(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024077631
(43)【公開日】2024-06-07
(54)【発明の名称】エルトロンボパグ オラミンを有効成分とする医薬組成物とその製造方法及び類縁物質の増加を抑制する方法
(51)【国際特許分類】
A61K 31/4152 20060101AFI20240531BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20240531BHJP
A61K 47/32 20060101ALI20240531BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20240531BHJP
A61K 9/20 20060101ALI20240531BHJP
A61K 9/28 20060101ALI20240531BHJP
A61P 7/06 20060101ALI20240531BHJP
【FI】
A61K31/4152
A61K47/26
A61K47/32
A61K47/38
A61K9/20
A61K9/28
A61P7/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023200986
(22)【出願日】2023-11-28
(31)【優先権主張番号】P 2022189540
(32)【優先日】2022-11-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】591040753
【氏名又は名称】東和薬品株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100159385
【弁理士】
【氏名又は名称】甲斐 伸二
(74)【代理人】
【識別番号】100163407
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 裕輔
(74)【代理人】
【識別番号】100166936
【弁理士】
【氏名又は名称】稲本 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100174883
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 雅己
(74)【代理人】
【識別番号】100189429
【弁理士】
【氏名又は名称】保田 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100213849
【弁理士】
【氏名又は名称】澄川 広司
(72)【発明者】
【氏名】織田 綾香
(72)【発明者】
【氏名】堤 雄洋
(72)【発明者】
【氏名】林 英治
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA36
4C076AA44
4C076BB01
4C076CC14
4C076DD67
4C076EE06
4C076EE16
4C076EE32
4C076FF04
4C076FF05
4C076FF21
4C076FF36
4C076FF63
4C076GG01
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC36
4C086GA14
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA35
4C086MA52
4C086NA03
4C086ZA55
(57)【要約】
【課題】還元糖を含む賦形剤を含んでいても、エルトロンボパグ オラミンの類縁物質の増加を抑制することを可能とする医薬組成物とその製造方法を提供することを課題とする。
【解決手段】エルトロンボパグ オラミンと、還元糖を含む賦形剤とを含む医薬組成物において、還元糖の含有量を、エルトロンボパグ オラミンの含有量に対して17.5質量%以上120質量%以下とし、且つ、(i)医薬組成物の質量に対するエルトロンボパグ オラミンの含有量が、10質量%以上30質量%以下とすること、及び/又は(ii)結合剤としてポリビニルアルコールを用いることにより、上記の課題を解決する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エルトロンボパグ オラミンと、還元糖を含む賦形剤とを含む医薬組成物であって、
前記医薬組成物における前記還元糖の含有量が、前記エルトロンボパグ オラミンの含有量に対して17.5質量%以上120質量%以下であり、且つ
以下の(i)及び(ii):
(i) 前記医薬組成物の質量に対する前記エルトロンボパグ オラミンの含有量が、10質量%以上30質量%以下である、及び
(ii) 結合剤としてポリビニルアルコールを含む
から選択される少なくとも1つの特徴を有する、
エルトロンボパグ オラミンを有効成分とする医薬組成物。
【請求項2】
前記エルトロンボパグ オラミンの含有量が、15 mg以上128 mg以下である請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記医薬組成物が前記(i)及び(ii)のいずれか1つの特徴を有する場合、前記医薬組成物における前記還元糖の含有量が、前記エルトロンボパグ オラミンの含有量に対して40質量%以下である請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記医薬組成物が前記(i)及び(ii)のいずれか1つの特徴を有する場合、前記医薬組成物における前記還元糖の含有量が、前記エルトロンボパグ オラミンの含有量に対して35質量%以下である請求項3に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記(i)において、前記医薬組成物の質量に対する前記エルトロンボパグ オラミンの含有量が、15質量%以上20質量%以下である請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記医薬組成物が前記(i)の特徴を有する場合、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース及びエチルセルロースからなる群より選択される少なくとも1種の結合剤を含み、且つポリビニルアルコールを含まない請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記医薬組成物が前記(ii)の特徴を有する場合、前記医薬組成物における前記還元糖の含有量が、前記エルトロンボパグ オラミンの含有量に対して40質量%より高く且つ120質量%以下である請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記医薬組成物が前記(ii)の特徴を有する場合、前記医薬組成物の質量に対する前記エルトロンボパグ オラミンの含有量が、8質量%以上20質量%以下である請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記還元糖が、乳糖、マルトース、グルコース、アラビノース、フルクトース、ガラクトース及びセロビオースからなる群より選択される少なくとも1種である請求項1~8のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記還元糖を含む賦形剤が、結晶セルロース、マンニトール、粉末セルロース、デンプン、アルファー化デンプン、ラクチトール、ソルビトール、マルトデキストリン、キシリトール及びマルチトールからなる群より選択される少なくとも1種と、前記還元糖とを含む請求項1~8のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項11】
前記医薬組成物が、錠剤である請求項1~8のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項12】
前記錠剤が、フィルムコーティング錠である請求項11に記載の医薬組成物。
【請求項13】
エルトロンボパグ オラミンと、還元糖を含む賦形剤とを混合して、エルトロンボパグ オラミンを含む医薬組成物を得ることを含む、医薬組成物の製造方法であって、
1剤形の前記医薬組成物における前記還元糖の含有量が、前記エルトロンボパグ オラミンの含有量に対して17.5質量%以上120質量%以下であり、且つ
1剤形の前記医薬組成物が、以下の(i)及び(ii):
(i) 1剤形の前記医薬組成物の質量に対する前記エルトロンボパグ オラミンの含有量が、10質量%以上30質量%以下である、及び
(ii) 結合剤としてポリビニルアルコールを含む
から選択される少なくとも1つの特徴を有する、
エルトロンボパグ オラミンを有効成分とする医薬組成物の製造方法。
【請求項14】
エルトロンボパグ オラミンと、還元糖を含む賦形剤とを混合して、エルトロンボパグ オラミンを含む医薬組成物を製造する工程を含み、前記工程において、
1剤形の前記医薬組成物における前記還元糖の含有量が、前記エルトロンボパグ オラミンの含有量に対して17.5質量%以上120質量%以下であり、且つ
1剤形の前記医薬組成物が、以下の(i)及び(ii):
(i) 1剤形の前記医薬組成物の質量に対する前記エルトロンボパグ オラミンの含有量が、10質量%以上30質量%以下である、及び
(ii) 結合剤としてポリビニルアルコールを含む
から選択される少なくとも1つの特徴を有する前記医薬組成物を製造することにより、エルトロンボパグ オラミンを有効成分とする医薬組成物の類縁物質の増加を抑制する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エルトロンボパグ オラミンを有効成分とする医薬組成物に関する。本発明は、エルトロンボパグ オラミンを有効成分とする医薬組成物の製造方法に関する。本発明は、エルトロンボパグ オラミンを有効成分とする医薬組成物の類縁物質の増加を抑制する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エルトロンボパグ オラミンは、下記の構造式で示される化合物であり、その化学名は、3'-{(2Z)-2-[1-(3,4-ジメチルフェニル)-3-メチル-5-オキソ-1,5-ジヒドロ-4H-ピラゾール-4-イリデン]ヒドラジノ}-2'-ヒドロキシビフェニル-3-カルボン酸ビス(2-アミノエタノール)である。構造式から分かるように、エルトロンボパグ オラミンは、エルトロンボパグと2-アミノエタノールとの塩である。薬効はエルトロンボパグが示す。具体的には、エルトロンボパグは、トロンボポイエチン受容体のアゴニストであり、血小板産生促進作用及び造血促進作用を有する。なお、オラミンとは、エタノールアミンの略称であり、2-アミノエタノールを指す。
【0003】
【0004】
乳糖などの還元糖は、医薬組成物の賦形剤としてよく用いられる。しかし、エルトロンボパグ オラミンと還元糖とが接触すると、メイラード反応が生じてエルトロンボパグ オラミンが分解し、類縁物質が生成されることが知られている。そのような有害な事象を避けるため、特許文献1では、エルトロンボパグ オラミンを含む錠剤は、還元糖を実質的に含まないことが規定されている。特許文献2では、湿式造粒による錠剤の製造において、エルトロンボパグ オラミンを含む粒状組成物を調製するときには還元糖を添加せず、当該組成物に崩壊剤などの錠剤用添加物を混合する際に、還元糖を含む賦形剤を添加して、錠剤を製造することが記載されている。このように、特許文献2の製造方法では、粒状組成物においてはエルトロンボパグ オラミンと還元糖とが接触しないので、結果としてエルトロンボパグ オラミンの類縁物質が低減する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2010-526140号公報
【特許文献2】国際公開第2018/197088号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、還元糖を含む賦形剤を含んでいても、エルトロンボパグ オラミンの類縁物質の増加を抑制することを可能とする医薬組成物とその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、医薬組成物においてエルトロンボパグ オラミンと、還元糖を含む賦形剤とが共に含まれていても、エルトロンボパグ オラミンの類縁物質の増加が抑制され得る新規な処方を見出して、本発明を完成した。よって、本発明は、エルトロンボパグ オラミンと、還元糖を含む賦形剤とを含む医薬組成物であって、前記医薬組成物における前記還元糖の含有量が、前記エルトロンボパグ オラミンの含有量に対して17.5質量%以上120質量%以下であり、且つ、以下の(i)及び(ii):
(i) 前記医薬組成物の質量に対する前記エルトロンボパグ オラミンの含有量が、10質量%以上30質量%以下である、及び
(ii) 結合剤としてポリビニルアルコールを含む
から選択される少なくとも1つの特徴を有する、エルトロンボパグ オラミンを有効成分とする医薬組成物を提供する。
【0008】
本発明は、エルトロンボパグ オラミンと、還元糖を含む賦形剤とを混合して、エルトロンボパグ オラミンを含む医薬組成物を得ることを含む、医薬組成物の製造方法であって、1剤形の前記医薬組成物における前記還元糖の含有量が、前記エルトロンボパグ オラミンの含有量に対して17.5質量%以上120質量%以下であり、且つ、1剤形の前記医薬組成物が、以下の(i)及び(ii):
(i) 1剤形の前記医薬組成物の質量に対する前記エルトロンボパグ オラミンの含有量が、10質量%以上30質量%以下である、及び
(ii) 結合剤としてポリビニルアルコールを含む
から選択される少なくとも1つの特徴を有する、エルトロンボパグ オラミンを有効成分とする医薬組成物の製造方法を提供する。
【0009】
本発明は、エルトロンボパグ オラミンと、還元糖を含む賦形剤とを混合して、エルトロンボパグ オラミンを含む医薬組成物を製造する工程を含み、前記工程において、1剤形の前記医薬組成物における前記還元糖の含有量が、前記エルトロンボパグ オラミンの含有量に対して17.5質量%以上120質量%以下であり、且つ1剤形の前記医薬組成物が、以下の(i)及び(ii):
(i) 1剤形の前記医薬組成物の質量に対する前記エルトロンボパグ オラミンの含有量が、10質量%以上30質量%以下である、及び
(ii) 結合剤としてポリビニルアルコールを含む
から選択される少なくとも1つの特徴を有する前記医薬組成物を製造することにより、エルトロンボパグ オラミンを有効成分とする医薬組成物の類縁物質の増加を抑制する方法を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、エルトロンボパグ オラミンと、還元糖を含む賦形剤とを含む医薬組成物において、類縁物質の増加を抑制することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
類縁物質とは、有効成分の分解生成物の総称であり、温度(熱)、湿度(水分)、光、添加物との相互作用などの種々の要因により生じる。エルトロンボパグ オラミンの類縁物質は、例えば、上述のとおり、エルトロンボパグ オラミンと還元糖との接触により生じる。当該類縁物質には、エルトロンボパグ オラミンと還元糖とのメイラード反応による生成物も包含される。エルトロンボパグ オラミンの類縁物質の種類は特に限定されず、構造が未知の物質であってもよい。類縁物質の検出方法は特に限定されないが、例えば、後述の実施例のように、液体クロマトグラフィーによる分析で、エルトロンボパグ オラミンをメインピークとする相対保持時間に基づいて、類縁物質を検出してもよい。
【0012】
本実施形態の医薬組成物におけるエルトロンボパグ オラミンの含有量は特に限定されないが、例えば15 mg以上128 mg以下であり得る。ここで、当該含有量は、1剤形の本実施形態の医薬組成物に含まれるエルトロンボパグ オラミンの質量である。本明細書において、「1剤形」とは、医薬組成物の剤形に応じた単位量をいう。本実施形態の医薬組成物の剤形は特に限定されないが、例えば、本実施形態の医薬組成物が顆粒剤又は散剤である場合、1剤形とは、所定量の顆粒剤又は散剤が個別包装された1包の製剤である。この1包中の顆粒又は粉末に、エルトロンボパグ オラミンが例えば15 mg以上128 mg以下含まれる。また、本実施形態の医薬組成物が錠剤又はカプセル剤である場合、1剤形とは、1錠の錠剤又は1個のカプセル剤である。この場合、1錠の錠剤又は1個のカプセル剤(以下、「1カプセル」ともいう)の充填物中に、エルトロンボパグ オラミンが例えば15 mg以上128 mg以下含まれる。本実施形態の医薬組成物の剤形としては、顆粒剤、散剤、錠剤及びカプセル剤が好ましく、錠剤及びカプセル剤がより好ましく、錠剤が特に好ましい。
【0013】
15 mg以上128 mg以下のエルトロンボパグ オラミンは、エルトロンボパグの質量に換算すると、11.7 mg以上100 mg以下である。本実施形態の医薬組成物におけるエルトロンボパグ オラミンの含有量は、例えば15.9 mg、31.9 mg、63.2 mg、95.7 mg又は128 mg(それぞれエルトロンボパグとして、12.5 mg、25 mg、50 mg、75 mg又は100 mg)であり得る。
【0014】
本発明者らは、エルトロンボパグ オラミンと、還元糖を含む賦形剤とを含む医薬組成物において類縁物質の増加を抑制し得る特徴を2つ見出した。すなわち、本実施形態の医薬組成物は、これら2つの特徴の少なくとも1つを有する。1つ目の特徴は、本実施形態の医薬組成物の質量に対するエルトロンボパグ オラミンの含有量の比率を所定の範囲とすることである。すなわち、エルトロンボパグ オラミンの含有量は、本実施形態の医薬組成物の質量に対して10質量%以上30質量%以下である。ここで、医薬組成物の質量は、1剤形の本実施形態の医薬組成物の質量である。
【0015】
本実施形態の医薬組成物の質量に対するエルトロンボパグ オラミンの含有量の下限は、例えば10質量%、11質量%、12質量%、13質量%、14質量%又は15質量%であり得る。本実施形態の医薬組成物の質量に対するエルトロンボパグ オラミンの含有量の上限は、例えば30質量%、29質量%、28質量%、27質量%、26質量%、25質量%、24質量%、23質量%、22質量%、21質量%又は20質量%であり得る。好ましくは、エルトロンボパグ オラミンの含有量は、本実施形態の医薬組成物の質量に対して15質量%以上30質量%以下であり得る。より好ましくは、エルトロンボパグ オラミンの含有量は、本実施形態の医薬組成物の質量に対して15質量%以上20質量%以下であり得る。例えば、本実施形態の医薬組成物におけるエルトロンボパグ オラミンの含有量が15 mg以上128 mg以下である場合、上記の比率から、本実施形態の医薬組成物の質量を算出できる。例えば、本実施形態の医薬組成物がエルトロンボパグ オラミンを31.9 mg含む場合、当該医薬組成物の質量は106.3 mg以上319 mg以下、好ましくは106.3 mg以上212.66 mg以下、より好ましくは159.5 mg以上212.66 mg以下であり得る。
【0016】
類縁物質の増加を抑制し得る特徴の2つ目は、エルトロンボパグ オラミンと、還元糖を含む賦形剤とを含む医薬組成物が、結合剤としてポリビニルアルコール(以下、「PVA」とも呼ぶ)を含むことである。本実施形態の医薬組成物がこの特徴を有する場合、上記の比率に関する1つ目の特徴を有していなくてもよい。より具体的には、本実施形態の医薬組成物が結合剤としてポリビニルアルコールを含む場合、本実施形態の医薬組成物の質量に対するエルトロンボパグ オラミンの含有量は8質量%以上20質量%以下であり得る。
【0017】
本明細書では、「ポリビニルアルコール」との用語は、ポリビニルアルコールの完全けん化物及び部分けん化物の両方を包含する。両者を区別して示す場合は、以下、「ポリビニルアルコール(完全けん化物)」及び「ポリビニルアルコール(部分けん化物)」と表記する。ポリビニルアルコールの構造式は、けん化度が100 mol%より低い場合、-(CH2-CH(OH)-)n-(CH2-CH(OCOCH3)-)m-で表される。けん化度とは、ポリビニルアルコール中の酢酸基とヒドロキシ基との合計数に対するヒドロキシ基の割合(mol%)である。例えば、上記の構造式のポリビニルアルコールのけん化度は、[n/(n+m)]×100の式から算出される。けん化度が100 mol%のポリビニルアルコールは、-(CH2-CH(OH)-)n-で表される。ポリビニルアルコールのけん化度は特に限定されない。一般に、ポリビニルアルコール(完全けん化物)のけん化度は97 mol%以上であることが知られ、また、ポリビニルアルコール(部分けん化物)のけん化度は78 mol%以上96 mol%以下であることが知られている。
【0018】
ポリビニルアルコールの重合度は特に限定されない。一般に、ポリビニルアルコールの重合度の違いは、粘度で表されることが多い。ポリビニルアルコールの粘度は特に限定されないが、例えば濃度4%の溶液の20℃における粘度(動粘性率)が2 mm2/s以上100 mm2/s以下であり得る。粘度の測定法は、例えば日本薬局方に記載の回転粘度計法が挙げられる。あるいは、ポリビニルアルコールの粘度は、メーカー又は販売業者が開示した値であってもよい。
【0019】
ポリビニルピロリドンのK値は特に限定されないが、例えば10以上120以下であり、好ましくは30以上90以下である。K値とは、分子量と相関する粘性特性値である。ポリビニルピロリドンのK値の測定及び算出自体は公知であり、例えば、毛細管粘度計により測定したポリビニルピロリドン溶液の相対粘度値(25℃)をFikentscherの式に適用して算出できる。あるいは、ポリビニルピロリドンのK値は、メーカー又は販売業者が開示した値であってもよい。
【0020】
本実施形態の医薬組成物では、還元糖は、薬学的に許容される賦形剤として含まれるが、還元糖は、賦形剤としての機能の他に、賦形剤以外の添加剤の機能を提供してもよい。本実施形態において、賦形剤とは、含有量の少ない主薬(有効成分)にかさを与える添加物であり、製造時の取り扱いを容易にするために添加される。賦形剤は、増量剤又は希釈剤とも呼ばれる。還元糖が提供し得る、賦形剤以外の添加剤の機能としては、例えば、結合剤、安定剤、崩壊剤、甘味剤などの機能が挙げられる。
【0021】
還元糖は、分子内に遊離の又はヘミアセタール結合したアルデヒド基又はケトン基を有し、且つ還元性を示す糖である。還元糖の種類は特に限定されないが、例えば、乳糖、マルトース、グルコース、アラビノース、フルクトース、ガラクトース、セロビオースなどが挙げられる。本明細書において「乳糖」との用語は、乳糖の無水物及び水和物の両方を包含する。両者を区別して示す場合は、以下、「乳糖無水物」及び「乳糖水和物」と表記する。なお、乳糖水和物は、乳糖一水和物とも呼ばれる。還元糖は、一種でもよいし、二種以上を組み合わせてもよい。それらの中でも、乳糖水和物が特に好ましい。
【0022】
本実施形態の医薬組成物における還元糖の含有量は、エルトロンボパグ オラミンの含有量に対して17.5質量%以上120質量%以下である。ここで、還元糖の含有量は、1剤形の本実施形態の医薬組成物に含まれる還元糖の質量である。例えば、本実施形態の医薬組成物がエルトロンボパグ オラミンを31.9 mg含む場合、還元糖の含有量は5.58 mg以上38.28 mg以下であり得る。還元糖の含有量の下限は、エルトロンボパグ オラミンの含有量に対して、例えば17.5質量%、18質量%、18.5質量%、19質量%、19.5質量%又は20質量%であり得る。還元糖の含有量の上限は、エルトロンボパグ オラミンの含有量に対して、例えば120質量%、110質量%、100質量%、90質量%、80質量%、70質量%、60質量%、50質量%、45質量%、40質量%又は35質量%であり得る。好ましくは、本実施形態の医薬組成物における還元糖の含有量は、エルトロンボパグ オラミンの含有量に対して17.5質量%以上80質量%以下、20質量%以上80質量%以下、17.5質量%以上70質量%以下、又は、20質量%以上70質量%以下である。
【0023】
本実施形態の医薬組成物が、上記の2つの特徴のいずれか1つを有する場合、還元糖の含有量は、エルトロンボパグ オラミンの含有量に対して17.5質量%以上40質量%以下、20質量%以上40質量%以下、17.5質量%以上35質量%以下、又は、20質量%以上35質量%以下であり得る。より具体的には、本実施形態の医薬組成物の質量に対するエルトロンボパグ オラミンの含有量が10質量%以上30質量%以下である場合、還元糖の含有量は、エルトロンボパグ オラミンの含有量に対して17.5質量%以上40質量%以下、20質量%以上40質量%以下、17.5質量%以上35質量%以下、又は、20質量%以上35質量%以下であり得る。
【0024】
また、本実施形態の医薬組成物が結合剤としてポリビニルアルコールを含む場合、還元糖の含有量は、エルトロンボパグ オラミンの含有量に対して17.5質量%以上40質量%以下、20質量%以上40質量%以下、17.5質量%以上35質量%以下、又は、20質量%以上35質量%以下であり得る。あるいは、本実施形態の医薬組成物が結合剤としてポリビニルアルコールを含む場合、還元糖の含有量は、エルトロンボパグ オラミンの含有量に対して35質量%より高く且つ120質量%以下、又は、40質量%以上120質量%以下であってもよい。好ましくは、本実施形態の医薬組成物が結合剤としてポリビニルアルコールを含む場合、還元糖の含有量は、エルトロンボパグ オラミンの含有量に対して35質量%より高く且つ80質量%以下、35質量%以上70質量%以下、40質量%以上80質量%以下、又は、40質量%以上70質量%以下である。
【0025】
本実施形態の医薬組成物は、還元糖以外に、薬学的に許容される賦形剤をさらに含んでもよい。そのような賦形剤としては、例えば、セルロース類、デンプン類、糖アルコール類、マルトデキストリンなどが挙げられる。還元糖以外の賦形剤は、一種でもよいし、二種以上を組み合わせてもよい。セルロース類としては、結晶セルロース、粉末セルロース、などが挙げられる。デンプン類としては、デンプン、アルファー化デンプン、トウモロコシデンプンなどが挙げられる。糖アルコール類としては、マンニトール、ソルビトール、ラクチトール、キシリトール、マルチトールなどが挙げられる。それらの中でも、結晶セルロース、マンニトール、粉末セルロース、デンプン、アルファー化デンプン、ラクチトール、ソルビトール及びマルトデキストリンが好ましく、結晶セルロース及びマンニトールが特に好ましい。
【0026】
本実施形態の医薬組成物における還元糖の含有量は、還元糖を含む賦形剤の全質量に対して5質量%より高いことが好ましい。より好ましくは、本実施形態の医薬組成物における還元糖の含有量は、還元糖を含む賦形剤の全質量に対して5質量%より高く且つ35質量%以下である。ここで、還元糖を含む賦形剤の全質量は、1剤形の本実施形態の医薬組成物に含まれる還元糖の質量及び還元糖以外の賦形剤の質量の合計である。すなわち、1剤形の本実施形態の医薬組成物において、下記の式で算出される比率の値が、5より高く且つ35以下であればよい。
【0027】
(比率)={(還元糖の質量)/[(還元糖の質量)+(還元糖以外の賦形剤の質量)]}×100
【0028】
本実施形態の医薬組成物において、還元糖の含有量の下限は、還元糖を含む賦形剤の全質量に対して、例えば5.1質量%、5.2質量%、5.3質量%、5.4質量%、5.5質量%、5.6質量%、5.7質量%、5.8質量%、5.9質量%、6質量%、6.1質量%、6.2質量%、6.3質量%、6.4質量%、6.5質量%、7質量%、7.5質量%又は8質量%であり得る。還元糖の含有量の上限は、還元糖を含む賦形剤の全質量に対して、例えば35質量%、34質量%、33質量%、32質量%、31質量%、30質量%、29質量%、28質量%、27質量%、26質量%、25質量%、24質量%、23質量%、22質量%、21質量%、20質量%、19質量%、18質量%、17質量%、16質量%、15質量%、14質量%、13質量%、12質量%、11質量%、10質量%、9.5質量%、9質量%、8.5質量又は8質量%であり得る。還元糖を含む賦形剤の全質量に対する還元糖の含有量の範囲は、上記の下限の値及び上限の値から、数値上矛盾しない範囲を選択できる。例えば、還元糖の含有量は、還元糖を含む賦形剤の全質量に対して5質量%より高く且つ8.5質量%以下であってもよい。また、還元糖の含有量は、還元糖を含む賦形剤の全質量に対して8質量%以上10質量%以下であってもよい。好ましくは、還元糖の含有量は、還元糖を含む賦形剤の全質量に対して5質量%より高く且つ10質量%以下、又は6.5質量%以上9.5質量%以下、又は7質量%以上9質量%以下である。
【0029】
本実施形態の医薬組成物における還元糖の含有量は、当該医薬組成物の質量に対して3質量%より高く且つ25質量%以下であることが好ましい。ここで、医薬組成物の質量は、1剤形の本実施形態の医薬組成物の質量である。還元糖の含有量の下限は、本実施形態の医薬組成物の質量に対して、例えば3.1質量%、3.2質量%、3.3質量%、3.4質量%又は3.5質量%であり得る。還元糖の含有量の上限は、本実施形態の医薬組成物の質量に対して、例えば25質量%、24質量%、23質量%、22質量%、21質量%、20質量%、19質量%、18質量%、17質量%、16質量%、15質量%、14質量%、13質量%、12質量%、11質量%、10質量%、9.5質量%、9質量%、8.5質量%、8質量%、7.5質量%、7質量%又は6.5質量%であり得る。好ましくは、還元糖の含有量は、本実施形態の医薬組成物の質量に対して3質量%より高く且つ16質量%以下、3質量%より高く且つ10質量%以下、又は3質量%より高く且つ6.5質量%以下である。
【0030】
本実施形態の医薬組成物は、薬学的に許容される賦形剤以外に、薬学的に許容される添加剤をさらに含んでもよい。そのような添加剤としては、例えば、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、コーティング剤、着色剤などが挙げられる。賦形剤以外の添加剤は、一種でもよいし、二種以上を組み合わせてもよい。いずれの添加剤を含むかは、例えば、医薬品添加物の剤形に応じて適宜決定できる。好ましくは、本実施形態の医薬組成物は、結合剤をさらに含む。より好ましくは、本実施形態の医薬組成物は、結合剤、崩壊剤及び滑沢剤をさらに含む。さらにより好ましくは、本実施形態の医薬組成物は、結合剤、崩壊剤、滑沢剤及びコーティング剤をさらに含む。本実施形態の医薬組成物に配合された所定の添加剤が、当該医薬組成物において1つ以上の機能を提供し得るとしても、当業者であれば、当該添加剤の配合目的が、主要な1つの機能を提供するためであることを認識できる。
【0031】
結合剤としては、例えば、ビニル系高分子、セルロース類、アクリル系高分子、ヒドロキシプロピルスターチ、デキストリン、ステアリルアルコール、ゼラチン、アラビアゴム、プルラン、マクロゴールなどが挙げられる。結合剤は、一種でもよいし、二種以上を組み合わせてもよい。ビニル系高分子としては、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン(以下、「ポビドン」とも呼ぶ)、コポリビドン、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテートなどが挙げられる。セルロース類としては、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(ヒプロメロースとも呼ばれる)、エチルセルロースなどが挙げられる。アクリル系高分子としては、アミノアルキルメタクリレートコポリマー(E又はRS)、メタクリル酸コポリマー(L、LD又はS)、アクリル酸エチル・メタクリル酸メチルコポリマー分散液などが挙げられる。それらの中でも、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース及びエチルセルロースが好ましく、ポリビニルアルコール及びポリビニルピロリドンが特に好ましい。
【0032】
本実施形態の医薬組成物が、上記の比率に関する1つ目の特徴を有している場合、本実施形態の医薬組成物は、結合剤としてポリビニルアルコールを含まなくてもよい。より具体的には、本実施形態の医薬組成物の質量に対するエルトロンボパグ オラミンの含有量が10質量%以上20質量%以下であるとき、本実施形態の医薬組成物は、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース及びエチルセルロースからなる群より選択される少なくとも1種の結合剤を含み、且つポリビニルアルコールを含まない。
【0033】
本実施形態の医薬組成物における結合剤の含有量は、特に限定されないが、例えば、医薬組成物の質量に対して0.8質量%以上5質量%以下、好ましくは0.9質量%以上4質量%以下、より好ましくは1質量%以上3質量%以下であり得る。
【0034】
崩壊剤としては、例えば、デンプングリコール酸ナトリウム、クロスポビドン、クロスカルメロースナトリウム、カルメロース、カルメロースナトリウム、カルメロースカルシウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロースなどが挙げられる。それらの中でも、デンプングリコール酸ナトリウム、クロスポビドン及びクロスカルメロースナトリウムが好ましく、デンプングリコール酸ナトリウムが特に好ましい。崩壊剤は、一種でもよいし、二種以上を組み合わせてもよい。
【0035】
本実施形態の医薬組成物における崩壊剤の含有量は、特に限定されないが、例えば、医薬組成物の質量に対して4質量%以上7.5質量%未満、又は7.5質量%以上10質量%以下であり得る。医薬組成物の質量に対する崩壊剤の含有量は、5質量%以上7.5質量%未満、又は7.5質量%以上9質量%以下であることが好ましく、6質量%以上7.5質量%未満、又は7.5質量%以上8質量%以下であることがより好ましい。
【0036】
滑沢剤としては、例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、タルク、ステアリン酸、フマル酸ステアリルナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、流動パラフィン、オレイン酸ナトリウム、軽質無水ケイ酸、硬化植物油、などが挙げられる。それらの中でも、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、タルク、ステアリン酸及びフマル酸ステアリルナトリウムが好ましく、ステアリン酸マグネシウムが特に好ましい。滑沢剤は、一種でもよいし、二種以上を組み合わせてもよい。
【0037】
本実施形態の医薬組成物における滑沢剤の含有量は、特に限定されないが、例えば、医薬組成物の質量に対して0.7質量%以上2質量%以下、好ましくは0.8質量%以上1.5質量%以下、より好ましくは0.9質量%以上1質量%以下であり得る。
【0038】
コーティング剤としては、例えば、水溶性高分子、水不溶性高分子、胃溶性高分子、腸溶性高分子、水不溶性の非高分子などが挙げられる。コーティング剤は、一種でもよいし、二種以上を組み合わせてもよい。水溶性高分子としては、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、マクロゴール(ポリエチレングリコールともいう)のシリーズ(例えばマクロゴール400、マクロゴール600、マクロゴール1500、マクロゴール4000、マクロゴール6000、マクロゴール20000など)、ポリソルベート80(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレエートともいう)、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコールなどが挙げられる。ヒドロキシプロピルメチルセルロースは、「TC-5(登録商標)」の商品名のシリーズが市販されており、TC-5(登録商標) E及びTC-5(登録商標) Rが好ましく、TC-5(登録商標) Eがより好ましい。水不溶性高分子としては、エチルセルロース、メタクリル酸共重合体、メタクリル酸メチルとメタクリル酸ブチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチルの共重合体などが挙げられる。胃溶性高分子としては、アミノアルキルメタクリレートコポリマー、ポリビニルアルコールジエチルアミノアセテートなどが挙げられる。腸溶性高分子としては、メタクリル酸共重合体、セルロースアセテートフタレート、ヒプロメロースフタレート、ポリビニルアルコールアセテートフタレートなどが挙げられる。水不溶性の非高分子としては、酸化チタン、タルク、ケイ酸などが挙げられる。コーティング剤として、例えばOPADRY(登録商標)及びOPADRY(登録商標)IIのシリーズなどの市販のコーティング用組成物を用いてもよい。
【0039】
本実施形態の医薬組成物におけるコーティング剤の含有量は、特に限定されないが、例えば、医薬組成物の質量に対して2質量%以上5質量%以下、好ましくは2.5質量%以上4.5質量%以下、より好ましくは3質量%以上4質量%以下であり得る。
【0040】
着色剤としては、例えば、三二酸化鉄、黄色三二酸化鉄、酸化チタン、黄色4号アルミニウムレーキ、黄色5号アルミニウムレーキなどが挙げられる。着色剤は、一種でもよいし、二種以上を組み合わせてもよい。着色剤は、フィルムコーティング錠のコーティング部分に含まれることが好ましい。本実施形態の医薬組成物における着色剤の含有量は、特に限定されないが、例えば、コーティング剤の全質量に対して0.05質量%以上0.5質量%以下、好ましくは0.1質量%以上0.4質量%以下、より好ましくは0.15質量%以上0.3質量%以下であり得る。
【0041】
本実施形態の医薬組成物は、エルトロンボパグ オラミンと、還元糖を含む賦形剤とを含む限り、形態は特に限定されない。好ましい医薬組成物の形態は、固体剤形であり、例えば、錠剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤などが挙げられる。それらの中でも、錠剤が特に好ましい。錠剤は素錠でもよいし、コーティングされてもよい。素錠とは、コーティングされていない錠剤であり、裸錠とも呼ばれる。コーティングされた錠剤としては、例えば、フィルムコーティング錠、糖衣錠などが挙げられる。好ましくは、本実施形態の医薬組成物はフィルムコーティング錠である。フィルムコーティングには、上記のコーティング剤を用いることができる。
【0042】
配位金属は、エルトロンボパグ オラミンと接触すると、不溶性の金属複合体を形成して、医薬組成物からのエルトロンボパグ オラミンの溶解が遅くなり得ることが知られている。よって、本実施形態の医薬組成物は、配位金属を実質的に含まないことが好ましい。より具体的には、本実施形態の医薬組成物は、配位金属を含まないか、又は含むとしても、配位金属の含有量が、エルトロンボパグ オラミンの含有量に対して3質量%以下である。配位金属とは、金属錯体を形成し得る金属である。配位金属は、薬学的に許容される添加物にも含まれ得る。配位金属としては、例えば、アルミニウム、カルシウム、銅、コバルト、金、鉄、マグネシウム、マンガン及び亜鉛が挙げられる。
【0043】
本実施形態の医薬組成物は、エルトロンボパグ オラミンと、還元糖を含む賦形剤とを混合して、エルトロンボパグ オラミンを含む医薬組成物を得ることを含む製造方法により製造できる。当該製造方法において、エルトロンボパグ オラミンの形状は、固体であれば特に限定されず、例えば粉末、粒子などのいずれの形状であってもよい。好ましくは、エルトロンボパグ オラミンの粉末を用いる。還元糖及び賦形剤の詳細は上記のとおりである。好ましい実施形態では、還元糖として乳糖水和物を用い、還元糖以外の賦形剤として、マンニトール及び結晶セルロースを用いる。
【0044】
エルトロンボパグ オラミンと、還元糖を含む賦形剤とを混合する方法は、特に限定されない。例えば、エルトロンボパグ オラミンの粉末と還元糖を含む賦形剤の粉末とを含む混合粉末を得たい場合は、2種以上の粉末を混合できる公知の混合機を用いればよい。そのような混合機としては、例えば、拡散式混合機、対流式混合機などが挙げられる。また、エルトロンボパグ オラミンと、還元糖を含む賦形剤との混合物を含む粒状組成物を得たい場合は、2種以上の粉末を混合できる公知の造粒機を用いればよい。そのような造粒機としては、例えば、攪拌混合造粒機、流動層造粒乾燥機などが挙げられる。
【0045】
本実施形態の医薬組成物が散剤の場合、上記の混合により製造される、エルトロンボパグ オラミンの粉末と還元糖を含む賦形剤の粉末とを含む混合粉末を、エルトロンボパグ オラミンと、還元糖を含む賦形剤とを含む散剤として得ることができる。この場合、上記の混合は、1剤形当たりの散剤において、還元糖の含有量が、エルトロンボパグ オラミンの含有量に対して17.5質量%以上120質量%以下となり、且つ、1剤形当たりの散剤の質量に対するエルトロンボパグ オラミンの含有量が10質量%以上30質量%以下となるように行われる。1剤形当たりの散剤におけるエルトロンボパグ オラミンの含有量は、例えば15 mg以上128 mg以下であり得る。1剤形当たりの散剤におけるエルトロンボパグ オラミンの含有量を決定すれば、還元糖及び還元糖以外の賦形剤の量は、上記の比率から算出できる。そして、製造する散剤の量に応じて、1剤形当たりの散剤における各成分の分量をスケールアップすればよい。エルトロンボパグ オラミンの含有量に対する還元糖の含有量、及び1剤形当たりの散剤の質量に対するエルトロンボパグ オラミンの含有量の詳細は、本実施形態の医薬組成物について説明したとおりである。
【0046】
好ましい実施形態では、公知の造粒法により、エルトロンボパグ オラミンと、還元糖を含む賦形剤と、結合剤とを用いて、エルトロンボパグ オラミン及び還元糖を含む粒状組成物を得る。この場合、得られた粒状組成物を、顆粒剤の医薬組成物とすることができる。造粒法は、湿式造粒及び乾式造粒のいずれでもよいが、好ましくは湿式造粒である。湿式造粒では、エルトロンボパグ オラミンと還元糖を含む賦形剤との混合物と、結合剤を含む溶液又は懸濁液とを用いて、粒状組成物を得る。必要に応じて、上記の混合物に粉末状の結合剤及び/又は崩壊剤をさらに添加してから、湿式造粒を行ってもよい。あるいは、エルトロンボパグ オラミンと、還元糖を含む賦形剤と、結合剤及び/又は崩壊剤とを混合し、得られた混合物と、結合剤を含む溶液又は懸濁液とを用いて、湿式造粒により粒状組成物を得てもよい。結合剤及び崩壊剤の詳細は上記のとおりである。結合剤としては、ポリビニルアルコール又はポリビニルピロリドンが好ましい。崩壊剤としては、デンプングリコール酸ナトリウムが好ましい。
【0047】
顆粒剤の医薬組成物の質量に対するエルトロンボパグ オラミンの含有量が10質量%以上20質量%以下であるとき、当該医薬組成物はポリビニルアルコール以外の結合剤を含んでもよい。具体的には、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース及びエチルセルロースからなる群より選択される少なくとも1種の結合剤を含み、且つポリビニルアルコールを含まない。
【0048】
顆粒剤の医薬組成物が結合剤としてポリビニルアルコールを含む場合、還元糖の含有量は、エルトロンボパグ オラミンの含有量に対して40質量%より高く且つ120質量%以下であってもよい。また、顆粒剤の医薬組成物が結合剤としてポリビニルアルコールを含む場合、当該医薬組成物の質量に対するエルトロンボパグ オラミンの含有量は、8質量%以上20質量%以下であってもよい。
【0049】
上記の結合剤を含む溶液又は懸濁液は、湿式造粒に用いられる造粒液である。造粒液は、薬学的に許容される溶媒に、結合剤を溶解又は分散させることにより調製できる。薬学的に許容される溶媒としては、例えば、精製水、エタノール及びこれらの混液が挙げられる。それらの中でも、精製水が特に好ましい。
【0050】
湿式造粒の種類は特に限定されないが、例えば撹拌造粒、流動層造粒、押し出し造粒、転動造粒、解砕造粒、噴霧造粒などから適宜選択できる。湿式造粒は、公知の造粒機を用いて行うことができる。例えば、撹拌混合造粒機を用いる場合では、回転するブレードにより上記の混合粉末を撹拌した状態で、結合剤を含む溶液又は懸濁液を滴下又は噴霧することで、上記の混合粉末と、結合剤を含む溶液又は懸濁液とが混合及び分散されて、エルトロンボパグ オラミン及び還元糖を含む粒状組成物が生じる。
【0051】
好ましくは、湿式造粒により得られた粒状組成物を乾燥させる。乾燥手段は特に限定されず、例えば、真空乾燥、流動層乾燥、噴霧乾燥などから適宜選択できる。造粒機に乾燥機能が付加されている場合(例えば流動層造粒乾燥機など)、その造粒機により乾燥させてもよい。さらに、乾燥させた粒子が所定の粒度分布となるように、公知の整粒機を用いて整粒してもよい。
【0052】
上記のようにして得られた散剤の医薬組成物又は顆粒剤の医薬組成物をカプセルに充填することにより、硬カプセル剤の医薬組成物とすることができる。硬カプセル剤の医薬組成物では、1カプセル当たりのエルトロンボパグ オラミンの含有量は例えば15 mg以上128 mg以下となる量の散剤又は顆粒剤が充填され得る。このとき、1カプセルの充填物当たり、還元糖の含有量は、上記のエルトロンボパグ オラミンの含有量に対して17.5質量%以上120質量%以下となり、且つ、以下の(i)及び(ii):
(i) 1カプセルの充填物質量に対するエルトロンボパグ オラミンの含有量が、10質量%以上30質量%以下である、及び
(ii) 結合剤としてポリビニルアルコールを含む
から選択される少なくとも1つの特徴を有する。
【0053】
カプセルは、ゼラチン、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなどの薬学的に許容されるカプセル基剤から製造された硬カプセルであれば、特に限定されない。カプセルへの粉体の充填法自体は公知であり、例えばdisc式、compress式及びAuger式のいずれかの方式の充填機を用いることができる。
【0054】
上記のようにして得られたエルトロンボパグ オラミン及び還元糖を含む粒状組成物は、エルトロンボパグ オラミンを有効成分とする錠剤を製造するための打錠用混合物として用いることができる。本発明のさらなる実施形態では、エルトロンボパグ オラミンを有効成分とする錠剤の製造方法(以下、「錠剤の製造方法」ともいう)が提供される。本実施形態の錠剤の製造方法では、エルトロンボパグ オラミンと、還元糖を含む賦形剤とを混合する工程と、この混合する工程で得られた混合物と、結合剤を含む溶液又は懸濁液とを用いて、湿式造粒により粒状組成物を得る工程とを含む。本実施形態の錠剤の製造方法では、湿式造粒により得られた粒状組成物を乾燥させる工程を含むことが好ましい。これらの工程の詳細は上記のとおりである。
【0055】
本実施形態の錠剤の製造方法では、まず、エルトロンボパグ オラミンと、還元糖を含む賦形剤とを、製造される錠剤1錠当たりの還元糖の含有量が、エルトロンボパグ オラミンの含有量に対して17.5質量%以上120質量%以下となるように混合する。エルトロンボパグ オラミンの含有量は、例えば15 mg以上128 mg以下であり得る。エルトロンボパグオラミンの含有量に対する還元糖の含有量の比率の詳細は、本実施形態の医薬組成物について説明したとおりである。
【0056】
次いで、本実施形態の錠剤の製造方法では、上記のエルトロンボパグ オラミン及び還元糖を含む粒状組成物と、錠剤用添加物とを混合して、打錠用混合物を得る。この混合は、1錠当たりの錠剤の質量に対するエルトロンボパグ オラミンの含有量が10質量%以上30質量%以下となるように行われる。粒状組成物が結合剤としてポリビニルアルコールを含む場合は、混合は、1錠当たりの錠剤の質量に対するエルトロンボパグ オラミンの含有量が8質量%以上20質量%以下となるように行われてもよい。医薬組成物の質量に対するエルトロンボパグ オラミンの含有量の比率の詳細は、本実施形態の医薬組成物について説明したとおりである。
【0057】
錠剤用添加物は、錠剤の製造に通常用いられる、薬学的に許容される添加物である。錠剤用添加物は、例えば、還元糖以外の賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、甘味剤、着色剤などから適宜選択できる。これらの添加物の詳細は、上記のとおりである。錠剤用添加物として、還元糖以外の賦形剤、崩壊剤及び滑沢剤を用いることが好ましい。還元糖は、錠剤用添加物として用いないことが好ましい。還元糖以外の賦形剤としては、結晶セルロース及びマンニトールが好ましい。崩壊剤としては、デンプングリコール酸ナトリウムが好ましい。滑沢剤としては、ステアリン酸マグネシウムが好ましい。
【0058】
好ましくは、エルトロンボパグ オラミン及び還元糖を含む粒状組成物と、崩壊剤を含む錠剤用添加物との混合において、まず、当該粒状組成物と、滑沢剤を除く錠剤用添加物(例えば賦形剤及び崩壊剤)とを混合し、次いで、得られた混合物に滑沢剤を添加して混合し、打錠用混合物を得る。
【0059】
そして、本実施形態の錠剤の製造方法では、得られた打錠用混合物を圧縮成型して、エルトロンボパグ オラミンを有効成分とする錠剤を得る。打錠用混合物の圧縮成型は、公知の打錠機(例えばロータリ型打錠機)を用いて行うことができる。必要に応じて、得られた錠剤を、フィルムコーティング錠又は糖衣錠としてもよい。好ましくは、本実施形態の錠剤の製造方法は、錠剤をフィルムコーティングする工程をさらに含む。錠剤のコーティングは、パンコーティング法、流動層コーティング法などの公知の方法により行うことができる。フィルムコーティングに用いられるコーティング剤は、上記のとおりである。
【0060】
錠剤をフィルムコーティングする工程は、素錠をコーティング液で被覆する工程と、被覆された錠剤を乾燥する工程とを少なくとも含む。本実施形態の錠剤の製造方法では、被覆された錠剤を乾燥する工程(以下、「乾燥工程」とも呼ぶ)において、錠剤の水分を管理することが好ましい。錠剤の水分の管理は、乾燥工程において、所定の時間が経過するごとに1錠以上の錠剤を採取し、その錠剤の水分値を測定して、水分値が所定の値以下となるまで乾燥を続けることにより行うことができる。所定の値は、例えば3.5%、3.4%、3.3%、3.2%、3.1%、3%、2.9%、2.8%、2.7%、2.6%、2.5%、2.4%、2.3%、2.2%、2.1%、2%、1.9%又は1.8%であり得る。複数の錠剤について水分値を測定した場合、錠剤の水分値は、例えば平均値、中央値、最頻値などの統計学的代表値であってもよい。錠剤の水分値が所定の値以下であるとき、得られたFC錠の薬剤溶出性の遅延が抑制される。すなわち、FC錠の保存安定性が良好となる。錠剤の水分値の測定は、カールフィッシャー法、水分活性測定法などの公知の方法により測定できる。また、市販の水分計や水分測定装置を用いてもよい。
【0061】
本実施形態の錠剤の製造方法では、得られた錠剤1錠当たり、還元糖の含有量が、エルトロンボパグ オラミンの含有量に対して17.5質量%以上120質量%以下であり、且つ、以下の(i)及び(ii):
(i) 1錠の錠剤の質量に対するエルトロンボパグ オラミンの含有量が、10質量%以上20質量%以下である、及び
(ii) 結合剤としてポリビニルアルコールを含む
から選択される少なくとも1つの特徴を有する。錠剤1錠当たりのエルトロンボパグ オラミンの含有量は、例えば15 mg以上128 mg以下であり得る。
【0062】
錠剤1錠におけるエルトロンボパグ オラミンの含有量を決定すれば、還元糖及び還元糖以外の賦形剤の量は、上記の比率から算出できる。そして、製造する錠剤の数に応じて、錠剤1錠における各成分の分量をスケールアップすればよい。エルトロンボパグ オラミンの含有量に対する還元糖の含有量、及び1剤形当たりの散剤の質量に対するエルトロンボパグ オラミンの含有量の詳細は、本実施形態の医薬組成物について説明したとおりである。
【0063】
本発明のさらなる実施形態では、エルトロンボパグ オラミンを有効成分とする医薬組成物の類縁物質の増加を抑制する方法(以下、「類縁物質の抑制方法」ともいう)が提供される。この方法は、エルトロンボパグ オラミンと、還元糖を含む賦形剤とを混合して、エルトロンボパグ オラミンを含む医薬組成物を製造する工程を含む。当該工程では、以下の特徴を有するように医薬組成物が製造される。すなわち、1剤形の医薬組成物における還元糖の含有量が、エルトロンボパグ オラミンの含有量に対して17.5質量%以上120質量%以下であり、且つ
1剤形の医薬組成物が、以下の(i)及び(ii):
(i) 1剤形の医薬組成物の質量に対する前記エルトロンボパグ オラミンの含有量が、10質量%以上30質量%以下である、及び
(ii) 結合剤としてポリビニルアルコールを含む
から選択される少なくとも1つの特徴を有する。そのような特徴を有するように医薬組成物を製造することにより、当該医薬組成物における類縁物質の増加が抑制される。
【0064】
本発明の別の実施形態は、エルトロンボパグ オラミンと、還元糖を含む賦形剤とを含む医薬組成物であって前記医薬組成物の質量に対して15質量%以上30質量%以下であり、前記医薬組成物における前記還元糖の含有量が、前記エルトロンボパグ オラミンの含有量に対して17.5質量%以上35質量%以下である、エルトロンボパグ オラミンを有効成分とする医薬組成物に関する。この医薬組成物において、エルトロンボパグ オラミンの含有量は、例えば15 mg以上128 mg以下であり得る。
【0065】
本発明の別の実施形態は、エルトロンボパグ オラミンと、還元糖を含む賦形剤とを混合して、エルトロンボパグ オラミンを含む医薬組成物を得ることを含む、医薬組成物の製造方法であって、1剤形の前記医薬組成物の質量に対して15質量%以上30質量%以下であり、1剤形の前記医薬組成物おける前記還元糖の含有量が、前記エルトロンボパグ オラミンの含有量に対して17.5質量%以上35質量%以下である、エルトロンボパグ オラミンを有効成分とする医薬組成物の製造方法に関する。この製造方法において、1剤形の医薬組成物おけるエルトロンボパグ オラミンの含有量は、例えば15 mg以上128 mg以下であり得る。
【0066】
本発明の別の実施形態は、エルトロンボパグ オラミンと、還元糖を含む賦形剤とを混合する工程と、前記混合工程で得られた混合物と、結合剤を含む溶液又は懸濁液とを用いて、湿式造粒により粒状組成物を得る工程と、前記粒状組成物と、崩壊剤を含む錠剤用添加物とを混合して、打錠用混合物を得る工程と、前記打錠用混合物に滑沢剤を添加して圧縮成型して、錠剤を得る工程とを含む、錠剤の製造方法であって、1錠の前記錠剤の質量に対して15質量%以上30質量%以下であり、1錠の前記錠剤における前記還元糖の含有量が、前記エルトロンボパグ オラミンの含有量に対して17.5質量%以上35質量%以下である、エルトロンボパグ オラミンを有効成分とする錠剤の製造方法に関する。この製造方法において、1錠の錠剤におけるエルトロンボパグ オラミンの含有量は、例えば15 mg以上128 mg以下であり得る。
【0067】
本発明の別の実施形態は、エルトロンボパグ オラミンと、還元糖を含む賦形剤とを混合して、エルトロンボパグ オラミンを含む医薬組成物を製造する工程を含み、前記工程において、1剤形の前記医薬組成物の質量に対して15質量%以上30質量%以下であり、1剤形の前記医薬組成物おける前記還元糖の含有量が、前記エルトロンボパグ オラミンの含有量に対して17.5質量%以上35質量%以下である前記医薬組成物を製造することにより、エルトロンボパグ オラミンを有効成分とする医薬組成物の類縁物質の増加を抑制する方法に関する。
【0068】
本発明のさらなる別の実施形態は、エルトロンボパグ オラミンと、還元糖を含む賦形剤と、ポリビニルアルコールを含む医薬組成物であって、前記医薬組成物における前記還元糖の含有量が、前記エルトロンボパグ オラミンの含有量に対して17.5質量%以上120質量%以下である、エルトロンボパグ オラミンを有効成分とする医薬組成物に関する。この医薬組成物において、エルトロンボパグ オラミンの含有量は、例えば15 mg以上128 mg以下であり得る。
【0069】
本発明のさらなる別の実施形態は、エルトロンボパグ オラミンと、還元糖を含む賦形剤と、ポリビニルアルコールとを混合して、エルトロンボパグ オラミンを含む医薬組成物を得ることを含む、医薬組成物の製造方法であって、1剤形の前記医薬組成物おける前記還元糖の含有量が、前記エルトロンボパグ オラミンの含有量に対して17.5質量%以上120質量%以下である、エルトロンボパグ オラミンを有効成分とする医薬組成物の製造方法に関する。この製造方法において、1剤形の医薬組成物おけるエルトロンボパグ オラミンの含有量は、例えば15 mg以上128 mg以下であり得る。
【0070】
本発明のさらなる別の実施形態は、エルトロンボパグ オラミンと、還元糖を含む賦形剤とを混合する工程と、前記混合工程で得られた混合物と、ポリビニルアルコールを含む溶液又は懸濁液とを用いて、湿式造粒により粒状組成物を得る工程と、前記粒状組成物と、崩壊剤を含む錠剤用添加物とを混合して、打錠用混合物を得る工程と、前記打錠用混合物に滑沢剤を添加して圧縮成型して、錠剤を得る工程とを含む、錠剤の製造方法であって、1錠の前記錠剤における前記還元糖の含有量が、前記エルトロンボパグ オラミンの含有量に対して17.5質量%以上120質量%以下である、エルトロンボパグ オラミンを有効成分とする錠剤の製造方法に関する。この製造方法において、1錠の錠剤におけるエルトロンボパグ オラミンの含有量は、例えば15 mg以上128 mg以下であり得る。
【0071】
本発明のさらなる別の実施形態は、エルトロンボパグ オラミンと、還元糖を含む賦形剤と、ポリビニルアルコールとを混合して、エルトロンボパグ オラミンを含む医薬組成物を製造する工程を含み、前記工程において、1剤形の前記医薬組成物おける前記還元糖の含有量が、前記エルトロンボパグ オラミンの含有量に対して17.5質量%以上120質量%以下である前記医薬組成物を製造することにより、エルトロンボパグ オラミンを有効成分とする医薬組成物の類縁物質の増加を抑制する方法に関する。
【0072】
ポリビニルアルコールを含む本実施形態の医薬組成物においては、還元糖の含有量が、ポリビニルアルコールを含まない医薬組成物より多くても、類縁物質の増加が低減され得る。ポリビニルアルコールを含む本実施形態の医薬組成物では、還元糖の含有量の下限は、エルトロンボパグ オラミンの含有量に対して、例えば35質量%、36質量%、37質量%、38質量%、39質量%、40質量%、45質量%又は50質量%であってもよい。還元糖の含有量の上限は、エルトロンボパグ オラミンの含有量に対して、例えば120質量%、115質量%、110質量%、105質量%、100質量%、95質量%、90質量%、80質量%、75質量%、70質量%、65質量%、60質量%又は55質量%であってもよい。例えば、還元糖の含有量は、エルトロンボパグ オラミンの含有量に対して35質量%より高く且つ120質量%以下、又は、40質量%以上120質量%以下であってもよい。好ましくは、還元糖の含有量は、エルトロンボパグ オラミンの含有量に対して35質量%より高く且つ80質量%以下、35質量%以上70質量%以下、40質量%以上80質量%以下、又は、40質量%以上70質量%以下である。
【0073】
以下に、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例0074】
[試験例1]
試験例1では、同量のエルトロンボパグ オラミンを含むフィルムコーティング(FC)錠を、標準的な錠剤の処方(比較例)、添加物の量を変更した処方(実施例1)及び添加物の量及び結合剤の種類を変更した処方(実施例2~4)で、後述のように一般的なFC錠の製造方法により製造した。そして、各FC錠における類縁物質の生成量を比較した。表1に、比較例及び実施例1~4のFC錠の処方(1錠当たりの成分量)を示す。表中、各成分の数値の単位はいずれも「mg」である。
【0075】
【0076】
1.FC錠の製造
(1.1) 比較例のFC錠の製造
エルトロンボパグ オラミンの粉末、結晶セルロース、D-マンニトール及び乳糖水和物を撹拌混合造粒機で混合して、混合粉末を得た。ポリビニルピロリドンを精製水に溶解して、造粒液を得た。撹拌混合造粒機により、上記の混合粉末に造粒液をスプレーして造粒し、造粒物を得た。造粒物を整粒機により解砕し、流動層造粒乾燥機を用いて乾燥した。整粒機を用いて、解砕及び乾燥した造粒物を整粒して、エルトロンボパグ オラミンを含む粒状組成物を得た。得られた粒状組成物、結晶セルロース及びデンプングリコール酸ナトリウムをタンブラーミキサーで混合して、混合粉末を得た。この混合粉末の一部を取り、ステアリン酸マグネシウムと混合して倍散末にした。この倍散末と残りの混合粉末とをタンブラーミキサーで混合して、打錠用混合物を得た。得られた打錠用混合物をロータリー式打錠機で打錠し、エルトロンボパグ オラミンを含む素錠を得た。マクロゴール400とポリソルベート80との混液に、ヒプロメロース(TC-5(登録商標) R)及び酸化チタンを加えて分散させ、コーティング液を得た。パンコーティング装置を用いて、エルトロンボパグ オラミンを含む素錠をコーティング液で被覆して、比較例のFC錠を得た。
【0077】
(1.2) 実施例1のFC錠の製造
1錠当たりの成分量が表1に示された値となるように各成分の量を変更したこと以外は、比較例のFC錠の製造と同様にして、実施例1のFC錠を製造した。実施例1のFC錠は、比較例のFC錠と比べて、添加物の量、特に還元糖を含む賦形剤の量を減らして、錠剤を小型化したものであった。
【0078】
(1.3) 実施例2のFC錠の製造
エルトロンボパグ オラミンの粉末、結晶セルロース、D-マンニトール、乳糖水和物及びポリビニルアルコール(部分けん化物)を撹拌混合造粒機で混合して、混合粉末を得た。ポリビニルアルコール(部分けん化物)を精製水に溶解して、造粒液を得た。撹拌混合造粒機により、上記の混合粉末に造粒液をスプレーして造粒し、造粒物を得た。造粒物を整粒機により解砕し、流動層造粒乾燥機を用いて乾燥した。整粒機を用いて、解砕及び乾燥した造粒物を整粒して、エルトロンボパグ オラミンを含む粒状組成物を得た。得られた粒状組成物、結晶セルロース及びデンプングリコール酸ナトリウムをタンブラーミキサーで混合して、混合粉末を得た。この混合粉末の一部を取り、ステアリン酸マグネシウムと混合して倍散末にした。この倍散末と残りの混合粉末とをタンブラーミキサーで混合して、打錠用混合物を得た。得られた打錠用混合物を、ロータリー式打錠機を用いて打錠し、エルトロンボパグ オラミンを含む素錠を得た。マクロゴール400とポリソルベート80との混液に、ヒプロメロース(TC-5(登録商標) R)及び酸化チタンを加えて分散させ、コーティング液を得た。パンコーティング装置を用いて、エルトロンボパグ オラミンを含む素錠をコーティング液で被覆して、実施例2のFC錠を得た。実施例2のFC錠は、比較例のFC錠と同じサイズであるが、結合剤をポリビニルピロリドンからポリビニルアルコールに変更し、還元糖の量を少し増やしたものであった。
【0079】
(1.4) 実施例3及び4のFC錠の製造
1錠当たりの成分量が表1に示された値となるように各成分の量を変更したこと以外は、実施例2のFC錠の製造と同様にして、実施例3及び4のFC錠を製造した。実施例3のFC錠は、比較例のFC錠と比べて、結合剤をポリビニルピロリドンからポリビニルアルコールに変更し、且つ添加物の量、特に還元糖を含む賦形剤の量を減らして、錠剤を小型化したものであった。実施例4のFC錠は、実施例3のFC錠をさらに小型化したものであった。
【0080】
(1.5) 各FC錠のパラメータ
比較例及び実施例1~4の各FC錠における有効成分(エルトロンボパグ オラミン)の含有量、還元糖(乳糖水和物)の含有量、及び還元糖を含む賦形剤の全質量、並びに各FC錠の質量に基づいて、各FC錠の特徴を示すパラメータとして、有効成分の含有量に対する還元糖の比率、還元糖を含む賦形剤の全質量に対する還元糖の比率、FC錠の質量に対する有効成分の含有量の比率、及び、FC錠の質量に対する還元糖の含有量の比率を算出した。結果を表2に示す。
【0081】
【0082】
2.安定性試験
比較例及び実施例1~4のFC錠をそれぞれアルミピロー包装し、それらをポリエチレン製の密閉容器(以下、PE瓶ともいう)に入れ、70℃の環境下で9日間貯蔵した。別の試験として、比較例及び実施例1~4のFC錠をそれぞれシャーレ内に置き、ふたをせずに25℃且つ75%RH(相対湿度)の環境下で1ヶ月間貯蔵した。製造直後及び貯蔵後の各FC錠における類縁物質の量を、次のように測定した。まず、FC錠を一定量の溶解液にて抽出し、アセトニトリルを加えた後、メンブランフィルターでろ過して試料溶液を得た。各試料溶液を、下記の条件で液体クロマトグラフィーにより分析した。試料溶液の各々のピーク面積を自動積分法により測定し、面積百分率法によりそれらの量を求めた。上記の溶解液は、リン酸二水素カリウム(1.36 g)及び無水リン酸水素二ナトリウム(0.44 g)を水(1000 mL)に溶解して調製した。
【0083】
<試験条件>
検出器:紫外吸光光度計(測定波長:247 nm)
カラム: Inertsil ODS-3 4.6 mm×25 cm,5μm
カラム温度:40℃付近の一定温度
移動相A:リン酸水素カリウム(1.4 g)を水(1000 mL)に溶かし、リン酸を加えてpH 2.5に調整する。
移動相B:アセトニトリル
移動相の送液:移動相A及び移動相Bの混合比を変えて濃度勾配制御した。
【0084】
3.結果
各FC錠における総類縁の量(%)の測定結果を、表3に示す。「総類縁」とは、検出された全て類縁物質の合計である。「-」は、未測定であることを示す。
【0085】
【0086】
表3から分かるように、比較例のFC錠では、製造直後に総類縁の増加が認められ、70℃で9日間の貯蔵後では総類縁が顕著に増加した。これは、造粒物の段階でエルトロンボパグ オラミンと還元糖である乳糖水和物とが混在したことにより、メイラード反応が生じて類縁物質が増加したことが示唆された。一方、実施例1のFC錠では、製造直後及び70℃で9日間の貯蔵後の総類縁の量は、比較例のFC錠と比べて十分に低い値であった。また、25℃、75%RHで1ヶ月間の貯蔵後の総類縁の量は、製造直後とほぼ変わらない値であった。ここで、実施例1のFC錠は、上記のとおり、乳糖水和物や他の添加物の量を減らしたことを除いて、製造方法は比較例のFC錠と同じであった。すなわち、実施例1のFC錠も、造粒物の段階でエルトロンボパグ オラミンと乳糖水和物とが混在していたが、総類縁の量は低下した。これらのことから、エルトロンボパグ オラミンを含む医薬組成物において、有効成分の含有量に対する還元糖の含有量の比率を低減することで、類縁物質の増加を抑制できることが示唆された。
【0087】
実施例2のFC錠は、比較例のFC錠と同じサイズで乳糖水和物をより多く含むが、表3に示すように、製造直後及び70℃で9日間の貯蔵後の総類縁の量は、比較例のFC錠よりも十分に低い値であった。このことから、エルトロンボパグ オラミンを含む医薬組成物において、結合剤としてポリビニルアルコールを用いることで、還元糖が含まれていても、類縁物質の増加を抑制できることが示唆された。実施例3及び4のFC錠は、実施例2のFC錠よりも、有効成分に含有量に対する還元糖の含有量の比率を低減した錠剤であるところ、製造直後及び70℃で9日間の貯蔵後の総類縁の量は、比較例のFC錠よりも十分に低い値であった。特に、70℃で9日間の貯蔵後の総類縁の量は、実施例2のFC錠における総類縁の量からさらに低減した。また、実施例4のFC錠における25℃、75%RHで1ヶ月間の貯蔵後の総類縁の量は、低い値に抑えられた。これらのことから、結合剤としてポリビニルアルコールを用いることに加えて、有効成分に含有量に対する還元糖の含有量の比率を低減することで、類縁物質の増加をさらに抑制できることが示唆された。
【0088】
[試験例2]
試験例2では、上記の実施例4の処方と、乳糖水和物及びD-マンニトールの量を変更した処方(実施例5)と、有効成分及び添加物の量を減量した処方(実施例6)でFC錠を製造した。そして、各FC錠における類縁物質の生成量を測定した。表4に、実施例4~6のFC錠の処方(1錠当たりの成分量)を示す。表中、各成分の数値の単位はいずれも「mg」である。
【0089】
【0090】
1.FC錠の製造
(1.1) 実施例4~6のFC錠の製造
実施例4のFC錠は、試験例1と同様にして製造した。実施例5及び6のFC錠は、1錠当たりの成分量が表4に示された値となるように各成分の量を変更したこと以外は、実施例4のFC錠の製造と同様にして製造した。実施例5のFC錠は、実施例4のFC錠と比べて、乳糖水和物の量を減らし、且つD-マンニトール量を増やしたものであった。実施例6のFC錠は、実施例4及び5のFC錠に比べて、コーティング剤を除く添加物の量を減らし、且つ有効成分の含有量を減らして、エルトロンボパグとして12.5 mg含むものであった。
【0091】
(1.2) 各FC錠のパラメータ
実施例4~6の各FC錠における有効成分(エルトロンボパグ オラミン)の含有量、還元糖(乳糖水和物)の含有量、及び還元糖を含む賦形剤の全質量、並びに各FC錠の質量に基づいて、各FC錠の特徴を示すパラメータとして、有効成分の含有量に対する還元糖の比率、還元糖を含む賦形剤の全質量に対する還元糖の比率、FC錠の質量に対する有効成分の含有量の比率、及び、FC錠の質量に対する還元糖の含有量の比率を算出した。結果を表5に示す。
【0092】
【0093】
2.安定性試験
実施例5及び6のFC錠をそれぞれポリ塩化ビニル製のPTPシート(以下、PVCともいう)に包装し、アルミピローに入れ、70℃の環境下で9日間、又は40℃且つ75%RHの環境下で1、3及び6ヶ月間貯蔵した。別の試験として、実施例5及び6のFC錠をそれぞれシャーレ内に置き、ふたをせずに25℃且つ75%RHの環境下で1ヶ月間貯蔵した。製造直後及び貯蔵後の各FC錠から、試験例1と同様にして試料溶液を調製し、類縁物質の量を液体クロマトグラフィーにより測定した。液体クロマトグラフィーの試験条件は、試験例1と同じであった。各FC錠における総類縁の量(%)の測定結果を、表6に示す。
【0094】
【0095】
25℃、75%RHで1ヶ月間の貯蔵後の総類縁の量は、実施例5及び6のFC錠はいずれも、表3に記載の比較例のFC錠よりも低い値であった。これらの結果より、実施例5及び6のFC錠は、保存安定性が良好であり、類縁物質の増加を抑制できることが示された。
【0096】
[試験例3]
試験例3では、31.9 mgのエルトロンボパグ オラミンを含むFC錠を、実施例2の処方から添加物の量を変更した処方(実施例7)及び実施例7の処方からコーティング剤の種類を変更した処方(実施例8~11)で製造した。また、フィルムコーティング工程中の乾燥工程において水分管理を行ったこと以外は実施例7と同様にして、実施例7と同じ処方のFC錠を製造した。以下、このFC錠を「実施例12のFC錠」と呼ぶ。各FC錠の分割性及び類縁物質の生成量を検討した。表7に、実施例7~11のFC錠の処方(1錠当たりの成分量)を示す。表中、各成分の数値の単位はいずれも「mg」である。「TC-5(登録商標) R」及び「TC-5(登録商標) E」は、同一のメーカーから入手したヒプロメロースの商品名であり、互いに表示粘度が異なる。TC-5(登録商標) Rの表示粘度は6mPa・sであり、TC-5(登録商標) Eの表示粘度は3mPa・sであった。表7から分かるように、実施例7~11の処方では、造粒工程及び混合・打錠工程により得られる素錠の組成は同じであった。
【0097】
【0098】
1.FC錠の製造
(1.1) 実施例7~9のFC錠の製造
1錠当たりの成分量が表6に示された値となるように各成分の量を変更したこと以外は、実施例2のFC錠の製造と同様にして、実施例7のFC錠を製造した。実施例7のFC錠は、実施例2のFC錠と比べて、D-マンニトールの量を増やし、且つ結晶セルロース及び乳糖水和物の量を減らしたものであった。実施例8のFC錠は、コーティング剤のポリソルベート80を用いず、ヒプロメロースTC-5(登録商標) Rを増量したこと以外は、実施例7のFC錠の製造と同様にして製造された。実施例9のFC錠は、コーティング剤のヒプロメロースの種類をTC-5(登録商標) Eに変更したこと以外は、実施例7のFC錠の製造と同様にして製造された。なお、実施例7~9の各FC錠には割線を付した。
【0099】
(1.2) 実施例10及び11のFC錠の製造
実施例10のFC錠は、コーティング工程を除き、実施例2のFC錠の製造と同様にして得た。より詳細には、まず、1錠当たりの成分量(コーティング剤を除く)が、表6に示された値となるように各成分の量を変更したこと以外は、実施例2のFC錠の製造と同様にして、エルトロンボパグ オラミンを含む素錠を得た。次いで、ヒプロメロース(TC-5(登録商標) R)の液に、マクロゴール6000、酸化チタン及びタルクを加えて溶解または分散させ、コーティング液を得た。パンコーティング装置を用いて、エルトロンボパグ オラミンを含む素錠をコーティング液で被覆して、実施例10のFC錠を得た。実施例11のFC錠は、コーティング剤のヒプロメロースの種類をTC-5(登録商標) Eに変更したこと以外は、実施例10のFC錠の製造と同様にして製造された。なお、実施例10及び11の各FC錠には割線を付した。
【0100】
(1.3) 実施例12のFC錠の製造
実施例7の処方で、造粒工程及び混合・打錠工程により素錠を得た。FC工程において、パンコーティング装置により素錠をコーティング液で被覆して乾燥を行い、表面に形成されたコーティング膜を乾燥させた。乾燥工程において、所定の時間が経過するごとに当該装置から複数の錠剤を採取して、各錠剤の質量及び各錠剤中の水分値を測定した。水分値の測定は、カールフィッシャー法により行った。錠剤の質量の変動がなくなるまで乾燥工程を続けることにより、錠剤の水分管理を行って実施例12のFC錠を得た。錠剤の質量が変動しなくなったことを確認したときのFC錠の水分値(平均値)は約1.6%であった。なお、実施例12のFC錠には割線を付した。
【0101】
(1.4) 各FC錠のパラメータ
実施例7~12のFC錠における有効成分(エルトロンボパグ オラミン)の含有量、還元糖(乳糖水和物)の含有量、及び還元糖を含む賦形剤の全質量、並びにFC錠の質量に基づいて、実施例7~12のFC錠の特徴を示すパラメータとして、有効成分の含有量に対する還元糖の比率、還元糖を含む賦形剤の全質量に対する還元糖の比率、FC錠の質量に対する有効成分の含有量の比率、及び、FC錠の質量に対する還元糖の含有量の比率を算出した。結果を表8に示す。実施例7~12では、FC錠の質量及び素錠の組成が同一であったことから、上記パラメータは全て同じであった。
【0102】
【0103】
2.分割性の検討
実施例7~12の各FC錠をスパーテル(n=10)、はさみ(n=3)及びピルカッター(n=3)で、割線を利用して分割した。得られた半錠の質量とその標準偏差、損失率、及び切断部位におけるコーティング膜の剥がれの有無に基づいて、FC錠の分割性を評価した。損失率は、分割前のFC錠の質量から、分割された2つの半錠の合計質量を差し引き、分割による質量損失の割合を算出した。実施例7~12のいずれのFC錠もおおむね良好に分割できることが分かった。特に実施例9及び11のFC錠では、半錠に分割したときのコーティング膜の剥がれが抑えられた。
【0104】
3.安定性試験
実施例12のFC錠をPVCに包装し、アルミピローに入れ、40℃且つ75%RHの環境下で1ヶ月間貯蔵した。比較のため、比較例のFC錠についても、同じ条件の環境下で1ヶ月間貯蔵した。製造直後及び貯蔵後の各FC錠から、試験例1と同様にして試料溶液を調製し、類縁物質の量を液体クロマトグラフィーにより測定した。液体クロマトグラフィーの試験条件は、試験例1と同じであった。各FC錠における総類縁の量(%)の測定結果を、表9に示す。
【0105】
【0106】
製造直後の実施例12のFC錠では、類縁物質が検出されたが、総類縁の量は、比較例のFC錠と比べて十分に低い値であった。40℃、75%RHで1ヶ月間の貯蔵後では、実施例12のFC錠では、総類縁の量は、比較例のFC錠と比べて十分に低い値であった。これらの結果より、実施例12のFC錠は、類縁物質の増加を抑制できることが示された。
【0107】
[試験例4]
試験例4では、FC工程中の乾燥工程において水分管理を行ったこと以外は、試験例3と同様にして、実施例9の処方でFC錠を製造した。このFC錠を以下「実施例13のFC錠」と呼ぶ。実施例13のFC錠の溶出性に基づいて保存安定性を検討した。
【0108】
1.実施例13のFC錠の製造
試験例3と同様にして、実施例9の処方で、造粒工程及び混合・打錠工程により素錠を得た。マクロゴール400とポリソルベート80との混液に、ヒプロメロース(TC-5(登録商標) E)及び酸化チタンを加えて分散させ、コーティング液を得た。パンコーティング装置を用いて、素錠をコーティング液で被覆した。パンコーティング装置により、コーティング液で被覆された錠剤の乾燥を行い、表面に形成されたコーティング膜を乾燥させた。乾燥工程において、所定の時間が経過するごとに当該装置から複数の錠剤を採取して、各錠剤の質量及び各錠剤中の水分値を測定した。水分値の測定は、カールフィッシャー法により行った。錠剤の質量の変動がなくなるまで乾燥工程を続けることにより、錠剤の水分管理を行って実施例13のFC錠を得た。錠剤の質量が変動しなくなったことを確認したときのFC錠の水分値(平均値)は約1.8%であった。
【0109】
2.溶出試験
実施例13のFC錠の一部をガラス瓶に入れて密閉し、50℃の環境下で2週間保存した。製造直後のFC錠及び保存後のFC錠の薬剤溶出性を、第十八改正日本薬局方に記載の溶出試験法第2法(パドル法、50rpm)に準じて調べた。具体的には、次のとおりであった。溶出試験第2液(pH6.8, 関東化学株式会社)にポリソルベート80を終濃度0.05%となるように添加して、試験液を調製した。液温を37±0.5℃に調整した試験液(900 mL)に、製造直後のFC錠又は保存後のFC錠を1錠入れて50rpmで撹拌し、5、10、15、30、60、120、180及び360分後に試験液から10 mLずつ採取した。採取した試験液をメンブランフィルターでろ過して試料溶液を得た。試料溶液中のエルトロンボパグ濃度を紫外吸光光度計により測定し、溶出率を算出した。溶出試験は、製造直後及び保存後の各FC錠について3錠ずつ行い、溶出率の平均値(平均溶出率)を算出した。
【0110】
3.結果
製造直後のFC錠の平均溶出率が40%及び85%付近の適当な2時点において、保存後のFC錠の平均溶出率が、製造直後のFC錠の平均溶出率±10%の範囲にあるかを検討した。製造直後のFC錠の平均溶出率が40%及び85%付近となったのは、15分後及び120分後であった。試験開始から0、15及び120分後における製造直後及び保存後の各FC錠の平均溶出率を、表10に示す。
【0111】
【0112】
表10に示されるように、試験開始から15分後及び120分後では、両者の溶出率の差はそれぞれ4.0%及び3.8%であり、いずれも10%以下であった。よって実施例13のFC錠は、50℃で2週間の条件で保存しても、製造直後と同等の溶出性を有していることが示された。すなわち、錠剤の水分管理を行って実施例9の処方のFC錠を製造した場合、得られるFC錠は、溶出遅延が抑制され、保存安定性に優れていることが示唆された。