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  • 特開-コラーゲンマイクロニードル製剤 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024077632
(43)【公開日】2024-06-07
(54)【発明の名称】コラーゲンマイクロニードル製剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/02 20060101AFI20240531BHJP
   A61K 8/65 20060101ALI20240531BHJP
   A61K 8/36 20060101ALI20240531BHJP
   A61K 8/362 20060101ALI20240531BHJP
   A61K 8/49 20060101ALI20240531BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20240531BHJP
【FI】
A61K8/02
A61K8/65
A61K8/36
A61K8/362
A61K8/49
A61Q19/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】22
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023201075
(22)【出願日】2023-11-28
(31)【優先権主張番号】P 2022188866
(32)【優先日】2022-11-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】501296380
【氏名又は名称】コスメディ製薬株式会社
(72)【発明者】
【氏名】権 英淑
(72)【発明者】
【氏名】近藤 奈穂子
(72)【発明者】
【氏名】村山 智洋
(72)【発明者】
【氏名】田中 弘
(72)【発明者】
【氏名】川崎 一馬
(72)【発明者】
【氏名】李 英哲
(72)【発明者】
【氏名】神山 文男
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AC231
4C083AC291
4C083AC301
4C083AC302
4C083AC581
4C083AD091
4C083AD271
4C083AD331
4C083AD332
4C083AD341
4C083AD431
4C083AD432
4C083AD641
4C083CC01
4C083CC02
4C083DD12
4C083EE11
4C083FF01
4C083FF04
(57)【要約】
【課題】コラーゲンを主成分とし、高品質のマイクロニードル製剤及びその製造方法を提供する。
【解決手段】コラーゲン及び1又は複数のpH調整剤を必須成分として含有するマイクロニードル製剤;さらに1又は複数のカルボキシ基含有水溶性高分子を必須成分として含有する、前記マイクロニードル製剤;並びに、コラーゲン及び1又は複数のpH調整剤、必要により又は複数のカルボキシ基含有水溶性高分子を含有する原料を37℃以下で水溶液に調製し、コラーゲンの水溶液中含有量が5質量%以下のマイクロニードル原料液を準備する工程、及び前記マイクロニードル原料液を鋳型に充填し、乾燥させる工程を含むマイクロニードル製剤の製造方法。
【選択図】なし

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コラーゲン及び1又は複数のpH調整剤を必須成分として含有するマイクロニードル製剤。
【請求項2】
コラーゲン及び1又は複数のpH調整剤及び1又は複数のカルボキシ基含有水溶性高分子を必須成分として含有するマイクロニードル製剤。
【請求項3】
pH調整剤の少なくとも1種がカルボキシ基を含有するpH調整剤である、請求項1又は2に記載のマイクロニードル製剤。
【請求項4】
さらにマイクロニードル製剤が化粧品有価物を含む、請求項1又は2に記載のマイクロニードル製剤。
【請求項5】
マイクロニードルの針長さが50~550μmであって、角質層又は表皮に挿入するものである、請求項1又は2に記載のマイクロニードル製剤。
【請求項6】
マイクロニードルの針長さが351~1000μmであって、真皮に挿入するものである、請求項1又は2に記載のマイクロニードル製剤。
【請求項7】
pH調整剤が酢酸、シュウ酸、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、グリコール酸、コハク酸、酒石酸、グルコン酸、フマル酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、及びアスコルビン酸からなる有機酸並びにその混合物からなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項1又は2に記載のマイクロニードル製剤。
【請求項8】
マイクロニードル製剤中のpH調整剤の含有量がコラーゲン質量の0.5~40質量%である、請求項1又は2に記載のマイクロニードル製剤。
【請求項9】
カルボキシ基含有水溶性高分子がヒアルロン酸及びそのナトリウム塩及びその誘導体、カルボキシメチルセルロース及びそのナトリウム塩、コンドロイチン硫酸及びそのナトリウム塩、並びに、ポリアクリル酸及びそのナトリウム塩からなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項2に記載のマイクロニードル製剤。
【請求項10】
マイクロニードル製剤中のカルボキシ基含有水溶性高分子の含有量がコラーゲン質量の1質量%以上である、請求項2に記載のマイクロニードル製剤。
【請求項11】
コラーゲン、クエン酸、及びヒアルロン酸もしくはそのナトリウム塩又はその誘導体を含有するマイクロニードルアレイであって、クエン酸の含有量はコラーゲン質量の0.5~40質量%、ヒアルロン酸もしくはそのナトリウム塩又はその誘導体の含有量はコラーゲン質量の1~49質量%であるマイクロニードルアレイ。
【請求項12】
コラーゲンの分子量が10万以上である、請求項11に記載のマイクロニードルアレイ。
【請求項13】
コラーゲンが3重らせん構造であって分子量約30万である、請求項12に記載のマイクロニードルアレイ。
【請求項14】
コラーゲンがマグロの皮に由来するものである、請求項13に記載のマイクロニードルアレイ。
【請求項15】
コラーゲン及び1又は複数のpH調整剤を含有する原料を37℃以下で水溶液に調製し、コラーゲンの水溶液中含有量が5質量%以下のマイクロニードル原料液を準備する工程;及び前記マイクロニードル原料液を鋳型に充填し、乾燥させる工程を含む、請求項1に記載のマイクロニードル製剤の製造方法。
【請求項16】
コラーゲン及び1又は複数のpH調整剤及び1又は複数のカルボキシ基含有水溶性高分子を含有する原料を37℃以下で水溶液に調製し、コラーゲンの水溶液中含有量が5質量%以下のマイクロニードル原料液を準備する工程;及び前記マイクロニードル原料液を鋳型に充填し、乾燥させる工程を含む、請求項2に記載のマイクロニードル製剤の製造方法。
【請求項17】
請求項15に記載の製造方法に使用されるマイクロニードル原料液であって、pHは3.0~9.0であるマイクロニードル原料液。
【請求項18】
請求項16に記載の製造方法に使用されるマイクロニードル原料液であって、pHは3.0~9.0であるマイクロニードル原料液。
【請求項19】
マイクロニードル原料液がpH3.0~7.0である請求項17に記載のマイクロニードル原料液。
【請求項20】
マイクロニードル原料液がpH3.0~7.0である請求項18に記載のマイクロニードル原料液。
【請求項21】
マイクロニードル原料液がpH4.0~6.0である請求項17に記載のマイクロニードル原料液。
【請求項22】
マイクロニードル原料液がpH4.0~6.0である請求項18に記載のマイクロニードル原料液。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コラーゲンを利用した新規美容品、化粧品に関する。
【背景技術】
【0002】
コラーゲンは、動物の皮膚や骨を構成するタンパク質の一種である。コラーゲンにはいくつかの種類が知られているが、中でもI型コラーゲンは動物の皮膚や骨などを形成し、広く分布している。I型コラーゲンは、α1鎖一本とα2鎖2本とから構成される3重らせん構造を有する。このI型コラーゲンが集まると繊維状となり、コラーゲン繊維と呼ばれている。
【0003】
I型コラーゲンは真皮に多く含まれ、その強靱さと張りを支えている。従って、I型コラーゲンが不足すると皮膚の張りがなくなり、化粧品としてこれを補うことが有効と考えられ、いろいろなスキンケア製品が開発されている。
3重らせん構造を有するコラーゲンを含有する化粧品はエッセンスなどの液剤が一般的であるが、コラーゲン中では微生物が繁殖しやすいので防腐剤の添加が必要であり、化粧品としては問題がある。3重らせん構造を有するコラーゲンを含有するマイクロニードルも公知である(特許文献1~3)。3重らせん構造を有するコラーゲンをフィルムに成形した化粧品も知られている(特許文献4)。低分子コラーゲンを主素材とするマイクロニードルアレイも知られている(特許文献5)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005-272398号公報
【特許文献2】国際公開第2013/122160号パンフレット
【特許文献3】国際公開第2017/002466号パンフレット
【特許文献4】特開2017-128566号公報
【特許文献5】特開2009-273872号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
これまでのコラーゲンを含むマイクロニードル製品は、生体内溶解性の基剤にコラーゲンを分散させた製品であったり、コラーゲンを基剤として用いる場合にも、低分子コラーゲンを主素材として製造したり、他の生体内溶解性基剤と混合して製造したものであったり、マイクロニードル製品中のコラーゲンの含有率は基剤中の50質量%未満であり、高含有率の高分子コラーゲン製品は実現されていなかった。本発明の目的は、コラーゲンを主成分(高含有率)とし、高品質のマイクロニードル製剤及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、コラーゲンの化粧品としての有効性をよりよく発揮させるため、コラーゲンを主成分とするマイクロニードルアレイの製造を鋭意検討した結果、従来の製造方法とは全く異なる製法に想到し、本発明を完成させるに至った。
本発明は、以下に示す通りである。
〔1〕 コラーゲン及び1又は複数のpH調整剤を必須成分として含有するマイクロニードル製剤。
〔2〕 コラーゲン及び1又は複数のpH調整剤及び1又は複数のカルボキシ基含有水溶性高分子を必須成分として含有するマイクロニードル製剤。
〔3〕 pH調整剤の少なくとも1種がカルボキシ基を含有するpH調整剤である、〔1〕又は〔2〕に記載のマイクロニードル製剤。
〔4〕 さらにマイクロニードル製剤が化粧品有価物を含む、〔1〕又は〔2〕に記載のマイクロニードル製剤。
〔5〕 マイクロニードルの針長さが50~550μmであって、角質層又は表皮に挿入するものである、〔1〕又は〔2〕に記載のマイクロニードル製剤。
〔6〕 マイクロニードルの針長さが351~1000μmであって、真皮に挿入するものである、〔1〕又は〔2〕に記載のマイクロニードル製剤。
〔7〕 pH調整剤が酢酸、シュウ酸、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、グリコール酸、コハク酸、酒石酸、グルコン酸、フマル酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、及びアスコルビン酸からなる有機酸並びにその混合物からなる群より選ばれる少なくとも1種である、〔1〕又は〔2〕に記載のマイクロニードル製剤。
〔8〕 マイクロニードル製剤中のpH調整剤の含有量がコラーゲン質量の0.5~40質量%である、〔1〕又は〔2〕に記載のマイクロニードル製剤。
〔9〕 カルボキシ基含有水溶性高分子がヒアルロン酸及びそのナトリウム塩及びその誘導体、カルボキシメチルセルロース及びそのナトリウム塩、コンドロイチン硫酸及びそのナトリウム塩、並びに、ポリアクリル酸及びそのナトリウム塩からなる群より選ばれる少なくとも1種である、〔2〕に記載のマイクロニードル製剤。
〔10〕 マイクロニードル製剤中のカルボキシ基含有水溶性高分子の含有量がコラーゲン質量の1質量%以上である、〔2〕に記載のマイクロニードル製剤。
〔11〕 コラーゲン、クエン酸、及びヒアルロン酸もしくはそのナトリウム塩又はその誘導体を含有するマイクロニードルアレイであって、クエン酸の含有量はコラーゲン質量の0.5~40質量%、ヒアルロン酸もしくはそのナトリウム塩又はその誘導体の含有量はコラーゲン質量の1~49質量%であるマイクロニードルアレイ。
〔12〕 コラーゲンの分子量が10万以上である、〔11〕に記載のマイクロニードルアレイ。
〔13〕 コラーゲンが3重らせん構造であって分子量約30万である〔12〕に記載のマイクロニードルアレイ。
〔14〕コラーゲンがマグロの皮に由来するものである、〔13〕に記載のマイクロニードルアレイ。
〔15〕 コラーゲン及び1又は複数のpH調整剤を含有する原料を37℃以下で水溶液に調製し、コラーゲンの水溶液中含有量が5質量%以下のマイクロニードル原料液を準備する工程;及び前記マイクロニードル原料液を鋳型に充填し、乾燥させる工程を含む、〔1〕に記載のマイクロニードル製剤の製造方法。
〔16〕 コラーゲン及び1又は複数のpH調整剤及び1又は複数のカルボキシ基含有水溶性高分子を含有する原料を37℃以下で水溶液に調製し、コラーゲンの水溶液中含有量が5質量%以下のマイクロニードル原料液を準備する工程;及び前記マイクロニードル原料液を鋳型に充填し、乾燥させる工程を含む、〔2〕に記載のマイクロニードル製剤の製造方法。
〔17〕 〔15〕に記載の製造方法に使用されるマイクロニードル原料液であって、pHは3.0~9.0であるマイクロニードル原料液。
〔18〕 〔16〕に記載の製造方法に使用されるマイクロニードル原料液であって、pHは3.0~9.0であるマイクロニードル原料液。
〔19〕 マイクロニードル原料液がpH3.0~7.0である〔17〕に記載のマイクロニードル原料液。
〔20〕 マイクロニードル原料液がpH3.0~7.0である〔18〕に記載のマイクロニードル原料液。
〔21〕 マイクロニードル原料液がpH4.0~6.0である〔17〕に記載のマイクロニードル原料液。
〔22〕 マイクロニードル原料液がpH4.0~6.0である〔18〕に記載のマイクロニードル原料液。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、コラーゲンによる皮膚のハリ向上、シワ及びたるみ低減、をもたらすることができる
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の製造方法の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明においてコラーゲンとは、3重らせんコラーゲン及び3重らせんコラーゲンの3本鎖がほどけた1本鎖コラーゲン(本物質はゼラチンともいう)をも意味する。コラーゲンは、天然由来であっても合成コラーゲンであってもよい。
3重らせんコラーゲンの分子量は約30万であり、1本鎖コラーゲンの分子量は約10万であることは公知である。3重らせんコラーゲンを50℃以上に加熱すると、3重らせんがほどけて1重らせんとなる(これはゼラチンである)。1重らせんコラーゲンは高温では安定な水溶液であるが、室温に数時間放置するとゲル化する。
【0010】
紫外線は、肌に対して様々な悪影響を与えることが知られており、皮膚に紫外線が照射されることで、皮膚内にタンパク質分解酵素であるマトリックスメタロプロテアーゼが増加し、真皮に存在する肌の弾力性を維持するコラーゲンやエラスチンが分解され、ハリの低下やシワの形成が引き起こされることが知られている。コラーゲンの分解を抑制することによって、皮膚のハリや弾力を保つことができると考えられる。皮膚内のコラーゲン濃度を維持するために外部からコラーゲンを投与することは有効であり、さらに皮内に導入したコラーゲンが酵素により分解することを抑制することも持続的効果発揮に重要である。
まず皮内にコラーゲンを導入するためマイクロニードル製剤は有効であるが、安定なコラーゲン製剤を得ることは前述した理由で困難であった。本発明者等は、安定なコラーゲン製剤に関して鋭意検討し、pHを調製した原料液を使用すること、さらにはコラーゲンに負電荷を有する高分子(カルボキシ基含有水溶性高分子、好例はヒアルロン酸)を共存させることにより安定なコラーゲン製剤とすることを見いだし、本発明に至った。それにより安定なコラーゲン製剤とし、さらにヒアルロン酸と共存させることによりコラーゲンの皮内での酵素分解性を抑えることも見出した。
【0011】
本発明の本質は、複数のマイクロニードルを備えるマイクロニードルアレイであって、 前記マイクロニードルは、生体由来のコラーゲンを主成分兼基剤として含有し、マイクロニードル化することにより高分子量物質であるコラーゲンの皮膚内への吸収を著しく向上させることである。本発明により、コラーゲンの美容効果を液剤のコラーゲンに比べて、早く顕著に発揮することができる。
【0012】
コラーゲンは、水溶液においては分子量低下、ゲル化、着色、等が起こりやすく、それらを防ぎつつ、安定なマイクロニードル原料液を調製しマイクロニードル成形することが重要である。コラーゲンは、豚などの動物由来コラーゲンや、魚のうろこ由来のコラーゲンが良く利用されているが、本発明で使用するのは、マグロの皮由来のコラーゲンでも良い。マグロの皮由来のコラーゲンは、ヒドロキシプロリンとプロリンの含有量が多く、サケなど他の魚類の皮やうろこ由来のコラーゲンと比較して、ヒトのコラーゲン組成に近い特徴があるので、より好ましい。
【0013】
本発明者らは、鋭意研究の結果、コラーゲン主体のマイクロニードルを作製するにあたって、原料液を室温において安定に(すなわち、コラーゲンが沈殿、ゲル化することなく)維持できる条件を確立した。第1要件としては、コラーゲンを水に溶解する際のpHを適切に調整することである。第2要件としては、原料液の長期的安定化及びコラーゲンマイクロニードルの機械的強度増強のため、イオン性を有する高分子(好ましくは負電荷を有する水溶性高分子)の添加及びその添加量である。本発明における室温とは15~30℃を意味する。このように原料液のpHを調整し、イオン性高分子を添加することによりコラーゲンは水溶液中で20質量%の濃度以下において均一に溶液化できる。コラーゲン濃度が20質量%は極めて濃厚な溶液であり、10質量%で濃厚溶液であり、5質量%では流動性が大きな溶液となる。いずれの濃度でも安定した原料液とすることが出来る。
本発明は、コラーゲン主体のマイクロニードルを作製するにあたっての原料液に適切な量の正負のイオンを含ませることにより達成できること、さらにそれに加えて負電荷を有する水溶性高分子を含むことにより長時間の溶液としての安定性を保つことを基本的な条件とする。
【0014】
コラーゲンマイクロニードル製剤(マイクロニードルアレイ)
厚さ10~200μmの基板上に高さ50~1000μmのコニーデ状あるいはピラミッド状、針状のマイクロニードルが林立しているマイクロニードルアレイからなる製剤である。
マイクロニードル製剤を表皮に挿入する場合、針長さ50~550μmであることが好ましく、針長さ100~400μmであることがより好ましい。
マイクロニードル製剤を真皮に挿入する場合、針長さ351~1000μmであることが好ましく、針長さ400~800μmであることより好ましい。
【0015】
本発明のマイクロニードル製剤の必須成分は、コラーゲン及び1又は複数のpH調整剤である。本発明のマイクロニードル製剤は、さらに1又は複数の負電荷を有する水溶性高分子を必須成分として含有してもよい。
【0016】
本発明におけるpH調整剤とは、コラーゲンの水溶液中の安定性を増加させるためpHを変化させる目的で添加する酸性物質(陰イオン調整剤)、塩基性物質(陽イオン調整剤)を意味する。
陰イオン調整剤あるいは陽イオン調整剤の添加により、コラーゲン水溶液をpH3.0~9.0に調整することにより安定なマイクロニードル原料液とすることができる。コラーゲンの水溶液中の濃度は、20質量%を超えるとゲル化を起こしやすいので、原料液中の濃度は20質量%以下に調整することが好ましい。さらに原料液中の濃度を5質量%以下に調整することで、原料液の流動性に優れ、より好ましい。陰イオン調整剤としては、硝酸、塩酸、硫酸、リン酸、ホウ酸などの無機酸でも良いし、酢酸、シュウ酸、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、グリコール酸、コハク酸、酒石酸、グルコン酸、フマル酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、アスコルビン酸などの有機酸及びその混合物でも使用可能である。陽イオン調整剤としてはアンモニア水、水酸化ナトリウム水溶液、炭酸水素ナトリウムなどが使用される。好ましいpH調整剤は、酢酸、シュウ酸、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、グリコール酸、コハク酸、酒石酸、グルコン酸、フマル酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、及びアスコルビン酸からなる有機酸並びにその混合物からなる群より選ばれる少なくとも1種である。
製品化したコラーゲンマイクロニードルアレイを皮膚に適用する際には、皮膚刺激を考慮すると弱酸性であることが望ましい。pH調整のための陰イオン調整剤としてクエン酸、酒石酸のような多塩基酸を用いて原料液を弱酸性化すると、酢酸、塩酸のような1塩基酸によりpH調整する場合に比べて、溶液の安定性が増加する。
【0017】
マイクロニードル製剤中のpH調整剤の含有量は、コラーゲン質量の0.5~40質量%であり、1.0~20質量%が好ましい。
【0018】
負電荷を有する水溶性高分子としては、カルボキシ基を含有する水溶性高分子を使用することができる。カルボキシ基を含有する水溶性高分子としては、ヒアルロン酸及びそのナトリウム塩及びその誘導体、カルボキシメチルセルロース及びそのナトリウム塩、コンドロイチン硫酸及びそのナトリウム塩、並びに、ポリアクリル酸及びそのナトリウム塩からなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましい。
【0019】
マイクロニードル製剤中のカルボキシ基含有水溶性高分子の含有量はコラーゲン質量の1質量%以上であり、90質量%以下が好ましい。
【0020】
本発明のより好ましい実施形態としては、コラーゲン、クエン酸、及びヒアルロン酸もしくはそのナトリウム塩又はその誘導体を含有するマイクロニードルアレイである。クエン酸の含有量はコラーゲン質量の0.5~40質量%、ヒアルロン酸もしくはそのナトリウム塩又はその誘導体の含有量はコラーゲン質量の5~80質量%であり、1~49質量%であってもよい。
【0021】
本発明のマイクロニードル製剤中には化粧品有価物を含浸させてもよい。有価物の含量は、総質量に対し0.001質量%から20質量%が適当である。有価物が水溶性原料であれば、有価物を原料水溶液にそのまま添加すればよい。油溶性であれば、適量のエタノールに溶解あるいは分散させるか界面活性剤で可溶化して原料水溶液に添加する。
上記化粧品有価物としては、例えば、抗炎症剤、ビタミン類、アミノ酸又はその誘導体、角質柔軟成分、老化防止成分、抗糖化成分、血行促進作用成分、美白成分、ポリフェノール類等が挙げられる。なお、本発明の上記各種組成物、各種製剤において、これらの成分はそれぞれ1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0022】
上記抗炎症剤としては、例えば、植物に由来する成分、アラントイン及びその誘導体、グリチルレチン酸及びその誘導体、グリチルリチン酸及びその塩又は誘導体、サリチル酸誘導体、アミノカプロン酸、アズレン及びその誘導体、等が挙げられる。
【0023】
上記ビタミン類としては、例えば、ピリドキシン、ピリドキサール、ピリドキサミン、5’-リン酸ピリドキサール、及びそれらの塩等のビタミンB6類;パントテン酸、パントテン酸カルシウム、パントテニルアルコール、D-パンテサイン、D-パンテチン、補酵素A、パントテニルエチルエーテル、及びそれらの塩等のパントテン酸類;ニコチン酸、ニコチン酸dl-α-トコフェロール、ニコチン酸アミド、及びそれらの塩等のニコチン酸類;γ-オリザノール、チアミン、チアミンモノリン酸エステル、チアミンジリン酸エステル、チアミントリリン酸エステル、及びそれらの塩等のビタミンB1類;リボフラビン、フラビンモノヌクレオチド、フラビンアデニンジヌクレオチド、リボフラビン酪酸エステル、リボフラビン5’-リン酸エステルナトリウム、リボフラビンテトラニコチン酸エステル、及びそれらの塩等のビタミンB2類;ビオチン、ビオシチン、及びそれらの塩等のビオチン類;葉酸、プテロイルグルタミン酸、及びそれらの塩等の葉酸類;シアノコバラミン、ヒドロキソコバラミン、デオキシアデノシルコバラミン、及びそれらの塩等のビタミンB12類;アスコルビン酸、デヒドロアスコルビン酸、アスコルビン酸リン酸エステル、アスコルビン酸-2-グルコシド、3-O-エチルアスコルビン酸、グリセリルアスコルビン酸、ビスグリセリルアスコルビン酸、アルキルグリセリルアスコルビン酸等のアスコルビン酸誘導体、及びそれらの塩等の水溶性のビタミンC類;dl-α-トコフェロール、酢酸dl-α-トコフェロール、トコフェロール、(アスコルビル/トコフェリル)リン酸カリウム等のビタミンE類;、アスコルビン酸パルミチン酸エステル、ジパルミチン酸L-アスコルビル、テトラ2-ヘキシルデカン酸アスコルビル等の油溶性のビタミンC及びその塩類;エルゴカルシフェロール、コレカルシフェロール等のビタミンD類;フィロキノン、ファルノキノン等のビタミンK類;レチノール、レチナール、レチノイン酸、3-デヒドロレチノール、3-デヒドロレチナール、3-デヒドロレチノイン酸、水添レチノールなどのビタミンA類及びその誘導体であるパルミチン酸レチノール、リノール酸レチノール、酢酸レチノールなどのビタミンA誘導体類、α-カロテン、β-カロテン、γ-カロテン、クリプトキサンチンなどのプロビタミンA類;フェルラ酸、ピロロキノリンキノン又はその塩、ヘスペリジン及びグルコシルヘルペリジン等のヘスペリジン誘導体、ユビキノン、グルクロラクトン、グルクロン酸アミド、オロチン酸、L-カルニチン、α-リポ酸、オロット酸等のビタミン様作用因子等が挙げられる。
【0024】
上記アミノ酸又はその誘導体としては、例えば、ベタイン、プロリン、ヒドロキシプロリン、アルギニン、リジン、セリン、グリシン、アラニン、フェニルアラニン、スレオニン、グルタミン酸、グルタミン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、シスチン、メチオニン、ロイシン、イソロイシン、バリン、ヒスチジン、トレオニン、チロシン、タウリン、γ-アミノ酪酸、γ-アミノ-β-ヒドロキシ酪酸、カルニチン、カルノシン、クレアチン、イプシロンアミノカプロン酸、トリプトファン、オルニチン等が挙げられる。
【0025】
上記角質柔軟成分としては、例えば、乳酸、サリチル酸、グルコン酸、グリコール酸、クエン酸、リンゴ酸、フルーツ酸、フィチン酸、尿素、イオウ等が挙げられる。
【0026】
上記老化防止成分としては、例えば、加水分解大豆タンパク、レチノイド(レチノール及びその誘導体、レチノイン酸、及びレチナール等)、カイネチン、アデノシン、NMN(ニコチンアミドモノヌクレオチド)、AMP(アデノシン一リン酸)、ADP(アデノシン二リン酸)、ATP(アデノシン三リン酸)、ウルソール酸、ウコンエキス、スフィンゴシン誘導体、メバロノラクトン等が挙げられる。
【0027】
上記抗糖化成分としては、例えば、ブドレジャアキシラリス葉エキス等の植物エキス、月見草油、アムラーの果実、果汁又はそれらの抽出物、L-アルギニン、L-リジン、加水分解カゼイン、加水分解性タンニン、カルノシン等が挙げられる。
【0028】
上記血行促進作用成分としては、例えば、オタネニンジン、アシタバ、アルニカ、イチョウ、ウイキョウ、エンメイソウ、オランダカシ、カミツレ、ローマカミツレ、カロット、ゲンチアナ、ゴボウ、コメ、サンザシ、シイタケ、ショウガ、セイヨウサンザシ、セイヨウネズ、センキュウ、センブリ、タイム、チョウジ、チンピ、トウガラシ、トウキ、トウニン、トウヒ、ニンジン、ニンニク、ブッチャーブルーム、ブドウ、ボタン、マロニエ、メリッサ、ユズ、ヨクイニン、リョクチャ、ローズマリー、ローズヒップ、チンピ、トウキ、トウヒ、モモ、アンズ、クルミ、トウモロコシ、ゴールデンカモミール、イクタモール、カンタリスチンキ、セファランチン等植物に由来する成分;ガンマーオリザノール、ニコチン酸トコフェロール、グルコシルヘスペリジン等が挙げられる。
【0029】
上記美白成分としては、例えば、トラネキサム酸、アスコルビン酸とその塩、アスコルビン酸誘導体等のビタミンC類(アスコルビン酸リン酸エステルナトリウム、アスコルビン酸リン酸エステルマグネシウム、テトラ2-ヘキシルデカン酸アスコルビル、2-O-エチルアスコルビン酸、3-O-エチルアスコルビン酸、アスコルビン酸グルコシドなど)、アルブチン、コウジ酸、プラセンタ、エラグ酸、ニコチン酸アミド、ハイドロキノン、リノール酸及びその誘導体、等が挙げられる。
【0030】
上記ポリフェノール類としては、クルクミノイド、フラバノン、スチルペノイド、ポリメトキシフラボノイド類、フラボノール、キサントノイド、カルコン、リグノイド、フラバノール、イソフラボン等のフラボノイド系ポリフェノール類が挙げられる。
【0031】
コラーゲンマイクロニードル製剤(マイクロニードルアレイ)の製造方法
製法としては、マイクロニードル成形に際し鋳型にコラーゲンの水溶液を充填して乾燥後鋳型から外してマイクロニードルアレイとする。コラーゲンは水溶液としての安定性を保持し、ゲル化、沈殿を生じないようなマイクロニードル原料液を調製して使用する。
【0032】
製造方法の第1の実施形態として、
コラーゲン及び1又は複数のpH調整剤を含有する原料を37℃以下で水溶液に調製し、コラーゲンの水溶液中含有量が20質量%以下のマイクロニードル原料液を準備する工程;及び前記マイクロニードル原料液を鋳型に充填し、乾燥させる工程を含む。
【0033】
製造方法の第2の実施形態として、コラーゲン及び1又は複数のpH調整剤及び1又は複数のカルボキシ基含有水溶性高分子を含有する原料を37℃以下で水溶液に調製し、コラーゲンの水溶液中含有量が20質量%以下のマイクロニードル原料液を準備する工程;及び前記マイクロニードル原料液を鋳型に充填し、乾燥させる工程を含む。
【0034】
上記乾燥工程後、マイクロニードルアレイを剥離する。剥離したマイクロニードルアレイをパッチの形状に裁断し、粘着性支持体で裏打ちして用いてもよい。
【0035】
コラーゲンを加温せず安定した水溶液とするためには、pHの調整が重要である。pHが9.0を超えると、コラーゲンがゲル化して水溶液で相分離してしまい、安定な水溶液にならない。pH3.0未満の水溶液からでもマイクロニードル成形は可能であるが、出来上がったマイクロニードルの皮膚への刺激を考慮すると好ましくはない。陰イオン調整剤あるいは陽イオン調整剤の添加によりコラーゲン水溶液をpH3.0~9.0に調整することにより、安定なマイクロニードル原料液とすることができる。もちろん、これらの安定したマイクロニードル原料液を用いて製造したマイクロニードルを肌中で溶解することを想定すると、本発明のマイクロニードルを水溶液に溶解させた場合においてもpHが3.0~9.0であることが望ましい。皮膚への作用を考慮すると、原料液及びマイクロニードルを溶解した溶液のpHは、pH3.0~7.0がより好ましく、弱酸性であるpH4.0~6.0がさらに好ましい。コラーゲンの原料液中の濃度が20質量%を超えるとゲル化を起こしやすい。よって、コラーゲンの原料液中の濃度は20質量%以下に調整することが好ましい。
【0036】
以上のようにしてpHを調整したマイクロニードル原料液に、さらにカルボキシ基を含有する水溶性高分子を加えて均一の溶液とした後、マイクロニードル化することにより、出来上がったマイクロニードルの機械的強度を向上させることが出来る。カルボキシ基を含有する水溶性高分子としては、ヒアルロン酸及びそのナトリウム塩及びその誘導体、カルボキシメチルセルロース及びそのナトリウム塩、コンドロイチン硫酸及びそのナトリウム塩、並びに、ポリアクリル酸及びそのナトリウム塩からなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、ヒアルロン酸及びそのナトリウム塩及びその誘導体、カルボキシメチルセルロース及びそのナトリウム塩カルボキシメチルセルロースがより好ましい。
【0037】
カルボキシ基を含有する水溶性高分子のコラーゲンに対する添加量は、1質量%以上が好ましい。1質量%以上であれば添加の効果が発現しやすい。製品であるコラーゲンマイクロニードルの特徴を発揮させるために、カルボキシ基含有高分子のコラーゲンに対する添加量はコラーゲンの添加量より低いことが好ましく、コラーゲンに対する添加量は、90質量%以下とする。
【0038】
マイクロニードルパッチ
マイクロニードルアレイからなるパッチ(マイクロニードルパッチ)の大きさは、0.5~300平方cmである。0.5平方cm未満であっては効果が限定され有効性が発揮しにくい。300平方cmを超えると、体表面を覆うには密着性に問題が生じやすい。広い体表面を覆うには300平方cm以下のマイクロニードルパッチを複数個用いればよい。針長さは50~1000μmが適当である。50~350μmのマイクロニードルは表皮に作用させる。それ以上の長さのマイクロニードルは真皮にも作用する。
【0039】
マイクロニードルパッチを皮膚に安定して適用し皮膚に保持するためには、パッチの背面に粘着性支持体があることが必須ではないがより好ましい。ここで、「背面」とは、マイクロニードルの針が林立している面とは反対側の面をいう。粘着性支持体は、粘着層を片面に有する支持体フィルムである。
【0040】
本発明における粘着層としては、市販の粘着剤からなる粘着性シートを使用できる。ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤、合成ゴム系(SIS系)粘着剤等を使用できるが、皮膚への密着性とODT(occlusive dressing technique)効果によりニードルが皮内の水分で素早く溶解させることを考慮すると、SIS系粘着剤、ハイドロコロイド材、アクリル系粘着剤などが好ましい。SIS系粘着剤としては、スチレン-イソプレンブロック共重合体、粘着付与樹脂、及びパラフィンの組み合わせが公知である。ハイドロコロイドは、親水性高分子と疎水性エラストマーの組み合わせからなる皮膚粘着性基材である。アクリル系粘着剤は、アクリル酸アルキルエステルの共重合体、及びアクリル酸アルキルエステルを主とするアクリル酸、アクリルアミド、酢酸ビニル、等との共重合体である。これらの粘着剤中に皮膚粘着性を改善するため、ミリスチン酸イソプロピルあるいはパルミチン酸イソプロピルのような可塑剤を添加してもよい。粘着層の厚さは10μm以上300μmが望ましい。具体的には、HiPAS(登録商標)粘着剤(アクリルエステル、コスメディ製薬(株)製)、MASCOS10(商品名)粘着剤(アクリルエステル、コスメディ製薬(株)製)、が好適に使用できる。
【0041】
本発明のマイクロニードル製剤、マイクロニードルアレイ、及びマイクロニードルパッチは、顔面その他、シワ、たるみ、等皮膚の老化が気になる部位に適用する。適用箇所は皮膚全般であり、特に限定されない。1回の適用時間は、0.25~24時間程度であり、複数回の適用の場合は、0~7日の間隔で適用することが効果的である。マイクロニードルアレイの皮膚への適用直後にアレイ背後から水を供給することにより、皮膚中のマイクロニードル先端を瞬時に溶解させて皮膚への有価物の吸収を促進することも有効である。このような適用は特に美容エステなどで有効な適用法となる。
【実施例0042】
以下、本発明を下記実施例によりさらに詳しく説明する。これら実施例は、単に本発明を具体的に説明するための例であり、本発明の範囲がこれら実施例に限定されるものではない。
【0043】
実施例1
マイクロニードルアレイの作製
図1は本発明のマイクロニードルアレイの製造方法の一例を示す断面図である。図中、1は、鋳型であり、感光性樹脂に光照射するリソグラフィ法によりコニーデ型のマイクロニードルパターンを形成した後、電鋳加工することによりコニーデ型のマイクロニードルパターンを転写したコニーデ型のマイクロニードル形成用凹部11が形成されている。2は、マイクロニードル形成用凹部11に流延したマイクロニードル原料液である。マイクロニードル形成用凹部11は、根元の直径が0.6mm、先端直径が0.02mm、深さ0.2mmのコニーデ型であり、0.8mm間隔に格子状に配列されている。 室温で水100質量部にマグロ由来天然コラーゲン4質量部、クエン酸0.28質量部を添加し攪拌して均一な水溶液とした。pHは6.3であった。本水溶液(実施例1のマイクロニードル原料液)を鋳型1上に流延し、水溶液中の水分を蒸発させた後、鋳型1から剥離して楕円形(10x50mm、短径x長径)に打ち抜いた。
【0044】
保護粘着テープ付きマイクロニードルアレイの作製
楕円形のマイクロニードルアレイ(10x50mm、短径x長径)を、角を丸めた長方形(16x60mm)の支持体付き粘着テープの中央部にセットすることにより、本発明の保護粘着テープ付きマイクロニードルアレイを得た。
【0045】
実施例2
実施例1のマイクロニードル原料液に、さらにヒアルロン酸FCH-SU(キッコーマンバイオケミファ、分子量5-11万)1.0質量部を添加し攪拌すると均一な安定な水溶液となり、本水溶液を実施例2のマイクロニードル原料液とした。その後の製造手順は実施例1と同様にして保護粘着テープで裏打ちしマイクロニードルパッチを得た。
【0046】
マイクロニードル製剤中のコラーゲン量とpH調整剤の含有量がマイクロニードルの成形性に及ぼす影響を検討するため、表1に示した実験を行った。
室温で精製水100質量部に、添加物を表1に記載の量(単位質量部)添加し、スターラーで400rpm、10分攪拌してマイクロニードル原料液を作製した。
別途、攪拌1時間後の比較例1~2及び実施例3~8のマイクロニードル原料液を、実施例1と同様の鋳型1上に流延し、原料液中の水分を蒸発させた後、鋳型1から剥離して楕円形(10×50mm、短径×長径)に打ち抜き、マイクロニードルパッチを得た。これらのマイクロニードルパッチの顕微鏡による観察結果を、表1の「成形性」覧に記載した。
◎:マイクロニードルの成形性良好
〇:マイクロニードルの成形は可能であるが十分でない
×:針が不完全、成形性不良。
【0047】
【表1】
【0048】
表1に示したように、コラーゲン量に対してpH調整剤の含有量が5-30質量%である場合は、マイクロニードルの成形性は良好であった。また、3質量%、40質量%の場合でも成形は可能であったが、十分ではなかった。pH調整剤が添加されていない場合、および50質量%以上の場合にはマイクロニードルの成形性が不良であった。
【0049】
【表2】
【0050】
表2には、マイクロニードル中のコラーゲン量に対するカルボキシ基含有水溶性高分子がマイクロニードルの成形性に及ぼす影響を検討した結果を示した。カルボキシ基含有水溶性高分子としてヒアルロン酸を使用した。pH調整剤の添加量をコラーゲン量の20質量%配合した場合、ヒアルロン酸/コラーゲンの割合が5~48%ではいずれも良好な成形性を示した。
【0051】
【表3】
【0052】
ヒアルロン酸によるコラーゲンの分解抑制を確認するため、表3に示した量のコラーゲンとヒアルロン酸を精製水100gに溶解した溶液を調製した。
タンパク分解酵素としてZYMO ACID(エイチホルスタイン社)10%水溶液を用い、表3に示したコラーゲンとヒアルロン酸の混合溶解液0.9gに、ZYMO ACID 10%水溶液0.18mLを加え、35℃で10分間反応させてコラーゲンを分解させた。コラーゲンの分解は「Anson法の萩原変法によるプロテアーゼ定量法」により測定した。その結果、表3に示したようにヒアルロン酸の含有量が増えるとともに、コラーゲンの分解が抑制され、ヒアルロン酸がコラーゲン量の20%存在することで、コラーゲンの分解が42%まで抑制されることがわかった。またヒアルロン酸が40%存在することで、コラーゲンの分解が30%まで抑制され、ヒアルロン酸の共存により、コラーゲンの分解が著しく抑制されることが明らかとなった。
【0053】
実施例17
実施例10の溶液を実施例11のマイクロニードル原料液に0.01質量部のアスコルビン酸リン酸マグネシウムを添加し攪拌した。その後の製造手順は実施例1と同様にして、保護粘着テープで裏打ちし、抗シワと美白を目的とするマイクロニードルパッチを得た。
【0054】
試験例1 in vivo試験
成人男性ボランティアの右瞼下に、実施例2により作製したマイクロニードルパッチを就寝前に貼付し、翌日朝に剥した。試験前後の瞼下のシワ面積率、深さ、を表4に記載した。
シワ面積率、深さの測定にはPrimos lite(GFM社製)を用いた。本装置は、in vivoでの格子パターン投影法による三次元測定法によりシワの面積率およびシワの深さを測定し、被験者顔面を写真撮影し、シワの面積比率、及びシワの深さを定量化するものである。1回のマイクロニードルパッチ適用でシワの減少効果を確認できた。
【0055】
【表4】
【0056】
試験例2 マイクロニードル針強度試験
実施例1及び2により作製したマイクロニードルパッチをパラフィルム(厚さ120μm、皮膚と類似の強度を有し皮膚穿刺性評価に適用できる)を15枚重ねたシートの上に針面を下にして載せ、さらに専用ばね式アプリケータを用いてマイクロニードルをパラフィルム内に穿刺した。1分後取り出して針の曲がり、折れを観察した。実施例1のマイクロニードルパッチでは針の20%に欠け、曲がり、が発生したが、実施例2のパッチでは5%以下であった。
【符号の説明】
【0057】
1 鋳型
2 マイクロニードル原料液
11 マイクロニードル成形用凹部

図1