0057】
一方、前記分離膜として、ガラス繊維、ポリエステル、テフロン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などの分離膜が前記正極と負極との間に配置してリチウム二次電池に含まれることができる。
【0058】
以下、実施形態と比較例を介して本発明の構成及びそれによる効果についてより詳細に説明する。しかし、本実施形態は、本発明をより具体的に説明するためのもので、本発明の範囲がこの実施形態に限定されることはない。
【0059】
実施形態
(1)負極活物質の製造
a)実施形態1
シリコンナノ粒子(D50=93nm)と微量のナノ炭素粒子が分散した溶液を噴霧乾燥して2次粒子前駆体を収得した。前記前駆体を石油系ピッチ及び黒鉛と40:25:35の重量比で混合して複合化装備(ハンソルケミカル自体製造)に投入した後、複合化を行って複合粉末を収得した。前記複合粉末を不活性の雰囲気で1100℃で3時間熱処理した後、ふるい(sieve)(325メッシュ)工程を経て収得された粉末を負極活物質として活用した。
【0060】
b)実施形態2
シリコン前駆体、石油系ピッチ及び黒鉛の比率を40:22:38の重量部で製造したことを除外しては上記の実施形態1と同様に実施し、負極活物質を製造した。
【0061】
c)実施形態3
シリコン前駆体、石油系ピッチ及び黒鉛の比率を40:28:32の重量部で製造したことを除外しては上記の実施形態1と同様に実施し、負極活物質を製造した。
【0062】
d)比較例1
複合化の工程時にシリコン前駆体をシリコンマイクロ粒子(D50=3μm)に適用したことを除外しては上記の実施形態1と同様に実施し、負極活物質を製造した。
【0063】
e)比較例2
複合化の工程時にシリコン前駆体をシリコンマイクロ粒子(D50=3μm)に適用したことを除外しては上記の実施例2と同様に実施し、陰極活物質を製造した。
【0064】
f)比較例3
複合化の工程時にシリコン前駆体をシリコンマイクロ粒子(D50=3μm)に適用したことを除外しては上記の実施形態3と同様に実施し、負極活物質を製造した。
【0065】
g)比較例4
シリコン前駆体、石油系ピッチ、及び黒鉛の比率を40:18:42の重量部で製造したことを除外しては上記の実施形態1と同様に実施し、負極活物質を製造した。
【0066】
h)比較例5
シリコン前駆体、石油系ピッチ、及び黒鉛の比率を40:38:22の重量部で製造したことを除外しては上記の実施形態1と同様に実施し、負極活物質を製造した。
【0067】
i)比較例6
熱処理条件を不活性の雰囲気で900℃で3時間熱処理を実施したことを除外しては上記の実施形態1と同様に実施し、負極活物質を製造した。
【0068】
(2)物性の評価方法(表1)
a)粒度測定
シリコン粒子及び前駆体の平均粒度は、前述した方式のように製造した負極活物質が分散した有機系溶液を用いて粒度測定計(Mastersizer3000、Malvern Panalytical)で測定した。
【0069】
b)炭素量の測定
前記製造された負極活物質を高温(2200℃以上)で燃焼して発生する気体の定量を介して(ELEMENTRAC CS-I、ELTRA)測定した。
【0070】
c)孔隙率の測定
下記の式1を介して、コア部の孔隙率を導き出した。
【数1】
【0071】
前記式(1)において、真密度は2.33g/ccであり、総孔隙体積はマイクロメトリックス(Micrometrics)社のTriStar II3020装備で測定した。また、総孔隙体積は、液体窒素温度(77K)で相対圧力変化による窒素ガスの吸着量を介して測定した。
【0072】
d)炭化ケイ素(SiC)粒子の数密度測定
上記の実施形態1~3及び比較例4~6で製造した負極活物質シェル部内の炭化ケイ素粒子を測定した。
【0073】
本測定において、Focused-ion beam(FIB)を用いて粉体の断面を加工し、FE-SEMを介して観察及び測定した。
【0074】
e)酸素量の測定
負極活物質を高温(3000℃以上)で燃焼して発生する気体の定量を介して(836 Series、LECO)測定した。
【0075】
f)結晶粒の測定(XRD)
XRD(X’pert、Malvern Panalytical)機器でCu-Kα線を測定しようとするサンプル粉末ペレットに走査して結晶構造を分析した。ここで、観察された結晶粒の大きさは、下記の数式を介して算出された。
【数2】
【0076】
上記の実施形態1~3及び比較例1~6で製造した負極活物質の粉体電気伝導度を測定した。
【0077】
本測定において、粉体をペレット化し、4-probe測定方式い基づいて粉体の電気伝導度を測定した。各負極活物質粉末500gを粉体抵抗測定容器に装入した後発生する電気抵抗を測定し、これを電気伝導度に変換し、ここで、粉体ペレットを圧縮しながら電気抵抗をリアルタイムに測定した。
【0078】
これに対する測定結果を下記の表1にまとめて示す。
【0079】
【表1】
【0080】
(3)コインセルの製造
a)コインハーフセルの製造
上記の実施形態1~3及び比較例1~6により製造された負極活物質、導電材(Super P)及びバインダー(SBR-CMC)を94:2:4の重量比で均一に混合して負極スラリーを準備した。前記負極スラリーを厚さが10μmである銅薄膜集電体にコーティングし、コーティング済みの電極は120℃で20分間乾燥させた後、圧延(pressing)して負極を製造した。
【0081】
前記負極及び対極(counter electrode)として金属リチウムを使用し、分離膜としてポリエチレン(PE)分離膜を使用し、電解質としてエチレンカーボネート(Ethylene carbonate、EC):ジエチルカーボネート(Diethyl carbonate、DEC):ジメチルカーボネート(Dimethyl carbonate、DMC)=3:5:2の体積比で混合した溶媒に1.0M LiPFを溶解させたものを用いてCR2032タイプのコインハーフセルを製造した。
【0082】
b)コインフルセルの製造
前記コインハーフセルに使用された同じ負極を用いて、正極は次のように製造した。
【0083】
正極活物質として、LiNi0.6Co0.2Mn0.2、導電材(Super P)及びバインダー(PVDF)を95:2:3の重量比で混合して正極スラリーを準備した後、前記正極スラリーを厚さが12μmであるアルミホイルの集電体にコーティングし、コーティング済みの極板を120℃で15分間乾燥させ、圧延(pressing)して正極を製造した。
【0084】
前記製造された正極及び負極を使用し、分離膜としてPE分離膜を使用し、電解質としてEC:DEC:DMC=2:1:7の体積比+フルオロエチレンカーボネート(Fluoroethylene carbonate、FEC)5%混合溶媒に1.5M LiPFを溶解させたものを使用し、CR2032タイプのコインフルセルを製造した。
【0085】
(3)電気化学の評価方法(表2)
a)コインハーフセル
本発明に係る実施形態1~3及び比較例1~6で製造された負極活物質を用いて製造したコインハーフセルを、それぞれ25℃で0.1C rateの電流で電圧が0.01V(vs。Li)に達するまで定電流充電し、0.01Vを保持しながら電流が0.05Cになるまで定電圧充電した。充電済みのセルを10分間休止させた後、放電時に電圧が1.5V(vs.Li)に達するまで0.1Cの定電流で放電した(2回実施、初期formation)。
【0086】
一方、前記「C」はセルの放電速度として、セルの総容量を総放電時間に割って得られた値を意味する。
【0087】
初期充電容量及び初期放電容量は、1番目のサイクルにおける充電及び放電容量であり、これは下記の式から算出した。

初期効率[%]=(1番目のサイクル放電容量/1番目のサイクル充電容量)×100
【0088】
b)コインフルセル
実施形態1~3及び比較例1~6で製造された負極活物質を用いて製造したコインフルセルを、それぞれ25℃で0.1C rateの電流で電圧が4.2Vに達するまで定電流充電し、4.2Vを保持しながら電流が0.05Cになるまで定電圧充電した。充電済みのセルを10分間休止させた後、放電時に電圧が2.7Vに達するまで0.1Cの定電流で放電した(2回実施、初期formation)。
【0089】
その後、セルを25℃で1.0C rateの電流で電圧が4.2Vに達するまで定電流充電し、4.2Vを保持しながら電流が0.05Cになるまで定電圧充電した。充電済みのコインセルを10分間休止させた後、放電時に電圧が2.7Vに達するまで1.0Cの定電流で放電するサイクルを繰り返した(1~100番目のサイクル)。
【0090】
寿命特性は、下記の式から算出し、その結果を下記の表2及び図2に示した。

寿命特性[%]=(100番目のサイクル放電容量/1番目のサイクル放電容量)×100
【0091】
実施形態1~3及び比較例1~6によって製造された負極活物質を利用したセルの測定された出力特性は下記の式から算出し、その結果を下記の表2及び図3に示した。

出力特性[%]=(5.0Cの放電容量/0.1Cの放電容量)×100
【0092】
実施形態1~3及び比較例1~6によって製造された負極活物質を利用したセルの測定された電気抵抗(DCIR)は下記の式から算出し、下記の式で平衡状態(0)と電流印加状態(a)における電圧及び電流変化値の比率を介して測定した。

DC-iR[%]=[(V -V )/(I -I )]=[△V/△I]
【0093】
その結果を下記の表2に示した。
【0094】
【表2】
【0095】
これにより、本発明の一実施形態に係る負極活物質を含む実施形態1~3の場合が、単一シリコン粒子コアを含む比較例1~3に比べて、寿命特性及び出力特性に優れ、SiC粒子密度が50~100/μm範囲を超える比較例4~5及び、SiCを形成しない比較例6に比べて、寿命特性の面においてより良好であることが確認される。
【0096】
一方、比較例1~3の場合、DC-iR値が低く測定され、電気伝導度が高く示されたが、前述したように、比較例1~3は素材の構造が耐久性に不利であり、寿命/出力などで劣位した結果を示したことが分かる。
【0097】
以上、本発明の実施形態について図面を参照しながら詳細に説明したが、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、当技術分野で通常の知識を有する者であれば、前記に基づいて様々な技術的な修正及び変形を適用することができる。例えば、説明された技術が説明された方法とは異なる順に実行されたり、及び/又は説明された構成要素が説明された方法とは異なる形態に結合又は組み合せられたり、他の構成要素又は均等物によって代替、置換されても、適切な結果を達成することができる。
【0098】
従って、他の実現、他の実施形態、及び特許請求の範囲と均等なものなども後述する請求範囲の範囲に属する。
【符号の説明】
【0099】
10:炭化ケイ素(SiC)粒子
20:シリコンナノ粒子
30:炭素系シェル層
図1
図2
図3
図4
図5